(3) 戸建住宅の寿命と建て替え要因に関する研究
206
0
0
全文
(2) 戸建住宅の寿命と建て替え要因に関する研究 Lifetime Estimation of Detached Houses and Analysis of Factors Affecting on their Rebuilding. 2003 年 3 月. 早稲田大学大学院理工学研究科 建設工学専攻・建築材料及施工研究. 堤. 洋 樹. Hiroki Tsutsumi.
(3) 戸建住宅の寿命と建て替え要因に関する研究. 目 次. 第1章 1.1. 序論 研究背景と社会的要求 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 1.1.1. 住宅の長寿命化の動向. 1.1.2. 日本の住宅寿命の現状. 9. 1.2 本論文の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 1.2.1. 本論文の範囲と目的. 1.2.2. 本論文の構成. 1.3. 本研究に関わる従来研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15. 1.3.1. 建築物の耐用性と持続可能性. 1.3.2. 建築物の寿命. 1.3.3. 住宅の手入れと建て替えの実態. 1.4 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22. 第2章 2.1. 木造専用住宅の平均寿命 本章の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29. 2.1.1. 本章の背景と目的. 2.1.2. 研究方法. 2.2. 固定資産台帳の調査の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32. 2.2.1. 調査目的. 2.2.2. 調査対象地域の選定. 2.2.3. 調査方法. 2.3 統計的な資料の利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 2.3.1. 調査資料の特徴と注意点. 2.3.2. 比較分析の結果. 2.3.3. 統計的な資料の信頼性と利用. 2.4. 木造専用住宅の寿命の推計手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40. 2.4.1. 経年残存率を用いた算出方法. 2.4.2. 信頼性理論を用いた算出方法.
(4) 2.5. 大阪府における木造専用住宅の寿命 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51. 2.5.1. 中央区における平均寿命の推移. 2.5.2. 東淀川における平均寿命の推移. 2.5.3. 枚方市における平均寿命の推移. 2.6 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69. 第3章 3.1. 取り壊された家屋の実態 本章の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75. 3.1.1. 本章の目的と概要. 3.1.2. 研究方法. 3.2. 取り壊された家屋の実態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77. 3.2.1. 中央区の状況. 3.2.2. 東淀川区の状況. 3.2.3. 枚方市の状況. 3.3 地域別に見た専用住宅の特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95 3.4 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 99. 第4章 4.1. 戸建住宅と居住者の関係 本章の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105. 4.1.1. 本章の背景と目的. 4.1.2. 研究方法. 4.2. 調査の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108. 4.2.1. 調査の目的と対象地域の概要. 4.2.2. 調査方法. 4.3. 調査結果による現状把握 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112. 4.3.1. 住宅と居住者の属性の状況. 4.3.2. 改修の実態. 4.3.3. 増改築の実態. 4.3.4. 建て替えの実態. 4.3.5. 住宅に対する意識の状況. 4.4 住宅と居住者の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 129 4.4.1. 調査対象地域の比較. 4.4.2. 調査項目の関係性. 4.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 141.
(5) 第5章 5.1. 戸建住宅の建て替えが行われる要因 本章の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147. 5.1.1 研究の背景と目的 5.1.2. 5.2. 研究の方法. 住宅の改善行為の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 150. 5.2.1. 住宅と改善行為の関係. 5.2.2. 居住者と改善行為の関係. 5.3. 改修と改善行為の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 165. 5.4. 住宅の改修の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 168. 5.4.1. 住宅と改修の関係. 5.4.2. 居住者と改修の関係. 5.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 179. 第6章. 結論. 6.1. 各章の総括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 187. 6.2. 今後の展望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 190. 付章 固定資産台帳調査資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・195 住宅と居住者の実態調査資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 205.
(6) 第1章 1.1. 序論. 研究背景と社会的要求. 1.1.1. 住宅の長寿命化の動向. 1.1.2. 日本の住宅寿命の現状. 1.2. 本論文の概要. 1.2.1. 本論文の範囲と目的. 1.2.2. 本論文の構成. 1.3. 本研究に関わる従来研究. 1.3.1. 建築物の耐用性と持続可能性. 1.3.2. 建築物の寿命. 1.3.3. 住宅の手入れと建て替えの実態. 1.4. まとめ.
(7) 1.1 1.1.1. 研究背景と社会的要求 住宅の長寿命化の動向. 1980 年代後半の経済成長、いわゆるバブル景気の頃には建設産業はその恩恵を受け、価格が 上昇し続ける土地を担保に次から次へと建築物が建てることができた。そのため当時は、使いに くい建築物を安易に取り壊して新しい建築物を建てる「スクラップ&ビルド」が当たり前のように 行われていた。しかし 1990 年代に入ると、それまでの異常とも言える好景気が一転して深刻な 不景気となり、その状態が 2003 年現在まで続いている。当然、建築物は「スクラップ&ビルド」 は「長寿命化」への方針転換を余儀なくさせられることになる。 「スクラップ&ビルド」の方向転換の必要性が少しずつ認識され始めた 1993 年には、第 3 回気 候変動枠組条約締約国際会議(COP3)が京都で開催され、議定書を通して地球温暖化を中心とし た地球環境の危機的な状況が世界的に再確認されることになる。その内容を受け、日本でも地球 環境に関する取り組みが活発になり、1998 年に地球温暖化対策推進法が制定された。日本建築 学会では、建築学会声明として新築の建築物では LCCO2 の 30%減、建築物の耐用年数の 3 倍延 伸を目指すべきとの発表が行われるなど、地球温暖化や産業廃棄物の問題を始めとした環境問題 がにわかに世論の注目を浴びることになる。 そのため、1990 年頃から建築界においても建築物の長寿命化や地球温暖化の抑制に向けた取 り組みが盛んに行われるようになった。その対応は行政や研究者、設計者や施工者など立場に よって様々であるが、建築物の長寿命化は地球環境を考える上で重要な課題であること、取り壊 し時や建設時に大量に排出する廃棄物や CO2 を抑制する必然性があることが改めて認識される ようになった。 また、住宅を含め建築物の寿命が短い状況が重大な社会問題として取り上げられるようになっ た。一般的に日本の建築物の寿命は欧米よりも短いと言われているが、実際に様々な資料や研究 からも日本の住宅の寿命は欧米諸国よりも短命であることは明らかである。しかし、各国のGDP に占める住宅投資額や住宅の平均延床面積といった統計資料を見る限りでは日本は欧米諸国と比 較してそれほど遜色がないと考えられる。日本と欧米諸国では生活や社会環境が異なるため単純 には比較できないが、 これまで日本では建築物の長寿命化に対する取り組みがあまりに行われず、 その結果として住宅の寿命が欧米諸国に比べて短い状況であると考えられる。 これまで建築物の長寿命化への要求は、その時代や社会の背景によって様々に変化している。 しかし、建築物が地域社会や地球環境に与える影響を考慮するとその長寿命化は必然であり、持 続的な使用の方向を考察することは今後避けては通れない重要な課題である。そのため、建築物 の中で大多数を占めている住宅においては長寿命化を目的とした研究が今日までに数多く行われ、 持続的な使用に不可欠な構造部材の耐久性を向上させる技術の発展は著しい。しかし、耐久性の 問題から取り壊されていると考えられる住宅は全体の一部でしかなく、住宅の長寿命化には何が 必要であるのかという疑問は明確にされていない。そのため、既存もしくは今後建設される住宅 の長寿命化のためには住宅の寿命を機能的な側面から考察する必要性がある。. -9-.
(8) 1.1.2. 日本の住宅寿命の現状. 日本の住宅の寿命は欧米諸国に比べて短い傾向を示すことは既に述べたが、日本の住宅の寿命 を欧米諸国と比較し、住宅の寿命の現状を明らかにした文献としては平成8年度版の建設白書が 挙げられる。その中で、日本の住宅の現状や背景から住宅の寿命が短い理由を考察している。特 に、住み替えやリフォームの問題を取り上げていることが注目に値するため、以下にその部分を 引用する。. 日本の住宅の寿命は、建築時期別のストック統計から試算してみると過去 5 年間に除却された もので平均で約 26 年、現存住宅の「平均年齢」は約 16 年と推測されるが、アメリカの住宅につい ては、「平均寿命」が約 44 年、「平均年齢」が約 23 年、イギリスの住宅については、「平均寿命」が約 75 年、「平均年齢」が約 48 年と推測され、日本の住宅のライフサイクルは非常に短いものとなっ. ている。 この理由として、日本は戦後急速に住宅ストックを充実させてきている中途の段階にあること や、そもそも住宅ストックの質の低さ、リフォームのしにくさ、あるいは使い捨てのライフスタ イルに合わせて住宅も建て替えにより対応していることが考えられる。このように日本の既存住 宅流通量は新築に比べて少なく、大量建築・大量廃棄の構造になっている。これは GDP を押し 上げるかもしれないが、良質なストック形成が行われないまま、住み替え需要に的確に応じられ ず、住生活の充実にコストと手間隙がかかる構造になっていると考えられる。. 平成 5 年の住宅統計調査及び住宅着工統計によると、1950 年以降に建設された住宅が全体の 53%を占め、住宅の建て替えが活発に行われている状況が伺える。 しかし、住宅着工数は昭和 47 年の 186 万戸をピークに減少と上昇を繰り返し、現在でも年間 100 万戸以上の住宅が建設されている。また、昭和 43 年には全国の住宅棟数が世帯数を上回り、 平成5年現在では4600万戸程度に達している。その後も住宅棟数は増加の一途をたどっている。 住宅の持ち家率を見ても日本全国で 60%程度を占めている。この持家率はアメリカやイギリス には劣るが、ドイツやフランスに比べると高い。また、日本の空家率は 10%程度と考えられる が、この数字は他の 4 カ国に比べて高い。住宅の延床面積は近年になるにつれて増加の傾向が見 られ、平成 5 年には平均延床面積が 92 ㎡になっている。なお、借家は 45 ㎡と依然狭小である が、持ち家の延床面積については122㎡とアメリカ合衆国には及ばないまでも他の3カ国に比べ ると広い。 このように日本の住宅事情は、 欧米諸国に比べて劣悪であるとは言えない状況にもかかわらず、 住宅の更新は頻繁に行われている。そのため、建設白書の指摘は住宅の長寿命化を考える上で重 要であるが、住宅の更新の理由とその背景については十分な説明がなされていない。そこで、本 論文で住宅の更新が行われる要因を機能的な側面から明らかにする。. -10-.
(9) 1.2 1.2.1. 本論文の概要 本論文の範囲と目的. 本研究では、機能的な側面から建築物の長寿命化に向けた具体的な対応を考察するため、住宅 の寿命の現状を以下の通りに認識し、研究を進めていく。. 1)建築物が地域社会や地球環境に与える影響を考慮すると、 建築物の長寿命化は今後避けては通 れない課題である。そのため、構造的に支障のない住宅が安易に取り壊されている今日の状況 を適切に把握し、その背景を考察する必要がある。 2)住宅の寿命の現状を正確に把握することは、 住宅の長寿命化に向けた具体的な対応を考慮する 基礎的な資料として不可欠である。そのため、取り壊しや建て替えが行われた住宅とその住宅 に住む居住者の関係性を分析する必要がある。特に、住宅の持続的な使用を考察するには、居 住者の住宅に対する意識と住宅の寿命の関係性を把握する必要がある。 3)今日の深刻な地球環境に対する対策や今後の景気の見通しが立たない状況を考慮すると、 今後 新築される住宅は減少していくことが予想される。そのため、住宅の長寿命化は新築される住 宅ばかりではなく、既存の住宅も対象として考察する必要がある。なお、残す価値のない住宅 は取り壊すべきという意見が一部にあるが、 資源の有効活用のためには価値の有無に関わらず 構造躯体だけでも残す努力が必要がある。 4)日本では欧米に比べて土地の価格が住宅に対して高いこともあり、 中古住宅の流通量は少なく、 住宅に対する手入れや中古住宅に対する資産価値は認識されていない状況であった。 このため、 今日の一般的な市場では住宅が新築されてから 10 年から 20 年程度で価値がなくなり、多額 の費用をかけて住宅の長寿命化を目指す必然性は低い状況であった。しかし、今後新築される 住宅が減少すれば住宅そのものの資産価値が評価され、 改修や増改築の必要性は増すと考えら れる。. したがって住宅の長寿命化を考察するには、まず現状の住宅の寿命を的確に把握し、取り壊さ れた住宅の属性やその背景を把握する必要がある。そのため、まず本論文では平均寿命の算出と 建設年次による平均寿命の変化の状況を明らかにしていく。また、住宅を長期間持続的に使用す るためには、構造部材を中心とした各部材の耐久性の向上が不可欠である。そのため本論文で は、耐久性をもった住宅を如何に持続的に使用する手法を考察し、住宅の寿命を途絶えさせてし まう取り壊しや建て替えの要因から持続的な使用に必要な住宅の属性を考察する。さらに、取り 壊しや建て替えばかりでなく、改修や増改築も含めた総合的な視点から住宅の現状とその背景を 捉え、建て替えが行われる要因を考察する。 本論文の目的は、住宅の建設年次による平均寿命の変化を明らかにするとともに、住宅と居住 者の実態調査から住宅の建て替え要因を解明し、改修や増改築による持続的な使用の可能性と今 後の住宅の長寿命化に向けて考慮すべき住宅の属性を明らかにすることである。. -11-.
(10) 1.2.2. 本論文の構成. 本論文は、大きく 2 つの視点から研究を進めている。まず固定資産家屋台帳の調査から、木造 専用住宅の建設年次による平均寿命の変化を明らかにする。また、戸建住宅団地における住宅と 居住者の実態調査から、住宅の建て替えの要因を解明し、改修や増改築による持続的な使用の可 能性と今後の住宅の長寿命化に向けて考慮すべき住宅の属性について考察を行っている。 なお、本論文は以下の 6 章から構成されている。 (図 1.2‑1). 「第 1 章. 序論」. 本章では序論として、本論文における研究の背景、目的、方法を示すとともに、本論文に関連 した既存の研究の方向とその範囲から本論文の位置付けを示している。. 「第 2 章. 木造専用住宅の平均寿命」. 本章では木造専用住宅の寿命に関する研究として、固定資産家屋台帳及び固定資産家屋除却台 帳の調査に基づき大阪府内 3 地域における木造専用住宅の平均寿命の算出を行い、1951 年以降 に建設された木造専用住宅の寿命の実態とその背景を明らかにしている。 木造専用住宅の寿命の推計については、寿命の推計に適当な建築物に関する統計資料が存在せ ず、住宅の寿命の現状を適切に把握することは困難である。そこで、固定資産税の徴収を目的と した固定資産台帳を寿命推計の対象とすることを検討し、建築物に関する各種統計資料との比較 分析からその特徴と寿命の推計の際に留意すべき項目を示している。 固定資産台帳調査に基づいては、大阪府内 3 地域において 1951 年以降に建設された木造専用 住宅を対象に、当初建設された木造専用住宅の棟数が経年とともに次第に減少していく推移を 2 種類の手法により求め、寿命の推計を行っている。さらに、その結果から平均寿命の算出を行っ ている。また、建設年次から見た木造専用住宅の平均寿命については、1950 年から今日に至る までの変化の状況を明らかにしている。. 「第 3 章. 取り壊された家屋の実態」. 本章では取り壊された家屋の実態に関する研究として、第2章で用いた固定資産家屋除却台帳 の資料を基に、今日までに取り壊された家屋の寿命について用途や構造の関係と地域差の実態を 明らかにしている。 大阪府内 3 地域において 2000 年までに取り壊された家屋の調査結果から、家屋の属性の地域 差や家屋の寿命と延床面積の関係、用途や構造による寿命の傾向について分析を行っている。ま た、家屋全体、専用住宅、木造専用住宅の寿命の比較分析からその関係性を考察している。 なお、地域別に建設時期と延床面積や寿命の関係を分析し、立地条件が住宅の取り壊しに与え る影響について分析を行っている。. -12-.
(11) 「第 4 章. 戸建住宅と居住者の関係性」. 本章では戸建住宅の現状と居住者の意識に関する研究として、大都市の近郊に位置する3つの 戸建住宅団地における戸建住宅の改修、増改築、建て替えの実態調査を行い、今日の戸建住宅の 状況と建て替えの背景となる住宅と居住者の関係性を明らかにしている。 調査対象地域の住宅や居住者については、入居当時と現在の状況を比較し、増改築、建て替え の現状と経年による変化を明らかにしている。また、改修の現状や改修に対する居住者の意識が について分析を行っている。 なお、調査結果を基に住宅の改修、増改築、建て替えの背景となる住宅と居住者の関係性に関 する分析を行い、住宅に対する満足度に対する影響や経年による住宅と居住者の関係について考 察を行っている。. 「第 5 章. 住宅の建て替えが行われる要因」. 本章では住宅の建て替えが行われる要因に関する研究として、住宅の寿命に影響を与えている 要因を示すとともに、第 4 章で調査を行った戸建住宅の改修、増改築、建て替えの実態調査から 建て替えの要因となる可能性が高い住宅の属性を指摘している。 増改築が行われた住宅と建て替えが行われた住宅の比較分析から、建て替えに向かう住宅の属 性の特徴について分析を行っている。また、改修の実施状況と増改築や建て替えの関係から、改 修の実施の有無と住宅の寿命の関係を考察している。さらに、増改築や建て替えと改修の関係を 住宅の属性の特徴についても考察を行っている。 なお、増改築と建て替え及び改修と建て替えの関係性の分析から、住宅の設計及び入居時に考 慮すべき住宅の属性を示している。. 「第 6 章. 結論」. 第 6 章では結論として、各章の研究結果を総括するとともに、今後の研究の展望として住宅の 住み替えや中古住宅の流通の可能性について述べている。. -13-.
(12) 第1章 序論 1.1 1.2 1.3 1.4. 研究背景と社会的要求 本論文の概要 本研究に関わる従来研究 まとめ. 第2章 木造専用住宅の寿命 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6. 本章の概要 固定資産台帳の調査の概要 統計的な資料の利用 木造専用住宅の寿命の推計手法 大阪府における木造専用住宅の寿命 まとめ. 第3章 取り壊された家屋の実態 3.1 3.2 3.3 3.4. 本章の概要 取り壊された家屋の実態 地域別に見た専用住宅の特徴 まとめ. 第4章 戸建住宅と居住者の関係性 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5. 本章の概要 調査の概要 調査結果による現状把握 住宅と居住者の関係 まとめ. 第5章 戸建住宅の建て替えが行われる要因 5.1 5.2 5.3 5.4 5.5. 本章の概要 住宅の改善行為の背景 改修と改善行為の関係 住宅の改修の背景 まとめ. 第6章 結論 6.1 各章の総括 6.2 今後の展望. 図 1.2-1. 本研究の構成. -14-.
(13) 1.3. 本研究に関わる従来研究. 1.3.1. 建築物の耐用性と持続可能性. 建築物の寿命や長寿命化に関しては様々な視点から考察することができるが、本論文では建築 物の耐久性と持続可能性という大きな 2 つの視点から建築物の現状を把握する。 以下にその 2 つの概要とその変遷について示す。. (1)材料や構法の分野から長寿命化への対応. ‑ 建築物の耐用性 ‑. 建築物の耐久性や耐用性への関心は今に始まったものではなく、建築材料の耐久性に関する研 究は 1870 年頃から行われていた。建築物の寿命は建築物を構成する建築材料の耐久性により決 定するという基本的な考え方が中心であり、建築材料の腐朽や腐食など劣化を抑制する手法につ いては、今日でも引き続き様々な研究が行われている。 1950 年頃になると、戦後直後に大量に建設された劣悪な住宅の自然崩壊が起こるなど、建築 物の耐久性が大きな社会問題となる。そのため、建築材料ばかりではなく建築物全体の耐久性に 関する研究が行われるようになった。また、1961 年には建築学会から「建物の耐久設計Ⅰ、Ⅱ」 が刊行されている。同時期には建築雑誌で「耐用年限特集」が組まれ、建築物の寿命は「物質的命 数」ばかりでなく「社会的命数」によって決定する「耐用性」という概念が広まり、社会的要素や経 済的要素を踏まえた建築物の寿命が論議されるようになった。しかし長寿命化という視点から見 ると、高度経済成長の真っ只中であったためか、一般的な建築物では 30 年から 40 年程度の耐用 年数が適切であるという見解が中心であった。また、この頃からオープンシステムやモジュール 論、部位 (BE) 論といった設計面、生産面、性能面から建築に取り組む手法が活発に研究されて いる。 1980 年代には、高度経済成長時に建設された劣悪な建築物の耐久性が社会的な問題となって いたことから、住宅の寿命に対する世論の関心が高まっていた。建築学会でもこれらの深刻な情 勢を受け、1998 年に「建築物の耐久計画に関する考え方」を刊行し、世界で初めて建築物の使用 年数という時間軸を設定して設計を行う手法が記されることとなった。なお、この時期には建設 省(現国土交通省)によるセンチュリーハウジングシステム(CHS)を始め、建築研究所の小林らに よるつくば方式や京都大学の巽らによる2段階供給方式など設計方法や法制度を考慮した供給方 法の開発が進んだ。 その後の建築界は、前述の通りバブル景気とその後の景気低迷を経験することになる。そのよ うな状況の中、オープンシステムや CHS の考え方を基に建築物の躯体とそれ以外に分割し、躯 体そのものの耐久性を高め長寿命化を目指すサポート(スケルトン)インフィル住宅、いわゆるSI 住宅が 1990 年代には一般に知られるようになる。また、これまで利用者の要求に対応できない 多くの建築物は取り壊されていたが、今日では建築物の躯体を補強しつつ全く新しい建築物にリ ファイン(改修)するなど、大規模な改修を行う手法が確立されてつつある状況である。. -15-.
(14) (2)環境やエネルギーの分野から長寿命化への対応. ‑ 建築物の持続可能性 ‑. 環境やエネルギーの分野から建築物の長寿命化に対する取り組みが行われるようになったのは、 1990年代に入り持続可能性(サステナビリティ)という概念が広く認識された頃からであると考 えられる。この持続可能性という概念は環境問題が世界共通の課題として認識され始めた 1970 年代に使われ始めるようになった。その後 1980 年代に入り、熱帯雨林の減少、オゾン層破壊、 地球の温暖化など報告がなされ、国際社会において認識されるようになった。しかし、全世界的 な環境問題は因果関係が不明確でその加害者を特定できなかったことから、1980 年代後半まで 具体的な対応は行われない状態であった。 「サステナビリティ」は、1987年の国連においてバートランド委員会の報告書「われら共有の未 来」の中で「来るべき世代が我々と同様の水準の生活を享受するために十分だけの資源を残すこと」 として発表され、その概念が広く知られることになる。また、バートランド委員会で用いられた 「サステナブルディベロップメント」という概念は建築界においても広く認識され、 「サステナブル コンストラクション」「サステナブルビルディング」といった建築物に対する持続可能性の取り組 みがヨーロッパやアメリカ合衆国を中心に盛んに行われることになる。日本では 1990 年代に 入っると環境の分野で研究が活発に行われるようになり、「サステナブル」という言葉が広く普及 することになる。 建築物における「サステナビリティ」に関しては、その概念の範囲が広いこともあり明確な定義 はない。また、「環境共生」や「省エネルギー化」と同義で使われている場合が多く、その概念は使 用される状況によって異なる場合が多い。このような状況を受け、建築学会においては「サステ ナブル・ビルディングとは、地域レベルおよび地球レベルでの生態系の収容力を維持しうる範囲 内で①建築のライフサイクルを通じての省エネルギー、省資源、リサイクル、有害物質排出抑制 を図り、②その地域の気候、伝統、文化および周辺環境と調和しつつ、③将来にわたって人間の 生活の質を適度に維持あるいは向上させていくことができる建築物」と定義している。なお、環 境分野における持続可能性の追及は地球環境の持続可能性の追求であり、建築の省エネルギー技 術、屋上緑化、空調や照明の制御など建築物の長寿命化による省資源、省エネルギー化を目指し た取り組みが行われている。. 1.3.2. 建築物の寿命. 建築物、特に住宅の寿命実態の把握は戦後直後の住宅難を背景として 1950 年頃から活発に研 究が行われ、今日の研究の基礎となっている。しかし、1950 年代以後長い間まとまった研究は 見られなかったが、1980 年代に入ると小松らによる一連の研究により各種の家屋について平均 寿命の算定が行われることになる。以下に建築物の寿命に関する研究の中から、主要と考えられ る研究についてその概要を述べる。なお、「寿命」「耐用年数」「耐用年限」などの用語についてはそ れぞれの研究の用法に従うことにする。. -16-.
(15) (1)家屋耐用年限理論 東京大学第 2 工学部(当時)の伊藤によって 1953 年に発表された耐用年限の推定理論である。 「年齢別解除率」および「年齢別建築率」といった概念を導入して年齢別残存率を求めているが、 「年 齢別解除率」は家屋年齢に対応した滅失率、つまりある年齢の家屋が除却される確率を表してい るものと考えられる。また、「年齢別建築率」とは滅失率が死亡であるなら出生を想定したような 概念であり、家屋年齢に応じた家屋の新築率のようなものと考えられる。そして、家屋耐用年数 を知る手段として一種の定常状態にあるような家屋群を想定し、 「家屋総数ならびに年齢別建築率、 年齢別解除率が長期に至って一定である家屋群」を「定常家屋群」、 「常に一定の増加率(又は減少率) で増加しつつある家屋群」を「安定家屋群」と 2 つに分類して「家屋函数」を求めている。この理論 を用いた東京大学第 2 工学部の調査では、千葉県佐倉町内郷村(当時)では耐用命数値として約 100 年という結果が示され、他の 3 箇所でも 50 年から 100 年の値となっているが、これらは家 屋の年齢曲線の変曲点を基に算定されたとされている。 なお、その後の研究では2つの家屋群は「共に現実にはほとんど存在することがないような、家 屋群であること」として、 「どんな増加率の変化があってもかまわないのですが、他の係数につい ていくつかの条件がある」第 3 の家屋群「一般家屋群」の残存率を求める手法を提案している。ま た、その後の東京大学第 2 工学部による奈良市の民家の調査では、家屋年齢別の累加度数図から 耐用命数を 30 年、60 年、100 年、150 年と求めている。また、全戸数の 50%にあたる累加中 央値(25 年)をとり、この 2 倍にあたる年数(50 年)を建築相対年数と呼び、当時の新築される速 度に対して現在の総戸数を維持するために必要な耐用命数としている。 この理論については、総建設家屋棟数と総家屋数の2つの資料から除却された家屋数を想定す るため、定常状態にある家屋群を想定して分析を行っているが、この定常状態が現実の状況と異 なり、現実の除却家屋棟数の状況については把握できない可能性が高いと考えられる。. (2)平均余命としての家屋耐用年限 建築研究所の谷によって1953年に発表された耐用年限値を求める理論であるが、「家屋群の維 持が定常状態にあるときは年令分布曲線の反曲点が耐用年数年限値のモードに当たるのでここか ら耐用年限を推定しえるのであるが、実際には家屋の状況が構造・環境・維持その他の条件が複 雑多様であるために年令分布曲線において明らかな反曲点をつかむことがむつかしい場合が多い」 として、平均余命数の概念を導入するとしている。また、この理論では人口変動が家屋の年齢分 布に与える影響を重視し、家屋のとみなすために人口比率による補正によって定常状態にある家 屋の年齢分布を得ることができるとしている。 結果として、20 歳の住宅は 33.7 年(耐用年限 53.7 年)、40 歳では 38.2 年(耐用年限 78.2 年) となっている。また、各都市の平均余命数の経年変化の違いから4つに分類しているが、特に「始 めはやや低下するか水平に推移して後年に上昇するもの」が最も多い型であるとしている。また、 「統計上の偏歪や各種の誤差をかなり含んでいるのでそのまま使用することは危険」であるとして いるが、 「特に長命家屋について余命数の水量から評価作業を容易」にする方法であるとしている。 -17-.
(16) この理論についても、除却された家屋棟数を把握できる資料が無いために現存している家屋の 年齢別の分布から耐用年限を求めているが、取り壊される家屋の状況を把握できないこと、家屋 数の増加が人口に比例しているとは限らないことから耐用年数が現実よりも長めに出ていると考 えられる。. (3)大蔵省令の耐用年数 大蔵省令「固定資産の耐用年数等に関する省令」の別表にある固定資産耐用年数は、本来は所得 税法や法人税法に基づいて規定された減価償却の算出のために使用される年数であり、その年数 は大正 9 年の最初の制定から今日まで幾度となく改定され、変更されている。しかし、税制上の 都合からこの年数を基準に建築物の使用期間を決定される場合が多いこともあり、建築物の一般 的な耐用年数として良く引用されている。 その算定方法は、建築物を構造部分別に分解し、各部位のコストとその耐用年数から年当たり の償却費を算出し、合計することで建物総体の年間の償却費を求める。この総償却費で建築物の 総コストを割ったものを耐用年数と見なしている。そのため、大蔵省令を改定する際の物価や各 部位の耐用年数の設定によってその値は大きく変わってくることになる。 当時の耐用年数の設定を見ると、たとえば鉄筋コンクリート造の場合、躯体の鉄筋コンクリー トは「中性化が終わったときを持って効用持続年数が尽きたるものと考えるを適当と認める」とし、 120 年から 150 年という耐用年数を設定している。同様に、アスファルト防水 20 年、本仕上の 床 30 年、タイルもしくはモルタル仕上の外装 30 年、スティールサッシ 30 年などとなっている。 また、木造については、玉石打ち込みコンクリート布基礎で主柱 3.5 寸角の構造体を 50 年、建 具 20 年、屋根 50 年、水回り軸組み 25 年となっている。 なお、この理論は償却費から償却年数を求める理論であり、現実の寿命を直接算出している理 論ではない。この算定方法は建築物の減価償却期間の設定を目的としているため、住宅の耐用年 数として引用する際には十分な考慮が必要である。. (4)固定資産台帳による調査 建築的な統計資料から寿命を推定するには必要な情報量が決定的に不足している状況、特に住 宅の滅失数に関する信頼できる統計資料がなく、住宅の建設数および除却数が定常状態であると いう現実には考えにくい前提で推計されることとなる。そのため、その推計結果は現状を適切に 把握するには不十分であると考えられる。そこで、固定資産税の課税に使用する固定資産台帳を 用いた住宅の寿命の推計が行われている。 新海や秋葉らの調査では、除却建物(滅失により固定資産台帳から除かれた建物)の平均年齢を 住宅の寿命としている。この方法では、建物の最大年齢を超える年数にわたる資料が存在し、か つ年間の新築棟数がほぼ一定と見なせる場合には有効な方法である。しかし、わが国は第 2 次世 界大戦時に多くの建築物が損壊されているため戦前の建築物が少なく、景気や政策によって建物 の新築棟数が大きく変化していることから、除却建物の平均寿命が現状の平均寿命よりも短い結 -18-.
(17) 果となることが予想される。 そこで、加藤及び小松らは人間の平均余命の計算方法と信頼性工学の方法から勘案して、固定 資産家屋台帳と同除却台帳から得られる建築物の年齢別データに基づいてその残存率曲線を導く 方法を提案し、実態調査に基づく分析結果を報告している。なお、その後小松は推計方法を改良 し、残存率曲線を理論曲線へ当てはめる手法を提案している。 この手法では現存している住宅の寿命を考慮に入れ推計手法を行っているため、現在の住宅の 寿命を考察する場合に最も適した手法であると考えられる。そこで本論文では、住宅の寿命につ いてはこれらの手法を用いて算定を行っている。なお、詳細については次章で述べている。. 1.3.3. 住宅の手入れと建て替えの実態. 住宅の改修、増改築、建て替えに関する調査研究については、1970 年代頃から行われてはい るものの、あまり活発ではなかった。しかし 1990 年後半になると、東京工業大学の大沸研究室 や大阪大学の柏原研究室などにおいて、数多くの研究が行われるようになった。また、松本によ る都市計画の視点からの分析や、住宅産業団体連合会やロングライフ住宅研究所などの報告書な ど本論文と同様の目的である調査報告が行われている。 しかし、これらの研究の多くは実態を把握するに留まり、その背景について分析を行った研究 は少ない。そのため、建て替えの要因に関する分析や改修や増改築が住宅の寿命に与える影響に ついてはあまり明らかにされていない状況ではあるが、以下に本論文で参考とした調査研究につ いてその概要を示す。. (1)統計資料を用いた調査研究 1970 年の後半には、統計資料をもとに住宅の増改築や建て替えを分析する研究が島田や玉置 らによって行われている。島田は住宅統計調査及び住宅着工統計から「住宅ストックの一部とし ての持家所有のいわば 半 動態的な側面のあらましを明らかにし、さらに増改築発生の時系列 変化、府県別差異などについての若干の観察を行う」として、住宅の増改築や建て替え、滅失数 などの実数の把握とその傾向に関して分析を行っている。また、玉置らも同様に住宅統計調査を 中心に建て替えが行われる要因と地域差の把握を行っている。 これらの調査研究では、統計調査の調査方法や調査項目などの理由から、統計資料を直接使用 できないこと、必要な資料がないことなど統計資料の問題点を明言し、増改築と建て替えの関係 性や要因などの項目についてはあまり詳細な分析は行われていない。 一方、玉置らによる調査分析では、地域による建て替えの周期に影響を与えられること、建て 替えは近年(1980年当時)増加の傾向があり、「東高西低型」であることが強調されているが、 「(住 宅の)老朽化による住宅の滅失には両者が一義的に結びつくのではなく、住宅の建て替え回転率 の地域的相違の問題が介在しているからと考えられるが、それは同時に老朽比率の水準が建て替 え比率の水準を第一義的に強く規定している要因とはいえないことも示唆している。 」と老朽化と -19-.
(18) 住宅の建て替えの関係について一義的なものではないと明確に述べられていることは注目に値す ると考えられる。 その後 1980 年ごろになると、藤上らによって家計調査、全国木造建築費指数(不動産研究所) などを併用した増改築及び修繕に関する研究が行われて、地域差を中心とした分析や、修繕費の 概算の試算などが行われている。 しかし、統計資料を用いた手法では、工事内容の分析まで分析を行うことができない。そのた め、増改築や建て替えの関係性については明らかになっても、具体的な居住者の不満や不都合と の関係性については把握できず、今後の対応を考察するには至っていない。. (2)木造住宅における修繕費及び除却理由 1980 年頃には、木造住宅の除却理由に関する分析が南らの東京大学内田研究室の卒業生を中 心に行われている。また、同じ時期には木造住宅の修繕費に関する研究が藤上らによって行われ ている。 除却理由に関する研究については、住宅の寿命に関する一連の研究である「建物の耐用年数に 関する研究」の中で、58 の調査項目を主成分分析を用いて 11 項目に分類し、その後数量化第Ⅱ 類を用いた分析を行っている。その結果、「本研究の結果を、一般的妥当性を持つものと判断する ことは早計であろう」とするものの、収入や住環境に対する満足度、維持管理に対する負担感な どが住宅の除却に大きく影響しているとの結果が示されている。 また修繕費の研究では、全国営繕建築協会組合連合会(全営連)の営繕工事実績データから約 1200 件のデータを分析している。その分析結果から、 「修繕費は多くの場合住宅の経年とは無関 係に突発性や恣意性に支配されやすい性格を有している」ものであり、「木造住宅における修繕費 支出の経年増加を仮定する考え方は成立しない」としている。しかし、その理由についてはデー タがないこともあり明らかにはされておらず、修繕費研究に必要な実績データのあり方を述べて いるのに留まっている。 なお、同時期には増改築や修繕に関する研究についてもいくつか行われているが、その多くが 実態調査の集計結果について述べているものであり、その重要性は認識されているものの、その 要因や背景については詳細な分析は行われていない。. (3)増改築及び修繕工事に関する研究 1980 年の中頃には、京都大学巽研究室や岸本によって住宅の建て替え、増改築、修繕の関係 性といった、本研究と同様の視点からの分析が行われている。 巽らは非戦災都市で老朽住宅が多い京都において、京都府住宅改良資金の借入申込書と建て替 えや増改築工事実施者に対する調査から分析を行っている。増改築に比べ修繕行為は金額が低い こと、増改築は建築後比較的早い時期に行われているが修繕は経年による違いはあまり見られな いこと、工事の依頼先と仕事の内容に関する関係などが明らかにされている。 また、修繕や増改築の発生構造を明らかにするため、修繕個所や増築工事の内容や理由、資金 -20-.
(19) 計画などの金銭面など様々な角度からの分析が行われており、修繕に関しては「老朽化による物 的要因に規定され」、増改築に関しては「大規模なものは敷地の余裕という物的要因、及び経済的 余裕、生活条件の変化による人的要因に規定され、小規模なものは修繕と同時に物的要因に規定 される」としている。 一方、岸本は居住者から見た増改築の動向を把握するため、「’83大阪増改築フェアー(大阪住宅 センター主催)」に訪れた約300人からアンケートの回答を得て分析を行っている。その結果、増 改築が行われる住宅は、一般的に想定されているような老朽化した小規模住宅の修繕や改善のた めではなく、比較的規模が大きく水準が高い住宅で行われており、所得も多い居住者が多いと指 摘している。また、生活水準が比較的低い居住者は面積の増大を、生活水準が比較的高い居住者 は設備等の向上を要求していることが明らかにされており、その中で岸本は「増改築需要はこれ まで想定されているのとは異なる需要基盤や需要構造をもっている」と指摘している。 これらの研究では修繕と増改築の原因や背景について分析が行われているが、増改築が住宅の 寿命に与える影響については明らかにされていない。. (4)その他増改築や修繕に関する研究 1990 年に入ると、住宅の長寿命化に対する関心の高まりから、民間企業による分析も行われ るようになった。また、建て替えの要因や増改築や改修と寿命の関係に着目した幅広い研究がい くつか行われている。これらの研究の趣旨は本論文とほぼ同じであり、本論文において参考とし ている研究が多い。 松村らによる「生産者が自ら行う住宅の維持管理」研究会では、住宅の手入れに関する既存の資 料と実態調査など、様々な角度から住宅の維持管理の促進対策を検討している。既存の調査や実 態調査の結果から維持管理の現状と背景を述べるに留まっているが、その視点は住宅の長寿命化 を考える上で重要である。 また、旭化成工業ロングライフ住宅研究所では、20 年以上経過した住宅の居住者と建て替え を行った居住者の住まいの維持管理に関して比較分析を行っている。このような分析はこれまで にあまり行われていないこと、維持管理と寿命の関係に着目していることなどが注目に値する。 また、維持管理と居住者の満足度の関係についても分析が行われており、維持管理を行っている 住宅ほど満足度が高い結果となっている。 修繕行為に関しては、後藤らの研究によって修繕効果と修繕希望の関係が分析されている。そ こでは、数量化第Ⅱ類による分析から、修繕を行った住宅の評価は修繕を行っていない住宅より も高いこと、修繕の希望個所が必ずしも効果に結びつかないことを指摘している。このような結 果を踏まえ、空家を利用した住宅の修繕計画を提案している。 これらの研究では増改築や修繕を行いながら住宅を長期利用の手法を考察しているが、増改築 による住宅の長期利用や住宅の寿命を決定付けている建て替えの要因については明らかにされて いない。. -21-.
(20) 1.4. まとめ. 本章では、住宅を含めた建築物の寿命や建て替えに関する研究の概要をまとめ、今日までに行 われた研究と本研究の位置付けを明らかにしている。以下にその概要を示すとともに、これらの 内容を踏まえつつ本論文を進めていく。. 1)建築物の寿命が注目されるのは第2次世界大戦後のことであり、建築物の長寿命化に関する本 格的な研究が行われ始めるのは 1960 年代に入ってからである。その後、近年までそれほど活 発な研究は行われていない状況であったが、1990 年代に入ると深刻な地球環境への関心の高 まりから、建築物の長寿命化に向けた研究が様々な分野や手法で行われるようになる。しか し、それらの研究では建築物の寿命は部材の耐久性ばかりでなく耐用性が大きな影響を与える との認識は見られるが、住宅の寿命に影響を与えている要因について分析が行われている研究 は少なく、その要因は未だ明らかにされていない。なお、住宅の長寿命化に関する研究では新 築住宅を対象にしている場合が多いが、現存している住宅についても長寿命化に向けた対策が 必要である。そのため本論文では、住宅の長寿命化に向け改修や増改築の実施による持続的な 使用の可能性について考察を行う。 2)住宅の寿命の推計に関しては、小松らによる信頼性理論を用いた平均寿命の算出によって、全 国的な住宅の寿命がある程度の精度で明らかにされている。しかし住宅の寿命を考える上で は、今日の住宅の寿命を適切に把握するとともに、建設時期による住宅寿命の変化からその実 態と背景を把握する必要がある。特に、人間の平均寿命が毎年変わるように住宅の寿命もその 調査時期によって大きく変化するため、現状の住宅寿命とその動向をより的確に把握するため には、建設時期による住宅の寿命の変移を把握する必要がある。また、住宅の取り壊しに関す る調査研究は少なくその実態は明らかにされていないため、本論文では住宅の寿命と取り壊し の現状の分析から、住宅の長寿命化を阻む要因を明らかにする。 3)住宅の増改築や建て替え、 改修などに関する実態に関しては、 今日までに様々な研究が行われ、 その実態はある程度明らかになっている。しかし、その多くは個々の行為に関する実態の調査 分析に留まっている場合が多い。また、住宅の長寿命化の実現に向けた構造躯体の耐久性の追 求を始め様々な研究が行われているが、現在の住宅の状況を考慮すると、住宅を持続的に使用 するための手法を考察していく必要がある。そのため、本論文では住宅や居住者の関係、居住 者の意識が住宅の寿命に与える影響など機能的な視点からの分析から、 住宅の寿命を決定して いる要因と考慮すべき住宅の属性を明らかにする。. -22-.
(21) < 参考文献 > 1)小松幸夫他:わが国における各種住宅の寿命分布に関する調査報告 , 日本建築学会計画系論文報告集第 439 号 ,pp.101‑110,1992 年 9 月 2)小松幸夫、加藤裕久:都市別に見た木造専用住宅の寿命 木造専用住宅の寿命に関する調査研究 その 2, 日本建築学会計画系論文報告集第 375 号 ,pp.57‑63,1987 年 5 月 3)加藤裕久、小松幸夫:木造専用住宅の寿命に関する調査研究 , 日本建築学会計画系論文報告集第 363 号 ,pp.20‑26,1986 年 5 月 4)小松幸夫:建築寿命の年齢別データによる推計に関する基礎的考察 , 日本建築学会計画系論文報告集第 439 号 ,pp.91‑99,1992 年 9 月 5)玉置伸悟、鈴木博志:滅失住宅推計方法論及び地域特性の検討(住宅統計調査の分析 ‑ その 3), 日本建 築学会計画系論文報告集第 267 号 ,pp.141‑153,1978 年 5 月 6)玉置伸悟他:持家建て替え建設活動の動向及び地域特性の分析(住宅統計調査の分析 ‑ その 2), 日本建 築学会計画系論文報告集第 266 号 ,pp.133‑142,1978 年 4 月 7)南一誠他:木造住宅の除却理由の分析及び修履歴の分析 , 日本建築学会大会学術講演梗概集(九州), pp.1945‐1946, 昭和 56 年 9 月 8)加藤裕久他:積雪地域における除却建物調査報告,日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),pp.1943‐ 1944, 昭和 56 年 9 月 9 ) 小松幸夫他:建物の除却理由の整理についての試案 , 日本建築学会大会学術講演梗概集( 九州) , pp.1941‐1942, 昭和 56 年 9 月 10)加藤裕久:木造建物の寿命の推定に関する研究 , 日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸),pp.2409‐ 2410, 昭和 58 年 9 月 11)加藤裕久、小松幸夫:木造建物の寿命に関する研究 その 6 全国主要都市の木造専用住宅の平均寿命の 推定 , 日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿),pp.505‐506, 昭和 62 年 10 月 12)加藤裕久他:非木造建物の寿命に関する研究(その 1 鉄筋コンクリート造専用住宅の寿命推定), 日本 建築学会大会学術講演梗概集(九州),pp.461‐462,1989 年 10 月 13)川上勝弥、加藤裕久:木造専用住宅のストックと滅失の実態 , 日本建築学会大会学術講演梗概集(北海 道),pp.921‐922,1995 年 8 月 14)川上勝弥、加藤裕久:木造住宅のストックと滅失の実態(木造共同住宅、木造併用住宅、木造農家住宅) , 日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿),pp.1201‐1202,1996 年 9 月 15)野城智也:建設量と現存量の比較に基づく建物の寿命分布の試算 , 日本建築学会計画系論文報告集第 439 号 ,pp.141‑153,1992 年 9 月 1 6 ) 小松幸夫:規模別に見た木造戸建住宅寿命の推計 , 日本建築学会大会学術講演梗概集( 北海道) ,pp.923‐924,1995 年 8 月 1 7 ) 中島健輔他:全国の木造専用住宅の寿命に関する研究 , 日本建築学会大会学術講演梗概集( 近畿) ,pp.1203‐1204,1996 年 9 月 18)小松幸夫、遠藤和義:戸建住宅のライフサイクルコストの推計 , 日本建築学会計画系論文報告集第 534 号 ,pp.241‑246,2000 年 8 月 19)藤上輝之、前田博文:木造戸建住宅の修繕費に関する調査研究 , 日本建築学会大会学術講演梗概集(北 陸),pp.657‐658,1991 年 9 月 20)島田良一:持ち家の増改築・建てかえ・滅失などに関する住宅統計調査の分析, 住宅,pp.73‐78,1976. -23-.
(22) 年2月 21)島田良一:増改築統計の問題点と増改築需要の性格 , 住宅 ,pp.4‐14,1982 年 12 月 23)新海悟郎:老朽住宅をめぐって , 建築雑誌 No.818,pp.39‐41, 日本建築学会 ,1955 年 1 月 24)野城智也:新海悟郎氏所蔵資料に見る昭和 20 年代の耐用年数論議Ⅰ、Ⅱ ,BELCA NEWS,1990 年 25)谷重雄:耐用命数の理解と問題点 , 建築雑誌 No.902,pp.427‐432, 日本建築学会 ,1961 年 8 月 26)鈴木成文:設計計画より見た建物の耐用年限 , 建築雑誌 No.902,pp.433‐438, 日本建築学会 ,1961 年8月 27)「建物の寿命」, 新訂(改訂増補)建築学体系 ,pp.405‐420, 彰国社 , 昭和 46 年 5 月 28)谷重雄:平均余命としての家屋耐用年限 , 研究報告 22 号 ,pp.285‐286, 日本建築学会 ,1961 年 8 月 29)伊藤鄭爾:一般家屋群の残存率表 , 研究報告 26 号 , 日本建築学会 ,1954 年 1 月 30)平成 8 年版建設白書 ‑ 変化への対応 ‑, 建設省 , 大蔵省印刷局 ,pp.47, 平成 8 年 8 月 31)日本の住宅事情 第 2 次改訂版 , 建設省住宅局住宅政策研究会 , ぎょうせい , 平成 8 年 9 月 32)「建築物の耐久計画に関する考え方」, 日本建築学会 ,1988 年 10 月 33)「サステナブル・ビルディングに関する国内外の動向調査と提言」地球環境委員会サステナブル・ビル ディング小委員会 , 日本建築学会 ,2001 年 3 月 34)「時間・建築・環境」ライフサイクルマネジメント基本問題特別研究委員会報告書 , 日本建築学会 ,1998 年 10 月 35)片岡正喜他:増改築による小規模戸建分譲住宅の居住水準の改善 ‑増改築による住宅改善計画に関する 研究(その 1), 日本建築学会計画系論文報告集第 380 号 ,pp.32‑44, 昭和 62 年 10 月 36)平田陽子他:住宅の改善履歴と今後の改善志向 ‑ 低層高密持家層の更新に関する研究(2), 日本建築学 会近畿支部研究報告書 ,pp.569‐572, 昭和 59 年 6 月 37)松田博幸他:住宅の修繕・増築工事の発生構造に関する基礎的研究 , 日本建築学会近畿支部研究報告書 ,pp.693‐696, 昭和 59 年 6 月 38)藤上輝之他:住宅リフォームに関する調査研究 ‑ その 1 リフォーム需要発生のメカニズム ‑, 日本建築 学会大会学術講演梗概集(関東),pp.547‐548, 昭和 63 年 10 月 39)藤上輝之他:住宅リフォームに関する調査研究 ‑ その 2 リフォーム工事のコスト分析 ‑, 日本建築学会 大会学術講演梗概集(関東),pp.549‐550, 昭和 63 年 10 月 40)松田博幸他:戸建分譲住宅における修繕工事に関する研究 その 2 修繕工事担当主体とのつながり , 日 本建築学会大会学術講演梗概集(東海),pp.473‐474, 昭和 60 年 10 月 41)藤上輝之他:木造戸建住宅の修繕費に関する研究 ‑ その 7 修繕工事アンケート調査結果 ‑, 日本建築学 会大会学術講演梗概集(東海),pp.473‐478, 昭和 60 年 10 月 42)藤上輝之他:増改築の地域別動向 ‑ 増改築・修繕に関する研究その 6‑, 日本建築学会大会学術講演梗概 集(東海),pp.473‐480, 昭和 60 年 10 月 43)松田博幸他:伝統的市街地における建替・増改築・修繕工事に関する研究(その 1) 建替・増改築・修 繕工事の発生 , 日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),pp.2337‐2338, 昭和 59 年 10 月 44)松田博幸他:伝統的市街地における建替・増改築・修繕工事に関する研究(その 2) 伝統的住戸形態の 変容プロセス , 日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),pp.2339‐2440, 昭和 59 年 10 月 45)山崎古都子他:居住者に可能な維持管理システムの開発 3 住宅への愛着と維持管理 , 日本建築学会大 会学術講演梗概集(近畿),pp.1143‐1144,1996 年 9 月 46)松本恭治:首都圏における初期公的分譲住宅の維持管理と建て替え , 日本建築学会大会学術講演梗概集. -24-.
(23) (中国),pp.631‐632,1990 年 10 月 4 7 ) 岡本祥浩: 住宅改造の認識についての考察 , 日本建築学会大会学術講演梗概集( 関東) , p p . 8 7 3 ‐ 874,1993 年 9 月 48) 堤洋樹他: 居住者の改善行為から見た住宅の寿命に関する研究 , 日本建築学会関東支部研究報告書 ,pp.41‑44,2001 年 3 月 49)住宅管理の現状とロングライフ住宅 , 旭化成工業株式会社ロングライフ住宅研究所 ,2000 年 3 月 50)生活者が自ら行う住宅の維持管理に関する研究報告書 , 社団法人 住宅生産団体連合会 ,1998 年 3 月 51)住文化調査研究報告書 建て替え時代の都市住宅の調査研究 , 住文化研究協議会 ,1992 年 6 月 5 2 ) 岡本祥浩:住宅改造の認識についての考察 , 日本建築学会大会学術講演梗概集( 関東) , P . 8 7 3 ‐ 874,1993 年 9 月 53)岸本幸臣:増改築動向に関する基礎的研究 第 1 報居住者から見た増改築需要の実態 , 日本建築学会近 畿支部研究報告書 ,pp.621‐624, 昭和 60 年 5 月 54)藤上輝之他:住宅リフォームに関する調査研究 その1、その2,日本建築学会大会学術講演梗概集(関東) ,pp.547‐548, 昭和 63 年 10 月 55)藤上輝之他:木造戸建住宅の修繕費に関する調査研究 ‑ その 11 修繕故障履歴調査 ‑, 日本建築学会大 会学術講演梗概集(近畿),pp.509‐510, 昭和 62 年 10 月 56)松田博幸他:戸建分譲住宅における修繕工事に関する研究 その 1 時系列から見た修繕工事の発生構造 , 日本建築学会大会学術講演梗概集(東海),pp.473‐474, 昭和 60 年 10 月 57)藤上輝之他:木造戸建住宅の修繕費に関する研究 ‑ その 7 修繕工事アンケート調査結果 ‑, 日本建築学 会大会学術講演梗概集(東海),pp.473‐478, 昭和 60 年 10 月 58)藤上輝之他:増改築の地域別動向 ‑ 増改築・修繕に関する研究その 6‑, 日本建築学会大会学術講演梗概 集(東海),pp.473‐480, 昭和 60 年 10 月 59)松本恭治:首都圏における初期公的分譲住宅の維持管理と建て替え , 日本建築学会大会学術講演梗概集 (中国),pp.631‐632,1990 年 10 月 60)高木恭子他:千里ニュータウンにおける戸建住宅の建て替えと住宅改善の実態について , 日本建築学会 大会学術講演梗概集(中国),pp.237‐238,1999 年 9 月 61)増田達男他:既成市街地内居住地における建て替え住宅の変容家庭に関する研究 , 日本建築学会計画系 論文報告集第 475 号 ,pp.85‑94,1995 年 9 月 62)松本暢子:東京山の手住宅地における戸建住宅の更新と居住の持続性に関する研究 , 第 35 回日本都市 計画学会学術研究論文集 ,pp.343‑348,2000 年 11 月. -25-.
(24) 第2章 2.1. 木造専用住宅の平均寿命. 本章の概要. 2.1.1. 本章の背景と目的. 2.1.2 研究方法. 2.2. 固定資産台帳の調査の概要. 2.2.1 調査目的 2.2.2. 調査対象地域の選定. 2.2.3 調査方法. 2.3. 統計的な資料の利用. 2.3.1. 調査資料の特徴と注意点. 2.3.2. 比較分析の結果. 2.3.3. 統計的な資料の信頼性と利用. 2.4. 木造専用住宅の寿命の推計手法. 2.4.1. 経年残存率を用いた算出方法. 2.4.2. 信頼性理論を用いた算出方法. 2.5. 大阪府における木造専用住宅の寿命. 2.5.1. 中央区における平均寿命の推移. 2.5.2. 東淀川における平均寿命の推移. 2.5.3. 枚方市における平均寿命の推移. 2.6. まとめ.
(25) 2.1 2.1.1. 本章の概要 本章の背景と目的. 住宅の寿命やその長寿命化を考察するには、まずは現状の住宅の寿命の実態を把握する必要が ある。そのためには、住宅の寿命の推計にはこれまでに建設された住宅の棟数や取り壊された住 宅の棟数を全て把握する必要がある。そこで、既存の統計資料を用いた分析を行うことになるが、 住宅の取り壊しが行われるまでの期間が記載されている建築的な統計資料は存在せず、寿命の推 計を直接行うことはできない状況である。 そのため、住宅の寿命を適切に算出する方法については今日まで様々な試みが行われてきた。 その中でも住宅の寿命の算出を行う最も明快な方法として、対象となる地域の住宅について竣工 から取り壊しが行われるまでの年数を平均し、その年数を平均寿命とする手法が多く用いられて いる。また、現存している住宅の総棟数をその年の建設された住宅の棟数で割った値を平均寿命 とする概算手法も一般的に用いられている。しかし、前者は現存している住宅の寿命については 把握が不可能であり、後者はその年に建設された住宅の棟数によって大きく変化するため、どち らの手法も住宅の寿命の現状について適切に評価しているとは言い難い。つまり、住宅の寿命の 現状を把握するためには、今までに除却された住宅と現存している住宅の関係から現存している 住宅の寿命について推計する必要がある。 そこで、本章では固定資産家屋台帳及び固定資産家屋除却台帳に着目し、それらの調査から大 阪府内 3 地域における木造専用住宅の建設時期や取り壊しの時期を求め、当時建設された棟数が 経年とともに次第に減少していく推移を基に寿命の推計を行う。 本章の目的は、今後の住宅の寿命を考察する前提として木造専用住宅の寿命を推計し、木造専 用住宅の寿命の実態とその背景を明らかにすることである。 ここで、本章で用いる用語を定義する。. 現存棟数. :現在(調査当時)存在している建築物の棟数. 建設棟数. :ある年次に実際に建設された建築物の棟数. 着工棟数. :建設が予定されている建築物の棟数。本来は建設棟数と同義であるが、着工棟数 は住宅着工統計から得ているため、着工予定の棟数となる. 残存棟数. :ある年次までに存在していた建築物の棟数. 除却棟数. :ある年次までに取り壊された建築物の棟数. 家屋. :固定資産家屋台帳では建築物を家屋と記載しているため、本章においても建築物 の意味として家屋を用いる. 2.1.2. 研究方法. 住宅の寿命を推計するためには、対象となる地域の全住宅に関する建設された時期と除却され た時期もしくは現存している棟数を把握する必要がある。そのため寿命の推計には、全国の住宅 -29-.
(26) を網羅し、かつ最も利用しやすい国土交通省の住宅着工統計および建築物除却統計を用いる場合 が多い。しかし、住宅着工統計や建築物除却統計は基本的に届け出のあった住宅の棟数を集計し た統計資料であるため、その集計結果は現実の住宅棟数よりも少ないことが考えられる。特に建 築物除却統計については、取り壊された家屋の届け出が確実に行われていない状況であり、現実 の除却棟数とかけ離れていた集計結果であることが推測される。 そこで本研究では、各市町村で調査が行われている固定資産台帳の調査を行った。固定資産台 帳の中でも、固定資産家屋台帳及び固定資産家屋除却台帳は、調査時において残存している各家 屋や調査時点で除却された各家屋の建設年次や延床面積などの情報が年次別に記録されている。 また、その情報の過不足は固定資産税の課税に直接影響を与えるため、毎年各市町村の担当の職 員が現地を視察している。そのため、現在入手できる統計資料としては最も信頼性が高い資料で あると考えられる。なお、固定資産家屋台帳は現存する家屋、固定資産家屋除却台帳はこれまで に取り壊された家屋の属性が記載されている。 固定資産台帳を用いて住宅の寿命の推計を行うに当たり、まず固定資産台帳の特性を認識する 必要がある。そこで、住宅着工統計や固定資産台帳など、現在入手できる各種統計資料との比較 分析を行い、それぞれの特性を把握している。その後、固定資産台帳の調査結果を基に、ある年 次に建設された木造専用住宅の棟数が経年とともに減少していく推移から、その年次の寿命を推 計する。なお 1951 年以降に建設された木造専用住宅に関しては、建設年次による寿命の変化に ついて分析を行っている。 本章の住宅の寿命を推計の際には 2 種類の方法を用いて分析を行っている。以下にその 2 種類 の方法の概要を示す。. (1) 経年残存率を用いた寿命の推計 n 年次の除却棟数と残存棟数から n 年次の建設棟数を算出し、建設当初から t年経過した(n+t) 年次の残存棟数をn年次の建設棟数で割ることにより(n+t)年次の経年残存率を求め、tの増加と ともに変化する経年残存率の推移から寿命を推計する手法である。この手法は(n+t)年次の除却 棟数と残存棟数から直接(n+t)年次の経年残存率を算出しているため、経年残存率の算出に関し て推計する必要がない。しかし経年残存率の推移を把握するためには、ある一定期間の除却棟数 と残存棟数を把握する必要あるため、近年に建設された住宅の経年残存率の推移は把握すること ができない。そこで本章では、1951 年から 1971 年までの 20 年間に建設された木造専用住宅の 経年残存率の推移を算出している。. (2) 信頼性理論を用いた寿命の推計 n 年次の建設棟数を n 年次の除却棟数と残存棟数から算出し、(n+t)年次の残存棟数から n年次 の建設棟数を割ることにより(n+t)の区間残存率を求める。その後、(n+t)年次の区間残存率と (n+t-1)年次の累積残存率を掛け合わせた(n+t)年次の区間残存率を求め、tの増加とともに変化 する残存率の推移から寿命を推計する手法である。この手法は信頼性理論のカプランマイヤー法 -30-.
(27) を利用した算出手法であり、残存している家屋と取り壊された家屋を同じ時期に建設された家屋 と見なして推計するため、建設時期にかかわらずに住宅の寿命を推計することができる。しかし、 区間残存率の推移を把握するにはある一定期間についての除却棟数と残存棟数を把握する必要あ るため、 、本章では 2000 年から 1980 年までの 20 年間に建設された住宅に関する区間残存率の 推移を算出している。. 以上の手法から経年残存率もしくは区間残存率を求めた後、 分布式への回帰分析を行っている。 想定した分布形は正規分布、対数正規分布、取り壊しが行われるまでの年数を考慮しないワイブ ル分布(以下ワイブル分布1)、 そして取り壊しが行われるまでの年数を考慮したワイブル分布(以 下ワイブル分布 2)の 4 種類であり、それぞれ最小 2 乗法を用いた回帰分析を行っている。その うち最も当てはまりのよい回帰式の結果から残存率が 50%となる年数を求め、その年数を平均 寿命としている。 住宅の寿命の算出に当たっては、調査資料の中でも最も棟数が多く、かつ延床面積のばらつき が少ないため寿命の推計に使用する資料として最も適切であると考えられる木造専用住宅の平均 寿命の推計を行っている。 なお、固定資産台帳が現在の形で整備されたのが 1951 年(昭和 26 年)であるため、新築年が 1950 年以前の家屋は分析の対象外とした。これは、1950 年以前に新築され、かつ 1950 年以前 に取り壊された家屋は固定資産家屋除却台帳に記載されず、1950 年以前の平均寿命については 実際の平均寿命よりも長くなることが考えられるためである。. -31-.
関連したドキュメント
平成26年の基本方針策定から5年が経過する中で、外国人住民数は、約1.5倍に増
建設機械器具等を保持するための費用その他の工事
1人暮らし 高齢者世帯 子世帯と同居 独身の子と同居 長期入所施設 一時施設 入院中 その他
意向調査実施世帯 233 世帯 訪問拒否世帯 158/233 世帯 訪問受け入れ世帯 75/233 世帯 アンケート回答世帯 50/233 世帯 有効回答数 125/233
のうちいずれかに加入している世帯の平均加入金額であるため、平均金額の低い機関の世帯加入金額にひ
(近隣の建物等の扱い) (算定ガイドライン
入学願書✔票に記載のある金融機関の本・支店から振り込む場合は手数料は不要です。その他の金融機
近年は人がサルを追い払うこと は少なく、次第に個体数が増える と同時に、分裂によって群れの数