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インタビュー調査を通じた人材育成ゲーム教材の開発と実践:

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インタビュー調査を通じた人材育成ゲーム教材の開発と実践:

訪日外国人飲食店利用動向調査をもとにしたゲーミング Development and Practice of Teaching Materials on Human Resource Cultivation Games through Interview Survey: Gaming Based on a Survey on Trends of Overseas Tourists' Visiting Restaurants in Japan

竹内 一真

Kazuma Takeuchi

要旨:本稿はゼミナールを通じて行われた人材育成に関するゲーミング実践である。

ゼミナールは2019年度に行われた。訪日外国人に対して飲食店利用動向を明らかに するため,インタビュー調査を行った。そして,インタビュー調査によって明らか になった知見をもとに,飲食店経営者及び従業員向けの人材育成カードゲーム教材 を作成した。カードゲームは実際に 2 日間にわたり実施し,ブースに来場した参加 者にカードゲームや運営に関する評価をもらった。カードゲームに対する評価は全 体的に高く,また,訪日外国人に対する理解も深まったことが示された。

キーワード:ゲーミング、訪日外国人、インタビュー調査

Abstract: This paper is about a gaming practice on human resource cultivation carried out through a seminar held in 2019. In order to clarify the trend of restaurant use among foreign visitors to Japan, we conducted an interview survey.

And based on the findings of the interview survey, we developed educational materials on human resource cultivation card games for restaurant managers and employees. We conducted the game over two days and asked the participants who visited our booth to evaluate the game and its management. The evaluation of the game was high in general and showed that the participants had a better understanding of foreign visitors to Japan.

Keywords: gaming, visitors to Japan, interview

1. はじめに 1.1 問題

日本は観光を一つの重要な産業の柱として位置づけるため,2007 年に観光立国推進基本 法を施行した。観光立国推進基本法とは観光立国に関する、基本理念、国および地方公共 団体の責務、施策の基本事項などを定めた法律を指す。この観光立国推進基本法を土台と して作られた具体的な計画指針が観光立国推進基本計画である。この基本計画では観光立 国の実現にむけて,国民経済の発展、国民生活の安定向上、国際相互理解の増進及び災害、

事故等のリスクへの備えなどの基本的な計画を明確にしている。

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このように政策面での後押しが進むなかで,近年,訪日外国人の数も大きく増加してい る。2019 年度の訪日外国人数は31882100人となり,昨年度よりも約 2.2%増えている。

この訪日外国人数は2010 年度の約 860 万人と比べると約 3 倍近い伸びとなっている。訪 日外国人を地域ごとに見たときにはアジアが最も多く,特に中国の割合は全体の中でも約

30%と非常に多い。また,2019 年度はラクビーワールドカップ日本大会が開催された影響

で,欧米豪からの訪日外国人の数は,2018 年度比27%増の42 4200 人となった。この ように,近年の訪日外国人は単にアジアからだけの数が伸びているわけではなく,各地域 とも全体的に増えていると言えるのである。

では,訪日外国人はどのようなことに消費をしているのであろうか。観光庁が行ってい る訪日外国人消費動向調査(2019 年度)をみると,全国籍・地域で最も支出額が大きいの が買物代で,次いで宿泊費,そして飲食費となっており,その後に交通費,娯楽等サービ ス費,その他となっている。ただし,イギリスやドイツ,フランスやイタリア,アメリカ などの欧州各国においては飲食費が宿泊費に次いで支出が多くなっているなど,国ごとに 支出項目の順位に違いが見られる。地域的に何に支出をするかということに違いはあれど も,飲食という支出項目は旅行支出の中でも大きな割合を占めているのである。このこと から,訪日外国人にとって飲食に対する期待は少なくないと言える。

この訪日外国人の飲食店利用に関してであるが,日本側からの期待の反面,訪日外国人 側から利用に関して不満も抱いていることが明らかとなっている。観光庁が 2016 年に実 施した「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート」によれば,

訪日外国人が旅行中に困ったこととして,「スタッフとのコミュニケーションが取れな い」「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」という飲食店にも通じる項目が高い値を示す という調査結果が出ている(観光庁,2016)。実際,2017 年に実施した観光庁による「訪 日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート」では多言語表示・コミ ュニケーションで困った場面として飲食店が最も高い。このように,訪日外国人は飲食店 を期待してくる一方で,日本人側の言語の問題などもあり,十分に期待に答えることがで きていない様子が見て取れるのである。

一方の飲食店側における訪日外国人の受入状況に関しても戸惑いが見られる。飲食店に 対する調査では訪日外国人受け入れに関して,「積極的に受け入れたい」と「受け入れて もよい」をあわせて 7 割以上に登っていることを示している(竹内,2014)。このように 多くの飲食店で受け入れに対して積極的な意向を持っている反面,訪日外国人に対する対 応には遅れが目立っている(竹内,2018)。従業員数 50 人以上で,外国語の商品説明等 がある企業の割合は 68%,外国語が話せる従業員がいる企業の割合は 59%と半数を超え ている。しかしながら,従業員が 50 人未満となるとどちらも 50%に達していない(竹内,

2018)。また,東京商工会議所がおこなった調査によれば,外国語対応に関して積極的に 取り組んでいくと回答した割合は 2 割前後に留まっており,飲食店のなかでも中小企業に 対する訪日外国人に対する外国語支援は求められると言えるのである(東京商工会議所,

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2014)。

ここまで見てきたように,訪日外国人が来日する一つの目的として飲食があるという点 は疑いえない。しかし,実際に日本で飲食店を利用した際にはコミュニケーションを中心 に問題があり,飲食店側でも十分に対策が取り切れていないことが見て取れよう。このコ ミュニケーションの問題は単純に注文やマナーといった面だけではない。それ以外にも訪 日外国人が何を食べたいと思っているのか,どのような外観を日本的と感じているのかな ど,より広い意味でのコミュニケーションが必要であると考えられるのである。しかしな がら,飲食店側に訪日外国人との間に言葉の壁があるため,直接やり取りをするのは難し いのが現状なのである。

1.2 目的

本稿ではゼミナールを通じて訪日外国人の飲食店利用動向調査をもとにした,人材育成 のためのカードゲーム教材の開発を行う。一般的に「プレイすることで,場所や時間を超 えたある種の世界を経験・獲得することができるもの(杉浦,2007: p. 270)」をゲーミン グと呼ぶ。ゲーミングではゲームをすることだけでなく,ゲームを作ることなどの能動的 な意味を含む(杉浦,2007)。

このゲーミングが積極的に使われている研究としてリスクコミュニケーションがある。

National Research Council (1989)によれば,リスクコミュニケーションとは「人,機関,集 団間での情報や意見のやりとりの相互作用的過程」と定義される。リスクコミュニケーシ ョンにおいてゲーミングが使われている事例として災害対応ゲーミング「クロスロード」

が挙げられよう。クロスロードでは阪神大震災対応を直接経験した係長以上の神戸市職員 を対象としてインタビューを行い,そこで得られた震災時の意思決定場面を基に作成され たカードゲームのことである(矢守・吉川・網代,2005)。このように調査からゲーム実 施,評価までの一連の過程がゲーミングの対象となるのである。

本稿ではゲーミングの知見に基づきながら,飲食店従業員や経営者がゲームを通じて訪 日外国人の飲食店利用動向を理解できる人材育成ゲームを,大学でのゼミナールを通じて 開発する。その際に,まず訪日外国人の飲食店利用動向に関してインタビュー調査を行う。

次に,インタビュー調査に基づきゲームを開発し,作成されたゲームを実際に実施,そし て評価という形で進めていく。

2. 方法

本稿で取り上げるゼミナールは 2019 年度に行われた。ゼミナールの参加者は大学 4 生の男性 7 名,女性 5名の計 12 名である。全員が 2018 年度からの繰り上がりである。

2018 年度はインタビュー法の基礎を学ぶとともに,訪日外国人に対してインタビュー実習 を行っている。

2019年度は前期に本実践の概要を伝えるとともに,12人いる学生を1グループ3人の4

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グループ名 質問番号 質問内容

1 What kind of Japanese noodle dishes would you like to eat most?

2 If you eat sweets in Japan, which do you choose?

3 If you drink alcohol in Japan, Which do you choose most frequently?

4 What would you like to buy at a food stall in Japan 5 What kind of curry do you prefer Please

1 What ingredient of food or drink would you like to spend money most in your Japan travel?

2 If you buy sweets as souvenir , what would you like to choose?

3 If you try below Matcha products , which products would you like to try?

4 What interior do you prefer when you enter Japanese restaurant?

5 What kind of Donburi(bowl dish) do you prefer?

1 Where would you like to have a dinner with your friend most frequently while staying in Japan?

2 If you eat food in Japan other than Japanese food, what country food would you like to eat?

3 How often do you drink alcohol at lunch in Japan?

4 Which one don’t you want to eat?

5 What difficulties do you feel at Japanese restaurant?

1 Before you come to Japan, what kind of Japanese food you would like to eat most in Japan?

2 What kind of sushi restaurant do you prefer?

3 What kind of building would you feel attractive if you eat Japanese food?

4 After you enter Japan, what kind of café would you like to go at first?

5 What kind of Ramen do you want to eat in Japan 1

2

3

4

表 1 質問項目

つのグループに分けた。そして,訪日外国人の飲食店利用動向調査という軸に沿って質問 項目を考え,その質問項目に沿って訪日外国人にインタビューを行った。インタビューを 実施したのは最終的にデータ分析を行い,発表を行うという流れであった。

2019 年度の後期はゲーム作成と実施に焦点を絞った。インタビューデータに沿って,各 質問項目の結果から,各グループで文献を読み,前期に取ったデータ分析に対して考察を 深めた。そして,その考察とインタビューデータをもとにカードゲームを作成した。作成 したカードゲームは学園祭において一般の来場者に向けて実施し,質問紙を配布・回収し た。最終的にすべてのゲームに対する評価を分析し,レポートを書くという流れであった。

このように 2019 年度は前半にデータ収集・分析を行い,後半にカードゲーム作成とゲ ーム実施・評価を行った。

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図 1 質問項目に写真と選択肢をつけたもの

3. 調査

3.1 質問項目作成

インタビューにおける質問項目は各グループが訪日外国人の飲食店利用動向という観点 から相互のグループで質問が重ならないように 5 つずつ決め,その選択肢となる写真と一 体となった質問カードを作成することを目標とした。計 4 グループあるため,最終的には 20個の質問項目が決まり,それがカードゲームの土台ともなる。

最初に学生 1 人につき 10 個の質問項目を英語と日本語セットで考えさせる。その際に 食事内容という側面だけでなく,サービス,外装,内装,食習慣など多角的に考えさせた。

観光庁が行っている消費動向調査をはじめ,多数の類似する調査があるため,学生にはで きるだけ独自性が際立つものや既存の調査をさらに深めたものを質問項目としていれるよ うに指示をしている。

次にグループで各自が考えた質問項目を紹介させたあと,どの質問項目をグループのな かで選ぶかを考えさせ,提出を求めた。そこで,グループによって選ばれた 5 個の質問項 目と残りの質問項目をもとに,できるだけ学生の選んだものを生かしながら,教員側で調 整を行った。このようなプロセスを踏まえて決まった各グループ 5 個の計 20 個の質問項 目が表1である。

この 20個の質問項目に対してそれぞれ4 つから6 つの選択肢を決め,訪日外国人にと って視覚的にわかりやすいように写真をつけた。その上で,質問文,選択肢,写真をカラ ー印刷したものを表に,裏側には表面のモノクロ印刷したもの A3 サイズの模造紙に貼り 付けた(図 1 参照)。こうすることで,学生は質問文と選択肢,写真がついた模造紙をも

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ちながら質問を行えるようになる。

調査に慣れておらず,かつ母国語ではない言語で実施するという点から,インタビュー の負担を減らしながらも調査を実施できる状態に向けていくための工夫が必要となる。そ のため,このようにすることで学生が手に模造紙を持ちながら質問をするため,英語力に 不安があっても,最低限インタビューイーが質問を理解し,選択肢を選ぶところまではた どり着けるのである。

3.2 インタビュー調査

インタビュー調査はグループごとに行動し,1人あたり8組,各グループ合計24組の訪 日外国人に対してインタビューを実施した。インタビュー協力者は 1 人に対して行うこと が望ましいが,グループに対してインタビューを行うことも許可している。その場合は一 人一人にすべての選択肢とその理由を聞くようにした。グループでは 1 人がインタビュー アーとなり,もう1人が録音,最後の1人はインタビューサポートという形で役割分担を 行った。実際のインタビューではインタビューアー,録音,インタビューサポートという 役割を入れ替えながら行い,最終的に目標数を達成できるように進めた。

各グループは分かれて新宿駅近辺の訪日外国人に人気の観光地,新宿御苑や歌舞伎町,

都庁などでインタビュー協力者を探した。英語でのインタビューとなるため,インタビュ ー協力者は必然的に英語話者に限られる。ただし,英語話者であれば地域,出身国は問わ ずにインタビューを実施している。またインタビュー協力者に協力を願い出る際には,拒 否したとしても無理強いはしない,一人 5 分程度の時間がかかることを伝えるなど,イン タビュー協力申込時のガイドラインを事前に作成しておき,英語で協力者に伝えるように 指導している。

インタビューではインタビューアーが模造紙に書かれた質問文と選択肢を伝えながら,

インタビューイーが答える。その際に選択肢をただ答えてもらうだけではなく,必ず理由 を聞くように伝えている。インタビューアー全員が英語を聞き取り,答えられるわけでは ないため,グループのメンバーが代わりに訳したり,インタビューイーからの質問に対し て代わりに答えたりするということを認めている。

最終的に 1人当たり 8 人,各グループ 24名を全グループが達成できた時点で終了とな った。このような形でインタビューを行った結果,計 120 人へのインタビューを実施する ことができた。地域別で見ていくと,最も多いインタビュー協力者がヨーロッパで計 48 人,次いで北アメリカ47人,オセアニア16人,アジア4人,ユーラシア2人,アフリカ と南アメリカが同数で1人ずつであった(未回答1人)。また,訪日目的別に見ていくと,

ビジネスが24人,レジャーが77人,留学が8人という内訳であった(未回答が 11人)。

3.3 データ分析

データ分析は各自で行ったインビューデータの文字起こしから始めた。文字起こしでは インタビューイーの質問文を読むところから最後にインタビュー協力の御礼を伝えるとこ

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ろまで原則すべてのインタビューデータを英文で文字起こしさせた。全ての発話内容を文 字起こしする一方で,インタビューアーが選んだ番号に関しては英語のトランスクリプト とは別に抽出した。

英語が聞き取れないところや何を言っているかわからないところなどは空白にさせてい る。まずインタビューを行った本人が自分のインタビューデータを文字起こししたのちに,

グループメンバーでデータを入れ替えて別の人の文字起こしを確認する。最終的にグルー プメンバー全員のインタビューデータを確認したのち,どうしても聞き取れない不明個所 に関しては教員も確認し,補っている。

このようにして文字起こしした質的データと,インタビューイーが選んだ選択肢の番号 に関する量的データの分析を行った。まず選択肢の番号に関する量的データはエクセルを 使って記述統計を出した。また,地域や国あるいは年齢層ごとに選択肢の選び方に違いが ないかなど多角的に検討をした。このような選択肢をもとにしたデータ分析を行った後に,

なぜ選び方の違いが生じたのかということに関してインタビューで行った質的データをも とに分析を深めた。

ここまで得られた量的データと質的データの分析によって得られた結果をもとに,学生 は発表を行った。発表はグループごとに行い,グループメンバーは最初にグループ全体の インタビュー協力者の出身国や訪日目的などを示し,その後,グループメンバーがインタ ビューした訪日外国人のインタビュー結果を報告し,最後に結果に関して各メンバーが考 察を加えるという形で行った。

4. ゲーム教材開発と評価 4.1 ゲーム教材開発

2019 年度前期に実施した調査をもとに,訪日外国人利用動向に関して,ゲームを通じて 知ることができる教材を作成した。できるだけシンプルに,そして,グループで楽しめる ゲームを作成するという方向性のもと,大枠は教員が定め,学生は細かな部分に関して決 定するという形で進めた。

まず,前期に実施したデー分析はあくまでインタビュー協力者の質的なデータに基づい た分析であっため,その知見を裏付ける文献調査を行った。各質問項目に対して,訪日外 国人の回答傾向に関してヒントとなるような文献を,ある程度教員から指示し,学生にま とめさせる作業を行わせた。もちろん,文献に関して学生自身が探してきたものに関して はそれを否定するものではない。

次に,これまで得たデータと調査をもとに,カードゲームを作成した。カードゲームは 実際にゲーム参加者が訪日外国人になったものとしてグループで参加してもらう。そのう えで,インタビュー協力者と同様の,ただし日本語訳にした質問と選択肢から選んでもら う。そして,各参加者が選んだあとになぜそのカードを選んだのかを説明する。そして,

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図 2 カードゲーム問題例(左)と解答例(右)

3 カードゲーム表紙(左)とルール説明(右)

その上で裏に書いてある答えと解説を読む。最終的にもっとも多く訪日外国人の多数派の 答えを当てることができた人の勝ちとなる。

このルールに基づいてカードゲームを実施できるよう,カードを作成した。カードはま ず,すべての質問項目に対して,訪日外国人のインタビュー時に使用した質問文と選択肢,

写真というセットになったものをすべて和訳した。次に裏面には正解と解説を書いた。解 説は文献調査の結果をもとに書き,そこに部分的にインタビューで得た質的データについ ても記述を加えている。

このようにして,表側に質問文と選択肢,そしてその写真,裏側に正解と解説を記した カードが図 2 である。このような表・裏セットにしたカードを学生が前期に行った 20 の質問項目すべてに対して作成した。さらに表紙(図 3 左参照)と説明書き(図 3 右参 照)を作成し,カードホルダーに揃えることで1組のカードゲームという形にした。

4.2 ゲーム実施

ゲーム実施に際して学生は司会者として主としてゲームに関わる。司会者の役目はゲー ム進行,点数記録・計算,解説という三つの役割を担う。また,司会者は原則一人でも十 分役割を果たせるが,もし他の学生の手が空いていれば,司会者補助としてゲームに関わ

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り,盛り上げる役目を担った。

司会者の役割として一つ目が,ゲーム進行である。ゲーム進行ではルールの説明にはじ まり,グループ全員に各問題の答えとその理由を話すよう促す,問題の朗読や説明,終了 の連絡,時間管理などを行う。実際,1 回のゲームを通しで実施すると,人数によっても 違いはあるが約 30 分近くかかるため,途中で切り上げたいというゲーム参加者には要望 に応じて時間を連絡するようにした。

司会者の役割の二つ目が点数記録・計算であるが,これはゲーム参加者が実際にどの問 題で間違え,どの問題では正解したのかということを記録する。最終的にはだれが最も多 く正解を当てることができたかを計算し,グループの中で最も多く正解を当てた参加者に 景品を渡す。このように司会者は記録をする紙とペンが必要となるため,事前に用意して 学生に渡しておいた。

司会者の役割として最後が解説であるが,解説は問題の正解を伝える際に裏に書いてあ る解説を読むという役割である。しかしただ解説を読むだけではなく,各自がインタビュ ー調査で得た知見で,解説には書ききれなかった部分などを,学生がゲーム参加者に対し て披露するということを積極的に認めていた。

実際にゲーム参加者がブースに入ってきて以降の流れとしては,最初にグループごとに 机の島になっている場所に座ってもらう。次に当該グループを担当する司会者が席に着き,

カードゲームの説明を行う。そして,実際にカードゲームを実施する。そして,全ての問 題を解き終わったら,だれが一番問題を解くことができたかを発表する。最後にアンケー トに答えてもらい,終わりとなる。

このように二日間に渡ってカードゲーム実践を行ったところ,結果としてゲーム参加者 は全 30グループ計 57人になった。この中でアンケートに答えてくれた参加者は 50 名と なり,男性21名,女性27名であった(2名未記入)。年代としては10代が7人,20 28人,30代が5人,40代が2人,50代が3人,60代以上が2人という内訳であった。

平均±S.D.

事前説明はわかりづらかった 1.66±1.21

事前説明は聞き取りづらかった 1.62±1.18

会場の温度は適温であった 3.92±1.38

会場は居心地が良かった 4.34±0.96

担当者はフレンドリーだった 4.48±1.15

2. 運営に関する質問

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平均±S.D.

ゲームを通じて訪日外国人のことを理解できた 4.38±0.57 ゲームは訪日外国人の飲食店利用動向を知るのに有益であった 4.5±0.46

ゲームは難しかった 3.76±1.29

ゲームの内容が理解できなかった 1.73±1.53

ゲームを楽しむことができた 4.74±0.2

ゲームを通じて人との交流をした 4.26±0.93

3. ゲームに関する質問

4.3 ゲーム評価

アンケートでは大きく運営に関する質問とゲームの質問に分けて実施した。運営に関す る質問や説明や会場の室温,居心地のよさや親しみやすさなどを尋ねた。一方のゲームに 関する質問はゲームの難易度や訪日外国人の理解の深まりなどを尋ねている。アンケート 5件法で聞いている。

まず運営に関する質問であるが,結果は表 2 のようになっている。「事前説明がわかり づらかった」ついては平均 1.66,「事前説明は聞き取りづらかった」については平均 1.62,

「会場の温度は適温であった」については平均 3.92,「会場は居心地が良かった」につい

ては平均4.34,「担当者はフレンドリーだった」については平均4.48であった。

次にゲームについての質問であるが,結果は表 3 のようになっている。「ゲームを通じ て訪日外国人のことを理解できた」については平均 4.38,「ゲームは訪日外国人の飲食店 利用動向を知るのに有益であった」については平均 4.5,「ゲームは難しかった」につい

ては平均 3.76,「ゲームの内容が理解できなかった」については平均 1.73,「ゲームを楽

しむことができた」については平均 4.74,「ゲームを通じて人との交流をした」について は平均4.2であった。

5. 考察

本稿で作成されたカードゲームに関しては,ゲーム参加者から高い評価を得ることがで きた。このような評価を得ることができたのは大きく,わかりやすさという点と意外性と いう点があったことがあげられよう。

わかりやすさということに関しては,ゲームの説明やルールが分かりづらければ,内容 がどれだけ良かったとしても楽しんでプレイすることはできない。一方で,今回のカード ゲームのルールは,ゲーム参加者も訪日外国人の気持ちになって考えて,最も多く正解を 当てようというもので極めてシンプルであった。また,質問や選択肢は,ゲーム参加者に とっても身近なもので,老若男女を問わず参加しやすい設計になっていたことも理由とし て挙げられよう。ゲームは難しかったという項目に関して,ゲーム参加者がアンケートに おいて低い点数をつけていることからもこの点は裏付けられよう。

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次に意外性に関してであるが,だれでも正解ができるものであったとするならば,ゲー ムとしての楽しみは十分に味わうことができない。一般に,訪日外国人の飲食店利用に関 する不満に関しては英語のメニューが存在しない,英語が通用しないという点などはわか りやすく,ある程度想像がつく。しかし,日本で食べ物のおみやげを買うとしたら何を買 うのかであるとか,ラーメンは何味が良いのかなどであるとかは,訪日外国人との接した 経験や海外での滞在経験などがないとなかなかわからない。そのため,訪日外国人の回答 傾向やその解説は新鮮さをもって受け止めることができたとものと考えられる。

このように良い点もある一方で,調査の方法と,ゲーム開発の2つの点から考え直すべ き点もある。調査の方法という点に関しては,やはり英語のインタビューということに関 して,コミュニケーション面での問題が生じやすいという点を改善する必要がある。場合 によっては文字でのやり取りを認める,あるいは英語力の高い学生を柱にグループを分け るなど改善が求められる。次にゲーム開発という点であるが,一回のゲームを実施すると,

30 分以上かかってしまうという点の修正が必要であろう。もちろん,時間に余裕があるの であれば,30 分以上の時間は決して短くない。しかし,あまり時間がないが,ゲームを楽 しみたいというゲーム参加者もいることが想定されるため,30 分未満で楽しめるよう,短 縮版を作るなどの改善も必要であろう。

参考文献

National Research Council(1989) Improving risk communication. Washington, DC: National Academy Press.

杉浦淳吉(2007)ゲーミングによる協同知の生成. やまだようこ(編)質的心理学の方法――

語りをきく(pp.270). 東京都:新曜社

竹内英二(2014)「中小サービス産業におけるインバウンド受け入れの現状」日本政策金融公 庫論集,23, pp.1-25

竹内英二(2018)「どうすれば中小企業はインバウンドの増加を経営に生かせるか」日本政策 金融公庫論集,39, pp.23-38

東京商工会議所(2014)『「飲食店の収益力向上・経営力向上事業」事業報告書』東京商工会 議所

矢守克也・吉川肇子・網代剛(2005)防災ゲームで学ぶリスク・コミュニケーション――クロ スロードへの招待. 京都:ナカニシヤ出版

Received on 31 December 2020

図 1 質問項目に写真と選択肢をつけたもの  3.  調査  3.1  質問項目作成    インタビューにおける質問項目は各グループが訪日外国人の飲食店利用動向という観点 から相互のグループで質問が重ならないように 5 つずつ決め,その選択肢となる写真と一 体となった質問カードを作成することを目標とした。計 4 グループあるため,最終的には 20 個の質問項目が決まり,それがカードゲームの土台ともなる。  最初に学生 1 人につき 10 個の質問項目を英語と日本語セットで考えさせる。その際に 食事内容という

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