論文内容要旨
論文題名 Expression of matrix metalloproteinase-7 correlates with the invasion of T1 colorectal carcinoma
(大腸癌浸潤先進部における MMP-7 の発現パターンとその臨床病理学 的意義)
掲載雑誌名 Oncology Letters 2017 年 掲載予定
大学院医学研究科 病理系 臨床病理診断学 専攻 漆原 史彦
内容要旨
大腸SM癌は転移の初期段階であり、リンパ節転移との関連について、い くつかのリスク因子が報告されている。しかし、転移過程における機序 は未だに明らかではない。癌の浸潤および転移に関して、マトリックス メタロプロテイナーゼ(MMPs)が近年注目されている。MMPsは細胞外マ トリックスを分解し、癌細胞の浸潤、転移に関与するとされている。な かでもMatrilysin(MMP-7)は分子量最小のMMPsで幅広い基質特異性を持 ち、腫瘍細胞自身が発現しているとされている。MMP-7は様々な癌での発 現が報告されており、特に大腸進行癌において浸潤先進部で頻繁に過剰 発現し、MMP-7の発現が深達度や転移、予後と相関するとされる。しかし 大腸SM癌での報告は少なく、少数例での検討が多い。今回、我々は大腸 SM癌浸潤先進部におけるMMP-7の発現と臨床病理学的因子との関連を明 らかにすることを目的とした。2008年4月から2009年12月の間に、昭和大 学横浜市北部病院で内視鏡的または外科的に切除された大腸SM癌211病 変を対象とし、抗MMP-7抗体(clone, ID-2)を用いて、MMP-7の発現率を 免疫組織化学的に評価し、臨床病理学的因子と比較検討した。さらに、
低真空走査電子顕微鏡法(LV-SEM)を用いて癌浸潤部の微細な構造変化 を観察した。 MMP-7の発現は静脈侵襲と相関していた(p = 0.005)。LV- SEMによる観察では、MMP-7を発現する腫瘍細胞によって侵襲された静脈 において、静脈壁のコラーゲンおよび弾性線維の正常構造が変化・消失 していた。このことはMMP-7が血管の基底膜の主成分であるⅣ型コラーゲ
ンなどを基質としていることに起因すると考えられた。今回の検討で大 腸SM癌の浸潤先進部におけるMMP-7の発現は静脈侵襲と相関し、腫瘍浸潤 において重要な役割を果たす可能性が示唆された。