論文内容要旨
論文題名
Safety and Efficacy of Nontuberculous Mycobacteria Treatment among Elderly Patients
(高齢者の非結核性抗酸菌症実臨床における治療の安全性と効果)
掲載雑誌名
Medicina (Kaunas)(Vol.56 No.10 2020年 https://doi.org/10.3390/medicina56100517)
専攻名 内科系内科学(呼吸器アレルギー内科学分野) 内田嘉隆
内容要旨 1200字以内
非結核性抗酸菌感染症(NTM感染症; nontuberculous mycobacterial infection)の罹患者数 は年々上昇し,その多くは高齢者が占めている.臨床におけるNTM感染症の問題として,治療薬 の効果が限定的であること,多剤を長期間の服薬する必要があり副作用の懸念があることなど が挙げられている.NTM 感染症の治療に関わるガイドライン(Treatment of Nontuberculous Mycobacterial Pulmonary Disease: An Official ATS/ERS/ESCMID/IDSA Clinical Practice Guideline)では,適切な治療方針が示されているが,高齢者においては副作用等の懸念から異な った治療方法が行われていることが過去の研究において報告されている.よって,本研究では高 齢者NTM感染症患者における治療の実際,安全性,効果について検討を行った.
2007年1月から2017年12月まで国保旭中央病院で診断された161人のNTM感染症患者の診 療録(患者背景,使用された薬剤,有害事象等),喀痰や血液の臨床検査結果,画像データ(胸 部CTの経時的変化等)を後ろ向きに解析した.最終的に,高齢者で治療を行われた40人の患者 について解析を行った.治療効果の指標として,喀痰培養の菌陰転化を用い,画像所見も参考と した.有害事象の評価のために治療継続の可否や有害事象の有無を指標として用いた.
患者の 60%はガイドライン推奨治療を行われていた.一般的に推奨されていない単剤治療が
22.5%の患者で行われていた.治療継続できた患者は 55%のみであった.治療が継続できなかっ
た患者の44.4%は治療関連有害事象が原因であった.
有害事象の有無で患者背景に有意差はなかった.しかし,治療を12ヶ月超えて可能であった 患者は治療が継続できなかった患者より日常生活動作障害が有意に少なく(13.6% vs 50.0%,
p=0.018),心合併症が有意に少なかった(4.6% vs 33.3%,p=0.033).
喀痰培養における菌陰転化は70%の患者で得られた.陰転化している患者では,喀痰培養陰転 化していない患者と比較してガイドライン推奨治療を行っている患者の割合が優位に多かった
(75.0% vs 25.0%,p=0.005).
高齢者 NTM 感染症患者では日常生活動作や心合併症は治療継続の参考になり,適切な治療を 行うことで高齢者でも治療効果を享受できる可能性が示唆された.