アルカリイオンを用いた櫛歯アクチュエータのエレ クトレット化に関する研究
著者 芝田 泰
発行年 2014‑12
出版者 静岡大学
URL http://doi.org/10.14945/00008779
(課程博士・様式7)(Doctoral qualification by coursework,Form 7)
学 学 学
学 位 位 位 位 論 論 論 論 文 文 文 文 要 要 要 要 旨 旨 旨 旨
Abstract of Doctoral Thesis
専 攻:ナノビジョン工学 氏 名:芝田 泰
論文題目:アルカリイオンを用いた櫛歯アクチュエータのエレクトレット化に関する研究
論文要旨:
センサーやアクチュエータが自己発電をして、その電気を使って稼働し、半永久的にメンテナン ス・フリーで動き続け、データを送るようになれば、センサーデバイスは安価になり、設置・稼働維 持のコストも大きく軽減されることから、普及が促進される。
半永久的な帯電膜を提供するエレクトレット膜は、エレクトレットコンデンサマイクロフ ォンとして実用化されているが、近年は環境振動を利用した振動発電素子としての利用法が 改めて注目を集めている。振動発電の方法には圧電、電磁、静電などの方法がある。1kH z以下であることが多い自然界の振動を利用しようとすると、静電型は小さな振動周波数で も電気エネルギーを機械エネルギーに変換する係数である力係数を大きい値で得ることが でき、大変有利である。この静電型のエレクトレット発電は、エレクトレット膜による電界 がエネルギー変換場となり、エレクトレット膜が外部振動を電気に変換する。エレクトレッ ト膜は、一般的にコロナ放電や軟X線などを利用してイオンや電子を平面状の絶縁膜に打ち 込む形で形成される。しかし、従来のイオン打ち込み方式では櫛歯アクチュエータやリング アクチュエータなどの高アスペクト比マイクロ構造に対して均一にエレクトレット化する ことが技術的に難しく、またエレクトレット化させる装置も高価である。
この問題を解決するために、本研究では従来のイオンの打ち込み方式でないアルカリイオ ンを用いたエレクトレット膜の形成方法を研究し、実際にエレクトレット化された櫛歯アク チュエータを作製して、振動発電により出力が得られることを実証した。
本手法は、デバイスのエレクトレット化したいシリコン露出部にアルカリイオンを含有し たシリコン酸化膜を形成し、MOSデバイスのアルカリイオン検査法として知られているB T処理を用いて、高温雰囲気でDC電圧を印加することにより櫛歯部のエレクトレット化を 行なう。本手法を用いることで、どんなに狭いギャップ構造に対してもエレクトレット化す ることが可能であり、シリコンMEMSと極めて相性のよい手法であると言える。また、エ レクトレット膜の帯電は打ち込み電荷量を制御する方法が一般的であるが、デバイス動作の 観点からは、エレクトレット膜の帯電電圧を制御しながら作製する方が所望の電圧や特性を 実現しやすい。そこで、本研究ではカリウムを使ったアルカリイオンエレクトレット手法を 確立し、本手法によって作製したデバイスの帯電特性について解析する。また、アルカリイ オンエレクトレット手法において、その場観察による帯電の過程の制御について述べると共 に、帯電過程のメカニズムを説明する。ただし、仮説であり、今後更なる解析を行って解明 する必要がある。また、実用化に向けた高電圧帯電エレクトレット化の課題を検討したうえ
で、400V高電圧帯電用デバイスの設計と評価を行なった結果についても述べる。
本論文は、序論と結論を含む全6章で構成されている。第1章では背景と研究の課題およ び目的を述べている。第2章では静電型櫛歯アクチュエータの駆動原理を述べ、そのモデリ ングを行い、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する変換効率について述べてい る。第3章では第2章で行なったモデル化パラメータを使用して櫛歯アクチュエータの設計 を行ない、市販の回路用CADソフトを用いてシミュレーションを実行し、設計の有効性を 確認している。次にその設計値を用いた櫛歯アクチュエータの作製を述べている。そして、
アルカリイオンを含有したシリコン酸化膜の形成とBT処理によるエレクトレット化及び エレクトレット化されていることの確認とエレクトレット保持について述べている。第4章 では作製したアルカリエレクトレット形成櫛歯アクチュエータのデバイス特性評価と、膜の 帯電電圧を制御しながら作製するエレクトレット化の帯電過程におけるその場観察とその 帯電過程のモデル化と帯電の仕組みについて述べている。第5章では高電圧帯電に対する課 題を検討した後、高電圧帯電用のアルカリイオンエレクトレット櫛歯アクチュエータの設計 と評価による本手法の有効性について述べている。最後に第6章で結論として本研究の主要 な成果と今後の課題及び将来性を総括して述べている。
以上、本論文は静電型MEMSデバイスである櫛歯アクチュエータに対するアルカリイオ ンを用いたエレクトレット化に関する研究であり、垂直で極めて狭いギャップを持つ高アス ペクト比マイクロ構造に対する高電圧帯電のエレクトレット化を可能とし、アルカリイオン エレクトレット膜の帯電電位の制御を容易に実現できることを示した。