平成 22 年度 岡山市埋蔵文化財センター講座第 1 回
発掘調査の基礎知識
安 川 満
【講座の概要】
1,発掘調査の歴史
発掘調査とは、土地に刻まれた歴史を明らかにするために遺跡などを調査する行為といえます。 『石山寺縁起絵巻』の銅鐸出土記事など、考古遺物が出土した記録は古くからありますが、元禄
5 年 (1692) に水戸黄門様-徳川光圀が行った栃木県上侍塚古墳、下侍塚古墳の発掘が日本最初 の発掘調査といえるでしょう。
現代の考古学につながる最初の発掘調査は、明治 10 年 (1877)、有名な E.S. モースによる大 森貝塚の発掘調査です。しかし古くは、古墳や貝塚など地上に出ている遺跡や遺物包蔵層として の調査が中心で、地下に建物の跡などが残されていることが認識されたのは、昭和 14 年 (1939) の法隆寺若草伽藍の発掘調査が初めてだと言われています。なお、現在では年間 8 千件以上の発 掘調査が全国で行われています。
2,発掘調査の基本
発掘調査とは単に土から遺物を掘り出すのではなく、土や遺構、遺物の「諸関係」を追求し、 記録することです。その際に、考古学的な知識だけではなく、地質学、土壌学などの知識も総動 員します。建築や土木、水利に関する知識も必要です。
第 1 の基本は「地層累重の法則」です。基本的に地層は古いものが下に、新しいものが上に堆 積しています。掘り進むと次第に古い時代の遺構が現れることになります。
第 2 に土の観察です。土の特徴を観察し、その違いやどのようにして堆積したものかを考えま す。遺跡の環境や遺構の使われ方、埋められ方などを知る手がかりです。
第 3 に時期や時代を考えることです。土自体には時期を示す情報はほとんどありません。従っ て、伴っている遺物からその時期を考えます。その際、遺物がどのようにして埋まったものか検 討しなくてはいけません。
第 4 に調査した内容を記録しなくてはいけません。検出した遺構などを平面図や断面図、写真 などで記録します。ただ、写し取るのではく、「関係」を記録することが重要です。
3,発掘調査の技術
現在の発掘はさまざまな技術が援用されます。「地中レーダー」や「電磁探査」など掘らなく ても地下の状況を調査する技術。花粉、プラントオパール分析、植物種子、昆虫などの遺体の分 析など環境を推定する技術。熱残留地磁気測定など年代を測定する技術。トータルステーション、 GPS、3D レーザースキャナ、航空写真測量、デジカメなどを用いた測量技術などが挙げられます。
【参考文献】
甘粕健編 1983 年 『考古資料の見方〈遺跡編〉』 柏書房
図 1 『石山寺縁起絵巻』の一場面
室町時代に描かれた滋賀県石山寺の縁起。天平時
代に寺を造るため山を切り開くと、見たこともない
鐘(銅鐸か)が出土したという。
図 2 岡山城三之外曲輪跡 ( 中央中 ) の土層断面 1
江戸時代初期の遺構面 ( 一番下の面 ) から上に次第に時代が新しくなります。上層には明治 25、26 年の洪
水砂層、昭和 20 年の岡山大空襲とその後の後片付けに伴う土層が見えます。広範囲に分布し時期の基準とな
る層を「鍵層」といいます。
図 3 岡山城三之外曲輪跡 ( 中央中 ) の土層断面 2
江戸時代以前の土層です。さまざまな特徴の土が堆積しています。最も上層は砂質の堅く締まった土層で
城下町の造成土です。それより下はシルト質の土層で鉄分やマンガンを含む帯が何本も見えます。色が抜け
たように白っぽい土層もあります。これらは水田の土壌の特徴です。土質以外に土の色が変色したり、鉄分
図 4 溝の土層堆積 図 5 土坑の土層堆積
図 6 遺構の検出作業 ( 上 ) と検出遺構 ( 右 )
図 7 川入 ・ 中撫川遺跡 ( 左 ) と吉備津奥田遺跡 ( 右 ) の土器出土状況