東 北 部 会 講 演 要 旨
弘前市 弘前大学農学生命科学部(平成
29 年 9 月 28 日~29 日)
Abstracts Presented at the Meeting of the Tohoku Division,
Hirosaki, September 28–29, 2017
(1) 山岸紀子 1 ・門馬孝之 2 ・吉川信幸 1 ホップにおけ るリンゴ小球形潜在ウイルスベクターを利用したウイルス 誘導ジーンサイレンシング(VIGS) Yamagishi, N., Monma, T. and Yoshikawa, N.: Use of Apple latent spherical virus as a vector for virus-induced gene silencing in hop. 本 研 究 で は ホップにおけるリンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)ベクター の有用性について検討した.ホップ品種‘きたみどり’培 養苗を用いてALSV をパーティクルガン法によって接種し たところ,無病徴で全身感染が成立し,ホップの生育に影 響は無いと考えられた.続いてホップ品種‘キリン2 号’,‘ト ヨミドリ’,および‘Hallertauer Mfr’を用いて品種による 感染性の差異を調べたところ,‘Hallertauer Mfr’は‘きた みどり’と同様に無病徴で全身感染したが,‘キリン2 号’ と‘トヨミドリ’は接種葉のみの感染に留まり,全身感染 には至らなかった.ホップのphytoene desaturase(hopPDS) 遺伝子の一部を組み込んだALSV-hopPDS を‘きたみどり’ と‘Hallertauer Mfr’に接種し,VIGS が誘導されるかどう かを調べた.その結果,両品種とも葉および茎の白色化が 生じ,その後新たに展開した葉は全て白色化した.以上の 結果から,ALSV ベクターは,品種に制限はあるものの,ホッ プにおいてVIGS 誘導ベクターとして利用できると考えら れた. ( 1 岩手大農・ 2 元:岩手大学) (2) 松平昂士・吉川信幸・磯貝雅道 ラズベリー黄化ウ イルスのゲノムにコードされる1b 遺伝子の RNA サイレン
シングサプレッサー活性 Matsudaira, T., Yoshikawa, N. and Isogai, M.: RNA silencing suppressor activity of 1b gene encoded by the Raspberry bushy dwarf virus genome. これま で,ラズベリー黄化ウイルス(RBDV)のゲノムにコードさ れる1b 遺伝子は,機械的接種による植物への全身感染に必 須ではないが,感染組織でのウイルスRNA 蓄積量を増加さ せることを明らかにしてきた.本研究では,1b 遺伝子を発 現させるアグロバクテリウムを,緑色蛍光タンパク質(GFP) を発現させるアグロバクテリウムと共にベンサミアーナタ バコ葉にインフィルトレーションすると,GFP を発現する アグロバクテリウムのみをインフィルトレーションした場 合と比較して,GFP mRNA 蓄積量が増加することを見出し た.そこで,1b 遺伝子の RNA サイレンシングサプレッサー 活性(RSS 活性)を,アグロインフィルトレーションアッ セイとリアルタイム逆転写PCR(RT-qPCR)法とを組み合 わせて解析した.その結果,UV ライト照射下で,1b 遺伝 子のRSS 活性を示す GFP 蛍光は観察されないが,RT-qPCR 法によりGFP mRNA を定量すると,GFP mRNA 蓄積量は 有意に増加していた.このことから,GFP 蛍光観察では捉 えられないが,1b 遺伝子は RSS 活性を持つことが示唆され た. (岩手大農) (3) 小俣紫野・鎌田和樹・山岸紀子・磯貝雅道・吉川信 幸 RT-LAMP 法によるリンドウからのリンゴ小球形潜在 ウイルスの迅速・高感度検出 Omata, S., Kamada, K., Yamagishi, N., Isogai, M. and Yoshikawa, N.: Rapid and sensitive detection of Apple latent spherical virus from gentian plants by Reverse Transcription—Loop-mediated Isothermal Amplification (RT-LAMP). リンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)にリンド ウ花成ホルモン(GtFT)遺伝子を導入した ALSV-GtFT を 接種することで,通常2 年かかるリンドウ実生の開花期を 5~6 ヶ月に短縮できる.この技術(Virus-induced flowering, VIF)はリンドウの品種改良を効率化できると考えられる. 一方,VIF を用いて育成したリンドウ苗に ALSV-GtFT が存 在しないことを証明する必要があり,演者らはこれまで, ELISA,ハイブリダイゼーション法,RT-PCR,定量 RT-PCR によるリンドウからのALSV の検出法を確立してきた.本 研 究 で は, 迅 速, 簡 便 で 高 感 度 なALSV 検 定 法 と し て RT-LAMP 法を検討し,リンドウからの ALSV の検出を行っ た.LAMP 用プライマーの設定および試料の調製法を検討 し,最適条件を決定した後,感染個体からALSV を検出し た結果,検出感度はRT-PCR の約 100 倍であった.また, 検定試料の調製については,抽出核酸,葉の磨砕液,さら に葉を爪楊枝で刺す方法でもALSV を特異的に検出可能で あった. (岩手大農) (4) 鎌田和樹・山岸紀子・磯貝雅道・吉川信幸 リンゴ 小球形潜在ウイルス(ALSV)感染リンドウの葯および胚の
うからのALSV の検出 Kamada, K., Yamagishi, N., Isogai, M. and Yoshikawa, N.: Detection of Apple latent spherical virus from anther and embryo sac of ALSV-infected Japanese Gentian. リ
ンドウのフロリゲン(GtFT)遺伝子を発現する ALSV ベク ター(ALSV-GtFT)は,通常 2–3 年を要するリンドウ実生 の開花時期を発芽後数ヶ月に短縮できる早期開花誘導ツー ルとしてリンドウ育種への利用が期待される.また,ALSV がリンドウにおいては種子伝染しないことを平成29 年度大 会で報告した.本研究では,早期開花したリンドウの葯お よび胚のうにALSV が存在するかどうかを解析した.ALSV-GtFT 感染により早期開花したリンドウの授粉 10 日後の蒴 果および開葯前の葯をサンプリングし,RNA プローブを用 いたin situ ハイブリダイゼーションにより ALSV の有無を 検定した.その結果,ALSV 感染リンドウの蒴果では子房壁 からALSV のシグナルが検出されたが,胚からはシグナル は観察されなかった.また,葯では葯壁にALSV のシグナ ルが検出されたが,花粉からはシグナルは観察されなかった. この結果により,リンドウにおいてALSV の種子伝染が認 められない理由は,ALSV が胚および花粉に存在しないか, あるいは低濃度しか存在しないためであると推察された. (岩手大農) (5) 藤崎恒喜・舘田知佳・白川明日佳 岩手県内のリン ドウから単離されたトンブスウイルスの解析 Fujisaki, K., Tateda, C. and Shirakawa, A.: Identification and characterization of a tombusvirus isolated from Japanese gentian in Iwate Prefecture. 本研究室ではこれまで網羅的ウイルス診断法 (DECS 法)を開発し,農業現場の様々な作物におけるウイ ルス診断に役立ててきた.最近この診断を通して,岩手県 内のリンドウからトンブスウイルス様の配列が見出された. このウイルスを単離し,様々な植物に接種したところ,リ ンドウに対しては低効率で全身感染するが明瞭な病徴を示 さないこと,トルコギキョウ,ベンサミアーナタバコなど には激しい壊死をともないながら全身感染することがわ かった.粒子RNA からゲノム構造を決定したところ,トン ブスウイルス様の構造が確認された.外皮タンパク質遺伝 子 の 推 定 ア ミ ノ 酸 配 列 を も と に 行 わ れ た 系 統 解 析 で は Cymbidium ring spot virus と 最 も 近 縁 で あ る が, 配 列 の identity は 74.4%とトンブスウイルスの種を分ける国際分類
基準の87%以下であり,別種と考えられた.さらに他の遺
伝子領域を用いた系統解析では,遺伝子ごとに他のトンブ スウイルスと異なる系統関係が見出され,以上のことから,
新種のトンブスウイルスであると考えられた.(岩手生工研)
(6) 柳 澤 広 宣 1,2 ・ 松 下 陽 介 3 Tomato planta macho viroid の感染花粉による異種植物間の水平伝染の可能性
Yanagisawa, H. and Matsushita, Y.: The possibility of horizontal transmission of Tomato planta macho viroid (TPMVd) through infected pollen among heterogeneous plants. トマト等ナス科 作物に甚大な被害を引き起こすポスピウイロイド属には, 国内への侵入が特に注意される国内未発生種が多く含まれ る.その一種である,Tomato planta macho viroid(TPMVd)
は高率に種子伝染し,さらに感染花粉により水平伝染する ことを既に報告した(H28 大会・H29 大会).本報では TPMVd 感染ペチュニア花粉を健全トマト花粉に混合し,異種であ るトマト柱頭に授粉することにより,異種植物間における 水平伝染の可能性を検証した結果を報告する.TPMVd 感染 ペチュニア花粉混入トマト花粉を24 個のトマト柱頭に授粉 したところ,24 時間後には 24 個中 13 個のトマト子房にペ チュニア花粉の花粉管が到達し,併せてTPMVd もそれら トマト子房から検出された.さらに授粉後に形成されたト マト果実の萼片を授粉1 ヵ月後に検定した結果,51 個の果 実中24 個の果実の萼片から,また 2 か月後には授粉した 18 株 の ト マ ト 苗 の 内13 株の上位葉で TPMVd が検出され, TPMVd は異種間でも花粉で伝染する可能性が示された. ( 1 農研機構中央農研・ 2 岩手連大・ 3 農研機構野花研) (7) 鈴木貴大 1 ・藤林美里 2 ・畑谷達児 3 ・佐野輝男 2 リ ンゴゆず果ウイロイドホップ分離株のトマトにおける病原 性解析 Suzuki, T., Fujibayashi, M., Hataya, T. and Sano, T.: Analysis of the pathogenicity of apple fruit crinkle viroid isolates from hop in tomato. リンゴゆず果ウイロイド(AFCVd)は アプスカウイロイド属の暫定種で,現在まで日本でのみ発 生している.リンゴ,ホップ,カキなどの自然宿主から分 離され,ホップ,カキ分離株はトマトやキュウリなどの草 本植物に感染する(Suzuki et al., 2017).AFCVd ホップ分離 株(AFCVd-hopAK6-2)をトマトに接種し,病徴観察をした 結果,果実の肥大異常,裂果,条線の窪み,奇形,着色不 良などの特徴的な症状が見られた.また同一の変異体を接 種したにもかかわらず,感染個体間で果実の重量やサイズ, 奇形,着色などの症状に違いが観察された.そこでこの症 状の強弱を分析するために,これらのトマト感染後変異体 の塩基配列と分子構造を調査した.その結果,症状が強い 個体由来の主要配列はU46A(46 番目の U が A に置換), G77A,G178A,A308U の 4 塩基,弱い個体由来の主要配列 はG77A,170-A(170 番 目 の A が 欠 失 ),G178A,U206A, A308U の 5 塩基変異していた.また分子構造を比較すると, 二次構造の右側の33–34 番目のステムループ構造にのみ違 いが観察された. ( 1 岩手連大・ 2 弘大農生・ 3 北大院農) (8) 佐野輝男 1 ・鈴木貴大 2 ・藤林美里 1 ウイロイド感染 で生じる壊疽症状について Sano, T., Suzuki, T. and Fujibayashi,
M.: Studies on the necrosis symptoms produced by viroid infec-tion. ウイロイド感染植物には矮化,葉巻,果実の着色障 害などのほか,葉脈,葉柄,時には全身の壊疽症状が現れる. ジャガイモやせいもウイロイド(PSTVd)をトマト(品種: Moneymaker,empty 系統)に感染させると弱い矮化症状が 観察される.一方,DICER-LIKE(DCL)2 と 4 を RNAi で ノックダウンしたMoneymaker(72E 系統)には PSTVd 感 染で激しい矮化,葉巻,黄化と葉脈或は全身性の壊疽症状 が現れ,生育が停止し枯死に至る(池田ら,平成29 年度日 植病大会).small RNA-ディープシークエンス解析の結果, PSTVd 感 染 72E 系 統 で は PSTVd 感 染 empty 系 統 に 比 べ miR398 と miR398a-3p の発現量が約 7 倍に増加していた. ノーザンハイブリダイゼーション解析の結果,miR398a-3p はPSTVd 感染で誘導され,その標的遺伝子 copper chaperone for superoxide dismutase(CCS1)も PSTVd 感染で誘導され ていた.以上の結果から,PSTVd 感染 72E 系統に見られた 激しい壊疽症状はウイロイド感染トマトで活性酸素が活発 に産生されたことを示していると考えられた.
( 1 弘大農生・ 2 岩手連大) (9) 舘田知佳・小原和恵・藤崎恒喜 葉の気孔密度操作 によるリンドウ葉枯病制御機構 Tateda, C., Obara, K. and Fujisaki, K.: The regulatory mechanism of Gentian leaf blight by controlling of the stomata density in Gentian. リンドウ葉 枯病菌(Septoria gentianae)は,宿主であるリンドウ(Gentiana L., Gentian)の気孔を侵入経路とする病原菌である.これま での研究において,リンドウ葉枯病菌に対する感受性強度 は,リンドウ葉の向軸面に存在する気孔密度と密接に相関 していることを明らかにしてきた.そこで,リンドウ葉の 気孔密度を制御することにより,リンドウ葉枯病菌に対す る感受性を制御できるのではないかと考えた.シロイヌナ ズナにおいて気孔密度制御に係ることが報告されているペ プチド性リガンドのEPF/EPFL(EPIDERMAL PATTARNING FACTOR/EPF-like)と相同性を示す因子のうち,少なくと もEPFL4/5/6 がリンドウにも保存されていた.葉の向軸面 に気孔が存在しない「To」系統のリンドウに EPFL4/5/6 ペ プチドを処理すると,葉の向軸面における気孔形成が促進 され,さらに,リンドウ葉枯病菌に対する感受性の亢進も 確認された.今後,気孔形成を負に制御する因子を単離・ 解析することで,リンドウ葉枯病菌に対する耐性リンドウ の作出が可能になると考えている. (岩手生工研) (10) 清水浩晶 1 ・高島圭介 2 ・金子俊郎 2 ・宮下脩平 1 ・高 橋英樹 1 ・安藤杉尋 1 シロイヌナズナを用いた大気圧プラ ズ マ 照 射 に よ る 植 物 免 疫 の 活 性 化 の 解 析 Shimizu, H., Takashima, K., Kaneko, T., Miyashita, S., Takahashi, H. and
Ando, S.: Activation of plant immune system by irradiation with atmospheric-pressure plasma in Arabidopsis thaliana. プラズ
マは固体,液体,気体に次ぐ第4 の物質の状態であり,反 応性が高く,活性酸素など様々な活性種を生成する.近年, 農業分野においても大気圧プラズマの抗菌作用をポスト ハーベストに利用することが検討されている.一方,活性 酸素は植物免疫にも重要な役割をもつが,プラズマ照射に よって生じる活性酸素の植物免疫への関与は十分に検討さ れていない.そこで我々はシロイヌナズナを用い,プラズ マ照射による植物免疫の活性化の有無を検討した.まず, プラズマ照射によるダメージを調べたところ,10 秒以上の 照射でダメージが認められた.そこで,プラズマを2,5, 30 秒間照射した植物の葉からの電解質漏出を解析した結果, 30 秒では漏出が確認されたのに対し,2,5 秒照射ではダメー ジが見られず,漏出も認められなかった.その際の防御関 連遺伝子の発現を解析した結果,プラズマ5 秒照射によっ てPR1 の発現が一過的に上昇することが分かった.以上の 結果から,プラズマ照射により明確なダメージが認められ ない条件下で植物の免疫が活性化される可能性が考えられ た. ( 1 東北大院農・ 2 東北大院工) (11) 笠原雅美・宮下脩平・高橋英樹・安藤杉尋 培養 条件の違いによる有機栽培育苗土由来細菌集団のイネもみ 枯 細 菌 病 抑 制 効 果 の 変 化 Kasahara, M., Miyashita, S., Takahashi, H. and Ando, S.: Suppressive activity of bacterial panicle blight of rice by application of bacterial communities from rice organic soil which are cultured on different media. 我々はこれまでに有機栽培育苗土にイネもみ枯細菌病の抑 制効果が存在し,さらに幾つかの有機栽培育苗土について, NA 普通培地で培養して得た細菌集団の混合添加によって病 害抑制効果が認められることを報告した(安藤ら,2012). しかしながらPCR-DGGE 解析から,添加した細菌の多くは 土壌中での増殖能が低いことが明らかになった(安藤ら, 2016).そこで今回,細菌集団の培養条件を変えることで病 害抑制効果の増強を試みた.栃木県芳賀町の有機栽培育苗 土の細菌を貧栄養培地であるDR2A 培地と 1/1000 希釈 NA 培地でそれぞれ培養し,イネもみ枯細菌病抑制効果を解析 した結果,NA 普通培地を用いた場合より強い病害抑制効果 が認められた.また,添加に用いた各培地で培養した細菌 の混合液から抽出したDNA の 16S rDNA パターンを PCR-DGGE で解析したところ,NA 普通培地を用いた場合とは異 なる細菌集団が培養されていることも確認した.以上のこ とから,培養条件を変えることで,有機栽培育苗土由来で 強い病害抑制活性をもつ細菌集団を得られることが示唆さ れた. (東北大院農)
(12) 安藤杉尋 1 ・清水浩晶 1 ・笠原雅美 1 ・吉田重信 2 ・對 馬誠也 3 ・宮下脩平 1 ・高橋英樹 1 もみ殻堆肥施用によるイ ネ も み 枯 細 菌 病 抑 制 効 果 の 解 析 Ando, S., Shimizu, H., Kasahara, M., Yoshida, S., Tsushima, S., Miyashita, S. and Takahashi, H.: Analysis of suppressive effect on bacterial pani-cle blight of rice by application of composed rice husk to nurs-ery soil. 我々はこれまでに有機農家から分譲された有機栽 培育苗土に病害抑制効果があることを示してきたが,有機 栽培育苗土の作成方法と病害抑制効果の関係については十 分検討していなかった.聞き取り調査から,多くの場合イ ネ由来の有機物が投入されていたため,有機栽培育苗土の イネもみ枯細菌病抑制効果を再現する目的で,2016 年 5 月 から稲わら,もみ殻,米ぬかを材料としたもみ殻堆肥を作 製し,2017 年 5 月に完熟した堆肥を育苗土に添加すること で病害抑制効果が得られるか検討した.その結果,市販の 慣行栽培育苗土と堆肥を3:1 の割合で混合することでイネ もみ枯細菌病が抑制されることが明らかになった.また, その際の微生物相の解析を16S rDNA 配列を用いた PCR-DGGE によって解析した結果,有機栽培育苗土の場合と同 様に微生物相が安定し,イネもみ枯細菌病菌接種もみを播 種することによる細菌相の変化が少なくなることが確認さ れた.もみ殻堆肥由来の微生物が病害抑制効果に関与する 可能性についてもあわせて報告する. ( 1 東北大院農・ 2 農研機構・ 3 東京農大) (13) 中沖美優・宮下脩平・安藤杉尋・高橋英樹 新規 な有機・慣行栽培圃場における土壌細菌相の比較解析 Nakaoki, M., Miyashita, S., Ando, S. and Takahashi, H.: Comparative analysis of soil bacterial community between organic and conventional farming systems. 有機栽培土壌に おける土壌微生物の豊富さと均等性は慣行栽培土壌よりも 高く,微生物相のロバストネスによる病原細菌の抑制効果 などが期待されている.しかし,有機栽培において土壌微 生物が微生物相を形成する過程は十分に研究されているわ けではない.本年度は,東北大学青葉山キャンパスに新設 された圃場を用いて,有機および慣行栽培を開始し,栽培 管理の違いが,土壌の理化学性と生物的要因へ及ぼす影響 を調査した.堆肥・無農薬を有機区,化成肥料・農薬散布 を慣行区とし,それぞれの区画でブロッコリーを栽培した. 栽培期間中に株間から土壌を採取し,理化学性を分析する 共に,土壌よりDNA を抽出し,16S rDNA を指標とした土 壌細菌相の解析を行った.その結果,両栽培区で理化学性 に明瞭な差異は認められなかった.しかし,慣行区と比較 して有機区では,DNA 量が増加し,土壌細菌相も豊富であっ た.したがって,有機・慣行栽培初年度において,有機区 にはより豊富な生物的要因が存在するものと推察された. (東北大院農) (14) 橋本 陽 1 , 2 ・佐々木幸江 1 ・原田幸雄 1 ・田中和明 1 ハクウンボク環紋病(新称)の発生 Hashimoto, A., Sasaki, Y., Harada, Y. and Tanaka, K.: Occurrence of brown zonate leaf spot on Styrax obassia. 青森県深浦町の渓流沿いに生息するハク ウンボクに環紋状の葉枯症状が認められた.病徴は,黄化 した葉に褐色斑点を生じ,病勢が進展すると同心円状に拡 大しやがて落葉する.病斑上にはプロパギュールが散在も しくは密生した.葉の病斑部から単胞子分離を行い分離株 を得た.分離菌株の含菌寒天をハクウンボクの葉に有傷で 接種すると,4 ヶ月後に原病徴と同様の病徴を示した.プロ パギュールは手のひら状,暗褐色,基部で結束し,屈曲し たアームを有した.本菌と類似した菌としてRedheadia 属が 挙げられるが,後者はモップ状,無色のプロパギュールを 持つ点で本菌とは異なる.rDNA SSU-ITS-LSU および rpb2 領域の分子系統解析から,本菌はミコスファエレラ科内で 既知のいずれの属とも異なるクレードを形成した.本菌は, ミコスファエレラ科内のいずれの属および種とも異なる形 態をもつことから,今後は新属・新種として報告する予定 であるが,ハクウンボクの葉に環紋状の葉枯を起こすこと から,本病をハクウンボク環紋病と呼称したい. ( 1 弘前大学・ 2 学振PD) (15) 平山和幸 1 ・佐藤 裕 2 ・赤平知也 1 ・古屋廣光 3 低 温 貯 蔵 リ ン ゴ 果 実 に 発 生 す る 小 黒 斑 症 状 Hirayama, K., Sato, Y., Akahira, T. and Furuya, H.: Occurrence of small black spots on apple fruits during cold storage. 2013 年以降,青森 県津軽地域のリンゴで低温貯蔵中に果点部を中心とした赤 褐色~黒褐色の小斑点が発生している.本症状は秋田県南 部のリンゴ産地においても発生が報告され,真菌類による 病害であることが示唆されているものの,病原菌の同定に は至っていない(佐藤,2017).そこで組織分離により小斑 点部から取得した22 菌株を供試し,リボソーム DNA の ITS 領域および TUB2 遺伝子に基づく分子系統解析と形態 観察により病原菌の同定を試みた.その結果,供試菌株は2 つのクレードに分かれ,いずれもビョウタケ目ハイイロチャ ワンタケ科Phlyctema 属のクレードに位置した.いずれも分 生子形成様式はフィアロ型,大型分生子はソーセージ形, 無色,単細胞であり,Phlyctema 属の特徴と一致した.以上 のことから,低温貯蔵リンゴ果実の小黒斑症状の病原菌と してPhlyctema 属菌 2 種が関与することが示唆された.今後, 子実体や小型分生子などの形態観察により種同定を進める とともに,接種試験により各種の病原性について検討する. ( 1 青森産技セりんご研・ 2 秋田果試・ 3 秋田県大生資)
(16) 近藤 亨 Fusarium avenaceum によるリンドウ
立枯病(病原追加) Kondo, T.: Stem and root rot of Gentiana
triflora Pall. caused by Fusarium avenaceum (Fries) Saccardo.
2016 年 5 月,青森県内 1 地点のリンドウ(Gentiana triflora) において,地際部の茎と根が褐変腐敗し立ち枯れる症状が 発生した.罹病部位から病原菌の分離を行ったところ,高 率にFusarium 属菌が分離された.単胞子分離後に分離菌の 含菌寒天を用いてリンドウの地際部に菌体付着接種を行っ たところ,接種した全ての株で地際部の褐変腐敗が認められ, 罹病部位からは同一菌が再分離された.また本菌は,トル コギキョウおよびコムギにおいても病原性が確認された. 分生子は2 タイプあり,鎌形分生子は 3~6 隔壁で大きさは 36~73×3.0~4.2 µm,紡錘形分生子は 1~3 隔壁で 14~45 ×3.3~4.8 µm で,Booth(1971)における Fusarium avenaceum の記載とほぼ一致した.rDNA-ITS および TEF1-α 遺伝子領
域 のDNA 塩基配列を解析したところ,多くの Fusarium
avenaceum と一致した.以上のことから,本菌を Fusarium avenaceum (Fries) Saccardo と同定した.本菌による症状は,
松尾ら(1975)の報告によるリンドウ茎枯病の症状とは異 なることから,リンドウ立枯病の病原追加としたい.
(青森産技セ農林総研) (17) 岩舘康哉 1 ・菅 広和 2 Sclerotium rolfsii による トリカブト白絹病(新称) Iwadate, Y. and Kan, H.: Southern blight of Aconitum (Aconitum japonicum) caused by Sclerotium
rolfsii. 2016 年 9 月,岩手県の薬用植物栽培圃場のオクト リカブトで立枯れ症状が発生した.発症株の塊根は腐敗し, 著しい場合は株が倒伏した.発症株の地際部は白色の菌糸 で覆われ,白色~茶褐色の小粒菌核が多数確認された.株 元に形成された菌核から分離した菌株のPDA 培養菌叢片ま たは,フスマ・土壌混合培地で培養した接種源を健全株に 接種したところ,7 日程度で原病徴が再現され,接種菌が再 分離された.本菌をPDA 培地で培養すると,菌叢は白色を 呈し,菌叢の表面には菌核を生じた.菌核は成熟するに伴 い白色~褐色となり,成熟したものは長径1.1~3.5 mm の 球形~亜球形で,表面は淡褐色の平滑な皮層からなり,髄 層の着色はほとんど見られなかった.菌糸は無色で隔壁を 有し,かすがい連結が確認された.本菌は10~35°C で生育 し,最適温度は30°C 付近であった.これらの特徴より,本 菌をSclerotium rolfsii と同定した.本菌によるトリカブト(オ クトリカブト)の病害は未報告であるので,本病をトリカ ブト白絹病(Southern blight)と呼称することを提案する. ( 1 岩手農研セ・ 2 岩手県庁) (18) 佐藤 裕 1 ・照井 真 2 フサスグリ葉の褐変部か ら分離されたNeofusicoccum 属菌について Sato, Y. and
Terui, M.: Neofusicoccum sp. isolated from browning leaf of Currants. 秋田県果樹試験場のフサスグリ試験ほ場で 2017 年7 月下旬頃から無防除樹の葉に不定形の褐色斑が多数認 められ,その後,黄変し落葉した.また,褐変した葉を湿 室下に保持すると,病斑上に白色の分生子堆が認められた. 既報の病害には該当する症状がないことから,褐変部の組 織分離を行い,得られた糸状菌をPDA 平板培地を用いて, 23°C,BLB 24 時間照射下で 10 日間培養すると,子座およ び白色の分生子堆を形成した.分生子は大きさが16.4~ 20.0×5.7~8.6 µm(平均 18.3×7.3 µm),紡錘形~長楕円形, 顆粒状物質を含み,無色単細胞であり,無性世代の形態学 的特徴および,ITS 配列の相同性から分離菌は Neofusicoccum 属菌と考えられた.分離菌株から得られた胞子懸濁液をフ サスグリ品種「ロンドンマーケット」の成葉(葉裏)へ有 傷および無傷接種したところ,7 日後から褐変症状が認めら れた.さらに,その褐変部位からは,いずれも接種菌が再 分離され,病原性が確認された.今後は病原菌の遺伝子解 析を進めると共に,枝や果実に対する病原性を検討する予 定である. ( 1 秋田果試・ 2 秋田果試天王) (19) 谷中沙妃 1 ・森田修介 2 ・千草 尚 2 ・菅原 敬 3 ・小 林 隆 4 ・西沢 隆 4 ・長谷 修 4 電解次亜塩素酸水のドラ イ処理における遊離有効塩素量とバラ灰色かび病の発生病 斑数の関係 Yanaka, S., Morita, S., Chigusa, H., Sugawara, K., Kobayashi, T., Nishizawa, T. and Hase, S.: The relationship between amount of FAC and number of gray mold spots in rose on dry mist treatments of electrolyzed water. 電解次亜塩素 酸水(電解水)は灰色かび病に対して殺菌効果があり,バ ラの切り花に気化装置を用いて気化した電解水を処理(ド ライ処理)すると発病程度が有意に低下することはすでに 報告した(H29 大会).本研究では,電解水のドライ処理時 における花弁表面に到達する遊離有効塩素(FAC)量と発 生病斑数の関係を解析するとともに,ドライ処理時間の短 縮を検討した.FAC 量は 1 分間当たりの量を測定し,その 値に各処理時間を乗算することで総到達量を算出した.病 斑数は褐変面積を直径2 mm 病斑相当数に換算して表した. その結果,総到達量が8139 µg/m2以上であれば3 日間の高 湿度条件に置いても病斑数を10 以下に抑えられると推定さ れた.処理時間の短縮についてはFAC 濃度を高めた電解水 を用いてドライ処理を行ったところ,15 分間の処理で対照 区と比較して有意に発病程度を抑えることができた.これ らの結果から,FAC の総到達量と発生病斑数には負の相関 があり,1 分間当たりの FAC 量を高くすれば,処理時間も 短縮できることが分かった. ( 1 山形大院農・ 2 東芝・ 3 山形最上産地研・ 4 山形大農)
(20) 田 朋恵 1 ・長谷 修 2 ・小林 隆 2 ・安藤 正 3 キュウリうどんこ病に対するケイ酸資材混合豚糞堆肥の施 用効果 Ta, T., Hase, S., Kobayashi, T. and Ando, T.: Effect of application of pig manure compost mixed with a silicic acid agent on powdery mildew disease of cucumber. キュウリうど んこ病は低湿度や昼夜の温度差が大きいと発生が拡大する が,ケイ酸の施用で抑制されることが報告されている.ケ イ酸資材の籾殻低温燃焼灰は軽いことによる作業の困難さ から豚糞堆肥と混合した資材(以下,豚糞灰)を考案した. しかし,N 供給源ともなるためうどんこ病の助長が懸念さ れることから,本研究ではうどんこ病に対する豚糞灰の施 用効果を検討した.キュウリ栽培において一般的なN 量の 化成肥料を施用した処理区とさらに豚糞灰を施用した豚糞 灰区,生の籾殻を含む豚糞堆肥を施用した豚糞籾区を設け, 生長解析と発病調査を行った.その結果,2016 年と 2017 年の生長解析では圃場試験とポット試験で豚糞を施用した2 処理区で生育が促進された.また昨年の発病調査で豚糞籾 区と比べ豚糞灰区で発病が軽減した.本年の圃場試験は全 体で発病しなかったが,本年は昼夜の温度差が5°C 以上の 日が昨年よりも少なく,且つその日の昼間の湿度が昨年よ りも高いことが一因と考えられた.以上から,豚糞灰はう どんこ病の発生条件でも発病を助長しないと示唆された. ( 1 山形大院農・ 2 山形大農・ 3 山形県農業総合研究セ) (21) 宮野法近 1 ・辻 英明 1 ・櫻田史彦 1 ・野田 崇啓 2 ・ 土師 健 2 ・是田 稔 3 ・福本 亮 3 蒸気処理による種子消 毒効果 Miyano, N., Tsuji, H., Sakurada, F., Noda, T., Haji, T., Koreda, M. and Fukumoto, R.: Effect of steam treatment in seed disinfection. 宮城県においては水稲の減農薬栽培への取組 のなかで,アンカウントとなる温湯浸漬法による種子消毒 法が普及しているが,イネばか苗病防除の面では化学農薬 より効果が劣ることから,近年ばか苗病の発生が多くなっ てきている.今回,温湯浸漬法と同様にアンカウントな処 理方法として蒸気を利用した処理方法(以下蒸気処理)が 開発されたことからその効果を確認した.試験は2017 年 3 月~7 月に農研機構及び(株)サタケ社で開発した機械で蒸 気処理を行った水稲種子について保菌状態を培地試験(駒 田培地)で,育苗時の苗調査は現地生産農家の育苗ハウス で見とり調査を行った.その結果,蒸気処理前にフザリウ ム菌が確認されたが処理後は検出されなかった.現地での 苗調査では同一生産者による同一管理下(浸種,催芽,育 苗が同一条件)で温湯浸漬処理したものより蒸気処理した ものが徒長苗の発生率が低くなった. ( 1 宮城古川農試・ 2 農研機構・ 3 (株)サタケ) (22) 伊賀優実 1 ・佐藤菜緒 1 ・武藤さおり 1 ・対馬大希 1 ・ 戸田 武 1 ・古屋廣光 1 ・金勝 一樹 2 ・藤 晋一 1 事前乾燥 を取り入れたイネばか苗病に対する温湯消毒の効果 Iga, H. Sato, N., Muto, S., Tsushima, D., Toda, T., Furuya H., Kanekatsu, K. and Fuji, S.: Effect of hot water disinfection method incorporating pre-drying against Bakanae disease. 水 稲種子消毒法としての温湯消毒法は全国的に広く普及し, 大規模消毒装置も登場している.しかしながら,60°C 10 分 の温湯消毒法は化学合成農薬よりも防除効果が劣っており, 特にイネばか苗病の多発がしばしば問題となっている.一 方,種子の水分含量を10%以下にすると,高温耐性が強化 され,65°C 10 分の温湯消毒でも出芽に影響しないことが明 らかになっている.そこで本研究では,事前乾燥+温湯消 毒(65°C 10 分)によるイネばか苗病の防除効果向上の可能 性について調査した.対照区としては少なくとも60°C 10 分 温湯消毒処理区及び化学合成農薬処理区を設けた.開花期 接種した種子(短銀坊主)およびあきたこまちの自然感染 種子(1 ロット)においては,効果の向上は認められなかっ た.一方,ばか苗病の発生が認められない圃場から収穫し た種子(2 ロット)を用いて農家慣行の育苗および本田移植 を行った試験では,温湯消毒処理区で発病が認められたの に対し,事前乾燥+温湯消毒(65°C 10 分)では,育苗から 出穂直前までばか苗病の発生が認められなかった.以上の 結果から,汚染程度の低い種子では,事前乾燥+温湯消毒 (65°C 10 分)処理で防除効果の向上が期待できることが明 らかとなった. ( 1 秋田県大生資・ 2 農工大) (23) 佐々木南海・佐藤菜緒・武藤さおり・対馬大希・ 戸田 武・古屋廣光・藤 晋一 発生圃場から距離別に収 穫した種子の発病率に基づいたばか苗病菌飛散距離の推定 Sasaki, M., Sato, N., Muto, S., Tsushima, D., Toda, T., Furuya H. and Fuji, S.: Estimation of scattering distance of Bakanae disease based on infected rate of seeds harvested by each distance from diseased field. イネの採種圃場周辺では,周辺圃場でばか 苗病が発生した場合の採種の可否を決定する基準を各県で 設けている.秋田県ではその距離を500 m としているが, 胞子の真の飛散距離に基づいた距離の再設定が必要である. 本研究では,ばか苗病菌の真の胞子飛散距離を明らかにす るため,2014 年から 2016 年に,農家圃場に 10 m2の規模で ばか苗病菌罹病株を移植し,周辺圃場にばか苗病菌胞子を 飛散させた.その後,周辺圃場から距離別に収穫し,収穫 した種子を翌年播種して発病調査を行った.調査はいずれ も播種21 日後に行い,各区とも全苗について徒長苗数を調 査して発病苗率を求めた.その結果,2014 年は罹病株から 200 m 以上離れた地点での発病苗率が多かった.2015 年は 罹病株周辺から収穫した種子で発病が見られたが,150 m
以降の発病が多かった.2016 年では 0 m 地点の発病が多かっ た.3 ヶ年の試験いずれにおいても罹病株から 100 m 地点 にかけての発病苗率は低かったが,罹病株から200 m 地点 での発病苗率が高かった.現在200 m 地点より分離した菌 を中心に,移植した罹病株由来であるかを明らかにするた め,マイクロサテライト解析を進めている.(秋田県大生資) (24) 猫塚修一 リンゴ褐斑病の感染開始時期の推定 Nekoduka. S.: A forecasting trial for the primary infection of ascospores and symptom development of apple blotch (Diplocarpon
mali). リンゴ褐斑病は,前年の被害落葉に形成された子の う胞子が第一次伝染源となり,岩手県では5~6 月に感染す る.基準圃(北上市,無防除樹)における初発時期は例年6 月3 半旬であるが,一般園地での早期発生年では 6 月 1 半 旬と早まることが多く,予察に活用できる可能性がある. そこで,本病の感染開始時期とその気象条件を明らかにす るため,2005~2007 年にかけて基準圃内にポット植えリン ゴ樹を定期的に配置する曝露試験を実施した.その結果, 無防除樹での初発が6 月 3 半旬であった年は 5 月 5–6 半旬 の曝露で初感染したが,初発が6 月 1 半旬の年は 5 月 3–4 半旬の曝露で初感染した.当該時期の気象は,いずれも半 旬当りの最低気温が11°C を初めて超えかつ日降水量 5 mm 以上の降雨日があった.そこで,過去11 年間について,上 記の気象条件を満たした半旬を推定感染開始時期とすると, 推定初発時期(感染からの積算温度が159 日度に達した半 旬)は,基準圃での初発時期と概ね一致した.以上から, 本病の感染開始時期と初発時期は,気象データを用いて推 定できると考えられた. (岩手防除所) (25) 八重樫元 1 ・平山和幸 2 ・赤平知也 2 ・伊藤 伝 1 青 森県で分離されたリンゴ黒星病菌におけるCYP51A1 遺伝
子の変異とDMI 剤感受性の関連 Yaegashi, H., Hirayama, K., Akahira, T. and Ito, T: Association of CYP51A1 gene mutation and sensitivity to DMI fungicides in Ventura inaequalis isolated from Aomori Prefecture. 2015 年より青森県津軽地方を中心 にリンゴ黒星病が多発し,本病に有効なステロール脱メチ ル化阻害剤(DMI 剤)感受性の低下が報告されている(平 山ら,平成29 年度大会).DMI 剤感受性低下の一因として, 標的遺伝子であるCYP51A1 遺伝子の変異が考えられる.そ こで本研究では,検定培地上でのDMI 剤(フェナリモルや ジ フ ェ ノ コ ナ ゾ ー ル ) 感 受 性 が 異 な る リ ン ゴ 黒 星 病 菌 (Ventura inaequalis)について,CYP51A1 遺伝子の変異を解 析した.その結果,DMI 剤低感受性株では,コード領域 (1535 bp)上の 398 番目の塩基置換(A398T;アミノ酸はチ ロシンからフェニルアラニンに変異)が共通して認められ た.そこで,DMI 剤低感受性菌が発生した青森県内のリン ゴ園から分離された菌株を調査したところ,30 菌株中 26 菌 株でA398T 塩基置換が認められた.一方,青森りんご研究 所内の殺菌剤無散布圃場から分離された菌株では,A398T 塩基置換が認められたのは24 菌株中 1 菌株のみであった. 以上より,リンゴ黒星病菌CYP51A1 遺伝子の A398T 塩基 置換がDMI 剤感受性低下に関わることが示唆された. ( 1 農研機構果樹茶リンゴ・ 2 青森産技セりんご研) (26) 岩井孝尚・佐藤健太 GUS 遺伝子導入いもち病菌 を用いたイネ葉における病斑形成過程の観察 Iwai, T. and Sato, K.: Observation of lesion formation in rice leaves infected with rice blast fungus expressing GUS gene. いもち病菌がイ ネ葉上で付着器を形成して宿主細胞へ侵入し,病斑形成に 至る罹病性の過程について研究が行われているが,イネ葉 組織内でどの様に増殖して病斑を形成するかについては不 明な点が多い.本発表では,いもち病菌の感染から病斑形 成に至る過程を簡便に解析するため,GUS 遺伝子を恒常的 に高発現するいもち病菌を作出し,イネ葉へ接種すると, 感染組織内のいもち病菌をGUS 染色によって特異的に観察 できたので報告する.GUS 遺伝子高発現菌株をイネ葉に接 種すると,2 日目までは目立った病斑は観察されないが,3 日目から白色の進展型病斑が見られ,その後,急速に拡大 した.GUS 染色を行った葉の横断切片を作成して観察する と,多くの分生子は機動細胞上に付着器を形成してイネへ 進入し,2 日目までは主に葉肉細胞で増殖し,病斑が急拡大 する3 日目以降では葉肉細胞に加えて道管部分での菌糸の 増殖が観察された.このことから,イネ葉上での病斑形成 及びその急拡大には,いもち病菌の道管部分での増殖が重 要であると考えられた. (宮城大学食産業学部) (27) 外田友佳子・古澤みづき・岩井孝尚 CRISPR/Cas9 システムによるOsACO7 及び OsFNSI-3 のノックアウト植
物作出 Sotoda, Y., Furusawa, M. and Iwai, T.: Generation of knockout rice plants for OsACO7 and OsFNS I-3 using CRISPR/ Cas9 system. いもち病抵抗性品種(IL7)は,菌に感染後 に過敏感反応が引き起こされて菌の増殖が抑制される.現 在まで,この反応過程で抵抗性特異的にエチレン・シアン を合成する酵素遺伝子OsACO7 と,フラボノド化合物を合 成する酵素遺伝子OsFNS I-3 が重要であることを報告して いる.本発表では,各遺伝子のいもち病抵抗性への寄与を 生理生化学的に明らかにするために,CRISPR/Cas9 システ ムを用いて,これら遺伝子のノックアウト植物をそれぞれ 作出したので報告する.CRISPR/Cas9 システムのイネへの 導入には,pZH_OsU6gRNA_MMCas9 を用いて行い,標的 部 位 はOsACO7 遺 伝 子 の コ ー ド 領 域 中 の 1 か 所, 又 は OsFNS I-3 遺伝子中の 2 カ所とした.OsACO7 遺伝子の変異
について調べると,2 本の染色体の両方に何らかの変異が挿 入された個体が全体の71%,同一の 1 塩基が挿入又は欠失 した変異ホモ個体は全体の21%であった.OsFNS I-3 遺伝 子については変異ホモ個体が11%であった.作出された各 遺伝子の変異ホモ個体にいもち病菌を接種すると,いずれ の植物でも抵抗性が打破された. (宮城大学食産業学群)