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高齢者の居場所形成に関する現状と課題

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高齢者の居場所形成に関する現状と課題

著者 金 美辰

雑誌名 人間関係学研究 : 社会学社会心理学人間福祉学 :  大妻女子大学人間関係学部紀要

巻 22

ページ 91‑99

発行年 2021‑02‑12

URL http://id.nii.ac.jp/1114/00006962/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

金 美辰 * Mijin KIM

<キーワード>

高齢者,居場所,心理的要因,ソーシャルサポート

<要   約>

 医療・介護費用の増大に伴い,健康寿命や介護予防がより重視されるようになった。介護 予防は「介護予防・日常生活支援総合事業」として位置づけられ,2018年には介護保険制度 の地域支援事業として更なる強化がなされた。介護予防は,日常生活に充実感を持ちながら 介護予防サービスを継続利用することが求められることから,介護予防に繋がる社会活動の 場や拠点など,家庭外において日中に趣味活動などのできる居場所が必要であると指摘され ている。そこで,本研究では,高齢者の居場所に関連する課題を整理する必要があると考え,

日本における高齢者の居場所に関する先行研究より,高齢者の居場所形成の現状と課題を検 討した。その結果,高齢者の居場所形成のためのプログラム参加を通した居場所形成,他者 との交流を通した居場所形成,高齢者の主観的幸福感や自己効力感へのアプローチ,社会的 居場所や居場所形成へのソーシャルサポートが必要であることが示唆された。

*大妻女子大学 人間福祉学科 准教授

高齢者の居場所形成に関する現状と課題

Status-quo and Issues related to Creation of Spaces for the Elderly

(3)

92 大 妻 女 子 大 学

人間関係学部紀要 人間関係学研究 22 2020

Ⅰ はじめに

 内閣府の「第20回高齢社会対策会議」1におい て,「高齢者の居場所と出番(社会的役割)」に関 する課題が提示される等,介護保険制度導入以来,

高齢者の居場所づくりは,介護予防の側面から重 視されている。2015年の介護保険法改正にて介護 予防は「介護予防・日常生活支援総合事業(以下,

総合事業)」として位置づけられ,2018年には介 護保険制度の地域支援事業として更なる強化がな された。具体的には既存の介護サービスに加えて,

NPO,民間企業,ボランティアなどの多様な主体 が地域の高齢者の日常生活を支援するとともに,

その担い手の介護予防に結びつける狙いがある。

しかしながら総合事業で求められる地域の実情に 応じた介護事業所,NPO,民間企業,ボランティ アなど地域の多様な主体を活用した介護予防の拠 点が十分とは言い難い現状にある。金ら2は介護 予防には,日常生活に充実感を持ちながら介護予 防サービスを継続利用することが求められ,介護 予防に繋がる社会活動の場や拠点など,家庭外に おいて日中に趣味活動などのできる居場所が必要 であるとしている。しかしながら,その一方,地 域包括支援センターを中心に展開されている身体 運動プログラムの脱落率の高さが指摘されている

3

。佐々木4は高齢者の居場所について,専業主 婦は居場所作りにたけているが,男性の場合は定 年前の日中は勤務先が居場所であり,夜間は家が 居場所である。しかし,定年後は日中・夜間とも 家が居場所になることが多い。そのため,日中の 居場所がなければ,雇用労働をしてきた元気な男 性は,社会的孤立によって閉じこもりがちとなり,

その結果,認知症の発症や虐待の被虐待者になる 等,定年後のライフステージに暗澹たる状況にな ると指摘している。このように,定年退職後の高 齢者は物理的居場所が必要であるにもかかわら ず,当該高齢者と適合する居場所があるとは必ず しもいえない状況にある。この他にも高齢者の居 場所に関して,藺牟田ら5)は,閉じこもり高齢者 は自立高齢者より,家庭での居場所感の得点が低 く,家庭内においても孤立感を抱えやすい状況に

あり,閉じこもりは社会的孤立との関係も深く,

閉じこもり高齢者の家庭内外における居場所のな さ,人間関係の希薄さが課題であると指摘してい る。立瀬ら6)は介入プログラムを通して居場所や 役割の移行を伴う退職を転機とした新たな人生の 入口にて,高齢期のより豊かな生活に向けた支援 の重要性を指摘している。高齢期に突入した時期 の生活を意味のある幸福な生活にするには,社会 活動への参加を活性化させることが必要であり7) 高齢者にとって社会活動は入院のリスクを低下さ 8),高齢者が趣味・生きがいに取り組むことは,

QOLを高め,心理・社会的な側面に好影響を与え 9)。また社会活動は,高齢者の身体機能維持や 主観的幸福感を保持・向上させ10),主観的幸福感 は高齢期の充実を捉える指標として取り入れら れ,余暇活動タイプが多彩型であることが主観的 幸福感を高める方向へ影響しており,多彩に余暇 活動に取り組むことは主観的幸福感を高める11 高齢者の社会活動と主観的幸福感は関連しており

12),主観的幸福感は,高齢者が自らの人生や生活 に抱いている充足感を示す概念として用いられ,

主観的幸福感の高い高齢者は,老化に伴う自分自 身や周囲との関係の変化と向き合いながらも,自 らの暮らしを肯定的に受け止め,幸福で満たされ たものとして感じる13)等,高齢者の居場所形成の 心理的要因として主観的幸福感が関連している。

また,老年期には,主体的な生活を営み自己実現 の機会としての活動の場を提供することが重要で あり,老年期の人を対象とする地域活動は画一的 なものではなく様々な方面からの多様な活動を企 画する必要性がある14)。高齢期の過ごし方をより 豊かにする要素のなかに,自由になる時間に行う 社会活動「学習」「他者・社会への貢献」「健康・

体力」「友人」が重要な要素である15)。そこで,

高齢者の社会活動の場や拠点となる高齢者の居場 所と介護予防の関連に関する社会調査的手法を用 いた実証研究の準備として,高齢者の居場所に関 する先行研究より,高齢者の居場所形成の現状と 課題を検討し,考察した。

(4)

Ⅱ 研究方法

 本研究では高齢者の居場所に関する課題に関連 する文献を検索するため,医中誌のデータベース を用いて「高齢者」「居場所」を組み合わせて検 索(検索条件:本文あり,抄録あり,原著論文,

会議録除く)を行い(2019330日現在),94 件の文献を抽出した。次に論文のタイトルや抄録 を検討し,必要に応じて原文に当たり内容を確認 した。その結果94件の文献のうち調査研究の内 容である9件の文献を抽出した。

 これらの高齢者の居場所について報告している 9件の文献は「高齢者の居場所ためのプログラム に関する研究課題」が2件,「高齢者の居場所形 成のための他者との交流に関する研究課題」が3

件,「高齢者の居場所形成に関連する心理的要因 に関する研究課題」が2件,「高齢者の居場所形 成に関連する支援関する研究課題」が2件であっ た。研究デザインは質的研究が7件,量的研究が 2件であった(表)。

Ⅲ 結果

1)高齢者の居場所形成のためのプログラムによ   る変化

 高齢者の居場所と内的要因の関連性についての 先行研究として,笠井ら16)は介護予防拠点施設 を継続利用している高齢者の生活背景と施設にお ける体験内容及び利用後の変化を質的記述的に分 析し,施設が果たしている役割を検討している。

施設利用者10名を対象に半構造化面接調査を実

著者

(出版年) 研究目的 研究方法

(2005 大森

前期高齢女性の家族以外の身近な他者との日頃の交流関係に着目し,前期 高齢女性は,なぜその交流を必要とするのか,直面している現実とはどの ようなものなのかという背景から,実際にそこではどのような行為が取り 交わされ,そこから何を得ているのかについて質的に記述し,その交流関 係の特徴を明らかにすることを目的とした。

質的研究

(2007)浜崎ら

地方中核都市の自立した後期高齢者を対象に,主観的幸福感の実態を調査 して,主観的幸福感を高める原因について男女別に明らかにすることを目

的とした。 量的研究

(2008)笠井ら

施設が果たしている役割を検討するため,施設を継続利用している高齢者 の生活背景と施設における体験内容および利用後の変化を質的に明らかに することを目的とした。

質的研究 柴原ら

(2009) 生活支援における活動・参加の課題と環境因子について検討することを目

的とした。 質的研究

亀井ら

(2010)

多世帯交流デイプログラ発会から12か月間のプログラム参加効果を高齢者 の心の健康,および世代間に生じる交流の内容から並行的miXed methods

アプローチ(Creswell2003)を用いて縦断的に検討することを目的とした。 量的研究 中島ら

(2011)

昭和30年代後半から急速に大規模住宅開発がなされた名古屋市近郊の勤労 退職者が多い春日井市S地区でのフォーマルケア(以下,FC)の概況とと もに新たなインフォーマルケア(以下,IC)の展開を中心にした地域ケア の取り組みの現状と課題を明らかにすることを目的にした。

質的研究

大嶋ら

(2011)

市町村における介護予防事業から自主グループに移行し,自主グループ活 動に継続して参加している独居男性高齢者2事例を継続参加の理由を記述 することを目的とした。

質的研究

(2016)追山ら 地域高齢者の介護予防に関する健康課題と市町村の保健・福祉活動の実態

を把握し介護予防事業の課題を検討することを目的とした。 質的研究

(2017)立瀬ら

2011年より高齢者の生きがい作りとそれを支える健康と生涯発達課題に着 目し,「ケアウィル」研究をもとに,第2の人生のスタート地点になる退職 期に着目しサポートプログラムの実行を目的とした。

質的研究 表 高齢者の居場所に関する先行研究の一覧

(5)

94 大 妻 女 子 大 学

人間関係学部紀要 人間関係学研究 22 2020

施した結果,「利用者は,【加齢とともに変化した 生活】を送りつつ施設を利用していた。施設では

【多種多様なサービス屋内外の活動を体験】し,【利 用に伴うポジティブな気持ちと不満】を抱いてい た。このような施設における体験内容と体験を通 して抱いた気持ちは,相互に関連して【心身の良 い変化を自覚し生活が変化】することにつながっ ていた。そして,利用者はその変化を目の当たり にした【家族や第三者からの後押し】を得て,施 設の【継続利用を希望】していた。施設という場 の意味は,自分の居場所を見出せること,心身の 不調が改善し社会生活機能が維持できること,将 来の不安が軽減することであった。」と報告して いる。

 また,大嶋ら17)は介護予防自主グループ活動 に継続参加している独居男性2名に半構成的イン タビューを行い,逐語録の中から「継続理由」と 思われる部分を抽出し,カテゴリー化している。

結果として「【人との関係性】【自主グループにお ける自分の役割】【自らの健康意識の高まり】と いうカテゴリーが生成された。【人との関係性】

を構成するサブカテゴリーには[自主グループ参 加者との繋がり][人との関係が構築される喜び]

[一人暮らしの退屈さをしのぐ][自主グループ参 加までの地域住民との交流の無さ][心のよりどこ ろを求めている]などがあった。【自主グループに おける自分の役割】のサブカテゴリーには[交流 の場を広げたい][自分が他の参加者の役に立って いるという実感]などがあった。【自らの健康意 識の高まり】のサブカテゴリーには[家族の病気 による健康意識の高まり][自分自身の病気][自主 グループ参加による心身への好影響][友人の入院 による健康への危機感]があった」と報告してい る。

 高齢者の居場所形成のためのプログラムとして 笠井ら18)は施設における体験内容と体験を通し て抱いた気持ちが相互に関連し,心身の良い変化 を自覚し生活が変化することにつながっていたと 報告しており,また大嶋ら19)介護予防自主グルー プ活動に継続参加することで人との関係性が形成 され,そのグループの中での自身の役割を見出す

事や健康への意識の高まりなどの良い影響がもた らされると報告している。

2)高齢者の居場所形成のための他者との交流に   よる変化

 大森20)は,前期高齢女性の家族以外の身近な 他者との交流関係について,6579歳の女性13 人に半構造的インタビューを行った結果,「『気遣 い合い的日常交流』における相互行為とその目的 によって特徴づけることができた。前期高齢女性 は,同年代の境遇を分かち合い,互いの日常に関 心を寄せ合いながらも,互いの尊厳を侵さないよ う適度な距離感を保ち合い,日常的な交流を継続 させる相互行為を通じて,自分の居場所を見いだ し,今日を生きる意欲を得て,今の自分を確かめ ることができ,日々をつないで自分なりの人生を 生きることができていた。前期高齢女性にとって,

この交流関係は,自身の人生の質を高めるための 手段であると考えられ,日本人的社会関係の理解 及び保健福祉活動に関する示唆を得ることができ た」と報告している。柴原21)はデイサービス利 用者のうち,要介護1310例を対象に設定 した調査項目を中心に面接調査を行っている。結 果として「高齢化がすすみ,疾病や障害を抱え閉 じこもりの進行と共に寝たきりになりやすかった 高齢者,特に健康問題を抱えている場合は,閉じ こもり防止のための参加の『場』の問題が大きかっ た。介護保険の認定を受けている場合は,通所サー ビス,通所ケアの利用が,唯一参加が可能な場で あった。リハビリテーションやレクリエーション の場としての機能だけでなく,友達づくりや会話 を楽しむ『居場所』としても位置づけられた」と 報告している。

 また亀井ら22)は都市部在住高齢者と小中学生 を対象とした多世代交流型デイプログラム(IDP を 創 設 し 参 加 効 果 を 検 証 し て い る。 初 回・6 12ヵ月後の高齢者の心の健康の量的変化及び参加 者間に生じた世代間交流の参加観察による質的記 述の両者を分析した結果として,IDP群(n = 12 平均年齢74.4歳)と比較群(n = 10,同70.8歳)

間で全体QOLに有意な主効果が認められた(p <

(6)

.001)。また,IDP群の初回参加時うつ傾向群は,

初回と比べて12ヵ月後は有意に低下していた(P

< .05)。高齢者と小学生(n = 4,同8.5歳),地域 ボランティア(n = 10,同69.2歳),学生ボランティ

ア(n = 4,同22.5歳)等に生じた世代間交流の様

相は,【高齢者が子どもの居場所をつくり迎え入 れる】等12カテゴリー,70サブカテゴリーが抽 出された」と報告しており,「本プログラムは両 世代間のコミュニケーションと仲間意識による連 帯を中心とした相互交流により各世代に意味ある 居場所となり,特に高齢者の孤立を防ぎ,心の健 康に良い効果がある」と示唆している。

3)高齢者の居場所形成に関連する心理的要因  浜崎ら23)75歳以上の後期高齢者を対象に,

主観的幸福感を高める要因について男女別に検討 している。472名を対象に自記式質問紙調査を行 い, 有 効 回 答195名( 男 性68名, 女 性127名 ) を分析した結果,主観的幸福感をPGCモラール スケールの日本語版にて評価した結果,平均得点 に性差は認めず男女いずれもばらつきがみられ た。男女ともに『今の生活に満足しているか』,『生 きていても仕方がないと思うことがあるか』の質 問項目で得点は高く,『安定した居場所がある』

の得点は男性より女性の方が低かった。主観的幸 福感には男性では『自覚症状数が少ない』『友人 が多い』『社会的活動の実施率が高い』,女性では

『転倒しない自信がある』『老研式活動能力が高い』

『主観的健康感が良好』『社会的役割を持っている』

が関連していた。」と報告している。立瀬ら24) 高齢者の第2の人生のスタート地点になる退職期 に着目しサポートプログラムを実行した結果とし て,3回に亘る実践の検証から,一般性自己効力 感と生きがい感の向上が認められ,生きがい感の 中でも「自己存在の意味」得点が上昇した。更に 講座の受講前後で退職後の生活に向けた意欲が向 上したと報告している。

4)高齢者の居場所形成に関連する支援

 迫山ら25)は介護予防事業に関わっている職員 と支援担当スタッフ11名を対象としフォーカス

グループ・インタビューで行った結果,「【人生の エンディング】を住み慣れた地域で生き方,死に 方を選択できることとし,【在宅介護者の健康と 負担感】【在宅介護を継続する条件】【地域に必要 なしくみ】が高齢者の在宅介護の現状として挙 がった。【地域高齢者の生活】では【住民同士の 関係の崩壊】がみられ,【地域における高齢者の 居場所づくり】として事業展開の現状は【参加し づらさ】【世話役の活動の困難感】【高齢者交流の 状況を変える工夫】に集約された」と報告してい る。また「指導者は【高齢者に対する援助者の活 動への姿勢と工夫】をし,保健福祉関係職は世代 間のコミュニケーションを充実するための【地域 の関係性】の強化をしていた。高齢者が住み慣れ た地域で暮らし続けるために,地域において介護 予防に必要な場・機会・人材や地域の体制を具体 的に描くことにより,地域の関係性が醸成できる よう希薄した地域の関係性を再構築することが課 題である」と指摘している。

 さらに中島ら26)は,勤労退職者が多い地域で の フ ォ ー マ ル ケ ア の 概 況 と と も に 新 た な イ ン フォーマルケアの展開を中心にした地域ケアの取 り組みの現状と課題を明らかにするために,中心 的な関係者8名を参加者として,フォーカスグルー プ面接を行った。その結果として「フォーマルケ アで不十分な点として,(1)情報周知方法,(2 介護保険サービスの内容と利用回数の制約などが ある。2)ICで取り組む課題として,(1)フォー マルケアでは対応できない柔軟で細かな生活支 援,2)認知症高齢者への地域での理解と協力,3 小地域ごとのサロンや居場所づくり,(4)ひとり 暮らし高齢者等への見守り・雑用サービスの拡大,

(5)地域での多様な取り組みの方法と体制の整備 があげられた。」と述べている。さらに「ボランティ ア団体やNPOがフォーマルケアでは対応できな い柔軟で雑多な生活支援を展開していることが明 らかとなり,新たなインフォーマルケア展開に向 けて,市社会福祉協議会が,地区社会福祉協議会 や多様なインフォーマルケア活動をどのように支 援し,地域の福祉的課題や生活課題に対応してい く か が 今 後 さ ら に 重 要 に な っ て く る。 今 回 の

(7)

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人間関係学部紀要 人間関係学研究 22 2020

フォーカスグループ面接では,NPO,地区社会福 祉協議会,ボランティア団体といった様々な関係 者が集まり「横串」を通して連携していくことの 必要性が確認された。フォーカスグループ面接の 場自体が,これらの異なる活動主体が連携・協働 できる可能性があることを示唆している」と報告 している。

Ⅳ 考察

1)高齢者の居場所形成のためのプログラムによ   る変化

 介護予防サービスや自主活動プログラムを通し た活動によって心身の不調が改善し社会生活機能 が維持されること,健康への不安などが軽減され ることにつながり,さらにはサービスやプログラ ムの継続利用につながる良循環となり,施設や集 団の場は自分の居場所と感じられるようになると 考えられる。また高齢者の活動について長田ら27 は「地域活動への参加」,「親戚・友人を訪問」,「集 団活動への参加」,「趣味活動」の4つの因子を社 会的活動として位置づけ,この社会的活動の機会 の喪失などにより,のちの生活に多大な影響を与 える恐れがあることを指摘している。

 このようなプログラムへの参加を通して高齢者 が自分の居場所を感じられるようになり,そこで 様々な趣味活動や友人との交流を行うことによ り,高齢者自身のQOLを高め,継続して介護予 防に取り組めるような環境を整備することが重要 であると考えられる。

2)高齢者の居場所形成のための他者との交流に   よる変化

 高齢者の居場所形成のための他者との交流とし て柴原28)が指摘しているようにサービス提供の 場は,リハビリテーションやレクリエーションの 場としての機能だけでなく,友達づくりや会話を 楽しむ居場所であると考えられる。また大森29)は,

前期高齢女性にとって交流関係は,自身の人生の 質を高めるための手段であるとしている。この性 別における居場所形成の差に関して佐々木30) 定年退職後の男女の差に着目し,男性は定年前ま

では平日の日中は通勤しているため勤務先に居場 所があり,夜間は自宅で寛ぐといった生活から,

退職後は日中・夜間共に自宅が居場所となること が多く,専業主婦は日中・夜間と居場所が自宅で あり,自宅を基にして地域参加をすることから高 齢者になっても居場所の減少が少なく,女性の方 が居場所の確保に長けていると考えることができ ると指摘している。

 さらに,亀井ら31)の報告にもあるように世代 間のコミュニケーションと仲間意識の場が意味の ある居場所となり,多世代の交流を通して高齢者 の孤立を防ぎ,心理面への良い影響を与えること が出来ると考えられる。

3)高齢者の居場所形成に関連する心理的要因  高齢者の居場所形成に関連する心理的要因とし て立瀬32)や浜崎33)らが指摘しているように,高 齢者の主観的幸福感や自己効力感へのアプローチ が重要であると考えられた。この自己効力感につ いてBandura34)は,自己効力感(Self-Efficacy)は 自分がある状況において必要な行動をうまく遂行 できるかという可能性の認知であり。自己効力感 が高く認知された時には,社会的状況の中での克 服努力が大きく,積極的に課題に取り組む,最終 的な成功を期待する度合いが大きい,葛藤状況で 長期的に耐えることができる,自己防衛的な行動 が減少する,予期的な情動喚起の程度が緩和され るなどの行動特徴が認められる。退職後などの喪 失体験から社会的孤立によって閉じこもりがちに なる高齢者に対して自身の社会的役割を見出し,

自己の存在の意味を覚知し,積極的に活動できる ようなプログラムを提供していくことが介護予防 としての元気高齢者への支援になることが考えら れる。さらにその活動によって介護予防サービス を利用している高齢者が主観的幸福感を実感でき るような取り組みが重要であると考えられる。こ の主観的幸福感の関連要因としLarson35)の研 究では,配偶者がいることは主観的幸福感を高め ていることなどが報告されており,配偶者の有無 による要因についても支援の際には考慮する必要 があると考えられる。

(8)

4)高齢者の居場所形成に関連する支援

 高齢者の居場所形成に関連する支援として迫山 36が指摘しているように,保健福祉関係職に よる世代間のコミュニケーションを充実させるた めの地域の関係性の強化が重要であると考える。

高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるために は,地域において介護予防に必要な場・機会・人 材や地域の体制を具体的に描くことを通して,地 域の関係性が醸成できるよう希薄した地域の関係 性を再構築することが必要であると考えられる。

また中島ら37)が指摘するフォーマルケアで十分 に対応できないことをインフォーマルケアによっ てサービスを補うことが必要であると考える。地 域のニーズや利用者の個別性も踏まえたサービス の検討と新たなインフォーマルケア展開に向け て,多様な団体のインフォーマルケア活動をどの ように支援し,地域の福祉的課題や生活課題に対 応していくかが今後さらに重要となると考えられ る。

Ⅴ 結語

 高齢者にとって居場所がないことは,社会的に 孤立を招く38)39)とされ,高齢者の居場所の必要 性が強調されるようになった40)41)。高齢者に必要 とされる居場所は,高齢者の生活の質の維持・向 上に繋がる社会活動のできる居場所424344であり,

自分の居場所を見い出せた時に心身の不調が改善 し,社会生活機能の維持や将来の不安が軽減され 45)。高齢者の居場所形成が求められるなか,高 齢者の社会活動も重要であり4647,他人との交流 ができる居場所48)49)で,身体機能の維持・向上に 繋がる社会活動をすることが,高齢者の主観的健 康感を高める50)。また,社会活動と主観的幸福感 が関連し,社会活動は高齢者の主観的幸福感を向

上させ51)52)53),高齢者の主観的幸福感が高まる

ことは,介護予防行動を引き起こす54)と考えら れる。

 以上のように,地域在住高齢者には居場所が必 要であり,今後はさらに個々の高齢者に合わせた 社会的居場所や居場所形成へのソーシャルサポー トの検討が必要であると考えられる。

 また,高齢者にとって居場所形成に関連する心 理的要因として,高齢者の主観的幸福感や自己効 力感へのアプローチが重要であると考える。

 本研究は,文献研究であるため,今回明らかに なった高齢者居場所形成の現状と課題を踏まえ,

今後,質的研究・量的研究を実施し,高齢者居場 所形成への支援と介護予防との関連について研究 を進めたい。

引用文献

1 内閣府「平成23年度高齢者の居場所と出番 に 関 す る 事 例 調 査 」 https://www8.cao.go.jp/

kourei/ishiki/h23/kenkyu/zentai/index.html.pdf.

2020.8.29

2 金美辰・堀米史一:介護予防サービス利用 者の日常生活機能低下要因の調査研究.介護 福祉士2012;(18):41-46

3 岡本るみ子ら:高齢者の精神健康における 顔の運動効果.日本老年医学会雑誌2018;55

(1):74-80

4 佐々木隆夫::定年後高齢者の居場所確保を 目的とした社会福祉士による援助の必要性: 定 年 後 高 齢 者 の 社 会 的 孤 立 防 止 の 観 点 か .医療福祉研究 2013;(7):1-14

5 藺牟田洋美:ライフレビュー・サクセスフ ル エ イ ジ ン グ・ 居 場 所 感.老 年 社 会 科 学 2016;374:428-434

6 立瀬剛志・藤森純子・中森義輝ら:退職期 における人生の目標再設定を支援する「ケ アウィルプログラム」の開発と評価. Compre hensive Medicine 2017;161:2-16

7 イヒョンスク:幸福な老年のための社会参 加 活 動 プ ロ グ ラ ム の 成 功 要 因 に 関 す る 研 .韓国ウェルネス学会誌 2017;12:317-332 8 Steinbach U.Socia lNetworks institutionaliz

 ationalld mortality among elderly peoplc in the United States. Journa lof Gerontolog.199247

4:183-190

9 岳藤史奏:高齢者の余暇活動とクォリティ・

オブ・ライフに関する研究.自由時間研究4

(9)

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人間関係学部紀要 人間関係学研究 22 2020

1992;12:102-114

10) 中村好一・金子勇・河村優子ら:在宅高齢 者の主観的健康感と関連する因子.日本公衆 衛生雑誌 2002;495:409-416

11 高橋成仁・厚海尚哉:高齢者の余暇活動と 主観的幸福感に関する研究。土木計画学研 2015;32:567-576

12 浜崎優子・佐伯和子・塚崎恵子ら:地方中 核都市における高齢者の社会活動と幸福感 に関する研究(第2報):後期高齢者の主観 的幸福感の関連要因.北陸公衆衛生学会誌 2007;332:86-91

13) 野村千文:「高齢者の生きがい」の概念分 .日本看護科学会誌 2005;25(3):61-66 14 百瀬ちどり・村山くみ:地域在住老年期に

ある人の主観的幸福感と影響要因:シニア大 学受講者生活満足度と身体的・社会的・対 人交流の側面からの検討.松本短期大学研究 紀要 2013;22:93-102

15 岡本るみ子ら:高齢者の精神健康における顔 の運動効果。日本老年医学2018;55(1):74-80 16) 笠井恭子・吉村洋子・寺島喜代子:介護予

防拠点施設を継続利用している高齢者の生 活と施設における体験。老年看護学 2008;13

(1):5-12

17 大嶋佐斗実・沖中由美:独居男性高齢者2 事例の自主グループ活動継続理由-健康意 識の高まりと自分の居場所があること.日本 看護学会論文集.在宅看護 2015;45:11-14 18 前喝16

19 前喝17

20) 大森純子:前期高齢女性の家族以外の身近 な他者との交流関係に関する質的記述的研 :関係性の特徴『気遣い合い的日常交流』

老年社会科学 2008;131:5-12

21) 柴原君江:生活支援における活動・参加の 課 題 と 環 境 因 子.田 園 調 布 学 園 大 学 紀 要 2009;3:1-15

22 亀井智子・糸井和佳・梶尾文子ら:都市部 多世代交流型デイプログラム参加者の12 月 間 の 効 果 に 関 す る 縦 断 的 検 証:Mixed

methodsによる高齢者の心の健康と世代間交

流 の 変 化 に 焦 点 を 当 て て.老 年 看 護 学 2010;141:16-24

23 浜崎優子・佐伯和子・塚崎恵子ら:地方中 核都市における高齢者の社会活動と幸福感 に関する研究(第2報):後期高齢者の主観 的幸福感の関連要因.北陸公衆衛生学会誌 2007;332:86-91

24) 立瀬剛志・藤森純子・中森義輝ら:退職期 における人生の目標再設定を支援する「ケ ア ウ ィ ル プ ロ グ ラ ム 」 の 開 発 と 評 価. Comprehensive Medicine 2017;161:2-16 25) 迫山博美・尾形由起子・山下清香ら:地域

における高齢者に対する介護予防活動の現 状と課題:A町のふれあい交流活動の分析を 通して.福岡県立大学看護学研究紀要2015;

13:57-65

26 中島民恵子・田嶋香苗・金圓景ら:地域特 性に即したインフォーマルケアの実践課題 抽出の試み:高齢化が進む大都市近郊の春日 井市S地区での調査から.日本福祉大学社会 福祉論 2011;125:103-119

27 長田久雄・鈴木貴子・高田和子ら:高齢者 の社会的活動と関連要因:シルバー人材セン ターおよび老人クラブの登録者を対象とし .日本公衆衛生雑誌 2010;574:279-290 28 前喝21

29) 前喝20 30) 前喝4 31 前喝22 32 前喝24 33) 前喝23

34) Albert Bandura.Self Efficacy: The Exercise of Control. Worth.1997

35 Larson,R.Thirty years of research on the subjective well-being of older Americans. Journal of Gerontology 1978;331:109-125.

36 前喝25 37 前喝26 38) 前喝4 39) 前喝5

(10)

40 前喝5

41) 金美辰:大丘広域市老人福祉館の多彩な事 業内容を通した地域高齢者への支援.人間関 係学研究 2019;20:51-62

42 前喝5 43) 前喝21 44 前喝41 45 前喝21 46 前喝15 47) 前喝17 48 前喝20 49 前喝21

50) 野村千文:「高齢者の生きがい」の概念分析. 日本看護科学会誌 2005;25(3):61-66

51 山口静枝・近藤昊・柴田博:農村地域の自 立高齢者におけるproductive activitiesが主観 的幸福感に及ぼす影響.応用老年学 2012;6

(1):59-69

52 福田寿生・本田和幸・木村有子.ら:地方都 市における65歳以上住民の主観的幸福感と 抑うつ状態について.日本公衆衛生誌2002;

49(2):97-105

53 クォンウクサン.低所得層老人福祉のための 医療社会事業の連携:関東大学校医科大学付 設ドクヨン老人福祉館を中心に.韓国人間関 係学会 2001;61:25-44.

54 前喝50

参照

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