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授業改善と授業評価のための省察的実践とメンターリング

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 弘前大学においても授業に対する「省察(リフレクション)」が注目されているようでうれしいです。

ティーチング・ポートフォリオ、ラーニング・ポートフォリオあるいは他のいかなるポートフォリオに ついて説明するうえで、とても重要になるのが「省察」です。これは教員が何を行っているかではなく、

どのように行っているか。なぜ、そのように行っているか。これらはポートフォリオを構築するうえで 鍵となります。

 最初のスライド(図2参照)の漫画は、先日の FD講演会でも説明したもので、すでに聞かれた方も いらっしゃるかもしれませんが、これはティーチングやラーニングについて説明するのに適していま す。スライドの男性を、たとえば、長老の教育担当副学長(プロブスト)だとします。もう一人の女性 が教員である「みなさん」だとします。学年末に、教員はティーチングの能力を証明しなければなりま せん。そこで、副学長が教室に来て、これから30秒間で「あなたの」能力を評価しますと言って、「さ あ、はじめてください」と言ったとします。このようなことは常識(Common Sense)では考えられな いことですが、アメリカの大学では一般的に見られるものです。この場合は、学生評価(Student Evaluation)だけが唯一の証拠資料となり、それが授業評価に直接に繋がることになります。これでは困 るわけです。ここで私が提言することは、個人的な意見というよりも、これまで30年以上にわたって多 くの人の経験から学んだものです。たとえば、ピーター・セルディンがそうです。彼は日本に来たこと がありますが、この分野の先駆者の一人で私のメンターでもあります。30年以上も一緒にワークショッ プや出版活動を行っています。また、大学のファカルティにポートフォリオに関するメンターリングも やっています。ここで提案するのは、スライドのようなシナリオになることを避けて欲しいと考えるか らです。そして、優れた教育業績を評価するためにより多くの情報を集めることで、優れた教員である ことの証明にしたいと考えています。すなわち、スライドで示されるような学生評価だけに偏らず、

もっと多くの情報にもとづく必要があります。

 このことを詳しく説明するために、スライドを飛ばして次のスライド(図4参照)「ティーチング・ポー トフォリオの内容(Contentsofa Teaching Portfolio)」の証拠資料となる3つの情報源について話をし ます。学生評価について触れましたが、これは証拠資料の一部、すなわち「他者からの情報」にしか過 ぎません。ポートフォリオは一つの情報源からではなく、複数の情報源からの証拠資料を含むことがで きます。たとえば、「省察」を促す個人の情報源や学生の学習成果(ラーニング・アウトカム)の情報も そうであります。学生たちが実際に何を学んだかを示す証拠資料もあります。

 元に戻って、次のスライド(図3参照)「ポートフォリオとは何か」。なぜ、ポートフォリオが必要な のか合理的な説明をしたいと思います。ポートフォリオを作成する理由は、大きくわけて2つありま す。一つは、エンゲージあるいはプロセスが授業改善にどのように繋がるかということです。他は、プ ロデュースあるいはプロダクトで最終的な証拠資料となるものです。これには、紙、ディスク、ウェブ

講演会及び研修会の記録

 講演会及び研究集会の記録 

平成21年度 FDワークショップ

ティーチング・ポートフォリオ:

授業改善と授業評価のための省察的実践とメンターリング

コロンビア・カレッジ ジョン・ズビザレタ教授

(通訳 土持ゲーリー法一)

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などがあります。これらは教員業績のアセスメントとして有益です。この二つがポートフォリオを作成 する主要な理由です。すなわち、スライドのイタリック体で書かれているように、改善(Improvement とアセスメント(Assessment)/評価(Evaluation)ということになります。スライドの左側がプロセ スで、右側がプロダクトです。アセスメント(Assessment)と評価(Evaluation)を混乱することがあ ります。スライドでは、二つの項目にわけて説明していますが、たとえば、改善やアセスメントのよう に互いに交差するものもあります。改善とアセスメントには密接な繋がりがあります。アセスメントは プロセスで改善に繋がると考えています。一方、評価は、結果として改善に繋がることもあるが、そう でないこともあります。すなわち、アセスメントがプロセス重視で改善のためのものであるのに対し て、評価は結果重視のためということができます。これらは、一般的に、形成的評価(プロセス)と総 括的評価(プロダクト)と呼ばれます。形成的評価は改善を目的としたもので、総括的評価は判定を目 的とするものです。このスライドで重要なことは、アセスメント(Assessment)と評価(Evaluation)

が別々に書かれているが、互いにオーバーラップしていることを理解する必要があります。

 次に、「プロセス」のところに、どのようなことが含まれるかということです。これがティーチング・

ポートフォリオの「プロセス」ドキュメントだとすれば、最も重要な核となるのが「省察(Reflection)」

の部分であり、そこでの深さの度合いが改善に繋がります。「省察」とは、より良い授業改善のための振 り返りであり、同僚とのメンターリングも重要になります。これは、授業実践において決定的な違いを 生み出すことになります。このように、「省察」部分はポートフォリオのなかの決定的な要素となりま す。次に、ポートフォリオの「プロセス」で重要になるのが、説明(Narrative)」の部分です。ポート フォリオを作成することは、記述(Writing)と深く関わり(Engage)をもつことです。すなわち、ス トーリーを語る(Telling Story)ということになります。ここでのストーリーとは、教員のティーチン グについてのものです。何を教えているか、どのように教えているか、すなわち、ティーチングの責任 あるいは方法論についてです。なぜ、教室で学生にそのような方法で教えるのか、そこでの教え方は、

他のクラスとどのように違うのか。なぜなら、すべての学生は同じではないからです。また、すべての クラスは同じではないからです。たとえば、NSSE(全米学生エンゲージメント調査)会長ジョージ・クー

(George Kuh)は、「われわれは、『学生たち』に教えるのではない。われわれは、『複数の教室』で教え るのではない。われわれは、『一人の学生』に、そして『その教室』で教えるのである」と画一的な教え 方ではなく、個々の学生や個々の教室に適した教え方の重要性を指摘しています。

 教員がどのように教えているかを知るには、「省察」、すなわち、授業を振り返ることが重要で、この ことを説明文として記述する必要があります。なぜなら、記述しなければすぐに忘れてしまうからで す。たとえば、私にも経験がありますが、皆さんもこのようにワークショップに参加して刺激的なこと を多く学んで、実際に、大学に戻って実践しようとしても忘れてしまったという経験があると思います。

聞いただけでは不十分で記述として関わることが重要です。記述は紙であろうが、ウエブであろうが フォームが必要です。ポートフォリオの重要な役割は記述して記録することができ、さらに教育改善と いう考えを失わせないことです。なぜなら、ポートフォリオはプロダクトの記録としていつまでも残る ものだからです。

 次に、プロセスで重要な要素が「分析(Analysis)」です。たとえば、皆さん方に配布されている「ティー チング・ポートフォリオ作成のための事前課題(Getting Started)」の最初の「あなたの教育の責務につ いてのべてください(Describe yourteaching responsibilities)」もそうです。「教育の責務を述べなさい」

あるいは「教育方法を述べなさい」のように、「述べなさい」は知的活動の一つでありますが、最も挑戦 的なことは「説明する(Explain)」ことです。この部分に「分析(Analysis)」が関わってきます。「教 育の責務」や「教育方法」について「省察」を加え、「分析」するプロセスがポートフォリオを意義ある ものにします。たとえば、クラスでグループ活動を取り入れたとします。そうすると、なぜグループ活 動を取り入れる必要があるのか。それが学生にとってどのように役立つのか説明します。簡単な事例を

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示せば、授業シラバスに教員の自宅の電話番号を入れたとします。なぜ、その必要があるのか説明しま す。これらが学生の学習とどのような関係があるのかを説明します。これは、深い分析的な思考に繋が り重要です。これは、「ティーチング・ポートフォリオ作成の事前課題(Getting Started)」でも行いま す。

 次が、「目標(Goal)」です。ポートフォリオでは目標を掲げることも重要です。すなわち、学生の学 習に影響を与えるために、どのようなことを到達させたいかと考えているのか。どのような新たな戦略 を考えているかなど目標を明確にすることもポートフォリオとしての重要な要素です。

 次が、「更新(Revision)」です。ポートフォリオは一回限りのものではありません。一度書いたら引 き出しにしまい込むものでもありません。ポートフォリオではプロセスが重要になるから、少なくと も、年に一度は見直し、自らの授業実践を振り返って、どこがどのように改善されたのか定期的に考え てみることが重要です。これは、教員がプロとしての意識を高めることに繋がります。

 これまで述べたように、「省察」「説明」「分析」「目標」「更新」の各プロセスを踏まえて独自にポート フォリオをまとめても、優れたものを作成することができます。しかし、もし、同僚メンターが加われ ば、各プロセスの項目をさらに深めることができます。なぜなら、他者の意見を反映させることで、自 らのプロセスを振り返ることができるからです。たとえば、同僚メンターからグループ活動の意義や目 標が不十分であるとか、教員による自己評価と学生による授業評価に食い違いがあるなどの指摘を受け たとすれば、また異なる視点から「省察」したり、振り返ったりすることができるのです。このような 働きをするのが、次のメンターあるいは「メンターリング(Mentoring)」です。メンターから的確な質 問を投げかけられることで、問題点に焦点を当てることができ、省察に繋げることができるのです。こ れは、メンターリングがポートフォリオのプロセスにおいて重要な要素として掲げられる理由です。こ れらがポートフォリオのプロセスの側面です。

 しかし、ポートフォリオにはもう一つの側面のプロダクトというものがあります。これはアセスメン トあるいは評価として用いることができ、プロダクトと呼ぶことができます。教員の教育業績を評価す るための材料としても用いることができます。判断(Judgment)」とは、良い、悪い、あるいは改善の 必要などを決めるものです。判断を下すためには、そのことを裏づけるプロダクトが必要になります。

最初が証拠の裏づけです。教員は、自らの教育実践のプロセスを振り返り物語風に記述しますが、それ だけではポートフォリオは不十分で、そのことを裏づけるプロダクトが不可欠となります。教員業績を 信用させるには証拠の裏づけが不可欠です。たとえば、教員が授業で実践しているグループ活動は優れ て効果的であり、この方法から多くのことを学生は学んでいると述べたとします。もし、私がその教員 のメンターだとすると、素晴らしい教育実践の説明であるけれども、たとえば、アメリカ的な表現で「現 金で示せ(Show me the money)」とあるように、グループ活動が優れて効果的であったというのなら、

「証拠を示せ」あるいは「証拠資料で裏づけよ」と尋ねるでしょう。多くの場合、教員はそのことを裏づ ける証拠を持ち合わせていません。それは、教員が教室における学生からのアセスメントを受けていな いからです。何がどのように効果的であったのか、あるいはなかったのか、直接、学生に尋ねる必要が あります。ポートフォリオは、証拠資料で裏づけられた(Evidence-based documents)ものでなければ なりません。さらに、これらの証拠資料は、厳選された情報(Selective Information)でなければなり ません。たとえば、教員業績が評価を目的にしたものなのか、それとも昇進を意図したものなのか目的 に応じて違ってきます。それらの情報は証拠資料として付録に添付されます。ティーチング・ポート フォリオの内容が証拠で裏づけられ、厳選された情報が証拠資料として付録に含まれているかどうかを メンターリングしてあげるのもメンターの重要な役割です。これは新しい大学教授職を探す場合も同じ です。最近、アメリカの大学では求職のときにポートフォリオを提出させます。この場合、求職に適し たポートフォリオを作成することになり、授業改善を目的としたものとは異なります。次に、厳選され た情報が偏ったものではなく、代表的なデータ(Representative data)が網羅されたものでなければな

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りません。たとえば、学生評価にしても異なるクラスのものを提示しなければなりません。代表的な データには教員の学術的スカラーシップ、もし、それが学生の学習に関連したものであればそれも含む ことができます。すべての証拠資料は、付録(Appendix)に含まれます。 ティーチング・ポートフォ リオの前半(本論)部分には、プロセスの項目で掲げた「省察」「説明」「分析」「目標」が含まれます。

後半(付録)部分には、プロダクトの項目で掲げた証拠づけるための厳選された代表的なデータを含む ことになります。たとえば、「付録A」では学生評価、「付録B」では代表的な授業シラバス、「付録C」

では同僚評価、「付録D」では学生に課した課題サンプルなどです。「付録」はファイルごとに番号を付 けて区別します。

 以上からも明らかなように、ティーチング・ポートフォリオには大きく二つの目的、すなわち、プロ セスとプロダクトがあります。 次に、実際にどのようなものがポートフォリオのなかに含まれること になるかについて説明します。それがスライド(図4参照)「ティーチング・ポートフォリオの内容(Con- tentsofa Teaching Portfolio)」のところです。ポートフォリオに含まれる情報は、大きく分けて3つの ものになります。すなわち、「自身の情報(Information from Oneself)」、「他者からの情報(Information from Others)」、そして「学習成果についての情報(ProductsorOutcomesofStudentLearning)」で す。学習成果とは、学生の実際の作業(ActualWorks)にかかわるもので、学生が教員から学んだ結果 ということになります。たとえ教員が教えたからと言って学生がすべてを学んだことにはなりません。

次に、それぞれの分類について説明します。

 最初のスライド(図5参照)が「自身の情報」のものです。このなかにはどのようなものが含まれる か。簡単に言えば、自身の責任に関するものということができます。最初が、1)ティーチングの責任、

授業哲学、授業方法、目標に対する省察的分析です。授業哲学とは、教員としての教育に対する価値観 や信念のことです。授業方法や目標については、“Getting Started”で記述したのと同じものです。“Get- ting Started”課題を済ませていれば、ポートフォリオの半分は出来あがったのも同じで、ティーチング・

ポートフォリオのフォーマットにカットアンドペイストするだけで済みます。「何を教えているか」、

「それをどのように教えているか」、そして「なぜ、そのようは方法で教えるか」が中心となります。こ れらの3つの重要な鍵となる質問が優れたアセスメントに繋がります。次に、1)の自身の責任を裏づ けるための材料が必要になります。それが2)の材料の記述のことで、これにはシラバス、ハンドアウ ト、課題、ソフトウエアなど、実際に教室で学生と共有しているものということになります。ここでは、

単に記述するだけでなく、具体的にどのように使用しているか、そのことから学生がどのように学んで いるか説明を加える必要があります。これが深い「省察」となります。次が、専門的な授業改善活動に 対するアセスメントです。このなかにカンファレンス、ワークショップ、カリキュラム実験や改訂など が含まれます。たとえば、この FDワークショップに参加しているなどがそうです。ここで学んだこと を実際の授業改善、とくに学生の学習改善にどのように繋げているかということが重要です。重要なこ とは、教員のためというよりも、学生のため、学生の学習向上のためでなければなりません。これには、

たとえば、アメリカの PODネットワーク年次大会に参加して学んだ経験をどのように授業あるいは学 習改善に繋げるかということと同じです。これらのすべてはポートフォリオの「自身の情報」に含むこ とができます。

 しかしながら、「自身の情報」だけでは不十分です。それ以外の外からの自身に関する情報、たとえば、

「他者からの情報」(図6参照)が必要です。このなかには学生が授業の最後に提出する学生アセスメン ト /評価(Studentassessmentsand ratings)が含まれます。同僚評価・授業観察(Peerreviews,Class observations)とは、同僚や学部長が授業観察してメモを取り、授業後に教員と話し合ったり、あるい はメンターリングを行ったりするものです。授業観察をビデオ録画に撮り、自らの授業実践を振り返る ことができ、授業改善に有益です。ビデオ録画をしなくても、同僚が教室の後ろで学生の授業態度を観 察して、適切なフィードバックをすることも同じように有益です。授業参加者は、必ず、記述式で

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フィードバックすることが重要です。記述することで、教員は授業内容を分析でき、さらに自身のポー トフォリオのなかに含むこともできます。これは、教員自身が授業改善に「熱意」がある証拠資料とな ります。授業観察に関連してですが、たとえば、昨日、保健学研究科野田美保子教授の作業療法に関す る授業を観察しました。野田教授が学生に質問を促すときに、すべての学生に目配りをして満遍なく授 業に学生を参加させ、質問させるように配慮しました。私が同僚として彼女の授業を参観したとした ら、授業後に部屋に戻ってメールでいかに優れた授業実践であったか、学生から高い評価を受けている 理由がわかったなどとコメントするでしょう。もちろん、野田教授はこのメールを自身のポートフォリ オに同僚からの評価として含むこともできます。これは良い例の場合ですが、逆の悪い例の場合もあり ます。たとえば、教員が学生のことを配慮せず、一方的に授業をしたとします。この場合、授業参観者 は授業では学生との関わりが重要であることを指摘してあげることができます。これなど、同僚教員に よるメンターリングの重要な機能だといえます。これもポートフォリオに含むことができます。この場 合、同僚からのメンターリングを受け、どのように授業改善に繋がったかの説明が含まれていなければ なりません。その他にも名誉や受賞(Honorsand awards)、ティーチングに関して招聘された発表者や 寄稿者(Invitationsto presentorpublish on teaching)、さらに教員から要求されたものでなく、同僚 が優れた教育業績であると認めて自発的に書いた手紙(Unsolicited letters)なども「他者からの情報」

として証拠資料に含むことができます。

 最後が、実際の「学生の学習成果(Products/OutcomesofStudentLearning)」(図7参照)です。こ れは重要で決定的なものとなります。これには多くのものが含まれます。学習前後のテスト結果

(Pre/posttestsoflearning)を比較することで学習成果の違いを示したもの、教室アセスメント活動

(Classroom assessmentactivities)を通して学生の学習変化を表したもの、試験、プロジェクト、実験 レポート、さらに、卒業生アセスメント(Alumniassessments)、そして学生のラーニング・ポートフォ リオ(Learning Portfolios)も教員のポートフォリオのなかに学生の学習成果の証拠資料として含むこ とができます。

 次の二つのスライド(図8と図9参照)は、時間がないので詳しく説明できませんが、ティーチング・

ポートフォリオの内容がどのようなものか目次で示したものです。これまで述べた3つの情報源のなか からティーチング・ポートフォリオを構成(Organize)します。重要なことは、2つの部分からなり、

前半が説明(Narrative)の部分で、後半が付録(Appendix)の証拠資料で構成されていることです。

(参考のために、パワーポイント資料の目次の翻訳を以下に追加します)

目次

(1)ティーチングの責任に関する記述

(2)授業哲学(ティーチング・フィロソフィー)の省察的な説明記述

(3)効果的ティーチングのための有効な教授法や戦略

(4)学生評価および書状

(5)授業実践を観察や教材と学生の作業を査定した同僚評価と書状

(6)学科長および他の管理職者によるティーチングアセスメントの意見書

(7)代表的授業シラバス、課題、試験、ハンドアウト、ウェブ教材の詳細

(8)学生の学習の具体的な作品:試験、プロジェクト、ラーニング・ポートフォリオ、学生の 学会での発表や刊行物、コメント付エッセイ草案、学生インターンシップの成功例や教員 のティーチングに繋がる専門的業績の証拠

(9)教育賞および認定書

(10)教育目標:短期的および長期的な視点、学部および大学戦略への貢献度

(11)付録

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 たとえば、最初の「ティーチングの責任に関する記述(Description ofTeaching Responsibilities)」、

「授業哲学の省察的な説明記述(Reflective StatementofTeaching Philosophy)、そして「効果的ティー チングのための有効な教授法や戦略(SuccessfulMethods,StrategiesforEffective Teaching)」は、ス ライド(図5参照)「自身の情報」で述べたことです。このように3つの情報源のなかから、必要に応じ て、項目を立て説明するだけです。ここで掲げたのは、あくまでも事例であって自由に組み立てること ができます。

 次のスライド(図10参照)「考慮すべき質問(Questionsto consider)」は、参加教員の「省察」部分 となります。これから、メンターとメンティーが相互に質問しあうメンターリング・セッションで役立 つかもしれません。たとえば、「なぜ、ティーチング・ポートフォリオは価値があるのですか(Why are Teaching Portfoliosvaluable?)」どのように教員の教育実践に繋がったか。「なぜ、省察が重要なのです か(Why isReflection important?)」どのように新しい教育の重要性(Dimension)が教育実践に加わっ たのか。「なぜ、証拠にもとづいたアセスメント /評価が決定的なのですか(Why isauthenticassess- ment(evidence)critical?)」学生の個人的なことでなく、実際の成果がなぜ重要なのか。「なぜ、メン ターリングが重要なのですか(Why ismentoring essential?)」。これからメンタリング・セクションに 入ったら、相互作用 (Interaction)に注意を払ってください。一人で研究室にいてはできない多くのこ とを学ぶことができるはずです。

 次のスライド(図11参照)は、動画投稿サイト「ユーチューブ」の短編映像からのものです。これ は、「空中で飛行機を組み立てる(Building Airplanesin The Sky)」と題するもので、このビデオを紹 介する目的は、その滑稽さを「笑って」もらうためですが、同時に、この映像から、なぜ、「省察させる

(Engage reflection)」ことが重要かを考えてもらいたいからです。教員は多忙で専門的な技術・技能を 備えた教育実践者であるにもかかわらず、なぜ、学生との関わりを省察しなければならないのか。この ビデオは、その回答を「滑稽な方法」で示唆してくれるでしょう。(ビデオ内容は省略)

 もし、英語のジョークを理解できなかったら、このビデオを紹介することは大きな危険を冒すことに もなるかもしれません。ビデオ・クリップの目的は何なのでしょうか。ビデオで飛行機を空中で組み立 てている多くの者は、すべて優れた技能を持ち合わせています。彼らは熟練したエンジニアです。彼ら は与えられたボルトを取り付ける仕事を完璧にこなしています。ドリルの使い方も完璧にマスターして います。彼らは、空中で飛んでいる飛行機を組み立てているのですから、熟練したエンジニアに違いあ りません。しかし、この映像から何かが欠けていることがわかるはずです。事実、映像のなかで若者が

「私のこの仕事を愛しています」と叫びながらも、何かが欠けていることに気づき、なぜ、このような仕 事をしているのだろうか、「不思議そうな顔」をした様子が映し出されていました。彼らは、自分たちの 仕事が何をするのかを良く理解しています。これは教員のみなさんと同じで、何をどのようにするかは 良くわかっています。しかし、「なぜ」そうするのかを考えることはあまりしません。

 次に、スライド(図12参照)「メンターリングの重要性(The Importance ofMentoring)」について 説明します。これからメンターリングをするうえで重要になります。なぜ、メンターリングは重要なの でしょうか。それはメンターリングがティーチング・パフォーマンスの正直な分析(Honestanalysisof teaching performance)をしてくれるからです。もし、自分自身で自らのティーチング・パフォーマン スを分析したとすれば、「すばらしい!」だけに止まってしまいます。もし、正直な評価をしたいのなら ば、自分以外の人からの分析が必要です。すなわち、他者の「目」が必要になります。それ故に、メン ターリングにおいてメンターとなる場合は、メンティーに対して「厳しい質問(Hard Questions)」を投 げかけることです。たとえば、前述の野田先生の教授方法に関連して、なぜ、教室の後部座席の学生に まで質問を投げかける必要があるのか。なぜ、無視しないのか。その意図はどこにあるのか。どのよう な教授法を取ろうとしていのか。その逆もあり、なぜ、後部座席の学生を無視するのか、どうして学生 に語りかけないのかなどの質問をメンターはメンティーに投げかけることもできます。そのようなメン

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ターリングのなかで「正直な回答」を引き出すことができます。

 スライドの画面で他にもメンターリングの重要性をあげていますので、後で読んで参考にしてくださ い。しかし、次の「説明部分と付録間の一貫性を確実にする(Insurescoherence between narrative and appendices)」に焦点を当てたいと思います。メンターは、必ず、本論の説明部分の記述と付録部分の証 拠資料が一致していることを確認する必要があります。たとえば、説明文で「パワーポイント・スライ ドを教室で使用することで学生の学びが深まった」というような記述があったとすれば、そのことを裏 づける証拠資料が付録のなかになければなりません。これはメンターの仕事です。すなわち、本論で述 べたことが付録で裏づけられ一貫したものであることを確認するのがメンターの役割です。

 次は、スライド(図13参照)「誰がメンターになるか(Who isthe Mentor?)」ということで、誰がメ ンターとなるかということです。この FDワークショップでは、すでにメンターとメンティーが事前に 振り分けられていますが、実際はとても精巧かつ柔軟な(Sophisticate and Flexible)ことです。たとえ ば、メンターとメンティーが一対一、一対二あるいは一対三の場合、また、メンターとメンティーが同 等の立場やメンターの地位(Rank)が高い場合、逆に低い場合もあります(これはきわめて挑戦的です が、不可能なことではありません。若い教員が先輩教員に新しい技術的なことで提言することは決して 不可能なことではありません)。職位(Position)が異なる場合もあります。准教授が教授にメンターリ ングすることもあります。このようにメンターリングはいろんな形態を取ることができます。互いに チームを作る気持ちがあれば、どのような形態でも成功します。私がメンターリングで最も心がけてい ることは、異なる専門分野(DifferentDiscipline)のメンターを選ぶということです。たとえば、私の 専門は英文学ですが、同じ英文学の教員がメンターになることを希望しません。それよりも地理学、化 学など分野の異なる教員がメンターになってもらいたいと思っています。なぜなら、自分の「専門分野」

ではなく、ティーチングについてメンターリングしてもらいたいからです。そこでは方法論や授業哲学 に焦点を当てるべきです。専門分野以外のメンターを選ぶことは価値あることで素朴な疑問が深い省察 に繋がります。専門分野だとどうしても専門のことに偏り、内容の善し悪しに限定されがちです。これ は私の個人的な好みです。もちろん、ピーター・セルディンも同じだと思います。教員は、同僚教員の なかから幅広くメンターを選ぶことができますが、自分の大学以外からもメンターを選ぶことができま す。とくに、外部からのコンサルタント(Outside Consultants)は有益です。なぜなら、弘前大学との 関わりがないので客観的な視点(Objective Perspective)からメンターリングしてもらえるからです。た とえば、もし、私が皆さんのメンターだとしたら、そこでのメンターリングは純粋により良い教員に なってもらうためのものになるでしょう。なぜなら、弘前大学の政策(Politics)に関係がないからです。

外からの客観的な分析は価値があります。このような理由から、ピーター・セルディンや私は他大学で 多くのメンターリングを頻繁に行っています。メンティーである教員もわれわれを信用して心を開いて 多くのことを話してくれます。これもわれわれが部外者だからできることです。外からのコンサルタン トは客観的な視点に立つのでメンターリングの内容も深い(Depth)ものになります。何よりもコンサ ルタントとして豊かな経験(Experience)を有しています。

 説明はこれくらいにして、これからメンターリングをはじめたいと思います。どのようにティーチン グ・フィロソフィー(授業哲学)を構築すれば良いかを考えます。私の豊富な経験から、ティーチング・

ポートフォリオで最も難しく、挑戦的なものがティーチング・フィロソフィーです。教員は自分がどの ようなことをやっているか記述することは簡単ですが、なぜ、そのような方法でやっているかを尋ねら れると簡単には答えられません。ティーチングやラーニングにどのような信念をもっているか重要な鍵 になります。そのことを理解してもらうために簡単なワークショップを行います。これから紹介するの は、「類似(Analogy)」ということです。これは、ティーチング・フィロソフィーを考えるときの練習 になります。たとえば、スライド(図14参照)は、「ティーチングとはラーニングのことである。○○

が○○であるのと同じように(Teaching isto Learning as    isto    .)」です。隣同士で意見

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を共有してください。そして、なぜ、そうなのかも尋ねてください。多様なモデルが考えられます。参 加教員から、“Teaching isto Learning asCoaching isto Knowing”(ティーチングとはラーニングのこ とである。コーチングが知ることであるのと同じように)という意見が出された。コーチングは、ファ シリテイティングのことで、コーチは運動選手に道具(Tool)やサポートを与えられるだけであること を知ることで、後は、選手が自ら伸びていくのです。これは、学生の学習においても同じことで、教員 は学生が学べるようにファシリテイトしてあげるだけで、学生に学びの道具を与えるだけです。別の表 現をすれば、「ティーチャーとはコーチのことである」ということになる。私の経験から、次のようなこ とも聞いたことがあります。たとえば、“Teaching isto Learning asSpanking isto Obedience”(ティー チングとはラーニングのことである。尻をたたくことが従順にすることと同じように)です。これは、

前述とは異なるモデルです。その他にも、“Teaching isto Learning asWatering Plantsisto the Plants to Grow”(ティーチングとはラーニングのことである。植物に水を与えることが植物を育てることであ るのと同じように)は異なるモデルです。権威的なもの、コーチング的なもの、育成的なものなど異な るモデルがたくさんあります。この練習は、メンターリングで行き詰まったときに活用することで、ヒ ントやきっかけを作り円滑な会話に繋げられます。

 アメリカの多くの大学のウェブサイトにティーチング・ポートフォリオに関して紹介しているので参 考にしてもらいたいが、次のスライド(図15参照)は、そのうちの一つオハイオ大学のものです。この ウェブサイトでは、どのようにティーチング・フィロソフィーを構築するかについての項目もあります。

教室で教えるだけでなく、教育について何をどう教えるか省察することが重要です。教員は、新しい方 法を取り入れるというよりも、自分が教わった古い方法で教える傾向があります。世界中の多くの大学 のウェブサイトでティーチング・ポートフォリオについてみることができます。とくに、オーストラリ アやカナダではティーチング・ポートフォリオが義務づけられています。香港大学でも同じような活動 がウェブサイトで見られます。

 最後のひとこと(FinalThoughts)ですが、スライド(図16参照)からもわかるように、優れたティー チングとは、省察 +証拠 +メンターリング(Reflection + Evidence + Mentoring=Good Teaching)と いうことです。それだけではありません。最も重要なことは、優れたティーチングとは優れたラーニン グと同じということです(Good Teaching=BetterLearning)。

(文責 土持ゲーリー法一)

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参照

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