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論文内容の要旨及び論文審査結果の要旨)

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全文

(1)

韓日両言語における感覚語場の対照研究 : 韓国語 の感覚形容詞を中心として

著者 孫 京鎬

著者別名 Shon, Kyeongho

雑誌名 金沢大学大学院人間社会環境研究科博士論文要旨(

論文内容の要旨及び論文審査結果の要旨)

巻 平成18年度6月

ページ 115‑128

発行年 2006‑06‑01

URL http://hdl.handle.net/2297/5324

(2)

名孫京鍋

韓国

博士(文学)

社博乙第18号 平成17年9月30日

論文博士(学位規則第4条第2項)

韓日両言語における感覚語場の対照研究 (韓国語の感覚形容詞を中心として)

(AComparativeStudyofSense‐FicldsinKoreanandJapanese)

委員長大瀧幸子

委員柘植洋一,加藤和夫,南相班

本籍 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

論文審査委員

学位論文要旨

、研究目的

本論文の目的は次の3点である。

(1)韓日両言語における感覚語彙を「語場の理論」および「認知言語学」の語彙・意味論に基づい て分類し、意味分析して、その体系化を図る゜

(2)韓日両言語の感覚語彙の体系について比較対照し、その類似点と相違点を明らかにすることに よって両言語の感覚語彙の全体像を示す。

(3)韓日両言語の感覚語彙の差異を外国語教育に応用することによって、言語文化理解に貢献する。

二研究方針

本論文は上記の目的を達成するために、次のような方法論を採用した。異文化理解を深めるために は、どちらの文化にもひきづられることのない感覚表現を比較するための抽象的な基準をたてたうえ で、その基準を韓日両言語にあてて語彙体系を明確にする必要がある。したがって、本論文ではトリー アの「語場の理論」を採用し、さらに感覚を知覚・感情と区別したうえで、感覚語場という概念を「身 体内部または外部からの刺激を受けて、目・耳・鼻。舌・皮膚などの感覚器官を通して感じられた意 識内容を表した感覚語彙の集まり」と定義した。そして感覚語場には「視覚。聴覚・嗅覚・味覚・皮 膚感覚・体内感覚」の6種類の語場を設定し、その相互関係を認知言語学で提唱されている「共感覚 的メタファー」と「マッピング機能」によって転移の方向と比楡的概念の拡張として捉えなおした。

三.感覚語場と意味領域

本論文ではT感覚語場のうち、他の研究者によって「次元(量)」として共感覚的メタファーに組 み込まれている「長短・高低・深浅・広狭・厚薄。太細・粗密・大小・遠近。遅速」を視覚語場の下 位分類である「動的視覚語場」として扱った。さらに「静的視覚語場」として「色彩・明暗・数量・

その他」をとりあげた。このように視覚語場を視線が固定するという観点から静的視覚語場とし、視

線が動いて察知するという観点から動的視覚語場と2分したのは、認知言語学の基本的枠組みとして

総合的な事態の認知規定の際、用いられる静的事態と動的事態という用語から導き出した本論文の独

(3)

創的な発想である。6つの感覚語場の中から視覚語場が重要視されるのは、共感覚的メタファーの体 系図において、視覚語場の語彙がもっとも「他の語場をも表す機能」に優れていること、また視覚心 理学でも次元形容詞が表す意味を「視覚に含まれる情報」として扱っていることからも裏付けられる。

各感覚語場の表す意味を体系的に記述するために下位分類を加えたのが意味領域である。この意味領 域の分類はシソーラスなど先行研究に基づくが、人間の感覚で捉えられた感じに対しての好悪の判断 を組み込んだ褒腫領域の設定は今までの身体部位による細分化では見られない言語学ならではの特 徴を反映した試みでもある。

四研究対象とする語彙の選定

この意味領域に属する語彙の選定は、まず感覚的なことがらを表現する語彙が非常に豊富であると いう特徴を持っている韓国語の中から形容詞を取り上げ、次に同じ領域の語彙とみなされる日本語の 形容詞(形容動詞も含む)を当てはめる方法を取った。すなわちいわゆる感覚形容詞を分析対象にと

りあげているが、その理由は次のようである。

(1)語種からみた感覚形容詞は韓日両言語ともに固有語がほとんどであり、歴史的にも早くから発 生した基礎的なことばである。

(2)韓日両言語の感覚形容詞の中から色彩形容詞とか味覚形容詞とか温度形容詞などは語彙体系化 されていることがすでに明らかになっているので、感覚形容詞は両言語の比較対照の対象として 非常に有効な語場である。

(3)感覚語彙は韓日両国における伝統文化の多くの特徴が託されていることばである。

本論文はこの方法によって選定された韓日両言語の感覚形容詞を意味分析するにあたって、認知言 語学で提唱される「マッピング機能」に注目し、各形容詞が意味転移する語彙体系上の関連づけをマッ

ピングとして記述した。すなわち、マッピング機能の有無と、マッピングにあたって機能するコネク ターの記述をおこなった。この記述方法により、韓日両言語の感覚形容詞の意味的差異が明確にうき ぼりにされた。

以下、本論文で取り上げた感覚語場とその下位分類及び基本形容詞をく表1〉に示す。

116

(4)

<表1感覚語場と意味領域および基本語の分類〉

憲醗轤鐵 韓国語

感鴬語場 臼識語

召斗(geomda)

司叫(huida)

黒い 白い

号叫(bukda)

色彩領域

赤い

〒三コ一(pureuda)

午三斗(nureuda)

青い 黄色い

獣qKbakda)

明るい

明暗領域

。]暑叶(eodupda) 暗い

蕗斗(manta) 多い

静的

数量領域 司叶(jeokda)

少ない

視覚語場 計qKmakda)

清い

清濁

二ヨヰ(heurida) <濁っている〉

召4(jitda)

望叶(yeotda)

濃淡

薄い.淡い濃い

その他

の領域

清潔

ワ11癸司ゴー(kkekkeutada) きれいだ

q曹叫(deoreopda)

不潔 汚い

入I冒叶(saeropda)

計4(nakda)

新古 新しい

古い

豊叶(gilda)

割斗(jjapda)

長短領域

短い長い

蓋qKnopda)

貴q‐(natda)

視覚語場 高低領域

高い

低い

翌ゴー(gipda)

普斗(yatda)

深浅領域 深い

浅い

罰可(neolda) 広い

広狭領域 香叶(jopda)

狭い

〒判qKdukkeopda)

誹叫(yalda)

厚簿領域

厚い

薄い

動的

舌。‐(gulda)

フ}豈叶(ganeulda)

太細領域 太い

視覚語場

細い

日リヰ(baeda)

勺フ]可(seonggida)

粗密領域

細かい

粗い.まばらだ

ヨヰ(keuda) 大きい

大小領域

斗可(jakda)

小さい

国叶(meolda)

遠い

遠近領域

フト暫叶(gakkapda)

近い

=司叫(neurida)

遅い

遅速領域

H1}三q‐(ppareuda)

速い

号言叶(dunggeulda)

三月-ヰ(monada)

形状領域

丸い

角い

喧騒領域|入l工詞叶(sikkeureopda)

うるさい

聴覚語場 静寂領域|二号司叶(joyonghada)

静かだ

芳香領域|可オ晉叶(hyangiropda)

かぐわしい

〒司叫(gurida)

ヱヨヰ(norida)

嗅覚語場 悪臭領域 日]ヨヰ(birida) 臭い

ズ1ヨゴー(jirida)

酢"感覚 喬場 ゴ意味領域 鱸…J、蜜?`K忠韓鬮議;ご鍵iij鰯jM蕊&: 蝿:‘鞠日本語。

視覚語場

静的

視覚語場

動的

視覚語場

色彩領域

明暗領域 数量領域

その他 の領域

清濁 濃淡 清潔 不潔 新古 長短領域 高低領域 深浅領域 広狭領域

厚簿稲城

太細領域 帆密領域 大小領域 遠近領域 遅速領域 形状領域

忍口.(geomda)

。卦(huida)

暑司.(1)ukda)

二三℃}(pureuda)

ユ:二三可.(nurcuda)

獣T1 o}詩r

)akda)

(eodupda)

感司一 割'二}

nanta〉

eokda)

引斗

ユヨ正

nakda)

(heurida)

智可-(jitda)

望q・(yeotda)

jワ11契司r}(kkekkeutad2l)

日割画.(deoreopda)

′<'1書斗(saeropda)

獣'二}(nakda)

望1℃}

割-コ‐ gilda)

ijapda)

蓋q‐

呉叫 mopda)

natda)

Zlq

普可. 『ipda)

盆tdn)

副斗 喬■}

leolda)

[)pda)

二判'1(dukkeopda)

皷可.(yalda)

舌可.(gul(la)

汗苣1二}〈ganeulda)

H1[才(baeda)

:フ1..(seonggida)

三コ(keuda)

zlq.(jakda)

盟可.(meolda)

フ}衝U}〈gakkapda)

L二劃4(neurida)

叫冥ゴー(ppare1Ida)

着蒄叶(dunggeulda)

三'+口.(monada)

黒い 白い 赤い 青い 黄色い

明るい 暗い

多い

少ない

清い

<濁っている〉

濃い 薄い.淡い

きれいだ

汚い 新しい

古い

長い

短い

局い

低い

深い

浅い 広い 狭い 厚い 薄い

太い 細い 細かい 粗い.まばらだ

入きい

小さい

遠い 近い

遅い

速い 丸い 角い

聴覚語場 1喧騒領域

静寂領域

人1五甫匝}(sikkeureopda)

王号司-コ.(joyongllada)

うるさい I繍かだ

嗅覚語場

芳香領域

悪臭領域

憩う|暑口.(hyangiropda)

〒ヨロ.(gurida)

エヨ'二}(、()rida)

ロ1ヨビ'.(birida)

ズ己IEI・〈jirida)

かぐわしい

臭い

(5)

皀叫(dalda)

甘い

竺叫(sseuda) 苦い

咽q{maepda)

入M‐(sida) 辛い

基本味覚領域

酸っぱい

外叶(jjada)

割ゴー(tteolda)

しょっぱい

味覚語場 渋い

萱吾入11号司叫(dalkomsaekeumhada)

豊晉智智計。(dalgomsamsamhada)

甘-酸っぱい

複合味覚領域

甘辛い おいしい、うまい

味覚褒艇領域

まずい

刀召可(geochilda)

ロリユ百坪(maekkeureopda) くざらざらする〉

でこぼこ領域

すべっこい・滑らかだ lEl牡司q-(dandanhada)

旱三司叫(budeureopda)

硬い

硬軟領域 軟らかい

旱召叶(mugeopda)

フ}闇ゴー(gabyeopda)

重い

触覚 軽重領域

(圧覚)

軽い

旱召叶(dukkeopda)

獣叫(yalda)

厚い

語場

厚簿領域

薄い

五三司叶(geonjohada)

二二司叫(chukchukada) く乾いている〉

乾湿領域 湿っぽい

皮膚

感覚語場 叫叫司口‐(ppakppatada)

曾召UHheolgeopda)

きつい

しめつけ領域

ゆるい

痛み領域’。}三pHapeuda)

痛い

痛覚

語場 フ閏匝}(garyeopda)

丑ス1劃可(ganjireopda)

痒み領域 かゆい

くすぐったい

目叶(deopda)

二石4(tteugeopda)

[4害司q‐(ttatteutada)

温覚領域 暑い

熱い

温度 暖かい

言叫(chupda)

ズトコー(chada)

寒い

感覚語場 冷覚領域

冷たい 中間温度

ロ|ス|そ乱ゴー(mijigeunhada)

ぬるい 感覚領域

廿三I舌}ヰ(sangkwaehada)

入凰司q-(sieonhada)

すがすがしい

褒義領域 気持ちいい

体内感覚語場

昏昏舌}ゴー(dapdapada)

ユニヰ(gopeuda) 息苦しい

屹義領域 ひもじい

※1韓国語のローマ字表記は()の中に示す。(以下同じ)

※2〈〉は日本語の形容詞(形容動詞)が欠けているところを示す。

118

味覚語場

基本味覚領域

複合味覚領域 味覚褒肥領域

忌r).(dalda)

鐙'才(sseuda)

H1にト(mael〕。a)

入1口.〈sida)

列目(jjada)

鬮百一(tteolda)

萱号入Ⅱ号舌}叶(dalkomsaekeumhada)

豊吾智も]司・'二L(dalgomsamsamhada)

曳Rj1己1.

劇RiT。}

mas:tda)

madeopda)

甘~い 苔い 辛い 酸っぱい

しょっぱい

甘酸っぱい 甘辛い

おいしい、うまい

まずい

皮膚 感覚語場

触覚 (圧覚)

語場

痛覚 語場

温度

感覚語場

でこぼこ領域 硬i険領域 軽重領域 厚簿領域 乾湿領域 しめつけ領域

痛み領域

痒み領域

温覚領域

冷覚領域 中間温度 感覚領域

ア1劃[ネ ロにZ判Z

geocbilda)

(mael[keurcopda)

Pl瓠ローヨ・[

早罠詞I (dandanhada)

(budeureopda)

J,二百ロ

ブ}闇可 Inugeopda)

gabyeopdEl)

二日L4(dukkeopda)

計'ニト(yalda)

剋轟司斗(geonjohada)

篝篝計:キ(chukchukada)

叫叫計'二1.(ppakppatada)

剋召耳(heolgGopda)

。}二コ.(apeuda)

フ噌可,(garye()pda)

Zlス|司卦(ganjircopda)

闇可.(deopda)

I'詞'二1-(tteugeopda)

呵・昊司・可.(ttatteutada)

蕎預}(chupda)

ストロ.(cbada)

胆1ス]暑司・耳.(mijigeunhada)

<ざらざらする〉

すべっこい・滑らかだ 硬い

軟らかい 重い 軽い 厚い 薄い

<乾いている〉

湿っぽい きつい

ゆるい 痛い かゆい

くすぐったい

暑い 熱い

暖かい

寒い 冷たい

ぬるい

体内感覚語場

褒義領域 艇義領域

廿望llさ|・'二!.(sangkwaehada)

入1劃511三}(sieonhada)

計計司.q・(dapdapada)

='Z二頁.(gopeuda)

すがすがしい 気持ちいい

息苦しい

ひもじい

(6)

五。形態の考察

形態的考察から見出すことができた韓日両言語の感覚形容詞の特徴を次のようにまとめる。

1)韓国語では一つ一つの単語である感覚形容詞を、日本語では形容詞と形容動詞、それに付随す る擬声語。擬態語によって表すという相違点が明らかになった。

2)豊富な感覚形容詞をもつ韓国語と感覚形容詞そのものは乏しいが、形容動詞および副詞などで 補っている日本語という語彙体系上の差異の要因を明らかにした。

(1)韓日両言語の感覚形容詞は造語法によってその数を増やすという類似点はあるが、その具体 的な方法においては大きな相違点が存在する。

①形容詞に付く接頭辞の数は両言語それほど差はないが、接尾辞の数と用法には大きな差が存 在する。

まず、韓国語において形容詞化する接尾辞は「一計(ha)‐」がある。擬態語にも付くなど 造語力が非常に高いので数多くの形容詞を作る。また各感覚語場に接続する接尾辞が別にあ ることも日本語とは異なる点である。感覚形容詞に付く接尾辞はおよそ50語ものある。

<例〉刎癸ユヰ(kkaekkeutada:きれいだ)、二号ユヰ(joyonghada:静かだ)

豊吾入Ⅱ吾ゴヰ(dalkomsaekeumhada:甘酸っぱい)

<視覚語場〉刀早二畳司叶(geomuseureumhada:薄黒い)

升」21豊叶(keodarata:とても大きい)

<味覚語場〉ロI豈司4(maekomhada:辛い)

<触覚語場〉叫ZE'三'三司叫(ppeokjeokjigeunhada;ずきずきする)

次に、日本語において形容詞化する接尾辞は「-ぽい」、「~たるい」、「‐臭い」形容動詞の語幹に付 く「‐い」ぐらいである。「倉臭い」は比較的造語力が高い。

く例〉黒っ区lムミ、しろっ廷竺、湿っ廷l△、甘ったるい 生臭」△、焦げ臭」△、磯臭い、かび臭昌竺、真っ黒い

②韓国語は基本語に「-コ(di)」を挿入して繰り返す形式と2もしくは3音節の形容詞語幹を 繰り返す形式によって形容詞の数を増やす。

<例〉蓋且蓋叫(nopdinopda:とても高い)

。1号。1号司叶(eodukeodukada:かなり暗い)

(2)音による感性的なニュアンス(語感)を三つの子音体系「平音。濃音。激音」と「陽母音・

陰母音」という母音の区別で表す。つまり音韻交替によって多くの形容詞が作られる。この点 は日本語の感覚形容詞と異なる大きな相違点である。しかもこのような区別は語幹だけでなく

接辞でも生ずる。

く例〉亘士忌引-.-(dandanhada) ̄且旦司4(ttanttanhada):硬い

亨宣ズ|召司ゴー(judeopjigeunhada) ̄亨亘ズ|吾司q-(huteopiigeunhada):蒸し暑い 具三菅叶(bodeurapda) ̄旱三首4(budeureopda):軟らかい

軒三二二司琲(pareUjokjokada) ̄苧三量三司口-(pureujukjukada):濁った青い

(7)

(3)色彩語と味覚語が各々相互に組み合わざって作られる複合色彩形容詞と複合味覚形容詞は日 本語では5語であるが、韓国語ではかなり存在する。その要因として次の3点が考えられる。

①語構成から派生語同士の組み合わせが多いので比較的新しい言い方であると思われる。

②複合色彩形容詞は「一計(rak)‐」を繰り返す比較的作りやすい造語法を持つという言語学 的な要因である。ただし、この方法によって作られる形容詞は使用範囲が狭くて顔色にだけ 使われる。

③複合味覚形容詞は上記の①のような言語学的な要因のほか、食材の多様性による社会文化的 な要因も考えられる。

く例〉韓国語:複合色彩形容詞9種15語、複合味覚形容詞9種16語 召千尋ゴー(geomnureota:黒みがかって黄色い)

暑二弩辛三弓司4(bulgeurakpureurakada:顔色が赤くなったり青くなったりする)

入|言曾曽司耳(sigeumttelttelhada:やや酸っぱくて渋い)

普芒豊吾司匡}(algeundalgeunhada:ぴりっと辛くて甘い)

日本語:複合色彩形容詞3種3語、複合味覚形容詞2種2語 赤黒い、青黒い、青白い、甘辛い、甘酸っぱい

3):感覚形容詞の基本語を音節数から見た時、韓国語は「召正当}(geomda:黒い)」のように2音節語が、

日本語は「くろい」のように3音節が多い。この特徴は各感覚語場で散見できるが、特に動的視 覚語場で目立っているという類似点がある。このような基本語の音節数の揃いからも感覚形容詞

という語場はかなり体系化されていることが分かる。

六.意味の考察(各論)

意味的考察の中から意味分析を通して明らかになった韓日両言語の感覚形容詞の特徴を次のよう にまとめる。

l)接辞によって感覚形容詞の意味の差が生ずる。韓国語はほとんど接尾辞によって表されるが、

日本語は接尾辞のほか接頭辞によるものもかなりあるという相違点が存在する。

(1)程度の差を表す。

①色彩語の明度。濃度。彩度を高くさせたり低くさせる。

<例〉韓国語:」lr7}響q‐(saekkamata)、。立早司同4(huikkheumurehada)

日本語:真っ黒い、 ほの白い

②分量・目方などを大きくさせたり小さくさせたりする。

<例〉韓国語:フ1℃}尊仁}(gidarata)、フトーコ零℃}(ganeudarata)

日本語:長ったらしい、か細い

③味の濃度を濃くさせたり薄くさせたりする。

<例〉韓国語:入1畳計ゴー(saekomhada:かなり酸っぱい)

日本語:甘ったるい

120

(8)

④密度を高くさせたり低くさせたりする。

<例〉韓国語:召全司斗(geomsunghada:まばらに生えた毛が黒みを帯びている)

(2)快。不’快の評価を表す。すなわち評価を上昇させたり下落させたりする。

<例〉韓国語:萱計ス'二司叫 (dalchakjigeunhada:ほどよく少し甘い)

日本語:どす黒い

2)韓国語では子音体系「平音。濃音。激音」と「陽母音・陰母音」という母音の区別によって感覚 形容詞の意味に微妙な語感の違いを生じさせる。一般に次のような違いが生ずるといわれている。

平音:普通の順平な語感、激音:硬濁で鈍重な語感、濃音:鋭利で明瞭な語感 陽母音…軽、明・浅・情・剛・近。密・小・少・狭。急・短・濃。鋭・強 陰母音…重。晴。深。燭。柔・遠・疎。大。老・広。緩・長。淡、鈍・弱

しかし本論文で取り上げた感覚形容詞の中でも上記の違いと異なる場合があった。特に激音と濃音 の関係、濃。淡は一定ではなかった。本論文で使った辞書の意味記述でも、これらの音声の違いと語 義との間の説明が不十分であるし、記述する語義も辞書によって異なる。本論文作成にあたっても、

一つ一つの感覚形容詞における音韻交替による造語と日常生活での使用実態をインフォーマント調査 を行って確認しようとしたが、確定的な調査結果を得るにはいたらなかった。すなわち、語形の許容 範囲と意義の使い分けが個々人によってきわめて大きいことが再確認された。

3)複合色彩形容詞の意味分析では結合順序が韓日両言語において正反対であるという相違点を見

出した。

く例〉韓国語:召暑叶(geombukda)、召芋ニヰ(geompureuda)

日本語:赤黒い、青黒い

すなわち韓国語は「黒十赤」と「黒十青」の順であるが、日本語は「赤十黒」と「青十黒」の順で ある。4語ともに対等関係の結合ではないので、意味の中心は後項要素にある。そこで韓国語「君号 4(geombukda)」は「黒みを帯びた赤い」という意味になるが、日本語「赤黒い」は「赤みを帯び

た黒い」となるのである。

七.意味の考察(比較)

意味的考察の中から意味対照を通して明らかになった韓日両言語の感覚形容詞の特徴を次のように まとめる。

1)韓日両言語の対照研究の対象として取り上げた基本語(派生語の一部を含む)の「派生的意味」

については、以下の三つのタイプを見出して、一覧表にまとめて記述した。

(1)「転義」とは共起する語句との影響で生ずる派生的意味である。共起する語句との制限が比 較的緩くて、連用形・連体形。終止形という活用形すべてに用いられる場合が多い。別の言葉 で置き換え可能。

(2)「共起する意味」とは共起する語句と一緒になって生ずる連語に近い派生的意味である。共

起する語句との制限が厳しくて、用いられる活用形も制約がある。別の言葉で置き換え不可。

(9)

(3)「慣用的意味」とは自ら派生的意味は持たないが、慣用句に含まれて用いられる意味である。

個々の構成要素である単語の意味からだけでは表現できない意味であり、用いられる活用形が 決まっている。別の言葉で置き換え不可能。

この三つのタイプの区別は感覚語場の韓日両言語の意味対照に用いられた語彙にすべて存在する ということではないが、派生的意味を分類記述するには非常に有効である。ここでは各章で示した表 の中から一部を一目でわかるようにまとめてく表2〉示す。

<表2韓日両言語における感覚語場の派生的意味の分類〉

(A転義)

感覚藷場 基鱗語 転義 語例

活用:形

備篝

手が~〈なる

汚い ~手

連用・連体・終止

韓国語

静的

召呼/黒い(geomda) 手が~

日本語

視覚語場 真っ~<忘れる

完全に 真っ~〈知らない 連用 韓国語

国会が~<なる 入lglz百斗/うるさい

紛糾する ~国会

連用・連体・終止 韓国語

(sikkeureopda)

聴覚語場

国会が~

連体・終止

韓国語

三号司叶/静かだ

落ち着いている

~』性格

(joyonghada) 性格が~

連体

日本語

評フ|吾叫/かんばしい

韓国語

嗅覚語場

美しい

~女性 連体

(hyanggiropda) 日本語

水を~<飲む 連用・連体・終止

韓国語

おいしい

~水

連体・終止 日本語 この水は~

~〈つける

皀叶/甘い(dalda)

手ぬるい

~点数

連用・連体・終止

日本語

点数が~

快く ~<受け入れる 連用 韓国語

韓国語 坐斗/苦い(sseuda) 不愉快だ

~経験

連体 日本語

味覚語場 咽斗/辛い(maepda) 厳格だ ~<つける~点数点

数が~ 連用・連体・終止 日本語

やつと ~<も逃げ切る 連用 日本語

~<つける~点数点

外叶/しょっぱい(jjada)

厳格だ 数が~

連用・連体・終止

韓国語

不機嫌だ ~表情 連用・連体・終止 韓国語

割ゴー/渋い(tteolda)

日本語

奥深い 一色 連体 日本語

旱百コ-/重い

触覚語場 (mugeopda)

反応が遅い パソコンが~ 終止 日本語

胸を~<する~胸胸

韓国語

。}三℃}/痛い(appeuda)

痛覚語場 つらい が~

連用・連体・終止

日本語 叫害司叶/暖かい

温度

(ttatteutada)

穏やかだ

~<迎える~家庭家 連用・連体・終止

韓国語

感覚語場 庭が~ 日本語

122

感覚語鰯

.。猛可二乳

田■

X:蘂辮Aや ~嫁蕊鑪汗 語例 活用形

|Ⅱ

鵜i霧

静的

視覚語場 誹斗/黒い(geomda)

汚い

完全に

手が~<なる

~手

手が~

真っ~<忘れる 真っ~〈知らない

連用・連体・終112

連用

韓国語 日本語 韓国語

聴覚語場

Kl旦箇可/うるさい (sikkeureol〕(la)

墨:司一叶/静かだ (joy()Ilghada)

紛糾する

落ち着いている

国会が~くなる

~国会 国会が~

~性格

性格が~

連用・連体・終1上

連体・_終止 連体

韓国語

韓国語 日本語 嗅覚語場 勢ズ署ゴー/かんばしい

(hyanggiropda) 美しい ~女性 連体 韓国語 日本語

味覚語場

ご可/甘い〈dalda)

坐叶/苦い(sseuda)

咽ロ./辛い(maepda)

外n./しょっぱい(jjada〉

劉琲/渋い(tteolda)

おいしい

手ぬるい

決く 不』愉'快だ

厳格だ

やつと 厳格だ

不機嫌だ

奥深い

水を~〈飲む

~水 この水は~

~<つける

~点数 点数が~

~<受け入れる

~経験

~<つける~点数点

数が~

~<も逃げ切る

~<つける~点数点 数が~

~表情

~色

連用・連体・終l上 連体・終''二

連用・連体・終止

連用

連体

連用・連体・終止 連用 連用・連体・終l上

連用・連体・終止 連体

韓国語 ロ本語

日本語

韓国語 韓国語 日本語

日本語

日本語 韓国語 韓国語 日本語

日本語

触覚語場 旱剰'El-/重い

(muge()pda》 反応が遅い

パソコンが~

と▲

[1本語 痛覚語場 。トヱジ./痛い(appeuda)

つらい

胸を~<する~胸胸

が~

連用・連体・終止 韓国語 日本語

温度

感覚語場

[4-癸司ロー/暖かい

(LtatteutadE,) 穏やかだ ~<迎える~家庭家

庭が~

連用・連体・終止 韓国語

ロ本語

(10)

(B共起する意味)

感蕊語鰯 鐘蕊語 鰯愚議議祷滕 鵜遥1綴凝議鰯 活繍彩 備篝

静的

コヰ/白い(huida)

雪、白髪 ~もの 連体 日本語

視覚語場

動的

鍬叶/短い(jjalda)

低学歴 かばんの紐が~

終止

韓国語

視覚語場

坐斗/苦い(sseuda)’食欲がない

ロの中が~ 終止 韓国語

~天気(風)

噌叶/辛い(maepda) 寒い 天気(風)が~

連体・終止

韓国語

味覚語場

眠い 目が~

終止

日本語

罰可/渋い(tteolda)

けちである 財布が~

終止

日本語

フ掴可‐/軽い

韓国語

軽食 ~食事 連体

(gabyeopda)

日本語

触覚語場 旱百コ/重い

重病

~病気 連体

日本語

(mugeopda)

連体・終止|韓国語

温度

感覚語場

三石叫/熱い

~仲

(tteugeopda)

恋愛関係 仲が~ 連体 日本語

(C慣用的意味)

感蕊譲鶏 基議語 蕊j趨溌愚議麟〆躯i蕊繍繊議譲繭 溌穏蕊

備鍔

意地悪い 腹~ 終止

韓国語

静的

召叶/黒い(geomda)

日本語

視覚語場

生きている 目の~うちに

連体 日本語

勗叶/広い 足が~ 韓国語

交際の範囲が大きい 終止

(nureuda)

動的

視覚語場

ヨゴ./大きい 顔が~ 日本語

本末転倒である 腹よりへそが~ 終止 韓国語

(keuda)

〒司叶/(きな)臭

嗅覚語場 い(gurida)

刑務所に入る

~飯を食う 連体

日本語

~汁だけ吸う

韓国語

萱ゴー/甘い(dalda) 他人の利益を得る

連体

~汁を吸う

日本語

味覚語場 小さくてもあなどれ

小さい唐辛子が~

韓国語

咽叶/辛い(maepda)

ない 山椒は小粒でも 終止

びりりと~ 日本語

フト闇叫/軽い

韓国語

軽率だ 口が~ 終止

(gabyeopda)

日本語

触覚語場

旱召叶/重い

韓国語

寡黙である 口が~

終止

(mugeopda)

日本語

嫉妬する 腹が~ 終止

。}三℃}/痛い

韓国語

痛覚語場 (appeuda) つらい経験をする’~目を見る 連体

日本語

温度

三百コ/熱い

ひどい苦痛を伴う試

~味を味わう 連体 韓国語

感覚語場 (tteugeopda)

線を受ける

蕊蝋語場 基本語:麹

PⅡ缶R百LN古

聡iij蕊;す慧慧味 欝霧i患する語蕊澪 ‘i守涜fg形

[■聖?

備考

静的

視覚語場 ご''二}/、ぃ(huidB 雪、汽髪

~もの

連体 日本語

動的

視覚語場

識'二}/短い(jja:da 低学歴

かばんの紐が~

終」上

韓国語

味覚語場

。‐/苦い(sseuda)

潤叶/辛い(maepda)

劇]二}/渋い(tLeolda)

食欲がない 寒い

眠い

けちである

ロの中が~

~天気(風)

大気(風)が~

日が~

財布が~

終llZ 連体・終止

終止 終止

韓国語 韓倒語

11本語

『;本語

触覚語場

フト闇仁}/軽い (gabyeopda)

早剰亡}/重い (muge()pda)

軽食 重病

~食事

~病気

連体 連体

韓国語 日本語 日本語 温度

感覚語場

正利己./熱い

(tteugeopda) 恋愛関係

仲が~

~仲

連体L遜塑皇 連体

韓国語 日本語

感覚語場息 藻蒸誘‘蔭,鞠』 懲起`li蕊艤i味 鍵鶴する語燕: ;fiiiiliiiiii蟻`:勘 蔚考

静的

視覚語場 石可./黒い(geomda) 意地悪い

生きている

腹~

目の~うちに

連体

国語 本語 木語

動的

視覚語場

劉可./広い (nureuda)

三rW大きい

(keudEl)

交際の範囲が大きい

本末転倒である

足が~

顔が~

腹よりへそが~

終ニヒ

終」上

国語

本語

韓国語

嗅覚語場 辛閏[二}/(きな〉臭

い(gurida) }{リ務所に入る ~飯を食う 連体 日本語

味覚語場

豊口./1才い(dalda)

智。./辛い(maepda)

他人の利益を得る

小さくてもあなどれ

ない

~汁だけ吸う

~汁を吸う

小さい唐辛子が~

111椒は小粒でも びりりと~

連体

終止

韓国語

日本語

韓同語 日本語

触覚語場

フ噌卦/軽い (gabyeopda)

圏買./重い nugeopda)

軽率だ

寡黙である

口が~

'1が~

終l上

終止

韓国語

【1本語 韓国語

日本語

痛覚語場 。、エロ/痛い

(appeuda)

嫉妬する

つらい経験をする

腹が~

~Rを見る

連体

鯨国語 R本語

温度

感覚語場

摩計卦/熱い (tteugeopda)

ひどい苦痛を伴う試

線を受ける ~味を味わう 連体 韓国語

(11)

2)韓日両言語の感覚形容詞の「共感覚的メタファー」については、国広哲弥の体系図と本論文の 提示案をく図l〉に示す。国広の体系図と提示案との相違点は次元を立てず視覚にしたことと本 論文で収集した用例に基づく「触覚→嗅覚」、「嗅覚→味覚」、「嗅覚→視覚」、「嗅覚→聴覚」を加

えたことである。

く図l共感覚的メタファーの体系図〉

(1)国広哲弥

-傍

艫1艫

‘元葱

虫覚一傍味覚一傍嗅覚

檸I

(2)本論文の提示案

艤蝋一鷆葱1

~し視覚

|「 ̄ ̄ ̄

触覚一沙

=懐聴覚

(例)①「触覚→嗅覚」〈韓国語〉叫癸証軒7](ttatteutanhyanggi:暖かい香り)

〈日本語〉暖かい香り、なめらかな香り、湿っぽい匂い

②「嗅覚→味覚」〈韓国語〉工士註既(gosohanmat:ゴマの匂いがする味)

子牛註既(gusuhanmat:おこげの匂いがする味)

日1剋曵(birinmat:生臭い味)

〈日本語〉こうばしい味、生臭い味

③「嗅覚→視覚」〈韓国語〉詳刀三岳科(hyanggirounsaek:こうばしい色)

.〈日本語〉かんばしい色、こうばしい色

④「嗅覚→聴覚」〈韓国語〉〒〒註号士司(gusuhanmoksori:素朴で味わい0

〈日本語〉かぐわしい声

素朴で味わいのある声)

3)韓日両言語の感覚形容詞の「マッピング」については、基本的意味が対義語の関係をなす2語 がそれぞれ派生的意味への意味転移の際、意味の軸であるコネクターを通してペアで行われる

「ペアマッピング」とシングルで行われる「シングルマッピング」に分けるということでく図2〉

とく表3〉に示す。図表で分かるように基本的意味が薄れることにつれてマッピングの形もペア マッピングからシングルマッピングへ移って行く傾向が見られる。コネクターの数によっても韓 日両言語の差異が見られる。例えば、味覚の場合、韓国語は辛いのコネクターが多いが、日本語 は渋いのコネクターが多いことが分かる。語彙の意味の差はもちろん文化との深い関わりがある ことの証拠である。

124

(12)

<図2「ペアマッピング」と「シングルマッピング」〉

くぺアマッピング>くシングルマッピング>

コネクター

a。 ノー

若 b・

基底スペース oaI

:iJン

'

新スペーム:ご上

新スペー

a:召琲

黒い

b:コヰ

白い

a':叫司7}召叶 髪が黒い b':叶ヨフトゴヰ

髪が白い

a:弓q‐

黒い b:。E}

白い

a':削今。1召4 M頁黒い b':“朝会。1.4

掌腹白い

<表3「ペアマッピング」と「シングルマッピング」〉

蔑溌蝋

感蕊藷錫 蕊鱗的i慧味

割譲瓢議湧j ̄ 霧潔瞳熟議然巍

備考

老若 髪が白い

召叫/黒い

髪が黒い 韓・日

静的

視覚語場 (geomda)

。rW白い

非良心的 腹黒い

(huida) 良心的 × 韓・日

(寿命)長

人中が長い× 韓国語

(忍耐性)強

気が長い

召叶/長い

弱 気が短い 日本語

(gilda)

割叶/短い (盗癖)有

手が長い

(jjalda)

imE × 日本語

(長居)可能 不可能

尻が長い× 日本語

(思いやり)有

度量が広い

i脈

度量が狭い

韓・日 動的

視覚語場 晶叫/広い

(neolda) 足が広い

香斗/狭い (交際範囲)大 × 韓国語

(jopda)

小 顔が広い

× 日本語

(間柄)親

間柄が遠い 間柄が近い 韓・日 望叫/遠い

(meolda) ×

7門二に}/近い

(感覚)鋭

耳が遠い 韓・日

(gakkapda)

×

気が遠くなる

日本語 入|互詞'二}/うるさい

(一家言)有

(sikkeureopda)

二号司斗/静かだ 料理にうるさい

聴覚語場 無 × 日本語

(joyonghada)

引飢r祝うまい

(masitda)

引叡4/まずい

上手 歌がうまい

味覚語場

下手 歌がまずい 日本語

(madeopda)

125 鰯11i鋳聾篭露

感鼬語場 `t蕊驚{蕊蕊、蕊ii

… ̄鯛:(…翻回iHi*●

籔コネクタ録~

ーー別、 T2ビ

;ヅⅢ!:i譲蕊mjJjJ

四円エヱ苑ロ仔凶

露議鍵Ⅲ、 (艫『

ぜ-F謬蕊

静的 視覚語場

百'二1./黒い

(geomda)

コヨ./;囮Tい (huida)

老若

非良心的

良心的

髪が白い、

髪が黒い

腹黒い

緯・日

緯・日

動的 視覚語場

蓬ロー/長い

(gilda)

計目./短い

(jjalda)

割司./広い

(neolda)

香ゴー/狭い (jopda)

團耳/遠い

(meolda)

7}藩仁}/近い

〈gakkapda)

(寿命)長 短 (忍耐性)強

弱 (盗癖)右

(長居)可能

不可能 (思いやり)右

イllf

(交際範囲)大

(間柄)親 疎 (感覚)鋭

気が長い 気が短い

度量が広い 度量が狭い

間柄が遠い 間柄が近い

人中が長い

×

手が長い

×

尻が長い

×

足が広い

×

顔が広い

×

×

耳が遠い

×

気が遠くなる

韓国語 H本語 11本語

日本語 緯・日

.韓国語 []本語

蝉・H 緯・日 日本語

聴覚語場

入1二剥叶/うるさい (sikkeureopda)

二号司c}/静かだ (joyonghada)

(‐家言〉有

j胚

科・理にうるさい

× 日本語

味覚語場

引飢'1/うまい

(masitda)

引散[Wまずい (madeopda)

l二手

下手 歌がうまい

歌がまずい 日本語

(13)

(行動)軽率 慎重

フト閨呼/軽い

尻が軽い

尻が重い

日本語

(gabyeopda)

旱召叫/重い

触覚語場 (長居)可能 尻が重い

(mugeopda) 不可能

尻が軽い 韓国語 三百q‐/熱い

(試練の経験)

温度

(tteugeopda)

え}rW冷たい

熱い味を味わう 韓国語

感覚語場

×

(chada) 無

八本研究の価値と残された課題

上記の記述のように本論文は、今まで行われてきた感覚語彙に関する研究を踏まえて-部ではなく 感覚全体にかけて韓日両言語の感覚形容詞を取り上げ、その相互関係を比較対照して語彙体系を明ら かにし、意味分析および意味の対照による意味的差異も明確にし、感覚形容詞の全体像をまとめたの が大きな成果である。

また意味的な類似点と相違点は韓日両国の言語文化理解を深めるのに役立った。本論文で採用した 研究方法は「感覚語場」の考察に非常に有効であったため、この方法を用いて感情語彙の考察にも取 り組んで、それぞれの「語場」の語彙体系化と意味的差異を明らかにすることは今後の課題とする。

Abstract

Thisresearchdefinedtheconceptofsense-wordsfieldas1Iacollectionofsense-wordswhichexpresses internalorexternalstimuliassensesperceivedthroughsensualorganslikeeyes,ears,nose,tongue,skin,andso on,I1configuredI1sight,sound,smell,taste,touch,andintemalsenseIIassixdifferenttypesofwordfields,and thenidentifiedtheircorrelationasanexpansionoftransferreddirectionandmetaphoricconceptinregardsto i1synaestheticmetaphor11and1ImappingfUnction'1.

Followingarethemolphologica]/semanticfeaturesofeachsense-wordsfieldtypeidentified (1)Morphologicalfeatures

①WhilesenseadjectivestakevariousfOrmsaccordingtouseofdifTerentaffixesandresultingderivative

wordsinbothKoreanandJapanese,KoreanhasamuchricherarrayofsenseadjectivesthanJapanese duetodifferentiationbythephonologicalalternationsanddevelopmentofsuffixeswhicharenon- existentinJapanese.

②AsfOrthecomplexadjectiveswhicharefOrmedbycombiningsensewords

(color-taste),KoreanexpressionsaremoreabundantthanJapanese,whichcanbeexplainednotonly

bydifferencesinwordfOrmationbutalsobytheKoreanpeople1stendencyoftediouslydiversifyingand classifyingfOodrecipes,etc.

(2)Semanticfeatures

①Whilethetransfe1Teddirectionaccordingtosynaestheticmetaphor,Le,

modificationandmodihedrelation,isgenerallyknownasunilateralfromtouchtotasteandsmell,and thereversemodificationrelationisnotthoughttobepermissible,modifcationrelationfromsmellto tasteactuaUyexists・TherefOre,thetransferreddirectionoftasteandsmellisnotunilateralbutmutuaL

②Whentwobasicmeamngsfbrmonescnseadjectiveandthatsenseadjectiveisusedforitsderived meaningasanexpansionofthemetaphoricconcept,itcaneitherbemutuallypaired(pairmapping)or unilaterallyunpaired(singlemapping).

126

触覚語場

フl劇可-/軽い

(gabyeopda)

早召'キ/重い (mugeopda)

(行動)軽率 慎重 (長居)可能 不nJ能

尻が軽い 尻が重い 尻が重い 尻が軽い

日本語 輪国語

温度

感覚語場

堅Z1Iキ/熱い (tteugeopda)

ズトU1./冷たい (chada)

(試練の経験)

有 無

熱い味を味わう

× 韓国語

(14)

論文審査結果の要旨

孫京鍋氏の学位請求論文は、感覚を表す韓国語形容詞と、その韓国語とほぼ同等の意味を表す日本 語との対照研究である。両言語の形容詞に関する先行研究と異なる本論文の独創的特徴として評価で

きる点は、以下の6点にまとめることができる。

(1)両言語からどの感覚形容詞を選んで比較対照するかを決定づける際に、トリーアの語場の理論を 再検討した上で、従来の両言語の感覚語彙研究で用いられてきた分類基準とは異なる6種類の語場を 立てた。これらの語場は、常識的にアプリオリに設定されたようでありながら、身体感覚への意味論

的考察に裏付けられたものとして評価できる。

トリーアの語場の理論は1931年に示されたものだが、現在の「語彙体系」に関する基礎的定義づ けを行ったものとして知られている。そこでは、語の集合体である語彙と語彙の間に語場が存在して いると規定し、語の意味は、それが用いられる文脈からの規制を受ける前に語場の中において個々に 関係づけられ規制を受けているとする。トリーアの定義に従えば、中間世界である語場の分け方は語 と語の関係に反映されているのであり、よって、語場の分類は言語ごとに異なっていることになる。

しかし、筆者はヴァイスゲルバー(1953年)による語場の概念の訂正を受け入れ、「人間は外界に対 するときに、それを解釈し意識化するという過程を通じて、まず一つの精神的中間世界に外界を作り 変える」とし、その精神的中間世界の一つが語場であると捉え直した。その結果、本論文で設定され た語場は、できるかぎり「人間の身体感覚に存在する普遍性」を重視したものとなった。また、視覚 語場という常識的に認められる身体感覚について、従来から視覚語場の特徴とされていた静的視覚語 場のほかに「動的視覚語場」を立て、認知言語学でも重要視する「視線による走査」に属する語彙と

して長短。高低。遠近などを扱った。このように、従来の形容詞分類で、感覚とは異なる「計量」と いう範蠕に属させられていた語彙を感覚語場の中で扱った結果、後に述べる「共感覚」についても新

しい解釈をすることとなった。

また、語彙分類に関する二つの大きな特徴のほかに、語場の分類に見られる6番目の語場として「体 内感覚」を立てて、快感・不快感が不可欠の意味としてともなう語彙(「すがすがしい」「ひもじい」等)

を扱い、感覚以上感'情以下という中間的語場を認めたことも本論文の特徴である。

(2)本論文では、両言語に同一の意味領域をあてはめ、さらにそれぞれの意味領域に基本語を選定し た上で比較対照を行っている。この手順は、従来の対照研究の方法に比べて個々の特徴を明らかにす る点で、数段効果的であったと評価できる。

本論文の語場の定義によれば、語場と語の意味との関係は、中間的精神世界のありかたと、それが 細分化された個々の言語形式が習'慣的に結び付けられたもの、ということになる。その細分化が進む につれ、普遍的な人間の身体感覚から離れて各言語社会で作り上げられる感覚の区別が明白となる が、その言語形式との結びつきが強くなる感覚の分類段階を「意味領域」と本論文では呼んでいる。

そして、本論文では筆者の母語であり、ネイティブスピーカーとしての内省が可能な韓国語形容詞の 意味領域に基準を置くことにした。その結果、その意味領域の基準を日本語にあてはめることにより、

日本語では形容詞のみならず、形容動詞や「~テイル形」などが表す意味まで比較の対象として取り 上げることになり、単なる品詞の同一性に縛られた語彙の選択とは異なる比較が可能になった。

さらに、選択した語彙の中から、単純語のうちで意味的に使用範囲が広く、かつ両言語にとっての 固有語を「基本語」としてとりあげて重点的に分析の対象とした。その結果、個々の意味領域につい て典型的意味と周辺的意味についての区別が両言語でどのように異なっているかを示す、的確な用例

を過不足なく挙げることができた。

(3)基本語を定めることにより、両言語の感覚語彙の形態的特徴の差異が明快に記述された。特に韓

国語の子音体系「平音。激音・儂音」の3つの区別と母音の「陰陽」の区別が同一の語の中に現れる

(15)

複数の形式について、微妙なニュアンスの違いが表現されていることを韓国語ネイティブに対する調 査に基づいて記述した一覧表は、丁寧な日本語訳とともに、これまでにない貴重な言語資料として評 価できる。

また、従来は等閑視きれていた「接尾辞を多用する韓国語に対し、接尾辞も使う日本語」という違 いや、「複合語の結合順序の違い」を指摘して注意を喚起した点もあわせて、今後の研究の成果がま たれる。

(4)基本語からの意味の派生のありかたを、本論文独自の観点から3タイプに分けてそれぞれ定義づ けしている。一つは「転義」であり、共起できる語彙の制限が比較的緩く、連用修飾成分。連体修飾 成分・終止成分のいずれでも用いられることが多い。しかも、同一言語内の同一文脈でほぼ意味を変 えることなく他の語に置き換えられるような意味が派生しているタイプである。二つ目は「特定場面 で共起する意味」である。共起できる語彙が相当制限され、ほぼ固定されてフレーズ化しているタイ プである。三つ目は「慣用的意味」である。構成成分である語の個々の意味からは想像がつかない慣 用的意味を表すタイプである。これらの定義に基づいて行われた派生的意味の対比一覧表は、文法構 造の違いによって語義の転移も異なっていることを簡潔に示した言語資料として評価できる。

日本語の形容詞研究については、その文法的位置(述語・連体修飾語。連用修飾語)によって意味 が異なることが、すでに『計算機用日本語基本形容詞辞書IPAI」をはじめとする先行研究に多く指 摘されているが、,韓国語についての同種の研究は未だ多くない。本論文の派生的意味についての記述 の教材としての有用性は韓国国内で高く評価され、前日語。日文学会長イムパルヨン教授の推薦によ

り、本論文の派生義比較研究の部分は用例辞典としての出版が予定されている。

(5)本論文は、個々の意味領域について、ほかの感覚を現す意味領域に関係づけられた「共感覚メタ ファー」を過不足なく確認することによって、共感覚メタファーの体系図として代表的なものとされ ている国廣哲弥氏の体系図に対して二つの訂正を加えた。一つは次元を削除すること、もう一つは嗅 覚から味覚へのメタファーが存在することの指摘であり、この訂正は、韓国語と日本語の比較対照に

よって可能になったものと評価できる。

(6)派生的意味は、ほとんどの場合、感覚語の意味として設定した6種類の語場や38の意味領域の いずれにも所属できない複合的意味を表現する。それらの派生的意味と基本義の関係を「マッピング」

の概念を援用して図示したことは、反義語関係にあるペアの語彙が両言語でどのように異なる意味機 能を担うかを端的に記述する方法として評価できる。具体的には、反義語としてペアになっている基 本語がそれぞれ派生的意味を生じた場合、転義、共起する意味、慣用語の3タイプのいずれについても、

その基本語の意味を「基底スペース」、派生義を「新スペース」とみなし、その二つのスペースをつ なぐ意味特徴を「コネクタ」と捉えた。このコネクタが反義語の双方に同じように機能すればペアマッ ピングの成立とし、新スペースが片方の語にしか生じずコネクタが反義語の一方にしか機能しない場 合をシングルマッピングとしたうえで、韓国語と日本語の反義語がどのように異なる派生義を生み出 すかを明確な基準に基づいて比較し、かつその結果をわかりやすく図示している。

口頭発表会では、複合語内の語順と意味の修飾非修飾を平衡して理解すべきか否かに関する質問があり、論文 検討会では、感覚の下位分類と客観性主観性との関わり、および感覚に加わる評価と感情との境界線の引き方が 議論された。また、音声的特徴についての記述を研究対象として如何に扱うべきかについても提案を受けたが、

いずれも筆者に対して今後に残されている研究課題を指摘し、激励する立場での発言であった。

以上の評価すべき点をふまえ、審査員一同は、孫氏の論文に対して、「独創的かつ効果的な意味記述の方法を 考案し、その方法を用いて韓国語と日本語の感覚表現体系を総体的かつ対照的に見渡せる意味記述を行った」と

して高い評価をくだし、文学博士の学位授与に値するものと判定した。

128

参照

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