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京都中国学派の『論語』研究 長崎大学大学院生産科学研究科 呉 鵬

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Academic year: 2021

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京都中国学派の『論語』研究

長崎大学大学院生産科学研究科 呉 鵬

今日の日本漢学史研究学界においては、日本における『論語』研究の在り方に関する論 考は、概ね江戸時代に止まり、維新以後における日本近代中国学の形成と展開に伴い、近 世漢学の伝統としての『論語』の著述が、如何に歩んでいったか、それには如何なる特色 が顕われるか、という問題を系統的に論じる著作は、頗る稀である。本論を以てこのよう な盲点を補っておきたい。

日本漢学史上において、狩野直喜、内藤湖南をはじめとする京都中国学派の業績は、誰 もが認めるところである。何と言っても、狩野、内藤の両教授及びその後学の研鑽によっ て、京都が、北京とパリと並んで、世界における三大漢学の中心地となったことは、公認 されている事実である。恰も澤田多喜男の言った如く、京都中国学派の学問は、日本漢学 の最高の水準を持つものである。言い換えれば、京都中国学を日本近代中国学と看做すこ とができると言えよう。従って、京都中国学派における『論語』の著作は、日本近代にお ける『論語』研究の代表であると考えられる。

本論の構成は、〈序章〉と〈終章〉を除き、五章に分けられている。

〈序章〉では、まず研究動機、研究範囲、研究目的を述べ、次に先行研究及びそれに基 づいて如何なる展開を成すか、ということを説き、最後に江戸古学派の『論語』の論考の 特色を分析したうえで、京都中国学派の『論語』学の淵源するところを明らかにする。

第一章<狩野直喜の『論語』研究>は、講義「論語研究」を中心として、それを朱子学、

古学及び考証学派の『論語』著作と比較することを通して、「論語研究」における狩野の観 点を見出したうえで、それを後学の著作と較べることで、後学への影響を説明し、京都中 国学派の『論語』研究の系譜におけるその位置及び意義を究明するものである。

第二章<武内義雄の『論語』研究>は、『論語の研究』を中心にして、まず『論語』の研究 における武内の態度を明らかにし、そして、如何なる方法で『論語』の異本の系統と、『論 語』の注釈書の系統を確定したかを説明し、また如何に『論語』の本文批判を行ったか、

及び文献批判の最終的目的がどこにあるか、ということを究明したうえで、『論語』の研究 という側面から、武内の学問の特色を再び論じるものである。

第三章<吉川幸次郎の『論語』研究>は、『論語私記』、『論語について』などの吉川幸次 郎の著作を中心として、それを朱子学、古学及び同時代の学者の『論語』論考を比較する ことで、中国文学研究者の『論語』研究の特色、及びその特殊な観点を明らかに究めるも

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のである。

第四章<貝塚茂樹の『論語』研究>は、『孔子』、「論語の成立」などの貝塚茂樹の著作を中 心として、中国古代史学者の立場による『論語』の研究の特色がどこにあるか、また『論 語』の研究におけるその独特の観点が何であるか、ということについて、実証的に解明し ていくのである。

第五章<宮崎市定の『論語』研究>は、『論語の新研究』を中心にして、宮崎市定の著作動 機を明確にするうえで、この書の解析を通して、宮崎の『論語』研究の特色を明らかにし、

その「新研究」の「新」の意味を明確にしたうえで、「新」を生み出した所以を説明するも のである。

〈終章〉では、まず京都中国学派の『論語』研究の展開の経緯を学問的に分析し、また 総合することで、その系譜を明確にし、更に後学への影響を説き、最後の「余論」として、

『論語』の研究という側面に絞り、京都中国学派の学問の特質について論じる。

本論で、狩野直喜、武内義雄、吉川幸次郎、貝塚茂樹、宮崎市定の『論語』論考を取り 上げ詳しい検討を行ったが、狩野直喜は、京都中国学派の創始者であるから、その講義「論 語研究」が如何なる意義を持つか、また如何なる役割を果たしたか、ということが、京都 中国学派の『論語』研究の歴史上で、非常に重要な問題である。また、西学の影響で生じ た漢学から支那学への転換に伴い、学問研究の専門化が生じたことも当然であった。つま り、より曖昧な意味を有する従来の漢学は、漸く哲学、文学、史学、引いては、東洋史学 の方へと細かく分化していった、というわけである。そして、狩野以下の諸学者は、分化 された各々の領域の研究における碩学であり、それらの『論語』論考は、京都中国学派の

『論語』研究、引いては日本近代の『論語』研究の尤も典型的、代表的なものであると言 える。これが故に、それらの論考の解析によって、其々の特色及び特殊な観点を明らかに 究め、その間の関連性を見出したうえで、日本京都中国学派における『論語』研究の系譜 を構築し、また日本の『論語』研究史における京都中国学派の『論語』研究の位置を究明 し、さらに『論語』研究という側面から、京都中国学の特質を明らかにすることができる と考える。

参照

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