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~膝関節屈曲・伸展作用について~

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Academic year: 2021

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膝窩筋機能の肉眼解剖学的検討

~膝関節屈曲・伸展作用について~

新潟医療福祉大学 理学療法学科・

江玉睦明,大西秀明 日本歯科大学 新潟生命歯学部 解剖学第一講座・

影山幾男,熊木克治

【背景】

膝窩筋の機能については,脛骨の内旋,膝関節屈曲初期の 膝関節ロックの解除,膝関節屈曲中の外側半月板の引っ張り などがあるといわれている.しかし,膝関節屈曲・伸展作用 に関しては未だ明確にされていない.膝関節の屈曲可動域は 0°~140°と非常に大きな角度を持つことから,角度変化に 伴うモーメントアームの変化が予想される.また,膝窩筋腱

(以下,PT)は, 外側側副靭帯(以下,LCL)付着部の前下方,

下方,後方に付着するなどの報告があることから,付着部位 の違いによるモーメントアームの変化も予想される.しかし,

膝関節の角度変化に伴う PT の形態や機能変化については明 らかにされていない.そこで本研究は,肉眼解剖学的に PT の大腿骨付着部位を明らかにするとともに,膝関節屈曲に伴 う PT の形態や機能変化について分析することを目的とした.

【方法】

対象は,日本歯科大学新潟生命歯学部に献体された日本人 遺体9体16側,平均年齢78.6±9歳(61歳~89歳),男性11側,

女性5側,10%ホルンリン固定後にアルコール置換された遺体 とした. 死体解剖保存法ならびに献体法に基づき教育と研究の ために大学に献体された遺体を使用した.

方法は, 1) 膝関節周囲から皮膚,皮下組織を除去し,PTとLCL を詳細に剖出した. 膝関節伸展0°の状態で,PTの大腿骨付着 部位(LCLとの位置関係)について分析した.2)脛骨に対し 大腿骨を膝関節伸展0°から最大屈曲位へと徒手にて可動し,

それに伴うPTの形態変化および腱が伸張し始める膝関節角度 を計測した.解析方法は,膝関節を外側方からデジタルカメ ラで撮影し,画像解析ソフト(Image J, National Institute of Health)を使用し角度計測を行った.

統計学的検討は,対応のない t 検定を用い,有意水準は 5%

とした.

【結果】

PT の大腿骨付着部位は,LCL 付着部位との位置関係から,

LCL 付着部位の下方(Ⅰ型)と LCL 付着部位の前下方(Ⅱ型)

の 2 つに分類された.それぞれ 9 側(56%)と 7 側(44%)

であった. LCL は全例で大腿骨顆部膨隆部(膝関節運動軸)

に付着していた.

膝関節屈曲に伴う PT の形態変化は,膝関節伸展 0°から屈 曲に伴い大腿骨外側顆部の転がり運動にて起始部が後方移動

し,徐々に長軸が垂直位になった.また,屈曲に伴い PT 付着 部位は LCL 付着部位の前方に位置した.そして,膝関節屈曲 133°±6°以降で PT は膝窩溝にはまりながら垂直方向に伸 長された(図 1) .タイプ別での比較では,Ⅰ型が 136°±6°

から垂直方向に伸長されるのに対してⅡ型は 129°±4°か ら伸長され,統計学的に有意差(P<0.05)を認めた.

【考察】

PT の大腿骨付着部位については,Zeng らは,LCL 付着部位 の下方(49.4%) ,前下方(24.7%) ,後方(25.9%)の 3 つ のタイプがあることを報告している.また,Laprade らは,

すべて前方であるとし,Brinman らは,後方(94%) ,前方(6%)

の 2 つと報告している.今回の結果では下方(56%) ,前下方

(44%)であり過去の報告と異なる結果であった.今回は 16 側と症例数が少ないこともあるが,過去の報告においても一 定の見解が得られていないことから人種差の存在が示唆され た.

膝窩筋の作用については,解剖書には膝関節屈曲と記載さ れているが,唯一 Kapandji の著書では膝関節伸展の機能があ ると報告されている.今回の結果では,解剖学的肢位である 膝関節伸展 0°では,膝関節運動軸である外側上顆膨隆部

(LCL 付着部位)の下方または前下方に PT は付着するため,

膝関節伸展に作用することは不可能である.しかし,膝関節 屈曲に伴い PT 付着部位が運動軸の前方に位置し, 133°±6°

で垂直方向に伸長された.遺体にて関節運動を行い筋が伸長 される時は,その逆の方向がその筋の作用となることが予想 される.従って,モーメントアームが非常に短いことから大 きなトルクは生じないと考えられるが,膝関節屈曲 130°以 降の深屈曲位では,膝窩筋が伸展方向に作用する可能性が示 唆された.また,PT の付着部位の違いで膝関節伸展作用が起 こる角度が異なることも考えられた.

【結論】

今回,日本人遺体 9 体 16 側を用いて肉眼解剖学的に PT の 大腿骨付着部位と,膝関節屈曲に伴う PT の形態や機能変化に ついて分析した.膝関節屈曲 130°以降での膝窩筋の伸展作 用の可能性が示唆された.また,PT の付着部位の違いで膝関 節伸展作用が起こる角度が異なることも考えられた.

図 1.膝関節屈曲に伴う膝窩筋腱の形態変化

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