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マウス膣脂膏の位相差鏡検

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Academic year: 2022

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323

〔特 別 掲 載〕

(東女医大誌 第3G巻第12号頁2975 2977昭和35年12月)

マウス膣脂膏の位相差鏡検

東京女子医科大学第2解剖学教室(主任 飯沼守夫教授)

飯 沼 守 夫 ・

イイ  ヌマ  モリ  オ

井 出 洋 子 ・

イ   デ  ヨウ  コ

高橋三代子

タカハシ  ミ  ヨ  コ

内 田 洋 子

ウチ  ダ   ヨウ  コ

保 倉   進

ホ   クラ      ススム

(受付昭和35年11月5日)

 マウスの腔上皮は個体の性周期にともなって著明な変 化を行い1),6)tB),その際形態的変化のみならず組織化学 的に極めて複雑な変化をすることについてはすでに飯沼

ら3)が述べている。したがって腔二三中にあらわれる細 胞も性周期の各時期により異り古来多くの記載1)・の,6)が

ある。腔脂膏を染めて見る場合と4)の,新鮮なものをそ のまま検鏡するのとではその所見にいくぶんの差異があ るであろうことは当然考えられる。原田2)はラットの腔 脂膏の位相差鏡検所見にっき報告しているが,箸者らは 新しい位相差レンズを使用して好結果をえられたので報 告する。

       研究材料および研究方法

 dd系の成熟マウス約40匹を用い,一定の飼料で飼育 した。実験は冬期に行ったので飼育箱の保温をしたが,

設備にややかけるところあり,25。Cよりいくぶん低く,

20。C以下であったためか性周期はやや長くなりがちで あった。ガラス製の小スポイトを使用して膣脂膏を採取 した。膣脂膏をうすめる液として蒸溜水,生理的食塩水 およびpH 7前後の燐酸緩衝液を使用したが,いずれの 液でもえられた所見には差は認められなかった。なにぶ

んマウスの腔は小さいので同一個体で膣脂膏を取る間隔 は3日以上とした。鏡検を行った室温は約10度前後であ った。千代田光学工業株式会社製の位相差レンズDLL の40倍を使用し,光源は同社の40Fに断熱フィルター とパンクロフイルムに対する露出倍率約8倍の緑色ブイ ルターとをつけたものを使った。千代田の写真鏡筒mp にアサヒフレックを組合せて肉眼観察と同時に写真撮影

を行った。露出時聞を切りつめるため富士のNeopan

SSSフィルムで撮影して小西六のKonid◎1 superで増 感現像を行った。かくしてできた位相差顕微鏡写真と別 の機会に作った膣脂膏のヘマトキシリン・エオジン染色 および各種の組織化学的染色標本と比較検討した。

         自 家 所 見

 マウスの性周期にはいろいろの分け方があるが一応発 情関期,発情前期,発情期と簡単に3期とする。発情 期に対して上皮期とゆう名称を与えている人があるが,

脛脂膏中にあちわれる細胞の形を見て上皮細胞と考えて かかる名をつけたと思われるが,マウス腔脂膏中にあら われる細胞は,形はこうなっていても大部分が土皮細胞 であるので上皮期とゆうのは不適当であろう。飯沼ら3)

は発情前期のマウスの腔上皮をかりに4層にわけ,腔腔 側より被蓋層,角化層,中合層,基底層としているが以 下これにもとずいて記載を行うことにする。

 腔脂膏の染色標本で発情間期と同定された個体の新鮮 な標本を位相差のレンズを用いて観察すると,白血球と 小山ら5)のゆう上皮様細胞とが認められる。白血球(第

1図)は流血中にある揚合と形態がことなっていてその 種類を判定しがたい。これらの白血球は上皮細胞の間よ

り膣腔にでてきたもので,すでに変性におちいった細胞 である。いわゆる上皮様細胞(第2図と3図)は上皮細 胞であるが,それらは幼若な被蓋層の表層から剥れてき

たものである。細胞形質中に空胞がありまた黒く見える 顯粒が存在するがこれは脂肪滴である。脂肪滴はさほど 多くはない。核の構造は,そのなかにぼんやりと核小体 などを認められるものもあるが一般に不明瞭である。こ のような上皮性の細胞は剥れてはいけない未熟な細胞で

Morio IHNUMA, Yoko UCHIDA, Yoko IDE, Susumu HOKURA, Miyoke TAKAHASHI (Second Department Df Anatomy, Tokyo Women s Medical College) : Phase contrast microscopy of vaginal smear of rnouse.

一2975一

(2)

.324

あって,聖母膏中には極く少量しか見られない。

 発情前期に見られる典型的な細胞はいわゆる上皮細胞 である(第6,7,8図)。敏壁を有するものはほとん

どなく,細胞形質中にDLLレンズで黒く見える願下が

.存在するがこれら顎脚の多くは脂肪滴である。この細胞 形質中には少量のデゾキシリボ核酸,浜崎のケトェノー ル物質をふくむことがある。核は球形か卵形である。核 膜は明瞭に認められる細胞が多く,核小体がいくつか存 在するのがわかる細胞(第7図)もあるが,その存在の はっきりしない細胞が多い。これらの細胞は被蓋層が剥

.れてできたのである。

 発情期になるとこのような細胞のほかにいわゆる角化 細胞(第4と5図)が見られる。この細胞は被蓋層の下 の角化層が剥れてあらわれたものである。扁平で大きく

ごっこっした感じを与える。ときに籔壁があるように見

.えるが多角形の細胞の角がこのように見えるのでおそら く嫉壁は存在しないであろう。扁平で多角な細胞であっ て,その角を華甲に認めることができる。細胞間橋は認 めることができなかった。核はほとんど認め得ない。細 胞形質中には極めて細かい細粒の認められる場合もある が,これは脂肪滴ではない。発情期のおわりになればか

、かる角化細胞のみが膣脂胴中に認められる。

      考   按

 原田ら2)は千代田光学工業株式会社製の位相差レンズ

DMまたはBMを用いてラットの料簡膏を観察し,細

胞を7種類にわけている。すなわち表層細胞,核濃縮細 胞,顎粒細胞,粘液化細胞,深層細胞,角化細胞および 角化前細胞である。さらにそれらを細胞形,細胞質,核 を29項目にわけて該当する細胞数を調べ各性周期の時期 における消長をグラフにしている。著者らはかかる分類 法が実際に意義あるものか疑問に思う。なぜならば朕i脂 膏中に見られる細胞は多少なりとも変性した細胞であっ

て,その変陸の程度を分類したところで剥れてから腔腔 内にあった時間によりことなる所見を呈するのであるか らあまり意味はない。それよりもこれらの細胞が隆上皮 のどこから剥れてきたものであるかとゆう点を充分に理 解するならば,わずか2種に分類するのみにて充分であ る。ラット餌壷膏中に見られる細胞の起原については北 川4)の記載があり,術語の使い方に不適当な点はあるが その内容は正しい。すなわち飯沼ら3)が発情前期の腔.ヒ 皮を被蓋層,角化層,中間層,基底層にわけているが,

膣脂膏中に見られる細胞は,被蓋層および角化層に由来 する細胞のみである,そのほかには上皮細胞ではない白 血球が見られるがこれは別とする。原田らの記載は極め て詳細なようであるが腔脂膏中に見られる細胞が腔上皮 のどこからでてきたかとゆう点は極:めてあいまいな記述 しかしていない。発情前期には被蓋層に由来する細胞が 見られるがその細胞の内部構造はDLLレンズを用いる

ことにより染色標本よりはるかに詳細に観察することが

できた。原田らの用いた同じ会社のDMまたはBMレ

ンズは極めて薄い標本を見るには適しているが,油脂膏 のごときやや厚い材料を細胞学的に観察するのには不 適当である。発晴前期より発情期にかけては被蓋層およ びその下側の角化層の細胞が腔腔中にあらわれる。後者 は一見深層の細胞のごとき感を与える。発惰後期には角 化層が剥れてしまって,その下の中間層が幼若な被蓋層 になる。この時期および次の時期に,剥れる必要のない 幼若な被蓋層の細胞が少数膣脂膏中にあらわれるのであ ろう。完成した被蓋層の細胞は剥れるべく準備された細 胞である。かくしてマウス膣頬面を観察する揚合は被蓋 層に由来する細胞と,角化層に由来する細胞との2種を 区別すれば充分であると思う。原田らは中間層細胞,深 層細胞とゆう言葉を用いているが実際には位置的に中間 層あるいは深層の細胞は剥れることはない。

      結   論

 マウス膣脂膏中の細胞を千代田光学工業株式会社製の 位相差レンズDLLを用いて染色標本よりも詳細にその 構造を観察することができた。腔上皮に由来する細胞を

2種に大別し,この2種の細胞および白血球の存否,組 合せにより性周期を判断しうる。

      文   献

 1) ムllen, E.:Amer. J. Anat.22225(1922)

2)

3)

4)

5)

6)

7)

8)

原田 浩・小野和男=産婦人科の世界51173

(ユ953)

飯沼守夫・井出洋子・内田洋子3 日組録 20

468 (1960)

北川重夫:日本婦人科会誌22..1439..と.一1597

(1927)

小山良修動物実験手技第2版協同医書出版 社東京昭33

Long, J. A., Evans, H.: MemoFies of the

Univ. of California 61(1922)(北川より引

用)

水野達意:日本婦人科会誌21451と591(1926)

Selle, R.: Amer. J. Anat・ 50 429 (1922)

      附 図 説 明

 倍率はすべて840倍である。千代田光学工業株式会社 製の4G倍のDLLレンズをもちい,緑色フィルターをか

けて撮影した。

 第1図 発情間期,白血球が見られる。

 第2図と3図 発情間期,幼若な被蓋層に由来する細 胞が見られる。

 第4図と5図発情期,角化層に由来する細胞。

 第6,7および8図 発情前期。成熟した被蓋層に由

来する細胞。細胞形質内の血書の多くは脂肪滴であ

る。

一2976一

(3)

         飯沼ら論文N図

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参照

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