氾濫原性地盤における河川堤防の地盤工学的問題点
―被災事例の紹介―
国土交通省北陸地方整備局信濃川河川事務所 正会員 ○西出 保、杉本 利英 株式会社 興 和 正会員 高橋 浩之、堀松 崇、柴田 東 長岡技術科学大学 正会員 大塚 悟
1.はじめに
氾濫原性低地は、その地形的要素から未固結でルーズな堆積物が優勢に分布しており、地盤工学的に問題が多い地 形となる。特に浅部には軟弱な粘性土、砂質土が分布することが多く不均質な性状を示す。このため、河川堤防の改 築を行う際は、浅部に分布する地層の性状により多様な問題が発生する。本報告では、このような氾濫原性地盤にお いて河川改修時に被災を受けた事例に基づき、被災メカニズムと適用できる地盤調査方法などについて考察する。
2.検討対象箇所
検討箇所の地形図
(
図 1)
、空中写真(
写真 1)
を示す。検討箇所は、越後平野と西山丘陵の北縁部との境界付近の信濃 川左岸に位置しており、平野と丘陵の境界は、北北東―南南西方向にほぼ直線上に分布している。
検討箇所の掘削形状を図 2に示す。
図 2 掘削形状断面図 図 1 地形図 写真 1 空中写真 3.被災事例
支川河道の掘削中に、写真 2の状況で、図 3の深さで斜面のすべり破壊が発生した。
キーワード 河川堤防、氾濫原性低地、被災事例、地盤調査法
連絡先 〒
940-0098
新潟県長岡市信濃1-5-30
国土交通省北陸地方整備局信濃川河川事務所TEL 0258-32-3020
目的:すべり破壊の原因究明・粘性土の不均一性を把握する オランダ式二重管コーン貫入試験 スウェーデン式サウンディング試験 小型オートマティックラムサウンディング試験
・地盤の強度の評価
三軸CRU・CU-BAR、一軸圧縮
・地盤構成の確認(①) ボーリング調査
・掘削地盤の安定性(初期検討結果) 初期(掘削前)強度、全応力で評価→
安全率OK(Fs=1.95)
事後 調査 方法 被災 経緯
・掘削初期は斜面は安定し、湧水もほとん どない状態であった。
・掘削した5日後に、掘削斜面、および斜面 頭部にクラックが発生し、斜面がはらみ出 す。湧水は依然として少ない。
・事後調査①で、砂礫層と豊富な地下水の 存在が判る。(当初調査では、砂礫層の分布 は薄層としていた:図3参照)
地盤 被災 状況
写真
支川の河道付け替え施工中に、掘削斜面ですべり破壊が発 生した。(写真2 被災状況)
上位には不均質な粘性土が分布し、深度3m付近に砂礫(滞 水層)が分布する。(図3 地質断面図)
クラック・噴砂痕
ク ラッ ク 噴 砂
噴 砂
砂の 流動 沈 下
粘土
クラック
砂の流動
噴砂 噴砂
沈下
0 4m 4
P S s
A As
00
EL=16.440 1:2.5
▽W.L
qc(MN/㎡)
0 0.5 1 2 5
0
5
9
N値
0 10 2030 40 5050
2/33
3
3
11
6
3
3
4
6
BV19-1 13.855m dep =22.45m
0
5
10
qc(MN/㎡) 0 0.5 1 2 5 10 20
13.855mD-2 dep = 4.40m
0
4
Ac1-1 B
14.046m dep =9.60 m
qc(MN/㎡)
0 0.5 1 2 5 10 20
D-3 15.958m dep =4.20 m
0
4
N値20 10 0
30 40 50
qc(MN/㎡)2 1 0.5 0
5 10 20
As1-2 Ac1-2
Ac1-1
dep = 14.13.946m00 m
砂礫 滞水層
粘土 粘土
すべり形状
0 4
4m
事後調査② 事後調査①
当初砂礫
▽H.W.L13.338
▽計画堤防高 13.938
▽計画河床高11.538 1:1.2
5562
5.5m 掘削形状
6.7m
法勾配1:1.2 越 後 平 野
西山丘陵 信濃川
2-238 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)
-475-
4.事後調査結果
5.まとめ
今回の調査においては、不均質な地盤性状を示す氾濫原性低地における堤防基礎地盤の掘削に関する問題点をつか むことが出来た。
①
.
サウンディング試験を併用する事によって、地層構成が連続的に把握でき、また、地盤強度の設定精度が向上する。②
.
高い地下水位が存在する掘削斜面の安定性は、有効応力法による安定解析が現実に合うことが確かめられた。参考文献
信濃川・越後平野の地形と地質:国土交通省北陸地方整備局信濃川河川事務所 Cu0=20(kN/m2)
φ'=35(°)
(図5,6)低下強度Cur=Cu0×Cu減少比 OCR:掘削前の有効土被りP0/掘削後の有効土被り圧Pr
安定計算の結果、掘削斜面の安定性は有効応力法による結果が実際の現象(斜面のすべり破壊)を説明できた。
(2).掘削斜面の安定性の評価
各種サウンディングの結果を図4に示す。
結果一覧表
せん断強度:一軸圧縮試験、オランダ式コーン試験よりせん断強度Cu0を設定した。
強度低下 :掘削による地盤の強度低下は、三軸CRU試験よりCu比(図6)を求め深度方向へ強度を低下させた。
せん断強度:三軸CU-BAR試験より、せん断強度φ'を設定した。
②有効応力での評価(図7)
地下水位:地表面 地下水位:浮力のみ考慮 (1).粘性土の不均一性の検出
①全応力での評価(図5)
掘削斜面の安定性は、当初、全応力法の検討で問題ない結果を得ていた。しかし、実際は斜面が不安定化し、
すべり破壊を示した。このため、この現象を説明するために、事後調査結果に示した応力解放による強度低下を 見込んだ全応力法と、地下水の存在を考慮した有効応力法で安定計算を行った。
・サウンディングは、深度方向に連続的に強度を評価できるため、不均質な地盤においては調査精度の向上に寄 与する。また、小さい地盤強度(弱部)は、オランダ式コーン試験に合わせてラムサウンディングの結果を1打撃当 たりの貫入量で整理する事によって、より的確に捉える事が出来た。
・オランダ式二重管コーン貫入試験のqc値と粘着力Cuは、全体としてほぼ近い結果を示している。ただし、標高 12m~10m付近ではqc値のバラツキが大きい。オランダ式コーン貫入試験を併用することで、ポイント情報となる 室内土質試験の値に対してバラツキを考慮した設計地盤強度を設定できた。
図4 サウンディング試験結果
全応力:CRU:Fs=1.6 有効応力:Fs=0.5
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
1 10 100 過圧密比OCR
Cu減少比
強度低下範囲
図6 Cu減少比 図5 全応力法 図7 有効応力法
事後調査② 小型オートマティックラムサウンディング スウェーデン式
サウンディング試験 含水比 オランダ式二重管コーン
標準貫入試験 貫入試験
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0
0 1qc(MN/m2 3 2)4 5
標高(m)
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0
0.1 1 10 100
1打撃当たり貫入量 (cm)
標高(m)
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0
0 10 20 30 40 換算N値
標高(m)
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0
1 100 10000 Nsw
標高(m)
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0
0 10 20 30 40 50 N値
標高(m)
土層区分
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.00 10
標高(m)
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0
0 20 40 60 80含水比(%)
標高(m)
オランダ式コーン試験 20×Cu(qu/2)
低強度の分布を 詳細に示す バ
ラ ツ キ 多 い