2012 年,213 〜 226
トップレベルチームにおける守備の技術
吉 田 康 成
1.はじめに
バレーボールゲームの守備技術には,守備の第一線となるブロック,ブロックと連携して遂行さ れるスパイクレシーブがある。実際のゲームで勝利するためには,相手に攻撃させないようにするか, 相手からの攻撃を守備した後,攻撃へ移行し得点しなければならない。具体的には,①非常に強いサー ブを打ち相手に攻撃させないようにする,②相手の攻撃をブロックするかまたはレシーブして攻撃 へ転じ得点する(カウンターアタック),といったことがチームには要求される。 だが実際には,男子トップレベルチームの場合,打球速度は 100km/h を超えるためスパイクされ たボールをレシーブし攻撃につなぐことは相当困難である。そのため,守備の第一線であるブロッ クの役割は非常に重要であり,ゲームで如何にブロックを効果的に機能させレシーブと連携して守 備から攻撃へ転じられるかが,ゲームに勝利するためのポイントになると言っても過言ではない。 近年のトップレベルチームの攻撃の特徴としては,①4人攻撃,②両サイドからの早い攻撃,③ センターからの早いバックアタック,④セッターに A パスが入らなくてもクイックを使ったコンビ ネーション攻撃,となっている。一方,守備では,①リードブロック,②強いジャンプサーブなど で相手に攻撃させないようにし守備をしやすくする,③リベロプレーヤーの広域守備およびトス, ④スパイカーから離れているブロッカーでもジャンプしてブロック参加する,が主流となっている。 日本チームはもちろん,世界大会に出場するチームのほとんどが戦術は異なるが似たような攻撃手 法でゲームを行っている。 守備技術の研究について,ブロック技術では,構え(豊田・古沢,1982),移動と踏み切り(例えば, マクガウン,1998;セリンジャー,1993;田中,1999),ステップの種類(福田,2003),空中姿勢(佐 賀野ら,1995),手の突き出し(篠村,1988),視線(黒川ら,1973)などについて検討され一定の 知見が得られている。また,スパイクレシーブ技術では,構え(例えば,コールマン・コールマネセッ ト,1998),敏捷性(豊田・古沢,1982;北村ほか,1985),移動ステップ(豊田・古沢 , 1982;コー ルマン・コールマネセット,1998),反応時間(豊田・古沢 , 1982;北村ほか,1985),タイミング(吉 田ら , 2001; 吉田 ,2011)などについて検討されている。 しかしながら,守備の定量分析は先行研究に乏しく,ブロッカーがどのようにワンタッチを取っているのか,強打レシーブを上げるためにどのような動きをしているか等についてはよくわかって いないのが現状である。 そこで本研究では,世界トップレベルチームの守備技術に焦点を当て,その特徴について明らか にすることで守備研究課題の特定をすることを目的としている。そのため,ワールドカップ 2011 大 阪大会で行われた実際のゲームを対象として,守備局面における守備の基礎技術について検討する。
2.研究方法
2-1. 分析対象および試技 分析対象とするゲーム状況,コンビネーション攻撃(以下,コンビ攻撃),2段トスからの攻撃(以下, 2段攻撃)の強打に限定して試技を抽出した(フェイント,軟打,ダイレクトスパイク,ツーアタッ ク,攻撃ミス,ブロックミス,パスによる返球を除く)。 2-2. 撮影 対象としたゲームは,FIVB ワールドカップバレーボール 2011 男子大阪大会におけるポーランド (POL)対日本 (JPN) の試合をエンドライン後方およびサイドライン後方の観覧席に設置した2台の CCD カメラに DV カメラを接続して,試合開始から終了までの全てのプレイを撮影した。エンドラ イン後方のカメラは,バレーボールコート全面(18m × 9m)を,サイドライン後方のカメラはコー ト半面と相手コートアタックライン付近まで(12m × 9m)を撮影できるように設定した。 2-3. 分析方法 撮影されたテープは DV カメラ(Panasonic 社製 NV-MX-2500)で再生し,フィールド毎にカウンター を映し込み 1/60sec でパーソナルコンピューター(受注生産品 ,OS:Windows7)にコンバータ(Canopus 製 ADVC110)を経由しキャプチャーしたものを再生して定性観察し,全ての守備の状況を記録した。 記録は,ノートパソコン(Apple 社製 MacBookPro)を用いて全ての試技を入力した。 2-4. 記録項目 (1)攻撃種および攻撃参加人数(コンビか2段か) ゲーム中の全ての攻撃について,前衛ではレフトサイド,センター(クイック),ライトサイド, 後衛ではレフトバックアタック,センターバックアタック,ライトバックアタックに分類して記録 した。 コンビネーション攻撃については,前衛選手がクイック助走動作に入りジャンプしている(しよ うとしている)動作が確認でき,2人以上の攻撃参加が認められるプレーと定義した。2段トスからの攻撃については,前衛選手のクイック攻撃がなく,アタックラインよりもコート後方からトス が上げられる攻撃と便宜的に定義した。 攻撃参加人数については,セッターのボールインパクトまでにスパイク助走動作が認められた選 手の数をカウントした。 (2)守備回数 ゲーム中にネットを越えて飛来するボールは全て攻撃とみなし(サーブ,ブロックによる返球を 除く),守備回数としてカウントした。強打の守備については,ツーアタック,ダイレクトスパイク を除いたものをカウントした。 (3)ブロック触球回数 ブロッカーの触球数については,ゲーム状況に応じて,相手攻撃に対してスパイクされたボール をブロックし得点する(BS),ブロックしボールに触れるがブロックアウトしラリーが継続できず失 点する(BO),ブロックしタッチしたボールが自陣へ(BT),ブロックで相手コートへ返球しラリー 継続する(BR),というケースに分類し分析を行った。 (4)レシーブ触球回数 レシーブの触球回数については,ブロックがワンタッチした後レシーブし攻撃するかブロックノー タッチでレシーブし攻撃したもの(カウンター攻撃),ブロックがワンタッチした後レシーブしたが 攻撃不成立だったもの(B 有 R 有攻無),ブロックタッチしたが自陣でレシーブできず攻撃不成立だっ たもの(B 有 R 無攻無),ブロック・レシーブどちらもタッチせず自陣へスパイクが決められたもの(B 無 R 無),ブロックはタッチ無,レシーブしたが攻撃は不成立だったもの(B 無 R 有攻無),というケー スに分類し分析を行った。
3.結果と考察
3-1. 試合結果および守備の概要 表1は大会の試合結果である。競技方法は,参加 12 チームの1回戦総当たり戦(シングル・ラウ ンド・ロビン方式)で順位は勝ち点により決定されている。本研究で対象としたチームの順位は, POL 2位,JPN10 位である。なお,試合結果は,3(23-25, 25-21, 25-19, 25-18)1で POL が勝利し ている。7〜9位のチームが5勝しているのに対して JPN は2勝(中国,エジプトに勝利)しかし ていない結果となっている。以下に,対象チームが行った守備の概要を見ていく。 表2は,4セットのゲーム中に出現したチーム別の守備回数である。相手からの攻撃の内,POL では 72 回(72.7%),JPN は 71 回(69.6%)が強打の守備となっている。また,強打のうち,POL は 52 回(72.2%),JPN は 63 回(88.7%)がコンビ攻撃の守備となっている。 表3は,攻撃種別の守備回数である。まず,コンビ攻撃の守備では,両チームとも前衛選手による攻撃の守備回数が最も多く全体の約 76%(POL:76.9%,JPN:76.2%)を占めている。攻撃種別でみ ると,レフトサイドからの攻撃の守備回数が最も多い。 2 段攻撃の守備においても,コンビ攻撃同様に両チームともレフトサイドからの攻撃の守備回数が 最も多い。次に,コンビ攻撃の強打守備について見ていく。 表4は,ゲーム状況別の守備回数を示している。相手のコンビ攻撃を守備したうち,サーブレシー ブからの攻撃の守備回数は,POL が 45 回(86.5%),JPN が 49 回(77.8%)である。また,ラリー 中にコンビ攻撃を守備した回数は,それぞれ7回(13.5%),14 回(22.3%)となっている。攻撃人数 別の守備については,4人コンビ攻撃の守備は,POL では 44 回(84.6%),JPN では 57 回(90.5%) となっている。 表5は,攻撃種別(4人コンビ攻撃)の守備回数である。両チームとも前衛攻撃に対する守備回 数が最も多く,POL が 33 回(75.0%)JPN が 44 回(77.2%)となっている。POL では前衛両サイド からの攻撃の守備回数(12 回)が最も多く,JPN ではクイック攻撃の守備回数(18 回)が最も多い。 また,後衛攻撃の守備では,両チームともライトバックアタックの守備回数(POL: 7回,JPN: 8回)
が最も多くなっている。 3-2. 守備内容について ここまで,ゲーム全体の守備状況について概観した。ここからは,ブロックおよびスパイクレシー ブの内容について詳細に見ていくことにする。 3-2-1. ブロックパフォーマンスについて 表6は,4人コンビ攻撃および2段攻撃におけるブロックとスパイクレシーブの触球回数である。 ブロック触球回数について,POL ではコンビ攻撃で 22 回(50.0%),2段攻撃では 16 回(80.0%)となっ ている。JPN ではコンビ攻撃で 22 回(38.6%),2段攻撃では3回(37.5%)となっている。一方,レシー ブ触球回数については,POL ではコンビ攻撃で 13 回(29.5%),2段攻撃では7回(35.0%)となっ ている。JPN ではコンビ攻撃で 23 回(40.4%),2段攻撃では5回(62.5%)となっており コンビ攻撃, 2段攻撃の守備ともに JPN の方がやや高い割合となっている。 表7は,コンビ攻撃に対するブロック触球の内訳を示している。POL では,1.BO:11 回(45.4%), 2.BS:5回(22.7%),3.BR:4回(18.1%),4.BT:3回(13.6%)の順に回数が多い。JPN では,1.BT: 10 回(45.4%),2.BR:5回(22.5%),3.BS:4回(18.2%),4.BO:3回(13.6%)となっており BT が最も多くなっている。 表8は,2段攻撃に対するブロック触球の内訳を示している。POL では,1.BT:7回(43.8%),2.BS: 5回(31.3%),3.BR・BO:2回(12.5%)の順に多いが,JPN では,1.BS・BO・BT:1回(33.3%),
2.BR:0回(0.0%)となっている。 3-2-2. レシーブパフォーマンスについて 4人のスパイカーによるコンビ攻撃の守備(表4)は,POL で 44 回,JPN で 57 回である。また, 2段攻撃の守備は POL で 20 回,JPN で8回であるが,ここではブロック触球数(BS,BO,BR) を除いた守備側コートにボールが飛来したケースのレシーブについて見ていく。 表9は,コンビ攻撃に対するレシーブ内容を示している。POL では,1.B 無 R 無:12 回(48.0%), 2.B 無 R 有攻無:8回(32.0%),3. カウンター攻撃:4回(16.0%),4.B 有 R 有攻無:1回(4.0%), 5.B 有 R 無攻無:0回の順に回数が多い。JPN では,1.B 無 R 無:20 回(44.4%),2.B 無 R 有攻無: 10 回(22.2%),3. カウンター攻撃:9回(20.0%),4.B 有 R 有攻無:4回(8.9%),5.B 有 R 無攻無: 2回(4.4%)となっており,順序は POL と同様となっている。 表 10 は2段攻撃のレシーブ内容を示している。POL では,1. カウンター攻撃:6回(54.5%),2.B 有 R 無攻無:3回(27.3%),3.B 無 R 無・B 無 R 有攻無:1回(9.1%),4.B 有 R 有攻無:0回の順 に回数が多い。JPN では,1.B 無 R 有攻無:4回(66.7%),2.B 有 R 有攻無・B 無 R 無:1回(16.7%), 3. カウンター攻撃・B 有 R 無攻無:0回となっている。 3-3. カウンター攻撃について コンビ攻撃を守備しカウンター攻撃を成功させているのは,POL では4回(16.0%)であり守備内 容は,ブロックタッチ有レシーブが2回,ブロックタッチ無レシーブが2回となっている。JPN で は9回(20.0%)であり,ブロックタッチ有レシーブが4回,ブロックタッチ無レシーブが5回となっ ている。一方,2段攻撃の守備の場合では,POL ではカウンター攻撃の成功が6回(ブロックタッ チ有レシーブ:4回,ブロックタッチ無レシーブ2回)であるが,JPN は0回となっている。 攻撃種 攻撃種 BS BO BR BT BS BO BR BT BS BO BR BT BS BO BR BT レフトサイド 2 3 2 1 2 1 1 3 レフトサイド 2 0 1 6 1 0 0 0 クイック 0 3 1 2 1 0 1 4 センター 0 0 0 0 0 0 0 0 ライトサイド 2 4 1 0 0 2 1 1 ライトサイド 2 0 1 1 0 0 0 0 レフトバックアタック 0 0 0 0 0 0 0 0 レフトバックアタック 0 0 0 0 0 0 0 1 センターバックアタック 0 0 0 0 0 0 1 0 センターバックアタック 0 0 0 0 0 0 0 0 ライトバックアタック 1 0 0 0 1 0 1 2 ライトバックアタック 1 2 0 0 0 1 0 0 ※BS:ブロックで得点 ※BS:ブロックで得点 BO:ブロックアウトで失点 BO:ブロックアウトで失点 BR:ブロックによる返球(敵陣へ) BR:ブロックによる返球(敵陣へ) BT:ブロックタッチラリー継続(ワンタッチ後自陣へ) BT:ブロックタッチラリー継続(ワンタッチ後自陣へ) 表7 コンビ攻撃に対するブロック触球内容 表8 2段攻撃に対するブロック触球内容 POL(22) JPN(22) コンビ攻撃の守備 2段攻撃の守備 POL(16) JPN(3)
4.総合考察
本研究では,世界トップレベルチームの守備技術を明らかにするため,POL 対 JPN 戦のゲームに おける守備局面のブロックおよびレシーブ技術のパフォーマンスを分析した。 以下,本研究の分析結果を踏まえて,守備技術の研究課題について検討を行う。 4-1. ブロック技術再考 4-1-1. ブロックパフォーマンスと身長 表 11 はブロックの得点力分析である(山田ら ,2012)。POL は4位,JPN は 10 位となっている。また, 表 12 はベストブロッカーの順位である。POL では,ベスト 10 ランキングに2選手(1位,5位)が入っ ている。一方,JPN では,18 位(Yamamura),30 位 (Matsumoto) となっており,1セットあたり の得点もそれぞれ 0.53,0.38 と低い。 攻撃種 ター攻撃カウン B有R有 攻無 B有R無 攻無 B無R無 B無R有 攻無 カウン ター攻撃 B有R有 攻無 B有R無 攻無 B無R無 B無R有 攻無 レフトサイド 1 1 0 2 1 1 3 0 5 4 クイック 2 0 0 2 1 3 1 1 8 3 ライトサイド 0 0 0 5 0 2 0 0 2 2 レフトバックアタック 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 センターバックアタック 0 0 0 2 2 0 0 0 3 1 ライトバックアタック 1 0 0 1 4 3 0 1 2 0 カウンター攻撃:ブロックタッチ後レシーブし攻撃またはレシーブし攻撃 B有R有攻無:ブロックタッチ後レシーブしたが攻撃不成立 B有R無攻無:ブロックタッチしたが自陣でレシーブできず攻撃不成立 B無R無:ブロック・レシーブどちらもノータッチで自陣へスパイクが決められた B無R有攻無:ブロックタッチ無,レシーブタッチしたが攻撃は不成立 ※( )内は4人攻撃の守備回数(POL:44, JPN:57)からブロック触球数(BS+BO+BR)を除いた数。 攻撃種 ター攻撃カウン B有R有 攻無 B有R無 攻無 B無R無 B無R有 攻無 カウン ター攻撃 B有R有 攻無 B有R無 攻無 B無R無 B無R有 攻無 レフトサイド 5 0 2 1 0 0 0 0 1 2 センター 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ライトサイド 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 レフトバックアタック 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 センターバックアタック 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 ライトバックアタック 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 カウンター攻撃:ブロックタッチ後レシーブし攻撃またはレシーブし攻撃 B有R有攻無:ブロックタッチ後レシーブしたが攻撃不成立 B有R無攻無:ブロックタッチしたが自陣でレシーブできず攻撃不成立 B無R無:ブロック・レシーブどちらもノータッチで自陣へスパイクが決められた B無R有攻無:ブロックタッチ無,レシーブタッチしたが攻撃は不成立 ※( )内は2段攻撃の守備回数(POL:20, JPN:8)からブロック触球数(BS+BO+BR)を除いた数。表9 コンビ攻撃に対するレシーブ内容
表10 2段攻撃に対するレシーブ内容
コンビ攻撃の守備 2段攻撃の守備 POL(11) JPN(6) JPN(45) POL(25)ブロック技術を選手の体格面(身長高)から考えた時に,ブロックの高さという意味では 出場選手の平均身長の高い POL が JPN より有利であることに議論の余地はない(平均身長は POL:197.2cm,JPN:191.3cm)。ランキングベスト 10(表 12)の平均身長は 203.9cm,ブロックジャ ンプ高の平均は 330.0cm であることからも,身長・ブロックジャンプの高さがよいブロッカーの資 質となっていることがわかる。ただし,セリンジャー(1993)も指摘するように,ブロッカーの質 を評価することは難しく,高身長の選手,または高くジャンプする選手が常によいブロッカーとな るわけではない。例えば,Matsumoto 選手(JPN)は,ブロックランキング 30 位で 30 人中最も身 長が低い。しかし,ブロックジャンプは 330cm でありトップ 10 の平均値と同じ数値となっている。 リードブロックが世界の主流となっている現状では,身長の低さは確かに不利ではあるがジャンプ 力とゲーム経験でナショナルチーム入りしているケースと考えてよいだろう。 特筆すべきは,試合結果9位のイランがブロック得点力2位となっており,ベストブロッカーラ ンキング2位に入っていることである。というのも,ブロック得点力データ(表 11)が示すように, 数値が2以下の3チームは順位も下位となっているが,イランのみ2位となっている。イランの平 均身長は 195.5cm(IRIvsPOL に出場選手の平均値)であり POL より若干低い。このことは,ブロッ ク技術遂行を得点に結びつけることにおいては,身長の高さは確かに有利ではあるが,ブロックの 個人技術や組織力といった別の要因が大きく関わっていることを示唆しており今後検討の必要があ る。 4-1-2. ブロックの機能 ブロックの機能を考えると,相手の攻撃を阻止し得点することも,ワンタッチをしてレシーブか ら攻撃することであっても,触球の種類に関わらずカウンター攻撃へとつながる可能性が高くなる 順位 チーム 得点/set 1 Russia 3.16 2 Iran 2.90 3 Italy 2.84 4 Poland 2.71 5 USA 2.62 6 Serbia 2.56 7 Brazil 2.51 8 Cuba 2.30 9 Argentina 2.21 10 Japan 1.85 11 China 1.82 12 Egypt 1.62 ※山田ら(2012)p.15を改変し引用 表11 ブロック得点力 順位 名 前 チーム 得点/set 身長(cm) BJ(cm) 1 Mozdzonek Marcin POL 0.84 211 338 2 Nadi Alireza IRI 0.83 200 320 3 Mesa Sandobal Isbel CUB 0.75 204 331 4 Volkov Alexander RUS 0.68 210 335 5 Nowakowski Piotr POL 0.67 205 340 6 dos Santos Jr. Sidnei BRA 0.67 203 318 7 Podrascanin Marko SRB 0.65 204 326 8 Solé Sebastian ARG 0.62 202 328 9 Butko Alexander RUS 0.61 198 327 10 Lasko Michal ITA 0.60 202 337
18 YAMAMURA JPN 0.53 205 320 30 MATSUMOTO JPN 0.38 193 330 ※平均,SDは1〜10位の順位による 平均 203.9 330.0 SD 4.0 7.5 表12 ベストブロッカー順位
ため重要となってくる。 本研究で対象とした POL では,4人コンビ攻撃を守備した内の半数はブロックで触球しており, 2段攻撃の守備については 80% という高い割合となっているが,JPN では,どちらの守備について も触球回数は約 40% 弱に止まっている(表6)。また,POL では BO が最も多く(10 回),JPN で は BT が最も多い(10 回)。BT の内訳については,コンビ攻撃の守備の場合,POL では3回中2回, JPN では 10 回中4回,2段攻撃の守備の場合,POL では7回中4回,JPN では1回中0回がカウ ンター攻撃につながっている。 これらのことは,POL の場合,相手がコンビ攻撃を使用できず2段攻撃になった場合,80% をブ ロックし,その内の約 70% を得点するか相手コートに返球する,またはカウンター攻撃につなげる, ということである。JPN の場合では,同様のゲーム状況で,約 40% をブロックし,その内の約 30% を得点しているにすぎない。 優勝した RUS や3位の BRA などトップチームがどのようなブロックパフォーマンスであるかは 今後調べる必要があるのだが,POL のケースの様にまずは相手の攻撃の2回に1回はブロックでき る技術がトップレベルチームには必要だろう。しかし今のところ,トップレベルチームの選手がど のようにワンタッチをとっているのかについてまだよくわかっていない。 リードかコミットか,バンチかどうかというブロック戦術を云々する前に,戦術を規定するブロッ クの基本技術においてまだ明らかとされていない技術の究明をしていかなければトップレベルチー ムの戦術をコピーしたところで何の解決にもならないだろう。したがって,今後,ブロックの技術 的な課題を定量化し明らかにする必要がある。 4-2. スパイクレシーブ技術およびカウンター攻撃 4-2-1. 打球速度とスパイクレシーブ 本研究で対象とした両チームのエーススパイカー(POL:Kurek,JPN: 清水)の強打の打球速度は, Kurek 選手では,23.32 〜 32.23m/s の範囲にあり平均が 27.76m/s,一方,清水選手では,22.38 〜 30.28m/s の範囲平均は 24.72m/s となっている(橋原ら,2012)。 この打球速度の速いボールを上げることは相当に困難であるが,組織的な守備を行うことでカウ ンター攻撃を可能にするためには,強打スパイクのレシーブ技術が必要不可欠である。しかしなが ら,強打スパイクをどのようにレシーブするのかについて定量分析された研究は見あたらず,ブロッ ク技術同様に今後の研究課題としなければならない。 4-2-2. スパイクレシーブ技術 4人コンビ攻撃の守備において,ブロックタッチするしないに関わらず自陣にスパイクが決まる
ケースの内,ブロック・レシーブ両方ともノータッチ(B 無 R 無)のケースは,どちらのチームも 40% を超えている(表9)。また,カウンター攻撃につながっているのは,POL で4回(16.0%), JPN で9回(20.0%)にすぎない。 2段攻撃の守備においては,カウンター攻撃につながっているのは,POL で6回(54.5%),JPN で0回である(JPN は自陣に飛来する6回の攻撃中5回レシーブしているが,全て攻撃にはつながっ ていない)。 これらのことは,4人コンビ攻撃がしかけられた場合,レシーブからのカウンター攻撃を成功さ せることが相当難しいことを示唆している。その一方で,2段トスからの攻撃を守備する場合,3 人ブロック,強打レシーブの選手配置など守備で有利に展開することの重要さを示唆している。 JPN の場合,レシーブの触球回数の割合は POL より多く,コンビ攻撃の守備で 40.4%,2段の守 備で 62.5% となっている(表6)。触球回数が多いということは,JPN 選手個人の守備技術の高さを 示唆するものであると同時にレシーブは多くする(触球数は多い)がその守備が攻撃につながって いない,という技術的な課題が内在していたと考えられる。 POL ではブロック触球回数の割合が高く,JPN ではレシーブで高い。守備のスタイルとして, 前 者は,ブロック型守備,後者はレシーブ型守備になっていると言えよう。 4-2-2. カウンター攻撃について 山田ら(2012)のテクニカルレポートでは,JPN は効果的なサーブで相手のサーブレシーブを乱 しても得点に結びつけられていないことが問題のようだ,という指摘がなされている。これは,ブロッ クで得点するかまたはレシーブしカウンター攻撃して得点することができていないことを示唆して いる。しかし,表9,10 からもわかるように,ブロックを抜けて飛来したボールをレシーブしカウ ンター攻撃につなげることは,カウンター攻撃の回数,ブロック・レシーブともにタッチしなかっ た守備回数から考えても難しいことは容易に想像できる。それでは,一体どのようにしてカウンター 攻撃につなげていけばよいのだろうか。 守備の技術特性を考えた時に,ブロッカーもレシーバーもスパイカーの動作に対応していること は明らかである。しかも,レシーバーは,スパイカーの動作に対応しながらさらに味方ブロッカー の位置取りによって,自分の位置取りを調整していかなければならない。守備におけるブロッカー とレシーバーのコンビネーションが重要となってくるわけだが,残念なことにこれらについても明 らかにされていない。この技術の究明についても喫緊の課題と言える。 4-3. イランチームの事例からの示唆 IRI チームは,ジュリオ・ベラスコ(元イタリア男子ナショナルチーム監督)を監督に登用してか ら近年急速に実力をつけてきたチームであり,アジア No.1(2012 年時点)の実力を有していると言
われている(2011 年第 16 回アジア男子選手権大会1位。同大会で JPN は 5 位)。 上述したように,2011WC の結果は9位であったが,2位の POL にセットカウント 3-2 で勝利し ている。また,SRB,ARG の2チームも IRI に負けている。 IRI が JPN と同じアジア地域のチームということで考えれば,JPN と平均身長に若干差はあるも のの,高いブロック得点力を中核にし,総合力で大型チームに勝つスタイルからは,学ぶべきもの があるにちがいない。 山田ら(2012)も指摘するように,IRI のブロック得点力が世界トップクラスであることは,ブロッ ク型の守備でゲームに勝利していることを示唆しているため,今後調べる必要があるだろう。
5.おわりに
5.1 まとめ 本研究では,トップレベルチームの守備技術に焦点を当て,その特徴について明らかにすること で守備研究課題の特定を目的とし守備の基礎技術について検討することであった。本研究の結果を まとめると以下のようになる。 1.攻撃を守備したうち強打スパイクの守備では,POL は 72 回(72.7%),JPN は 71 回(69.6%)となっ ている。また両チームとも前衛選手の攻撃による守備回数が最も多く,全体の約 76% を占めて いた。 2.ブロックの触球回数では, POL は,コンビ攻撃の 50.0%,2段攻撃では 80.0% の割合であった。 JPN はコンビ攻撃,2段攻撃のどちらに対しても触球回数は約 40% 弱に止まっている。 3.POL は,2段攻撃の約 30% をブロック得点としており,相手チームがコンビ攻撃を使えなくな れば,かなり有利なゲーム展開を可能にすることが推察される。レシーブでは,JPN の方がコ ンビ攻撃・2段攻撃共にボールに触れている割合が高い。2段攻撃では,両チームとも半分以 上の割合でボールに触れている。 5.2 今後の課題 本研究の結果は,今後,以下の守備技術に関する研究課題の究明が必要になることを示唆している。 1.ボールコンタクトの仕方 先述したようにトップレベルチームのスパイクは,時速 100km/h を超える。効果的なブロック をなくしてレシーブだけでカウンターアタックを成立させることは現実的ではない。とりわけ ブロックでどのようにしてワンタッチを取っているのか,特にセンタープレーヤーがどのよう にしてブロックワンタッチをとっているのか。また,スパイクレシーブでは,カンターアタックを成立させるために,ブロックを抜けて飛来したボールを上げなければならない。強打ボー ルをどのようにレシーブしているのか。 2.ブロッカーとレシーバーのコンビネーション カンターアタックを成立させるためには,ブロックを抜けて飛来したボールを上げなければな らない。強打ボールをレシーブするために,ブロッカーとレシーバーのコンビネーションはど のように行われているのか。 3.セッターへの返球の仕方 カウンターアタックの際,レシーブボールをセッターへ返球しラリー中に4人攻撃(クイック を入れたコンビ攻撃)を成立させるために,レシーブボールを自陣コートのどのあたりに返球 しているのか。 2012 年のロンドンオリンピックのバレーボール競技では,男子(1位ロシア,2位ブラジル,3 位イタリア),女子(1位ブラジル,2位アメリカ,3位日本)という結果となった。日本女子チー ムは 28 年ぶりに,3位決定戦で中国に勝ち銅メダルを獲得した。その一方で,男子チームは世界最 終予選でロンドンオリンピックの出場権を逃し参加することができなかった。このことについて足 立氏(FIVB インストラクター)は「女子はくじ運の良さもあって3位でメダルを獲得したが,男子 は相当に思い切ったことをやっていかないと,もう一度世界のトップになることはかなり難しいと 思う」と述べていた。 全日本男子チームは,東京オリンピック(1964 年3位)からミュンヘンオリンピックで金メダル を獲得し黄金時代を築いてきた。しかし,ワールドカップ(1977 年2位)を最後に3大大会ではメ ダルがなく,30 年以上にわたり低迷し続けている。この状況を打開し再び世界のトップへ返り咲く ためにも,上述した技術の究明を行い指導現場へフィードバックすることは喫緊の課題である。 【引用文献】 1)コールマン・コールマネセット:遠藤俊郎ほか訳(1998)バイオメカニクス—技術とパフォーマンスを分析する. バレーボールコーチングの科学.ベースボールマガジン社:東京 2)福田 隆(2003)トップレベルのバレーボール選手のブロック動作の特徴.愛媛大学教育学部保健体育紀要 , vol.4, pp.39-48. 3)橋原孝博,西博史,吉田康成,福田隆,遠藤俊郎(2012)エースアタッカーへのトス技術に関する事例研究 -2011 ワールドカップ男子大会における日本対ポーランド戦の映像分析—.テクニカルスタディー 2011: 平成 23 年度日本バレーボール協会科学研究委員会研究報告集 pp.1-7. 4)北村潔和・松島由美子・山地啓司(1985)身体の移動距離,移動方向,移動の高さを考慮した全身単純及び 選択反応時間 - バレーボールのレシーブ動作を想定して -.体育の科学 35(7)pp.552-557. 5)黒川貞生・黒川道子・矢島忠明(1973)バレーボールのブロッキングに関する研究.日本体育学会第 39 回大会号.
p.709. 6)マクガウン編著:遠藤俊郎ほか訳(1998)バイオメカニクス—技術とパフォーマンスを分析する,バレーボー ルコーチングの科学,ベースボールマガジン社:東京.pp.103-116. 7)佐賀野 健・西村清巳(1995)バレーボールのブロック指導に関する研究.日本教科教育学会誌,18-2, pp.41-49. 8)セリンジャー:都沢凡夫訳(1993)セリンジャーのパワーバレーボール.ベースボールマガジン社:東京. < Selinger, A. and Ackermann-Blount, J.(1986)Arie Selinger's Power Volleyball. St. Martin's Press:New York. >
9)篠村 朋樹(1988)ブロックの腕動作に関する事例的研究 木更津工業高等専門学校紀要 第 21 号 , pp.29-34. 10)田中幹保(1999)ブロックの種類と戦略.Coaching & Playing Volleyball, vol.4, pp.2-5.
11)豊田 博・古沢久雄(1982)バレーボールにおける敏捷性の研究ーレシーブ・ブロック時の反応と動きの速 さについてー.東京大学教養学部体育研究室体育学紀要 16, pp.1-10. 12)山田剛久・吉田清司・渡辺啓太・松井泰二・石丸出穂・加戸隆司・高野淳司・高橋栄介・小室匡史(2012) ワールドカップ 2011 テクニカルレポート−全日本男子シニアバレーボールチーム−.テクニカルスタディー 2011: 平成 23 年度日本バレーボール協会科学研究委員会研究報告集 pp.9-61. 13)吉田康成・吉田雅行(2001)ポジショニングから見るバレーボールの守備戦術.日本スポーツ教育学会第 20 回記念国際大会論集,pp.205-210. 14)吉田康成(2011)ポジショニングからみるスパイクレシーブのタイミング.プール学院大学研究紀要第 51 巻 , pp.281-294. 付記:本研究は(公財)日本バレーボール協会科学研究委員会の協力を得て行われた。関係者の皆様には感謝を 申し上げる。
(ABSTRACT)
Defensive Skills of Top Level Volleyball Teams
YOSHIDA Yasunari
The purpose of this study was to investigate defensive skills of top level teams in volleyball game, player's blocking and digging while defensive phases. Data were collected from the FIVB 2011 World Cup Volleyball for men held in Osaka, Poland team (POL) and Japan team (JPN). All defensive phases (block and dig) were analyzed by qualitative observation method.The main defensive task were summarized as follows:
(1) How to contact the ball of the blocking player and the digging player. (2) How to put together defensive players (blocker and digger).
(3) How to send setter to the ball of defensive players.
Especially, the significant point as regards the defensive task are to clarify the cooperation with blocker and digger in defensive phase.