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関連研究,.,,,.,Kaplan social present/ media richness, self presentation/self disclosure 6, 10 [Kaplan 10].,Kietzmann, identity, convers

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1.は じ め に

年末の紅白歌合戦に,AKB48 を見ない年はなくなっ た.AKB の「選抜総選挙」は地上波で放映され,メン バのグループからの卒業やスキャンダルがいちいち大き く報道されるなど,国民的アイドルとして多くの人から 認知されている.グループとしてのマーケティングやビ ジネスモデルに関してはさまざまな考察があるが [箕輪 13,さやわか 13],多人数のメンバのダイナミズムを伴 いながら,その人気を維持し続けていることは,現象と して興味深い. アイドルグループや芸能人といった対象は,人々の日 常生活を彩るエンターテイメントの中でも,重要な地位 を占めると考えられるが,これまでデータ分析を行うこ とは難しかった.なぜなら,アイドルを好むとか芸能人 に憧れるといったことは,多分にプライベートな現象で あり,家族や友達といえども共有されることが少ないた め,観察することが難しい.これまで,例えば,アイド ルや芸能人の好感度調査などは長年行われてきたし,ま た,モーニング娘。や宝塚歌劇団 [大北 12] などの現象 を定性的に議論することは以前から行われてきた.しか し,そのダイナミズムを大量のデータをもとに分析した 例はこれまでにほとんどなかった. 一方で,近年のソーシャルメディアの普及に伴い,芸 能人やアイドルが Web 上でのファンに向けて情報を発 信したり,インタラクションすることも増えてきた.そ ういった情報の発信や,また,それに対するファンの反 応なども,データとして取得することが可能になってい る.このデータを分析することで,これまでにはわから なかったようなグループのロングテール構造 [植田 13, 山下 11] やダイナミズム [Ishii 13] を理解することがで きるようになってきた.こうした取組みは,人工知能の 技術が多くの人の身近なところに関連するという意味 で,多くの人にとって魅力的なのではないだろうか. 本解説では,事例としては女性アイドルグループの AKB48と Google の提供するソーシャルメディアである Google+*1を取り上げ,AKB48 のメンバ(以下ではメ ンバという)とそのファンのインタラクションを分析し た研究を紹介する.AKB48 は,毎年,「選抜総選挙」と 呼ばれる人気投票を行っており,人気の定量的評価が可 能である.さらに 200 人以上のほぼすべてのメンバが Google+を利用しているため,データの取得がしやすく, 比較,分析がしやすい. 本解説では,まず AKB48 におけるソーシャルメディ ア上での支持者を定義し,その人数と実世界での人気投 票の結果との相関を示す.そして,競合するメンバ間で の支持者の獲得状況を俯瞰するために,メンバ間での支 持者の類似性を示すネットワーク,および支持者の遷移 を示すネットワークを構築し,可視化する.次に,支持 者の遷移を示すネットワークを,フローを表すネット ワークと捉え,このフローを最適化することにより,特 定のメンバへの支持を増やすような手法を提案すること ができることを示す. こうした事例を通じて,エンターテイメントにおける データ分析の可能性,および人工知能技術の活用の可能 性について何らかの参考になれば幸いである.なお,本 特集の解説記事のタイトルとして,半ば冗談でこのタイ トルをいただいたのだが,大変インパクトがあり,本解 説のタイトルとしてふさわしいため,このまま使わせて

AI的 AKB48論

An AI Approach to Analyze AKB48

松尾  豊

東京大学大学院工学系研究科

Yutaka Matsuo Graduate School of Engineering, The University of Tokyo. [email protected]

吉田 宏司

(同   上)

Koji Yoshida [email protected]

榊  剛史

(同   上)

Takeshi Sakaki [email protected]

Keywords:

AKB48, idol group, social media, social network analysis.

「エンターテイメントにおける AI」

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いただきたいと思う.

2.関 連 研 究

ソーシャルメディアに関する研究は,幅広い分野で行 われている.以下では,活用方法に関する研究,分析に 関する研究,選挙に関する研究の三つの点から関連研究 を紹介する. ソーシャルメディアの活用方法を研究している例とし て,Kaplan らはソーシャルメディアを social present/ media richness, self presentation/self disclosureの二つ の基準から 6 種類に分類し,その活用法を 10 個提案し た [Kaplan 10].また,Kietzmann らは,ソーシャル メディアを identity, conversations, sharing, presence, relationships, reputation, groupから構成されるとする

honeycomb frameworkを提案し,企業はそれに基づい たソーシャルメディア戦略を立てるよう提案している [Kietzmann 11].これらは,ソーシャルメディアをいか に企業戦略に活用するのかという視点からなされた研究 である. ソーシャルメディアを用いて実世界を観測する研究 は,2000 年代前半から blog や掲示板の分析という形で 活発に行われている.最近では,Twitter での地震検知 を例に,社会観測のためのセンサであると考えるソー シャルセンサという概念も提案されている [Sakaki 10, 榊 12].Chakrabarti らは,アメリカンフットボールの 試合状況の要約を Twitter のつぶやきからリアルタイム に作成している [Chakrabarti 11].また,ソーシャルメ ディアを用いた商品や人物に関する評判分析,世論の 観測の研究も多く行われている.Twitter のつぶやきを 用いて,映画の売上をリリース前に予測する研究 [Asur 10]や,株価を予測する研究 [Bollen 11],商品やサービ スなどのブランドの評判や意見を抽出する研究 [Jansen 09]などである. 本解説では,Google+のデータを用いた分析を紹介す るが,Google+の分析はこれまであまり行われていない. 最近の Gonzalez らの研究では,Google+ユーザのアク ティビティやネットワークの特徴について,Facebook と Twitter の二つと比較した分析を行っている.結果 として,Google+のネットワークは,Facebook よりも Twitterに近いと述べている [Gonzalez 13]. 選挙予測の研究としては,Williams らは,Facebook における政治家の支持者の数が選挙結果の有効な指 標 で あ る こ と を 示 し た [Williams 08].Tumasjan ら は,Twitter での政党名を含むつぶやき数を用いて,ド イツの国政選挙での各政党の得票数の予測を行ってい る [Tumasjan 10].O’Connor らは,感情分析を用い て Twitter でのつぶやき数と従来の世論調査との相関に ついて分析している [O’Connor10].政治の選挙に限ら ず,視聴者の投票によってアイドルの順位付けが決ま る American Idol という米国のテレビ番組の投票結果を Twitterのつぶやきから予測している研究もある [Fabio 12].これらの研究と比較し,本研究では支持獲得まで 踏み込んでいるところが特徴的である. AKB48の研究としては,中村の研究が力強い.単に AKB48のコンサートに通っただけではなく,参与観察 という手段によって,AKB48 を取り巻く現象やその内 部の仕組みについて深い考察を行っている [中村 12].こ うした定性的な考察はいくつか行われており,AKB48 のシステムとしての優秀さを論じている [箕輪 13, さや わか 13].データ分析を行っているものとしては,[植 田 13, 山下 11] などがあり,AKB の人気においてロング テール構造があること(さらに,下位のメンバに理論値 よりもより人気があるファットテールであること),そ れが起こる理由となるファンから見た効用などについて 論じている.[Ishii 13] では,テレビやニュースでの露 出も含めて,SNS 上での人気のモデル化を行っている. AKBのダイナミクスをネットワークという観点から解 析したものはおそらく本稿が初めてであろう.

3.分析対象のデータとその概要

3・1 デ ー タ の 取 得 AKB48は,2005 年 12 月に結成された女性アイドル グループである.グループ名の「48」は 48 人のメンバ が所属していることを表す.現在では,姉妹グループ (SKE48, NMB48, HKT48)を含めると 200 人以上が在 籍しており,すべてのメンバがシングル CD 曲に参加す ることができなくなっている.そこで毎年一度,「選抜 総選挙」というファンの人気投票により,シングル CD 曲に参加するメンバを決めている.選抜総選挙は,総投 票数が 100 万票以上と大規模である.AKB48 は,従来 のアイドルと比べ,「ソーシャルメディアを中心とした ネット上のコミュニケーションに比重を置い」たアイド ルであるとされている [中村 12]. AKB48のメンバは,グループの方針で Google+を使 用している.2011 年 12 月 8 日に AKB48 と姉妹グルー プのメンバが Google+のプラットフォームを利用したメ ンバとファンとの交流サービス「AKB48 on Google+」 を開始した.その月には,Google+のトラフィックが 55%増加するなど,Google+において AKB48 の活動は 重要な位置を占めている. Google+とは,2011 年 6 月に Google によって開始さ れたソーシャルメディアである.サービス開始以降,ユー ザ数を順調に伸ばし,2012 年 12 月時点で,5 億人を達 成したとの報告がなされた.Google+では,ユーザはテ キスト,URL,画像,動画,位置情報を投稿することが できる.投稿の閲覧ユーザは,投稿に対し,コメント, プラスワン,シェアの 3 種類の反応をすることができる. コメントは投稿に対して返信を書くことができる機能で

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ある.プラスワンは,プラスワンボタンをクリックする ことにより,投稿に対して好意的な感情を表現する機能 であり,Facebook の「いいね」に相当する.シェアは, 他ユーザの投稿を自分の投稿内で引用する機能であり, Twitterのリツイートに対応する. 本分析では,Google+で 2011 年 12 月 8 日∼ 2012 年 6月 5 日に AKB48, SKE48, NMB48, HKT48 のメンバ 219人のすべての投稿と,それらについたプラスワン, コメント,シェアをデータセットとして用いる.各グルー プのメンバは新しく加入したり,脱退することがあるが, 本分析では,AKB48, SKE48, NMB48, HKT48 の公式 ホームページ*2に 2012 年 8 月 30 日時点で掲載されて いたメンバを対象のメンバとした. データの取得は,利用規約*3に則り Google+の API を利用して,2012 年 8 月 30 日∼ 9 月 7 日に行った. 対象となるメンバ 219 人による期間内の合計投稿数 は 78 743 件,その投稿に寄せられた総コメント数は 15 863 144件,総プラスワン数は 19 702 058 件,総シェ ア数は 385 526 件である(なお,5・2 節で用いているデー タに関しては,2012 年 12 月 19 日∼ 12 月 24 日のデー タを追加で取得し,使用している). 本稿では,コメント,プラスワン,シェアをまとめて, 反応と呼ぶ.ある投稿にコメントするか,プラスワンす るか,シェアするかは,程度の差はあれ,ユーザのメン バに対する強い興味を表していると考えるからである. また,ある Google+ユーザに 1 回でも反応したことの あるユーザを,そのユーザのファンと呼ぶ.この定義は 必ずしも必然的なものではないが,多くの人は AKB48 の投稿に反応したことはないであろうから,AKB48 の 投稿に一度でも反応するということは一般的な人から比 べるとかなり興味をもっている度合いが高いと考え,こ のような定義とした.なお,ファンの総数(すなわち, いずれかのメンバに一度でも反応したことのあるユーザ 数)は 229 553 人である. 3・2 ファンの数に関する分析 本節では Google+での支持の観測指標を定義し,実世 界での人気投票の結果との相関を調べる.あるメンバが たくさん投稿を行えば,その分,反応の総数は多くなる のは当然である.人気があるメンバと投稿が多いメンバ は異なっており,人気があるメンバは,一つの投稿に対 してたくさんの反応が集まる. したがって,あるメンバがユーザからどのくらい支持 されているかを,「一つの投稿当たりに反応したユーザ の異なり数」で測定し,投稿当たり平均ファン数と呼ぶ ことにする.この値と,実世界での人気投票(AKB48 27thシングル選抜総選挙)の結果との相関を示したも のが図 1 である.投稿当たり平均ファン数は,上位ほ ど大きくなっており,実世界での人気投票と相関がある ことがわかる.白抜きの点は,Google+だけではなく, Twitterも利用している 13 人のメンバである. Twitter利用メンバの投稿当たり平均ファン数は,順 位が同程度の他メンバと比較すると小さくなっている. ファンが二つのソーシャルメディアに分散してしまって いることが原因として考えられる.人気投票の順位と平 均ファン数の相関係数は−0.683 であったが,Twitter 利用メンバを除くと−0.758 となった.複数のソーシャ ルメディアを利用しているメンバの影響により,実世界 での人気の指標と単一のソーシャルメディアでの人気の 指標との相関が弱くなっていることがわかる.Twitter を利用しているメンバは,対象メンバ 219 人中 13 人と 少なく,影響も小さいと考え,本稿では分析対象とし て Goolge+のデータのみを利用した.複数のソーシャ ルメディアを利用するメンバが多くなる場合には,複数 のソーシャルメディアを含めた分析が必要になると考え る.投稿当たり平均ファン数が人気投票の順位と相関が あることはわかったが,ほかの指標はどうであろうか. 投稿当たり平均ファン数と同様の考え方で,1 投稿当た りの平均コメント数,平均プラスワン数,平均シェア数 を計測し,人気投票の順位と相関係数を示したものが表 1である.人気投票の順位との相関が最も大きい指標は, 投稿当たり平均ファン数であるが,平均プラスワン数も 同程度に相関が高い.つまり,コメントやシェアをする ヘビーなユーザよりも,プラスワンをするようなライト なユーザがどのくらいいるかが人気との関連が高いので はないかと推測することができる.そこで,次に,ユー ザがどのくらい熱心にメンバを支持しているかについて 分析する. 3・3 ファンの性質に関する分析 順位の上下に応じて,知名度や露出の多寡が変化し, それによってファンの質も変化するのではないだろう か.直感的には,人気のないメンバを支持するファンは, 図 1 投稿当たり平均ファン数と人気投票の順位 順 位〔位〕 投稿当 た り 平均 フ ァ ン 数 〔人〕 *2 それぞれ www.akb48.co.jp, www.ske48.co.jp, www. nmb48.com, www.hkt48.jp *3 https://developers.google.com/terms/, http:// research.google.com/university/translate/terms. html

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4・1 ファンの類似に関する分析 二人のメンバのそれぞれファンの集合を考えたとき, この二つの集合の重なりが大きいほど,この二人は同じ ようなファンから支持されている(したがって何らかの 意味での類似性が背後にある)と考えられる.ここで は,集合の重なりを示す指標として一般的に用いられる Jaccard係数を使用する.Jaccard 係数は,二つの集合 X, Yに対し,和集合の要素数を|X∪Y|,積集合の要素 数を|X∩Y|としたとき,|X∪Y| / |X∩Y|で表される. Webから企業ネットワークの抽出や人間関係ネット ワークを抽出する研究でも,同様の指標が用いられてい る.メンバ m1と メンバ m2の類似度は,m1のファンの 集合 U1と,m2のファンの集合 U2の Jaccard 係数によっ て求める. 次に,この類似度をもとにネットワークを描画したも のを図 4 に示す.ノードは,人気投票の順位が公開され る 64 位以内のメンバと前田敦子とした.前田敦子は, 対象とした年の人気投票には参加していなかったため, 64位以内に入っていないが,その前年の人気投票で 1 位であったため,ファンの動向を知るうえでは重要と考 え,ノードに用いた.Jaccard 係数が 0.3 以上の場合に ノード間にエッジを張る.なお,各メンバのファン数が 多いほどノードは大きく描画されており,また共有する ファンの数が多いほどエッジは太く描画されている. 中央部から,上部にかけ,AKB48 のメンバ,左下部 に SKE48 のメンバ,右下部に NMB48 のメンバが固 まっており,各グループ内でファンの類似度が大きいこ とがわかる.また,各グループをつなげる松井玲奈や山 本 彩といったメンバの存在も確認できる.これらのメン バは,地方の派生グループに所属していながら,本体の AKB48のシングル CD に参加しており,より人気の高 いグループと低いグループとのファンの橋渡しをする役 わざわざ人気のないメンバを支持しているわけであるか ら,より熱心に支持しているのではないかと考えられる. こうしたファンは,おそらく,数多くの AKB48 のメン バを知ったうえで,特定のメンバを支持しているわけで あるから,どのくらい多くのメンバに反応したことがあ るかを,AKB48 ファンとしての熱心度と考える. そこで,ここでは AKB48 ファンとしての熱心度を, 「反応したことのあるメンバの合計数」と定義する.す なわち,一人のメンバのみに反応しているファンは熱心 度 1 であり,n 人のメンバに反応しているファンは熱心 度 n とする.各メンバのファンに占める,熱心度 1, 2 ∼ 9, 10以上のファンの比率を図 2 に示す.順位が下がる につれ,熱心度が 10 以上のファンの割合のみ増加して いる.下位メンバのファンは,上位メンバのファンに比 べ,その他大勢のメンバのファンでもある確率が大きい ことがわかる.このことにより,人気の低いメンバのファ ンであるということは,それほど AKB48 の熱心なファ ンであるということが示唆される. 一方,メンバがどれくらい熱狂的に支持されているか を調べるために,熱心度 1 のファンの割合に注目する. この値が高いということは,そのメンバ「だけ」を支持 しているファンが多いということである.順位が低くな ると,当然この値は低くなるが,際立って高いのは 4 位 の指原莉乃である.また,35 位の松村香織(SKE48) も周辺の順位のメンバよりも強く支持されていることが 読み取れる.指原や松村は,広く薄く支持されるという よりは,興味がある人には絶対的に支持されているメン バであると考えられる.

4.AKB48 メンバのネットワーク分析

前章までの基本的な分析を踏まえ,本章ではメンバが どのくらい同じファンを共有しているかという観点から メンバ間の類似度を定義し,ネットワークとして描画す る(図 3).各メンバにとって,自分のファンは,どの メンバと類似しているのかを認識することは,支持獲得 戦略を考えるうえで重要である. 図 2 熱心度から見た各メンバのファンの構成比率と人気 投票の順位の関係 順 位〔位〕 割   合〔%〕 図 3 メンバ間のファンの類似ネットワーク

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慮するために(メンバ m2のファンになった後は,メン バ m3のファンになりやすい,などの特徴を考慮するた めに),メンバ m1からメンバ m3の間のファンの遷移は 考えないこととした. また,同一メンバに複数回反応している場合は,メン バごとに最初の反応を用いて,ファンの遷移を考える. 例えば,図 5 では,メンバ m1への反応日は 3 月 23 日, メンバ m2への反応日は 4 月 4 日,メンバ m3への反応 日は 4 月 23 日として,メンバ m1からメンバ m2にファ ンが一人遷移し,メンバ m2からメンバ m3にファンが 一人遷移したと考える. なお,投稿時間の差が 24 時間以内の二人のメンバの 投稿に反応した場合は,それらの間での遷移は考えない ものとする.例えば,図 6 では,メンバ m1からメンバ m3に一人のファンが遷移し,メンバ m2からメンバ m3 にファンが遷移したと考える.メンバ m1とメンバ m2 の間のファンの遷移は考えない. ここで 24 時間という差に注目したのは下記の理由か らである.2012 年 12 月 19 日の全メンバの投稿に対し て,1 時間ごとに API にアクセスすることによって,投 稿後の経過時間と,投稿に反応したファンの累積数の関 係を調べた(図 7).結果が図 8 である.ここで,投稿 から 100 時間以内に反応したファンの総数を 100%とし, 各経過時間までに,そのうちの何%のファンが反応した のかを表している.図 7 からわかるように,投稿後 12 時間以内に反応した累計のファン数は 90.6%,24 時間 以内に反応した累計のファン数は 97.0%となっている. 投稿から 24 時間以上経過した後の反応は少ない.なお, 投稿に対する反応が,投稿後から約 1 日以内に集中し, その後はほとんど行われないという傾向は,Twitter や Digg*4など他のソーシャルメディアでも確認されてい 割を果たしている. より小さい単位にメンバを分けた場合にファンの類似 度がどうなるかについて調べる.各グループは 2 ∼ 3 個 のチームから構成されている.メンバごとに,同チーム のメンバとの類似度の平均値と,別チームのメンバとの 類似度の平均値をそれぞれ算出する.同チームのメンバ との類似度のほうが大きかったメンバは 30 人で,別チー ムのメンバとの類似度のほうが大きかったメンバは 16 人であった.χ2検定により,同チームのメンバ間で,ファ ンが類似しやすいということが有意水準 5%で認められ た.同期のメンバと異期のメンバで同様の検定を行った. 同期のメンバとの類似度の平均値のほうが大きかったメ ンバは 35 人で,異期のメンバとの類似度の平均値のほ うが大きかったメンバは 9 人であった.χ2検定により, 同期のメンバ間でファンが類似しやすいということが有 意水準 1%で認められた. 同グループ,同チーム,同期の三つに共通する特徴と して,ファンから見たときにメンバがメディア上で同じ 場面で出てくることが多い,したがって,それがファン の重なりをもたらしているのではないかと考えられる. こうした考察は,[植田 13] で議論されているチームの 効果とも一致する. 4・2 ファンの遷移に関する分析 次に,ファンの重なりだけではなく,その時系列的な 変化を考える.ユーザがあるメンバ m1と m2両者のファ ンであるとしたときに,メンバ m1の投稿への反応が先 か,メンバ m2の投稿への反応が先かで,ファンになっ たメンバの順番について分析できるのではないかという のが基本的なアイディアである. より具体的には,図 4 でファン u1が 3 月 23 日にメン バ m1の投稿に反応し,メンバ m2の投稿に 4 月 4 日に 反応し,メンバ m3の投稿に 4 月 23 日に反応したとす る.このとき,ファン u1がファンとなったメンバの順 番は m1→ m2→ m3とし,メンバ m1からメンバ m2にファ ンが一人遷移し,メンバ m2からメンバ m3にファンが 一人遷移したと考える.ファン u1はメンバ m2に反応し た後も,メンバ m1のファンをやめるわけではなく,メ ンバ m1とメンバ m2両者のファンであるため,メンバ m1からメンバ m3にもファンが遷移したと考えることも 可能である.しかし,ファンとなったメンバの順番を考 図 4 ファンの遷移の例 1 図 5 ファンの遷移の例 2 図 6 ファンの遷移の例 3 *4 http://digg.com/

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る現象である [Lerman 10]. 各メンバは平均で 1 日 2 回以上 Google+に投稿して いること,投稿時間の差が 24 時間以内の投稿への反応 についてはファンの遷移を考えないことから,メンバの 投稿時間の違いがファンの反応順番に与える影響は無視 できるとした. 以上のようなファンの遷移を,すべてのファンに関し て集計し,各メンバ間で合計何人のファンが遷移したの かを算出する.メンバをノード,メンバ間で遷移したファ ンを有向エッジとし,メンバ間のファンの遷移を表す ネットワークを構築する(以下,ファンの遷移ネットワー クと呼ぶ).グループ内でファンの類似度が高くなると いう前節の分析結果から,ここでは AKB48 のメンバ 46 人のみをノードとし,各メンバのファンの遷移元上位 3 メンバから張られるエッジのみ可視化する. 結果を図 8 に示す.篠田麻里子や指原莉乃など,ファ ンの数の大きいメンバは出次数も大きくなっている.す なわち,これらのメンバはファンの数は大きいが,その 分,他メンバにもファンを遷移させており,多くのファ ンがそのメンバを通し,行き来していることがわかる. 一方,ファンの数が大きいにもかかわらず,出次数が 0 のメンバ(柏木由紀)の存在も確認できる.データ取得 期間において新しく柏木由紀のファンになったユーザ は,他に移行する傾向が弱く,柏木は強い人気があった のではないかと推測できる.

5.ネットワークに基づく支持獲得戦略

AKB48のあるメンバがファンを獲得する際には, AKB48の他メンバのファンを自らのファンとして取り 込む戦略と,AKB48 のファンではない人を自らのファ ンとして取り込む戦略が考えられる.AKB48 グループ 全体として,もしくは AKB48 を代表するような人気メ ンバにとっては,後者,つまり AKB48 のファンでない 人をファンにすることは重要であるが,その他大勢のメ ンバにとっては前者のほうが重要であり.例えそれが他 のメンバのファンを奪うことになっても,いかに自らの ファンを増やすかが重要な関心事項である(選挙が相対 的なものである以上は,これは本質的な性質である). その際に,個々のメンバが取れるネットワークに関す る戦略としては,どのメンバとの露出を増やすかである. つまり,ネットワークにおいて,自分を表すノードとど のノードのエッジを太くすることで,自分に流れ込むフ ローを増やせるのかという問題と捉えることができる. ここでは,前節で構築したファンの遷移ネットワー クを用い,与えられたノード m に対し,ノード m と他 のノードとのエッジの重みを変化させることで,ファン の滞留状況を計算し,どのノードとのエッジの重みを増 加させればよいかを導きだす.ファンの滞留状況を計算 するには,遷移行列をもとに定常状態での確率分布を求 める手法として一般的に用いられるページランクを用い る. ページランクはノードの重要さを計測する指標であ り,Web 上でユーザがリンクを等確率で選択し,他ペー ジに遷移していくと仮定した場合の各 Web ページの滞 在確率を表している [Brin 98].支持者の遷移ネットワー クにおいて,ページランクが高いユーザは,支持者を獲 得する確率が高く,逆にページランクの低いユーザは, 支持者を獲得する確率が低い.支持者の遷移ネットワー クにおいて,ページランクの向上を目指すということは, 支持者を獲得する確率を増加させることを意味する. なお,提案手法では,エッジの重みとして,メンバ間 で遷移した支持者の数を,支持者の遷移元の総支持者数 で正規化した値を置いている.支持者の遷移ネットワー クにおいて,ページランクを算出する際に,ノード間の 遷移の確率を等確率ではなく,エッジの重みに比例する よう変更を加えた.メンバ m( j=1, 2, …, N)からメj ンバ m(i=1, 2, …, N)に張られるエッジの重み w(mi j, mi)は,メンバ mjからメンバ miへ遷移したファンの数 図 7 投稿からの経過時間と反応したファンの累計数 経過時間〔時間〕 投稿 に 反応 し た フ ァ ン の 累積数 の 割合 〔 % 〕 図 8 AKB48 のメンバ間のファンの遷移ネットワーク

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L(mj, mi)をメンバ mjのファンの数 N(mj)で割ったも のとする.メンバ miのページランク WPR(mi)は,N をメンバ数,d をダンピングファクタとすると,以下で 表せる. ( )= 1 − + , * ( ) ∈( ) ( ) =( , ) ( ) , ( ) 提案手法はシンプルであり,与えられたノード mi対して,任意のノード mjから張られるエッジの重みが x倍になったと考え,ノード mjのスコア fx(mj)を以下 のように考える.WPR(mi|w(mj, mi,x)は,このときの ノード miのページランクを表す. fx(mj)= WPR(mi|w(mj, mi,x) 実際には,このスコア順にノードをソートし,上位か ら関係性を強めるのが望ましいメンバと捉えることがで きる. 小林香菜を例として,他メンバから張られるエッジの 重みを x(>1)倍した場合の小林香菜のページランクを 算出する.x は 1.1 から 4.0 まで 0.1 刻みで変化させた. 結果として,小林香菜のページランク増加効果の上位 5 メンバのリストは x によって変化せず,表 2 に示したメ ンバで固定されていた.また,小林香菜に多くのファン を遷移させているメンバのうち,ファン遷移先として小 林香菜が上位にきているメンバが,ページランク増加効 果も大きくなる傾向があった. 紙数の都合により,評価実験については記すことがで きないが,提案手法は,ソーシャルメディアにおけるファ ンの動きを用いているため,芸能界関係者では気付かな いが,実際のファンから見ると,評価が高い結果をつく ることができたと考えられる.ソーシャルメディアで ファンの観測可能性が高まるとともに,詳細な観測が可 能となったことが大きい.特に,ファンの遷移という今 までは観測が困難であったデータを用いた効果が大きい と考えられる.ファンの行動ログを用いることによって, 関係者だけでは気付かない,ファンの視点を取り入れた 戦略を立案できる可能性を示唆している.

6.お わ り に

本稿では,エンターテイメントと人工知能の関わりの なかで,特にアイドルグループに焦点を当て,AKB48 のメンバとファンの Google+上でのインタラクションを 取り上げ,分析を行った.ファンの数の分布や,ファン のアクションと選挙の順位の相関を示し,また,ファン の重なり度合いによるネットワーク図を図示した.さら にこのネットワーク図を,ユーザの遷移を表すものとし て捉えることで,ファンを増やすための戦略にも用いる ことのできる可能性があることを示した. ここであげた事例は,AKB48 に関してだけであるが, さまざまな形でアイドルや芸能人とファンとのインタラ クションを分析できるようになっている.より抽象化す ると,アイドルや芸能人に限らず,支持の獲得を目的と した場合のデータ分析の活用の可能性を示すものである と考えられ,こうした方向性は,将来的には,支持者獲 得を目指す著名人や政治家だけではなく,企業のロイヤ ルカスタマー,大学の支援者(父兄や OB),また研究の スポンサーや支持者の獲得などにとっても重要かもしれ ない.

◇ 参 考 文 献 ◇

[Andranik 10] Andranik, T., Timm, O. S., Philipp, G. S. and Isabell, M. W.: Predicting elections with twitter: What 140 characters reveal about political sentiment, Proc. ICWSM, pp.178-185(2010)

[Asur 10] Asur, S. and Huberman, B. A.: Predicting the future with social media, Proc. Computing, Vol. 1, No. 1, pp. 492-499 (2010)

[Bollen 11] Bollen, J., Mao, H. and Zeng, X.-J.: Twitter mood predicts the stock market, J. Computational Science, Vol. 2, No. 1, pp. 1-8(2011)

[Brin 98] Brin, S. and Page, L.: The anatomy of a large-scale hypertextual web search engine, Proc. WWW, pp.107-117 (1998)

[Chakrabarti 11] Chakrabarti, D. and Punera, K.: Event summarization using tweets, Proc. ICWSM, pp. 66-73(2011) [Fabio 12] Fabio, C., Delia, M., Andrea, B., Bruno, G., Nicola, P.

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著 者 紹 介

松尾  豊(正会員) 1997年東京大学工学部電子情報工学科卒業.2002 年同大学院工学研究科博士課程修了.博士(工学). 同年より,産業技術総合研究所研究員.2005 年 10 月よりスタンフォード大学客員研究員.2007 年 10 月より,東京大学大学院工学系研究科准教授.専門 は,Web マイニング,人工知能. 吉田 宏司 2011年 東 京 大 学 工 学 部 シ ス テ ム 創 生 学 科 卒 業. 2013年同大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻修 士課程修了.現在,株式会社 Gunosy 勤務. 榊  剛史(正会員) 2004年東京大学工学部電子情報工学科卒業.2006 年同大学院工学系研究科修士課程修了.2014 年 3 月同研究科博士課程修了.博士(工学).同年より, 東京大学大学院工学系研究科特任研究員.専門は, 人工知能,自然言語処理,Web マイニング,社会ネッ トワーク分析.

参照

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