7.構造物の地震応答理論(6)
7-1
地震力による応答地震力による運動方程式は式
(3.2)
で与えられた.
m x && + c x & + kx = − m x &&
G(3.2)
x
G&&
は,地震加速度である.ここで,x &&
Gをg(t)と表すことに
する.したがって,式(3.2)は下記のようになる.
mx cx && + + & kx = − mg t ( )
(7.1)
地震力はおもりの(−質量×加速度)であり,加速度は地 震計で記録される.現在の地震計は,ほとんどがデジタル 記録方式であり,0.01秒や
0.005
秒間隔と一定の間隔で記 録される.たとえば,0.01
秒間隔であると,得られるg
は,g(0),g(0.01),g(0.02),g(0.03),・・・
となり,これらはg(tn
)と表すことができる.ここで,
t
n= n
⊿t
であり,⊿t
は,記録間隔である.さらに,これを簡 単にgnと表すこともできる.したがって,nは時間に対応す
る.ここでは,もっとも簡単な
x(t)
の求め方を示す.中央差 分法を使えば,&& & x x ,
は以下のように求まる.1
2
n n
n
x x
1x t
+
−
= ∆
&
−(7.2)
1 1
1 1
2
2
n n n n
n n n
n
x x x x
x x x
t t
x t t
+ −
+ −
− − − − +
∆ ∆
= =
∆ ∆
&&
(7.3)
ここで,
x x x && &
n,
n,
nは時刻t
nにおける加速度,速度,変位であ る.式(7.2),(7.3)がそれぞれ加速度,速度の次元になって いることを確認すること.速度は微小時間における変位の 変化率であり,加速度は速度の変化率である.したがって,加速度も,速度も式(7.2),(7.3)のように変位の変化率で表 される.また,これらは,常に式(7.1)を満たしている.式
(7.1)の両辺をmで割って,(7.2),(7.3)を代入すれば次のよう
になる.1 1 1 1 2
0 0
2
2 2
2
n n n n n
n
x x x x x
h x
t ω t ω
+
− +
− +−
−+ +
∆ ∆ = − g
n)
(7.3) n=0,1,2,・・・・・
x
0=x
-1=0 (
g n t ∆
は地震記録であるので既知である.x
0= x
-1=0
とすると,式(7.3)から
x
1が求まる.次のx
2はx
0と今求まったx
1 から求まる.これを繰り返すことに,順次x
nが求まる.ま た,加速度,速度は,式(7.2),(7.3)を使うことにより求め ることができる.補足1:
x x x && &
n,
n,
nを求める方法は,中央差分法の他にも た く さ ん あ る . よ く 使 わ れ て い る 方 法 と し て は ,Runge-Kutta
法,線形加速度法,Newmark
のβ法,Wilson
のθ法などがある.これらの詳しいことは,他の参考書 を勉強すること.なお,上記の中央差分法,Runge-Kutta
法は陽解法,線形加速度法,Newmarkのβ法, Wilson のθ法は陰解法に属する.陽解法は,現時点の物理量, ,
n n n
x x x
&& &
は過去の物理量だけで決めるが,陰解法では未来の物理量を仮定して,過去と未来の物理量が矛盾なく 連続となるように未来の物理量を修正していく方法で ある.一般に,陰解法は,陽解法に比べ,計算量は多い が精度はよい.これは,陽解法は過去だけの物理量しか 使わないため,誤差が蓄積されてしまうためである.陰 解法では,未来の物理量を使うことにより,この誤差を 抑えている.
7-2 応答スペクトルの定義
応答スペクトルとは,1自由度系の最大応答値を縦軸に,
横軸に固有周期にとって描いた曲線のことである.減衰比
h
は,パラメータとなる.したがって,h が変われば応答 スペクトルの形状は変わる.一般に,h=0.05が使われるこ とが多い.応答スペクトルには,加速度応答スペクトル,速度応答スペクトル,変位応答スペクトルの3種類がある.
それぞれは,以下の式で定義される.
加速度応答スペクトル:
SA T h ( , )
0= max[| && && x + x
G|]
速度応答スペクトル:
SV T h ( , )
0= max[| |] x &
変位応答スペクトル
: SD T h ( , )
0= max[| |] x
ここで, は固有周期,h は減衰比である.||は絶対値 である.加速度応答スペクトルでは絶対加速度をとること に注意すること.
T
07-3 応答スペクトルの例
0 5 10 15 20 25 30 35 40
時間 (sec) -800
-400 0 400 800
加速度 (cm/s/s)
max:-725 cm/s/s
図
7-1 2000
年鳥取県西部地震のK-NET
観測点TTR007(震央距離:約 13km)で得られた
加速度記録波形のNS
成分0 5 10 15 20 25 30 35 40
時間 (sec) -20
-15 -10 -5 0 5 10 15 20
応答速度 (cm/s)
max:-19.1 cm/s
(a)
T
0=0.1
秒0 5 10 15 20 25 30 35 40
時間 (sec) -150
-100 -50 0 50 100 150
応答速度 (cm/s)
max:-127.2 cm/s
(b)
T
0=0.5
秒図
7-2 各固有周期
T0における1自由度系の相対速度x & (減衰比 h
は0.05
とする)(解法:Wilson
のθ法)0 5 10 15 20 25 30 35 40 時間 (sec)
-60 -40 -20 0 20 40 60
応答速度 (cm/s) max:54.8 cm/s
(c)
T
0=1.0
秒0 5 10 15 20 25 30 35 40
時間 (sec) -50
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50
応答速度 (cm/s)
max:-45.8 cm/s
(d)
T
0=1.5
秒0 5 10 15 20 25 30 35 40
時間 (sec) -60
-40 -20 0 20 40 60 80
応答速度 (cm/s) max:60.9 cm/s
(e)
T
0=2.0
秒図
7-2(続き)各固有周期 T
0における1自由度系の相対速度x & (減衰比 h
は0.05
とする) (解法:Wilsonのθ法)0 0.5 1 1.5 2 2.5 固有周期 To (sec)
0 20 40 60 80 100 120 140
速度応答スペクトル,SV (cm/s)
19.1 127.2
54.8
45.8
60.9
図
7-3 速度応答スペクトル( h
=0.05)0 0.5 1 1.5 2 2.5
固有周期 To (sec) 0
200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
加速度応答スペクトル,SA (cm/s/s)
1413.7 1645.2
217.6
139.7 119.3
図
7-4 加速度応答スペクトル( h
=0.05)0 0.5 1 1.5 2 2.5
固有周期 To (sec) 0
5 10 15 20
変位応答スペクトル,SD (cm)
0.4 10.4
5.5
7.8
12.0
図
7-5
変位応答スペクトル(h
=0.05
)補足
K-NET:強震ネットワーク(防災科学技術研究所)のことで,約鉱
区内の約
1000
地点(約25km間隔)で地震観測が行われている.得
られた記録は,インターネット上で公開されている.
2000年鳥取県西部地震:上記で取り上げた地震は,2000年
10
月6
日に発生した鳥取県西部地震(気象庁マグニチュードMj7.3,震源
深さ
11km)である.気象庁マグニチュードに関しては,1995
年兵庫県南部地震(Mj7.3,震源深さ
14km)と同レベルであり,共に浅
発の内陸直下型の地震である.兵庫県南部地震に比べると,被害規 模は遥かに小さいが,全国のK-NET
観測点の約3
割にあたる304
地点で地震記録が得られている.非線形性:構造物は大きく変形するとバネ定数と減衰比が変化す る.これを非線形という.
7-4 応答スペクトルの意義
応答スペクトルは構造物から見た地震動強さを表している.例え ば,図
7-3
から,この地点での地震動は固有周期0.5
秒の建物がも っとも揺れやすい性質だったことが分る.7-5
疑似応答スペクトル応答スペクトル
SA,SV,SD
は以下の関係にある.0
2
0 0
SV SD
SA SV SD
ω
ω ω
≈
≈ ≈
(7.4)
ここで,ωは角振動数で固有周期 とはω=2π/ の関係に ある.上式を使えば,他への応答スペクトルへ変換できる.
この場合,変換された方の応答スペクトルを疑似応答スペ クトルという.
T0 T0
地震動強さの指標について
地震動の強さを表現することは意外と難しい.それは,同 じ地震動入力であっても,構造物の特性によって応答が異 なるからである.一般的に知られている指標は,最大加速 度,最大速度,最大速度,計測震度であろう.その他の指 標としては,SI値(Spectrum Intensity)がある.定義式は,
以下のとおりである.
2.5
0 0
0.1
1 ( , )
SI = 2.4 ∫ SV T h dT
これは,速度応答スペクトルの周期
0.1
秒から2.5
秒の間 の平均値に対応する.この周期帯に着目している理由は,多くの構造物がこの周期帯にあるからである.一般に,
h=0.2
が用いられるが,h=0.05
を用いる場合もある.最大 加速度,最大速度,最大変位,計測震度よりも被害との相 関が高いといわれている.7-6 例題
2000
年鳥取県西部地震で得られた地震記録(K-net 観測点TTR007
のNS
成分)をダウンロー ド(スケジュール表にリンクしてある)し,固有周期1秒,減衰比h=0.05
の1自由度系の相対 速度を中央差分法を用いて求め,描画せよ.これらはEXCEL
を使って行うこと.また,図7-2(c)
と比較せよ.解答例
1 1 1 1 2
0 0
2 2
2 2
1 1 0 1 1 0
2 2
1 0 0 1 0
2 2 2
0 1
1
( )
2 2
( ) 2
( )
2 ( ) ( )
(1 ) ( ( ) 2) (1 )
( ) ( ( ) 2) (1
n G
n n n n n
n n
n n n n n n n
n n n
n n n
n
g x n t
x x x x x
h x g
t t
t
( )
2x x x h x x t x t g t
x h t x t x h t
g t x t x h
x
ω ω
ω ω
ω ω ω
ω
+ − + −
+ − + −
+ −
+ −
= ∆
− + −
+ + = −
∆ ∆
∆
− + + − ∆ + ∆ = − ∆
= + ∆ + ∆ − + − ∆
− ∆ − ∆ − − −
=
&&
両辺に をかける.
0 0
1 1
) 1
2
n n
n
t h t
x x
x t
ω ω
+ −
∆ + ∆
= −
& ∆
EXCEL
での作成例はスケジュール表にリンクしてあるので,グラフは省略.