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1.はじめに ― ― 課外プログラムとしての「学びの場」のデザイン

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1.はじめに ― ― 課外プログラムとしての「学びの場」のデザイン

企業にとって人材育成はその戦略的な重要度,緊要度を増しつつある。1 つには,創造経済の流れが大きくなるに伴い,事業や業務に創造的な付加価 値を与える人材の有無や多寡が企業成長の源泉と認識されるようになったか らである(図表1。Florida,Landry) 。2つには,経済のサービス化が拡大・

浸透する中,顧客との関係性構築が競争戦略上の鍵と位置づけられ(プラハ ラード・ラマスワミ) ,それを担う人材の質がこれまで以上に問われるよう になってきたからである。3つには,以上のこととも関係するが,ダイバー シティ,ワーク・ライフ・バランスの実現が企業の成長に欠かせないとの理 解と認識が強まっており(山口,山口・樋口) ,ソフトリーダーシップを担 う人材や, 「人的資本」から「関係性資本」への変換に意識的,主体的に取 り組める人材の必要性が高まっているからである(高橋) 。

《資 料》

Project-based Learning 型 プログラム導入の可能性と課題

―― 長尾中学校で実施した「書く力をつける

プログラム for 中学生」をケースに ――

田 村 馨

兵 土 美 和 子

−4 9−

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図表1 専門的・技術的就業者と GDP の推移(1 5=1 0)

資料:総務省の各種統計より作成。

注:GDP(国民総生産)は実質ベースで算出。長期の GDP デフレーターは利用でき ないので,9 5年以前と以降では接続していない。

では,企業が必要とする人材を育成するために,大学は,どのような学び の機会と場を提供できるだろうか。 「学びの場」のデザインは大学の教員に とって切実な課題である。

方法論的には大きく2つあると思う。1つは,企業が求める人材の特性を 目標や評価軸に設定するアプローチである。ここにいう「人材の特性」はコ ンピテンシー的な特性であることが望まれよう。

もう1つは,企業と同じ環境に学生を置くアプローチである。その代表は インターンシッププログラムであろう。インターンシッププログラムは企業 と同じ環境を学生に提供するという利点をもつ半面,就職活動に傾倒しすぎ ている,短期間である,教員がコントロールやチェックできないなどのマイ ナス面もある。

本稿で紹介する,2 0 0 8年1 0月に福岡市立長尾中学校で実施した「書く力を つけるプログラム for 中学生」 (以下,長尾中 P と略す場合がある)は,疑 似「企業環境」の下,企業が求める人材特性を学生が自ら獲得するようにデ ザインした「学びの場」である。インターシッププログラムとは違い,①就 職活動との関連性は薄く,プロジェクトに参画する立場から他者と連携して

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タスクを達成することを学ぶ場と機会を提供する,②期間的には長くないが,

MTG(事前事後,毎日のミーティング)および ML(メーリングリスト)上

で自己点検,振り返りが頻繁に課せられる,③教員が仕組みの設計から関与 でき,プロセス管理,評価,手直しが教員主導でできる。

本稿では,学内のプログラムとは異なる教育効果(学生にとっては学習効 果)が期待される長尾中 P をケースに,Project-based Learning の可能性と課 題について考察する。

2.Project-based Learning 型プログラム開発および実施の経緯と背景

長尾中学校で実施したプログラムには4つの側 面 が あ る。1つ に は,

Project-based Learning 型プログラム,2つには Learning by Teaching 型プログ ラム,3つには,福岡大学の地域連携プログラム,4つには,中学校・中学 生にとっての学外との連携プログラムとしての側面である。

本稿では1つ目の Project-based Learning 型プログラムとしての側面に絞っ て話を進めたい。まず,プログラム開発および長尾中 P 実施に至る経緯と 背景を説明しておこう。

1.プログラム開発・実施に至るまでの経緯と背景

田村は,外部の専門家(兵土)と組んで,2 0 0 7年1 1月に「書く力をつける プログラム for 大学生」を課外プログラム(単位取得とは関係ないプログラ ム)として導入した。目的は,商学部の学生が身につけるべき力だと考えら れる, 「ロジカルに考え伝える能力」を「書く力をつけるワーク」を通して 鍛錬し向上させることにあった。

田村が,本プログラムの導入を思い立った理由は3つある。

1つは,単純に,ここ数年,学生に共通にかつ強くみられる「書く力の低 下」を何とか阻止したいと思ったからである。2つに,外部の専門家の手を Project-based Learning 型プログラム導入の可能性と課題(田村・兵土) −5 1−

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借りることで新しい教育プログラムが開発できると期待したからである。3 つには,企業が求める人材像(=大学が想定すべき「望ましい学生像」 )で ある, 「自らの判断や考えをベースに問題を発見し解決のみちを生みだす能 力の育成」が必要だと考えたからである。

大学生の「書く力」が低下している状況として,田村が注目するのは,

「ロジカルに書けない状況」と「表面的な正解を書こうとする状況」である。

2つの状況は,自分のなかにある「思い」を書こうとしない,あるいは「思 い」が書けないことに起因する。

自分の思いは,それが深く掘り下げられたものであるほど,他者に伝えよ うとするとき,他者との通約不可能性が増す。このとき,通約不可能性を縮 減するには論理性を高めるしかない。深く深く掘り下げた自分の思いを書く とは,ロジカルに書くことに他ならないのだ。

多くの学生は,深く掘り下げた自分の思いを書こうとしない。だから,ロ ジカルに書かなくても共有できる, 「表面的な正解」水準で書く。結果,誰 もが同じようなことを話し,書く。それが「自分なるものを他者にアピール しない」表現スタイルであることを,学生は就職活動での面接やエントリー シートを書く段になって思い知る。

2 0 0 7年1 1月のプログラムでは,自分を掘り下げるワークに徹した。手応え はあったが,田村,兵土にとって,自分を掘り下げたものを材料に書くこと の大切さが,学生において,どこまで「腑に落ちた」かは不明であった。第 2,第3のプログラムを投入することも考えたが,受け身で(当事者意識を もたずに)プログラムに取り組む限り, 「書く力」は身に付かないと判断し た。

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2.プログラム開発・実施の経緯と背景

田村は, 「教えることは学ぶこと」 (We learn by teaching)を仕掛ける必要 を感じていた。数年にわたり,商学科では1年基礎ゼミナールに SA 制(学 生支援者:上級生が下級生を教える仕組み)を導入してきた。その経験に照 らすとき, 「教えることで学ぶ」効果は高いからだ。

兵土の助けを借りて, 「書く力をつけるプログラム for 大学生」の進化系

(バージョンアップ版)として,大学生が教える立場にたつプログラム「書 く力をつけるプログラム for 小学生」を福岡市立平尾小学校において企画・

計画し,2 0 0 8年2月に実施した。

平尾小学校では5年生5クラスが対象だった。3回シリーズなので,延べ 1 5クラスに,延べ1 5 0名の学生が入った。何をどうすべきか(小学生に何を 指導すべきか)は,自分たちが受講した「書く力をつけるプログラム」や事 前研修を通じて,大学生は理解していた。ただし,具体的な局面で,どのよ うな問題・課題が発生し,それにどう対処していくかは現場で体験してみな いとわからない。

そういう状況でこそ,当事者意識を強く持つことができるので,学んだこ とが腑に落ちるだろうことを,田村・兵土はプロジェクトの仮説として想定 した。さらには,当事者意識を高めるために,学生が問題・課題を共有する と同時に,その解決を共創するプロセスを「見える化」する形でプロジェク トを進めた。

project-based learning 的な色彩を帯びた, 「書く力をつけるプログラム for 小学生」は,田村・兵土が想定した仮説を支持するものとして実際に運営さ れた。ちなみに,企業や社会が求める, 「知識や外部の情報に過度に依存せ ず,自らの判断や考えをベースに問題を発見し解決のみちを生みだす能力を もつ人材」とは,他者と組み,個々の「気づき」を「集合の知」に変換する 活動に当事者として関与できる人材であり,プロジェクトに仕立てることで,

Project-based Learning 型プログラム導入の可能性と課題(田村・兵土) −5 3−

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学生にその遂行を要求する活動のイメージ(人材像)は明確になる。

こうして,プロジェクト仕立ての project-based learning 型プログラムが動 き出した。

3.長尾中学校での実施

本プログラムを中学生,高校生向けのプログラムとして開発したいと思っ ていたところ,タイミング良く,要請を受けて,2 0 0 8年8月に,福岡市内の 中学校教員(国語)の勉強会で, 「書く力をつけるプログラム for 中学生」

の模擬講義を実施できた。その際,事前研修から中学生に入ってもらい,中 学生版プログラムの作り込み(カスタマイズ)に取り組んだ。そして,その 成果を試す機会が,2 0 0 8年1 0月に,長尾中学校において2年生全5クラスを 対象に, 「書く力をつけるプログラム for 中学生」を実施する形で実現する ことになった。

1.企画・プランニング,プログラム開発

2 0 0 8年8月下旬,長尾中学校の池田一司校長(肩書は0 9年3月現在のもの。

以下,同じ)より,今年度,長尾中学校で,全学年・全クラスへの「書く力 をつけるプログラム for 中学生」導入を考えているとの連絡が入った。池田 校長には,2 0 0 8年4月にお会いし,平尾小学校での実践や本プログラムの考 え方を説明していた。

9月,田村,兵土は,池田校長,平山教頭,白水教諭,2年の学年主任担 当教諭との協議に入った。中学校側が求めるところは,9月に2年生が実施 した職場体験を材料に,職場体験を通じて気づいたこと,発見したことを,

より深い「気づき」 「発見」として中学生自身が体得することだとされた。

それは,本プログラムのエッセンスである, 「答えは自分の中にあることを 腹に落とす」ことへの要請でもあった。

ただし,現実的な問題はプログラムをどういう「時間割」として実施する

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図表2 長尾中学校側から示された利用可能なコマ

かであった。学校に入る以上,与件としての時間割がプログラム実施上の大 きな制約となる。長尾中側は,時間割上の制約が許す範囲内で最大限のコマ 数を提案された(図表2) 。

そのことで浮上したのは,問題はこちら側にあることだった。1クラスの 生徒数は4 0名弱。投入する大学生の数は最低でも2 0名弱。2 0名×5クラス×

回数で計算すると,4回が限界だと考えられた(大学生の延べ投入数が5 0 0 名をこえるとマネジメント,コントロールが難しいと判断した) 。

相互に協議するうちに,白水教諭が担当する「国語」と「総合学習」の時 間を活用することでプログラムがはめ込めることになった。どの時間帯には め込むかを確定するには投入する学生の日程を確保する必要があるため(通 常講義が行われている期間であり,投入できる学生数は限られることが予想 された) ,日程未確定の段階で学生に呼びかけ,学生の日程確保作業を進め た。と同時に, 「どのように掘り下げていくか,それをどのようなシートに 落とし込むか」を田村,兵土で議論し,兵土がシート作成とプログラム制作 Project-based Learning 型プログラム導入の可能性と課題(田村・兵土) −5 5−

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図表3 確定した日程

図表4 学生の日程確保作業

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田村・兵土

参加が飛び飛びの学生,ワンポイントで入る学生 1組

4年生K

2組 4年生A

3組 組 長

(大学生)

大学生

大学生

3年生Y すべてに参加

する学生 比較的連続的に

参加する学生

4組 4年生E

5組 4年生D 図表5 今回の体制

図表6 膨大な作業を要した学生の日時別・クラス・グループ別担当分け作業 さらに必要なのは,クラス・グループ(6〜7グループ)ごとに学生の誰 を配置するかを決めることだ。理想は同じ学生が同じクラスの,同じグルー プを連続3回(1回目から3回目)担当してくれることだが,講義との調整 がつかない学生も多く,そのような編成は組めなかった。

そこで,クラスの担当リーダー(組長)を固定する分権的な体制で今回は 臨み,田村,兵土は全体の状況把握,リードに徹することとした。

Project-based Learning 型プログラム導入の可能性と課題(田村・兵土) −5 7−

( 9 )

(10)

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図表7 今回のシート

田村,兵土で,それらの体制づくり,人員配置計画を進めつつ,兵土は今 回のプログラム開発に取り組み,中学生に書いてもらうシート作成,プログ ラム全体のシナリオ作成に取り組んだ。

2.大学生の事前研修と自主的な MTG

今回のプログラムに参加する大学生は4 5 名。まず,シートをネット上から DL(ダ ウンロード)してもらった上で,1 0月8日,

1 0日に2回にわたり,事前研修を開催した。

当日は研修資料に従い,今回の「書く力を つけるプログラム for 中学校・長尾中」の 目的と意義,計画の全体像を解説した。次 に,シナリオによって当日および全体の流 れを確認した。

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課題の抽出,

気づきの共有,

改善点の検討 クラスごとの組長 による MTG 申し合わせ事項の 確認,課題・気づき・

改善策の共有 クラスごとの組長 による MTG 一日を通じての振り返り 課題の共有化,方針の確認 ネット,メール

によるMTG 事前 MTG

1日目

2日目

授業 事後 MTG

事後 MTG 授業

事前 MTG 授業

事前 MTG

振り返り MTG 総括的な

事前 MTG 授業 事後 MTG

事後 MTG 授業 事前 MTG

図表8 MTG を中心としたプロジェクトの進行

研修後,組長となる学生を中心に自主的な MTG がサイト上およびオフサ イドで実施された。

3.プログラムの実施

プログラムは1 0月1 5日にスタート。プログラム期間中の5日間は,事前

MTG(ミー テ ィ ン グ)→授 業→事 後 MTG+事 前 MTG→授 業→・・・・総

括的な振り返り MTG で一日を終え,クラスごと,グループごとの課題,気 づき等はネット,メールで組長に集約され,翌日の活動に活かされる。

〈1回目〉

大学生が中学生と各クラスで初対面し,担当のグループごとに分かれ,中 学生に事前に書いてもらっていたシートを材料に,中学生の「職場体験」を 掘っていくワークに着手。クラス間の差異,グループ間の違いに戸惑いつつ Project-based Learning 型プログラム導入の可能性と課題(田村・兵土) −5 9−

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も,事前 MTG で想定した目標に向けて中学生をファシリテートする。

1時間目(2年5組)の授業が終わったあとの MTG に,池田校長先生が 顔をだしてくれた。そして次のような感想を述べてくれた。 「あの生徒が話 をしている,あの生徒が書いているといったシーンをみてまず驚きました,

途中から授業に来ましたが雰囲気が和やかでいいなと感じた」 と。また, 「中

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学生達もしなくていけないことはわかっています」と述べられ,われわれが 到達すべきところはどこであるかに関して,学生に向けてアドバイスをいた だいた。

MTG では,リードする上での手応えと戸惑いを,また中学生を相手にす るたやすさと難しさを認識したとの感想が学生からのべられた。

〈2回目〉

2回目は,同じ時間帯(1 7日の5・6時間目)に,同時に5クラスに学生 が入る。投入する学生数の絶対的な不足を組長や書く P 経験者がカバーす ることで克服する方針を事前 MTG では確認した。特に1回目を終えて把握 されたクラス間のバラツキに照らして(考慮して) ,学生を配置した。具体 的には,1 7日に1回目の最後の授業(2年1組)が終わり2回目の授業が始 まるまでの3時間の間に,1回目の総括をすると同時に,それに基づく状況 認識を共有した上で,黒板に記した参加予定メンバーを組長の要望を聞く形 でクラス別に配分した。つまり,クラスを

難度で分け,難度が高いクラスの組長に優 先的に人材を選んでもらう形で陣営を再編 した。結果,当初の人員配置とは全く違う ものとなった。

田村,兵土はクラスを巡回するなかで,

ビギナー的な学生を中心に手こずっている 状況に注目し,これ以上,同じパターンで 切り込むのは無理だと判断し, 次の展開 (寸 劇を想定したストーリーづくり)に一気に 進む決断をした。これで,個々のクラスで 進行していた「流れ」は変わった。

Project-based Learning 型プログラム導入の可能性と課題(田村・兵土) −6 1−

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〈3回目〉

2 0日は2クラスがプログラム3回目を迎えた。最初のクラスで「寸劇」に 挑んだ。中学生にとって寸劇は初めての

体験であり,寸劇自体は少し難しい注文 だった。ただ,中学生は総じて楽しそうに 取り組んでくれた。同クラスを終えての MTG では様々のアイデアが提案され,い くつかの方向性,共有すべきポイント,進 め方が共有された。一日をおいた2 2日は長 尾中学校側の支援もあり,残り3クラスの 寸劇発表は中学生が主体的に取り組んでく れた。

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なお,今回,学生の配置計画を途中で大きく変えた。2回目を終えて,今 回のプログラムが成功するか否かは3回目が鍵だと思われた。そこで,学生 に次のようなメールを送った。 「いよいよ長尾中 P も佳境を迎えつつありま す。3回目の授業をどう推進するかが鍵です。そこで,少数精鋭で臨むシフ トに大きく変更します。人選は組長にお願いしました。参加状況の連続性や Project-based Learning 型プログラム導入の可能性と課題(田村・兵土) −6 3−

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役割に照らして人選作業を進め,明日(1 9日)の夕方までには(若干遅くな るかもしれません) ,2 0日,2 2日に参加をお願いする方,そうでない方をお 知らせする予定です」 。

組長からの人選案を参考に,最終的には田村,兵土が,中学生の気づきを より高い水準まで引き上げるために,少数精鋭の方針の下,各クラス・班の 状況に鑑みて人選を決定した。

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〈4回目〉

2 2日の5限目は,5クラスが体育館に集まり,クラスの代表が寸劇を披露 する,プログラム最後のセッションだ。3回目の授業では,すべてのグルー プに寸劇をしてもらい,組長と担当学生,田村,兵土で協議して決めた。

準備の時間がないなかドタバタと昼食をとり体育館に移動。マイクの不備 に最後まで苦しめられたが,5クラスの寸劇に加えて,大学生を寸劇も披露 した。最後は池田校長先生の感想,田村からの謝辞,白水先生のお話で終え た。

4.プログラムのクロージング

1 0月2 2日にプログラムは終了した。2 4日に今回のプログラムを「振り返 る」課題が,参加者に指示された。

〈今日の特別講義「表現する力をつけるプログラム」に出られた方にはお Project-based Learning 型プログラム導入の可能性と課題(田村・兵土) −6 5−

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伝えしましたが,長尾中 P に参加した全員への課題です。今回の「長尾中 プロジェクト」をテーマにレポートをお願いします。

①中学生と同じようにシートに記載すること(この記事に雛形は添付しま す。DL して使ってください) ,②シートをもとに構成を組むこと。 ( 「はじ め」 「なか」 「おわり」 , 「起承転結」等) ,③構成をもとに文章を書くこと。

以上の順番で作業をしてください〉 。

締め切りは1 1月4日。提出されたレポートをもとに(1 0名分のレポートを 選んで) ,1 1月7日,1 4日に総括的な MTG をもった。

1 0月1 5日に長尾中学校でスタートした本プログラムは,この1 1月1 4日を もって,クロージングした。

4.成

今回のプログラムを通じて得た成果は以下の通り。なお,ここでは,私た ち大学側にとっての成果のみを記した。長尾中学校側にとっての成果は,具 体的に情報収集やサーベイを仕掛けていないのでわからないが,中学側の担 当者である,白水教諭の「感想」を参照材料として添付しておく。

①8月に,中学の国語の教諭を対象に,書く P の模擬講義を,1 2名の中 学生の参加を得て実施したが,今回,中学校に実際に入り書く P を実 施できたことは,本プログラムの成果として大きなものであった。

②今回,中学側の日程と大学生の講義の関係で,投入する大学生を固定的 に投入する(同じクラスに同じ大学生を配置する)ことが難しい中, 「や りくり」することで対処した。今後,時期や条件によって,大学生の投 入が「必要量」に比して少ない形で取り組まざるを得ない状況が予想さ れる。今回の経験は,制約の中でどう「やりくり」するかを学ぶ機会と なった。

③今回のプログラムでは,ディレクションも学生に委ねる体制で臨んだ。

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今回特筆すべきは,組長にとって,各クラスに配属される学生が固定メ ンバーではなく,課題の収集・共有を「外部化」する必要があったこと だ。その必要にこたえて,組長となった学生は,課題の収集・共有の 「外 部化」を仕組みとしてマネジメントしてくれた。学生にとって貴重な経 験となった。

④授業が終わると各位が体験した課題,気づきを確認し,各クラス,グルー プの状況を共有した上で,次に向けての改善策,工夫を提案しあい,

ゴールを定めていくプロセスは,学生にとって,自らの体験を相対化し 言語化する貴重な学びの機会となった。

⑤「教えることから学ぶ」は本プログラムの教育プログラムとしての目的 である。今回の,中学生の「気づき」 「発見」をより深める方向に導く ワークでは,より高いチャレンジが要求された。この実践を通じて,大 学生の書く力に対する理解が深まり,表現力全般に対する自信を得たこ とが各位の感想として,また田村・兵土の観察として確認された。

⑥今回は大学の2年生が参加した。彼ら彼女らは,現在の3年生,4年生 が関与し進化させてきた書く力をつけるプロジェクトの後継者である。

その2年生にとって,長尾中学校での実践は多くの気づきが誘発された 貴重な体験となった。

⑦福岡大学の地域連携事業としての「書く力をつけるプログラム」の実績 を積んだと同時に,その可能性を一歩進めることができた。

「書くプログラム」を終えて

総合的な学習の時間に実施した職場体験について,生徒が体験をふり返り,学んだこと をまとめ発表するにあたりこの度「書くプログラム」を導入させていただいた。これまで も生徒たちの諸活動において,グループごとに活動内容や学習の成果と課題などについて まとめ,発表させる機会は数回あった。しかし,書くことやまとめることが苦手な生徒も 多く,そういった生徒はグループ内の積極的な生徒におまかせの様態で,自分が学習した ことを「自分でまとめ,発表することができた」という達成感を十分味わえていない感が Project-based Learning 型プログラム導入の可能性と課題(田村・兵土) −6 7−

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強かった。そこで,できるだけ多くの生徒にその達成感を味わわせたいという願いをもっ てこのプログラムをお願いした次第である。

プログラムは,時間割上,各クラス5コマの授業時間であったが,生徒たちのほとんど はその時間を楽しみにしており,学習シートに自分が書いた内容を「こんなに書けたよ。 」 と,時間ごとに教師に見せる生徒も見られた。その中には,これまで書くことを苦手と感 じ,同じような学習シートは白紙にちかい状態であった生徒も含まれる。グループ担当の 大学生が生徒のほんの単語程度の思いをキャッチし,さらに続く思いをほりおこし,一つ 一つ言葉につなげていくヒントを与えてくれたのである。思いを言葉で表現するにはまず しっかり考えること,そして考えを整理すること,それからその考えにふさわしい言葉を 見つけ綴っていくことを,生徒たちはそばについてくれた大学生たちから学んだのである。

このプログラムによって,生徒たちは前述したような学びを得たと考えられるが,それ がより多くの生徒に定着するためには,このようなプログラムが単発ではなく継続的にお こなわれることが望ましい。それには実施時期や内容の勘考,授業時間の確保など課題も 残る。また,初めてのことで,私自身が参観者の体であったので,実施するにあたって,

大学生がどのように学習をすすめ,また,進度を微調整していかれているのかをもう少し 踏み込んで,こちら教師サイドがわかっていればよかったかもしれないと反省していると ころである。同じプログラムにしたがって進めていただいたが,学級間の進捗状況や生徒 のモチベーションにも温度差が多少あったので,もっと協力することができればその差を うめることができたのかもしれない。今後,さらに理解を深めながらこのプログラムを継 続していくことができれば生徒に確かな力をつけさせることができると考えられる。

今回2年生でこのプログラムに学んだのであるが,この生徒たちには,今後3年生の3 学期に中学校三年間をふり返って,全員がそれぞれに「答辞」を書くという取り組みをさ せる。その取り組みの時にこのプログラムを導入することができれば,高校入学前に「書 く」という表現活動に少しでも自信をもたせられるのではないかと思う。

このプログラム以前から,国語の授業中に必ず一度は自分の感想や意見を書く場面を仕 組んでいるのだが,ヒントを出してもひとこと二言の短い言葉をならべただけの感想しか 書かなかった生徒の中に,このプログラム以降,書くことをすぐにあきらめず,言葉に悩 み考えている姿が見られるようになっていることを最後に書き添えておく。

福岡市立長尾中学校 白水 千里 5.残された課題

①タスクの量(クラス数×クラスの生徒数×授業時間数)に応じた適正規 模の体制を組めるかどうかは,学生の事情に左右される。この問題を,

時期の設定,プログラムの構成,スケジュールの編成などを通じてどう コントロールしていくかは今後の検討課題である。

②タスクの質(大学生が中学生から何を引き出せるか,中学生から前向き の言動を引き出すコミュニケーションが図れるか,プロジェクトの一員

−6 8−

( 2 0 )

(21)

として与えられた役割をこなすと同時に自ら必要に応じた役割を創造で きるか)を高める事前研修,プロジェクトの運営方法,情報共有の仕組 みなどは改善の余地が大きく,今後の検討課題である。

③限られた時間制約の中で,相手(中学生,中学校)側に,そして学生に とって納得,合点がいく目標をどう設定し共有化を図り,かつ実現して いくかは,今後とも最優先で検討すべき課題である。

④効果の測定は,方法論もさることながら,中学校の実態に照らすとき難 しい。たとえば,生徒へのアンケート調査は,そのための時間をとるこ とすら不可能である。そもそも誰の,何のための効果測定かの検討を含 め,多くの課題が残された。参考までに,高校で行った本プログラムに 対する生徒のアンケート集計結果を示しておきたい。

図表9 福岡県立修猷館高校での生徒による評価

「書くことは考えることであること」が理解できた? 正解は自分の中にあることが理解できた?

年次 非常に理解できた ま あ ま あ あ ま り 全く理解出来ない 非常に理解できた ま あ ま あ あ ま り 全く理解出来ない

1 1 1

1 1 1

1 1 1

1 1 1

1 1 1

1 1 1

1 1 1

1 1 1

1 1 1

1 1 1

2 1 1

2 1 1

2 1 1

2 1 1

2 1 1

2 1 1

2 1 1

1 4 3 0 0 1 0 7 0 0

注:2008年10月25日に実施した福岡県立修猷館高校での「書く力をつけるプログラム for 高校生」でのアンケート集計。

Project-based Learning 型プログラム導入の可能性と課題(田村・兵土) −6 9−

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〈生徒によるコメント〉

書くことは考えることだということが理解できた(非常に)

・大学生,高校生を話をしていくうちに頭で考え,書くことも変わってきたから

・考えて書かないと読み手に伝わらないことがよくわかったから

・なぜそれを書いたかを考えるウチにどんどん広がっていくから

・自分の思うこと,考えることを書いていけばいいから

・読み手のことを考えて書かなければならないとわかったから

・考えて書かなければ中身のない容器状態になるから

・書くだけでは文が抽象的になり,初対面の人やその人のプロセスを知らない人にとっ ては背景がイメージできず,うまく伝わらないとわかったから

・自分が書いたことについて話す中で考え,書くことができたから

・伝えるには自分の中にあることを掘り下げ思考し,伝えなくては伝わらないとわかっ たから

・少し考えただけでも,様々なことが書けました,考えるのは「言葉で」考える訳だか ら,考えたら「言葉で」書けますよね

・掘り下げて書いていくことでその根底にある伝えたいことは何なのか,どうして思う のかなど自問自答を行い,感じていたことについて深く考えられたから

・文章中の中核をなす自分の伝えたいことを自問自答によって導きだしたから

・何が書きたいかとかを今回は他人の力を借りて掘り下げていく必要があるので

・いきなり書き始めても深い言葉や自分が本当に思っていることは何かを整理できない から

・主観と客観の両立と相関が理解できたから

・前から結構書くことについては考えていたので今日理解できたというよりも前から 知っていた

書くことは考えることだということが理解できた(まあまあ)

・テーマや意味がわかっていないものは書けないから

・話し合いながら考えてみると,もっとこんなことが書きたいんだと見つかったから

・考えるというのは自分に問いかけることだと思い,自分に問いかけると書く内容がよ り多く浮かんでくるから

・自分の考えがあるからこそ文章にしてあらわすことができると思うため。ただ自分の 考えたことを書き出してそれを文章に順序よく並べていくことは,考えるだけででき ることではないかなあとも思いました

正解は自分の中にあるということが腑に落ちた(非常に)

・大学生,同級生と話をしながら掘り下げていくウチにシートに書いていたこととは全 く違うことやエピソードがどんどん出てきて自分が本当に伝えたいことがわかったか ら

・大学生,同級生と話をしていくと,同級生と私には個々のエピソードがあって,それ を表面にださなければ,相手には「何でそう思うの?」という経緯が伝わらないこと がわかった(気づいた)から

・どっかから引用した言葉では絶対に自分の思いを伝えることは出来ないし,自分が体

−7 0−

( 2 2 )

(23)

験したことから自分の思いが生まれるから。

・考える=自分が感じたことをまとめる,感じる=自分の心が本能的にそう思う,心=

自分の中にある,から

・書くべきことは自分の主感を掘り下げそのなかでさらに発見され書き出していくと 思ったから

・考えていくうちに自分がそう思う理由などが浮き彫りになっていったから

・自分の考えがもとになっているのだから,正解も自分の中にあると思う

・自分の頭にはないと思っていたものでも,自分に対して疑問を投げかけることで頭の 奥で眠っていたエピソードや,なぜそう思ったかなどが引き出されたから

・自分が何者なのかということに非常に関心が持てたから

・中学のとき悩んでいるときにさんざん考えていたので前から知っていた 正解は自分の中にあるということが腑に落ちた(まあまあ)

・自分が納得するものが答えだから

・ネットや本から引っぱってきた文はその人の色や味が出ていなくて違和感をかじるし,

味のある文は個性ある人が書いているから

・自分を掘っていくと,答えにより近い解答がでてきたから

・話すことで自分が書きたいことが自分の言葉ででてきました,自分が考えて自分から 動かないと答えはでないんですよね

・正解は自分の中にあるということは前から感じていました

・漠然と,なにか書きたい本質がある,というのはわかるんですが,迷子になってたど り着けないのでまあまあを選びました

参考文献 遠藤功『現場力を鍛える』東洋経済新報社,2004

藤原和博・重松清・橋本治『情報編集力をつける国語』ちくま文庫,2007 Florida, R., 2002, The Rise of the Creative Class, BASIC BOOKS

Florida, R., 2005, Cities and the Creative Class, Routledge

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池上彰『伝える力』PHP ビジネス新書,2007

北川達夫・平田オリザ『ニッポンには対話がない:学びとコミュニケーションの再 生』三省堂,2008

Landry, C., 2000, The Creative City, London Comedia

松澤芳昭・大岩元「産学協同の Project-based Learning によるソフトウエア技術者教育 の試みと成果」 ,情報処理学会論文誌 Vol.48. No.8,2767 ‐ 2780,2007

バーバラ・ミント,山崎康司訳, 『新版 考える技術・書く技術』ダイヤモンド社,

1999

バーバラ・ミント,山崎康司訳, 『考える技術・書く技術 ワークブック 上』ダイ ヤモンド社,2006

Project-based Learning 型プログラム導入の可能性と課題(田村・兵土) −7 1−

( 2 3 )

(24)

バーバラ・ミント,山崎康司訳, 『考える技術・書く技術 ワークブック 下』ダイ ヤモンド社,2006

野矢茂樹「言葉と言葉の関係を緻密に検証する」 , 『考える技術の教科書』DIAMOND ハーバードビジネスレビュー別冊 12 月号,78 ‐ 82,2008

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田川まさみ・田邊政裕「コンピテンス基盤型教育」 ,千葉大学医学部『千葉医学』82,

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高橋俊介『人が育つ会社をつくる キャリア創造のマネジメント』日本経済新聞 社,2006

高橋俊介『キャリアをつくる 9 つの習慣』プレジデント社,2008

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山口一男『ダイバーシティ』東洋経済新報社,2008

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(2009.3.31)

−7 2−

( 2 4 )

参照

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