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(1)

地圏環境リスク評価システムによる油汚染土壌

の暴露・リスク評価

BTEXおよび脂肪族TPHの懸念レベルの推定―

川辺 能成

1

・原 淳子

2

・坂本 靖英

3

・駒井 武

4 1(独)産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門(〒305-0053 茨城県つくば市小野川16-1) E-mail:[email protected] 2(独)産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門(〒305-0053 茨城県つくば市小野川16-1) E-mail: [email protected] 3(独)産業技術総合研究所 メタンハイドレート研究ラボ(〒305-0053 茨城県つくば市小野川16-1) E-mail: [email protected] 4(独)産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門(〒305-0053 茨城県つくば市小野川16-1) E-mail: [email protected] 本研究では油分としてベンゼン,トルエン,エチルベンゼン,キシレンおよび脂肪族TPHを対象として, 著者らが開発した地圏環境リスク評価システム(GERAS-1)を用いて暴露・リスク評価を行った. 油分中の各化学物質の暴露経路は異なっており,ベンゼンなど揮発性の高いものでは大気経由,炭素数 の大きいTPHなど,土壌への残留性が高い物質では土壌摂食というように,各化学物質で異なってい た . 懸念レベル値としては,ベンゼン0.03 mg/dm3,トルエン1 mg/dm3,キシレン1 mg/dm3,エチルベンゼン0.4 mg/dm3と算出された.一方,脂肪族TPHの懸念レベル値としては,TPH(C6-C16)200-2000 mg/kg程度, TPH(C16-C34)で30000-40000 mg/kgと算出された.

Key Words : soil, risk assessment model, BTEX, aliphatic TPH, exposure, risk 1. はじめに 近年,産業活動に起因した土壌・地下水汚染の事例が 増加している1).また,重金属類のように自然起源の有害 物質が土壌や地下水中に多量に存在し,バックグラウン ドとしての濃度レベルが高い地域もみられる.一方,揮 発性有機化合物(VOC),多環芳香族炭化水素(PAHs)および 油分のような有機化合物による汚染は,自然起源はほと んどなく,むしろ産業活動に起因した人為的な要素が大 きい. これらの環境問題を客観的に評価するための手法とし て,暴露をもとにしたリスク評価のアプローチが重要で ある1).すなわち,土壌や地下水環境の目標リスクを設定 できることや,浄化・修復技術によるリスク低減効果を 定量的に評価することができる.この際利用されるのが 暴露評価モデルであり,著者らは,重金属類2)および有機 化合物3)を評価できるスクリーニングモデルを開発し,有 害化学物質の暴露評価を行った2)-4). 一方,鉱物油を主体とする油成分(以下,これを油分と いう)による土壌汚染は,ガソリン貯蔵タンクの老朽化に 伴う漏洩や不法投棄など非常に多くの事例がある.わが 国の油分による土壌環境規制は,油臭や油膜といった生 活環境項目に限定されている.また,現在のところ油分 に対する環境基準値はベンゼンのみに設定されており, トルエンやキシレンなどのベンゼン化合物や多環式芳香 族炭化水素類(PAHs)などの物質に対しては規制がなされ ていない.また,油分についてはTPH(全石油系炭化水素 量)として評価する場合があるが,これらについても現在 のところヒトや生態系への評価がほとんどなされていな い.一方,これらの物質には,発ガン性などヒトに対す る健康影響に害を及ぼす物質もあり,ヒトや生態系への 影響評価や対策が必要であると考えられる. そこで,本研究では油分としてBTEX(ベンゼン,トル エン,エチルベンゼン,キシレン)および脂肪族TPHを対 象として,著者らが開発した地圏環境評価システムの中 のスクリーニングモデル(GERAS-1:Geo-environment Risk Assessment System, Tier1)4)を用いて暴露評価を行い,一般的 な環境条件下でその許容濃度レベルについて検討した.

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2. 油汚染土壌の暴露評価方法

(1) 地圏環境評価システム(GERAS-1)

GERAS-1(Geo-environmental Risk Assessment System, Tier1) (図-1)は,独立行政法人産業技術総合研究所で開発された, WINDOWS上で動作するスクリーニング評価モデルであ り,重金属類や有機化合物あるいはTPHといった化学物 質のヒトへの暴露量やそのリスクおよび許容濃度レベル を推定することができる.本モデルでは,はじめに土壌 における固体,液体(間隙水)および気体(土壌空気)を対象 として化学物質のフガシティー容量の計算を行う.初期 条件として居住地域における土壌からの有害化学物質の 土壌含有量あるいは溶出値を与えることにより,土壌空 気および土壌間隙水中の化学物質の濃度を算出する.こ の計算では土壌中の有機炭素量やpHおよび吸着などのフ ァクターによりそれぞれの化学物質に対して異なった値 が得られる.次に土壌の各相から大気や地下水への移動 過程の計算を行い,そして,各種暴露媒体中(大気,作物, 地下水など)の濃度が決定される.最後にヒトの行動パタ ーンや生活環境(例えば,飲用水として地下水を利用して いるなど)の暴露シナリオに基づいて,各媒体からヒトへ の暴露量が算出される.GERAS-1において考慮した暴露 経路は,土壌の直接摂食,飲用水や農作物を摂取する経 口暴露,土壌から大気へ蒸発した化学物質や飛散した土 壌粒子を呼吸する吸入暴露および土壌との接触や飲用水 との接触による皮膚吸収暴露となっている.なお,計算 パラメータや計算式の詳細については,既報2),3)を参考さ れたい. (2) 使用パラメータ 本研究では,油分としてBTEXおよび脂肪族TPHを対象 として暴露・リスク評価を行った.なお,油分に含まれ る他の物質,主にPAHsについては,次報で述べる予定で ある.表-1にGERAS-1で評価した化学物質の毒性パラメ ータを示す.ベンゼンはThe International Agency for Research on Cancer (IARC)によると最も発ガン性(白血病)の高いグル ープ1に属しており,経口,経気道および経皮の発ガンス ロープファクターおよび発ガンユニットリスクが設定さ れている.また,WHOによる耐容一日摂取量(TDI)の設定 はないものの,経口の参照用量(Reference Dose: RfD)および 経気道の参照濃度(Reference Concentration: RfC)が存在する5) トルエン,エチルベンゼンおよびキシレンについては, 発ガン性はないものの,慢性中毒として皮膚や中枢神経 系に影響を及ぼすことが知られている.WHO6)ではTDI を設定しているほか,米国環境保護庁(U.S.EPA)では RfD,RfCを設定している5).また,TPHについては,炭化 水素化合物の集合体であり,一概に毒性を定めることは 困難であるが,EPAのTPHワーキンググループ7)-11)では, 過去の文献などを詳細に調査することにより,TPHの毒 性値を検討している.それによるとTPHは脂肪族あるい は芳香族で毒性が異なるほか,同族であっても炭素数に より毒性が異なり,脂肪族TPHでは,C5-C6で神経系への 影響,C8-C16で肝変化および血液学的変化,C16-C35で肝 肉芽腫があると報告されている.GERAS-1における目標 暴露量は,TDIの10%となる暴露量,暴露経路毎(経口, 経 気道,経皮)のRfDが10%となる暴露量および暴露経路毎 の発ガンリスクが10-5以下となる条件とした. 土壌・地下水に関するパラメータは,既報2-4)と同様に 関東ロームおよび砂質土のものを用いた.また,暴露に関 するパラメータについても既報2)-4)と同様の値を用いた. 本研究で用いたパラメータの一覧を表-22),3)に示す. 図-1 GERAS-1 の起動および評価画面

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3. 結果および考察 (1) 油汚染土壌の暴露量および暴露経路 表-3に油汚染土壌の代表的な物質として,BTEXおよび 脂肪族TPHが土壌に1mg/kg存在する場合における暴露量 および暴露経路を示す.関東ロームと砂質土とで比較し てみると,砂質土の場合の全暴露量は,関東ロームの場 合よりも1.8-3.2倍大きくなった.詳細を見てみると,土 壌の直接摂食,土壌吸入および皮膚吸収による暴露は, 関東ロームの場合の方が大きくなっているものの,主要 暴露経路である室内大気や地下水摂取による暴露が砂質 土の場合よりも低くなっている.すなわち,関東ローム の場合では,有機炭素含有率が砂質土よりも大きく,土 壌から土壌空気や土壌間隙水への移行が砂質土と比較す ると少なくなるため,このような結果が得られるといえ る.このように土壌の違いにより暴露量やその暴露割合 は異なってくる.したがって,各汚染サイトにおける土 壌の性質を把握することが重要となってくる. 暴露経路ではベンゼンの場合,大気経由の暴露割合が 最も高く,ついで,地下水経由,作物経由となっている. 土壌の直接摂食や土壌粒子の吸入による暴露は全体の 0.2%程度であり,ほとんど寄与しないものと考えられる. 他の物質においても,共通して大気吸入による暴露が主 となっており,ついで,地下水経由および作物経由とな っていることが分かる.したがって,これらの物質で汚 染されているサイトにおいては,大気経由の暴露および 地下水や作物経由からの暴露を遮断することがリスクを 削減する上で重要であるといえる.なお,図には示さな いがこの大気経由の暴露は室内における暴露がほとんど となっている.子供と大人の期間におけるBTEXの暴露 について比較してみると,暴露経路の割合は,子供と大 人とでそれほど変わりがなかった.また,全暴露量は子 供の方が大人よりも1.4(エチルベンゼン)~1.5倍(ベンゼン, トルエン,キシレン)多くなっていた.ただし,重金属の 場合2)ほど大人と子供の差は大きくならなかった.重金属 の場合では,主要経路が土壌の直接摂食となっているこ とが多い3).表-2の暴露パラメータをみると,一日あたり の土壌摂取量は大人が100mg/dに対して子供の場合では 200mg/dと2倍の差がある.さらに,体重も子供の方が小 さいため重金属の場合2)では暴露量の差が大きくなる.一 方,BTEXの場合では,土壌の直接摂食は主要暴露経路 でなく,室内大気や地下水摂取が主要暴露経路となって いる.これらの暴露パラメータである一日あたりの呼吸 量や飲料水摂取量は大人の方が大きいため,それほど差 が大きくならないといえる. 一方,脂肪族のTPHについて見てみると,TPH(C5-C6) では,関東ローム99.3%および砂質土99.4%とほとんど全 ての暴露経路が大気経由の暴露であるのに対し, TPH(C21-C34)では関東ローム24.4%および砂質土43.0%と なっており,代わりに土壌の直接摂食による暴露割合が 大きくなってくる.すなわち,炭素数が少ないものほど 大気経由の暴露割合が多くなり,炭素数が多くなると土 壌の直接摂食による暴露割合が多くなる傾向があった. これは,炭素数が少ないものほど揮発しやすく大気への 移行が多くなるためである.炭素数が多くなると揮発し にくいため,土壌に留まりやすくなり土壌の直接摂食に よる暴露量が多くなる.また,脂肪族のTPHについては, 土壌から水への移行は少ないものの,根菜類への取り込 みが多くなるため,地下水よりも農作物からの暴露割合 表-1 鉱物油の毒性パラメータ TDI RfD [mg/kg/d] スロープファクター[1/(mg/kg/d)] 化学物質 [mg/kg/d] 経口 吸入 経皮 経口 吸入 経皮 ベンゼン - 3.0×10-3 2.1×10-2 - 2.9×10-2 6.0×10 3.0×10-2 トルエン 0.22 2.0×10-1 1.4×100 1.6×10-1 - - - キシレン 0.18 2.0×100 2.5×101 1.8×100 - - - エチルベンゼン 0.097 1.0×10-1 3.5×100 9.7×10-2 - - - TPH(C5-C6) - 5.0×100 6.4×101 - - - - TPH(C6-C8) - 5.0×100 6.4×101 - - - - TPH(C8-C10) - 1.0×10-1 3.5×100 - - - - TPH(C10-C12) - 1.0×10-1 3.5×100 - - - - TPH(C12-C16) - 1.0×10-1 3.5×100 - - - - TPH(C16-C21) - 2.0×100 - - - - - TPH(C21-C34) - 2.0×100 - - - - - 表-2 鉱物油の暴露・リスク評価に用いたパラメータ (A) 土壌パラメータ(関東ローム) 値 パラメータ 関東ローム 砂質土 土壌空気の体積分率 [-] 0.20 0.25 間隙水の体積分率 [-] 0.30 0.55 土壌粒子の体積分率 [-] 0.50 0.20 土壌密度 [g/cm3] 1.2 0.52 有機炭素含有率 [-] 0.058 0.15 pH 6 7 粘土分率 [-] 0.25 0.38 (B) ヒトに関するパラメータ 年齢 [year] 体重 [kg] 土壌摂取量 [mg/d] 呼吸量 [m3/d] 地下水摂取量 [dm3/d] 小人 (0-6) 15 200 6 1 大人(7≥) 50 100 15 2

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が多くなることが明らかになった.子供と大人の期間に おけるTPHの暴露について比較してみると,BTEXの場合 と同様に,暴露経路の割合は,子供と大人とでそれほど 変わりがなかった.一方,全暴露量はTPHの炭素数の増 加に伴い,子供の方が大人よりも多くなっていた.詳細 をみてみると,TPH(C5-C12)では,約1.3-1.4倍,TPH(C12-C34) では約3.8-3.9倍子供の暴露量が大人よりも多くなってい た.これは,炭素数が小さいTPHでは,BTEXと同様に, 土壌の直接摂食は主要暴露経路でなく,室内大気や地下 水および作物摂取が主要暴露経路となっているため,そ れほど小人と大人の差が大きくならないと考えられる. 炭素数が大きくなると重金属類の場合2)と同様に,1日あ たりの土壌摂取量が2倍多くなり,また,体重も約3.3倍 大人の方が大きくなるため,暴露量の差異が大きくなる. (2) 油汚染土壌の生涯暴露とそのリスク これまで油汚染土壌のヒトへの暴露経路および暴露量 について検討したが,生涯においてヒトがこのような暴 露を受けたとき,ヒトに対してどのような健康影響を及 ぼすかを知る必要がある.そこで,土壌中の油分がどの 程度の濃度まで許容できるか検討した.暴露シナリオと しては,土質として関東ロームおよび砂質土を,暴露経 路はワーストケースを想定し,すべての暴露経路を考慮 した.また,生涯暴露期間を子供6年,大人64年の合計70 年間として生涯暴露量を算出した.懸念レベル値として は前述したように,TDIの10%となる暴露量,暴露経路毎(経 口,経気道,経皮)のRfDが10%となる暴露量および暴露 経路毎の発ガンリスクが10-5以下となる条件とした. 表-4にBTEXおよびTPHのそれぞれの目標リスクに対す る懸念レベル値を示す.ベンゼンでは,大気吸入による 発ガンリスクを目標リスクとした場合における土壌含有 量および溶出値が最も小さくなった.一方,トルエン, キシレンおよびエチルベンゼンでは,TDIの10%を目標リ スクとした場合における土壌含有量および溶出値が懸念 レベル値となった.ベンゼンの場合では,現行の土壌の 溶出基準値0.01 mg/dm3に対して,GERAS-1では0.02(砂質 土)-0.03(関東ローム) mg/dm3と算出された.BTEXのベンゼ ン以外の物質については,現在のところわが国では基準 が設けられていない.一方,WHOのガイドラインでは飲 用水中の濃度として,トルエン0.7 mg/dm3,キシレン0.5 mg/dm3,エチルベンゼン0.3 mg/dm3を設定している.今回 のGERAS-1による計算結果はトルエンで1 mg/dm3,キシレ 表-3 鉱物油含有化学物質の暴露量および暴露経路 (A)関東ローム 暴露量 [mg/kg/d] 化学物質 土壌摂取 土壌吸入 大気吸入 皮膚吸収 地下水摂取 農作物摂取 全暴露量 ベンゼン 3.0×10-6(0.2%) 9.6×10-9(0.0%) 9.6×10-4(64.9%) 1.4×10-7(0.0%) 4.2×10-4(28.6%) 9.3×10-5(6.3%) 1.5×10-3 トルエン 3.0×10-6(0.4%) 9.6×10-9(0.0%) 5.2×10-4(64.7%) 1.4×10-7(0.0%) 2.0×10-4(24.6%) 8.3×10-5(10.3%) 8.0×10-4 キシレン 3.0×10-6(0.8%) 9.6×10-9(0.0%) 2.0×10-4(53.8%) 1.4×10-7(0.0%) 1.1×10-4(31.1%) 5.2×10-5(14.2%) 3.7×10-4 エチルベンゼン 3.0×10-6(0.8%) 9.6×10-9(0.0%) 2.2×10-4(60.4%) 1.4×10-7(0.0%) 7.6×10-5(21.2%) 6.3×10-5(17.6%) 3.6×10-4 TPH(C5-C6) 3.0×10-6(0.0%) 9.6×10-9(0.0%) 9.4×10-3(99.3%) 1.4×10-7(0.0%) 3.1×10-5(0.3%) 2.9×10-5(0.3%) 9.5×10-3 TPH(C6-C8) 3.0×10-6(0.1%) 9.6×10-9(0.0%) 2.8×10-3(99.0%) 1.4×10-7(0.0%) 6.8×10-6(0.2%) 1.8×10-5(0.6%) 2.8×10-3 TPH(C8-C10) 3.0×10-6(0.6%) 9.6×10-9(0.0%) 5.1×10-4(97.3%) 1.4×10-7(0.0%) 8.8×10-7(0.2%) 1.0×10-5(1.9%) 5.3×10-4 TPH(C10-C12) 3.0×10-6(2.9%) 9.6×10-9(0.0%) 9.1×10-5(90.7%) 1.4×10-7(0.1%) 1.1×10-7(0.1%) 6.2×10-6(6.1%) 1.0×10-4 TPH(C12-C16) 3.0×10-6(12.5%) 9.6×10-9(0.0%) 1.7×10-5(73.4%) 1.4×10-7(0.6%) 5.6×10-9(0.0%) 3.2×10-6(13.4%) 2.4×10-5 TPH(C16-C21) 3.0×10-6(55.4%) 9.6×10-9(0.2%) 1.1×10-6(20.9%) 1.4×10-7(2.7%) 4.5×10-11(0.0%) 1.1×10-6(20.8%) 5.4×10-6 TPH(C21-C34) 3.0×10-6(53.0%) 9.6×10-9(0.2%) 1.4×10-6(24.4%) 1.4×10-7(2.6%) 4.5×10-11(0.0%) 1.1×10-6(19.9%) 5.6×10-6 (B)砂質土 暴露量 [mg/kg/d] 化学物質 土壌摂取 土壌吸入 大気吸入 皮膚吸収 地下水摂取 農作物摂取 全暴露量 ベンゼン 3.0×10-6(0.1%) 9.6×10-9(0.0%) 3.1×10-3(68.9%) 1.4×10-7(0.0%) 1.1×10-3(25.3%) 2.5×10-4(5.5%) 4.5×10-3 トルエン 3.0×10-6(0.1%) 9.6×10-9(0.0%) 1.7×10-3(70.9%) 1.4×10-7(0.0%) 5.2×10-4(21.7%) 2.2×10-4(9.1%) 2.4×10-3 キシレン 3.0×10-6(0.3%) 9.6×10-9(0.0%) 6.8×10-4(68.0%) 1.4×10-7(0.0%) 2.0×10-4(18.9%) 1.6×10-4(15.7%) 1.0×10-3 エチルベンゼン 3.0×10-6(0.3%) 9.6×10-9(0.0%) 6.2×10-4(56.4%) 1.4×10-7(0.0%) 3.0×10-4(28.2%) 1.4×10-4(12.9%) 1.1×10-3 TPH(C5-C6) 3.0×10-6(0.0%) 9.6×10-9(0.0%) 3.0×10-2(99.4%) 1.4×10-7(0.0%) 8.1×10-5(0.3%) 7.6×10-5(0.3%) 3.0×10-2 TPH(C6-C8) 3.0×10-6(0.0%) 9.6×10-9(0.0%) 8.7×10-3(99.2%) 1.4×10-7(0.0%) 1.8×10-6(0.2%) 4.6×10-5(0.5%) 8.8×10-3 TPH(C8-C10) 3.0×10-6(0.2%) 9.6×10-9(0.0%) 1.6×10-3(98.1%) 1.4×10-7(0.0%) 2.3×10-6(0.1%) 2.6×10-5(1.6%) 1.6×10-3 TPH(C10-C12) 3.0×10-6(1.0%) 9.6×10-9(0.0%) 2.9×10-4(93.6%) 1.4×10-7(0.1%) 2.9×10-7(0.1%) 1.6×10-5(5.2%) 3.1×10-4 TPH(C12-C16) 3.0×10-6(4.5%) 9.6×10-9(0.0%) 5.5×10-5(83.4%) 1.4×10-7(0.2%) 1.5×10-8(0.0%) 8.2×10-6(12.4%) 6.6×10-5 TPH(C16-C21) 3.0×10-6(31.3%) 9.6×10-9(0.1%) 3.3×10-6(36.9%) 1.4×10-7(1.5%) 1.2×10-10(0.0%) 2.8×10-6(29.8%) 9.5×10-6 TPH(C21-C34) 3.0×10-6(29.0%) 9.6×10-9(0.1%) 4.3×10-6(43.0%) 1.4×10-7(1.4%) 1.2×10-10(0.0%) 2.8×10-6(27.6%) 1.0×10-5

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ンで1 mg/dm3,エチルベンゼンで0.4 mg/dm3となり,WHO のガイドライン値よりも多少大きくなったが,大幅な違 いはなくほぼ妥当な値であるといえる.したがって,そ れぞれの物質に対する濃度が表-4に示した懸念レベル値 より小さければヒトへの健康リスクは大きくないと考え られる.WHOによるガイドライン値は飲用水中の基準で あり,ヒトが1日に2 dm3の飲用水を摂取するものとして 暴露量を計算し,TDIの10%値を許容できる暴露量として 算出している.一方,今回のGERAS-1の計算では地下水 経由による暴露として,土壌から溶出したものがある程 度地下水により濃度が希釈され,その後ヒトが井戸水な どを通して飲用するという仮定で計算を行っており,地 下水濃度が溶出値と等しくなっていない.したがって, 評価された値は,WHOのガイドライン値よりも多少大き くなるが,土壌の直接摂食や作物経由,大気経由などさ まざまな暴露経路を考慮しているため,極端に値が大き くならないといえる.なお,ある化学物質の暴露経路が 100%地下水経由とすれば,WHOのガイドライン値と等 しくなる.脂肪族のTPHについては,TPH(C5-C10)の場合 では吸入による参照容量の10%値,それ以上の炭素数 (C10-C34)では経口による参照容量の10%値を目標リスク とした場合における土壌含有量および溶出値が懸念レベ ル値となった.懸念レベル値としては,有効数字2桁目を 切り捨てるとTPH(C5-C6)およびTPH(C8-C10)で土壌含有量 200(砂質土)-600(関東ローム)mg/kg,TPH(C6-C8)で700(砂質 土)-2000(関東ローム) mg/kg,TPH(C10-C16)で500(砂質 土)-1000 (関東ローム)mg/kg,TPH(C16-C34)で30000(砂質 土)-40000(関東ローム) mg/kgと算出された.TPHについて は,わが国では土壌に関する基準値は設定されていない. また,欧米諸国においてもさまざまな研究機関で検討が なされており,推奨値などは各地域について設定されて いる場合があるものの,土壌中のTPHについての明らか な基準値は設定されていない.これは,これらの物質が さまざまな有機化合物の混合物であり,毒性や物性など のパラメータが完全に整備されていないためと考えられ る.したがって,これらの物質のデータ整備をしていく 必要があるといえる.また,TPHについては,ガソリン や軽油,重油などの種類の違いにより,含まれる物質も 異なっているほか,主要となる炭素数も異なっている. さらに,毒性が高いとされるナフタレンやベンゾ(a)ピレ ンなどの芳香族炭素類(PAHs)も多く含まれている場合が ある.例えば,ガソリンでは脂肪族炭化水素が全体の47%, BTEXが19%,その他の芳香族炭素が15%含まれていると いう報告8)がある.したがって,今回評価したBTEXや脂 肪族TPHだけでなくナフタレンやベンゾ(a)ピレンなどの PAHsやそれらのTPHについても評価を行うことが油汚染 の評価には必要であるといえる.これらの物質について は,現在検討を行っており,それらを加味して総合的に 油分による土壌汚染の評価を行う予定である. 一方,今回のリスク評価はスクリーニング評価である ため,個々の土壌汚染のリスクを過小評価するものであ ってはならない.本モデルではヒトの個体差などによる 不確実性の大きいパラメータ(例えば化学物質のヒトへの 吸収率,1日あたりの土壌摂取量,呼吸量など)を安全サ イドで評価しており,安全サイドの評価結果となってい る.したがって,暴露量や懸念レベルが過小評価される ことはなく,実用性に問題はないと考えられる.一方, 鉱物油などによる土壌汚染は,各サイト毎にその性質が 異なっている.例えば住宅地,工業地など土地の利用形 態や地下水利用などそこに居住するヒトの生活パターン あるいは土壌の性質などは千差万別である.したがって, リスク評価における結果は単一のものではなく,各汚染 サイトにより結果が異なってくるといえる.そして,そ れらの評価結果が懸念レベルを超過した場合は,米国の RBCA (Risk Based Corrective Action)モデル12)や著者らが開発

したGERAS-213)などのサイトモデルを用いてリスク評価 する必要がある. 4. 結論 本研究では油分としてBTEXおよび脂肪族TPHを対象と して,著者らが開発した地圏環境評価システム(GERAS-1) を用いて暴露・リスク評価を行い,以下に示すような結 果が得られた. (1) 砂質土の暴露量は,関東ロームの場合と比較すると 1.8-3.2倍大きくなった.これは,主要暴露経路である室 内大気や地下水摂取による暴露が関東ロームの場合より も大きくなるためである. (2) BTEXの暴露経路は,共通して大気経由の暴露割合が 最も高く,ついで地下水経由,作物経由となっていた. また,土壌の直接摂食や土壌粒子の吸入による暴露は, ほとんど寄与していないものと考えられた.したがって, これらの物質で汚染されているサイトにおいては,大気 経由の暴露および地下水や作物経由からの暴露を遮断す 表-4 鉱物油含有化学物質の懸念レベル 懸念レベル 化学物質 単位 関東ローム 砂質土 ベンゼン [mg/dm3] 3.4×10-2 2.6×10-2 トルエン [mg/dm3] 1.3×100 1.1×100 キシレン [mg/dm3] 1.3×100 1.2×100 エチルベンゼン [mg/dm3] 4.8×10-1 4.2×10-1 TPH(C5-C6) [mg/kg] 6.8×102 2.1×102 TPH(C6-C8) [mg/kg] 2.3×103 7.4×102 TPH(C8-C10) [mg/kg] 6.8×102 2.2×102 TPH(C10-C12) [mg/kg] 1.1×103 5.2×102 TPH(C12-C16) [mg/kg] 1.6×103 8.9×102 TPH(C16-C21) [mg/kg] 4.9×104 3.4×104 TPH(C21-C34) [mg/kg] 4.9×104 3.4×104

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ることがリスクを削減する上で重要であると考えられた. また,暴露経路の割合は,子供と大人とでそれほど変わ りがなかったが,全暴露量は子供の方が大人よりも1.5倍 程度大きくなった. (3) 脂肪族のTPH暴露経路は,炭素数が少ないものほど大 気経由の暴露割合が多くなり,炭素数が多くなると土壌 の直接摂食による暴露割合が多くなる傾向があった.ま た,脂肪族のTPHについては,土壌から水への移行は少 ないものの,根菜類への取り込みが多くなるため,地下 水よりも農作物からの暴露割合が多くなることが明らか になった.暴露経路の割合は,子供と大人とでそれほど 変わりがなかったが,全暴露量はTPHの炭素数の増加に 伴い,子供の方が大人よりも多くなる傾向が認められた. (4) BTEXの懸念レベル値を検討したところ,ベンゼンで は,大気吸入による発ガンリスクを目標リスクとした場 合における土壌含有量および溶出値が最も小さくなった. 一方,トルエン,キシレンおよびエチルベンゼンでは, TDI の10%を目標リスクとした場合における土壌含有量およ び溶出値が懸念レベル値となった.懸念レベル値として は,ベンゼン0.02-0.03 mg/dm3,トルエン1 mg/dm3,キシレ ン1 mg/dm3,エチルベンゼン0.4 mg/dm3と算出された. (5) 脂肪族のTPHの懸念レベル値を検討したところ, TPH(C5-C10)の場合では吸入による参照容量の10%値,そ れ以上の炭素数(C10-34)では経口による参照容量の10%値 を目標リスクとした場合における土壌含有量および溶出 値が懸念レベル値となった.懸念レベル値としては, TPH(C6-C16)200-2000 mg/kg程度,TPH(C16-C34)で30000- 40000 mg/kgと算出された. 謝辞:本研究を進めるにあたって,(独)産業技術総合研 究所地圏資源環境研究部門 地圏環境評価研究グループ テクニカルスタッフの小川桂子氏,高田貞江氏には文献 調査やデータ解析など多大なる協力をいただいた.ここ に謝意を表す. 参考文献 1) 駒井 武:土壌汚染のリスクマネジメント,ケミカルエ ンジニヤリング ,Vol.69, No.5, pp.329-335, 2004.J 2) 川辺 能成,坂本 靖英,駒井 武:わが国における土 壌中重金属類の暴露量推定-地圏環境評価システムの開 発に関する研究-,資源と素材,Vol.119, No.6, 7, pp. 427- 433, 2003. 3) 川辺 能成,坂本 靖英,駒井 武: わが国における土 壌中有機化合物の暴露量推定-地圏環境評価システムの 開発に関する研究-,資源と素材,Vol.121, No1, pp.19-27, 2005. 4) 川辺 能成,坂本 靖英,駒井 武:わが国における砒 素を含む土壌・地下水からの暴露とリスクの推定,資源 と素材,Vol.119, No.8, pp.489- 493, 2003.

5) U.S. Environmental Protection Agency: Human Health Risk Assessment Risk-Based Concentration Table October 2005 Update, 2005.

6) World Health Organization: Guideline for Drinking-water Quality Third Edition , 2004.

7) Wade, W.: Total Petroleum Hydrocarbon Criteria Working Group Series Volume 1, Analysis of Petroleum Hydrocarbons in Environmental Media , 1998.

8) Potter, L.T.and Simmons, E.K.:Total Petroleum Hydrocarbon Criteria Working Group Series Volume 2, Composition of Petroleum Mixtures, 1998.

9) Gustafson, J. and Tell, J.G.:Total Petroleum Hydrocarbon Criteria Working Group Series Volume 3, Selection of Representative TPH Fractions Based on Fate and Transport Considerations , 1997. 10) Edwards, D.A., Andriot, M.D., Amoruso, M.A., Tummey, A.C.,

Bevan, C.J., Tveit, A., Hayes, L.A., Youngren, S.H. and Nakles, D.V.: Total Petroleum Hydrocarbon Criteria Working Group Series Volume 4, Development of Fraction Specific Reference Doses (RfDs) and Reference Concentration (RfCs) for Total Petroleum Hydrocarbons (TPH) , 1997.

11) Vorhees, D., Gustafson, J. and Weisman, W.: Total Petroleum Hydrocarbon Criteria Working Group Series Volume 5, Human Health Risk-Based Evaluation of Petroleum Contaminated Sites: Implementation of the Working Group Approach , 1999.

12) American Society for Testing and Materials: ASTM PS-104, Philadelphia, PA , 1998.

13) 川辺 能成,原 淳子,駒井 武:地圏環境評価システ

ム(GERAS-2)の開発,第 12回地下水・土壌汚染とその防止

対策に関する研究集会講演集, pp.366- 369, 2006.

(2006.7.14 受付)

EXPOSURE AND RISK ASSESSMENT OF BTEX AND ALIPHATIC TPH BY

GEO-ENVIRONMENTAL RISK ASSESSMENT SYSTEM (GERAS-1)

Yoshishige KAWABE, Junko HARA, Yasuhide SAKAMOTO and Takeshi KOMAI

The exposure rates, the distribution of exposure paths and the risk level of BTEX and aliphatic TPH have been evaluated by using Geo-environmental Risk Assessment System. The major exposure paths to the human are different due to the kind of the oil contents. The human are mainly exposed to BTEX from inhalation of indoor air, groundwater intake and crops intake, whereas they are mainly exposed to TPH (C5-12) from inhalation of indoor air. On the other hand, the main exposure paths of TPH (C12-34) are direct ingestion of soil, inhalation of indoor air and crops intake. The leaching concentrations of exposure limit are estimated at 0.03 mg/dm3 for benzene,1 mg/dm3 for toluene, 1.3 mg/dm3 for xylene and 0.4

mg/dm3 for ethylbenzene. In the case of aliphatic TPH, the soil contents of the exposure limit are calculated

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