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欧州における補完代替医療学研究の現状

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Academic year: 2022

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【 Meeting Report 】

欧州における補完代替医療学研究の現状

― 12

th

Annual Symposium on Complementary Health Care を中心に

Current State of CAM Research in Europe

—Through Participation in 12

th

Annual Symposium on Complementary Health Care

亀井 勉

1,2,*

,村田幸治

2

Tsutomu KAMEI

1,2,*

, Kohji MURATA

2

1財団法人島根難病研究所

2金沢大学大学院医学系研究科

【キーワード】 補完的ヘルスケア定例シンポジウム,欧州,禅

Key words: Annual Symposium on Complementary Health Care, Europe, Zen

サプリメント(健康食品)の先進国ともいえる米国に おいては,医療費の抑制策として FDA(食品医薬品局)

の方針転換がうち出された.それは,安全性の高い食品 ならば,臨床試験でその効能を積極的に調べてみようと いうものである.さらに,この国策が近年の補完代替医

療 (CAM) の研究の広まりの大きな原動力になっている

ともいわれている.また,新薬開発を行なってきた製薬 企業も,比較的少ない開発費で済む健康食品の生産と販 売に積極的に参入している現状も見逃せない.

一方,欧州においては,イギリスをはじめ,予防医学 に力点を移してきている国々が多く,米国と比較すると 伝統医学やハーブ(生薬)などに対する理解はより深い ものになっている.また,欧州における CAM 研究は,

近年着実に進んでいるようである.

さる 2005 年 9 月 19 日~ 21 日に,第 12 回補完的ヘル スケア定例シンポジウム (12th Annual Symposium on Complementary Health Care; 会長はProfessor Edzard Ernst, Director, Complementary Medicine, Peninsula Medical School, Universities of Exeter and Plymouth, UK) が,イギリ スのエクセターで開催され,われわれも参加する機会が あったので概略を述べたい.この一連のシンポジウムで は,以前から鍼治療,漢方療法,ホメオパシー,マニュ

アルセラピーなど CAM の臨床研究がテーマとして取り 上げられてきた.今回のシンポジウムでは,プレシンポ ジウムワークショップ 2 題,基調講演 1 題,記念講演 1 題と一般口演とポスター発表を合わせて約 90 題の発表 がみられ,参加者はおよそ 300 名であった.

CAM の研究現況とこの定例シンポジウムの理念につ いては以下のように述べられている1).「この一連のシン ポジウムの目的は,新しい CAM に関する研究の発表と それに対する批判的議論のための場を提供することに よって,より質の高い研究が促されることである.CAM の研究は,過去数年間の間に,かつてないほど活発になっ てきた.たとえば,われわれが CAM に対する賛否両論 の臨床的エビデンスを概説した“CAM デスクトップガ イド”という著書を改訂する際には,これはかなりの大 作業になるであろうと予想していた.しかし,われわれ は,この初版を出版してからわずか 5 年間の間に出た研 究論文の急激な増加に圧倒されることになった.われわ れは,各領域においてある治療法に対する賛否のエビデ ンスの基盤がよりしっかりしたものになっているかどう かを示す指標として‘重み (weight)’(エビデンスの水準,

会 報

受理日:2006 1 31

*693–0021 島根県出雲市塩冶町 223-7 Tel: 0853–22–9343 Fax: 0853–22–6978 E-mail: [email protected]

(2)

34 亀井 勉・村田幸治

方法論的に質及び量の組み合わせた指標)という概念を 用いて検討したところ,この著書の初版発刊時には 29 の 治療法に最大限の‘重み’が認められたに過ぎなかった が,第 2 版発刊時にはそれに該当する治療法の数は 116 にものぼっていた.われわれは,この定例シンポジウム

が CAM 研究のさらなる発展に寄与し,CAM 分野で,確

固としたエビデンスの基盤が得られた領域・治療方法が より増加することに貢献できることを望んでいる.」

今回のシンポジウムの中では,近年の日本文化の欧米 への浸透を反映してか,鍼灸以外の日本古来の「癒し」

に関連する演題が2題ほどあった.その一つは,「禅 (Zen)」 の瞑想中に心臓血管系が同期化しやすい,つまり心拍と 呼吸が同期しやすいという報告であり2),もう一つは,家 族の健康のための「癒し」に関するパイロット研究であっ た3).前者では 9 名の欧州人の被験者を対象に得られた データを主として質的研究法により検討していた.しか し,個人差があると思われる瞑想の深さに相関して同期 の程度に違いがあるかどうかといったような考察はな かった.世界的に広がりを見せている CAM では,この ように,東洋の伝統的な精神文化に関連のあるものが比 較的多く,その中でも日本に関するものは欧米人の関心 を少なからず惹いているようである.しかしながら,そ の「効果・効能」を欧米で立証していくには,被験者設 定に限界があると推測された.今回のシンポジウムを振 り返ると,このような東洋的な,あるいは日本の古来の

文化に根ざした「癒し」に関わる医学的研究こそ,その

「本場」である日本が,研究環境として最適な国ではない かと感じられた.なお,同様のことは,インド伝承医学 の代表格であるヨーガの効果・効能に関する研究につい ても言えるであろう.

今回のシンポジウムでは,以前と比べて質の高い抄録 が多く集まってきており,より多くの発表者に口頭発表 の機会を提供することが配慮されていた.その結果,発 表は終日並列セッションにて実施されるようになってい た.また,従来はポスター発表者には 2 分間の簡潔な口 頭での発表を求めていたが,2005 年からは,適度な時間 的余裕を設けて,参加者には事前の空いた時間に自由に ポスターを閲覧できるようにし,ポスター・セッション 中に発表者と討論する機会が得られるようになった.さ らに,このシンポジウムの抄録は,www.pharmpress.com/

fact から,以前のシンポジウムの抄録も含めて,自由に

オンラインで入手できるようなシステムに切り替えられ ているので,一度御覧になっていただきたい.

さて,このシンポジウムのトピックスと位置づけられ た研究を簡単に紹介したい.まず,シンポジウムの基調 講演としては,ドイツのミュンヘンの補完医療研究セン ターの上級研究員である Klaus Linde 氏が,「慢性疼痛の ための鍼療法」について発表した.また,記念講演とし て,オランダの St. Radboud 大学医療センターの臨床薬学 教授である Peter AGM de Smet 氏が,「Ethnopharma- cological encounters with native arts」と題して,民族薬理 学に関する講演をしていた.なお,この講演は Dr.

Willmar Schwabe ファーマシューティカルズ社が後援す

る年次講義の第 3 回 Varro Tyler 記念講演として行われて いた.

さらに,プレシンポジウムワークショップは,(1)サ クソン温泉学及び温泉療法研究所所長でありドイツのド レスデン大学物理療法及びリハビリテーション学教授で ある Karl-Ludwigh Resch 氏が座長を務めた「実用的試験 (Pragmatic trails)」に関する講演と(2)カナダでカルガ リー大学補完医療研究職の Marja Verhoef 氏が座長を務 め,国際補完医療研究協会が準備した,「CAM の定性的 研究」に関するものの計 2 題であった.

最後に,今回の定例シンポジウムでは,アジアからの 演題は,われわれの予想に反して 2 年前と比較して激減 しており,口演発表ではサウジアラビアからの 1 題だけ であり,ポスター発表はタイから 1 題,日本から 3 題,

韓国から 1 題であった.日本からのポスター発表 3 題は,

われわれに関係したものだけであったので,今後は,日 本補完代替医療学会の会員の皆様も,積極的に御参加い ただければと思う.

村田幸治によるポスター発表の写真

(3)

欧州における補完代替医療学研究の現状 35

参 考 文 献

1) Wider B, Ernst E. 12th Annual Symposium on Complementary Health Care—Introduction. Focus on Alternatively and Comple- mentary Therapies 2005; 10: 1–2.

2) Bussing A, Matthiessen PF, Cysarz D. Cardiorespiratory syn- chronization during Zen meditation. Focus on Alternatively and Complementary Therapies 2005; 10: 10–11.

3) Canter PH, Brown LB, Greaves C, et al. Johrei healing for family health—a pilot trial. Focus on Alternatively and Complementary Therapies 2005; 10: 12.

参照

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