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高等学校教科「情報」における情報モラル教育の変化と課題

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1.はじめに

 2017 年 3 月に戦後 9 度目の学習指導要領改訂がなされ、高等学校では 2022 年度の第一学年 から学年進行で実施されることとなった。次期学習指導要領1 (以下、新課程)では、小学校 でのプログラミング教育の必修化など初等中等教育においてプログラミング教育が強化される こととなり、それにともなって高等学校の共通教科「情報」においてもプログラミングに関連 する学習内容が大幅に増加するなど教育内容の見直しがなされている。

 高等学校における教科「情報」は、1998 年 8 月に情報化の進展に対応した初等中等教育に おける情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議による最終報告2 において、その学習内 容が決定づけられたといえる。最終報告において、今後の初等中等教育で育成すべき能力とし ての「情報活用能力」を「情報活用の実践力」、「情報の科学的な理解」、「情報社会に参画する 態度」に整理し、これら 3 つの観点を情報教育の目標として位置づけ、2003 年度に新設され た高等学校普通教科「情報」3 もこれら 3 観点を含む教科として出発し、2013 年度からは現行 学習指導要領(以下、現行課程)による共通教科「情報」4 として実施されている。

 情報モラル教育は、「情報社会に参画する態度」の学習範囲として実施されているが、情報 技術の進展や新しいアプリケーションソフトやサービスの登場によって学習の範囲を広げてき ている。上記の最終報告では「コンピュータに依存した社会の問題点、情報モラル・マナー、

プライバシー、著作権、コンピュータ犯罪、コンピュータセキュリティ」などを学習範囲とし て示しているが、2000 年に文部科学省委託事業としてコンピュータ教育開発センターが教員 向けに作成した「インターネット活用のための『情報モラル指導 事例集』」5 では、「身につけ

高等学校教科「情報」における情報モラル教育の変化と課題

Changes of Computer Ethics Education in ‘Information Studies’ in Senior High School and Related Problems

齋 藤 裕 美 *

Hiromi SAITOH

Keywords:Information Study, Computer Ethics Education, Course of study, Teacher-training course

* 多摩大学経営情報学部 School of Management and Information Sciences, Tama University

1 文部科学省(2018)高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)

2 情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議(1998)情報化の 進展に対応した教育環境の実現に向けて(最終報告)

3 文部科学省(2000)『高等学校学習指導要領解説 情報編』、開隆堂出版

4 文部科学省(2010)『高等学校学習指導要領解説 情報編』、開隆堂出版

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たい情報モラル」として「情報収集の活動場面での情報モラル」、「情報発信の活動場面でも情 報モラル」、「コミュニケーションの活動場面での情報モラル」、「情報機器・情報通信ネットワー クの利用全般での情報モラル」を挙げている。また、2007 年に文部科学省委託事業として日 本教育工学振興会が作成した「すべての先生のための『情報モラル』指導実践キックオフ ガイド」6 では、情報モラル教育を「情報社会の倫理」、「法の理解と遵守」、「安全への知恵」、「情 報セキュリティ」、「公共的なネットワーク社会の構築」の 5 本柱によって構成されるとし、そ の学習内容を整理している。さらに、2011 年に国立教育政策研究所が教員向けに作成した「情 報モラル教育実践ガイダンス」7 では、この 5 本柱を「心を磨く領域」、「知恵を磨く領域」の 2 領域に分類した上で学習内容を整理し直している。ここまで、情報技術の変化によって学習範 囲を変更したり、新たな学習内容が追加されたりすることはあっても、基本的に学習内容が減 少することはほとんどなかったと言ってよい。

 2013 年度からの現行課程では情報モラル教育が強化されたが、2022 年度からの新課程では 引き続き情報モラル教育を重視するとしながらも、その学習範囲や学習内容は減少しているよ うに思われる。

 本稿では、新課程で扱われる情報モラル教育の学習内容を整理し、現行課程からの変化と教 職課程における教員養成について検討する。なお、ここでは教科「情報」のうち、全生徒が履 修することとなっている共通教科「情報」のみを対象に検討することとし、専門教育を主とす る学科で履修される専門教科「情報」については扱わないこととする。

2.現行学習指導要領における情報モラル教育の位置づけ

 現行課程の基礎となる 2008 年 1 月の中央教育審議会答申8 では、それまでの普通教科「情報」

における情報教育の目標である「情報活用の実践力」、「情報の科学的な理解」、「情報社会に参 画する態度」の 3 観点は変更されていない。普通教科「情報」では、この 3 観点に基づき、情 報活用の実践力として必要最小限の基本操作の習得や情報機器活用の体験に重点を置く「情報 A」、情報の科学的な理解に重点を置く「情報 B」、情報社会に参画する態度に重点を置く「情 報 C」の 3 科目が設置されていたが、現行課程ではその 3 科目を整理し、「情報 B」の内容を 引き継いだ「情報の科学」、「情報 C」の内容を引き継いだ「社会と情報」の 2 科目を設置して いる。なお、「情報 A」は発展的解消として「情報活用の実践力」についてはそれぞれの科目 に吸収され、新しい科目としては設置されていない。

 また、現行課程は、同答申において示された学習指導要領改訂の基本的な考え方や各教科の 改善の基本方針、主な改善事項に基づいて策定されているが、共通教科「情報」の改善の基本 方針のひとつとして「情報を適切に活用する上で必要とされる倫理的態度、安全に配慮する態 度等の育成については、情報モラル、知的財産権の保護、情報安全等に対する実践的な態度を はぐくむ指導を重視する」ことが挙げられており、基本方針 3 項目のなかで学習内容そのもの に触れられているのは情報モラル教育に関する事項のみとなっている。このように情報モラル

5 コンピュータ教育開発センター(2001)インターネット活用のための「情報モラル指導事例集」

6 日本教育工学振興会(2007)すべての先生のための「情報モラル」指導実践キックオフガイド

7 国立教育政策研究所(2011)情報モラル教育実践ガイダンス

8 中央教育審議会(2008)幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)

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教育を重視するように至った要因として、2000 年頃から急速にインターネットが普及し、児 童生徒もインターネットや携帯電話などを広く、また無制約に利用するようになったこと、そ れにより青少年が関係する犯罪行為などが広く知られるようになったことなどが考えられる。

2001 年 1 月には男子高校生がいわゆる出会い系サイトで知り合った女性を包丁で刺して重傷 を負わせた事件9 が、2004 年 6 月には女子小学生が電子掲示板での諍いから同級生を殺害する 事件10 が起きるなどし、これらの事件を契機に情報モラルの重要性が認識されるようになって いったと思われる。

 そのような社会情勢の下、情報モラルを重視するとした基本方針に基づき、現行課程では「社 会と情報」、「情報の科学」のいずれにおいても情報モラル教育が盛り込まれており、それぞれ 独立した単元として扱われている。

3.次期学習指導要領における情報モラル教育と現行課程との比較

3.1 単元での扱い

 新課程の基礎となる 2016 年 12 月の中央教育審議会答申11 においても、普通教科「情報」、

現行課程に続き、情報教育の目標である「情報活用の実践力」、「情報の科学的な理解」、「情報 社会に参画する態度」の 3 観点は変更されず、そのまま堅持されている。しかし、これまでは

「情報活用の実践力」に対応した「情報 A」、「情報の科学的理解」に対応した「情報 B」と「情 報の科学」、「情報社会に参画する態度」に対応した「情報 C」と「社会と情報」といったよう に各観点別に科目が設置されていたのに対して、新課程では全ての生徒にとって必修科目であ る「情報Ⅰ」、「情報Ⅰ」の履修を前提とした発展的な選択科目である「情報Ⅱ」として設置12 され、その単元構成から現行の「情報の科学」で扱われる内容を中心に引き継いだ上で、さら に発展的な学習内容が追加されていることがわかる(表 1)。

表 1.高等学校情報科(専門教科を除く)の単元構成

9 主婦刺した容疑の高 3「まじめ、成績上位」学校側語る 朝日新聞(朝刊)、2001.1.17、31 面

10 HP 書き込みトラブル? 女児「殺すつもりだった」長崎小 6 死亡 朝日新聞(夕刊)、2004.6.2、1 面

11 中央教育審議会(2016)幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要 な方策等について(答申)

12 文部科学省(2019)『高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 情報編』、開隆堂出版

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 2016 年 12 月答申は、現行課程の課題として「・・・・・・ 情報の科学的な理解に関する指導が必 ずしも十分ではないのではないか、情報やコンピュータに興味・関心を有する生徒の学習意欲 に必ずしも応えられていないのではないか」との認識を示し、その上で「・・・・・・ 受け手の状 況などを踏まえて発信・伝達できる力や情報モラル等、情報活用能力を含む学習を一層充実す るとともに、高等学校情報科については、生徒の卒業後の進路等を問わず、情報の科学的な理 解に裏打ちされた情報活用能力を育むことが一層重要」としている。さらに、教育内容の改善・

充実として、「情報Ⅰ」では、「プログラミング、モデル化とシミュレーション、ネットワーク

(関連して情報セキュリティを扱う)とデータベースの基礎といった基本的な情報技術と情報 を扱う方法とを扱うとともに、コンテンツの制作・発信の基礎となる情報デザインを扱い、更に、

この科目の導入として、情報モラルを身に付けさせ情報社会と人間との関わりについても考え させる」とあり、情報モラル教育については、改訂の基本方針では「一層充実する」としなが らも、教育内容としては「情報Ⅰ」の導入としての扱われ方に留まっており、さらにいえば独 立した単元としての扱いもなくなっている。上述した通り、現行課程における情報モラル教育 は、「社会と情報」、「情報の科学」それぞれの科目において 1 単元ずつの扱いであるのに対し、

新課程では「情報Ⅰ」において 1 小単元としての扱いとなっている(図 1)。

図 1.新旧課程における情報モラル教育の単元

3.2 学習項目

① 学習項目数の比較

 教科全体での学習項目数を比較したい。ここでいう学習項目とは、学習指導要領の単元の内 容及び「内容の取扱い」、さらに学習指導要領とともに公示されている学習指導要領解説に示 されているキーワードを指す。情報モラルを主たる学習内容としている単元だけでなく、情報 通信ネットワークなど他の学習内容を中心とする単元の「内容の取扱い」において「触れること」

などと示されている場合も含める。すると、教科全体での学習項目数は、現行課程では 35 項 目あるのに対し、新課程では 13 項目と半数以下に減っていることがわかる。

 また、現行課程では「社会と情報」と「情報の科学」から選択必修として最低 1 科目を履修 することとなっており、仮にどちらか 1 科目のみを履修した場合であっても、「社会と情報」

履修者は 21 項目、「情報の科学」履修者は 14 項目を学習するのに対し、新課程では「情報Ⅰ」

が必修科目、「情報Ⅱ」が選択必修科目となっており、仮に「情報Ⅰ」のみを履修した場合は 10 項目の学習となる。

 学習項目数が少ないことが、すなわち学習内容として重視されていないことと断じることは

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できないが、限られた授業時数の中で学習指導要領に示された学習内容を学ぶことを考え合わ せるとやはり現行課程での情報モラル教育の扱いとは自ずと差が出てくるのではないだろうか。

② 領域別の比較

 学習項目数だけではなく、情報モラル教育の対象となる領域別に学習項目を比較した(表 2)。

ここでは、田中(2009)13 による「情報モラル教育の対象」をもとに比較することとした。田 中は、1998 年最終報告で示されている学習範囲や普通教科「情報」で扱われた学習内容に、

IT 新改革戦略や 2008 年 1 月答申で挙げられている問題領域を加え、情報モラル教育の対象と なる領域を整理している。そのため、現行課程で扱われている学習項目をほぼ網羅しており、

現行課程と新課程とを比較するのに適していると考えられる。

 領域別の学習項目を比べてみると、全体として現行課程で扱うこととなっているが新課程で は扱わないと思われる学習項目が多く、現行課程では扱っていないが新課程では扱うことと なっている学習項目は「ソーシャルエンジニアリング」のみである。「マナーの意義・基本的 性格」や「情報に関する法規・法律」のようにまとめて記述されている学習項目については、

高校生が実際に使用する検定教科書では現行課程と同様に学習項目として扱われている可能性 もあり、いまの段階では新課程における情報モラル教育は十分でないと断定することはできな い。今後、教科書に登場するキーワードや記述内容を丁寧に確認する必要があろう。

表 2.情報モラル教育の領域別比較

13 田中規久雄(2009)高等学校教科「情報」における情報モラル教育の高度化について 教育システム情報学会誌 26(1)、pp.52-58

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③ 方法別の比較

 西野ら(2006)14 は情報教育学研究会として、情報モラル教育の対象に対する「方法(アプロー チ)」によって情報モラル教育を捉え直している。西野らが指摘する通り、1998 年最終報告や 2000 年の事例集、2007 年の指導実践キックオフガイドなどで挙げられている学習項目は、対象

(問題領域)と方法(アプローチ)が明確に区別されているとはいえない部分もあり、情報モラ ル教育を方法的に体系づける必要があるとして、「倫理」、「規制」、「技術」の 3 本柱を提唱し ている。これは、情報社会の「倫理」、法律を中心とする「規制」、セキュリティの「技術」の 3 つの方法によって広い意味での社会的情報セキュリティが守られるとする考え方で、3 つの方 法をすべて動員して対象を扱うことが情報モラル教育の高度化にとって重要であるとしている。

 上述の通り、新課程の学習項目は現行課程でのそれに比して少ないことがわかったが、この 3 本柱にしたがって方法別に現行課程と新課程の学習項目を比較してみると、現行課程では「規 制」に属する学習項目がやや多いものの、「倫理」や「技術」にも偏りなく属していることが わかる(表 3)。しかし、新課程では「規制」に大きく偏っており、とりわけ「情報Ⅱ」では 倫理に属する学習項目が皆無である。

 情報モラル教育では、情報モラルに関する個々の事例を示し、それら事例から最適な行動を 学ぶことも有効な教育方法であるが、情報技術は日々進化し、新たな技術やサービスが次々と 生まれ出る状況を考えると、それだけではなく、個人の自主的な判断に基づいて自己統制が行 えるようにすることが必要である。そのような前提に立って考えた場合、情報セキュリティを 守る方法として「規制」ばかりが取り上げられており、生徒自らの「倫理」によって守る方法 が少ないのはやはり問題であると言わざるを得ない。モラルに反する行為を、法律や規制によっ て禁じられているから「しない」のではなく、自らの内的規制によって自律的に判断した結果 として「しない」ことを選択できるよう教育するためには、方法(アプローチ)としての「倫 理」に分類される学習内容を充実させていく必要があるのではないだろうか。

表 3.情報モラル教育の方法別比較

14 情報教育学研究会(2006)インターネットの光と影 Ver.3、北大路書房

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4.教職課程における情報モラル教育の課題

 新課程において、「一層充実する」としながらも単元での扱いや学習項目の数が縮小され、

また扱う領域や方法にも現行課程と比べて偏りのある情報モラル教育について、限られた授業 時数のなかでどのように教育を行うのか、どのように生徒の学びを実現していくのかについて は教員の力量や考え方などに大きく左右される。すなわち、新課程での情報モラル教育の課題 のひとつに教員養成があると考えられる。

 高等学校教諭一種免許状「情報」の取得には、「教職に関する科目」に加えて「教科に関す る科目」を 20 単位以上、「教職又は教科に関する科目」を 16 単位以上修得する必要がある。「教 科に関する科目」に定められている分野は「情報社会及び情報倫理」「コンピュータ及び情報 処理(実習を含む)」「情報システム(実習を含む)」「情報通信ネットワーク(実習を含む)」「マ ルチメディア表現及び技術(実習を含む)」「情報と職業」の 6 分野である。この 6 分野からそ れぞれ 1 単位以上を修得し、合計で 20 単位以上修得することが必要となる。

 このうち、情報モラル教育に対応する分野は「情報社会及び情報倫理」となる。「情報と職業」

分野でも情報モラルを扱うが、中心となるのは技術者倫理であり、専門教科「情報」向けの学 習内容となっている。したがって、共通教科「情報」向けの情報モラル教育については「情報 社会及び情報倫理」分野で対応することになる。

 多摩大学経営情報学部の教職課程における情報モラル教育を見てみると、「情報社会及び情 報倫理」分野として設置されている科目は、「情報倫理」、「情報法」、「経営とセキュリティ」

の 3 科目である。いずれも 2 単位科目として設置されている。3 科目のうち「情報倫理」及び「情 報法」は必修科目として設置されており、上述の「問題領域」でいえば「ネットでの人格尊重」

関連、「デジタル知的財産の保護」関連、「サイバー犯罪」関連について、また「方法(アプロー チ)」でいえば「倫理」、「規制」については教職課程の全履修生が学習することになる(表 4)。

教育職員免許法上、この「情報社会及び情報倫理」分野から 1 単位以上を修得すればよいのだ が、これら 3 科目は学部専門科目のカリキュラムとしても設置されている科目であり、経営情 報学部ゆえに充実しているともいえる。

表 4.多摩大学経営情報学部教職課程における情報モラル教育

 中村ら(2019)15 は、情報科の免許課程を設置している大学の半数で教職課程のための科目 確保に苦慮している実情を明らかにしている。特に、工学部や理学部といった純理系学部では 7 割以上の大学が苦慮しており、学部の学域との科目親和性の差が垣間見えるとしている。新

15 中村勝一、宮寺庸造(2019)教科「情報」教員養成の変化と課題 情報システム教育学会誌 36(3)、pp.169-176

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課程ではプログラミングや情報システム、データ活用、データサイエンスなど情報技術を問題 解決に活用していく学習内容が多く取り上げられており、そうした純理系学部にとっても情報 系学部にとっても学部の学域との科目親和性の観点から、今後は「情報社会及び情報倫理」分 野の科目確保に努力せず、教育職員免許法上必要とされる 1 単位、もしくはセメスター制の関 係から 2 単位以上を修得させるに留め、「コンピュータ及び情報処理」分野など他の分野の科 目によって 20 単位以上を修得させるようなカリキュラム編成を行うことも考えられる。

 また、例年、情報科の教員採用試験は半数程度の都道府県等では行われず、さらに採用試験 を実施している都道府県等でも他教科の教員免許を有することを条件としていたりなどの理由 もあり、純理系学部を中心に、教職課程において情報科の免許課程とともに他の教科の免許課 程を併設していることが多い。ひとりの学生が履修できる科目数には限りがあるため、併修教 科の「教科に関する科目」や「教職又は教科に関する科目」などとの履修のしやすさをも考え 合わせると、やはり「情報社会及び情報倫理」分野の科目の設置は最低限必要な程度に留まる 可能性がある。

 しかし、2020 年 5 月に高校生が出会い系アプリケーションで知り合った男に誘拐される 事件16 が起きたり、2018 年 8 月には民放のテレビ番組を動画投稿サイトで公開したとして著 作権法違反の疑いで高校生が書類送検17 されたりなど高校生が被害者・加害者となる事件が起 きており、また 2019 年には飲食店やコンビニエンスストアのアルバイトが食材などを使った 悪ふざけの動画を SNS に投稿するケースが相次いだりなど高校生を含む青少年に対する情報 モラル教育は喫緊の課題である。そのような状況の下、新課程での情報教育において、全高校 生が専門に情報について学習する共通教科「情報」から情報モラルの学習内容が減少している、

あるいは学習内容に偏りがあることは問題点のひとつである。したがって、新課程においても 高等学校の現場で高校生を指導する教員が情報モラル教育の重要性を認識し、限られた授業時 数のなかでも情報モラル教育を丁寧に扱うことが望ましい。

 そのためには、教職課程において情報モラル教育に関する科目群を維持し、情報科の教員を 目指す履修生が情報モラル教育の領域についても方法についても十分に学習する機会を確保す るべきであろう。

5.おわりに

 2022 年度から新課程が実施されるが、情報モラル教育の扱いについては多くの課題が存在 している。本稿では、共通教科「情報」について現行課程からの科目及び単元構成を整理し、

その上で現行課程と新課程における情報モラル教育の位置づけ、学習項目の変化を検討した。

最後に、情報科の教職課程における情報モラル教育の課題について述べた。

 情報技術が進化し、高校生を含む青少年が新しい技術やサービスに触れる機会はますます増 えていくことと思われるが、その際に自らの内的規制によって行為の是非を判断できるように するためにも情報モラル教育は一層充実していく必要があると思われる。

16 高校生誘拐容疑で男を逮捕 朝日新聞(朝刊)、2020.5.30、地方(滋賀)版 21 面

17 違法アップの疑いで書類送検 朝日新聞(朝刊)、2018.8.3、地方(埼玉)版 23 面

参照

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