奈良教育大学学術リポジトリNEAR
音楽教育におけるコンピュータの利用 −現状と展 望−
著者 福井 一, 森下 修次
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 42
号 1
ページ 21‑29
発行年 1993‑11‑25
その他のタイトル Using Computer in Music Education
URL http://hdl.handle.net/10105/1695
奈良教育大学紀要 第42巻第1号(人文・社会)平成5年 lull. Nara Univ. Educ, Vol.42, No. 1 (Cult&Soc.). 1993
音楽教育におけるコンピュータの利用
‑現状 と展望‑
福 井 ‑ ・森 下 修 次*
(奈良教育大学音楽教室) (平成5年4月30日受理)
1.は じ め に
音楽や音楽教育は、歴史的に見てもその時代や社会の変化に対応して変化してきた。そうした 変化はその時代の技術力の変化と密接に結び付いていることが多かったのだが、近年のコン ビュ‑夕を中心とする情報技術の進歩に伴う音楽環境の変化はど著しいものはない.その変化の 特徴はかつてのような地域的かつ漸進的なものではなく、全世界を巻き込む広範さと、急激さを もっている。しかしその変化は音楽それ自体の変化というより、音楽を取り巻く環境(メディ ア‑media)の変化であるため、文明の洗礼をまともに受ける地域に比べ、東洋にありながら西 欧文明圏に暮らす我々日本人には気づきにくい一面をもっている。それでもCD (Compact Disk)やLD (光学式ビデオディスク)の普及、衛星放送やケーブルテレビに代表される新しい メディアの登場は我々の音楽環境を大きく変えたことは否定できない。
一方わが国の教育界では国際化と情報化が叫ばれ、特にコンピュータを中心とした情報教育が 行われつつある。ところが奇妙なことにわが国の音楽教育の分野、なかでも音楽科教育ではさほ ど目だった変化は起こっていない。もちろんニューメディア(new media)のハ‑ドやソフト は音楽の授業に利用され、種々のシンセサイザー(synthesizer)や自動演奏機能のついた鍵盤 楽器が教育現場へ導入されつつある。またコンピュータを利用した教育も一部ではあるが行われ ている。しかしそれらは分野及び利用目的が限定されており(1㌧ 欧米で行なわれているような、
コンピュータを含めた異なったメディアを有機的に結合して利用しようとする試みはほとんどな い。この原因は我が国の音楽教育界の学問的研究の遅れにある。現在、わが国での音楽教育分野 でのコンピュータ利用の研究はその緒についたばかりである。したがって数少ない実践報告(2)を のぞけば学問的研究事例は僅かであるし(3㌧ 内容的にも不十分と言わざるを得ない。これらの研 究には、音楽教育でコンピュータを何に使うのか、コンピュータを使って何をやるのか、 E]的と 方法がまったく明らかにされていないのである。海外では、 ICMC(が毎年催されていており、音 楽教育関係のセクションも設けられ、音楽教育用のシステムやソフトウェアが研究発表されてい る。海外ではすでに音楽教育とコンピュータは切っても切り放せない関係になっているのである。
学習指導要領が改定され、コンピュータを中心とした情報教育が推進されようとしている現在、
音楽教育からの取り組みがあって当然であろう。諸外国の例を見るまでもなくわが国の音楽環境 からも容易に推察できるように、今や音楽とコンビュ‑夕は表裏一体の関係にある。音楽教育だ
ホ京都市立芸術大学音楽学部
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けが一人蚊帳の外でいられるはずはない。むしろ音楽教育でこそコンピュータの有効性が発揮で きると考えている。
教育形態を外部強制的形態と自己開発的形態に分けるとするならば(5㌧ コンピュータを中心と したニューメディアは、従来のような強制的画一的教育ではなく、まさに能動的、自己開発的、
人間中心の教育をもたらすのではないかと考えられる。本論は以上の観点から、音楽教育におけ るコンピュータ利用の現状と可能性を探ろうとするものである。
2.音楽教育とコンピュータの利用
2.1音楽とコンピュータ
2.1.1情報理論・コンピュータと音楽
音楽とコンピュータとの関係は50年代のミュージック・コンクレート(music concrete)に 始まるが、現在に至る経緯は種々の文献に取り上げられているので(6)、ここではその概観にとど める。
他の芸術に比べて音楽に情報理論が適用される理由は、音楽が楽音という離散的単位から構成 され、それが時間的系列にしたがって確率的に配列されるという、数学的理由によるものである。
そのため同様のアルゴリズムをもちいるコンピュータに音楽が扱えるという発想があった.この 考え方は過去の作品を分析して音楽構造を知ろうとする研究方法と、ある作曲手続きに基づいて 作品を作り作品の性質との関係を調べる方法となってあらわれたが(7)、既成の曲を分析し、それ をもとに確率的作曲をおこなうという音楽傾向は1970年代に衰退した。その理由は機械に音楽 的構築性を持った曲が作れなかったことと、人間の耳にやさしい音色が作れなかったことにある。
そして前衛的コンピュータ音楽は下火になる。 70年代になって、実験音楽的創作活動にかわっ てシンセサイザーを中心とした音響合成が、ポピュラー音楽に取り入れられ主流を占めるように なる(8‑。そこでは従来のようにコンピュータに音楽創作させるのではなく、コンピュータを使っ て人間の音楽活動を延長しようとするヒュ‑マン・インタラクティヴ(humaninteractive)な 方向性があった。
認知心理学にあっては、記憶、理解、学習と言った認知的ないし知的行為に、感情過程が相当 大きな影響を及ぼしていることが明らかになりつつあるが(9)、 50年代から70年代のコンピュー タがく感情)を扱えなかったことが、コンピュータを用いての作曲が失敗した原因であろう。し かし、このことはコンピュータに作曲という創作行為を行わせることが挫折しただけで、コン ピュータを用いて人間が作曲するという行為の挫折を意味するのではない。したがってコン ビュ‑夕が作曲はじめ音楽のさまざまな道具として用いられはじめたのは当然であった。
2.2.2 コンピュータと音楽環境の変化
今日、あらゆる音楽ジャンルの音楽が、いつでもどこでも入手できるようになった。こうした 背景にはコンビュ‑夕を中心としたハードの普及(高性能化と低価格化)がある.前述のように 音楽自体はコンピュータによって著しい変革を受けてはいないが、 「音楽化社会」(10)という言葉 に象徴されるように音楽環境は新しいメディアによって大きく変化している。そのメディアを支 えているものはコンピュータであることは周知である。
今やマスコミから流れる音楽の90%以上は実際に演奏された音楽ではないり1)。また、演奏や
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録音などの音楽制作の現場ではコンピュータが不可欠なものになっている(12)。シンセサイザーを 中心とした多機能のデジタル楽器類が安価で提供され、それまで音楽の演奏とは疎遠だった大人 たちをも音楽の世界に引き込みつつある。すでに普及していたパソコンとの組み合わせによる新 しい音楽形態は、くパソコン少年を音楽少年に変えてしまった)のである。それは低価格であり ながらプロの使用に耐える性能を持っているため、だれもがコンピュータ音楽を楽しめるように なってきた。
コンピュータを楽器として利用することのメリットは、 1.シンセサイザーの機能の拡張(複 数のシンセサイザーを扱える) 2.操作性の向上である(録音、再生、編集、複製が容易)。な かでも最大のメリットは、音楽の技術的制約から解放されることである。例えば楽譜が読めなく てはいけない、ピアノが弾けなくてはならないなど、どのような形にせよこれまで音楽をする際、
かならず出くわすことになる技術的障害を、コンピュータを利用することによって克服すること ができる。つまりだれでも音楽を作り演奏することが出来るようになったのである。この意義は たいへん大きいと言わねばなるまい。なぜなら、これまでの音楽教育ではそのような技術的ネッ クが障害となって、多数の子供たちを音楽から遠ざけてきたからである。
コンピュータの家庭への普及にともない、今後ますますコンピュータ音楽に関わる人達が増え てくるに違いない。このような中で、音楽教育界のみがこうした問題に無関心であってよいはず はない。好むと好まざるを問わず、我々はコンピュータ音楽に囲まれている。
2.3 現在の音楽教育とコンピュータ
新学習指導要領(1989年)では、音楽科におけるコンピュータ利用を特に明記していない。
しかし、このことは音楽科での利用を制限しているのではない。学習指導におけるコンピュータ の利用は、小・中・高等学校を通じ、各教科等の特性に応じて積極的に活用することが望まれ る(13)、という記述からも分かるように、利用できる教科では積極的に利用して欲しいということ である。利用目的も児童生徒の個性・能力に応じ恩考力・創造力を高めるために用いるというこ とであるから、むしろなぜ音楽科での利用が明記されなかったかは疑問として残る。
ところで音楽教育とコンピュータとの関係を考えるとき、音楽教育におけるCAIが考えられ る(")。現在音楽教育で実践されているのは、ドリル型と個別指導型中心であり、アメリカではそ れなりの実績を上げている。ただそれらは音楽知識の受動的習得ということに中心がおかれてお り、現行の音楽教育の領域の一部を対象としているにすぎない。またCAIに対しては批判的な 意見も多い(IS)。いずれにせよ致命的なことは、現在の音楽教育におけるCAIには、能動的学習
(創造活動)を促すようなものが存在しないことである。さらに、コンピュータのシステム (‑ードウェア+ソフトウェア)自体、音楽教育に使用するうえでいくつかの問題を抱えてい る(16)。いずれにせよ、現行の音楽教育におけるコンピュータの利用には限界があると言わざるを sara
3.これからの音楽教育とコンピュータ
3.1情報化社会と音楽教育
情報化が今後加速度的に進行していくことはまちがいあるまい。それに伴い社会あるいは国の 枠組まで変ろうとしている中で、音楽だけが現在の形態のままであり続けられるかばまったく予
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憩がつかない。コンピュータの進歩、特にマンマシン・インターフェイス(man‑machine in‑
terface)が進歩するにしたがって、音楽そのものも大きく変化していく可能性は十分考えられ るからだ。
前述のように、現在コンピュータが利用されているのは、既存の音楽を表現する際のく便利な 道具)としてである。それでも音楽教育にとっては、たとえ道具としてだけでも多大な効果をも たらす。それは既述のように、技術の習得といういわば音楽にとって二義的な事柄に余分なェネ ルギ‑を取られていたことからの解放を意味するからだ。そこで今後問題になってくるのは、音 楽教育においてもっとも重要な部分である、創造性と想像性であろう。これらは今までの音楽教 育でもっとも無視され続けていた点ではあるが、コンピュータの利用により、真の創造活動が可 能になるのである。
3.2 マルチメディア化と総合化
現在から将来的に、音楽あるいは音楽教育にもっとも影響をあたえるものはマルチメディアで ある。一般に媒体や手段が多様化していることや、その状態をさすが(17)、この言葉のはっきりし た定義はまだない。しかし本や映画、美術、音楽といった既存のジャンルを越えた新しいメディ アであり、我々の生活を大きく変革することはまちがいない。すでに実用化の段階にまできてお りり8)、今後普及が始まる段階にまでさしかかっているのは周知の通りである。
マルチメディアとは複数の情報伝達手段を融合させたものであるが、具体的にはコンピュータ などを使ってグラフィックス、静止画、動画、音声、文字などの形の異なったメディアを一元的 かつ有機的に扱うものである。目指すところは、人間の知覚・認識能力を活用する情報表現のス タイルであり、人間の多層的なコミュニケーション形態を、 1つの統合された環境としてコン ピュータ上で実現するための表現技法であるり9)。この方法の優れているのは、情報がデジタル化 されているためどのようなメディアにも翻訳可能であること。システムがインタラクティブ(双 方向)であり、利用者が自らの意志で情報を主体的にコントロールできることである。したがっ てこのシステムが教育手段として優れていることは言うまでもない。メディアが文字か音声、ま れに動画が加わる程度に限られていた従来のCAIに比べ、その教育効果は絶大であり、すでに アメリカではマスコミや映画産業がこの分野にこぞって参入をしている(20)。
さらにマルチメディア教材には、あらかじめ決められた筋書きが存在しないことである。した がって学習者の興味によって、さまざまな方向へ学習が発展していくことである。音楽教育で言 えば、一つの興味から理論や歴史等、音楽のさまざまな領域を学習することが可能になり、音楽 を知識的要素の断片ではなく総合的に学べることであろう。具体例を挙げれば、学習者はバッハ の時代の音楽を自ら当時の聴衆の一人になって聞くこともできるし、ジャワのガムランを体験す ることもできる。つまりその音楽が存在した時空間へスリップすることができるので、学習者は 疑似体験を通じて生きた音楽を学習することができるのである。さらに音楽だけではなくさまざ
まな近接領域やさらにはより広い多くの学問領域の知識を同時に学ぶことができる。その意味で 学習形態は現在のような個々の教科ではなく総合的な形態になろう。このような形態では映像、
音声、文字等が一体となって提供されるため、受容者に与えるインパクトは大きい。現在すでに 音楽教育のソフトも市販されているが、今後ますます増えていくものと恩われる。この分野はソ フトも‑ードも実験・試行段階ではあるが、内容的には優れているものが多く、その教育効果が 期待される。
音楽教育におけるコンビュ‑夕の利用
イ ンタ ラ クテ ィブ . マル チ メデ ィア C D .L D ,V T R を 利 用 : 鑑 賞 中 心
コンビユ一夕 (グラフィックス) による仮想音楽環境 (鑑 賞 中心 )
限 りな く現 実 に近 い 鑑 賞体 験 、 演 奏 、創 作 体 験
仮想環境を利用した総合的音楽体験
将来のコンピュータを利用した音楽教育
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ただ現在のソフトでは演奏や作曲といった能動的作業はできないが、この点はいずれそれらが 可能なソフトも登場すると思われる。また複数のメディアを同時に扱うためにはワ‑クステー ションクラスのコンピュータが必要なため、現在のところマルチメディアが十分実力を発揮でき るハードは限られている。またインタラクティブ・マルチメディア(interactivemulti‑media) の主体となる記憶媒体では、 CD‑ROMが主体となっているようだが、まだ規格統一は十分とい える段階ではない。音楽に限らずインターフェイスはコンピュータにおいて常に問題になってき た.音楽ではまさに楽器とのインターフェイスのむずかしさが問題であったのだが、コンピュー タを用いることによってこの困難は取り除かれつつある。しかし現在存在するインターフェイス が最良のものではない。事実インターフェイスの統一的基準すらないために、操作はソフトウェ アごとに異なる場合が多い。また、マルチメディアのなかの音楽、音楽教育を指向するためには、
音声認識等、さらにヒューマン・インタラクティブなものが必要であろう。
3.3 将来の音楽教育
以上のことをふまえ、コンピュータを中核メディアとしたこれからの音楽教育システムを考え た。これらの中にはすぐにでも実現可能なこと、あるいは近い将来実現可能なことが含まれてい る。
3.3.1基本的ハードウェアとソフトウェア
音楽教育に用いられるコンピュータは、基本的にマルチメディアに対応することが前提となる。
そのためには大容量のメモリーと高速のCPU (Central Processing Unit)を持った‑‑ドで
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ヒューマン・インタラクティブなシステムソフトで作動しなければならない。その上でコン ピュータには音響ボードと画像処理ボ‑ド、マルチメディア・ネットワークを可能にする通信ユ ニットが必要である。
つぎに優れたマンマシン・インターフェイスを持っものでなければならない。今日でも音楽用 ソフトウェアはマウスで作業するものがほとんどである。コンピュータで音楽をする場合、ス テップ入力の場合を除きコンピュータ・キーボードはほとんど必要ない。コンピュータ・キ‑
ボードのかわりに、 (電子)ピアノの鍵盤、 (電子)打楽器のパッドなどの音楽キーボードや音声 でも操作できるようにすることが望ましい。入力装置はなるべく簡便で単純な方が使いやすく故 障も少ないものが理想である。また教師が自らソフトを作る場合にかかせないオーサリング・シ ステム(Authoring System)も重要になってくる。従来のオーサリング・システムはCAIだ けのものであったが、マルチメディア化にともないオーサリング・システムもマルチメディアを 扱えるものが生まれてきている。
3.3.2 近未来の音楽教育環境
インターフェイスの改良により、人間とコンピュータの直接対話ということも実現可能である。
実際にコンピュータの情報処理にニューラルネットワーク(neural network)の考え方を取り 入れ、ドラムの即興演奏の対話に成功している(21)。また光センサーや超音波距離計、さらに脳波 信号や筋電位を音楽信号に変換することにより、音楽をっくりだすことが試みられているが(22)、
それらの入力用センサ‑の前で体を動かす、あるいは思考を巡らすだけで、音楽が流れるので新 しい芸術的試みとして注目されるであろう。即興表現だけではなく、それらの入力センサー等 の機器から得られた信号をテンポ信号に置き換えれば、コンピュータ上の既成の楽曲を自分のイ メージ通りに演奏できるようになるであろう。そうすれば、実際に電子楽器に「指揮」をするこ とも可能であるし、名曲を自分なりの解釈でシミュレーションすることも可能である。
さらに近い将来には、あらゆる音楽環境を再現、合成、操作、創造し、それを体験できる空間 を人工的に作りだし、人間がその環境空間を仮想的に体験することも可能になろう。これは3.2 で述べたマルチメディアより更に進んだ音楽体験を提供することになろう。この分野ではMIT (米マサチューセッツ工科大学)のメディア・ラボが一つの方向性を示しているが23㌧ 現在研究 が急速に進んでいるヴァーチュアル・リアリティ(Virtual Reality)はより進んだ仮想体験空 間を提供するだろう。このシステムは人間の視覚、聴覚のみならず触覚をも利用して非現実の体 験をあたかも現実のように体験することが出来る。近未来的には教室はシミュレーション・ルー ムに姿を変えるだろう。
4,ま と め
本論では音楽、音楽教育とコンピュータに代表されるニューメディアとの関わりを考えてきた。
既述のように、現代のコンピュータはよりインタラクティブに、より人間にちかづいてきている。
またハードの進歩とヒューマン・インターフェイスの改良により、コンピュータを中心にした環 境はマルチメディアからヴァ‑チュアル・リアリティ(仮想現実)、更にはヴァ‑チュアル・エ ンヴァイオメント(Virtual Environment:仮想環境)へと進化するであろう。当然、音楽環境 も著しい変遷を見せるに違いない。これに伴い、音楽自体も変化していく可能性もあるし、未知
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の音楽体系が誕生する可能性すら誰も否定できない.山本mは学校音楽と社会の音楽とのずれを 挙げて、音楽教育の現状を批判しているが、音楽環境がニューメディアにより急激に変化してい る今、このままでは、そのずれはますます増大し、学校音楽教育にとってとりかえしのつかない 事態になりかねない。コンピュータ音楽の現状を認識し、音楽教育でのコンピュータ利用や CAI、及びマルチメディア環境による音楽教育の総合的研究を早急に始めるべきであると考える。
注および文献
(1)シンセサイザー等は既存楽器の代用として用いられている。またコンピュータはおもに譜面作成に用い られている。
(2)例えば次のような文献が挙げられる。
降矢美禰子̀̀光センサーとシンセサイザーによる身体表現‑福島大学附属小学校の試み‑"教育音楽 (小学校版)、 9月号、音楽之友社、 1990
(3)例えば次のような文献が挙げられる。
森田信一"音楽教育におけるCAIの試み"季刊音楽教育研究 44号 音楽之友社1985
森田信一"創作教育への即興的な要素の導入と評価"季刊音楽教育研究、 64号 音楽之友社1990 森田信一"創作による音楽表現への一考察"季刊音楽教育研究72、音楽之友社1992
奥野かおり"鍵盤和声学の実践における、シーケンサー(ミュ‑ジックコンピュータ)の活用" E]本 音楽教育学会第21回研究発表会、 1990
太田正清"音楽学習におけるコンピュータ活用への試み(0(2)"日本音楽教育学会第21, 22回研究 発表会、 1990、 1991
江守幸一"音楽教育とパソコンー今、パソコンで音楽、何ができる? ‑"教育音楽(小学校版) 1月 号 音楽之友社1990
(4) International Computer Music Conference
(5)端山貢明"ニューメディアと音楽教育の展望"音楽芸術1984
(6)例えば竹田明倫"コンピュータ音楽"音楽大事典 平凡社1988 Kassler, M. etal. Computer and Music, Grove Die. of Music and Musicians, Vol. 4 1980. Flammarion, P. et al. Electoronic Pioneers, The Instrumentalist, June 1987. Meyer, L. Emotion and Meaning in Music, The Univer‑
sity of Chicago Press. 1956
(7)佐川忠男 音楽の知覚 誠信書房1985
(8)古山俊一 はじめてのシンセサイザ‑ 講談社1988 (9)往住章文"感情と感情理解の計算モデル"数理科学1987 (10)小川博司 音楽する社会 勤葦書房1988
(ll)日経パソコン 8月14日号 日経BP社1989
(12)コンピュータ・ミュージックマガジン 電波新聞社1987
(13)浅見 匡"情報教育とコンピューターリテラシー"朝acaiシンポジウムリポート1988
(14) CAI (Computer Assisted Instruction)とはコンピュータ支援による教育であるが、それはあくまで も教育におけるコンピュータ利用の一形態である。したがって、従来行われてきたCAIが教育における コンピュータ利用の全てではないことを理解しておかなければならない。なぜなら筆者らは音楽教育に おいては、むしろ異なった形態のシステムが必要と考えているからである。 CAIは個別的学習というこ とを念頭においている。それは以下の5つに分類される(長尾 真 他 情報科学辞典 岩波書店 1990)。 1)ドリル型(drillandpracticemode)、 2)個別指導型(tutorialmode)、 3)コンピュー タに問題や説明を要求する問い合わせ型(inquiry mode)、 4)ゲームシュミレーション型(game and simulation mode)、 5)問題解決型(problem solving mode)。
05)たとえば浜野保樹 ‑イパーメディアと教育革命 アスキー出版局1990
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(16)コンピュータやシンセサイザーを学校の授業で使用するさいの最大の問題点は、操作が初心者には難し すぎる点であろう。現在市販されているものは、接続やソフトの立ち上げがすでに初心者にとって難解 なものが多い。それらは現在最も普及しているDisk Operation System (‑DOS)が大型コンピュー タの焼き直しのようなシステムで、コンピュータのマニアや機械好きの人ならともかく、コンビュ‑夕 に仕事をさせることだけが目的の人にとっては使いにくい。これらは「音楽教育」以前の問題である。
楽器の操作が不得手な子供が音楽嫌いになるように、こんどは機械の苦手な生徒を音楽嫌いにする可能 性さえある。加えて、いままでの音楽関連機器より、高度で複雑な現在のシステムのコンピュータシス
テムでは、現場での保守・管理は困難である。
現在の音楽用ソフトは、作曲(入力、演奏)十エディタ(編集、音色)、譜面作成、教育(楽理、ソル フェージュ)に大別されるが、そのほとんどが音楽教育用に作られたものではない。ただ、それらの中 には工夫次第で音楽の授業に応用できるものも多い。しかし、それらを用いた教材製作には、ある程度 のコンピュータの知識が必要な上、かなりの手間と時間がかかるので、実際の教育現場での使用は大変 困難である。
(17)マルチメディアという言葉はよく使用される割には定義がはっきりしない。そのあたりの事情は以下の 文献に解説されている。
坂村 健"業界標準とマルチメディアを考える"。石井裕"消費されるラベルとしての「マルチメ ディア」" COmputertoday 5月号 サイエンス杜1993
(18)松原敦、本間健司"見えてきたマルチメディアの実像''日経バイト5月号 日経BP社1993 (19) "マルチメディア国際会議'90に見る今と近未来のマルチメディア環境" MAC+ 12月号1990 (20)注11参照
Nishiiima, M. et al. Learning on sense of rhythm with aneural network‑The neuro‑drummer‑
The first international conference on music perception and cognition (proceedings) 1989 Benjamin, R. et al. A bioelectric controller for computer music applications Computer music jounal MIT press Vol. 14 No. 1 1990
Brand, T. The media lab. Viking Penguin Inc. 1987
(24)山本文茂 音楽教育の課題と将来への展望 子供と音楽 同朋杜1987
・>l)
Using Computer in Music Education
Hajime Fukui and Shun Morishita
{Department of Music, Nara University of Education, Nara 630, fAPAN) (Received April 30, 1993)
The arrival of "new media" has been causing a precipitous change on the music en‑
vironment today. It is music that is made and performed by using computer, that pro‑