国際的スポーツイベントにおける アンブッシュマーケティングに関する研究
A Research on Ambush Marketing in International Sports Events
― 2014FIFAワールドカップブラジル大会におけるテレビCM認知調査 ―
An Investigation about an Awareness of TV commercial in 2014 FIFA World Cup
1W110188-0
小泉 健太 指導教員 長 幾朗 教授KOIZUMI Kenta Prof. CHOH Ikuro
概要: 本研究は、国際的スポーツイベントにおけるアンブッシュマーケティングの実態を明らかにし、今後の 展望について考察することを目的とする。そのためにまず、スポーツイベントにおけるスポンサービジネスの背 景を簡潔に述べる。次いで、国際的スポーツイベントの実態を明らかにした上で、現状抱えている課題であるコ スト、レガシーについて考察する。さらに、アンブッシュマーケティングについて、これまでに実際に行われた 事例を挙げつつ、ビジネスモデルの概要を考察し、アンブッシュマーケティングに対する法規制について触れ る。その後、2014年に開催されたFIFAワールドカップブラジル大会の期間中にスポンサー企業およびアンブッ シュ企業によって行われたテレビCMによる広告マーケティングを、アンケートをもとに評価し考察する。さらに アンケート結果をもとに、ハイブリッド型アンブッシュマーケティングの提案を行い、最後に今後のアンブッシ ュマーケティングの発展性について検討する。
キーワード:アンブッシュマーケティング、スポンサーシップ、スポーツ、ワールドカップ Keywords: Ambush Marketing, Sponsorship, Sports, WorldCup
1. はじめに
オリンピックやFIFAワールドカップに代表さ れるような国際的スポーツイベントは年々、大 会開催規模が拡張されている。と同時に、数多 くの企業がライセンシーとして多額の投資を行 い、スポンサーシップメリットを授かるという ビジネスが成り立っている。そんな中、近年課 題となっているのがアンブッシュマーケティン グである。Tony Meenaghanによれば、公式ス ポンサー以外の企業が、あるスポンサー付きイ ベント活動の主催者に費用を支払うことなく、
そのイベントに関連付けようとするマーケティ ング手法である*1。
2. スポーツスポンサーシップ
スポーツスポンサーシップのはじまりとされ ているのが、1984年に行われたロサンゼルスオ リンピックである。本来オリンピックは公的資 金を用いて大会が運営されていたが、この大会 では開催費用を十分にまかなうことができなか った。そこでオリンピックのもつパブリシティ に注目した当時の組織委員長が、テレビ放映や 五輪マークの使用権などの権利を独占的に認め ることで、企業から資金援助を得るビジネスを 完成させた。
その後、大会の規模がより大きく、人々に与 える影響力が強くなっていった一方で、いくつ
かの課題が生まれた。1つは、高額なスポンサー 料である。今となってはスポンサー料を支払う だけの十分な資金力のある企業でなければ、ス ポンサーとなることが難しくなっている。もう1 つが、スポーツスポンサーシップにおいて企業 側に具体的にどのような効果があるのか明らか になっていないという課題である。また、1業種 1社のみスポンサー契約を結ぶという課題を抱え た今、イベント運営側は、スポンサーとなる企 業を充分に集めることが困難になっている。
そもそもこのような課題が生じているのは、
スポンサービジネスの複雑さゆえである。スポ ンサー契約を結ぶのはイベント運営側と企業で あるが、本来のターゲットはお互いに消費者で ある。つまり、いかに消費者認知を得るかがこ のビジネスの肝である。
図1 スポンサーシップビジネスモデル 1
2 3. 国際的スポーツイベントが抱える課題
オリンピックおよびFIFAワールドカップは、
世界有数の消費者認知を誇るイベントである。
全世界のテレビ視聴者数や、経済効果は他のイ ベントと比べても群を抜いている。そんな中こ れらのスポーツイベントはいくつかの課題を抱 えている。1つは開催コストである。大会の規模 が大きくなるに連れ、開催にかかる費用がかさ むのは当然のことである。そしてもう1つは、
大会開催後のレガシーである。レガシーとはつ まり遺産のことで、大会で使用したスタジアム や公園などが、その後国民の負担となってしま うことを指している。
4. アンブッシュマーケティングとは
アンブッシュマーケティングは「ライバル競 争型」と「イベント便乗型」の大きく2つの種 類に分類することができる*2。スポーツスポン サーシップが確立された1984年ロサンゼルスオ リンピックの時点ですでにアンブッシュマーケ ティングは行われ、それ以降いくつもの企業が アンブッシュマーケティングを行ってきた。
そういった中、アンブッシュマーケティング を法律により規制する動きが活発になってい る。高額なスポンサー料を支払っていない企業 が、イベントのもつ影響力を利用するのは、ス ポンサーとなる企業からしたら不公平だからで ある。しかし、SNS等の発達もありマーケティ ング手法が多種多様化した今、そのすべてを取 り締まることが難しいのが現状の課題となって いる。
図2 ナイキによるアンブッシュマーケティング 5.アンケートによる実態調査
2014年FIFAブラジルワールドカップを研究対 象とし、アンケートをもとに大会期間前および 期間中に行われたテレビCMの認知調査を行っ た。スポンサー企業とアンブッシュ企業両者に ついて比較しながら調査を行った。調査の目的 は、
1)テレビCMがいかに認知されたか
2)CMを見て消費者にどのような心境の変化が生 じたか
3)FIFAワールドカップ公式スポンサーを正しく 認識しているかどうか
以上3点である。
この結果、アンブッシュ企業のCMを見たこと で、大会そのものに対する注目度があがってい ることが明らかになった。また、CMが1番認知 されたのはアンブッシュ企業であるナイキによ るCMであったが、公式スポンサーの誤認識は あまり引き起こされていないことが明らかにな った。
6.おわりに
現状スポンサー企業の「悪」として捉えられて いるアンブッシュ企業は、今後も法による規制が 厳しくなることが予想される。しかし、公式スポ ンサーの資金負担増やアンケート結果を踏まえる と、アンブッシュ企業なくして国際的スポーツイ ベントの存続はないと考える。そこで「ハイブリ ッド型」アンブッシュマーケティングと題し、1業 種多社とのスポンサー契約の締結、公式ライセン スを用いないアンブッシュマーケティングの許容 を提案する。
今後は、複数の企業が一体となって大会を支え ることが必要になると考える。便乗というと悪い 意味に捉えられがちではあるが、言い換えれば協 力でもあり、オリンピックやFIFAワールドカップ といった国際的スポーツイベントだからこそ、ア ンブッシュマーケティングは必要不可欠なのでは ないだろうか。
注釈
*1 Tony Meenaghan, “Point of View:Ambush M a r k e t i n g : I m m o r a l o r I m a g i n a t i v e Practice?”, Journal of Advertising Research, 34(5), pp.77-88
*2 黒田勇他, 『W杯における「待ちぶせ広告」
の意味とその社会的インパクト』, 関西大学,
『社会学部紀要』, 第38巻第1号, p161
図出典一覧 図1 小泉作成
図2 Campaign̲Otaku, http://d.hatena.ne.jp/
y̲sequi/201006