外 務 省
日本のエネルギー外交
2011年の東日本大震災以降、日本の化石燃料の輸入は大幅に増加し、貿易収支が 31年ぶりに赤字に転じる結果となりました。 私たちの日々の暮らしや経済活動に必要不可欠なエネルギー。本パンフレットでは、 エネルギーをめぐる世界情勢や日本の置かれた状況を踏まえつつ、外務省がエネル ギーの安定的かつ安価な供給の確保に向けてどのような取組を行っているかを紹介し ます。 平成 28 年 3 月:2,800http://www.mofa.go.jp/mofaj/
外務省
編集:経済安全保障課 発行:国内広報室 〒100-8919 東京都千代田区霞が関 2-2-1 ☎03-3580-3311(代表)2
日本のエネルギー事情
日本は、原油、天然ガス、石炭などの一次エネルギーの約9割 を輸入に依存しています。特に、原油輸入の8割強を中東に依存 している状況です。また、2011 年3月の東日本大震災及び福島 第一原子力発電所事故以降、日本のエネルギー情勢は一変し、電 源として化石燃料に依存する割合は大きく上昇しました(震災前 の約6割から震災後の約9割(2014 年時点))。 また、こうした燃料のほとんどは海上輸送されています。しかし、 特に、原油の輸入量の大半が通過する中東(ホルムズ海峡やスエ ズ運河を経由して欧州とアジアを結ぶ)、ソマリア沖・アデン湾や マラッカ・シンガポール海峡など国際的に重要な海上輸送路にお いては、近年、海賊事案の多発等、航行の安全確保が重要な課題 となっています。 このような、内外の厳しい情勢を背景に、エネルギーの安定的 かつ安価な供給の確保に向けた取組が益々重要となっており、外 務省としても、外交的な取組を強化してきています。 約 6 割の原油生産は海上輸送路を通過し、原油輸送量を見ると、ホルムズ海 峡とマラッカ・シンガポール海峡はエネルギー安全保障上、最も重要な海上 要衝です。 国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界には電力を利 用できない人口が 13 億人います。この現状を踏まえ、国連 は「万人のための持続可能なエネルギー(SE4All)」イニシ アティブの下で、2030 年までに、①近代的エネルギーへの 普遍的アクセスの達成、②世界全体でのエネルギー効率の改 善ペースの倍増、③世界全体での再生可能エネルギーのシェ アの倍増、という3つの目標を掲げています。また、2015 年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」において「すべての人々の、安価かつ信頼でき る持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」こ とが 17 の目標のうちの1つとして掲げられており、日本も ODA 等の枠組みを通じて、こうした取組を積極的に支援し ています。 世界全体におけるエネルギー供給の安定は、日本のエネル ギー安全保障に資することから、日本としても、エネルギー 分野における国際協力を積極的に推進しています。日本は、 2010-2014 年の5年間で、累計約 100 億ドルに上る途上国 支援をエネルギー分野に振り分けており、経済協力開発機構 開発援助委員会(OECD/DAC)メンバーの中ではトップド ナーの地位を占めています。 また、世界最高水準のエネルギー効率を誇る日本としては、 省エネルギーや高効率石炭火力発電などのクリーン・エネル ギーに関する知見などを通じて世界に貢献しています。世界のエネルギー・アクセスの向上に向けた取組
バングラデシュ西部のベラマラにおいて、2017 年中の運 転開始を目指して、CO2排出量を抑え、熱効率性を高めた「ベ ラマラ新発電所」の建設が進められています。この発電所は、 約 400MW の「ガスタービンコンバインドサイクル※発電所」 となる予定で、ガスタービン、蒸気タービン、発電機など主 要機器は日本の技術を活用しています。 運転開始後は、同国の電力需要の 5% にあたる電力が供給 され、大型発電所のない同国西部の電力不足に対応し、同地 域における経済発展・貧困削減に寄与します。また、温室効 果ガスの排出削減にも貢献します。 ※ガスを燃料としたガスタービンにより発電させ、その排熱を回収し蒸気を発生させて蒸 気タービンでさらに発電する複合型発電。日本の最先端技術によるエネルギー効率と環境に配慮したガス・コンバインド火力発電所の整備支援
Data Source:OECD-DAC.Stat HP(data extracted on 24 Dec 2015 05:53 UTC(GMT))日本におけるエネルギー分野ODAのうち、 「再生可能エネルギー」のシェアは 約27.3%(3,285百万ドル)を占める。 日本はエネルギー分野ODAのトップドナー 出典:米エネルギー省エネルギー局ホームページ 我が国の原油・天然ガス・石炭輸入状況 (2014 年) (参考)世界の海上要衝における原油・石油製品輸送量(2013年:推定) 日本によるエネルギー分野に関する援助の現状 80万 バレル/日
1,520
万
バレル/日1,700
万
バレル/日290
万 バレル/日380
万 バレル/日460
万 バレル/日 パナマ運河 ボスポラス海峡 ボスポラス海峡 スエズ運河スエズ運河 バ バブブルルママンンデデブブ海海峡峡 バ バブブルルママンンデデブブ海海峡峡 ホルムズ海峡 ホ ホルルムムズズ海海峡峡 マラッカ・ シンガポール海峡 エネルギー分野における我が国の援助実績 オーストラリア 21% カタール 18% マレーシア 17% ロシア 10% インドネシア 7% アラブ首長国連邦 6% ナイジェリア 5% ブルネイ 5% オマーン 4% その他 7% オーストラリア 63% インドネシア 19% ロシア 8% カナダ 5% 米国 3% 中国 1% その他 1% サウジアラビア 33% アラブ首長国連邦 24% カタール 11% クウェート 7% ロシア 8% オマーン イラク 2%1% インドネシア3% イラン5% その他6% 出典: 財務省貿易統計 ※スエズ運河の値はスメドパイプラインを含む。天然ガス
8851
万 トン/年石炭
188
百万 トン/年原油
345
万 バレル/日 日本 12,050 17.6% (2010-2014) 国際開発協会 (IDA) 10,271 15.0% ドイツ 11,338 16.6% フランス 3,808 5.6% 米国 3,354 4.9% EU 機関 8,647 12.7% その他 18,876 27.6% 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 石油火力発電所 発電/再生不能電源 ガス供給 エネルギー政策と管理運営 石炭火力発電所 ガス火力発電所 送電/配電 バイオマス 太陽エネルギー 風力発電 水力発電所 地熱エネルギー 発電/再生可能電源日本の貿易に占めるエネルギー取引(2014 年) 安倍政権における資源外交の代表例 2000-2040 年の期間における 需要増加分の地域別内訳 2040 年における主要な国・地域の一次エネルギー需要 ( 単位:石油換算百万トン ) 2040 年までの世界の一次エネルギー需要 主要な国際機関・研究機関によれば、 化石燃料は引き続き主要な役割を担う見込み LNG 7.9% 鉱物性燃料 鉱物性燃料
約32%
石油製品 2.7% 石炭 2.1% その他 68% •電気機器(全体比 13%) •化学製品(8%) •食料品(8%) •原料別製品(8%) •一般機器(7%) •原料品(7%) 原油 13.9% 原油 13.9% 日本の商品別輸入 (2014年)1
世界のエネルギー情勢
⑴ エネルギーを巡る情勢の変化
近年の新興国を中心としたエネルギー需要の増加や米国の シェール革命などの世界的なエネルギー需給構造の変化、資 源国における不安定な情勢、これらの要因などを背景とした 油価の不安定な動きに見られるように、エネルギーを巡る国 際情勢はより流動的になっています。また、2015 年 12 月 に国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議(COP21)に て採択されたパリ協定は、気候変動対策だけでなく、世界の エネルギー市場を含む様々な分野において中長期的な影響を 持ちうるものと考えられています。⑵ 2040 年までの世界の一次エネルギー需要
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の一次エネルギー 需要は、主に産業や運輸部門の需要増によって 2013 年から 2040 年にかけて約 32% 増大することが予測されています。 この需要増加分のうち、天然ガスと再生可能エネルギーが全 体の約3分の2を占めるとされています。石油、天然ガス及 び石炭といった化石燃料が一次エネルギー需要に占める割合 は、2013 年の 81% から 2040 年には 75% へと低下するも のの、化石燃料は引き続き主要な役割を担っていくとされて います。 石油換算百 万 ト ン 1000 0 2000 3000 4000 5000 石油 石炭 天然ガス 化石燃料 バイオマス 核エネルギー 水力 その他再生可能 エネルギー 出典:IEA世界エネルギー展望 2015 財務省貿易統計4020
中国2125
米国1554
欧州 1316 ユーラシア ユーラシア1908
インド 1071 東南アジア 東南アジア 1171中東中東 1302 アフリカ アフリカ 399 日本 日本 460 ブラジル ブラジル 4% 中東 アフリカ 南米 ユーラシア •2014年の日本のエネルギー輸入額は約28 兆円(前年比約0.3兆円増) •輸入総額(約86兆円)の約3分の1、日本の名 目GDP(約491兆円)の約6% •内訳は、原油が約50%、LNGが約29%、石油 製品が約10%、石炭が約8% 出典:IEA世界エネルギー展望 2015 ※OECD 諸国は 2%分減少 出典:IEA世界エネルギー展望 2015 世界のエネルギー情勢(新興国を初めとした世界的なエネルギーの需要増加、資源国の不安定な情勢や 資源ナショナリズム等)や、我が国が置かれた立場(一次エネルギーの太宗を海外に依存、東日本大震災 以降の化石燃料への依存度の上昇など)を背景に、外務省としては、エネルギー資源の安定的かつ安価な 供給の確保に向けた、様々な外交的取組を行っています。⑷ 国際機関・フォーラムとの連携強化
エネルギーをめぐる流動的な国際情勢を背景に、近年では、 様々な国際会議の重要課題としてエネルギー問題が取り上げ られています。エネルギー問題は地球規模の課題であり、世 界全体が協力して取り組んでいく必要があり、日本もエネル ギーの安定的供給に向けた多国間の連携・協力に貢献してい ます。 例 え ば、外 務 省 は、関 係 省 庁と 連 携して、G7、G8、 G20、アジア太平洋経済協力(APEC)などの他、エネルギー に特化した国際エネルギー機関(IEA)や国際エネルギーフォー ラム(IEF)の諸活動に積極的に参加しており、これら機関を 通じて、国際エネルギー市場の透明性の 向上、優良な投資環境の整備、持 続可能なクリーン・エネルギー 導入の推進など多岐にわた る国際課題への対応に 努めています。⑴ 資源国との包括的かつ互恵的な協力関係の強化
在外公館の大使や総領事などによる日常的・多面的な働き かけ、首相・外相等の外交日程の戦略的活用、政府開発援助 (ODA)の戦略的活用、二国間投資協定(BIT)や自由貿易協 定(FTA)/経済連携協定(EPA)等の推進を通じた投資環境 の整備などを通じて、資源国との包括的かつ互恵的な協力関 係の強化に努め、もってエネルギーの安定的かつ安価な供給 の確保に結びつけています。 特に、2014 年以降、安倍総理大臣が中東・アフリカ、大洋州、 中南米諸国、中央アジア等の主要な資源国を訪問し、積極的 な資源外交を展開しています。 輸送経路の安全保障の確保も、エネルギーの安定供給に とって不可欠な要素です。原油や LNG が通過する海上輸送 路における航行の安全確保のために、日本は、沿岸各国に対 し、海上保安能力の向上や、関係国間での情報共有等の促進 の支援を行っているほか、ソマリア沖・アデン湾に自衛隊を 派遣して日本や諸外国の商船の護衛活動を実施しています。⑶ 輸送経路の安全確保
世界各地にある日本の大使館や総領事館などの在外公館を 通じて、関連情報の収集・人脈形成などを積極的に行うこと も外務省の重要な役割です。昨今のエネルギーをめぐる内外 の厳しい情勢に鑑み、情報収集・分析等の体制や官民連携の 強化を目指して、2013 年2月、外務省は「エネルギー・鉱 物資源専門官制度」を立ち上げました。2016 年2月現在、 50 か国 55 公館に専門官が指名されており、エネルギーの 獲得・安定供給に関して重点的に取り組んでいます。また、 資源国の在外公館と外務本省、関係省庁・機関等との間の連 携を強化していくため、2009 年度から、外務省において「エ ネルギー・鉱物資源に関する在外公館戦略会議」を開催して おり、オール・ジャパンによる戦略的な資源エネルギー外交 の推進のための土台づくりに貢献しています。⑵ 在外公館による情報収集の強化などの体制強化
3
エネルギーの安定的かつ安価な供給の確保に向けた外交的取組
国際エネルギー機関
I E A
1974 年に石油供給途絶時の共同対応 を主たる目的として設立。 石油供給の大半を輸入に依存する日 本は供給途絶の際、IEA の緊急時対 応システムにより裨益するところが大 きい。 2016 年 1 月時点の加盟国は 29 か国。 近年はメキシコ・中国・インドネシア・タイなどの非 加盟国との協力関係も進展。国際エネルギーフォーラム
I E F
生産国・消費国の対話及び JODI(8 国際機関による共同エネルギーデータ 報告システム)を通じたエネルギー市 場の透明性向上により、エネルギー市 場の安定化を目指すフォーラム。 生産国側に対し、安定供給及び合理 的な価格の維持を閣僚レベルで働きか けていく機会を提供。 2016 年 1 月時点のメンバー国は 71 か国。エネルギー憲章条約
E C T
1998 年に発効。エネルギー原料・産 品の貿易及び通過の自由化並びにエネ ルギー分野における投資の自由化・保 護等について規定。旧ソ連諸国等の 締約国における投資環境の一層の改 善を図り、優良な外国投資を誘致する 条件整備のための重要な法的基盤。 2016 年 1 月時点の締約国は 48 か国及びEU。 日本は2016年議長国。国際再生可能エネルギー機関
I R E N A
2011 年に再生可能エネルギー (太陽光利用、風力、バイオマス、地熱、 水力、海洋利用等)普及のための政 策助言を目的として正式に設立。 2016 年 1 月時点の加盟国は 144 か国 (含む EU)。 日本は 2015 年議長国。 68% アジアの 非OECD諸国 10% 11% 7%アラブ首長国連邦
•2013 年 5 月、安倍総理大 臣がアラブ首長国連邦を訪 問した際、両国間の長期に わたるエネルギー分野にお ける協力のパートナーシッ プの重要性を強調し、その 深化を誓約した共同声明を 発表。 •安倍総理大臣訪問を踏まえ、 2015 年 1 月に宮沢経産大 臣(当時)が同国を訪問し た際にも、日本企業が開発 に参画する油田権益の延長につき働きかけを実施。 •2015 年 4 月、我が国企業がアジア企業として初めて同国陸上権益を獲 得し、我が国へのエネルギーの安定的な供給源の確保に成功。アメリカ合衆国
•2013 年 2 月、訪米中の安倍総 理大臣はオバマ大統領との首脳 会談において、米国産 LNG の 対日輸出の早期承認を働きかけ、 5 月及び 7 月に茂木経産大臣(当 時)が訪米した際にも同様に働 きかけを実施。 •2014 年 2 月、日本企業が関与 している米国 LNG 輸出プロジェ クトは全て輸出承認を得た。同年 4 月、オバマ大統領が国賓として訪日 した際、安倍総理大臣からこれを歓迎。 •2015 年 4 月、安倍総理大臣訪米の際に発出した「より繁栄し安定した 世界のための日米協力に関するファクトシート」に、将来の米国からの LNG 輸出の見通しを歓迎する旨記載。 •米国から我が国への LNG 輸出は 2016 年にも開始される予定であり、我 が国のエネルギー安全保障に大きく貢献することが期待される。 IEA閣僚理事会で発言する武藤外務副大臣(右から2人 目)と鈴木経産副大臣(右から1人目)(平成27年11月: パリ) IRENA総会議長を務める宮沢経産大臣(写真右、当時)と 中山外務副大臣(写真左、当時) (平成27年1月:アブダビ) アデン湾で商船の護衛活動をする護衛艦(写真提供:防衛省) 写真提供:内閣広報室 写真提供:内閣広報室エネルギー関連
主要国際機関
IEA で活躍する日本人職員
IEA 緊急時政策課 エネルギーアナリスト 山口 真紀氏 日本をはじめ、潜在的なエネルギー安全保障上 の脆弱性を抱える国にとっては、産油国・産ガ ス国との長期安定的な関係構築に加えて、エネルギー市場の動向 を見極め、消費国間で連携を深め、万が一に備えた国際協調体制 に日頃からしっかりと関与することが重要です。IEA はまさにその 中心に位置づけられる国際機関で、私の所属する緊急時政策課で は世界的な石油の供給途絶が生じた際、加盟国の石油備蓄を共同 で放出するという緊急時対応システムを発動・調整する役割を担っ ています。緊急時の機動力を発揮するには日頃の準備や訓練が必 要で、定期的に各国審査を行っている他、仮想シナリオに基づいた 合同演習などを行っています。私は IEA 加盟国以外にも、中国や ASEAN 諸国などアジアのエネルギー安全保障・緊急時政策も担 当しており、世界で最も躍動感のある経済圏の原動力であるエネ ルギーを扱うことのやりがいを感じています。 2040 2035 2030 2025 2020 2013 1990外 務 省
日本のエネルギー外交
2011年の東日本大震災以降、日本の化石燃料の輸入は大幅に増加し、貿易収支が 31年ぶりに赤字に転じる結果となりました。 私たちの日々の暮らしや経済活動に必要不可欠なエネルギー。本パンフレットでは、 エネルギーをめぐる世界情勢や日本の置かれた状況を踏まえつつ、外務省がエネル ギーの安定的かつ安価な供給の確保に向けてどのような取組を行っているかを紹介し ます。 平成 28 年 3 月:2,800http://www.mofa.go.jp/mofaj/
外務省
編集:経済安全保障課 発行:国内広報室 〒100-8919 東京都千代田区霞が関 2-2-1 ☎03-3580-3311(代表)2
日本のエネルギー事情
日本は、原油、天然ガス、石炭などの一次エネルギーの約9割 を輸入に依存しています。特に、原油輸入の8割強を中東に依存 している状況です。また、2011 年3月の東日本大震災及び福島 第一原子力発電所事故以降、日本のエネルギー情勢は一変し、電 源として化石燃料に依存する割合は大きく上昇しました(震災前 の約6割から震災後の約9割(2014 年時点))。 また、こうした燃料のほとんどは海上輸送されています。しかし、 特に、原油の輸入量の大半が通過する中東(ホルムズ海峡やスエ ズ運河を経由して欧州とアジアを結ぶ)、ソマリア沖・アデン湾や マラッカ・シンガポール海峡など国際的に重要な海上輸送路にお いては、近年、海賊事案の多発等、航行の安全確保が重要な課題 となっています。 このような、内外の厳しい情勢を背景に、エネルギーの安定的 かつ安価な供給の確保に向けた取組が益々重要となっており、外 務省としても、外交的な取組を強化してきています。 約 6 割の原油生産は海上輸送路を通過し、原油輸送量を見ると、ホルムズ海 峡とマラッカ・シンガポール海峡はエネルギー安全保障上、最も重要な海上 要衝です。 国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界には電力を利 用できない人口が 13 億人います。この現状を踏まえ、国連 は「万人のための持続可能なエネルギー(SE4All)」イニシ アティブの下で、2030 年までに、①近代的エネルギーへの 普遍的アクセスの達成、②世界全体でのエネルギー効率の改 善ペースの倍増、③世界全体での再生可能エネルギーのシェ アの倍増、という3つの目標を掲げています。また、2015 年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」において「すべての人々の、安価かつ信頼でき る持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」こ とが 17 の目標のうちの1つとして掲げられており、日本も ODA 等の枠組みを通じて、こうした取組を積極的に支援し ています。 世界全体におけるエネルギー供給の安定は、日本のエネル ギー安全保障に資することから、日本としても、エネルギー 分野における国際協力を積極的に推進しています。日本は、 2010-2014 年の5年間で、累計約 100 億ドルに上る途上国 支援をエネルギー分野に振り分けており、経済協力開発機構 開発援助委員会(OECD/DAC)メンバーの中ではトップド ナーの地位を占めています。 また、世界最高水準のエネルギー効率を誇る日本としては、 省エネルギーや高効率石炭火力発電などのクリーン・エネル ギーに関する知見などを通じて世界に貢献しています。世界のエネルギー・アクセスの向上に向けた取組
バングラデシュ西部のベラマラにおいて、2017 年中の運 転開始を目指して、CO2排出量を抑え、熱効率性を高めた「ベ ラマラ新発電所」の建設が進められています。この発電所は、 約 400MW の「ガスタービンコンバインドサイクル※発電所」 となる予定で、ガスタービン、蒸気タービン、発電機など主 要機器は日本の技術を活用しています。 運転開始後は、同国の電力需要の 5% にあたる電力が供給 され、大型発電所のない同国西部の電力不足に対応し、同地 域における経済発展・貧困削減に寄与します。また、温室効 果ガスの排出削減にも貢献します。 ※ガスを燃料としたガスタービンにより発電させ、その排熱を回収し蒸気を発生させて蒸 気タービンでさらに発電する複合型発電。日本の最先端技術によるエネルギー効率と環境に配慮したガス・コンバインド火力発電所の整備支援
Data Source:OECD-DAC.Stat HP(data extracted on 24 Dec 2015 05:53 UTC(GMT))日本におけるエネルギー分野ODAのうち、 「再生可能エネルギー」のシェアは 約27.3%(3,285百万ドル)を占める。 日本はエネルギー分野ODAのトップドナー 出典:米エネルギー省エネルギー局ホームページ 我が国の原油・天然ガス・石炭輸入状況 (2014 年) (参考)世界の海上要衝における原油・石油製品輸送量(2013年:推定) 日本によるエネルギー分野に関する援助の現状 80万 バレル/日
1,520
万
バレル/日1,700
万
バレル/日290
万 バレル/日380
万 バレル/日460
万 バレル/日 パナマ運河 ボスポラス海峡 ボスポラス海峡 スエズ運河スエズ運河 バ バブブルルママンンデデブブ海海峡峡 バ バブブルルママンンデデブブ海海峡峡 ホルムズ海峡 ホ ホルルムムズズ海海峡峡 マラッカ・ シンガポール海峡 エネルギー分野における我が国の援助実績 オーストラリア 21% カタール 18% マレーシア 17% ロシア 10% インドネシア 7% アラブ首長国連邦 6% ナイジェリア 5% ブルネイ 5% オマーン 4% その他 7% オーストラリア 63% インドネシア 19% ロシア 8% カナダ 5% 米国 3% 中国 1% その他 1% サウジアラビア 33% アラブ首長国連邦 24% カタール 11% クウェート 7% ロシア 8% オマーン イラク 2%1% インドネシア3% イラン5% その他6% 出典: 財務省貿易統計 ※スエズ運河の値はスメドパイプラインを含む。天然ガス
8851
万 トン/年石炭
188
百万 トン/年原油
345
万 バレル/日 日本 12,050 17.6% (2010-2014) 国際開発協会 (IDA) 10,271 15.0% ドイツ 11,338 16.6% フランス 3,808 5.6% 米国 3,354 4.9% EU 機関 8,647 12.7% その他 18,876 27.6% 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 石油火力発電所 発電/再生不能電源 ガス供給 エネルギー政策と管理運営 石炭火力発電所 ガス火力発電所 送電/配電 バイオマス 太陽エネルギー 風力発電 水力発電所 地熱エネルギー 発電/再生可能電源日本の貿易に占めるエネルギー取引(2014 年) 安倍政権における資源外交の代表例 2000-2040 年の期間における 需要増加分の地域別内訳 2040 年における主要な国・地域の一次エネルギー需要 ( 単位:石油換算百万トン ) 2040 年までの世界の一次エネルギー需要 主要な国際機関・研究機関によれば、 化石燃料は引き続き主要な役割を担う見込み LNG 7.9% 鉱物性燃料 鉱物性燃料
約32%
石油製品 2.7% 石炭 2.1% その他 68% •電気機器(全体比 13%) •化学製品(8%) •食料品(8%) •原料別製品(8%) •一般機器(7%) •原料品(7%) 原油 13.9% 原油 13.9% 日本の商品別輸入 (2014年)1
世界のエネルギー情勢
⑴ エネルギーを巡る情勢の変化
近年の新興国を中心としたエネルギー需要の増加や米国の シェール革命などの世界的なエネルギー需給構造の変化、資 源国における不安定な情勢、これらの要因などを背景とした 油価の不安定な動きに見られるように、エネルギーを巡る国 際情勢はより流動的になっています。また、2015 年 12 月 に国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議(COP21)に て採択されたパリ協定は、気候変動対策だけでなく、世界の エネルギー市場を含む様々な分野において中長期的な影響を 持ちうるものと考えられています。⑵ 2040 年までの世界の一次エネルギー需要
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の一次エネルギー 需要は、主に産業や運輸部門の需要増によって 2013 年から 2040 年にかけて約 32% 増大することが予測されています。 この需要増加分のうち、天然ガスと再生可能エネルギーが全 体の約3分の2を占めるとされています。石油、天然ガス及 び石炭といった化石燃料が一次エネルギー需要に占める割合 は、2013 年の 81% から 2040 年には 75% へと低下するも のの、化石燃料は引き続き主要な役割を担っていくとされて います。 石油換算百 万 ト ン 1000 0 2000 3000 4000 5000 石油 石炭 天然ガス 化石燃料 バイオマス 核エネルギー 水力 その他再生可能 エネルギー 出典:IEA世界エネルギー展望 2015 財務省貿易統計4020
中国2125
米国1554
欧州 1316 ユーラシア ユーラシア1908
インド 1071 東南アジア 東南アジア 1171中東中東 1302 アフリカ アフリカ 399 日本 日本 460 ブラジル ブラジル 4% 中東 アフリカ 南米 ユーラシア •2014年の日本のエネルギー輸入額は約28 兆円(前年比約0.3兆円増) •輸入総額(約86兆円)の約3分の1、日本の名 目GDP(約491兆円)の約6% •内訳は、原油が約50%、LNGが約29%、石油 製品が約10%、石炭が約8% 出典:IEA世界エネルギー展望 2015 ※OECD 諸国は 2%分減少 出典:IEA世界エネルギー展望 2015 世界のエネルギー情勢(新興国を初めとした世界的なエネルギーの需要増加、資源国の不安定な情勢や 資源ナショナリズム等)や、我が国が置かれた立場(一次エネルギーの太宗を海外に依存、東日本大震災 以降の化石燃料への依存度の上昇など)を背景に、外務省としては、エネルギー資源の安定的かつ安価な 供給の確保に向けた、様々な外交的取組を行っています。⑷ 国際機関・フォーラムとの連携強化
エネルギーをめぐる流動的な国際情勢を背景に、近年では、 様々な国際会議の重要課題としてエネルギー問題が取り上げ られています。エネルギー問題は地球規模の課題であり、世 界全体が協力して取り組んでいく必要があり、日本もエネル ギーの安定的供給に向けた多国間の連携・協力に貢献してい ます。 例 え ば、外 務 省 は、関 係 省 庁と 連 携して、G7、G8、 G20、アジア太平洋経済協力(APEC)などの他、エネルギー に特化した国際エネルギー機関(IEA)や国際エネルギーフォー ラム(IEF)の諸活動に積極的に参加しており、これら機関を 通じて、国際エネルギー市場の透明性の 向上、優良な投資環境の整備、持 続可能なクリーン・エネルギー 導入の推進など多岐にわた る国際課題への対応に 努めています。⑴ 資源国との包括的かつ互恵的な協力関係の強化
在外公館の大使や総領事などによる日常的・多面的な働き かけ、首相・外相等の外交日程の戦略的活用、政府開発援助 (ODA)の戦略的活用、二国間投資協定(BIT)や自由貿易協 定(FTA)/経済連携協定(EPA)等の推進を通じた投資環境 の整備などを通じて、資源国との包括的かつ互恵的な協力関 係の強化に努め、もってエネルギーの安定的かつ安価な供給 の確保に結びつけています。 特に、2014 年以降、安倍総理大臣が中東・アフリカ、大洋州、 中南米諸国、中央アジア等の主要な資源国を訪問し、積極的 な資源外交を展開しています。 輸送経路の安全保障の確保も、エネルギーの安定供給に とって不可欠な要素です。原油や LNG が通過する海上輸送 路における航行の安全確保のために、日本は、沿岸各国に対 し、海上保安能力の向上や、関係国間での情報共有等の促進 の支援を行っているほか、ソマリア沖・アデン湾に自衛隊を 派遣して日本や諸外国の商船の護衛活動を実施しています。⑶ 輸送経路の安全確保
世界各地にある日本の大使館や総領事館などの在外公館を 通じて、関連情報の収集・人脈形成などを積極的に行うこと も外務省の重要な役割です。昨今のエネルギーをめぐる内外 の厳しい情勢に鑑み、情報収集・分析等の体制や官民連携の 強化を目指して、2013 年2月、外務省は「エネルギー・鉱 物資源専門官制度」を立ち上げました。2016 年2月現在、 50 か国 55 公館に専門官が指名されており、エネルギーの 獲得・安定供給に関して重点的に取り組んでいます。また、 資源国の在外公館と外務本省、関係省庁・機関等との間の連 携を強化していくため、2009 年度から、外務省において「エ ネルギー・鉱物資源に関する在外公館戦略会議」を開催して おり、オール・ジャパンによる戦略的な資源エネルギー外交 の推進のための土台づくりに貢献しています。⑵ 在外公館による情報収集の強化などの体制強化
3
エネルギーの安定的かつ安価な供給の確保に向けた外交的取組
国際エネルギー機関
I E A
1974 年に石油供給途絶時の共同対応 を主たる目的として設立。 石油供給の大半を輸入に依存する日 本は供給途絶の際、IEA の緊急時対 応システムにより裨益するところが大 きい。 2016 年 1 月時点の加盟国は 29 か国。 近年はメキシコ・中国・インドネシア・タイなどの非 加盟国との協力関係も進展。国際エネルギーフォーラム
I E F
生産国・消費国の対話及び JODI(8 国際機関による共同エネルギーデータ 報告システム)を通じたエネルギー市 場の透明性向上により、エネルギー市 場の安定化を目指すフォーラム。 生産国側に対し、安定供給及び合理 的な価格の維持を閣僚レベルで働きか けていく機会を提供。 2016 年 1 月時点のメンバー国は 71 か国。エネルギー憲章条約
E C T
1998 年に発効。エネルギー原料・産 品の貿易及び通過の自由化並びにエネ ルギー分野における投資の自由化・保 護等について規定。旧ソ連諸国等の 締約国における投資環境の一層の改 善を図り、優良な外国投資を誘致する 条件整備のための重要な法的基盤。 2016 年 1 月時点の締約国は 48 か国及びEU。 日本は2016年議長国。国際再生可能エネルギー機関
I R E N A
2011 年に再生可能エネルギー (太陽光利用、風力、バイオマス、地熱、 水力、海洋利用等)普及のための政 策助言を目的として正式に設立。 2016 年 1 月時点の加盟国は 144 か国 (含む EU)。 日本は 2015 年議長国。 68% アジアの 非OECD諸国 10% 11% 7%アラブ首長国連邦
•2013 年 5 月、安倍総理大 臣がアラブ首長国連邦を訪 問した際、両国間の長期に わたるエネルギー分野にお ける協力のパートナーシッ プの重要性を強調し、その 深化を誓約した共同声明を 発表。 •安倍総理大臣訪問を踏まえ、 2015 年 1 月に宮沢経産大 臣(当時)が同国を訪問し た際にも、日本企業が開発 に参画する油田権益の延長につき働きかけを実施。 •2015 年 4 月、我が国企業がアジア企業として初めて同国陸上権益を獲 得し、我が国へのエネルギーの安定的な供給源の確保に成功。アメリカ合衆国
•2013 年 2 月、訪米中の安倍総 理大臣はオバマ大統領との首脳 会談において、米国産 LNG の 対日輸出の早期承認を働きかけ、 5 月及び 7 月に茂木経産大臣(当 時)が訪米した際にも同様に働 きかけを実施。 •2014 年 2 月、日本企業が関与 している米国 LNG 輸出プロジェ クトは全て輸出承認を得た。同年 4 月、オバマ大統領が国賓として訪日 した際、安倍総理大臣からこれを歓迎。 •2015 年 4 月、安倍総理大臣訪米の際に発出した「より繁栄し安定した 世界のための日米協力に関するファクトシート」に、将来の米国からの LNG 輸出の見通しを歓迎する旨記載。 •米国から我が国への LNG 輸出は 2016 年にも開始される予定であり、我 が国のエネルギー安全保障に大きく貢献することが期待される。 IEA閣僚理事会で発言する武藤外務副大臣(右から2人 目)と鈴木経産副大臣(右から1人目)(平成27年11月: パリ) IRENA総会議長を務める宮沢経産大臣(写真右、当時)と 中山外務副大臣(写真左、当時) (平成27年1月:アブダビ) アデン湾で商船の護衛活動をする護衛艦(写真提供:防衛省) 写真提供:内閣広報室 写真提供:内閣広報室エネルギー関連
主要国際機関
IEA で活躍する日本人職員
IEA 緊急時政策課 エネルギーアナリスト 山口 真紀氏 日本をはじめ、潜在的なエネルギー安全保障上 の脆弱性を抱える国にとっては、産油国・産ガ ス国との長期安定的な関係構築に加えて、エネルギー市場の動向 を見極め、消費国間で連携を深め、万が一に備えた国際協調体制 に日頃からしっかりと関与することが重要です。IEA はまさにその 中心に位置づけられる国際機関で、私の所属する緊急時政策課で は世界的な石油の供給途絶が生じた際、加盟国の石油備蓄を共同 で放出するという緊急時対応システムを発動・調整する役割を担っ ています。緊急時の機動力を発揮するには日頃の準備や訓練が必 要で、定期的に各国審査を行っている他、仮想シナリオに基づいた 合同演習などを行っています。私は IEA 加盟国以外にも、中国や ASEAN 諸国などアジアのエネルギー安全保障・緊急時政策も担 当しており、世界で最も躍動感のある経済圏の原動力であるエネ ルギーを扱うことのやりがいを感じています。 2040 2035 2030 2025 2020 2013 1990日本の貿易に占めるエネルギー取引(2014 年) 安倍政権における資源外交の代表例 2000-2040 年の期間における 需要増加分の地域別内訳 2040 年における主要な国・地域の一次エネルギー需要 ( 単位:石油換算百万トン ) 2040 年までの世界の一次エネルギー需要 主要な国際機関・研究機関によれば、 化石燃料は引き続き主要な役割を担う見込み LNG 7.9% 鉱物性燃料 鉱物性燃料
約32%
石油製品 2.7% 石炭 2.1% その他 68% •電気機器(全体比 13%) •化学製品(8%) •食料品(8%) •原料別製品(8%) •一般機器(7%) •原料品(7%) 原油 13.9% 原油 13.9% 日本の商品別輸入 (2014年)1
世界のエネルギー情勢
⑴ エネルギーを巡る情勢の変化
近年の新興国を中心としたエネルギー需要の増加や米国の シェール革命などの世界的なエネルギー需給構造の変化、資 源国における不安定な情勢、これらの要因などを背景とした 油価の不安定な動きに見られるように、エネルギーを巡る国 際情勢はより流動的になっています。また、2015 年 12 月 に国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議(COP21)に て採択されたパリ協定は、気候変動対策だけでなく、世界の エネルギー市場を含む様々な分野において中長期的な影響を 持ちうるものと考えられています。⑵ 2040 年までの世界の一次エネルギー需要
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の一次エネルギー 需要は、主に産業や運輸部門の需要増によって 2013 年から 2040 年にかけて約 32% 増大することが予測されています。 この需要増加分のうち、天然ガスと再生可能エネルギーが全 体の約3分の2を占めるとされています。石油、天然ガス及 び石炭といった化石燃料が一次エネルギー需要に占める割合 は、2013 年の 81% から 2040 年には 75% へと低下するも のの、化石燃料は引き続き主要な役割を担っていくとされて います。 石油換算百 万 ト ン 1000 0 2000 3000 4000 5000 石油 石炭 天然ガス 化石燃料 バイオマス 核エネルギー 水力 その他再生可能 エネルギー 出典:IEA世界エネルギー展望 2015 財務省貿易統計4020
中国2125
米国1554
欧州 1316 ユーラシア ユーラシア1908
インド 1071 東南アジア 東南アジア 1171中東中東 1302 アフリカ アフリカ 399 日本 日本 460 ブラジル ブラジル 4% 中東 アフリカ 南米 ユーラシア •2014年の日本のエネルギー輸入額は約28 兆円(前年比約0.3兆円増) •輸入総額(約86兆円)の約3分の1、日本の名 目GDP(約491兆円)の約6% •内訳は、原油が約50%、LNGが約29%、石油 製品が約10%、石炭が約8% 出典:IEA世界エネルギー展望 2015 ※OECD 諸国は 2%分減少 出典:IEA世界エネルギー展望 2015 世界のエネルギー情勢(新興国を初めとした世界的なエネルギーの需要増加、資源国の不安定な情勢や 資源ナショナリズム等)や、我が国が置かれた立場(一次エネルギーの太宗を海外に依存、東日本大震災 以降の化石燃料への依存度の上昇など)を背景に、外務省としては、エネルギー資源の安定的かつ安価な 供給の確保に向けた、様々な外交的取組を行っています。⑷ 国際機関・フォーラムとの連携強化
エネルギーをめぐる流動的な国際情勢を背景に、近年では、 様々な国際会議の重要課題としてエネルギー問題が取り上げ られています。エネルギー問題は地球規模の課題であり、世 界全体が協力して取り組んでいく必要があり、日本もエネル ギーの安定的供給に向けた多国間の連携・協力に貢献してい ます。 例 え ば、外 務 省 は、関 係 省 庁と 連 携して、G7、G8、 G20、アジア太平洋経済協力(APEC)などの他、エネルギー に特化した国際エネルギー機関(IEA)や国際エネルギーフォー ラム(IEF)の諸活動に積極的に参加しており、これら機関を 通じて、国際エネルギー市場の透明性の 向上、優良な投資環境の整備、持 続可能なクリーン・エネルギー 導入の推進など多岐にわた る国際課題への対応に 努めています。⑴ 資源国との包括的かつ互恵的な協力関係の強化
在外公館の大使や総領事などによる日常的・多面的な働き かけ、首相・外相等の外交日程の戦略的活用、政府開発援助 (ODA)の戦略的活用、二国間投資協定(BIT)や自由貿易協 定(FTA)/経済連携協定(EPA)等の推進を通じた投資環境 の整備などを通じて、資源国との包括的かつ互恵的な協力関 係の強化に努め、もってエネルギーの安定的かつ安価な供給 の確保に結びつけています。 特に、2014 年以降、安倍総理大臣が中東・アフリカ、大洋州、 中南米諸国、中央アジア等の主要な資源国を訪問し、積極的 な資源外交を展開しています。 輸送経路の安全保障の確保も、エネルギーの安定供給に とって不可欠な要素です。原油や LNG が通過する海上輸送 路における航行の安全確保のために、日本は、沿岸各国に対 し、海上保安能力の向上や、関係国間での情報共有等の促進 の支援を行っているほか、ソマリア沖・アデン湾に自衛隊を 派遣して日本や諸外国の商船の護衛活動を実施しています。⑶ 輸送経路の安全確保
世界各地にある日本の大使館や総領事館などの在外公館を 通じて、関連情報の収集・人脈形成などを積極的に行うこと も外務省の重要な役割です。昨今のエネルギーをめぐる内外 の厳しい情勢に鑑み、情報収集・分析等の体制や官民連携の 強化を目指して、2013 年2月、外務省は「エネルギー・鉱 物資源専門官制度」を立ち上げました。2016 年2月現在、 50 か国 55 公館に専門官が指名されており、エネルギーの 獲得・安定供給に関して重点的に取り組んでいます。また、 資源国の在外公館と外務本省、関係省庁・機関等との間の連 携を強化していくため、2009 年度から、外務省において「エ ネルギー・鉱物資源に関する在外公館戦略会議」を開催して おり、オール・ジャパンによる戦略的な資源エネルギー外交 の推進のための土台づくりに貢献しています。⑵ 在外公館による情報収集の強化などの体制強化
3
エネルギーの安定的かつ安価な供給の確保に向けた外交的取組
国際エネルギー機関
I E A
1974 年に石油供給途絶時の共同対応 を主たる目的として設立。 石油供給の大半を輸入に依存する日 本は供給途絶の際、IEA の緊急時対 応システムにより裨益するところが大 きい。 2016 年 1 月時点の加盟国は 29 か国。 近年はメキシコ・中国・インドネシア・タイなどの非 加盟国との協力関係も進展。国際エネルギーフォーラム
I E F
生産国・消費国の対話及び JODI(8 国際機関による共同エネルギーデータ 報告システム)を通じたエネルギー市 場の透明性向上により、エネルギー市 場の安定化を目指すフォーラム。 生産国側に対し、安定供給及び合理 的な価格の維持を閣僚レベルで働きか けていく機会を提供。 2016 年 1 月時点のメンバー国は 71 か国。エネルギー憲章条約
E C T
1998 年に発効。エネルギー原料・産 品の貿易及び通過の自由化並びにエネ ルギー分野における投資の自由化・保 護等について規定。旧ソ連諸国等の 締約国における投資環境の一層の改 善を図り、優良な外国投資を誘致する 条件整備のための重要な法的基盤。 2016 年 1 月時点の締約国は 48 か国及びEU。 日本は2016年議長国。国際再生可能エネルギー機関
I R E N A
2011 年に再生可能エネルギー (太陽光利用、風力、バイオマス、地熱、 水力、海洋利用等)普及のための政 策助言を目的として正式に設立。 2016 年 1 月時点の加盟国は 144 か国 (含む EU)。 日本は 2015 年議長国。 68% アジアの 非OECD諸国 10% 11% 7%アラブ首長国連邦
•2013 年 5 月、安倍総理大 臣がアラブ首長国連邦を訪 問した際、両国間の長期に わたるエネルギー分野にお ける協力のパートナーシッ プの重要性を強調し、その 深化を誓約した共同声明を 発表。 •安倍総理大臣訪問を踏まえ、 2015 年 1 月に宮沢経産大 臣(当時)が同国を訪問し た際にも、日本企業が開発 に参画する油田権益の延長につき働きかけを実施。 •2015 年 4 月、我が国企業がアジア企業として初めて同国陸上権益を獲 得し、我が国へのエネルギーの安定的な供給源の確保に成功。アメリカ合衆国
•2013 年 2 月、訪米中の安倍総 理大臣はオバマ大統領との首脳 会談において、米国産 LNG の 対日輸出の早期承認を働きかけ、 5 月及び 7 月に茂木経産大臣(当 時)が訪米した際にも同様に働 きかけを実施。 •2014 年 2 月、日本企業が関与 している米国 LNG 輸出プロジェ クトは全て輸出承認を得た。同年 4 月、オバマ大統領が国賓として訪日 した際、安倍総理大臣からこれを歓迎。 •2015 年 4 月、安倍総理大臣訪米の際に発出した「より繁栄し安定した 世界のための日米協力に関するファクトシート」に、将来の米国からの LNG 輸出の見通しを歓迎する旨記載。 •米国から我が国への LNG 輸出は 2016 年にも開始される予定であり、我 が国のエネルギー安全保障に大きく貢献することが期待される。 IEA閣僚理事会で発言する武藤外務副大臣(右から2人 目)と鈴木経産副大臣(右から1人目)(平成27年11月: パリ) IRENA総会議長を務める宮沢経産大臣(写真右、当時)と 中山外務副大臣(写真左、当時) (平成27年1月:アブダビ) アデン湾で商船の護衛活動をする護衛艦(写真提供:防衛省) 写真提供:内閣広報室 写真提供:内閣広報室エネルギー関連
主要国際機関
IEA で活躍する日本人職員
IEA 緊急時政策課 エネルギーアナリスト 山口 真紀氏 日本をはじめ、潜在的なエネルギー安全保障上 の脆弱性を抱える国にとっては、産油国・産ガ ス国との長期安定的な関係構築に加えて、エネルギー市場の動向 を見極め、消費国間で連携を深め、万が一に備えた国際協調体制 に日頃からしっかりと関与することが重要です。IEA はまさにその 中心に位置づけられる国際機関で、私の所属する緊急時政策課で は世界的な石油の供給途絶が生じた際、加盟国の石油備蓄を共同 で放出するという緊急時対応システムを発動・調整する役割を担っ ています。緊急時の機動力を発揮するには日頃の準備や訓練が必 要で、定期的に各国審査を行っている他、仮想シナリオに基づいた 合同演習などを行っています。私は IEA 加盟国以外にも、中国や ASEAN 諸国などアジアのエネルギー安全保障・緊急時政策も担 当しており、世界で最も躍動感のある経済圏の原動力であるエネ ルギーを扱うことのやりがいを感じています。 2040 2035 2030 2025 2020 2013 1990外 務 省
日本のエネルギー外交
2011年の東日本大震災以降、日本の化石燃料の輸入は大幅に増加し、貿易収支が 31年ぶりに赤字に転じる結果となりました。 私たちの日々の暮らしや経済活動に必要不可欠なエネルギー。本パンフレットでは、 エネルギーをめぐる世界情勢や日本の置かれた状況を踏まえつつ、外務省がエネル ギーの安定的かつ安価な供給の確保に向けてどのような取組を行っているかを紹介し ます。 平成 28 年 3 月:2,800http://www.mofa.go.jp/mofaj/
外務省
編集:経済安全保障課 発行:国内広報室 〒100-8919 東京都千代田区霞が関 2-2-1 ☎03-3580-3311(代表)2
日本のエネルギー事情
日本は、原油、天然ガス、石炭などの一次エネルギーの約9割 を輸入に依存しています。特に、原油輸入の8割強を中東に依存 している状況です。また、2011 年3月の東日本大震災及び福島 第一原子力発電所事故以降、日本のエネルギー情勢は一変し、電 源として化石燃料に依存する割合は大きく上昇しました(震災前 の約6割から震災後の約9割(2014 年時点))。 また、こうした燃料のほとんどは海上輸送されています。しかし、 特に、原油の輸入量の大半が通過する中東(ホルムズ海峡やスエ ズ運河を経由して欧州とアジアを結ぶ)、ソマリア沖・アデン湾や マラッカ・シンガポール海峡など国際的に重要な海上輸送路にお いては、近年、海賊事案の多発等、航行の安全確保が重要な課題 となっています。 このような、内外の厳しい情勢を背景に、エネルギーの安定的 かつ安価な供給の確保に向けた取組が益々重要となっており、外 務省としても、外交的な取組を強化してきています。 約 6 割の原油生産は海上輸送路を通過し、原油輸送量を見ると、ホルムズ海 峡とマラッカ・シンガポール海峡はエネルギー安全保障上、最も重要な海上 要衝です。 国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界には電力を利 用できない人口が 13 億人います。この現状を踏まえ、国連 は「万人のための持続可能なエネルギー(SE4All)」イニシ アティブの下で、2030 年までに、①近代的エネルギーへの 普遍的アクセスの達成、②世界全体でのエネルギー効率の改 善ペースの倍増、③世界全体での再生可能エネルギーのシェ アの倍増、という3つの目標を掲げています。また、2015 年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」において「すべての人々の、安価かつ信頼でき る持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」こ とが 17 の目標のうちの1つとして掲げられており、日本も ODA 等の枠組みを通じて、こうした取組を積極的に支援し ています。 世界全体におけるエネルギー供給の安定は、日本のエネル ギー安全保障に資することから、日本としても、エネルギー 分野における国際協力を積極的に推進しています。日本は、 2010-2014 年の5年間で、累計約 100 億ドルに上る途上国 支援をエネルギー分野に振り分けており、経済協力開発機構 開発援助委員会(OECD/DAC)メンバーの中ではトップド ナーの地位を占めています。 また、世界最高水準のエネルギー効率を誇る日本としては、 省エネルギーや高効率石炭火力発電などのクリーン・エネル ギーに関する知見などを通じて世界に貢献しています。世界のエネルギー・アクセスの向上に向けた取組
バングラデシュ西部のベラマラにおいて、2017 年中の運 転開始を目指して、CO2排出量を抑え、熱効率性を高めた「ベ ラマラ新発電所」の建設が進められています。この発電所は、 約 400MW の「ガスタービンコンバインドサイクル※発電所」 となる予定で、ガスタービン、蒸気タービン、発電機など主 要機器は日本の技術を活用しています。 運転開始後は、同国の電力需要の 5% にあたる電力が供給 され、大型発電所のない同国西部の電力不足に対応し、同地 域における経済発展・貧困削減に寄与します。また、温室効 果ガスの排出削減にも貢献します。 ※ガスを燃料としたガスタービンにより発電させ、その排熱を回収し蒸気を発生させて蒸 気タービンでさらに発電する複合型発電。日本の最先端技術によるエネルギー効率と環境に配慮したガス・コンバインド火力発電所の整備支援
Data Source:OECD-DAC.Stat HP(data extracted on 24 Dec 2015 05:53 UTC(GMT))日本におけるエネルギー分野ODAのうち、 「再生可能エネルギー」のシェアは 約27.3%(3,285百万ドル)を占める。 日本はエネルギー分野ODAのトップドナー 出典:米エネルギー省エネルギー局ホームページ 我が国の原油・天然ガス・石炭輸入状況 (2014 年) (参考)世界の海上要衝における原油・石油製品輸送量(2013年:推定) 日本によるエネルギー分野に関する援助の現状 80万 バレル/日