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正常利益に つ い て (1)

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(1)

研究ノート  

正常利益に つ い て (1)  

木  正  幸  

Ⅰほじめに 

会計的利益測定の諸問題の研究は伝統的な会計基準によって測定された企業利益が経営   活動の評価と分析のための用具として,あるいほ情報利用者の意思決定のための用具とし  

て不十分であるという事実に.その動機を求めることができる。伝統的な会計上の企業利益  

ほ「−・般に認められた会計原則」(Generally Accepted Accounting Principles)に.もと   づいて−測定された利益であり,それは構造論的にほ貨幣価値安定の公準のもとに,取得原  

価主義と実現主義を支柱としつつ期間収益と期間費用の対応によって決定されたものであ   る。「・−・般に認められた会計原則」ほ「経験の蒸留」として帰納的に形成されたものであ  

り,それは会計目的から公理的■演繹枇導出されたものでも,また会計方法や甲手続   を−・義的紅定めたものでもない。このため,多数の代替的会計方法や手続が認められ,そ   の速択適用が企業の自主性に委ねられて小るばかりでな、く,企業利益測定に届大な影響を  

及ばす物価変動,景気変動,情報利用者の情報要求といった企業外要因ほほとんど考慮さ   れていない。このため,「】・般紅認められた会計原則」にもとづいて測定された企業利益  

は業績評価の年めの尺度的機能を果し得ず,個別企業の期間比較,同種産業の企業間比   較,産業間比較のための用具とはなりえない。加えて,伝統的な会計上の利益ほその回顧   的性格から,情報利用者が将来の経営活動を予測し,意思決定を行なうための用具として   は不十分であると指摘される。   

ここに提示する正常利益概念はかかる会計的利益測定上の諸問題を緩和し,解決への糸   口をつかまんとするための第一・歩である。なお小稿は M。Phadoongsidhi,以Normal   IncomeAccounting (The UniversityofWisconsin,1972)を素材とし士民の主題の一部  

(1)  

を跡づけ,それを確認するという目的で苔かれたものである。  

(1)したがって,本稿は煩雑さをさけて,注を割愛することにした。   

(2)

620   算47巻 第4・5・6▼弓  

〜β36−  

ⅠⅠ正常利益概念の形成   

正常利益概念は物価変動や景気変動などの一博的要素によって短期的に企業の報名利益   が歪曲されるこ.とを排除し,たんに個別企業の経営活動の期間比較を保持しようとするは  

かりでなく,企業間比較,産業間比較の用具として有効ならしめようとする点に発想が求   められる。   

ここでほ,経済理論の正醤所得概念との対比に.おいて,会討的測定に.おける正常利益概   念について吟味しよう。  

(1)経済理論上の正常所得概念   

小稿で使用されているような正常利益(NormalIncome)という用語ほ近代経済学⊥の   消費者行動理論において見い出される。多くの経済学者ほ消費者の消費行動を説明する際   に,合理的な消費者の当期の消費が実際所得よりむしろ正常所得に・依存していると主張す  

る。たとえば,MiltonFriedmanによれば,一足期間の消費者撃位で測定された所得  

(y)は恒久的要素(yp)と臨時的要素(y )の合計であると述べている。すなわら,  

y=yp+y↓   

である。ここで,恒久的所得ほ熟練,能力,人格,職業,経済滴動の場所など,消費者個   人の資本価値(または富)に.貢献する要素の関数であり,他方,臨時的所得は偶発的事象  

と見倣される他の劇切の要素の関数である。消費者の消費もまた恒久的消費と臨時的消費   という二つの要素から構成される。その場合,恒久的消費は恒久的所得に依存するが両者   の割合は恒久的所得の絶対額というより革むしろ,利子率ないしは財産所得と非財産所得   の相対的重要性といった他の変数に・依存して:いると述べている。   

正常所得について,M.一丁..FaIⅠellはつぎのような仮説を提示している。   

「当該潮間における個人の当期所得(γ)は正常所得(y)への影響を通してのみ,彼   の消費(C)に影響を与える。すなわち,C=β(y)と表現できる。ここで,βは当期所   得および資産に依存していない。」   

個人の正博所得(y)ほ基本的には彼の生存期間の処分可能な資源に.よって決定され   る。つまり,それは現在の資産と将来の期待収益を利子率で割引いた現在価値である。か   くして,消費者がT才時に利用可能な資源はつぎのように表現される。   

〃y 87γ  

yf㌘=純一1+yェア+γ思1て研   

(3)

正常利益に.ついて(1)  

−ββ7−  

621  

Ⅴよr:消費者がr才時収利用可能な資源の現在佃値   

..αrし1:前期から繰越された正味財産額   yェ丁:現在の非財産所得  

yferγ:r才の消費者が巨年に獲得しうると予想される非財産所得  

〃:収益の親間  

′亡:資産の収益率   

消費者単位の正常所得ほ現在の資塵総額および将来の稼得額か−・・時払いで売却して,そ   の受取額に利子をつけて他に投資をしたと仮定した場合,その投蟄による年間の受取利息   に.匹敵する額ということになる。   

これまでの議論から,われわれは,つぎのように.理解できよう。すなわち,消費者単位   の正常所得の決定ほ,ある程度まで現在価値法に・もとづくため,(1)生存期間匿おける将   来の所得流列の合理的推定,と(2)苗場における利子率,という二つの本賀的条件が充   足されなけれほならないというこ.とである。  

(2)会計的測定に.おける正博利益概念  

・∵敗に認められた会計原則にもとづいて測定された企業利益(y)は概念的に正常利益  

(y花)と臨時的利益(y£)という二つの要素から構成される。したがって,  

y=y柁一卜y∠   

と表現される。ここで,正常利益とほ「正常な経済的・政治的条件下に・おける企業の成島   パターンに.したがって稼得せられる親閲利益」と定義され,また臨時的利益ほ.「代替的な   会計方法や手続の首尾−・良しない適用,個別物価の変動ないしは−・般物価水準の変動,景   気変動,その他偶発的事象といった種々の要素に起因して生ずる利益で,正常利益と報告   利益の差異」と定義される。正常利益は正常な環境状態を前提として,企業の潜在的成長   バク−ンの枠内で獲得せられる利益であり,それほ過去および現在の稼得額の趨勢牢よっ  

て決定される。他方,臨時的利益ほ種々の変数の関数であり,β↓,P軌 ♪2↓,5£,C ,び上   をそれぞれ,首尾−‥賞しない代替的会計方法の適用,個別物価変動,一叔物価水準の変動,  

季節変動,景気循環,およびその他の偶発的要素によってもたらされる臨時的利益の構成   要素を表わすものとすれほ,  

y =ノ■(A ,Pl亡,ク2よ,S£,C↓,仇)   

となる。かくして,企業利益(y)はつぎのように.書き表わせる。   

(4)

錐47巻 駕4・5・6写  

622  

−β3ぎー  

y=y柁+/■(A舌,ク1∠,P2£,5£,C′,ぴょ)   

臨時的利益の構成費素のうち,代替的会計方法の首尾一周しない適用を除けは他ほすべて   企業が統制出来ない外部要因にもとづくものである。こうした外部要因ほ.【【偶発的変動  

を除いて−一一 予測可能であり,反復由に生起する性質をもっている。臨時的利益に影轡を   与える全要素の共通的性貿ほ,期聞が長期に.なれば姑産腰間の企業利益紅及はす正またほ  

負の効果が将来逆髄する傾向があるという点に.存する。たとえば,特定の製造企業に・おい   て,短期的に.ほ製品の材料仙格が需要増で騰貴する場合もあるが,長期的にほ増加する需   要に.瓜えて,材料を供給する企業が設備投資によって詰給の調整を行なったり,新設会社   の当該産業への加入に.よって供給増となり,崩料価格ほ下落するであろう。もし,経済体   系の中で全企業が一つのグループと考え.られるならば,一・定時点の臨時的利益の平均値ほ   零に接近し,全企業の報告利益の平均値と正常利益の平均値との差異は櫻少になるであろ  

う。かかる現象ほ臨時的利益の各要素が全企業に・対して−・様に影響せ及ばすものではない   という当寺突から推論される。景気後退ほ鉄鋼・lヨ動ヰ・・機械器具等の生産物需要に/不利な   影響を及ばすが,住宅建設産業には福利な効果をもたらす。戦争は防衛産業の生産物需要   な高める反面,他産業の生産を削減する。また個別価格の騰貴は流通産業の利益を高める   が,価格騰貴のあった朗を生産に投入する企実の利益を削減する′。したがって,経済体系  

の中で,臨時的安東が全企業に及ばす影響ほ平均すると相殺される傾向をもつ。しかし,  

臨時的利益が零に.なるということでほない。いうまでもなく,一般物価水準の変動は全産   業の全企業龍一・様に影轡を与え,企業の報薯利益の中に実l入されてくるからである。  

(3)企業の正常利益と消費者の正常所得   

企業の正常利益と消費者単位の正常所得とは若干の相追がある。消費者の正常所得ほ生   存期間に.おける資源【一現在までに蓄積された富と将来の所得流列の現在価値との合計  

・−一によって決定されるのに対し,企業の正常利益ほ本質的に・過去の利益と当婚]の利益を   決定要因とした利益の趨勢である。換言すれは,消費者の正常所得は現在の富のストック  

と将来の富のフロ−の関数であるに対し,企業の正常利益は過去および現在の富のプロ−  

の関数である。とれら二つの正常利益概念間における相違は基本的にほ個人と企業の性格   の相速から生ずるものである。企業の括動は無限の存続期間を前提として営まれ,個人の   生活よりもより複雑であり,かつ動態的である。企業の活動は企業に対する公的規制の変   化や一般大衆の態度の変化生産物需要の推移,競争者の競争戦略の変化,といった経済   

(5)

正常利益把.ついて(1)  

・−β∂9−  

623  

灼・政治的環境の変化によってその影響を著しくうける。こうした理由から,企業の存続   期間における利益を正確に見椒ることほ実行不可能である。   

われわれは,いま両概念の比較のために,企業が限られた生命な竃し,かつ残りの存続   期間の利益が正確に推定できると仮定すれば,企業の正常利益ほつぎのように・定義できよ  

う。   

「限られた生命を有する企薬の当該期間の正常利益ほ(a)存続期【言▲1j全体の経営活動か   ら獲得される利益と(b)存続期間の最終年度に.おける清算による資産頻,の合計を平均   し,その現在価値に等しい。」   

上記の正常利益の定義を数学的に表現すれば,つぎのように示される。   

塾ゴ  

y几£=て㌶斉−■・■〔  

Ⅳ   y托∠…l…f年度の企業の正常利益  

k州 …企業が烏年に独得する(またほ独得するものと期待せられる)年次   利益  

A……=‖存続期間の最終年度に,資産の清華から受けとられる金額   ル…・…企菓の存続期間  

㌢……利子率   

このよう紅,企業の正常利益と消費者の正常所得とほかなり似かよっている。企菜の正   常利益も貨幣の時間的価値のみならず,企業が残りの存続期間匿.獲得しうると期待せられ  

た将来の利益を考慮しでいる。しかしながら,これら二つの経済単位の正常利益閲に.ほな   お不一・致が存する。すでに述べたように.,個人の正常所得は現在の富と将来の所得によっ  

て決定されるのに対し,ここ軋仮定された企業の正常利益は将来の利益のみならず,,現在   および過去に.生み出された利益を包赦するものである。加えて,企業の解散時に.おける資   産の清算から生じる利益が企米の正常利益の決定に.考慮されている。   

上記の正常利益の定義の展開にあたって述べられた仮定は,通常の企業において非現実   的と云える。しかし,ある種の企業に.おいてほ先の仮定がそのまま妥当するであろう。た  

とえば,土地の開発と売却,鉱物資源の開発と抽出,を唯一・の目的として設立された企業   ほ限られた存続期間であると考えられよう。こうした企業に届いては,上記の正常利益の   定義がそのまま適用できるだろう。   

(6)

貸47巻 第4・5・6号  

ー.9・Jクー  

624  

(4)正濁利益と当期業績主義的利益概念   

企菜利益を測定するための利益概念として,これまで多くの利益概念が提案されてきて   いる。たとえぼ,経済的な実賀利益概念,伝統的な歴史的原柵主義での利益概念,修正原   価主義湛・よる利益概念,現在腰イ曲による利益概念,主観的利益概念,実現可能利益概念,  

包括主義的利孟左概念,当期業績主義的利益概念,などである。これらの利益概念のうち,  

正常利益概念に最も類似する利益概念朋当期業綴主義的利益概念である。   

当湖業績主義的利益概念によれば,企業の利益測億胴①当期性(すなわち,当該年度の   期間帰属性),④営業の成果性,⑨正常性(すなわら,規則性と反復性),の三点を判断基準  

とする。この判断基準は,換言すれば,企業利益の測定にさいして含められるべき朗務的   事象が,経営者によってノ統制可能であり,正常な営業活動の過程から生じ,当欄の意思決  

定に起園した価値の変化でなければならないということである。   

実務上,この利益概念は多くの企業の朗務報嘗に.採用されている。多くの企業は純利益   数値を算定する前に,営業活動からの利益を損益計算苔上で明示しており,そうした会言†  

処理ほ慣習となっている。企業によって報告される営業利益は規則的・反復的な経営活動   に起因して生じた収益と費用を対応させて決定される。異常な項目や非反復的項目は営業   利益の決定から除外される。アメリカ公認会封士協会(AmericanInstituteofCeItified   Public AccountantS,AICPA)の会計煉則審議会はつぎのように述べている。   

「当審議会ほ純利益が以下に述べる前期修正を除いて−,当該期間に認識されたすぺての   損益項目を反映させなければならないと結論づけている。しかしながら,異常項目は通常   営業活動の成巣から分離されなければならず,損益計辞書上,別個に.その金瓶と性質を明  

らかにして示されなけれはならない ・。」   

概念的に当期業績主義的利益ほ,企業利益の測定にさいして,当期性がなく,非経営的   で,異常な財務的事象の分離を強調する点で,正常利益概念と類似するものである。その   目的ほ企業の経営効率を適切曙反映した企業利益を報告し,当該企業の業績の期間比較を   童効虹し,かつ同種・異種産業間における企業間比較を恵味あるものとならしめる点にあ   る。しからば,当期業績主義的利益はこの目的を達成しているか。その解答は否である。  

なぜなら,当期業絨主義的利益は,会計方法の首尾一周しない適用,一物価変動,季節変動  

景気循環,偶発的変動,などの企業利益に重大な影轡を及ぼす要素を無視しているからで   ある。正瑞利益概念はこれらの要素を考慮して−いる点で,当期業績主義的利益とほ根本的  

に異な・つている。   

(7)

正常利益について(1)  

ーー1.?−ノブ・−l  

625  

ⅠⅠⅠ利益測定における内部的問題と正偏利益   

会計的測定と利益決定に関する諸問題ほ企潔の内部的問題と外部的問題に.大別される。  

前者ほ多数の代替的会計方法や会言▼t手続の中から,経営者や会言†担当者が企業目標の達成   に最適年会割方法を自由に選択することに起因して生ずる問題であり,後者ほ景気変動,物  

価変動,会計情報の利用者といった企業の外部的要因によってもたらされる問題である。  

ここでは内部的問題の性格と企業利益測定に及ばすその影響について述べるとともに.,正   常利益概念がそうした問題を緩和するのに.どのような役割な果すか匪ンついて検討する。  

(1)「−・般紅認められた会計原則」のもとでの代替的会計方法と会言十手続    会計測定に.関するまず最初の局面は,会計実務において使用される会計的概念,方法,  

手続な決定することに関係する。AICPAの会言=肝究公報7弓によれば,企業利益決定に   関する−・般紅認められた代替的会計方法や会計手続ほ30組あるとされている。その中に.  

は,収益認識の時点,現金割引や年金の支払に.関する会引処嘩,棚卸資産・固定資産の評  

価に関して生ずる種々の税金の処理,減価償却の方法,アモチゼー・ジョン,具備損益の処   琴などがあげられている。勿論,これらほ代替的会計方法のすペてを網羅したものではな   いので,利益決定に関する会計方法は組合せ如何によっては無数あるといってよい。他の   条件が等しければ,利益決定に.異なった会計方法や会計手続を適用することほ.純利益数値   を著しく異なったものとする。たとえば,企業が減価償却方法について直線法を採用する   ならば,収益に賦課される償却資産の原価ほ加速償却法が採用されている場合に比べて小  

さく,その結果純利益は過大となる。同様に1,物価上昇時に.棚卸資産評価に.先入先出法が   採用されれば,後入先出法が適用される場合に・比べて,純利益は過大に表示される。この   ように,「−・般に認められた会討原則」の枠内に.,多様な代替的会計方法が存在するという   ことほ,企業が欲するときに利益数値を美化しうる幅広い機会を与えられているというこ   とに他ならない。かくして,企業の営業成績や財政状態を評価する際に,報告された企業   利益がたとえ誤解を伴わないものであっても,信頼性が乏しいものとなるのである。多数   の代替的会計方法が存し統一・的な会計方法が欠如しているという点に関しては,会計情報   の利用者,他の学問領域に.おける研究者,あるいほ会計担当者自身に.よっても,これまで   批判の的となってきた。とうした問題濫・ついては,後に議論するように,代替的会計方法   の選択適用の自由を制限しようとして,AICPAのような会計士団体や証券取引委員会の   ような政府機関がその中心的役割を果してきた。  

(2)多様化した企菓目的   

(8)

第47巻 箆4・5・6弓  

626    ー34.2−  

多くの代替的会計方法や会言・l手続の利用可能性の問題は多様化した企業目的と相互に関  

連している。企業目的は,本質的にり 利益決定に異なった会計方法の適用を動機づける要   因の一つである。   

ミクロ経済学の伝統的理論によれば,企業ほ「利潤極大化」を唯一・の目的とするもので   あると考えられてきた。しかし,1950年以来,現実の企業の目的として,「利潤極大化」  

の翼当性ほ,経済学者の間で疑問視されてきている。HeIbert A.Simonは「経済学と   行動科学に.おける意思決定理論」と題する論文の中で,「企業目的ほ利潤極大化に存する  

というよりもむしろ,利潤満足化に.存する」と述べている。William.L Baumolほ.1959   年に出版された著書「企業の行動,価値と成長」の中で,「企業は長期的紅利潤を獲得す  

る手段として,短期的に利潤の拘凍を受け,収益の極大化(もしくは,代替的に売上高の   極大化)を試みる」と仮定している。1963年,Robert MorⅠi早ほ,「頑々の心理的,社会   的,経済的圧力のため,企業経営者は企業の成長率を極大化しようと試みる」という企業   行動の新理論を提起している。また,1965年Joseph Monson&Anthony Downsによ  

って展開された企業行動理論によれほ,「所有と経営の分離した企業では,企業目的ほ利   潤極大化からそれ,経営者ほ利益の安定的成長と株価の漸次的上昇を狙って行動する」と   指摘して小る。令討との関連で,企業行動について興味ある理論を展開した者はMyrOnJ・  

Gordonである。Gordon理論紅よれば,「企業の目的は伝統的利潤極大化原理からそれる   と考えられるばかりでなく,経営者ほ自己の能力の範囲内(すなわち,会計原則の枠内)  

で,報告利益の平準化と利益の成長率の平準化を行なうことに・よって−,企業目的を達成す   る手段として,代替的会計原則や会討手続を用いる」と述べている。この理論ほつぎのよ  

うに要約できよう。  

命題1経営者が会計原則の中で選択を行なう場合に用いる判断基準は企   業の効用(または富)の極大化である。経営者ほこのように動機づけられて   いなければならないか否かについては,ここでわれわれに関心のない価値判   断といえる。現実に経営者がこのように動機づけられているということは公   理とみなされている。  

命題2 経営者にとって効用は,(1)経常の安定性(2)経常利益の成   長率とその水準(3)企業規模の成長率とその水準,に.よって増加する。  

命題3 命題2における経営目標の達成がなされているかどうかは,企業   の業綴に関する株主の満足に.・一部依存している。つまり,他の事情が等しけ   

(9)

正博利益について(1)  

−−343−  

627  

れば,株主が幸福であればある隠ど,経営の安定性,利益などは大きい。こ   れらの変数ほ,さらに,株主を満足させる追加慮(margi】1alamount)を減   少させることによって,増加する。換言すれば,株主が経営檻非常に不満足で   あるときは,株主の満足化を高めることが経常の安定性などを著しく増大さ   せ,したがって,経営者の効用を増加させる。しかし,株主が経営紅非常に・満   足しているとき,同一愚の追加に.よって,株主の満足をさらに増大させようと   することほ,安定性,利益,企業規模な・著しく増加させることにはならない。  

命題4 企業に対する株主の満足ほ企業利益(あるいほ,資本の平均収益   率)の平均的成長と利益の安定性によって−,増加する。この命題ほ命題2と   同様ただらに検証される。  

定理:上.記命題が受け入れられるならば,すなわら真であるならば,経営   者ほ自己の力量の範囲内(すなわち,会封原則庭・よって許容される自由の   枠内)で,(1)報嘗利益の平準化と(2)利益の成長率の平準化を行なうと   いうことになる。利益の成長率の平準化ほつぎのことを意味する。もし,成   長率が高ければ,それを削減する会計実務が採用される。反対のこともまた   云える。   

財務諸表は.,本質的に.企業目的に関する経営者の業績を報告する手段である。それゆ   え,経営者は,株主をほしめ種々の利害関係者から経営業績についての良き印象を得るた   めに.,企業目的を出来る限り反映する会計方法で,財務諸表を作成するということは論理  

的である。すでに述べたように,代替的会計原則や手続ほ,こうした目的のために・重要な   用具となっている。もし,企業目的が現実の経常社会の中で変化するならば,企業は自ら   の特定目的達成に出来る限り葡利な方法で利益の報告を行なうものと理解される。いうま   でもなく,企業目的の多様化ほ,利益測定の新しい次元を創出し,その結党,経営業績の   相対的評価手段としての財務諸表を信頼性なきものとせしめるのである。  

(3)利益測定の内部的問題解決への努力   

こうした利益測定の内部的問題を解決する遺は,基本的にほすべての企業に適用される   会計原則や手続の統一イヒをはかることであろう。事実,そうした会計原則統一イヒへの探究   は.会計研究者,実務家,その他権威ある団体の最も注意を引く領域として取り上げられ,  

その問題紅対して多大の努力が払われてきた。指導的な会計団体であるAICPAは会討実  

務における種々の差異ヤ不一・致を狭めようとすることを明らに.重要な目標の−・つとしてき  

/   

(10)

第47巻 第4・5・6号   628  

ー3一夏4−  

た。AICPAの研究計画特別委員会ほつぎのように述べている。   

「財務会計領域匿おける公認会計士協会の一肌般的目的ほ,会員およびその他の者にとっ   て指針とな為一腰に.認められた会計原則を構成しているところの記述された表現を発展せ  

し.めることでなければならない。このことは,現存する会計実務の調査以上のことを意味   する。つまり,適切な会計実務を決定し,実務上の差異や不一・致のある領域を狭めるため   のたゆまない努力を意味する。い …  」   

この目的な・遂行するため,AICPAは多くの Opinion〃や Statement〃はかりでな   く,会計研究公報や会引用語公報を発表してきた。   

−・方,企業の財務儲表作成の基礎となる会計原則や会計基準せ展開することを目的とし   た会計団体はアメリカ会言1学会(AmericanAccounting Association,AAA)である。  

1936年以来,AAAは則務諸表な統一イヒし,利用者の・ニーズに合致せしめるということ   を目的として,励務諸表の作成基準や報菖基準に.関する4つのまとまった報告書(13の   SupplementaIy Statementsを含む)と包括的な基礎的会計理論の報告書を発表して−きた。   

会剖実務の統∴イヒに.最も大きな影響を与える規制団体ほ証券取引委員会(Securities   and Exchange Commission,SEC)である。1933年の証券法,1934年証券取引法,1935   年の公益事業持株会杜法,1940年の投資会社法,の制定で,SECは登録会社によって遵   守されるぺき会割方法や会引手続,財務諸豪の様式と内容などを規定する権威を付与され   た。こうした権威にもとづいてSECは,主要な会計上の問題や監査上の問題,ノあるいは   管理政策上の問題に関して,SECや主任会討士の意見を加えて,会計連続通牒を発表し  

てきた。   

しかし,1937年以来,SECによって発行された会計連続通牒の数は比較的少ない。こ   れは,政策上,SECが自らの見解を会計を専門とする人達に押しつけるのを避けている  

ことに.よるのである。むしろ,SECは会計を専門とする人達と密接に協力して活動して   おり,しかも,会計専門家に.よって展開されたト戯に認められた会計原則」紅非常に・信   頼性をおいているのである。   

SECめはか,他の規制団体としては,州際商業委員会(InterstateCommeTCe Com・  

mission),連邦電力委員会(FederalPower Commission),州公益事業委眉会(state   publicutility commission),州証券委員会(State SeCurity commission)があり,こ   れらの団体ほ,いずれも統一・会計制度の確立に貢献してきた。   

しかしながら,会封実務を完全に統一イヒしようとすることは,実際問題として,現実離   

(11)

629   正常利益紅ついて(1)  

ー34β−  

れしている。すなわち,企業目的,資本構成,資産・負債の性質,製品の種頬,生産過程,  

販売経路などを,各企業は著しく異にしているのであるから,かかる現実を直視すると   き,あらゆる産業のあらゆる企業に適合した会計原則や会計手続を設定しようとすること   ほ不可能であり,実務上 かなり多くの差異や不仙致が存在するというこ.とは,決して驚  

くべきでない。  

(4)利益測定の内部的問題と正常利益   

利益測定の内部的問題を解決する手段として,統一・的会計原則や会計手続を設定するこ   とほ現実から著しく遊離す・るものであるが,正常利益概念はこうした利益測定における内   部的問題の現実的状況を踏まえたうえで,かかる問題の緩和をもたらさんとするものであ   る。それでほ,具体的にどのようにして,内部的問題の緩和をもたらすか。   

正常利益ほ報薯された利益から臨時的利益を分離するものであるから,技術的にほ原則   として,つぎの三段階を経て測定される。   

ゆ首尾−・賀しない会計方法の影響を除去するために,報告利益の選択された系列−(す−な   わち,原系列)の修正をする。   

④■−・般物佃水準の変動を除去するために,①で得た数値を修正する。   

⑧④で得られた数値から,残りの臨時的要素の影響を平準化するため,時系列モデルを   使用して解析する。   

利益測定の内部的問題に着手するためにほ,まず①を経て−,報告利益の再構成を行なわ   なければならない。このため,各期間に統一・的会討基準(例えば,棚卸資産にはFIFO,  

減価償却方法は定額法)を適用し,P/L上の項目を再計辞しなければならない。再計算   されたP/Lの修正純利益は首尾一層しない会討方法の適用に伴なう影響ほない。しかし,  

各期間の報告利益の再計界は現実的でない。このため,便宜上,代替的会討方法の適用に   伴なう変動は.,他の外郭変動要因と合わせて,時系列解析を行なう。このことは,解析さ  

れた数値の信頼性を落す懸念もあるが,報告利益の系列が十分長ければ(例えば,固定資   産の費用配分手続が完了する程度),他の変動要因と共に除去されてしまうので問題ほな   い。一例をあげよう。  

〔例〕A,B,Cの各企業の減価償却費控除前の利益はここ5年間同一・額とする。各企   業は唯一・の減価償却資産(第1期に取得,取得原価¥20,000,耐用年数5年,残存価額0)  

を有し,減価償却方法を除いて,他の会計方法は同一とする。減価償却方法は.,A社一定額   法,B社…定率法,C社一最初の2年間は定額法を使用し,以後級数法に変更,と仮定する。   

(12)

630    駕47巻 第4・5・6雪  

−、3Jd−−  

各企業の5年間の報告利益と正常利益(この例示の目的のために・,単純な算術平均によ   っている)は貨1区匿示される通りである。   

第1図ほ,仮に経済的諸条件が同一・であって−も,会計方法の適用が異なれば,報告利益   が異なることを示ナともに,償却資産の費用配分が完了するとき,異なる会計方法の適用   によって生した報誓利益が正常利益測定のプロセスで完全に除去されることを示したもの   である。(貨1図にほ示されていないが,もし費用配分手続の完了しない4期末までとや   と,各企業間の正常利益に差異が生ずるが,報告利益間の差異檻比べれば,違要性のない  

程小さい。)  

第  1  図  

減価償却費控除前の利益   

−う 減 価 償 却 費   純   利   益  

2 減価償却費控除前の利益   

−・) 減 価 償 却 費   純   利   益  

3 減価償却費控除前の利益   

一っ 減 価 償 却 費   純  利  益  

\ 4 減価償却費控除前の利益  

+)+減 価 償 却 費   純   利   益  

5 減価償却費控除前の利益    れ・) 減 価 償 却 費  

純   利   益  

以上の諸点について要約しよう。  

企業利益測定の内部的問題は企業が会計実務上選択する代替的会計原則の広範囲にわた   

(13)

631  

正常利益に.ついて(1)  

l・3イ7−−l  

る利用可能性によ。てもたらされるものである。他の条件を無視すれば,異なった会討方   法ほ純利益数値を著しく異なったものとし,「一般に.認められた会計原則」のもとでの企  

業利益は業績評価のための信頼しうる用具とほなりえない。   

多様な会計方法と相互関連した問題は多様な企業目的である。財務諸表ほ本質的に企業   の目的達成紅関する経営者の報告書である。このことから,経営者ほ企業目的の達成を出   来るだけ反映する会計方法を使用して財務諸表を作成する傾向がある。ある企業の目的は   他の企業の目的と異なって−おり,その限りにおいて,純利益を決定するための会計方法の  

適用に,相異が生ずるということは,当然のことであり,このことは,かえって企業紅刺   激をもたらすものである。   

正常利益概念は企業の測定利益から,異なった会計方法の適用に伴なう影響の分艶,を   要請するものである。かくして,もし会計実務に正常利益概念が適用されるならば,それ  

ほ利益測定の内部的問題を緩和するのに多いに/役立ちうるであろう。  

ⅠⅤ 利益測定の外部的問題と正常利益   

つぎに・,経営者が統制できない外部要因である許気変動要因,物価変動要因,および多   様な情報利用者に関連して生ずる外部的問題に対して,正常利益がどのような緩和をもた  

らすかについて検討しよう。  

(1)景気変動(Business Fluctuations)   

自由企業体制のもとにおいて,個別企業の生産物需要は短期的にも長期的に.も絶えず変   化している。企業の販売高が変化する一つの原因は競争者の行動の作用もしくは反作用の   結果であり,他の原因としては,旧企業の当該産業からの離脱および当該産業への新規加   入である。こ.れらの原因ほいずれも当該産業それ自体の内部で生起するという共通的性格  

をもっている。しかし,経営活動の生産高や販売高を不規則的に.変化せしめるのに.相当影   響を及ばすものと思われる当該塵業外の外部的要因もある。こうした不規則的変動は.−・般   に「景気変動」として知られている。景気変動はつぎの4つの変動要因から構成される。  

すなわち,(i)趨勢変室臥(ii)季節変動(iii)循環変動またほ景気循環,(iv)偶発変動,  

である。  

(i)趨勢変動(Secular Trends)   

趨勢変動は,景気変動に.関連して−,長期間にわたる活動の認識可能な連続的動きと定義   される。−・般的な産業活動に即していえば,趨勢変動は特定の国家における全産業の長期   間にわたる成長もしくは衰退を示すものである。趨勢変動に.みられる上昇または下降の変   

(14)

雄47巻 第4・5・6弓  

632  

一・∴㍉けト  

動はしばしば逆転することもあるが,かかる変動パターン紅影響を与える要因ほ,人口の  

/ 変化,技術および生産過程の変化,教育を適しての人的資源の改良,資本蓄積率の変化  

新原材料の発見,など■である。   

特定産業における成長の趨勢は全産業の趨勢および当該産業に・特有の要因に主として支   配されている。同様匿,個別企業の趨勢ほ当該企業の所属する産業の趨勢,全産業の趨勢   および当該企業に特有な要因,の関数である。  

(ii)季節変動(SeasonalFluctuations)   

企業の生産物需要は年間な通して平均的に分散しているものでほなく,むしろ,月別の   需要は年間の平均値より高いか低いかのいずれかである。このように毎年反復する月別変   動差異ほ−・般紅「季節変動」と呼ばれ′こノいる。季節変動は慣習的休日,1月の労働日,な  

どの社会的原因または夏期,冬期,気候などの自然的屏因にもとづくものである。  

(iii)農気循環(Business Cycles)   

WesleyC.MitchellおよびAIthur F。Burnsに.よれば,景気循環ほつぎのように定   義される。   

「主として,個別企業紅よって構成されているところの姶体的国民経済活動にねいて観   察される変動のパター・ン:1サイクルは「拡弓削,「後退またほ収縮」,およびつぎのサイク   ルの拡張局面に移っていく「回復」から構成される。かかる変動の連続は反復的に生じ,  

決して期間的ものではない。景気循環の持続期間ほ1年以上から10年ないし12年にわたっ   て変化する。景気循環ほ,それ自身に近似する振巾で,より小さい循環に細分化すること   は出来ない。」   

それゆえ,景気循環は自由企業体制のもとで観察される経済現象である。かかる経済体   系の下において,生産高水準,生産物の価格設定と投入要素,貯蓄と資本ストックによる   投資,に㈲する計画と意思決定ほ種々の経済単位に.よ云て独立.的になされる。したがっ  

て,生産高と売上高,生屈高と資本スtツク,生産費と価格,貯蓄と投資,の間の不均衡   は不可避的に累積し,循環的変動へと移行する。大部分の経済活動が国家匹よって,計画  

・指揮・統制され,中央集権化した経済体系のもとでほ,景気循環ほ常に回避できる。   

景気循環の特徴である「不況」と「回復」から「繁栄」と「後退」に及ぶ反復的変動は   全体経済の活動ばかりでなく,全産業および経済の全セクターに影轡を与え.るものであ   る。景気循環が粗国民生産物,価格,雇用に与える影響は余りに.も大きく,今日民主的国  

家の政府ほ,経済成長と安定化のための財政・金融政策に景気循環を常に考慮しなければ   

(15)

正常利益について■(1)  

ー∂49−  

633  

ならない。個別企業化おいても,景気循環ほ生魔物需要の予測や利益封画にさいして,特   に重要な要因と考えノられている。  

(iv)偶発変動(Random Fluctuations)   

経済活動の変動ほ,本質的虻偶発的と思おれる種々の要因雁よってせずることもある。  

これらの要因紅は,戦争,地震,洪水,火災,ストラキ,政府機関の政治的・経済的行動な  

どがある。ある種の条件下では,これらの不規則変動は期待された要因によってもたらさ   れる。たとえば,朝鮮戦争の際,耐久財の供給は減少し,その価格は上昇するだろうと消   費者ほ期待していたから,耐久財の売上高ほ.著しく増大した。  

(2)農気変動の企業利益に与える影響   

男気変動を構成する4つの変動要因のうち,季節変動ほ企業の年次利益の測定に重要な   影轡を及ぼさず,埴定年皮の純利益が季節変動によって歪曲されるということはない。こ   れほ,販売収益と売上原価およぴその他の関連費用の差異が年間を通して平準化されると   いう事実によるためである。しかし,年2臥 年4回,あるいほ月別に利益測定を行なう   ならば,季節変動の影響ほ表面化し,伝統的会封の測定技術によって−,その影響が分離さ   れるということはない。   

趨勢変動は純利益測定に億して,理論的に復姓な問題を提起する。というのは,趨勢変  

/ 

動ほその性質上,極攣に長期にわたっても消え去ることが期待できないからで参る。しか   し,幸いなことに,急速な衰退産業や新しく成功した産菜を別にすれば,どの産業の趨勢   も,全体経済の成長と統合されている。このこ.とは本質的にほとんどすべ/ての産業の趨勢   が漸次的に.上昇して動き,かつその傾斜がほぼ等しいということを意味している。それゆ  

え,すべての企業が全体経済の趨勢の影響をはば等しく翠けている限り,企業間で業績評   価の比較を行なうために,その影華を分離するという必要性ほないのである。技術的に.  

ほ,他の変動要因を除去した統言†的傾向線が求める正常利益の近似値を示すこ.と紅なる。  

一方,景気循環や偶発変動は企業利益測定に複雑濫作用する。景気循環は景気の収縮局   面と匹張局面の間隔が1年以上紅わたって生ずる反復的変動であるから,その影響が一・会   計期間内で逆転することほないふそれ以上に.重要なことほ,景気循環の影響が全産業,全  

企業に.−・様に作用するものでほ決してないということである。循環過程のある局面は特定  

産業紅正の効果をもたらす場合もあり,負の効果をもたらす場合もあり,しかもその影響   は比較的短期間に平準化しうるというものでもない。景気循環がすべての企業に平等に影   響を与えないという事実ほ.景気循環が利益測定に.中立的でないことを意味する。したがっ   

(16)

−3∂クー  

欝47巻 策4・5・6号   634  

て,伝統的な会討方法で測定された企業利益ほ景気循環の影響叱色どられ,企業の活動業   績を測定する適切な基準から程遠い。   

確率の法則に.従えほ,もし偶発的要因が相当多く,しかも互いに独立してし、るならば,  

偶発的要因の影響服所与の時点で,当然消去されてしまうだろう。しかし,かかる条件ほ   現実にほ.存在しない。なぜなら,偶発的要因は相互に関連し,影響しあって−いるのが通常  

であるからである。かくして−,偶発的要因にもとづく影響の期待値ほ,いかなる時点にお   いても,零ではなく,正また負であり,したがって,企業利益ほ偶発的要因の影響庭よっ   て常に変化して−いると結論づけるのが論理的である。、偶発的要因は政府の経済政策の変   更,法令の制定・改正,戦争など,全体経済に.影響を及ばす場合と,火災,洪水,特定産   業のストライキなどのように.,特定の産業,企業,地域にその影響が限定されている場合  

がある。いずれにしても,偶発的要因は利益の企業間比較に中立的であると期待すること   ほできない。  

(3)−・般物価水準の変動   

物価上昇ほ超過総需要,コスト・プッシュ,ボトル・ネックなどのインフレ要因の結果   生しるもので,戦後の自由主義経済諸国における経済現象の特徴の一∴つとなっている。い  

うまでもなく,物価の上昇は貨幣購買力の逓減を意味する。したがって,物価上昇時に,  

売掛金,受取手形,社債への投資,のどとき,将来の貨幣論求樅が固定的貨幣額で表示さ   れて小る貨幣性資産を保有して小る経済単位常.おいてほ購買力損失を蒙る。これ紅対し,  

買甜金,支払手形,未払賃金,未払税金,社債などの負債を保有する経済単位においては   購買力利得を授る。   

会計的測定は基本的にいくつかの会引公準にもとづくものであるが,その一・つは会計の   測定単位に関連するものである。すなわら,貨幣ほすべての財および用役の交換可能性を   測定する共通分母となるものであり,いかなる会封報告苔も貨幣額(すなわち,ドル,フラ  

ン,ポンドなど)で表示されているということを明示しなければならない。他の会計公準ほ   安定した測定肇位紅もとづいて会封報告書が作成されなけれはならないということを要求   する。いずれにしろ,会計的測定の正確性と有効性は,これらの貨幣公準から明らか粧独立  

変数となるものである。すなわち,もし貨幣価値の安定がそのまま妥当するならば,伝統   的会計手続や技術は−・定期間の営業成績と−L定時  点の財産状態を正確に測定するのに適切   である。しかし,−般物価水準の変化に即応して−,貨幣価値が絶えず変化している状態の  

もとでは,貨幣価値安定の公準は存在理由を喪失する。したがって,かかる場合において   

(17)

正常利益について−(1)  

−β5ユー   

635  

ほ,たとえ独立した監査人の麺限定意見膚きの財務諸表であっても,伝統的財務諸豪の侶    粗可能性ほ極めて疑わしい。Henry W.Sweeneyが「会封の信頼性はひとえに.貨幣の信   顆性に依存するのであるが貨幣は嘘つきである」と指摘したの牲余りに.も有名である。   

貸借対照表の主目的ほ企業の所萌する経済的資源の正味価値を表示することによって,  

血・時点の財産状態を示すことであるが,貸借対鳳表の資産・負偵に.付せられた価値ほ,会   計的測定の費用概念と即応して,取得時の交換価格以上の何ものでもない。したがって,  

−・般物価水準の上井ほ,本質的紅,「資産・負債は異質α)悪幣で表現され,表示価額は現   在の貨幣購買力という観点から理解される」という状態なつくり出す。また,利益決定に   関してみるとき,−・般物価水準の上昇ほ,取引利益と貨幣購買力の逓減による仮空利益を  

混合し,伝統的純利益数値の不純化をもたらす。なぜなら,収益に賦課される償却資産の   費用およびその他の費用項目は,資産および用役が取得された時点の貨幣価値にもとづい   

て算定されるからである。   

このように,一・般物価水準の上昇は企業利益や財政状態に.余りにも大きな影響を与え   るために,〔の点を考慮に・いれなければ,会封的測定の構遇を弱めることになるであろ   

う。率いにも,会計理論家や権威ある会計団体の周密な研究の成果に.より,今臥 会封専   門家はこ.うした問題についで十分認識するに至り,同一・時点の貨幣購買力で財務諸表の再  

表示を行なう組織的方法がエ夫されている。   

(4)個別物価の変動   

自由な経済体系のもとに 

変動という二つのカテづり一紅分けられる。一・般物価水準の変動の場合,すべての商品の  

価格は同じ割合で上下する。そのような変化は磋済単位によって保有されている資産価値   の増加あるいほ減少を示すものでほなく,単なる貨幣購買力の変化を反映するにすぎな   い。それゆえ,−・般物価水準の変動は,貨幣性資産の保有紅よって利得またほ損失をもた  

らすが,棚卸資産,設備および機械,土地,建物のような非貨幣性資産の保有にほ何んの   影響ももたらさない。   

−・カ,個別物価変動ほ特定の非貨幣性資産の価値の変動を示す動きである。個別物価変   動あるいは相対的価格変動は,消費竃の好み,技術革新,投機,供給の変化など,いくつ   かの独立変数の関数である。−−・般物価水準を一題粧するとき,すべての非貨幣性資産の価   格ほ同じリズネで動くものでほなく,上昇するものもあれは,下落するものもある。仮に.,  

すべての価格が同じ方向に動く時であっても,その変化の割合は常に.異なっている。ま   

(18)

第47巻 第4・5・6号  

−「ユ52−  

636  

た,こうした個別物価の変動に.よって,非貨幣性資産の保葡から常に利得が生しる。   

伝統的実現概念のもとでほ,資産が実際に販売されるまで,資産価値の変化を認識しな   いので,個別物価変動の問題ほ利益測定を複雑にする。すなわち,報告された営業利益の   中紅当期拡販売された資産の資産価値の変化にもとづく利得もしくほ損失を含むほかりで   なく,スプロ・−ズ=ム−ニッツ教授が指摘して−いるように,もし資産価値の変化が当該期   間よりも前に.生じているならば,「誤った期間に,誤った金額」を討⊥することになる。た   とえば,前期に$600で取得した商品を当期に$1,000で販売したとする。また,この商品   の取替佃値ほ,前期末に$650,当期末に$800,と仮定しよう。伝統的会計基準に・よれ   ば,企業は当期に営業利益$400を討上することに・なる。しかし,企米の実際の営業利益   はそのうらの$200にすぎず,残りの$200は保有利益であることは明らかである。さら   に,$200の保有利益のうら,$50は前期の,$150ほ当期の,利益として.一期間帰属せしめ  

られるべきである。この例からも明らかなように,伝統的会封測定の妥当性は,個別物価   の変動に.よって,弱められるのである。  

(5)多様な利用者   

経営活動が単純で生産高も比鮫的櫻少であり,かつ経営が唯一・の所有者によって一行なわ   れているという会討史の初期において,会封の主要な目的は所有者の資産・負債に・関する  

情報を所有者軋提供することであった。そのような状況のもとでは,経営の所有者のみが   会計情報の利用者であり,会計情報は単に資産のスチエ.ワードシップに・のみ利用されたか  

ら,財務報告に関する複雑な問題が生しることはなかった。会計基準の統一一・ないし利益測   定と報雀に.関する基準ほ,それ自体望ましいことであったけれども,1その当時としては不   必要であった。しかし,1760年の産業革命の揉じまり以来,財務報告ほもほや単純な問   題で味なくなった。機械化は大意生産をもたらし,設備,機械,その他の生産設備の投資   紅必要な資金ほ非常に多額を要したので,所有者およびその家族の能力をもってして−は,  

もはや準備できなくなった。さらに,生産過程と管理過程が非常に複雑に・なったので,専   門的経営者が所有者紅代って,経営活動を封画し,指揮し,統制しなければならなくなっ   た。このような発展は,必然的に,会社形態での企業の形成を普及せしめた。   

資本主義の発展の結果,今日の会社企業ほ,たんに,所有者,株主のみならず,消費者   従業員,債権者,および企業の帰属する−・般社会に対して義務と安住を有する制度となっ  

ている。Richard Eells は近代企業を Metrocorporation と呼び,その特徴をつぎの   ように述、ぺている。   

(19)

正常利益に.ついて(1)  

−∂5β−   

637  

「それほ,活動を狭義の経営目的に限定せず,広範な社会的目的を有し,かつ大きな社   会的茸任を有している。それは社会の多くの異なったセクターに・対して,会計烹任を負い,  

経営者ほ自らを多様な利害関係の調停者と考えて■いる。」   

George A.、Steinerほ近代企業の責任をつぎのように指摘している。   

「今日,経営者ほ従業員,消費者,学校,・−■・般大衆に対して茸任ある行動を示さなけれ   ほ,長期的に株主に対して,芸任の解除を有効に求めることはできない。会社が株主持分   を守り,かつ高めようとするその能力ほより大きな社会の繁栄,友好と信頼匿,決定的紅   依存するものである。社会的責任という大きな尺度を認容するということほ,それゆえ,  

良き経営を行なうと同時に・良き市民でなければならないということである。」   

このように,環境の変化につれて,今や会計情報偵企業活動に.よって影耕を受ける利害   関係者や企薬活動に関心のある利害関係者にとって,極めで重要なものとなっている。た  

とえば米国において,財務諸表の提供のため紅,企業が法的あるいは遺磯的義務を負って   いる利害関係者としで,つぎのようなものがあげられる。   

所有者:普通株も 優先株主   

債権者:社債権者,借入れ先の保険金祉,銀行,年金基金,その他,原材料・設備の供   給者   

政府機関:内国歳入由,州あるいほ市の課税当局,証券収引委員会,連邦公益事業凄眉   会,州証券委員会   

従業員および労働組合:個々の従業員,地域別組合および国際的組合   

−・般大衆:日刊紙・週刊紙・財務関係雑誌の編集者,証券会社を代表する財務分析家,  

機関投資家及び個人投資家を代表する組織体,相互基金・年金基金およぴその   他の機関投資家の管理者   

会計情報の利用者の増加と多様化によって,会計情報鱒,多様な目的のために,広く利   用されている。財務諸表は引画・指揮・統制の経営管理目的および受託茸任の報告書とい  

うことに加えて,今や,つぎのような目的に利用されている。  

(1)財政政策の基礎  

(2)配当の合法性の決定  

(3)賢明な配当行動の指針  

(4)信用保証の基礎  

(5)将来の投資家のための情報   

(20)

第47巻 第4・5・6号  

一仙354−  

638  

(6)政府監督機関への援助  

(7)すでに.投資された投資価値の指針  

(8)価格またほ料金規制のための基礎  

(9)課税の基礎   

こうした目的に関係する種々の利奮闘係者の会社への利害ほ決して−・致しておらず,財   務諸表は.異なった目的のために.使用されており,かかる車夫から,必然的に,会計測定と   報告に関する諸問題が生じる。会封の枠内で測定された会計データーがすべての多様な目   的のために,等しく役立らうるということは,たとえ,それが不可能でないにしても,有   りそうもないことである。たとえば,歴史的原価紅もとづいた会計データーほ資産の受託   責任のためにJ適切であるが,もし,その用途が企業の現在価値を測定するととであるなら   ば,ほとんど価値がないであろう。   

測定ほ何が測定されるぺきかを前提とする。われわれほ,もしその「何か」が何んであ   るかを知らなけれほ,測定は意味をもたない。同様に.,企業取引が測定される際の明白な  

目的がなけれは,会計データー・ほその意義を失うことになろう。  

(6)利益測定の外部的問題解決への努力  

(i)−小般物価水準の変動   

一一般物価水準の変動の問題はこれまで会計専門家によって取り扱われてきた多くの研究   の中でも,とりわけ遥要な会計測定上の外部的問題である。この間題に.関して,つぎの4  

つの代替的方法が提案されてきている。   

① 固定資産の再評価による方法   

⑧ 固定資産の取替原価に.よる処理方法   

⑨ 棚卸資産および固定資産の減価償却叱対して,現在価値で処理する方法   

④ 偵幣の−・般的購買力の変化痘勘定に反映させるためごL指数で修正する方法   

①の方法ほ固定資産を現在価格で再評価する方法である。したがって,帳簿上の数値は   新しい価値まで切り上げられる。この際,再評佃益は再評価剰余金勘定に貸記される。こ   の方法は流動資産である非貨幣性資産をも含めて−修正することも可能である。   

⑨の方法ほ本質的に.資本維持概念匿基礎をおくものである。すなわち,期間収益にチヤ  

−ジされる減価償却費は,すべての固定資産が使用しつくされたときに,それを取替える   ための必要な資金をカバ−するに足るものでなけれほならないという論理である。   

⑨の方法ほ収溢に現在棟価を対応させる方法である。こうすることによって,収益と貿   

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