の効果
著者名(日) 石井 雅幸, 矢野 博之, 鈴木 映子
雑誌名 大妻女子大学家政系研究紀要
巻 48
ページ 47‑56
発行年 2012‑03‑03
URL http://id.nii.ac.jp/1114/00001806/
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止
・ 47
大妻女子大学家政系研究紀要─
第 48 号(2012.3)
小学校における放課後教室での牛乳提供の 実践とその効果
石井雅幸1)・矢野博之1)・
鈴木映子
2)1)大妻女子大学家政学部児童学科,2)千代田区立千代田小学校
Evaluation the New Method of Milk
-supply on the After
-school Class in Elementary School Masayuki Ishii, Hiroshi Yano and Eiko Suzuki
Key Words :
牛乳,小学校,放課後教室要旨
放課後の待機児童の増加が問題となる今、教育行 政では公立学校の施設を使っての放課後教室等の実 施によって待機児童の軽減を試みてきている。こう した中で、夕方遅くまで小学校に残り、帰宅しても 夕食までの時間が長い児童の実態が浮き彫りになっ てきている。その中にあって、放課後これまでより も遅くまで小学校に残る児童に牛乳を提供すること によって、帰宅後の児童の空腹を少しでも抑えるこ とができることが想定される。そこで、放課後教室 から帰宅する直前に牛乳を提供した際の児童の空腹 状態や意識を調査した結果、以下のような放課後に 児童に牛乳を提供する意義や課題が見いだされた。
(1) 放課後教室での牛乳提供の方法が明らかに なる。また、指導員の役割が重要である。
(2) 放課後に牛乳を飲んだ児童は、普段に比べ て帰宅後の間食の量が減る傾向があった。
1 問題の所存
学校給食法において学校給食では、牛乳を飲ませ ることが義務づけられていた。近年、文部科学省 は、「強制でも義務でもなく、牛乳を提供すること が望ましいが、カルシウム等、栄養面の確保が出来 る場合は、その限りではない」(平成
20
年度文部科 学省調査)と述べている。また、学校現場に目を向けると、以下のような声 が学校栄養職員や教員から聞かれる。
(1) 小学校において、牛乳は夏場はおかわりを 求める児童が多い。しかし、冬場になると、牛乳の 残さいが多くなる(月別の残菜調査より)。
(2) 牛乳が苦手、ないし、アレルギー等で飲め ない子どもが増加する傾向にある(アレルギー調査 の結果から)。
(3) 飲みたくない児童と飲ませたくない保護者 の増加傾向が見られる(アレルギー調査を行い、保 護者の意見を受けての給食担当教員の意見)。
一方(社)全国牛乳普及協会が
1999
年に出した『カルシウム その基礎・臨床・栄養』の中で、日 本人の食習慣にかかわる栄養の補給について以下の ような記述がある。
・日本型食生活及び、常備菜・総菜等、食の伝承 が途切れ始めた現在、小魚や海藻・野菜類で必 要なカルシウム量を確保するのは、厳しい。
・骨粗鬆症が原因による骨折から、寝たきりにな る高齢者が増えている。
その上、義務教育を終了した段階の高等学校の生 徒は、牛乳を飲む習慣がなくなる傾向がある。
以上のような学校給食で牛乳にかかわる学校教育 上の問題がいくつか指摘されているとともに、食育 の重要性が言われる今、食育の観点から考えると以 下のような子どもを学校教育の中で育てていくこと が求められるといえる。
(1) 子どもがどの食品がどれだけ必要かを知 り、1日の食品摂取バランスを自分で考えることが できる能力をもつ。
(2) 子どもが自分の体にあった食習慣を身につ けて実行できる能力をもつ。
(3) 子どもは、成長期にカルシウムをとること が生涯の骨量を高める要因になることを認識し、積 極的にカルシウムをとる食習慣を身につける。
こうした状況の中で、新しい学習指導要領が平成
20
年に告示され、その中にあっても学校教育にお48 ・
ける食育の大切さが強調されている。
筆者らは、平成
18
年度から試行的に小学校で、中休みに牛乳を提供する取り組みを行ってきた。そ の中で、牛乳をおいしいと感じるときに飲む機会を 学校教育の中に作ることが大切と考えてきた。そこ で、同様に牛乳を子どもたちが飲む機会を意図的に つくることができないかと考え、近年、問題となっ ている放課後の待機児童に目を向けてみた。
放課後の待機児童の数は年々増加傾向にあり、各 自治体も様々な手立てを講じてきていることが報告 されている(山崎
2007)。その中で、各小学校の施
設を活用した放課後教室が取り組まれてきている。そこで、この放課後教室での牛乳提供を行い、牛乳 を飲む機会を子どもがより持つことができるように した。そこで、児童の姿を見ることを通して以下の 目的にせまろうとした。
2 研究の目的
本研究では、小学生を対象にして牛乳への嗜好性 を高める指導のあり方を模索する。そのために、学 童期に牛乳がおいしいと感じるときに牛乳を提供す ることにより、牛乳への嗜好性が変化するのかを知 ることが目的である。そのために、放課後教室での 体を動かす活動後に児童が牛乳を飲む機会をつくる 取り組みを繰り返す中で、児童の牛乳への意識の変 化を見ることが目的である。そこで、おいしいと感 じる時に牛乳を飲むことをきっけかにして、牛乳へ の嗜好性を高めるような指導のあり方を探ることが 最終的な目的である。
3 研究の内容
学童期に、牛乳がおいしいと感じるときに牛乳を 提供する仕組みや提供方法を工夫することによっ て、児童の牛乳への嗜好性が高まり、牛乳はおいし い飲み物であり、さらにおいしく飲める時期を子ど も自らがとらえることができるようになり、牛乳を 積極的に飲もうとする態度が育つと考えられる。そ の結果として、義務教育が終了した後も牛乳を飲も うとするようになることが期待できると考えた。
具体的には、以下のような内容で、研究を進め た。
(1) 放課後の児童への牛乳の提供
平日の放課後教室として校庭等を開放している時 間帯に、牛乳パックとして児童に牛乳を配布するこ
とで、以下の効果が期待できる。
① 水による水分摂取のかわりに牛乳を飲めるこ と。
② 児童が牛乳をおいしく感じられる時に、牛乳 を提供することにより、子どもは、おいしい牛乳の 印象と、食べることの適時性をとらえる能力を身に 付けることができる。
③ 放課後の時間の満腹感を満たすことができ る。このことにより、帰宅後の夕食までの時間の間 食をおさえる効果が期待できる。
(2) 子どもへの意識調査の実施
牛乳への嗜好性並びに牛乳への意識をみていく。
具体的な調査内容として以下のようなものを行っ た。
おいしさ
:
おいしいと感じる要因の抽出 残さずに飲む、下校後の間食の有無、牛乳への知 識、牛乳を通しての生命感、牛乳生産者への意識、食べ物を大切にしようとする態度
食に関する知識をもつことと、牛乳をとることに よって規則正しい食事や栄養を意識しながら食べよ うとする態度につながっていくのかをみていく。
4 研究の方法
平成
21
年度9
月から3
月までの放課後教室が実 施されたすべての74
日間、牛乳の提供を行った。そこで観察される児童の様子や意識並びに放課後教 室の指導者の意見などをもとに調査を行った。
(1) 放課後牛乳提供について
小学校の指定された教室に、牛乳用の冷蔵庫を設
置し冷蔵庫に200 ml
パックの新しい牛乳(その日 入荷の牛乳)を業者が入れるように手配しておく。その牛乳パックを一人一人の児童に与えて、その場 で飲ませることにより、児童に牛乳を提供する。児 童への提供は、放課後の決められた時間帯にいつで も飲めるようにする(表
1
の牛乳提供の流れ参照)。ただし、この牛乳用の冷蔵庫には担当者を二人常
駐させ、衛生管理、牛乳の配布等を行う。放課後 に、一人の児童が飲める牛乳の量は200 ml
までと する。個々の児童の飲む量の管理は、基本的には児 童本人が行うようにするが、常駐している指導者が 児童への飲み過ぎ注意の声かけを行ったり、飲み方 や牛乳を飲むことのよさを指導したりするようにし た。なお、実施時期は、前述したように9
月からと なった。また、具体的な牛乳の提供方法は、放課後教室で
大妻女子大学家政系研究紀要
―
第 48 号(2012.3)・ 49
の牛乳提供を試行し始めた平成19
年度に確立させ
ることができた。そこで、提供方法は、19年度作 成の以下の方法に準じた。
牛乳を飲む際の注意として、19年度から継続し てきている「必ず座って飲む」を食事のマナーの一 つとして徹底している。また、指導に当たっている 放課後教室担当の指導者が「牛乳がおいしい」こと
「牛乳が体によいこと」を声かけするようにしてい た。
(2) 調査及び分析の方法 ① 調査対象と調査質問紙
アンケート調査は、東京都内公立
T
小学校の全 校児童を対象に行った(児童数505
人)。質問紙は、平成
20
年度に実施した調査問題(日本酪農乳業協 表 1 放課後教室での牛乳提供の方法(平成 19 年度作成の流れ)平成
19
年度 北区立滝野川小学校での放課後子ども教室での牛乳提供の流れ子どもの動き 全体の流れ 指導員の動き 牛乳について
牛乳の数の確認
※午前の内に、冷蔵庫 内に牛乳を牛乳販売業 者が入れる。
2
時30
分 放課後子ども教室に子どもが集まってくる(ランチルーム)(各学級での帰りの会が終わり次第) 牛乳の入った冷蔵庫の 鍵をあける。
教室に入って、各自の学習
をはじめる。 子どもの必要に応じて、学
習支援を行う。
子どもの出席確認を行う。 牛 乳 の 数 と 人 数 を チ エックする。
3
時30
分 校庭、体育館、ランチルー ムでの各自やりたい活動を 行う。合間を見て、牛乳が飲みた くなると、ランチルームに 戻る。
子どもの必要に応じて、遊 びの支援を行う。特に安全 の確保
指導員の一人が、冷蔵 庫の脇で、牛乳配布の 準備を行う。
牛乳を取りに来た子ど もに牛乳を渡す。
4
時30
分 全員がランチルームに戻っ てくる。まだ、牛乳をもらっていな い子どもが牛乳をもらう。帰りに向けた指導をはじめ
る。 牛乳を取りに来た子ど
もに牛乳を渡す。
机の下のゴミ等を確認する
ように声をかける。 もう一人の指導員が、
飲む様子を見ていて、
必要に応じて声かけを 行う。(片付け方、マ ナーなど)
子どもたちが帰宅する 机の下等に、ゴミ、牛 乳のこぼした後が無い か確認する。
牛乳を飲む際の注意点
① 必ず座って牛乳を飲むこと
② 牛乳パックについたストローの袋は、はずさない
③ 牛乳パックを捨てる際には、決められたゴミ袋の中に入れる
④ 牛乳パックを捨てる際には、パックをきれいにつぶす (完全に中身がないことを確認してから捨てる)
⑤ ストローは、別の袋に入れる
① 空 に な っ た 牛 乳 パックのゴミ入った袋 を片付ける
② 冷蔵庫に残った牛 乳を職員室にもってい き、冷蔵庫内を空にし て、鍵をかける
50 ・
会
2008)をもとに、質問項目の、内容的、統計的
妥当性並びに信頼性を検討した。調査の実施は、平 成
21
年度3
月上旬に表2、表 3
の質問項目につい て、記名式で児童に回答させた。なお、表2
の質問 項目は全校児童を対象に実施し、表3
の質問項目 は、放課後教室に参加した児童(169人)のみを対 象に実施した。調査は、小学校の各教室において学級担任の指導 のもとに行われた。特に低学年の児童に関しては、
質問項目の読みや意味が分かりにくい項目に関して 担任教員が指導を行いながら答えることができるよ うにした。すべての質問項目は「1 とてもそう思 う」「2 そう思う」のような質問項目に対する肯定 的な尺度と「4 全くそう思わない」「3 そう思わ
ない」といった否定的な尺度の
4
件からそれぞれ一 つ選択させるようにした。② 分析法
各質問項目の分析は尺度
1
と2
は質問項目に対し て肯定的な反応である「そう思う」に、尺度3
と4
は質問項目に対して否定的な反応である「そう思わ ない」に読み替えて以下の分析を行った。各質問項 目に対する意識の程度は肯定的な反応をした人数と 否定的な人数の差をもって表れると解釈した。その 上で、「そう思う」と「そう思わない」の人数の差 をもってχ
二乗検定して、統計的な有意差をみてい くことにした。また、全校児童を対象に行った表
2
の質問項目に 関しては、放課後教室に参加している児童の反応と 参加していない児童の反応の差をもって分析するこ とにした。具体的には、放課後教室に参加して放課 後教室において牛乳を飲んでいる児童と、放課後教 室に参加せずに放課後子ども教室では牛乳を飲んで いない児童との間の違いは、それぞれの児童が選択 した尺度の平均値に表れると考えられる。そこで、放課後教室に参加している児童集団とそれに参加し ていない児童集団との各尺度における平均値の差と して表れると考え、両集団の平均値の差に
t
検定を 行なった。21年度のみの結果に加えて、平成
20
年度と21
年度の比較を共通の意識調査問題で行った。放課後 教室に参加している児童の意識に関しては、既に平 表 3 放課後教室に参加している児童のみが解答した質問項目
1 放課後子ども教室での牛乳は飲めましたか。
2 放課後子ども教室で牛乳を飲んでも、夕食の時間
にお腹がすいていましたか。3 放課後子ども教室で牛乳を飲まない、いつもの夕
食の時間は、お腹がすいていましたか。4 これからも放課後子ども教室で牛乳を飲みたいと
思いますか。5 放課後子ども教室で飲んだ牛乳はおいしいと思い
ますか。6 年間を通して、暑い日も寒い日も、あなたは放課
後子ども教室で牛乳を飲みたいと思いますか。7 放課後子ども教室から、家に帰って、夕食までの
あいだにおやつを食べることがありますか。8 放課後子ども教室のない日に、家に帰ってから夕
食までのあいだにおやつを食べることがあります 表 2 全校児童対象の質問項目 か。牛乳への嗜好性
15 牛乳が好きですか。
12 牛乳を飲むと気持ちがよいと思う 11 牛乳を飲むとすっきりした感じがする
17 年間を通して、暑い日も寒い日も、あなたは牛乳
を飲みたいと思いますか。14 牛乳のにおいについてどう思いますか 16 給食で飲む牛乳は、おいしいと思いますか。
2 ふだん学校以外でも牛乳を飲みますか。
食への関心
20 朝食を食べるときに、いつもおいしいと思います
か。22 夕食を食べるときに、いつもおいしいと思います
か。21 昼食を食べるときに、いつもおいしいと思います
か。1 夕食の時間にお腹がすいていますか。
9 食事や料理のことを考えるのは好きですか。
食のバランス感覚
8 毎日、好ききらいなくバランスよく食べるように
していますか。4 給食はいつも残さず食べていますか。
残さず食べる
5 夕食はいつも残さず食べていますか。
3 朝食はいつも残さず食べていますか。
大妻女子大学家政系研究紀要
―
第 48 号(2012.3)・ 51
成20
年度に統計的な妥当性や信頼性を確かめるこ
とができた質問項目(日本酪農乳業協会
2009)を
用いて、放課後教室に参加する児童の牛乳への意 識、放課後牛乳の効果、食習慣のそれぞれについて 見ていった。なお、ここでは、平成20
年度と平成21
年度の児童の意識と比較しながら検討すること によって、継続的な取り組みによって、子どもの意 識に変化が見られるのかどうかを検討できるように した。5 結果
児童の意識調査の結果を以下に述べる。なお、表 中の網掛け部分は、統計的に有意な差が見られた項 目である。
(1) 放課後教室に参加した児童の意識について
表
4
と表5
から以下の結果が見いだせる。20年度と変わらずに、放課後教室では、牛乳を 飲んでいた児童が、飲んでいなかった児童よりも有 意に多かった。……結果
1
20年度と変わらずに、放課後教室で牛乳を飲ん でいっても、放課後教室に行かなくても、いずれも 夕飯にはお腹がすいていた。……結果
2
20年度と変わらずに。放課後教室で飲んだ牛乳 はおいしいと感じている児童が、感じていない児童 よりも多かった。年間を通して放課後教室で牛乳を 飲みたいと思っている児童が有意に多い。……結 果
3
更に、20年度と同様に、放課後教室に参加した 日には、おやつを食べる児童は食べない児童と有意 な差が見られなかったが、放課後教室に参加してい ない日には、おやつを食べる児童が有意に多い。こ
表 4 放課後子ども教室に参加している児童のみが解答(20 年度)
設問項目 肯定項目
の人数 否定項目
の人数
χ
二乗値 確率 設問の目的・趣旨
1
放課後子ども教室での牛乳は飲めましたか。
150 19 101.5 0
牛乳提供に関しての障害 が な か っ た の か:
子 ど もにとっての抵抗感2
放課後子ども教室で牛乳 を飲んでも、夕食の時間 にお腹がすいていました か。
138 28 72.8 0
牛乳提供に関しての障害 が な か っ た の か
:
夕 食 への障害(空腹でなくな り、夕食が食べられなく なるといった障害の有無3
放課後子ども教室で牛乳 を飲まない、いつもの夕 食の時間は、お腹がすい ていましたか。
142 23 85.8 0
放課後子ども教室時に牛 乳を飲むことによる夕食 への障害の有無の確認の ため。
4
これからも放課後子ども 教室で牛乳を飲みたいと思いますか。
125 40 43.8 0
放課後牛乳提供の子ども
5
放課後子ども教室で飲ん への効果だ牛乳はおいしいと思い
ますか。
140 27 76.5 0
6
年間を通して、暑い日も 寒い日も、あなたは放課 後子ども教室で牛乳を飲 みたいと思いますか。
111 57 17.4 0
7
放 課 後 子 ど も 教 室 か ら、
家に帰って、夕食までの あいだにおやつを食べる
ことがありますか。
86 83 0.053 0.817
放課後教室で牛乳を提供 したことにより、帰宅後 の間食が軽減する効果の 有無を見るため
8
放課後子ども教室のない 日に、家に帰ってから夕 食までのあいだにおやつ を食べることがあります か。
118 51 26.6 0
52 ・
に参加していない児童は、参加している児童に比べ て有意に高いと言える。しかし、牛乳の嗜好性に関 する質問項目に関しては、放課後教室に参加してい る児童と参加していない児童とで、有意な差は見ら れなかった。……結果
6
夕食を残さずに食べるについて、放課後教室に参 加していない児童は、参加している児童に比べて有 意に高いと言える。しかし、食のバランス感覚や食 事を残すと言うことに関する他の質問項目に関して は、放課後教室に参加している児童と参加していな い児童とで、有意な差は見られなかった。……結 果
7
(3) 平成
20
年度と平成21
年度の違いに関して 全校児童の傾向を見るために、20年度と21
年度 の全校児童の各質問項目の平均値の差を見た結果を 表8
に示した。表8
から以下のような点が見い出せ のことは、放課後教室に参加した日は普段に比べて、おやつを食べることが少ないといえる。……結 果
4
(2) 放課後教室に参加している児童と参加して いない児童の人数の差に関して放課後教室に参加し た児童と参加していない児童を比べることにした。
このことから、放課後教室に参加し、牛乳を飲んだ ことの効果として表れていることが想定できると考 えた。そのことを表
6
と表7
に示し、それらを比較 して以下の点が思い出せる。夕食時の空腹感に関しては、20年度は有意に放 課後教室に参加している児童の方が高いと感じてい た。しかし、21年度には、放課後子どもも教室参 加児童とそれ以外の児童との間に有意な差は見出せ なかった。……結果
5
牛乳を飲むとすっきりしたについて、放課後教室
表 5 放課後子ども教室に参加している児童のみが解答(21 年度)
設問項目 肯定項目
の人数 否定項目
の人数
χ
二乗値 確率 設問の目的・趣旨
1
放課後子ども教室での牛乳は飲めましたか。
115 27 54.53 0
牛乳提供に関しての障害 が な か っ た の か:
子 ど もにとっての抵抗感2
放課後子ども教室で牛乳 を飲んでも、夕食の時間 にお腹がすいていました か。
113 30 48.18 0
牛乳提供に関しての障害 が な か っ た の か
:
夕 食 への障害(空腹でなくな り、夕食が食べられなく なるといった障害の有無3
放課後子ども教室で牛乳 を飲まない、いつもの夕 食の時間は、お腹がすい ていましたか。
112 26 53.59 0
放課後子ども教室時に牛 乳を飲むことによる夕食 への障害の有無の確認の ため。
4
これからも放課後子ども 教室で牛乳を飲みたいと思いますか。
105 39 30.25 0
放課後牛乳提供の子ども
5
放課後子ども教室で飲ん への効果だ牛乳はおいしいと思い
ますか。
119 25 61.36 0
6
年間を通して、暑い日も 寒い日も、あなたは放課 後子ども教室で牛乳を飲 みたいと思いますか。
95 50 13.97 0
7
放 課 後 子 ど も 教 室 か ら、
家に帰って、夕食までの あいだにおやつを食べる ことがありますか。
67 79 0.986 0.321
放課後教室で牛乳を提供 したことにより、帰宅後 の間食が軽減する効果の 有無を見るため
8
放課後子ども教室のない 日に、家に帰ってから夕 食までのあいだにおやつ を食べることがあります か。
93 53 10.959 0.001
大妻女子大学家政系研究紀要
―
第 48 号(2012.3)・ 53 る。
全校の
21
年度の児童は、20年度の児童よりも「朝食を食べるときに、いつもおいしいと思う。」
「夕食を食べるときに、いつもおいしいと思う。」
「朝食をいつも残さずに食べている。」の
3
つの質問 項目に関して、有意に平均値が高いといえる。……結果
8
6 考察
(1) 牛乳への嗜好性
結果
1
や結果3
から、放課後教室に参加している 児童は、牛乳を放課後教室で飲んでおり、いつの時 も飲みたいという気持ちを持った児童が多くいると 言える。このことは、放課後教室に参加している児 童は、牛乳への嗜好性がより高いと言える。表 6 平成 20 年度 1 年から 3 年全校児童が解答 質問項目
放課後教室参加児 童の平均値
放課後教室不参加 児童の平均値
t
の値 確率 設問の目的・趣旨15
牛乳が好きですか。1.83 1.82 0.062 0.951
牛乳への嗜好性
12
牛乳を飲むと気持ちがよいと思う
1.98 2.12
−1.0430.298
11
牛乳を飲むとすっきりした感じがする
1.92 1.88 0.234 0.815
17
年間を通して、暑い日も寒 い日も、あなたは牛乳を飲みたいと思いますか。
2.02 1.97 0.361 0.718
14
牛乳のにおいについてどう思いますか
2.53 2.5 0.221 0.826
16
給食で飲む牛乳は、おいしいと思いますか。
1.53 1.6
−0.6260.532
2
ふだん学校以外でも牛乳を飲みますか。
1.99 1.92 0.47 0.639
1
夕食の時間にお腹がすいていますか。
1.42 1.68
−2.7210.007
食への関心
9
食事や料理のことを考えるのは好きですか。
1.62 1.77
−1.2750.203
20
朝食を食べるときに、いつもおいしいと思いますか。
1.35 1.38
−0.2840.777
21
昼食を食べるときに、いつもおいしいと思いますか。
1.38 1.42
−0.5310.596
22
夕食を食べるときに、いつもおいしいと思いますか。
1.26 1.28
−0.2010.841
8
毎日、好ききらいなくバラ ンスよく食べるようにしていますか。
1.66 1.83
−1.4820.14
食のバランス感覚
4
給食はいつも残さず食べていますか。
1.66 1.65 0.144 0.885
5
夕食はいつも残さず食べていますか。
1.46 1.51
−0.5030.616
残さず食べる
3
朝食をいつも残さずに食べている。
1.47 1.56
−1.0350.302
54 ・
(2) 間食等に関して
放課後教室に参加した児童は、牛乳を飲んで帰宅
しても夕飯時にお腹をすかしており、夕飯の障害と なっていることはないと言える(結果2
より)。む しろ、結果4
より、放課後教室に参加した日にはお やつを食べることが放課後教室に参加していない日 よりも少ないと感じている児童が多くいる。このこ とは、放課後教室で牛乳を飲んだことにより、帰宅 後もおやつを食べずに夕食を迎えることになってい表 7 平成 21 年度 1 年から 3 年全校児童が解答 質問項目
放課後教室参加児 童の平均値
放課後教室不参加 児童の平均値
t
の値 確率 設問の目的・趣旨15
牛乳が好きですか。1.65 1.57 0.673 0.502
牛乳への嗜好性
12
牛乳を飲むと気持ちがよいと思う
2.1 1.82 2.18 0.03
11
牛乳を飲むとすっきりした感じがする
1.91 1.79 0.914 0.361
17
年間を通して、暑い日も寒 い日も、あなたは牛乳を飲みたいと思いますか。
2.01 1.92 0.719 0.473
14
牛乳のにおいについてどう思いますか
2.4 2.32 0.47 0.639
16
給食で飲む牛乳は、おいしいと思いますか。
1.53 1.42 1.03 0.304
2
ふだん学校以外でも牛乳を飲みますか。
1.96 1.83 1.067 0.287
1
夕食の時間にお腹がすいていますか。
1.6 1.61
−0.0460.964
食への関心
9
食事や料理のことを考えるのは好きですか。
1.57 1.68
−1.0690.286
20
朝食を食べるときに、いつもおいしいと思いますか。
1.28 1.28 0.05 0.96
21
昼食を食べるときに、いつもおいしいと思いますか。
1.29 1.31
−0.3860.7
22
夕食を食べるときに、いつもおいしいと思いますか。
1.24 1.22 0.373 0.709
8
毎日、好ききらいなくバラ ンスよく食べるようにしていますか。
1.64 1.63 0.075 0.94
食のバランス感覚
4
給食はいつも残さず食べていますか。
1.46 1.25 2.722 0.007
5
夕食はいつも残さず食べていますか。
1.35 1.4
−0.6220.534
残さず食べる
3
朝食をいつも残さずに食べている。
1.37 1.4
−0.3170.752
ることが想定できる。すなわち、放課後学校から帰 宅して、夕食の時間までにおやつを食べるか食べな いかに、牛乳を飲むか飲まないかが影響しているこ とも推測できる。
放課後教室の監督に来ていた保護者にインタ ビューしたところ、放課後教室から帰ってきた時に は、夕食までおやつも食べず、腹持ちがよいといっ た意見を聞くことができた。
大妻女子大学家政系研究紀要
―
第 48 号(2012.3)・ 55
(3) 空腹感に関して
結果
5
から、平成20
年度は、放課後教室に参加 した児童は、参加しなかった児童に比べて、夕食時 の空腹感を感じたと答えた尺度の平均値が有意に高 かった。しかし、平成21
年度には差が見られな かった。このことと、結果8
を合わせて考えると、学校全体として、「残さずに食事を食べる」という 意識が高く、自宅での食事も含めておいしく、残さ ず食べようという意識が
20
年度に比べて高まって きていることが想定できる。これらのことから、平成
20
年度程に放課後教室 の参加の有無による夕食時の空腹感の差は見られな かったことが考えられる。これらのことから、平成20
年度に比べて21
年度は学校全体として食への意 識や関心が高かったといえる。(4) マナーや落ち着きに関して
これまで述べてきた児童向けの質問紙意識調査に 加えて、放課後子ども教室の指導を行っている指導 者にインタビューを行った。インタビューにおいて は、特に放課後教室の平成
21
年度の前半であった 表 8 平成 20 年度と平成 21 年度 全校児童の比較質問項目
20
年度21
年度t
の値 確率 設問の目的・趣旨15
牛乳が好きですか。1.91 1.79 1.933 0.121
牛乳への嗜好性
12
牛乳を飲むと気持ちがよいと思う
2.21 2.17 0.585 0.558
11
牛乳を飲むとすっきりした感じがする
2.07 2.05 0.332 0.74
17
年間を通して、暑い日も寒 い日も、あなたは牛乳を飲みたいと思いますか。
2.14 2.15
−1.770.86
14
牛乳のにおいについてどう思いますか
2.7 2.64 0.764 0.445
16
給食で飲む牛乳は、おいしいと思いますか。
1.73 1.68 0.858 0.391
2
ふだん学校以外でも牛乳を飲みますか。
2.01 1.95 0.985 0.325
1
夕食の時間にお腹がすいていますか。
1.64 1.64 0.148 0.882
食への関心
9
食事や料理のことを考えるのは好きですか。
1.84 1.79 0.783 0.434
20
朝食を食べるときに、いつもおいしいと思いますか。
1.48 1.39 2.06 0.04
21
昼食を食べるときに、いつもおいしいと思いますか。
1.53 1.46 1.631 0.103
22
夕食を食べるときに、いつもおいしいと思いますか。
1.36 1.3 1.803 0.063
8
毎日、好ききらいなくバラ ンスよく食べるようにしていますか。
1.8 1.75 0.854 0.393
食のバランス感覚
4
給食はいつも残さず食べていますか。
1.55 1.37 3.828 0
5
夕食はいつも残さず食べていますか。
1.48 1.41 1.521 0.128
残さず食べる
3
朝食をいつも残さずに食べている。
1.56 1.45 2.43 0.015
56 ・
4
月から7
月の牛乳提供がなかった時期と、9月以 降の牛乳提供が始まってからの子どもの様子をきく ことにした。その結果、7月までに比べて
9
月以降は、帰宅直 前の子どもの様子に大きな変化が見られた。7月ま では、帰宅直前は落ち着きがなく、指導者側からの 指示も通りにくい状況が多く見られた。しかし、9 月以降は落ち着きが見られ、指導者側からの指示も 通り安くなったという。確かに、夏期休業を挟ん で、子どもが精神的に成長し、話を集中して聞ける ようになったことも考えられる。しかし、指導者 は、以下のように述べている。子どもは、元気に遊 ぶことをおえて教室に戻ってくる。その後、牛乳を 座って静かに飲む。牛乳を飲んだ後の子どもは、落 ち着いてパックを片付け、座って帰りの準備を始め る。このことは、明らかに牛乳を飲むことが、子ども を落ち着いた気持ちにさせていると言える。この場 合、牛乳でなくてもよいとも言える。しかし、学校 内で実施している放課後教室の性格上、牛乳以外の 飲食物を提供することは、多くの保護者の支持を得 ることは難しいと予想される。しかし、牛乳であれ ば問題のないことはこの
3
年間の取り組みからも言 えることである。放課後教室での牛乳提供は、児童の牛乳をはじめ とする食に対する意識を変えていく指導法の一つに なる可能性が示唆されている。
謝辞
本研究は,平成
19, 20, 21
年度(社)日本酪農乳 業協会,平成18
年度(社)中央酪農会議から研究委託を受けて研究を進めてきた。
参考文献
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(社)全国牛乳普及協会,「カルシウム その基礎・臨 床・栄養」,1999.
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20
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石井雅幸,(社)日本酪農乳業協会,牛乳をはじめと する望ましい食習慣を身につける指導のあり方 に関する基礎的な研究報告書,2008.
石井雅幸,(社)日本酪農乳業協会,「牛乳をはじめと する望ましい食習慣を身につける指導のあり方 に関する基礎的な研究報告書,2009.
石井雅幸,(社)日本酪農乳業協会,「おいしいと感じ るときに牛乳を飲むきっかけにして,牛乳への 嗜好性を高める指導法の基礎的研究」報告書,
2010.
Summary
The method of milk-