• 検索結果がありません。

青年の自立に対する母親の意識とかかわり −質問紙法およびConsensus Rorschach法による接近− [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "青年の自立に対する母親の意識とかかわり −質問紙法およびConsensus Rorschach法による接近− [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)青年の自立に対する母親の意識とかかわり −質問紙法および Consensus Rorschach 法による接近‐ キーワード:母親,質問紙法,Consensus Rorschach 法,自立期にある青年 人間共生システム専攻 長崎 千夏 1.問題と目的. 無視したりする知覚が,そのコミュニケーション過程の. 小此木(1998)は,人生における様々な出来事のスト. 中であらわれやすいともいわれている(鈴木,1983) .. レス値を表示した Holmes & Rahe の「変化に適応する. また,本調査においては事前に「子どもとのこと」に関. ためのストレス」に関する表を紹介している.その中で. する質問紙調査を実施するため,可能な限り「家族関係. 「息子や娘が家を離れる」ことのストレス値は 29 とな. をみる」といった印象を抱きにくい課題である方が望ま. っている(ちなみにストレス値 100 は「配偶者の死」で. しい.その点,Rorschach Card を用いた課題は元来意. ある.また,同じストレス値 29 の出来事には「仕事上. 図的な防衛がはたらきにくいとされており,さらに母子. の責任の変化」と「法律上のトラブル」があげられてい. にとっては「意表をつく」課題であると考えられ,二重. る) .これは米国における研究であるが,日本においても. の意味でとっさの防衛は困難となり,よりリアルなコミ. 子離れの問題は人生の中での大きなストレスになると思. ュニケーション過程を観察することが可能になると考え. われる.本研究は,自立期を迎える青年に対する母親の. られる.. 「意識」と「かかわり」という二つの視点から,現代の 母親を理解しようと試みるものである.. 以上より研究Ⅰでは,長崎(2000)における SCT の 回答をもとに母親がわが子の自立をどのように「意識」. 自立期にある青年と母親の関係についての理論はいく. しているのかに関する質問紙を作成し,子どもの自立に. つかみられるが(岡堂,1986 や落合・佐藤,1996,山. 対する感情的側面である「嬉しさ・さみしさ」との関連. 岸,2000,など) ,いずれも二者間の関係性が「対等な」. を明らかにする.また,母親自身の自尊感情がわが子の. ものへと変化することを明らかにしている.青年を対象. 自立に対する「意識」に影響を与えているとの示唆(長. とした質問紙法による認知的側面をあつかった研究が多. 崎 , 2000 ) を 検 証 す る . 研 究 Ⅱ で は , Consensus. い中,平石ら(1999)は青年とその父母を対象に家族相. Rorschach 法を用いて,母親が自立期にあるわが子に対. 互作用課題を実施し,検査者の目の前で繰り広げられる. してどのように「かかわって」いるのかを事例的に検討. 家族コミュニケーションについて観察・検討している.. することを目的とする.. しかし,全ての家族に対して平等な課題であるのかとい う指摘もなされており(井上,2000) ,方法論上の問題. 2.方法. は残されているといえる.また,柏木(1995)は,近年. 1)研究Ⅰ−青年の自立に対する母親の意識−. になって親と子の両方向からの働きかけが研究の対象と. 目的:. なり始めてはいるが「しかし,これらとて最終的には,. 1.「青年の自立に対する母親の嬉しさ・さみしさ」. そうした相互作用や関係が子どもの発達にどう関わるか というところに戻り,関心は依然子どもの発達に留まっ ている」と述べている. 観察法を用いた家族コミュニケーション理解の方法の ひとつに,Consensus Rorschach 法があげられる.これ は,家族を一室に集めて Rorschach Card を中心に一致. と「青年の自立に対する母親の意識」の関連の検討. 2.母親の自尊感情が「青年の自立に対する母親の意 識」に与える影響の検討 対象と実施時期:大学生の子どもを持つ 75 名の母親を 対象に,平成 13 年 7 月上旬に実施した. 調査内容:. できる答えを見いだすという課題であり,曖昧な図版に. ①青年の自立に対する母親の嬉しさ・さみしさ尺度. 対する「こたえ」であることから誰もが平等に発言でき. (嬉しさ・さみしさ,各1項目,計1項目). るといわれている.対象者が自覚することなく,相手を. ②青年の自立に対する母親の意識尺度.

(2) (長崎(2000)における文章完成法の刺激文『子どもに 干渉しないようにしていることは』および『子どもが失 敗したら』に対する回答をピックアップして,項目を収 集した後,因子分析を行う) ③自尊感情尺度 (Rosenberg の作成した尺度を山本ら(1982)が邦訳し たもの) 分析方法:1.青年の自立に対する母親の意識を多角 的に検討するために尺度①と②の関連を検討する.2. 自尊感情が青年の自立に対する母親の意識におよぼす影 響を検討するために,尺度③により自尊感情高群と低群 にわけ,尺度①の平均値の差を検討する. 2)研究Ⅱ−自立期にある青年に対する母親のかかわり. Table 1 Consensus Rorschach における発言のカテゴ リー一覧 主体的発言. 具体的な反応の(再)提案 自分の反応に関する明細化 カードに対する印象,感想 他者の反応を修正する発言 他者の反応を再び持ち出す発言 合意反応をまとめようとする発言 他者の発言 評価を伴う発言 肯定的評価 に対するコ 否定的評価 メント 他者の反応に関す Open Question る質問 明細化を求める質問 その他 相槌,繰り返し 検査者に対する発 合意反応の報告 言 検査者に対する質問 他者自身に対する印象,感想. − 目的: 「自立期にある青年に対する母親のかかわり」の 検討 対象と実施時期:大学生の女子とその母親4組を対象 に平成 13 年 9 月下旬∼10 月上旬に実施した.. 3.結果および考察 1)研究Ⅰ−青年の自立に対する母親の意識の検討− 0. 尺度作成および基本統計量 最終的な有効標本数は,75 名(男性の子どもを持つ母親. 調査内容と実施方法:Consensus Rorschach 法を用い. 28 名,女性の子どもを持つ母親 47 名)であった.75 名. て母子間コミュニケーションを検討する.心理教育相談. による全 22 項目のデータについて, 「あてはまる」を 6. 室の面接室もしくは被検者の自宅にて.Rorschach10 枚. 点,以下 1 点刻みに減少させ, 「全くあてはまらない」に. 全てを使用し,検査者は同席した.求める合意反応数を. 1点を与えた.逆転項目については「あてはまる」を 1. 一つに限定し,5 分経過で検査者から声をかけ,7分で. 点, 「全くあてはまらない」を6点とした.不良項目(4. 打ち切り.筆記および被検者の了承を得てテープレコー. 項目)を削除し,残りの 18 項目について因子分析を行っ. ダーを用いて記録.正解がないこと,何に見えるか話し. た.共通性の初期値を1とした主成分分析を行い,後続. 合って一つこたえを出すこと,5 分で検査者が声をかけ. 因子との固有値の差に基づいて2因子解を適当と判断し. て 7 分で打ち切りにすること,終了したらカードを検査. 採用した.このとき2因子による累積説明率は 46.50%. 者に返すことを教示として与える.. であった.エカマックス回転後の各項目(一部抜粋)の. 分析方法:まず,形式分析により初発発言者,提案反 応・修正反応数,合意反応提案者を確認する.次に,コ. 因子負荷量を Table 2に示す. 因子負荷量の絶対値が.40 以上を示した項目の内容を. ミュニケーションプロセスを質的に検討するために,. 参考に各因子を解釈した.第1因子は, 「5.意識して子. 「合意反応決定プロセス」および「母親によるかかわり」. どものことを子どもに任せようと考えている」 , 「8.子. を分析する.前者は,母親と女子青年がお互いに提案し. どもを大人として扱っている」などにみられるように,. た反応と合意反応,またその報告者を図示したものと,. わが子を「大人」扱いし,意識的に干渉を控えようと努. 各発言を筆者によるカテゴリー(Table 1)にわけてどの. 力している内容であることから,『わが子を大人扱いす. ような発言が多いまたは少ないのかを概観する.後者の. る意識』と命名した.次に第2因子は, 「21.子どもに何. 「母親によるかかわり」は,逐語記録を一部抜粋しなが. かあっても,自分の力で立ち直ると思う」 , 「22.子ども. ら母親がわが子にどのようなかかわりを行っているのか. を頼もしく思う」など,子どもが自分自身の力でやって. 詳細に分析する.. いくことができるだろうという思いが表れている.逆転 項目についても「6.子どもが子ども自身のことに責任 を取れるか心配である」など,子どもを完全には信頼で きない内容であることから,第2因子を『子どもへの信 頼感』と命名した. なお,信頼性の指標となるクロンバックのα係数は,.

(3) 尺度全体の 18 項目で.86 であった.また,第一因子につ いては.86,第二因子については.75 であり,尺度全体お よび各因子における十分な整合性が確認された.. 20 15. Table 2 「青年の自立に対する母親の意識」尺度因子分. 10. 析の結果(一部抜粋) 項目例. 第1 第2 共通性 因子 因子 第1因子『わが子を大人扱いする意識』10項目. 5 0. 非常にさみしい. 子どものすることには手を出さな .75 いように意識している 子どもを大人として扱っている .70. .37. .56. .53. .55. 全くさみしくない. Figure 2青年の自立に対する母親のさみしさ 尺度度数分布 子どもの性別, きょうだい構成によって, 「子どもの自. 第2因子『子どもへの信頼感』8項目 子どものすることを安心して見て .46 いられる 子どもの行動は心配である .29. どちらともいえない. 立に対する母親の嬉しさ・さみしさ」および「子どもの .68. .49. .71. .50. 自立に対する母親の意識」 に差がみられるかを検討する. きょうだい構成については,長子・中間子・末子の3カ テゴリーを設けた.性別(2水準)×きょうだい構成(3 水準)を独立変数,「子どもの自立に対する母親の嬉し. 次に, 「青年の自立に対する母親の嬉しさ・さみしさ」 尺度について検討を行う.Figure 1をみると,ほとんど の母親が子どもの自立を嬉しいと感じていることがわか る.一方で,子どもの自立に対するさみしさの度合い (Figure 2)は母親によって異なり,非常にさみしく感 じている母親から全くさみしく思っていない母親までい ることがわかる.子どもの自立をよろこぶ気持ちは,多 くの母親に共通する思いでありながら,中には同時にさ みしさも感じるというアンビバレントな感情を抱いてい る母親が存在するのである.青年期後期に至り,子ども は母親に対して安定的・肯定的な感情を抱く (山岸, 2000) のに対して,一部の母親達が抱く感情は「嬉しくもあり さみしくもある」と複雑なようである.. さ」得点を従属変数とする2要因の分散分析を行った. 同様に, 「子どもの自立に対する母親のさみしさ」得点, 「子どもの自立に対する母親の意識」総得点・第一因子 得点・第二因子得点を従属変数とする分散分析を繰り返 した.その結果,全ての検定において,有意な差はみら れなかった. この結果より,子どもの性別や出生順位は子どもが自 立する嬉しさやさみしさ,また子どもの自立に対する認 識に影響を与えていないことが明らかとなった.長子で あれ末子であれ,母親は我が子の自立を同じように感じ ているのである. 1.①青年の自立に対する母親の嬉しさ・さみしさ尺度 と②青年の自立に対する母親の意識尺度の関連 「青年の自立に対する母親の嬉しさ・さみしさ」に対. 50. する「青年の自立に対する母親の意識」の影響を,t検. 40. 定および分散分析を用いて検討した結果,有意差はみら. 30. れなかった.以上の結果より,子どものことを「大人」. 20. 扱いする意識や我が子を信頼する意識と,子どもの自立. 10. を嬉しく,またさみしく思う気持ちの間に関連は見いだ. 0. されなかった.. 非常に嬉しい. どちらともいえない. 全く嬉しくない 2.③自尊感情尺度得点が②青年の自立に対する母親の. Figure 1青年の自立に対する母親の嬉しさ尺 度度数分布. 意識尺度得点に与える影響 母親の「自尊感情」が「青年の自立に対する母親の意 識」 にどのように影響しているかを明らかにするために, 「自尊感情」尺度の平均値を基準に自尊感情高群・低群.

(4) にわけ, 「子どもに対する母親の意識尺度」 総得点の差を. るアンビバレントな感情を抱いている母親も見出された.. t検定により検討した結果,有意な差がみられた(t. ③自尊感情の高い母親ほど「子どもへの信頼感」が高か. (73)=2.30 p<.05) .さらに因子ごとに検討するため,各. った.. 因子の平均値についてt検定を行った.その結果,第 1. 次に,4事例に共通して明らかになったことは以下の. 因子については有意差がみられず,第 2 因子については. 通りである.①娘よりも母親のほうが外的刺激に揺さぶ. 自尊感情低群よりも高群の方が有意に高かった(t. られやすく,娘は客観的な態度を保って母親を支えたり. (73)=2.39 p<.05) .. 守ったりする役割をとること.②母親は娘に対して独自. この結果より,自尊感情の高い母親ほど,子どもへの 信頼感が高いことが明らかとなった. これは先行研究 (長. の理解の様式をもっており,「この子はこんな性格だか ら」という枠組みを持ってかかわっていること.. 崎,2000)の結果とも一致し,また「 (母親が)自責の念. 質問紙法と,Consensus Rorschach 法という投映法を. を抱きすぎたりした場合に, 『埋め合わせ』 がいきすぎて. 用いた観察法の二側面からの検討について,若干の考察. 代償的な過保護や『子離れ』困難になることがある(頼. を加える.質問紙法による回答と,実際のコミュニケー. 藤 1994) 」という示唆を実証的に裏付けたことになると. ション場面で観察された結果の間にはギャップを感じる. いえるだろう.自尊感情とは,自分自身を全体として肯. 部分もあった.これは,質問紙法が母親の自覚する意識. 定的にとらえる感情のことである. 「自分自身」 の中には,. 的 側 面 を と ら え て い る の に 対 し て , Consensus. 自分がこれまで行ってきた育児も含まれるのかもしれな. Rorschach 法では青年に対する母親の実際の 「かかわり」. い.価値のある,役に立ちうる人間である自分が育てた. をとらえているためと考えられる.従来なされてきた,. 子どもであるから,何かあっても大丈夫,あの子ならや. 質問紙法による親子関係研究でははかりえなかった部分. っていけるだろうという思いが生まれるのも,当然かも. の解明を可能にしたと思われる.しかし,検査者の目の. しれない.. 前で繰り広げられるコミュニケーションは,家庭の中で 行われている日常のコミュニケーションと異なる部分も. 2)研究Ⅱ−自立期にある青年に対する母親のかかわり. あるだろう. このことは, 方法論的限界であると同時に,. の検討−. 検査者という他人の前では何にどう気をつけて振舞うの. 各事例の詳しい分析は,プライバシー保護を考慮して 割愛する. 4事例に共通して明らかになったことは以下の二点. か,その母子がどのようなことに価値を置いているのか という部分をも明らかにすることができるものであると 考える.. である.娘よりも母親のほうが外的刺激に揺さぶられや すく,娘は客観的な態度を保って母親を支えたり守った. 5.今後の展望. りする役割をとること.母親は娘に対して独自の理解の. 今後の課題としては,わが子の自立に対する母親のさ. 様式をもっており, 「この子はこんな性格だから」 という. みしさ,および母親の自尊感情に影響を与えている要因. 枠組みを持ってかかわっていること.. を探るために,母親のパーソナリティとの関連の検討が あげられる.また,母親の内的要因だけでなく,子ども. 4.総合考察 本研究は,青年期の子どもをもつ母親を対象に,母親. が巣立った後ふたりに戻る夫との関係も重要な要素であ ると思われる.. が子どもをどう理解し(「青年の自立に対する母親の意. 青年が段階的に親から自立してゆくように,母親もま. 識」 ) ,どのようにかかわっているのか( 「自立期にある青. た段階的に子どもへの「意識」と「かかわり」を変化さ. 年に対する母親のかかわり」 )を解明するため,質問紙調. せていると考えられるため,発達的研究も必要であると. 査および Consensus Rorschach 法を実施した.. 考えられる.. 質問紙調査において明らかになったことは以下の通り である.①「青年の自立に対する母親の意識」尺度の因 子分析の結果,第 1 因子「わが子を大人扱いする意識」 および第 2 因子「子どもへの信頼感」の2因子構造であ ることが確認された.②「青年の自立に対する母親の嬉 しさ・さみしさ」尺度より,ほとんどの母親がわが子の 自立を嬉しく感じている一方で,さみしさを同時に感じ.

(5)

Table 1  Consensus Rorschach における発言のカテゴ リー一覧  具体的な反応の(再)提案  自分の反応に関する明細化  カードに対する印象,感想  他者の反応を修正する発言  他者の反応を再び持ち出す発言 主体的発言  合意反応をまとめようとする発言  肯定的評価 評価を伴う発言  否定的評価  Open Question 他者の発言に対するコメント 他者の反応に関す る質問  明細化を求める質問  相槌,繰り返し  合意反応の報告 検査者に対する発 言  検査者に対する質問 そ

参照

関連したドキュメント

では,フランクファートを支持する論者は,以上の反論に対してどのように応答するこ

「総合健康相談」 対象者の心身の健康に関する一般的事項について、総合的な指導・助言を行うことを主たる目的 とする相談をいう。

るところなりとはいへども不思議なることなるべし︒

今回は、会社の服務規律違反に対する懲戒処分の「書面による警告」に関する問い合わせです。

2021] .さらに対応するプログラミング言語も作

の知的財産権について、本書により、明示、黙示、禁反言、またはその他によるかを問わず、いかな るライセンスも付与されないものとします。Samsung は、当該製品に関する

話者の発表態度 がプレゼンテー ションの内容を 説得的にしてお り、聴衆の反応 を見ながら自信 をもって伝えて

地域の感染状況等に応じて、知事の判断により、 「入場をする者の 整理等」 「入場をする者に対するマスクの着用の周知」