キーワード:DNA鎖切断、DNA複製、転写、二本鎖切断修復、カンプトテシン 〒812-8582 福岡県福岡市東区馬出3-1-1
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放射線生物研究 46(4),2011 P359 ~ 378
<総 説>
DNA複製及び転写を介したDNA鎖切断:
トポイソメラーゼI阻害剤とDNA損傷応答
九州大学 先端融合医療レドックスナビ研究拠点 先端がん診断・創薬グループ 逆井 良
1.序論
遺伝情報物質DNAは、ヒストン八量体に巻き付く形でヌクレオソーム構造をとり、さらにヌ クレオソームが連なりクロマチン構造を取ることで、非常にコンパクトに核内に納められている。
一方で、遺伝情報が転写・複製される際には、この複雑な構造体を緩ませ、DNAの二本鎖がほ どかれなければならない。また、ヒストンやDNA自体も修飾を受け、DNAは非常にダイナミッ クに変動する環境に晒されている。さらにDNAは、これらのDNA代謝に伴う複雑な制御に加え、
遺伝情報自体を脅かすDNA損傷のリスクに常にさらされている。しかし細胞は、DNA損傷に対 して、DNA損傷を未然に防ぐ、生じてしまった損傷に対しては、細胞周期を止め損傷を速やか に修復する、そして、多細胞生物に至ってはDNA 損傷の程度が修復能力を超えた場合にアポトー シスを引き起こし自殺するという、段階的な防御機構を備えている事はよく知られている事であ る。また、DNA損傷の種類は多岐にわたるが、細胞はそれぞれのDNA 損傷に対応した修復系を 持ち、さらにその一部は機能的に重複している。この非常に洗練された防御機構がひとたび破綻 した際には、細胞はDNA損傷に脆弱となり、ゲノムの安定な維持に歪みが生じる。結果、様々 な疾患を引き起こし、その多くは高発ガンというリスクを伴う。したがって、DNA損傷応答・
修復遺伝子の多くは、がん抑制遺伝子として認知されている。一方で、上述したようにDNA損 傷は細胞死を誘導する作用も持つ。人為的にDNA損傷を引き起こす事で、効率的にがん細胞を 殺す効果を狙った治療が、放射線治療やDNA傷害性抗がん剤を用いた化学療法である。DNA傷 害性抗がん剤も様々あるが、その標的の多くはDNA複製である。つまり、がん細胞のように増 殖を繰り返す細胞に対して効率的に作用し、細胞死を誘導する。本稿では、抗がん剤カンプトテ シン(camptothecin: CPT)によって引き起こされるDNA損傷とその細胞応答について、我々の 研究結果も合わせて紹介する。
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