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プラスチックカップの圧縮成形解析と成形荷重の低 減に関する研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

プラスチックカップの圧縮成形解析と成形荷重の低 減に関する研究

鷲﨑, 俊朗

https://doi.org/10.15017/1500687

出版情報:Kyushu University, 2014, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

平成27年3月

九州大学大学院 工学府 鷲﨑 俊朗

「プラスチックカップの圧縮成形解析と

成形荷重の低減に関する研究」

(3)

プラスチックカップの圧縮成形解析と 成形荷重の低減に関する研究

目次

第1章 序言

   1.1 本研究の背景   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1    1.2 既往の研究   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5    1.3 本研究の目的   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10    1.4 本論文の構成   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

第2章 カップ成形品の圧縮成形解析

   2.1 緒言   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12    2.2 解析モデル  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14    2.3 境界条件  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15    2.4 樹脂データ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16    2.5 操作条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17    2.6 解析方法

 2.6.1  メッシュ再生成  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 2.6.2  成形荷重の算出   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

 2.6.3  解析結果       

 2.6.3 .1   せん断応力の成形荷重への影響   ・・・・・・・・・・ 22  2.6.3 .2   粘性発熱の考慮   ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23  2.6.4  圧縮成形解析の精度  ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

   2.7 成形品形状の成形荷重への影響    

2.7.1  解析に用いるカップ成形品の形状  ・・・・・・・・・・・ 28 2.7.2  側壁部厚みの成形荷重への影響  ・・・・・・・・・・・・ 30 2.7.3  容器高さの成形荷重への影響  ・・・・・・・・・・・・・ 31 2.7.4  初期溶融体(円柱塊)形状の影響  ・・・・・・・・・・・・ 32 2.7.5  溶融体樹脂量の成形荷重への影響  ・・・・・・・・・・・ 33 2.7.6  側壁部の傾斜、底部のコーナー部丸みの成形荷重への影響   34    2.8 成形条件の違いによる成形荷重への影響

   2.8.1  成形条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36    2.8.2  圧縮速度の成形荷重への影響  ・・・・・・・・・・・・・ 37    2.8.3  金型温度と金型から樹脂への熱伝達係数の成形荷重への影響  39    2.8.4  圧縮開始までの時間の成形荷重への影響  ・・・・・・・・ 40    2.8.5  金型表面での樹脂の滑りの成形荷重への影響  ・・・・・・ 42    2.9 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

第3章 厚み分布を有する初期溶融体の圧縮成形解析

   3.1 緒言   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46    3.2 厚みが一定のシートの圧縮成形 ・・・・・・・・・・・・・・ 46    3.3 厚み分布を有する初期溶融体の圧縮成形

3.3.1  外側が厚く内側が薄い厚み分布を持つ初期溶融体の成形 ・・ 48 3.3.2  外側が薄く内側が厚い厚み分布を持つ初期溶融体の成形 ・・ 50 3.3.3  中間部が厚い厚み分布を持つ初期溶融体の成形 ・・・・・・ 51 3.3.4  中間部が厚く連続的に厚みが変化する初期溶融体の成形 ・・ 53    3.4 最適な厚み分布を持つ初期溶融体の形状 ・・・・・・・・・・ 55    3.5 ブランク抑えを用いた圧縮成形 ・・・・・・・・・・・・・・ 60    3.6 新規成形法による成形荷重の低減 ・・・・・・・・・・・・・ 62    3.7 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66

(4)

第4章 カップ成形品の圧縮成形実験による検証

   4.1 緒言   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67    4.2 実験材料       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67    4.3 カップ成形品の圧縮成形実験   ・・・・・・・・・・・・・  

4.3.1 実験装置  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68 4.3.2 初期溶融体の作成  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73 4.3.3 実験方法  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74    4.4 結果と考察  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74    4.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 78

第5章 総括

   5.1 まとめ     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79    5.2 本研究の成果  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80    5.3 今後の展望  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82

謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 83

(5)
(6)

 

(7)

第1章 序言

1.1 本研究の背景

近年、経済産業省の生産動態統計調査(1)によると、国内のプラスチックの平成23 年度生産量は、フィルムが年間215万トン、フィルム以外は数十万トンである。フィ ルム以外の中で包装容器については、平成12年度が約46万トンであるのに対して、

平成23年度は86万トンと急激に増伸している。包装容器では接着材として使われる エポキシ樹脂、ペットボトルの材料であるポリエチレンテレフタレート、洗剤ボトルの ポリエチレン、ペットボトルのキャップのポリプロピレン、ウォーターボトルのポリカ ーボネートなど多くの樹脂が使われている。包装容器は、大量に生産することで単価が 下がり、市場で流通し消費されている。大量生産方式の一つとして射出成形法が挙げら れる。射出成形法は、溶融した樹脂を金型の中に射出して保圧、冷却して賦形する成形 方法であり、成形品の寸法精度、成形安定性において高い信頼性を持つ成形方法である。

生産性を上げるために多数個取りや、ホットランナーを用いたランナーレスで成形され ている。ペットボトルは射出成形により成形されたプリフォームを高圧エアーによりブ ロー成形することによって所定の形状に賦形される。プリフォームを成形する射出成形 機及び金型について高い技術を持ち、世界的に高いシェアを誇る会社として Husky 社(2)

がある。また、射出成形技術において、二色成形技術や発泡成形技術を有する射出成形 機及び金型を販売している Battenfeld 社(3)が良く知られている。

一方、圧縮成形はガラス食器にみられる様に、古くはコップ、皿、鉢など比較的肉厚 な製品の成形に利用されてきた。溶融したガラスを生成するまでの過程(4)Fig.1-1に 示す。溶融したガラスは、フォアハウスと呼ばれる一定温度に調節された空間で長時間 プールした後、ゴブ(溶融体の塊)をつくるフィーダー装置に送りこまれる。チューブ とプランジャー、オリフィス、シャーから構成されるフィーダー装置では、プランジャ

(8)

ーの上下の運動により、ガラスがオリフィスから押し出され、シャーで切断されて1個 のゴブがつくられる。

溶融したガラスからコップやビール瓶を製造する過程をFig.1-2に示す。1 個のゴブ の重量は、オリフィスの量で調節される。ゴブは、スロートを通って金型内に落下し、

その後、プランジャーが下降してプレス成形が行われる。冷却後に製品を型からエジ ェクトすることで成形品が取り出される。

Fig.1-2 Compression process of cup made of glass(4) Fig.1-1 Feeding process of glass’s gob(4)

(9)

フォアハウスでのガラスの溶融は高粘度の溶融したガラスに含まれる気泡とひずみ を除去するためである。圧縮成形は古くからコップやビール瓶の成形に使われているが、

プラスチックへの応用はそれほど多くはない。以前に、圧縮成形がプラスチックに応用 された例として、ペットボトルのポリプロピレン製キャップがある。押出機から押出さ れたポリプロピンを切断し、金型上に移送して金型にて圧縮成形している。

圧縮成形がキャップの成形に用いられた理由の一つは、圧縮成形がひずみの少ない成 形方法であることである。樹脂の混練、溶融と押出が押出機のみで行えることから、安 定した成形が可能である。また、金型は樹脂のランナーを考える必要がなく、金型構成 が比較的シンプルである。複数の押出機による多層化への拡張も可能である。

押出機より押し出された樹脂を切断して金型の所定の位置に載置した後に圧縮成形 が実施される。プラスチックの圧縮成形を安定して実施する為には、四つの課題がある。

第一に、樹脂の切断が安定して行われる必要がある。切断の安定性とは、切断に用いる 治具は冷却水を流して温度を低く保っていても、動作が連続して行われると温度が上が り、樹脂が切断できなくなったり、切断後の個体間の重量のバラツキが大きくなること である。個体間のばらつきは、成形品の厚みや形状に大きく影響する。第二に、金型上 に載置された樹脂の形状、姿勢、位置により、圧縮成形後に成形品に偏りや偏肉が発生 することである。更に金型に樹脂が載置してから圧縮が開始されるまでの時間が長いと 樹脂は自重により変形を起こすこともある。第三は、押出機から吐出した樹脂を切断す る時に生じた切断跡や移送時の金型への付着跡が、成形品に残る場合があることである。

切断する部材や移送時の部材は、溶融体が離型しやすい様に冷却されることが多いが、

溶融体が接触した箇所の表面に何らかの跡が残る可能性がある。第四は、成形荷重の問 題である。圧縮成形を用いて成形している容器として、Fig.1-3(a), Fig.1-3(b)に示す容器 がある。それぞれ、成形荷重に数十トンを要しており、成型機械が巨大化して生産性が 上がらない問題がある。また、昨今、容器の軽量化が進み、容器の厚みがより薄くなる

(10)

傾向があるが、厚みが薄くなると成形荷重が大幅に上がり既存設備での成形が難しい場 合が発生する。以上より、成形荷重の低減は大変重要な問題である。

溶融体を圧縮成形して容器に成形するまでの過程で生じる問題に対して、問題が生じ るメカニズムを考えて対策を考案する必要がある。これまでは、このメカニズムの解明 のために実験主体で取り組んできたが、成形品の形状や条件が変わるたびに、多くの試 行錯誤を繰り返す必要があった。プラスチックの成形工程は 高温高圧にて行われるた め、成形条件の実験的な検討には多大な時間とコストを要する。また、いったん設定し た条件は、変動することもあり、適切に変更することが必要である。しかし、成形の挙 動が、必ずしも理論的に把握できていないことが多い。

理論的に把握する有効な一つの方法として、コンピュータシミュレーションの利用が ある。パラメータ変更による多様なケーススタディでは実験のみでは得られないメカニ ズムの解明が期待される。さらに、将来的には実験現象の再現からシステムの構築へ、

更には、成形開発の短縮、低コスト化に繋げていくことが期待される。

(a) Example of high tool cup (b) Example of wide mouse cup

Fig.1-3 Cross section of commercialized cup

厚み 1mm

径 62mm

98mm

径 92mm

64 mm

0.5 mm 高さ

高さ 厚み

(11)

1.2 既往の研究

圧縮成形を利用して多くの成形品が作られてきたが、圧縮成形の数値解析においては、

平行平板に挟まれた流体の研究、即ち、スクイズフィルムの研究がほとんどであり、カ ップ形状や側壁のある形状についての研究報告はほとんどない。また、樹脂の冷却固化 や成形荷重が原因による成形の可否が解析で論じられた例はない。

圧縮成形解析における成形荷重、粘弾性に関する研究について、以下に説明する。平 行平板のスクイズフィルムは、流体潤滑技術の中で大変重要な問題である。流体が機械 の隙間に存在することで、流体に高い圧力を発生させることで摩擦なく機械を支持する 機構は、流体ベアリングやオイルシールなどの多くの分野で応用されている。理論的な 解析も、レイノルズの式に代表される様に多くの研究例がある。

Tanner ら(5)は、平行平板のスクイズフィルムの流れにおいて、Maxwell モデルを用い た構成方程式、(1-1)を用いた。

S+λ(∂S+u・∇S-LS-SL)=2ηD (1-1) S : 余剰応力テンソル L : 速度勾配テンソル

λ : 緩和時間 D : ひずみ速度テンソル η : 粘度 u : 速度ベクトル

2次元と軸対称モデルのそれぞれにおいて、平行平板が下降する速度を関数で与えた 時の慣性と粘弾性の効果をレイノルズ数 Re とワイゼンベルグ数wiによる微分方程式 で表現した。荷重についての摂動解としてレイノルズ数Reとワイゼンベルグ数をwi 1次の項まで解析解を求めた。以下に示す(1-2)は軸対称モデルでの規格化された荷重 ωの例である。

+

= Ο Re2,Rewi,wi2

14Η2 Η2 15 Η 5

Η Re 3 Η3

6 Η Η4 Η2 5 wi 42 Η3 6 Η

ω &

&

&&

&&

&

&

(1-2)

T

(12)

Hは規格化されたフィルムの厚みを表わしており、wiをゼロにすると、(1-2)は、

Kuzuma(6)および Jones と Wilson(7)の式に帰結される。Η& 、Η&&の項の係数がマイナスな ので、速度Η& が大きいと荷重は増大する。慣性及び粘弾性の項の係数がともにマイナ スなので荷重に対して負に働くことがわかる。

Lipscomb ら(8)は、粘性プラスチックとしてビンガム流体を用いた場合のスクイズ流れ を研究している。流体をスクイズする時にせん断と非せん断の領域が発生するという考 えをビンガム流体で表わすことで、押圧力により誘起されスクイズされる流体の速度が 得られる。

Törnqvist ら(9)により、Fig.1-4 に示す様にガラス材入り熱硬化性樹脂(複合材料)

の非等温の圧縮解析が研究されている。

非等温のスクイズ流れを圧縮前、圧縮、流れという3つのフェーズに分けて、以下の 仮定を設定して考察している。圧縮前のフェーズでは、変形はせず、金型からの冷却に より温度が変化する。圧縮のフェーズでは、一定の割合で厚みが変わる。流れのフェー ズでは、押しつけられた応力により流れが生じる。流れのフェーズでは、温度を関数と する粘度、厚みと厚みの時間的な変化率を関係づけた応力に関する微分方程式を、有限 差分法を用いてニュートン・ラプソン法で解き、厚みと応力の関係を求めている。実験 では、圧縮前、圧縮、流れの各フェーズでの温度の変化が測定されている。温度分布が

Fig.1-4 Example of non-isothermal analysis of compression molding for glass mat composites (9)

(13)

下側の金型からの冷却により、厚みの中心に対して上下で非対称になることが指摘され ている。荷重がより大きくなると、流れが誘起する大変形が発生し、溶融体の温度が急 速に低下するという結果が得られている。

Lee ら(10)による平行平板間の粘弾性の圧縮流れの研究の模式図を Fig.1-5 に示す。

Tanner らが示した(1-1)と同じ Maxwell モデルを用いており、上側ディスクが受ける荷 重を求めることで、樹脂の粘性や伸長粘度の測定のもとになるデータが得られている。

Debbaut(11)は、粘弾性流体の平行平板間の非等温スクイズ流れの解析を行った。有限 要素メッシュを幾何学的に配置することで積分点のリロケーティングを行い、リメッシ ュせずに圧縮解析を行っている。ここで用いられた内点のリロケーティングのテクニッ クは Berghezan ら(12)によって開発されたとされており、これによって圧縮された時に 要素が潰されるのが避けられている。ニュートン流体のスクイズの過程での温度分布の

結果がFig.1-6 に示されている。温度が一部上昇するのは壁面でのせん断による発熱で

ある。

Fig.1-5 Schematic diagram of compression flow experiment by LEE(10)

(14)

Debbautは、更に、粘弾性流体としてOldroyd流体を用いて非等温解析を実施して、成 形荷重と緩和時間との関係を求めている。論文中に示された荷重変化をFig.1-7に示す。

粘弾性が大きくなれば成形荷重が減少することがFig.1-7から分かる。

Fig.1-6 Temperature evolution in squeezing process for a Newtonian liquid by Benoit Debbaut(12)

Fig.1-7 Molding force for isothermal squeeze flow for a viscoelastic liquid Time (s)

(15)

また、成形開始前に樹脂にマーカーを挿入し、圧縮過程のマーカーの動きを観察した 結果、流動先端の自由表面の部分に Fig.1-8 に示す様に、中心から放射状に流れるファ ウンテンフローに似た流動が観察されている。

今井ら(13)は、繊維充填複合材料の圧縮成形において、繊維配向を数値解析により求 め、圧縮された樹脂の層の位置により、配向の様子が異なること明らかにした。解析モ デルと配向の結果をFig.1-9に示す。

Fig. 1-8 Tracking of fluid motion in non-isothermal squeeze flow of viscoelastic fluid between infinite plates by Benoit Debbaut(12)

(16)

1.3 本研究の目的

圧縮成形の数値解析の研究の多くは、平行平板の圧縮の研究であり、カップ成形品の 圧縮成形の数値解析と成形荷重の考察はほとんど報告されていない。本研究では、メッ シュの自動生成と適切なメッシュサイズの設定を市販の熱流動解析ソフトウエア-に 組み込むことで、カップ成形品の圧縮成形解析を可能にし、成形荷重の検討を行うこと を目的とする。まず、初期溶融体を円柱塊として、容器の形状、円柱塊の形状、圧縮成 形の操作条件により成形荷重が低減できないかを検討する。次に、初期溶融体の形状と 圧縮成形品との関係、成形荷重の低減の可能性について検討する。最後に、数値解析に よって得られる溶融体の形状と成形方法を用いて、成形荷重が低減できるか実証する。

Fig. 1-9 Fiber orientation of fiber reinforced polymer in compression molding by Imai and Nakamura(14)

(17)

1.4 本論文の構成

第1章では、研究の背景、意義、論文の内容と既往の研究について解説し、本研究の 目的、位置付けを明確にする。

第2章では、メッシュの自動生成と適切なメッシュサイズの設定を組込んだカップ成 形品の圧縮成形解析の開発と成形荷重の検討を行う。特に、初期溶融体を円柱塊として、

容器の形状、円柱塊の形状、圧縮成形の操作条件により成形荷重が低減できないかを検 討する。

第3章では、圧縮成形の成形荷重低減について有効な方法を検討する。特に、圧縮成 形前の初期溶融体の形状の影響について数値解析によって検討し、最適な初期溶融体形 状を求める。

第4章では、第3章で求められた初期溶融体形状の成形荷重の低減に対する有効性を 実際の圧縮成形によって検証する。

第5章では、本研究全体についての総括を行い、更に、本研究の成果と今後の展望に ついて説明する。

(18)

第2章 カップ成形品の圧縮成形解析

2.1 緒言

圧縮成形は、上下の金型で溶融樹脂体を圧縮した後、固化させ、成形品を取出すこと で比較的簡便に製品を得る成形方法である。圧縮成形はペットボトルのキャップの様に、

形状が複雑で肉厚の薄い部分がある成形品にも利用されている方法である。圧縮成形方 法によるプラスチックのカップ容器の成形工程をFig.2-1 に示す。

Fig.2-1 Cup produced by compression molding

Swell & Drawdown

Compression Cutting

Through down into the cavity Extruded resin

Cavity mold

Melted resin

Core mold

Cavity mold Cutter

Melted resin

(19)

カップ容器を成形するまでの工程は以下のとおりである。1)押出工程:押出機から 樹脂を連続的に吐出する。2)カッティング工程:溶融した樹脂を切断する。3)搬送 工程:キャビティ金型の中へ切断された樹脂を搬送する。4)圧縮工程:コア金型の下 降により樹脂が圧縮されて成形品の形状に賦形され、一定時間後に型から取り出される。

第1章の既往の研究で示した様に、これまでの圧縮成形に関する研究は上下の金型が 平行平板である場合が殆どであり、底部、側壁部、フランジ部を持つカップ成形品の圧 縮成形に関する研究はあまり報告されてこなかった。

溶融体はコア金型の下降により圧縮を受けて、コア金型の中央から円周方向に広げられ ていく。コア金型からはみ出した樹脂は側壁を通過するが、カップ成形品の側壁部では圧 縮と同時に金型の移動によるせん断を受ける。側壁部では、平行平板の押付けでは発生し ない、金型が移動する向きと反対方向の樹脂の流れがある。側壁部を通過した後の樹脂は、

フランジ部で再び圧縮を受ける。底部、側壁部、フランジ部を有するカップ成形品を解析 対象とすることは、形状の多様性はあるが、多くのカップ成形品に対する圧縮成形の本質 は失われないと考えられる。

本章では、基本的な形状のカップ成形品の圧縮成形解析を用いて、容器形状、初期溶融 体の形状、物性データや成形の操作条件などの成形荷重への影響を調べた結果を述べる。

(20)

2.2 解析モデル

解析モデルは、鉛直軸と水平軸を持つ2次元軸対称モデルとする。圧縮成形の対象と する成形品の形状は、底部、側壁部、フランジ部からなるカップ形状とする。金型は、

静止しているキャビティ金型(Cavity mold)と下降するコア金型(Core mold)から構 成される。キャビティ金型とコア金型の間に載置された溶融体を圧縮してカップ形状に 成形する。解析モデルの模式図をFig.2-2に示す。

数値解析には、汎用樹脂流動解析プログラム Ansys polyflow (version 15 (2014) Ansys Japan ltd.)を用いた。解析に用いた仮定は以下のとおりである。

① 圧縮成形に用いる金型は剛体で、金型及び金型表面の温度は一定とする。

② 金型を溶融体に押圧した時の金型から溶融体への熱伝達係数は、押圧力によって変 化せず一定とする。

③ 溶融体は非圧縮、純粘性非ニュートン流体である。

④ 溶融体と金型の間の滑りについては下記の(2-1)に基づく境界条件を考慮する。

Sc  V) - Vw (

w=

τ

Core mold

Fig.2-2 Schematic diagram of molds and initial melted resin

28

Φ30 11

Core mold

Cavity mold

Unit:mm Initial Melted resin

r z

(2-1)

(21)

τw

以上の仮定に従い、円筒座標系の連続の式を(2-2)、運動方程式を(2-3) (2-4)、エネ ルギー方程式を(2-5)に示す。

r z

r r r C 1

r z r z

r z r r z 0 rV V r r 1

2 2

zz rz z

rz rr

z r

Dt   D

             

                

+1 Dt  

DV

r   r

+1 Dt  

DV

  

+

=

+

=

+

=

= +

Τ κ Τ

ρ Τ

τ τ ρ Ρ

τ τ Ρ τ

ρ

Ρ

θθ

) (

) (

) ( )

(

ここで、V、Vzはそれぞれrz方向の流速の成分、Ρ は静水圧力を表している。τrr

τrz、τzzは、それぞれ応力テンソルの成分である。ρは密度、CΡは定圧比熱、κは熱伝導率、

Τ は溶融体の温度を表す。

2.3 境界条件

解析モデルの境界条件をFig.2-3に示す。Fig.2-3おいて、コア金型と樹脂が接触する 境界をBS1、樹脂の自由表面の境界をBS2キャビティ金型と樹脂の接触する境界をBS3 で表す。

Fig.2-3 Boundary conditions of numerical analysis model

BS1 Core mold

BS2 BS3

Cavity mold

(2-2) (2-3)

(2-5)

Initial Melted resin

(2-4) :せん断応力、 Vw:壁面の速度、 V:流体の速度、 Sc:滑り係数

(22)

Fig. 2-3に示す境界における熱伝達係数を Table 2-1に示す。コア金型から樹脂、空気から

樹脂、キャビティ金型から樹脂への熱伝達係数BS1、hBS2、hBS3 を文献(14)を参考に下記に様に 与えた。熱伝達係数の影響を調べるために値を変えて成形荷重への影響を調べた。

2.4 樹脂データ

樹脂は(株)プライムポリマーのプライムポリプロピレンのランダムポリプロピレン B251VT を用い、キャビティ金型に載置した時の樹脂温度 200℃(実測)を基準とした。

樹脂粘度はキャピラリーレオメーター(キャピログラフ B1、東洋精機(株)製)を用 いて測定した。計測した粘度データをFig.2-4に示す。

粘度データに基づいて(2-6)、(2-7)の アレニウス型の温度依存性を持つ Cross モデ ルを用いてフィッテングを行い、モデルパラメータを係数を Table 2-2 に示すように決

Viscosity (Pa s)

Shear Rate (1/s) 10 1

10 2 10 3 10 4

1 10 100 1000 10000

10 0 10 Cavity mold

10 2 10 4

180 ℃ 220 ℃

Fig.2-4 Shear rate dependency of viscosity

10

200 ℃

BS1

1.0 ×103

(W/m2 K) BS2 (W/m2 K) BS3 (W/m2 K) 1.0 ×101 1.0 ×103

Table 2-1 Heat transfer coefficients for boundaries

(23)

定した。

樹脂の熱伝導率κ、密度ρ、比熱Cp は文献(15)からTable 2-3 に示す様に設定した

2.5 操作条件

金型の下降速度は実験データを基に算出して時間に対して(2-8)に示す式にて近似し た。圧縮開始時の金型の初速はV0, 、圧縮開始からの時間をtで表わしている。下降速度 のパラメータをTable 2-4に示す。

V = V 0 ( a + b t + c t 2 )

また、空気、コア金型、キャビティ金型の温度は、それぞれTair TcoreT cavity

で表し、Table 2-5で示す成形実験の条件を用いた。

      n  

   

・          

T)

       

・    

     

) (

) ( , (

γ λ Τ η

γ η

+

= 1

0

)) ( exp(

) ( )

( 0 0 0

0T =η T α× TT

η   

(2-6)

0.298×10-1 0.627

Table 2-2 Parameters of viscosity model

-0.380×10-1 0.204×103

(2-8)

a (-) b (s-1) c (s-2) -10.586 1.0 -1.20 -42.47

V0 (cm /s)

Table 2-4 Velocity index

κ Cp

0.2 0.9 0.15×104

ρ

(W/m K) (g/cm3) (J/kg K)

Table 2-3 Material parameters

air

25

(℃) Tcore (℃) T cavity (℃)

15 15

Table 2-5 Temperature of mold and air

n(-) α (1/K) T(K) (2-7)

λ (s)

η0(T0) (Pa s) 0.127×104

(24)

2.6 解析方法

2.6.1 メッシュ再生成

汎用樹脂流動解析プログラム Ansys polyflow に自動でメッシュを再生成する機能が ある。圧縮成形解析の際に、成形が進むにつれて被圧縮体のメッシュが潰れて計算が不 可能になってくるため、計算の途中でメッシュサイズを小さいサイズに修正しながら、

メッシュを再生成する必要がある。メッシュの再生成をする場合としない場合について、

計算過程のメッシュを Fig.2-5 に示す。Fig.2-5(a)に示す様にメッシュを再生成しないで 計算を進めた場合、圧縮されている所と圧縮されない所でメッシュのサイズが異なって くる。また、圧縮されることで、メッシュの形状が潰れてきて計算が収束しづらくなっ てくる。

(a) Without mesh repairing

(b) With mesh repairing

Fig.2-5 Difference of mesh pattern between numerical simulations of compression with and without mesh-repairing

(25)

Ansys polyflow のプログラムは計算の収束が難しくなると計算を収束させようと時 間ステップを自動的に小さくする。Fig.2-5(b)に示す様にメッシュの再生成を行うことで 計算の安定性が増し、より薄い肉厚まで圧縮成形解析が可能になる。圧縮成形解析が進 み、底部及び側壁部の厚みが小さくなるにつれて、メッシュサイズを変更する必要が生 じる。メッシュの再作成の際にメッシュサイズを変更しないで計算を進めた場合とメッ シュサイズを計算のステップごとに逐次修正しながら計算した場合の計算の途中の結

果をFig.2-6に示す。メッシュサイズを変更しない場合をFig.2-6(a)に、メッシュサイズ

を変更した場合をFig.2-6(b)に示す。

解析にはラグラジアン法を用いているため、圧縮に伴って自由表面BS1が金型間を進 行する。メッシュサイズが粗いと、自由表面の形状が少ないメッシュで構成されるので 自由表面の移動が不安定になる。一方、メッシュサイズが細かすぎると、自由表面の形 状が多くのメッシュで構成されて精度が上がるが、計算時間が掛かる。このことから、

圧縮成形解析の過程で、メッシュを再生成しながら、適切なメッシュサイズを設定する Fig.2-6 Difference of mesh pattern between mesh-repairing scheme

with and without mesh-resizing

(b)Remesh and resize model (a)Remesh model without resize

(26)

ことが重要である。

計算を実行する際に適切なメッシュサイズを設定する方法(フロー)を検討した。この 計算手法を簡単に表したものを Fig.2-7 に示す。圧縮成形時の溶融体の形状を出力(パ トラン形式)し、厚みを考慮して新たに設定したメッシュサイズにてメッシュを再生成 した後に、新しい節点と要素に変更前の要素の計算結果をマッピングして、時間を修正 して圧縮成形を再スタートする手法である。

Fig.2-7 Mesh-repairing scheme with adequate remesh size

* GAMBIT is mesh software produced by ANSYS Output the shape of compressed body

(PATRAN Format)

Rebuild the mesh of the new size by GAMBIT* Determine the mesh size by considering the thickness of compressed body

Mapping the results to new mesh Ansys polyflow program

Output the results

(PATRAN Format)

(27)

メッシュサイズを適宜変更する手順は、以下の点で有効な手法である。第一に、収束 が難しくなってきているかをチェックできる。第二に、メッシュ再生成の際にメッシュ サイズを修正できる。第三に、金型が受ける荷重を溶融体の圧力とせん断応力から計算 できる。荷重を求めることによって荷重一定の圧縮解析が可能になる。第四に、樹脂の 粘弾性物性を考慮した圧縮成形解析など、収束が難しい問題に対して、収束し易いメッ シュサイズやメッシュの再生成の検討をすることができる。

2.6 .2 成形荷重の算出

溶融体を圧縮する過程で溶融体の厚みが薄くなるにつれて溶融体に高い圧力が発生す る。成形荷重は溶融体から受ける金型への圧力と金型と樹脂の間のせん断応力の壁面に 作用する力を積算して求める。解析結果から成形荷重を算出する方法を説明する基本図 をFig.2-8に示す。

溶融樹脂に接するコア金型の表面をFig.2-8に示す様に線分OX1 X1X2X2X3 Fig. 2-8 Model to calculate the forming load

P1

P2 (x2,y2)*

*

P

(x1,y1)

*

(x3,y3) Core mold

Cavity mold O

O’ X’

Melting regin S

S

(28)

示す。また、キャビティ金型はフラットな平面としてO'X' で示す。溶融体はコア金型 とキャビティ金型の間に挟まれ、コア金型の下降に伴って外周部へ押し出され、その時 に溶融体には圧力分布が発生する。Fig.2-8において、溶融体の圧力をそれぞれP0 、P1 、 P2 に示す。溶融体の圧力はコア金型の壁面に垂直に作用する。コア金型が受ける荷重は、

溶融体から受ける圧力とコア金型(壁面)と樹脂の間のせん断力の壁面に作用する力の 和の積分により求めることができる。

2.6.3 解析結果

2.6.3.1 せん断応力の成形荷重への影響

解析の条件に基づいて、Fig.2-9 に示すような簡単な形状にて、溶融塊の圧縮成形解 析を施行した。カップ形状の樹脂体を圧縮成形解析してカップを成形する途中(金型間 の距離が 2.18mm)の解析結果をFig.2-9 に示す。Fig.2-9 は、それぞれ(a)速度分布、(b) せん断速度(c)圧力分布を示している。底部の中央部は速度が小さく側壁部の速度が大 きくなる。底部の中央部の樹脂は圧縮変形を受け、側壁部分の樹脂はコア金型が動くこ とにより速度が大きくなり伸長変形を受ける。

(a)Velocity profile

cm/s Φ50

Φ45

2.18

(b)Shear rate profile Fig.2-9 Numerical result of compression analysis

(c)Pressure profile

1/s Pa

16

(29)

Fig.2-9 (b)のせん断速度は壁面近くで最大でも 103(1/s)である。壁面の近傍では、壁 面に垂直方向の速度変化はさらに小さくなる。溶融体の粘度は、Fig.2-4 より 102 Pa s であるので、それがすべて伸張に作用したとしてもせん断により壁面が受ける荷重は最 大でも 105 Pa と分かる。一方、Fig.2-9 (c)の圧力分布から、流体の圧力は 107 Pa 程度で ある。このことから、壁面の受ける荷重は、流体からの圧力による荷重の方がせん断応 力により壁面が受ける荷重より、はるかに大きいことが分かった。

本報告では、樹脂を純粘性非ニュートン流体と仮定している。粘弾性流体解析が可能 であれば、壁面での樹脂の法線応力による荷重の増減が見込まれ、実現象に近い結果が 得られる。しかしながら、粘弾性流動の解析は収束させることが難しく、今後に取り組 む課題としたい。

2.6.3.2 粘性発熱の考慮

解析において、粘性発熱を考慮した場合と考慮しない場合の検討を行った。解析のモ

デルは、Table 2-6case-1を用いた。圧縮成形の途中(中央でのコア金型とキャビティ

金型の距離が 2.85mm)の温度分布および圧力分布の結果を Fig.2-10 に示す。また、圧 縮時の中央でのコア金型とキャビティ金型の距離と成形荷重の関係をFig.2-11に示す。

(30)

(1)Temperature profile (2)Pressure profile

Φ50 Φ48

2.85

Pa

Fig.2-10 Difference between considering with and without viscous heating by numerical result of compression analysis

(a)Considering without viscous heating

(b)Considering with viscous heating

(1)Temperature profile (2)Pressure profile

2.85

(31)

Fig.2-10(a)の温度分布では、樹脂がキャビティ金型から冷却され、底部はコア金型に 近い方が温度が低くなっている。粘性発熱を考慮した方は、コア金型に近い部分で温度 が高いことが分かる。Fig.2-10(b)の圧力分布から、温度の上昇により圧力の高い部分の 広がりが狭くなっている。しかし、Fig.2-11 の圧縮時の中央でのコア金型とキャビティ 金型の距離と成形荷重の関係からは、粘性発熱を考慮した影響が成形荷重には現れなか った。理論上は、粘性発熱を考慮すべきという考えがあるが、解析の仮定でコア金型と キャビティ金型の表面の温度を一定、金型から樹脂への熱伝達係数を一定としているこ とから樹脂の温度を高く見積もることになるので、本報告では粘性発熱を考慮しないで 解析を行った。

Distance at the center from core to cavity mold (cm)

Fig.2-11 Forming load of cup in the case of considering with and without viscous heating

0.0 20.0 40.0 60.0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Forming load(KN)

Considering with viscous heating

Considering without viscous heating

(32)

2.6.4 圧縮成形解析の精度

数値解析結果の精度を確認するために、カップの圧縮成形の成形荷重について数値解 析結果と実験値を比較した。対象とするカップはフランジ部を持つ市販の2次元軸対称 のカップ形状である。成形に用いた金型および初期溶融体をFig.2-12 に示す。上型は、

一定速度 10cm/s で下降させた。解析では、初期溶融体は球体(半径 1.47cm,粘度一定)

として設定した。また、金型表面での樹脂の滑りは無しとした。カップ成形品は、径が フランジを含めて 9.5cm、高さは底からフランジ部まで 6.2cm である。樹脂は日本ポリ プロ(株)製ポリプロピレン EA9H(粘度 250Pa s、熱伝導率 0.2W/m K 、比熱 1500J/kg K)を用いた。

数値解析および実験より得られた成形荷重をFig.2-13に示す。Fig.2-13では、縦軸に 成形荷重、横軸にコア金型とキャビティ金型の距離を表している。解析結果と実験結果 は、おおむね一致しているが、厚みが 2mm 以下で実験結果に比べて解析結果の方が荷重 が高くなっている。理由として、以下の二つの理由が考えられる。

Fig.2-12 Configuration of molds used in the simulation and experiment

Upper mold

Initial resin’s shape

Lower mold

Φ9.5

6.2

(33)

第一の理由は、第 1 章の既往の研究の中の Törnqvist ら(9)による論文でも示されて いる様に、溶融体から固体へ移り変わる状態を粘性流体で扱うことの問題である。流体 の粘度を測定できる樹脂粘度カーブから溶融温度以下の温度の粘度を外挿して与えて いる。数値解析では、溶融温度以下になった時に大きな粘度を与える方法がある。本報 告の圧縮成形は、非常に短い時間で完了したことから、固体時の粘度が無限大になる様 に設定している。

第二の理由は、温度が低い溶融体の表面は樹脂の熱伝導率が低く、溶融体の内部は温 度が高いままであると考えられる点である。すなわち、熱伝導率の温度依存性の問題で ある。表面を押しつける圧力によって金型から樹脂への熱伝達係数が変わるという考え 方もあるが、圧縮成形が非常に短い時間で完了していることから、本研究では定数とし て与えた。

0.0 20.0 40.0 60.0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Forming load (KN)

Distance between core and cavity molds (cm)

Experiment

Numerical analysis

Fig.2-13 Verification of numerical analysis model

(34)

2.7 成形品形状の成形荷重への影響 2.7.1 解析に用いるカップ成形品の形状

解析対象はフランジを持つカップ成形品とした。溶融体はコア金型の下降により圧縮 を受けて、コア金型の中央から円周方向にはみ出していく。はみ出した樹脂は側壁を通 過するが、側壁部では圧縮と同時に金型の移動によるせん断を受けている。樹脂は、側 壁部を通過した後、フランジ部で再び圧縮を受ける。

カップ成形品の形状は、構造上の強度、性能、商品価値などから決められるため、成 形品の厚みに分布を持つことが多い。また、自立性と安定性を確保するために、底部に おいて径の広い位置で接地して底部中央が接地しない形状のものがある。さらに、強度 確保や見栄えを良くするためにカップ成形品の側壁部に多角形状の凹凸を賦与する場 合がある。形状の多様性があったとしても、成形の側面からみると、底部、側壁部、フ ランジ部を有するカップ成形品を解析の対象とすることで、カップ成形品の圧縮成形の 本質は失われないと考えられる。そこで、カップ成形品としてできるだけ基本的な形状 を解析モデルとした。カップ成形品の形状をFig.2-14に示す。

Fig.2-14 Schematic diagram of cup for numerical analysis Rf

Rc

h

Core mold

Cavity mold

m

Initial shape of lump

Ro t0

Rinside

Routside t

θ

(35)

カップ成形品の形状は、基本的には底部(Bottom)、底部と側壁部をつなぐコーナー部

Corner)、側壁部(Wall)、フランジ部(Flange)で構成される。成形品の形状については、

Fig.2-11に示す様に、コア金型の底部の径寸法をRo、フランジ部での厚みto、成形品の底面

からフランジ上面までの距離hと設定する。なお、h/Roαとおく。αは容器の縦横比を表して いる。フランジを含むキャビティ金型の径寸法を Rf、とする。対象とする成形品の寸法は、底部 の径Roは 30~200mm、高さhは 30~100mm、底部の厚みは 0.1~5mm のカップ容器を想定 している。溶融体は金型と接触しながら圧縮され、所定の厚みになるまで成形される。

Fig.2-11に示す円柱塊の高さh 、径d を圧縮して底部の厚みが 1mm になった時のコア金

型の位置を薄い青色の線で示している。Fig.2-11 に示す成形品の寸法の一例として、

Table 2-6に示す形状について、成形荷重に対する成形品形状の影響を調べた。なお、初

期溶融体の形状は成形品の寸法によらず円柱塊(径 30mm、高さ 11mm)を基本形状(case-1) として、温度を 200℃に設定した。なお、Table 2-6case-1case-11は、圧縮成形速度 および金型壁面での樹脂の滑りについては、Table 2-7のcase-12の条件にて解析を実施 した。

Cup’s shape Initial resin’s shape

Rc h α θ(°) Rinside Routside hm d

case-1 48 case-2 46 case-3 44

20 0.4

case-4 29 0.58 case-5 40 0.8

11

case-6 5.5

case-7 22

30

case-8

0

24.9 20 case-9 10

5

case-10 0 7

5

case-11

48

20 0.4

0 5 3

11 30 Table 2-6 Dimensions of cup(Rf=88mm、R0=50mm t0=1.0mm) and initial melted resin

unit:mm

(36)

2.7.2 側壁部厚みの成形荷重への影響

側壁部の厚みの成形荷重への影響を調べた。Table 2-6において、case-1case-3は、

側壁部の厚みがそれぞれ1mm、2mm、3mm となる様にコア金型の径 Rc を変えて圧縮 成形解析を行った。得られた成形荷重をFig.2-15に示す。

成形荷重は側壁の厚みに影響することが Fig.2-15から分かる。Fig.2-15から、側壁部 の厚みが薄くなるにつれて、溶融体が側壁部に流れ難いために、底部の厚みが厚い状態 から成形荷重が上昇する。Fig.2-15のcase-3では、側壁部の厚みが厚いために側壁部に 溶融体が流れやすくなり、底部が薄くなってから成形荷重が急激に上昇する。

Distance at the center from core to cavity mold (cm)

Fig. 2-15 Effect of wall thickness on the forming load

▲case-1, case-2, case-3

0.0 20.0 40.0 60.0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Forming load (KN)

(37)

2.7.3 容器高さの成形荷重への影響

成形荷重に対する成形品の容器高さh0の影響を調べた解析結果をFig.2-16に示す。

溶融体が圧縮され、底部から側壁部に溶融体が広がり、底部の樹脂が少なくなってく ると溶融体の圧力が上がり、成形荷重が上昇する。側壁部に溶融体が到達するとコア金 型に対して斜めから荷重が作用することになり、荷重がリニアに上昇しなくなることが、

Fig.2-16case-1 から分かる。側壁部からの荷重と底部からの荷重の合算ではあるが、

Fig.2-16case-4およびcase-5では、荷重がリニアに上昇したのは、側壁部に樹脂が流

入することで底部の厚みが薄くなったからである。

Distance at the center from core to cavity mold (cm)

Fig. 2-16 Effect of cup’s height on the forming load

▲ case-1, case-4, case-5

0.0 20.0 40.0 60.0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Forming load (KN)

(38)

2.7.4 初期溶融体(円柱塊)形状の影響

圧縮成形の初期段階では圧縮に必要な荷重は数ニュートン程度でありほとんど負荷 が掛かっていない。圧縮成形荷重が数キロニュートンになるのは、成形品の厚みが非常 に薄くなる時であるが、その段階では初期溶融体である円柱塊の形状はその原形を留め ていないと考えられる。このことから、成形荷重は樹脂量が同じであれば、初期溶融体 の形状に依存しないと予想されるが、確認のため、成形荷重に対する初期溶融体の形状 の影響を調べることにした。Table 2-6のcase-1とcase-8は、初期溶融体が同体積で形状が 異なる円柱塊であり、この形状について圧縮成形解析を行った。解析結果をFig.2-17に 示す。Fig. 2-17は横軸にコア金型とキャビティ金型の距離、縦軸に成形荷重を表してい る。

Distance at the center from core to cavity mold(cm)

Fig.2-17 Effect of lump’s height of melting lump on the forming load

▲ case-1, case-8

0.0 20.0 40.0 60.0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Forming load (KN)

(39)

溶融体が同体積で高さが高い場合は、若干、成形荷重が大きいことがFig.2-14から分か る。これは、初期溶融体の高さが高い場合、溶融体を薄く広げるまでに樹脂を移動させる 仕事が増えるために、溶融体の高さが高いと荷重が増える。初期溶融体の高さが低い場合 は溶融体が側壁部へ移動し易く荷重が低くなっている。

2.7.5 溶融体樹脂量の成形荷重への影響

成形荷重に対する溶融体の樹脂量の影響について調べるため、圧縮成形解析を行った。

成形品の形状はFig.2-14に示す形状である。初期溶融体の円柱塊の高さhを変えた形状 は、Table 2-6のcase-1、case-6 、case-7である。解析の結果をFig.2-18に示す。

Fig.2-18において、case-7は、初期溶融体の樹脂量がcase-12 倍であり、成形荷重が

急上昇する時の金型間の距離がcase-1の場合の 2 倍になっている。また、初期溶融体の

樹脂量がcase-1の半分のcase-6の場合は、case-1の半分の金型間の距離において成形荷

重が急に上昇するが、途中で樹脂量が少なくなったため荷重が上がらなくなっている。

Fig.2-18から、溶融体の樹脂量により成形荷重が影響を受けることが分かった。

Distance at the center from core to cavity mold (cm)

Fig.2-18 Effect of lump’s amount on the forming load

▲ case-1, case-6, case-7

0.0 20.0 40.0 60.0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Forming load (KN)

(40)

2.7.6 側壁部の傾斜、底部のコーナー部丸みの成形荷重への影響

これまで検討してきたカップ成形品の形状は、側壁部に傾斜がない形状であるが、多 くの成形品は側壁部に傾斜があり、底部のコーナー部に丸みがある。成形品の底部のコ ーナー部の丸みはFig.2-14に示す様に内側の丸み Rinsideと外側の丸みRoutsideがある。内 側の丸みはコア金型のコーナー部の丸み、外側の丸みはキャビティ金型のコーナー部の 丸みにより賦与される。そこで、側壁部を鉛直より角度θ 傾けた形状(Table 2-6

case-9に示す形状)、および、底部のコーナー部の内側の丸みRinsideと底部のコーナー部

の外側の丸みRoutside を変化させた形状(Table 2-6のcase-10case-11)について圧縮成 形解析を行い、成形荷重への影響を検討した。解析結果をFig.2-19に示す。Fig.2-19は 横軸にコア金型とキャビティ金型との距離、縦軸に成形荷重を表している。

Distance at the center from core to cavity mold(cm)

Fig.2-19 Effect of of inclination angle of side wall and corner radius on the forming load ▲case-1, case-9, case-10, case-11

0.0 20.0 40.0 60.0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Forming load (KN)

(41)

Fig.2-19case-1case-9を比較すると、側壁の傾斜がある方が、成形荷重が低減し

ている。Fig.2-19case-1case-10から底部の内側の丸みが大きい方が荷重が低い。

また、case-1 と case-11から底部の外側の丸みが小さい方が荷重が低い。いずれも、溶 融樹脂体が側壁部に移動し易くなると荷重が低減する。

(42)

2.8 成形条件の違いによる成形荷重への影響 2.8.1 成形条件

カップ成形品を成形するにあたり、成形荷重に影響を与える要因として、圧縮速度、

金型の温度、圧縮開始まで金型上に溶融樹脂体が載置される時間、金型表面の樹脂の滑 りが考えられる。そこで、成形品の形状をTable 2-6case-1を用いて、成形条件の違 いによる成形荷重への影響について解析によって検討した。検討した成形条件を Table 2-7に示す。

Velocity parameter V0 (cm/s) :-10.586 a(-) -1.0

Temperature of mold

Heat transfer coefficient

Time Slip

coefficient

b (s-1) c (s-2) Tcore,Tcavity(℃)BS1,hBS3

(W/m2 K) tdelay(s) Sc(Pa s/m)

case-12 -1.2 -42.47 15 case-13 -1.1 -42.47 15 case-14 -1.2 -40 15 case-15 40 case-16 60

1.0×10 3

case-17 1.0×10 1

0

case-18 10

1.0×10 9

case-19 5.0×10 8

case-20

-1.2 -42.47

15

1.0×10 3 0

1.0×10 7 Tcore :コア金型の温度

T cavity :キャビティ金型の金型温度

BS1 : コア金型から溶融樹脂体への熱伝達係数

BS3 : キャビティ金型と溶融樹脂体の間の熱伝達係数

tdelay : 圧縮開始迄の時間

Sc :滑り係数

Table 2-7 Parameters of producing cup

(43)

2.8.2 圧縮速度の成形荷重への影響

溶融体の圧縮方式には油圧シリンダー方式とカム方式がある。油圧シリンダー方式は、

荷重一定で金型を下降させる方式である。一方、カム方式は変位一定で上金型を下降させ る圧縮方式であり機械に掛かる負荷が変動する。圧縮成形は一般的に成形に大きな荷重を 要することが多いため、荷重一定で圧縮を行っている場合が多い。実験では、径 200mm の エアシリンダを用いて荷重一定で圧縮成形を行った。この実験で測定した金型位置から金 型の下降速度を算出し、圧縮解析に用いた。

圧縮速度を速めて成形荷重を低減する方法は、せん断速度の上昇による粘度低下によ り荷重を低減するという考えである。そこで、Table 2-7のcase-12~case-14に示す様に 成形速度を変えた時の成形荷重の影響について検討した。case-13case-14は、エアシ リンダのエア圧力を変えて得られた実験値である(case-12、case-13、case-14 はそれぞ れ、エアシリンダのエア圧力を0.60.650.7 MPa に設定)。case-12case-14のコア金 型の位置をFig.2-20に示す。縦軸にコア金型の鉛直方向の位置、横軸に時間を示す。

case-13case-14 は、case-12 とコア金型の下降位置があまり変わらず、下降する速さ

もほとんど変わらなかった。

-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0

0 0.05 0.1 0.15

Time(s) Moving distance of core moldcm)

Fig.2-20 Moving distance of core mold

▲ case-12 , case-13 , case-14

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