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中国における非在来型天然ガス開発に関する 政策とその影響
柳 小正 1
1島根県立大学・濱州学院
中国には 、魅 力的な天 然ガ ス資源量 が存 在し、特 に非 在来型天 然ガ スは、有 望な エネルギ ー資 源とな る可能性を秘めている。近年の中国では、これまでは実用化されていなかった非在来型天然ガス開発は、
中国政府の全力的なバックアップなどにより、商用化へ向けての動きが活発化してきている。本稿では、
中国の非 在来 型天然ガ ス開 発に関す る優 遇政策や 、開 発計画、 開発 状況など を論 じた。そ の上 で、中国 政府が提 示し た優遇政 策は 、非在来 型天 然ガス開 発に 対してど のよ うな影響 を及 ぼしたか につ ていて考 察した。 考察 によれば 、優 遇政策は 非在 来型天然 ガス 開発の原 動力 であり、 非在 来型天然 ガス 開発を促 進してい る。 今後では 、非 在来型天 然ガ ス開発が 拡大 し、中国 のエ ネルギー 産業 には大き な変 化がもた らされると考えられる。
1. はじめに
非在来型天然ガス資源は、シェールガス、炭層ガス(コールベッドメタン)、タイトガ ス、メタンハイドレート、水溶性ガスなどの種類があり、後述のように世界的に膨大に存 在すると評価されている。近年では、これまで開発方法が実用化されておらず、採算性も 極めて悪い非在来型天然ガス開発は、科学技術の進歩を受けて活発化してきている。特に、
北米ではシェールガスなどの開発が進んでおり、今後とも世界的にエネルギー供給に大き な影響を及ぼすと考えられる。中国には非在来型ガスを含む豊富な天然ガス資源が存在し、
長期にわたり天然ガスの安定供給が期待できると認識されている。中国政府は非在来型天 然ガス開発を促進するため、関連政策や開発計画を制定し、非在来型天然ガス開発に対し て全力的にバックアップしている。
本稿では、中国の非在来型天然ガス開発に関する優遇政策や、開発計画、開発状況など を論じるとともに、中国政府が提示した優遇政策による影響について考察することにする。
まず、非在来型天然ガスの開発特徴などを紹介した後、本稿の分析方法を設定する。次に、
中国政府が提示した非在来型天然ガス開発に関する優遇政策や、開発計画を解説した上で、
非在来型天然ガスの開発状況および課題を検討する。最後に、優遇政策が非在来型天然ガ ス開発に対してどのような影響を及ぼしたかについて考察する。
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2. 非在来型天然ガス開発における政策の特徴と分析方法
中国の非在来型天然ガス開発に関する政策とその影響を分析するにあたって、非在来型 天然ガスの開発特徴や、中国のエネルギー政策における政府機関の機能を理解することが 必要とする。その上で、中国における非在来型天然ガスの開発政策に関する先行研究およ び本稿の分析方法を述べる。
(1) 非在来型天然ガスの開発特徴
現在、使われている天然ガスは、メタンを主成分とする可燃性ガスであり、賦存状況な どによって在来型天然ガスと非在来型天然ガスに分けられている。在来型天然ガスは、地 層にガス単独で存在するガス田ガス、あるいは原油と共存している油田ガス(随伴ガス)
に貯留している。非在来型天然ガスについては、冒頭にも述べたが、シェールガス、炭層 ガス(コールベッドメタン)、タイトガス、メタンハイドレート、水溶性ガスなどの種類が あり、世界のかなり多くの場所に存在することが認識されている。
非在来型天然ガス資源は、さまざまな形で賦存している。シェールガスは、頁岩(シェ ール)層内に滞留した天然ガス資源であり、浸透率も孔隙率も低いために従来の開発対象 にはなっておらず、非在来型天然ガスに分類されている。炭層ガスは炭層の孔隙内に吸着 される形で賦存し、炭層へのメタンガス吸着量は、亜炭、歴青炭、無煙炭などという具合 に、石炭化度が進むほど増える傾向がある。炭層ガスが豊富かどうかは、石炭層の厚さと 石炭の品質の 2つを主要なパラメータとして評価される。タイトガスは、在来型ガスが貯 留している地層よりも硬質な砂岩層に存在する天然ガスである。また、タイトガスの砂岩 層は、単独に存在するか、在来天然ガスと混在する形である。以上の 3つの非在来型天然 ガスは、米国などですでに商業生産されている。一方、メタンハイドレートは、メタンを
水(H2O)が囲む構造の物質であり、固体(氷のようなもの)であり、すでに海底や凍土
地帯に存在することが確認されており、開発方法が現在の段階ではまだ確立されていない。
水溶性ガスとは、水の中に溶解している天然ガス、あるいは、水の中に分離して存在して いる天然ガスを言う。それには、①微生物発酵メタン、②石油あるいはガスの貯留層から 分離したガス、③石炭の堆積層に存在するガス、の 3つの種類がある。水溶性ガスに関す る開発実験は、日本などで行われている報告がある。
非在来型天然ガス資源量は、在来型天然ガスよりも豊富に存在すると評価されるが、在 来 型 天 然 ガ ス に 比 べ て 十 分 な 調 査 が 行 わ れ て お ら ず 、 推 定 段 階 に と ど ま っ て い る 。IEA
(International Energy Agency)は、2015年に発表した長期エネルギー見通し(World Energy
Outlook 2015)において、世界の天然ガス資源量が781兆m3であると評価している。天然
ガス資源量の比率については、在来型天然ガスが55.9%、非在来型天然ガスが 44.1%であ る。非在来型天然ガスでは、タイトガス、炭層ガス、シェールガスがそれぞれ 10.4%、6.4%、
27.2%である。一方、世界のメタンハイドレート資源量は、具体的な数字が公表されず、
数千兆 m3に達していると推定されている。また、水溶性ガスは世界的に広範囲に分布し、
水溶性ガス資源量は在来型天然ガスと比べ大幅に超えていると推定されている。さらに、
非在来型天然ガス資源量の評価は、科学技術の進歩につれ、資源に対する認識や解析、調 査方法などによって変わる。今後では、地質調査が進むことで、非在来型天然ガスの資源
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量および可採埋蔵量は、さらに拡大することが予想され、非在来型天然ガスのさらなる開 発が期待されている。
非在型天然ガスの開発技術は、在来型石油・天然ガスの開発技術を基礎として発展して きているが、回収効率の面およびコストの面では、両者の間にまだ大きな差がある。Masters が 1979年に提唱した「天然ガス資源のトライアングル」は、天然ガス資源量の開発難易度 を示している(図-1)。「天然ガス資源のトライアングル」では、天然ガス資源の賦存環境 は、三角形の上方に在来型天然ガス、三角形の下方に非在来型天然ガスが表示されている。
三角形の底辺に向かうにつれ、豊富な資源量を有していると評価されるが、開発が困難に なり、より高度な開発技術および一定水準以上の天然ガス価格が必要である。
出所:JOGMEC、石油・天然ガス資源情報用語辞典 図-1 天然ガス資源のトライアングル
近年では、非在型天然ガス開発は、開発技術の進歩によって大きな展開が進みつつある。
非在来型天然ガスの開発技術は、主に水平坑井掘削およびフラクチャリング(水圧破砕法)
である。米国では、2002年までシェールガス開発にあたって垂直坑井掘削を中心としたが、
2002 年以降、水平坑井開発の成功を受け、水平坑井掘削技術を用いて掘削されている。水 平坑井法は、貯留層との接触面積が垂直坑井に比べて拡大するため、生産量が大幅に増大 する掘削方法である。水平坑井の掘削コストが垂直坑井の 1~1.5倍に対し、水平坑井の生 産量は垂直坑井の 3倍以上である(Yan Cunzhang et al., 2009)。さらに、1つの坑口位置か ら複数の水平部分を持つ坑井も出現している。このように、そもそも在来型石油開発で利 用されてきた水平坑井掘削は、シェールガス開発においても主な掘削方式とされている。
また、シェールガスの生産性をあげるためには、生産方式の工夫が必要である。図-1 に示したように、シェールガスの浸透率が 0.001md程度と極めて低いため、貯留岩とはな らず、シェールガス生産の経済性は在来型天然ガス田より低い。このように、シェールガ スは、同じ天然ガスでも頁岩層に閉じ込められ、地層内でガスが移動できないため坑井を 掘削しても商業的生産を可能とするガス生産量を達成することができない。シェールガス の生産量確保には、従来型よりも多くの坑井数を要するほか、フラクチャリングが必要で ある。一般的に、シェールガスはフラクチャリングが実施された後、商業開発の価値が出 てくる。フラクチャリングは、もともと在来型石油を開発する際に実施されている坑井刺
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激法の一種である。フラクチャリングを実施するにあたって、坑井内に高い圧力を加えて 採取層に割れ目を作り、同時に送り込んだ粒径の揃った粗い砂粒などのプロッパントによ り、割れ目が塞がるのを防止し、採取層内に浸透性の高いチャンネルを形成させる。こう して、低浸透率の頁岩層の流動性改善によって、生産能力を向上させることができる。
炭層ガスの開発についても、水平坑井掘削およびフラクチャリングが必要とされる。炭 層開発に用いられる坑井は、垂直坑井が主であったが、近年では水平坑井へ展開され、さ らに、マルチラテラル坑井が使用されるようになってきている。マルチラテラル坑井は、
その開発コストが普通坑井のコストより 3~5倍増加するが、生産量が10~20 倍になる可 能性がある。炭層ガス坑井の生産性は、石炭層の孔隙率や浸透率などの性状によってそれ ぞれ異なる。炭層ガス生産坑井の生産能力は、在来型天然ガス田の生産坑井と遜色ない坑 井もあるが、一般的には、在来型天然ガス坑井の 1/10~1/1,000 程度と低い。経済性を確 保するためには数多くの生産坑井が必要となるほか、生産方式の改良は不可欠である。フ ラクチャリングは、生産性を向上するため、炭層ガス開発においてよく用いられる方法の 1 つである。フラクチャリングが実施された炭層ガス井の生産量は、通常 5~20 倍に増加 する。米国の炭層ガス開発では、90%以上は水圧破砕による商業生産が行われている(Liu Renhe et al., 2008)。
このように、非在型天然ガスは、世界的に膨大に存在し、収益性も高いと認識されるが、
開発技術や投資もそれなり必要である。利益を生み出せて開発を継続するには、開発技術 の向上や政策支援などが求められる。
(2) 中国のエネルギー政策における政府機関の機能
エネルギー政策や計画の作成は、広範囲にわたって重要な政策課題であり、中国では、
複数の政府行政機構が担当している。国家能源局(長官副閣僚級)は、2008 年3月に行政 機構改革の一環として設立され、国家発展改革委員会の下に置かれ、同委員会が管轄する ことになっている。国家能源局の主要な機能は、①国家エネルギーの発展戦略、企画およ び政策を制定、関連する体制改革を助言すること、②石油、天然ガス、石炭、電力などの エネルギー管理を実施すること、③国家石油備蓄を管理すること、④新エネルギーの発展 とエネルギー業界の省エネルギーに関する政策、措置を制定すること、⑤エネルギー関連 の国際協力を実施すること、である。一方、国家発展改革委員会(長官閣僚級)は、中国 の経済発展に関する政策研究、立案、構造調整および経済体制改革の指導に責任を担う政 府行政機構であり、経済政策を一手に握る職務的重要性から小国務院とも呼ばれ、投資や 価格などの幅広い問題について決定権を有する。国土資源部(長官閣僚級)は、土地資源 や、鉱産資源、海洋資源など自然資源を管轄する政府行政機構であり、エネルギー資源に 関する探鉱権や開発などを管轄する。財務部(長官閣僚級)は財政を担当する行政機構で あり、財政補助金も管轄する。商務部(長官閣僚級)は貿易、投資などを管轄し、エネル ギー資源の投資が管轄の範囲内である。なお、以上の各行政機構は、中国の最高国家行政 機関である国務院(内閣に相当する)の構成部門である。
これまで述べたように、中国におけるエネルギーの管理機能は、国家能源局が完全にコ ントロールできない状態であるものの、中央政府の管轄内における行政需要が対応できて いると考えられる。また、地方政府は地域経済の発展を遂げるため、エネルギーを含む産
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業政策や措置を講じる。このように、非在型天然ガスを含む中国のエネルギーに関する政 策は、権限や財政などの要因によって制約を受けている中で策定が行われている。
一方、中国の天然ガス価格は、中央政府が管理している。中国のエネルギー価格につい て、石油製品の価格は国際石油価格と連動して 2008年から実施され、石炭の価格は何らか の形で国際価格との連動が実現している。しかし、中国の天然ガス価格は、市場価格(国 際価格)と非市場価格(指導価格)を共存させ、2 つの基準が適用されている。指導価格 の基本な考え方は、コストの補償、合理的な利潤、ユーザーの受入能力を配慮するという ものである。中国政府は一定の期間を置いて、指導価格を提示する。ちなみに、指導価格 の設定は、国家発展改革委員会が行っている。
天然ガス価格が統制されている中で、中国の天然ガス開発のコストは、エネルギー市場 のほかに、政府の政策にも左右される。中国の非在来型天然ガス開発をめぐって、どのよ うな政策を取り込むかが注目されている。
(3) 先行研究と本稿の分析方法
政策および影響分析は、広範囲な領域にわたって関連諸学問から研究され、多くの理論 モデル、分析方法がある。また、他国を参考にして自国の政策や法律の構築は、政策形成 技法として利用されている。一方、エネルギー政策は、政治の性格もあるために複雑にな り、さらに、時代の潮流に応じ、その国のエネルギー政策を決定するに際し、国際情勢を 見据え、国情に基づいて受け入れられるように基本的な枠組みが形成されている。現在に おいて、天然ガスは、世界的に供給の安定性や環境への負荷の低さから利用が拡大し、エ ネルギー政策における重要な位置づけにある。
米国における天然ガスを含む非在来型資源開発に主な成功要因は、豊富な非在来型資源 のほかに、技術的要因、コスト要因および政策要因であると分析されている(経済産業省, 2015)。技術的要因は、水平坑井掘削やフラクチャリングなど石油・天然ガスの技術革新を 背景に米国を中心に開発が進められている。コスト要因は、天然ガス販売価格が非在来型 天然ガスの開発に影響を与えることである。2000 年特に 2004 年以降、国際原油価格が高 騰し、国際原油価格に連動していた天然ガス価格も大きく上昇した。これにより、シェー ルガスなど非在来型天然ガス開発は採算に見合うものとなり、その開発が進められた。一 方、米国では、30年以上前から、天然ガスを含む非在来型資源の開発に関する資金投入や 規制緩和などを行い、これらの政策要因により非在来型資源の開発を促進している。特に、
開発技術が未熟で、開発経験が欠如する開発初期段階では、先進技術の導入や採算性を維 持するため、政府の優遇政策が必要とされている。
近年の中国では、米国の非在来型資源開発の成功をきっかけにし、開発技術の導入や開 発政策の実施により、非在来型天然ガス開発を促進しようとする動きがある。中国の非在 来型天然ガス開発は、国内天然ガスの供給基盤を強化することができる。中国の経済成長 に伴い、天然ガスの需要増は続いている。中国は国内生産能力の不足のため、2006 年に液 化天然ガス(LNG)の輸入を始め、2007 年には天然ガスの純輸入国になり、2016 年には 天然ガスの対外依存度が 30%に達している。一方、中国には魅力的な非在来型天然ガスの 資源量が存在し(表-1)、非在来型天然ガス開発は、国内のエネルギー供給として重要な 位置づけを担うこととなる。
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表-1 中国における天然ガスの資源量
資源名 原始資源量(兆m3) 備 考
在来型天然ガス 90.3 国土資源部による最新の評価(2015年)
シェールガス 122.0 国土資源部による最新の評価(2015年)
炭層ガス 30.0 国土資源部による最新の評価(2015年)
タイトガス 22.9 国土資源部による最新の評価(2015年)
メタンハイドレート >102 国土資源部中国地質調査局による最新の評価(2014年)
水溶性ガス 12~65 中国学者による最新の評価(2008年)
出所:柳 小正ほか: 中国における非在来型ガスを含む天然ガス開発に関する考察, 石油技術 協会誌, 86(7), pp.515, 2016.
中国における天然ガスを含む非在来型資源の開発政策に関する研究は、2008 年以降散見 される。Zhao Qingbo et al.(2008)は、2008年まで中国の炭層ガスに関する優遇政策をま とめた上で、政策提言を行った。Che Changbo et al.(2008)は、中国の非在来型資源の潜 在力を概観し、非在来型資源の開発現状および問題点を示し、開発の促進政策を提案した。
Pan Jiping et al.(2011)は、天然ガスの重要性および非在来型天然ガスの技術的な問題を 紹介し、中国の非在来型天然ガス開発にあたって、天然ガス価格の低下や税制優遇制度の 不十分などの問題を指摘した。Li Xiaodi et al.(2011)は、米国の非在来型天然ガス開発を 促進するための優遇制度を紹介し、中国の非在来型天然ガス開発を促進するための重要な 政策参考になるとの考えを示した。Ding Hao とDai Rufeng(2013)は、中国の非在来型資 源開発を促進するための固定的な優遇制度を設けておらず、非在来型資源の種類によって 優遇制度の差別化が実施すべきであると提案した。これらの研究は、優遇政策に関する提 案や問題点に限られていることが多く、また、優遇政策の研究である以上、政策の特徴や 政策の影響を検証したものはほぼ見られない。
本稿は、中国の非在来型天然ガス開発に関する優遇政策や、開発計画、開発状況などを 論じるとともに、実施した優遇政策による影響について考察することを目的とする。また、
本稿では、非在来型天然ガス開発に関する政策とその影響を分析するにあたって、歴史的 推移に基づき仮説を検証する。
本稿は、次のような仮説のもとで検証を進める。中国の非在来型天然ガスの開発政策は、
魅力的な国内在来型天然ガスを背景に、国内天然ガスの供給基盤を強化することを目指し ている。中国の非在来型天然ガスの開発事業は、中国政府が提示した非在来型天然ガス開 発に関する優遇政策を受け、順調に進んでいる。また、これまでは実用化されていなかっ た非在来型天然ガス開発は、商用化へ向けての動きが活発化してきている。このように、
中国政府が提示した非在来型天然ガス開発の優遇政策は、非在来型天然ガス開発の原動力 であり、非在来型天然ガス開発を促進している。
本稿の特徴は、次の 2点である。まず、非在来型天然ガスの開発特徴を示し、中国の非 在来型天然ガス開発の関連政策をまとめた上で、政策の特徴や政策の目指すものを明らか にする。次に、中国政府の開発政策が非在来型天然ガス開発に及ぼす影響について、歴史 的推移に基づき仮説を検証する。先行研究をみる限り、中国の非在来型天然ガス開発の関 連政策を整理したものはほとんどなく、政策の検証も行われていなかった。
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3. 非在来型天然ガス開発の優遇政策
非在来型天然ガス開発をめぐる政策分析にあたっては、中国の当時の非在来型天然ガス 開発に関する重要な動き・展開の背景に留意する必要がある。中国では、地表から掘削し て炭層ガスを抽出する炭層ガス開発は、1970 年代から試行されてはいたが、当時の鉱井選 択、開発技術、開発設備などの制限で、予期された効果には達しなかった。1990 年代に入 り、中国の開発企業は米国などの開発技術を導入し、炭層ガスの開発を本格化した。また、
1990 年代後半から、外国の関連会社は中国の炭層ガス開発事業に投資を行っている。中国 政府は国内非在来型天然ガス開発の状況をみて、非在来型天然ガスを促進するため、1996 年以降に税制優遇制度、開発助成金制度、開発の便利性など多数の優遇政策を制定した。
(1) 炭層ガス開発に関する税制優遇政策 a) 企業所得税の減免
中国政府は外資を誘致するため、外資会社および合弁会社に企業所得税の優遇政策を提 示している。炭層ガス開発の対外協同開発企業は、その政策の恩恵を享受している。1996 年 3月、財務部は通達を出し、石油資源対外協同開発企業に対する所得税の納税規定が炭 層ガス対外協同開発企業に適用されると規定した。対外協同炭層ガス開発企業の所得税に 対して「二免三減半」を実施する。すなわち、利益が生じ始めた年度の 1年目と2年目が 全額免除、3年目から5年目が半額免除の軽減税率の優遇措置が設けられた。
b) 付加価値税の返還
1997 年、中国政府は炭層ガス開発企業を対象に、付加価値税に対する優遇政策を提示し た。財務部、税務総局が制定した優遇政策では、外国企業との陸上での協同開発の場合、
実質 5%の付加価値税を徴収する。すなわち、中国企業が陸上で共同開発する場合、付加
価値税の払い戻しを実施し、13%の税率で徴収した後、8%を返還することにする。
こうした炭層ガス開発において付加価値税は、在来型天然ガスの開発事業と比べ 8%が 優遇されている。「中華人民共和国付加価値税暫定条例」第 2条第 2項によると、天然ガス の付加価値税は 13%とされている。さらに、炭層ガスの付加価値税は一般企業の増値税の
税率 17%と比較すると、付加価値税において大きな軽減を享受できることになる。
2007 年、中国政府は炭層ガス開発に対し、さらに有利な付加価値税軽減策を提示した。
同年 2月、財務部、税務総局が炭層ガスの開発を加速するため、「炭層ガス採取および開発 に関連する税収政策問題に関する通達」を達し、2007 年1月1日から付加価値税を調整す ることとなった。炭層ガス開発企業と炭層ガス販売企業に対し、付加価値税の払い戻しを 実施する。さらに、企業が払い戻し税を技術開発および再生産に投入する場合、企業の所 得税が免除される。通達では、1997 年には制定した中外協同開発に対する実質5%の付加 価値税が廃止される。
c) 関税の減免
炭層ガスの開発にあたって、国外から開発設備の輸入が行われる場合もあり、それに関 連して、中国政府は関税減免政策を提示している。1997 年 12 月、国務院は「輸入設備税
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収政策の調整に関する通達」を達し、1998年 1月1日から国家が奨励した国内投資プロジ ェクトおよび外商投資プロジェクトの輸入設備に対し、規定した枠内で関税および輸入付 加価値税を免除することとなった。炭層ガスの探査および開発用の輸入設備も免除対象と なっている。
その後、中国政府は改めて関税減免政策を維持することを表明した。2006 年 10 月、財 政部、国家税務総局、中国税関が「炭層ガス探査開発プロジェクトの物資輸入における輸 入関税の徴収免除に関する規定」を定めた。炭層ガス関連設備を輸入する際は、輸入関税 と輸入段階の増値税が免除される。
d) 開発設備の減価償却
炭層ガス開発設備の減価償却についても、中国政府が優遇政策を制定した。2007年2月、
財務部、税務総局は、「炭層ガス採取および開発に関連する税収政策問題に関する通達」を 達し、開発設備の減価償却優遇施策を提示した。具体的には、次のように設定されている。
独立採算企業が購入した炭層ガス採気ポンプ、掘削装置、探査装置など開発設備に対し、
ダブル定率法(double declining balance method)あるいは年数合計法(sum of the years' digits)
を利用して設備の減価償却を加速させ、減価償却期間を短縮する。独立採算企業が銀行融 資あるいは自己調達資金を利用して開発設備への投資を行う場合、国産設備投資の 40%相 当額を、設備を購入した年度に前年度により、企業所得税(増加した部分)の中から控除 する。
e) 鉱産資源税の減免
中国では、資源開発に対する税金は、探鉱権税、採鉱権税、鉱区使用税、資源税などが ある。「鉱産資源法」によると、探鉱権および採鉱権に対する有償取得制度を実施しており、
すべての企業は、探鉱権および採鉱権の使用費を納める義務がある。ただし、探鉱権およ び採鉱権に対する使用費は、事情により減免されることができ、具体的な方法および実施 手順は国務院が規定すると定められている。
探鉱権税および採鉱権税の減免について、国土資源部、財務部が 2000 年 6 月に発布し た「探鉱権および採鉱権使用費減免弁法」の通達では、次のように規定している。探鉱権 税は、第 1年度では全額免除、第 2年度および第3年度では50%免除、第4年度から第7 年度までは 25%免除される。採鉱権税については、鉱山建設の時期および稼働の初年度で は全額免除、稼働の第 2年度および第 3年度では 50%免除、稼働の第4年度から第7年度
まで 25%免除される。また、鉱山の生産中止する年には、採鉱権税は全額免除される。
一方、通常の鉱区使用費は「鉱産資源開採登記管理弁法」によれば、鉱区使用範囲の面 積に基づいて、1km2あたり1,000元を標準として毎年度に収めることになっている。鉱区 使用税に関しては、1995 年7月に修正した「中外合作開採陸上石油資源繳納鉱区使用費暫 定規定」において、在来型天然ガスの鉱区使用税を参照して定められる。その税率は以下 の通りである。
年度生産量が10億m3を超えない場合、鉱区使用税が免除される。
年度生産量が10~25億 m3の場合、生産量の1%の鉱区使用税が収められる。
年度生産量が25~50億 m3の場合、生産量の2%の鉱区使用税が収められる。
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年度生産量が50億m3を超えた場合、生産量の 3%の鉱区使用税が収められる。
中国政府は、「鉱産資源法」に基づいて炭層ガス開発に対する優遇政策を提示した。2006 年 6月に国務院が発布した「炭層ガス採出・利用を促進することに関する若干意見」にお いて、2020 年までに炭層ガス企業が国家の関連する規定に基づいて、探鉱権税および採鉱 権税の減免を申請することができる。
資源税については、2007 年 2 月、財務部、税務総局は、「炭層ガス採取および開発に関 連する税収政策問題に関する通達」において、炭層ガス開発の資源税を免除している。一 方、「中華人民共和国資源税暫定条例」では、鉱製品および塩を生産する単位あるいは個人 は、資源税の納税義務を有し、資源税を納めなければならないと定められている。在来型 石油開発は 1 トン当たり8~30 元、在来型天然ガス開発は 1,000m3当たり 2~15 元が徴収 される。
このように、中国政府は、非在来型天然ガスである炭層ガスの開発を促進しようと、一 連の税制優遇制度を用意している。これらの政策の特徴は、少しでも開発企業の財務をサ ポートすることが挙げられる。しかし、中国の天然ガス価格が政府の管轄下にあり、国内 の天然ガス販売価格を低く設定しており、税制面での優遇政策を提示しても、開発企業は 利益に結びつくとはいえない。こうしたことから、さらなる優遇政策が必要とされる。
(2) 炭層ガス開発の助成金制度 a) 炭層ガス開発助成金
中国政府は炭層ガス開発を促進するため、開発助成も用意している。2007年4月、財務 部は「炭層ガスの開発利用の助成に関する実施意見」を打ち出している。これによれば、
中央財政の炭層ガス開発企業に対する助成金額は、1m3の炭層ガスの採掘ごとに0.2元の 助成基準に基づいて算定される。具体的な助成金額は、「助成金額=(販売量+自社使用量
-発電使用量)×助成基準」という方程式で決定される。
これに加えて、地方財政が炭層ガス開発企業に対して適当な助成を与えることができ、
具体的な助成基準は各地方財務部門が決定する。例えば、炭層ガス開発が進んでいる山西 省では、省財政から1m3あたり0.05 元が提示されている。
2016 年、財務部は炭層ガス開発に対する助成金を見直した。同年2月、財務部は「十三 五期間において炭層ガス開発利用助成標準の通知」を達し、2016 年から 2020 年までの十 三五期間において、炭層ガス開発企業に対する助成金額は、1m3の炭層ガスの採掘ごとに 0.2元から0.3元に引き上げることにする。
b) 炭層ガス発電助成
上記の「炭層ガスの開発利用の助成に関する実施意見」においては、炭層ガスの利用に ついて、炭層ガスを発電に利用する場合、炭層ガス開発助成制度は適用されず、国家発展 改革委員会が制定した「炭層ガスの発電に関する実施意見の通達」を適用すると定められ ている。
国家発展改革委員会が 2007 年 4 月に制定した「炭層ガスの発電に関する実施意見の通 達」では、炭層ガスの発電利用する具体的な政策を提示した。同通達では、電力網企業が 炭層ガスによる発電された電力を、電力網系統に連系する便宜を供与することが要求され
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ている。また、売電価格は「再生可能な資源による発電価格および費用分担管理試行弁法」
を参照して定められ、炭層ガスによる発電助成金額は、1kWhごとに 0.25 元とされる。ま た、助成期間は 15年間となっている。
c) 炭層ガス販売価格
炭層ガスの販売に対する具体的な指導価格が出たのは、2007年である。同年 8月、国家 発展改革委員会は「炭層ガス価格の管理に関する通達」を出した。通達では、炭層ガス販 売価格についての方向性が提示されている。そこでは、地方政府に対し、天然ガス、石炭 ガス、LPガス(liquefied petroleum gas)など代替可能な燃料と同じ熱量比に対比させて炭 層ガスの価格を決定するとした。
(3) 炭層ガス開発の便利性 a) 対外協同開発独占権の廃止
1996 年 3 月、中国政府は中聯煤層気有限公司(1996 年に国務院批准により設立した炭 層ガスの探査、開発、輸送、販売などの国有企業である。以下、中聯煤)に対し、対外協 同開発に関する独占権を授与した。しかし、10 年後の 2007 年 9 月、中国政府は中聯煤に よる対外協同開発独占権を廃止した。国務院が修正した「中華人民共和国対外合作開採陸 上石油(同条例の附則では、「石油」を原油・天然ガスを指す)資源条例」では、炭層ガス 資源の対外共同開発は、中聯煤のほか、国務院が指定したその他の公司が寡占実施すると 記載されている。
その後、商務部、国家発展改革委員会、国土資源部は 2007年10 月、合同で「更なる炭 層ガス開発の対外合作に関連する事項の通達」を出した。その中では、炭層ガス開発にお ける更なる対外協同開発の原則、開発企業の条件、申し込み手順など関連する事項に対し て具体的な要求が提示された。さらに、炭層ガス対外協同開発について、中聯煤の独占実 施を改め、商務部、国家発展改革委員会および関連する部門が中聯煤以外に若干企業を選 択し、それらの企業は国務院が批准した区域内で外国企業と共同開発を遂行することがで きるとした。この改正は、中聯煤がもはや独占的に運営する権利を持たなくなったことを 意味する。
b) 天然ガスパイプラインの建設
中国では、2006 年まで天然ガスパイプラインにより炭層ガスの利用が制約されていた。
多くの炭層ガス開発地域では、天然ガスパイプラインが建設されておらず、炭層ガスが十 分に利用されていない状態にある。一部地域では開発した炭層ガスを利用せず、燃焼(ガ スフレアフレア)されていた事実もある。
これに対し、2006年 6月に国務院が発布した「炭層ガス採出・利用を促進することに関 する若干意見」では、天然ガスパイプラインの建設に関する審査・許可の権限の一部が地 方政府に委託された。天然ガスパイプラインの年間輸送能力が 5 億 m3を超える場合、国 務院の投資主管部門が審査・批准し、その以下の場合、省クラス政府の投資主管部門が審 査・批准する。また、炭層ガス発電プロジェクトについては、省クラス政府の投資主管部 門が審査・批准する。さらに、炭鉱企業の自家用の炭層ガスプロジェクトは、炭鉱企業が
99 自主的に判断し、地方政府の主管部門に報告する。
2014 年に入り、中国政府は非在来型天然ガスの開発を促進する対策として、天然ガスパ イプラインに関する条例を制定した。同年 2月、国家発展改革委員会は「天然ガスパイプ ライン施設建設および運営管理法」を公表した。同条例のポイントのひとつは、天然ガス パイプライン事業者の設備に余剰能力がある場合、第三者に対し天然ガスパイプラインを 公平に開放することを定めたものである。これにより、非在来型天然ガスの開発企業が天 然ガスパイプラインを投資せずに、既存の天然ガスパイプラインを利用することが可能に なる。
これまで見てきたように、中国政府は炭層ガス開発も含め、炭層ガス開発に関する事業 を対象に一連の政策を打ち出した。これらの政策の特徴は、開発企業の生産性を上げて開 発コストを下がることである。こうしたことも、中国政府は、炭層ガス開発のさらなる強 化を進めようとしている。一方、中国では、2000 年以降に米国のシェールガス開発の成功 経験を参考にし、シェールガスをめぐる研究・開発などの活動が行われている。シェール ガスは炭層ガスと同様に、非在来型天然ガスに分類され、シェールガス開発に対してどの ような政策的対応を講じるかが注目される。
(4) シェールガス開発に対する優遇政策
シェールガス開発に対する政策について、中国政府は、基本的に炭層ガス開発向けの助 成政策に準じた政策がシェールガスにも適用されることとする。異なるのは、開発助成金 である。前にも述べたが、炭層ガス開発企業に対する助成金額は、中央財政が1m3の炭層 ガスの採掘ごとに 0.2元(その後、0.3元に引き上げた)の助成基準に基づいて算定される。
これに対し、シェールガス開発企業に対する助成金額は、2012 年 11 月に財務部・国家能 源局が公表した「シェールガス補助政策」によると、2012年から 2015年の間に1m3のシ ェールガスの採掘ごとに 0.4 元の助成基準に基づいて算定するとされる。また、財務部・
国家能源局は 2015年6月、引き続きシェールガス開発に補助金政策を実施する通達を出し た。具体的には、2016 年から 2018 年の間に1 m3あたり 0.3元、2019 年から 2020年の間 に 1 m3あたり 0.2元を提示した。
以上ここまででは、非在来型天然ガス開発に関する優遇政策、経緯および主な内容を述 べた。これらの政策の発表時期は、2006 年および 2007 年が多かったことが分かる。その 理由について、この間、いくつの国家的な関連計画が公表されたことが挙げられる。関連 計画の公表順を見てみると、2006 年に公表した「中国中長期科学計画(2006~2020)」で は、炭層ガス開発についても言及した。また、2007年に公表した「炭層ガス(炭鉱ガス)
開発利用第 11次 5 か年計画(2006~2010 年)」(以下、炭層ガス十一五計画)は、中国の 初の炭層ガス開発計画である。中国政府は炭層ガスの開発計画を完成させるため、2006 年 および 2007年の間、さまざまな優遇政策を示して炭層ガス開発をより一層推進したと見ら れる。
一方、2013年に入り、これまで非在来型天然ガス開発に関する政策をまとめた「炭層ガ ス産業政策」および「シェールガス産業政策」が公表された。国家能源局は、同年 3月に
「炭層ガス産業政策」、同年 10月に「シェールガス産業政策」を発表した。「炭層ガス産業 政策」では、炭層ガス産業における発展目標、市場参入基準、探査開発計画、技術設備の
100
研究開発、資源の協同開発などを明確した。「シェールガス産業政策」では、シェールガス 開発を国家戦略的新興産業として位置づけ、引き続き各種の税制優遇政策やシェールガス 開発利用補助政策を実施することを強調した。
前にも述べたが、中国の天然ガス価格は政府の管轄下にあり、国内の天然ガス販売価格 を低く設定している。こうした中で、投資利益に結び、非在来型天然ガスの開発体制を維 持するために、中国政府は税制面での優遇制度、開発助成金などを提示し、非在来型天然 ガスの開発能力を向上させていると見られる。中国の非在来型天然ガスの開発能力につい ては、どの程度インセンティブを提供するかが関連分野の計画で制定されることになる。
4. 非在来型ガスの開発計画
中国のエネルギー計画は、主に 5か年計画の中で、基本方針や産業別の目標などの形で 設定され、5年の期間で達成すべき目標などが定められる。また、5か年計画のほかに、産 業発展計画などが提示される場合もある。2006年以降、中国政府は、非在来型ガス開発の 優遇政策を提示するとともに、いくつの非在来型ガス開発に関連する計画を公表した。そ の中では、段階的な発展方針や重点的な発展分野、生産目標などが開発計画として盛り込 まれた。
(1) 炭層ガス開発に関する計画 a) 炭層ガス十一五計画
国家発展改革委員会・国家能源局は 2006 年 6 月、「炭層ガス十一五計画」を発表した。
中国政府が炭層ガス開発に関する 5年間計画を提出したのは、初めである。同計画では、
炭層ガスに関する国内の資源状況、探査および利用現状が示されるのみならず、現状での 問題点、炭層ガス開発および利用によるメリット、さらに、同計画期間における炭層ガス 生産量の計画目標などが示された。
主な目標は、次のように定められている。炭層ガス開発の探査重点地域は山西省、陝西 省、新疆自治区、内モンゴル自治区などで、生産基地は泌水盆地とオルドス盆地東縁とな る。2010 年まで新たに確認された埋蔵量は、累計 3,000億 m3に到達する。2010 年の全国 の炭層ガス生産能力は 70億m3、2010 年の生産量(地表からの採掘量)は50 億m3に到達 すると提示されている。
b) 炭層ガス十二五計画
国家発展改革委員会・国家能源局は 2011 年 12 月、「炭層ガス(炭鉱ガス)開発利用第 12 次5か年計画((2010~2015 年)」(以下、炭層ガス十二五計画)を発表し、今後5年間 の炭層ガス開発に関する発展目標などを提示した。「炭層ガス十二五計画」では、前回の「炭 層ガス十一五計画」と比べ、生産目標を大幅に設定する。具体的には、新たに炭層ガス可 採埋蔵量を 1 兆 m3確認し、沁水盆地、オルドス盆地東縁という 2 大炭層ガス生産基地を 建設する。2015 年の炭層ガス生産目標は 炭鉱ガスを含む生産量を 300 億 m3とし、その うち、地表からの採掘量(生産量)を 160億 m3、炭鉱ガス抽出量を 140億 m3に到達する
101
と提示された。こうしたことから、中国政府は炭層ガス開発を重要な位置に置き、多数の 優遇政策に加え、炭層ガス開発の規模拡張を進めていくと考えられる。
c) 炭層ガス探査開発行動計画
2015 年2月、国家能源局は「炭層ガス探査開発行動計画」を公表し、2015年および「十 三五」期間(2016~2020年)において、炭層ガス産業の発展方針、開発目標、主な任務な どを提示した。2020年までの開発目標として、①新たに確認埋蔵量は1兆m3 に増加する こと、②炭層ガス生産量は 400 億 m3、そのうち、地表からの採掘量(生産量)は 200 億 m3 に到達すること、③3~4 か所の炭層ガス産業化基地を建設すること、と掲げられてい る。
(2) シェールガスに関する計画 a) シェールガス開発構想
中国では、2000 年からシェールガスに関する研究・開発が展開したものの、2009 年ま でに関連する国家的な計画は公表されていなかった。そのため、国土資源部は 2010 年 1 月、2020年までのシェールガス開発構想を提示した(中国政府公式ホームページ 2010年1 月 29日記事)。この開発構想は、中国政府のシェールガス開発に関する指導方針であると 考えられる。シェールガス開発構想では、いくつかの目標が以下のように打ち出されてい る。
中国のシェールガスに関する地質状況を確かめ、基礎地質データおよび系列図を作 成し、50~80か所の有力な開発ブロックを選出する。
有力な開発ブロックから20~30ブロックを抽出する。それらにおける確認可採埋蔵 量が1兆m3となる。また、いくつのシェールガス生産基地が開発され、シェールガ ス生産量は在来型天然ガス生産量の8~12%に達し、中国にとって重要なエネルギー 資源のひとつとなる。
中国の地質条件に合う地質理論および資源評価に対するパラメータ体系を形成する。
この体系を用いて、中国のシェールガス資源を明確にし、シェールガスの埋蔵量お よび生産量の趨勢を予測する。
違った類型のシェールガスに対する調査および探査・開発の技術体系を構築し、中 国の資源調査および探査・開発技術の基準・規範を形成する。
以上の目標を達成するため、開発構想では次のような 6つの主要任務が要求されている。
具体的には、①シェールガス資源の戦略的調査の強化、②シェールガス探査・開発への推 進、③シェールガス地質研究の強化、④シェールガス探査・開発の技術水準の向上、⑤シ ェールガス関連資料収集と利用への強化、⑥シェール資源の調査および探査人材を育成、
である。
b) シェールガス発展計画(2011~2015 年)
国家発展改革委員会、財務部、国土資源部、国家能源局は 2012 年 3 月に「シェール ガス発展計画(2011~2015 年)」を発表した。「シェールガス発展計画(2011~2015 年)」
は、シェールガス開発に関する初の国家的な計画であり、シェールガスの発展方針や目標、
102 主な任務などを提示した。
発展目標については、いくつの具体的な数値を示した。2015 年までに国内の資源量およ び分布状況を把握し、30~50 か所のシェールガス発展区と 50~80 か所の目標区を選定す る。また、2015年までに6,000億m3の埋蔵量を確認し、そのうち、可採埋蔵量は 2,000億 m3に到達する。さらに、シェールガスの生産量は、2015 年には 65 億 m3に到達する。そ のほかに、中国の地質条件に合ったシェールガスの調査および資源評価技術方法、シェー ルガスの探査開発コア技術および関連設備の開発、シェールガス調査と評価、資源貯蔵量、
試験分析とテスト、探査開発、環境保護などを提示した。
c) シェールガス発展計画(2016~2020 年)
国家能源局は 2016 年 9月、「シェールガス発展計画(2016~2020 年)」を発表し、過去 5 年間のシェールガス開発の実績と今後 5 年間のシェールガス開発に関する発展目標など を提示した。過去の実績として、中国におけるシェールガスの資源は、生成条件としての 陸成相、海成相、海陸交替相など広範囲に存在していると評価されている。それらの可採 埋蔵量は 21.8兆m3と評価されている。海成相、陸成相および海陸交替相の可採埋蔵量は、
それぞれに 13.0 兆 m3、3.7兆 m3、5.1兆 m3である。優遇政策については、2012~2015 年 の間に 1 m3あたり 0.4 元、2016~2018 年の間に 1m3あたり 0.3 元、2019~2020 年の間に 1m3あたり 0.2 元の補助金を交付することとする。今後の目標に関しては、3,500m 以浅の 探査・開発技術を把握し、3,500m 以深の探査・開発技術に対し重大な進展を実現させる。
また、2020年のシェールガス生産量は 300億m3に、さらに、2030 年のシェールガス生産
量は 800~1,000m3に到達させることが期待される。
以上では、非在来型天然ガス開発における中国政府の計画目標や取り組みを紹介した。
これまで述べたように、政府の優遇政策の狙いは非在来型天然ガス開発を促進し、天然ガ スの開発能力を向上させる姿勢が窺われる。では次に、中国の非在来型天然ガスの開発状 況は、どうなっているかを見てみよう。
5. 非在来型ガス開発の開発状況
本節では、炭層ガスおよびシェールガスの開発状況を概観するとともに、中国政府の計 画目標は達成されたのかどうかを評価する。その上で、非在来型天然ガス開発の問題点を 検討する。
(1) 炭層ガスの開発状況 a) 資源概要
炭層ガスは、石炭層の中に貯留されたメタンである。中国は多くの炭田があり、大量の 炭層ガスの存在が期待される。中国政府は炭層ガスを含む石油・天然ガス資源を掌握する ため、大規模な資源調査を行ってきた。中国政府は 2003年、実施した第 3次の全国的な石 油・天然ガス資源の調査では、初めて国家的な炭層ガス資源の評価を行った。その後、非 在来型を含む断続的なエネルギー資源の評価が行われた。国土資源部が2016 年6月に発表 した「2015 年全国石油・天然ガス資源動向評価」(中国国土資源部公式ホームページ2016
103
年 6月 14日記事)によると、中国における4,500m以浅の炭層ガスの原始資源量(original in-place)は30.0 兆m3、可採埋蔵量(proved reserves)は12.5兆m3である。中でも、実現 可能な有力開発地域(現在の段階においてガスの開発に技術的・経済的に有利な条件があ る)の可採埋蔵量は 4.0兆m3と評価されている。また、中国は、世界的から見ても、炭層 ガス資源に恵まれた国である(表-2)。一方、「2015年全国石油・天然ガス資源動態評価」
によると、中国の在来型天然ガスの原始資源量は、2015年には 90.3 兆 m3、可採埋蔵量は 50.1 兆m3であると評価されている。
表-2 世界の主な国の炭層ガス資源量の推測値 国・地域 原始資源量(兆 m3)
ロシア 17~113
カナダ 6~76
中国 30
米国 11~19 オーストラリア 8~14 ドイツ 3
ポーランド 3
英国 2
ウクライナ 2
出所:柳 小正ほか: 中国における非在来型ガスを含む天然ガス 開発に関する考察, 石油技術協会誌, 86(7), pp.507, 2016.
b) 開発状況と問題点
前にも述べたが、炭層ガスは、炭層の孔隙内に吸着される形で賦存し、従来の開発方法 が適用できないため、非在来型天然ガスに分類されている。炭層ガスの回収には、①在来 型天然ガスと同じような掘削方法で炭層中のメタンを回収する方法、②採炭活動に伴って 炭坑ガスを回収する方法がある。中国の炭層ガス開発は、炭坑からのガス(メタン)の抽 出と、地表から坑井を炭層に掘削して炭層ガスを抽出すること、に分けられる。本稿での 記述は、主として後者について行う。
中国の炭層ガス開発は、1970 年代には開発試験を実行したが、当時の開発設備および開 発技術などの制限で、予期した開発効果を得られなかった。1990年代以降、中国の開発企 業は米国などの外国の開発技術を導入し、炭層ガスの開発を行っている。2005 年以降、炭 層ガス開発は、商業的開発の段階に入っている。特に2006 年には、中国政府は、炭層ガスの開 発を「炭層ガス十一五計画」に組み入れ、炭層ガス開発の産業化を加速させようとする。さらに、炭 層ガスの開発を促進するため、中国 政府は、炭層ガス開発 に関する各種政策を打 ち出している。
上記のような商業開発の開始により、沁水盆地の南部、オルドス盆地の韓城、遼寧省の阜 新、鉄法などの地域で商業的な採掘が行われるようになった。その中では、沁水盆地は、
中国の炭層ガスの生産基地となっている。
中国の炭層ガスの開発会社は、主に3つの会社、すなわち、中国石油天然気集団公司(以 下、CNPC)、晋城煤業集団(以下、晋煤集団)、中聯煤である。この 3 社を含む中国の開 発会社は、2009 年にはすでに年間25億 m3の生産能力を有している。このうち、CNPCが 年間 6.0 億 m3、晋煤集団が 5.5 億 m3、中聯煤が 3.0 億 m3である(新浪財経網 2010 年 5
104
月 28 日記事)。また、中国の炭層ガス開発会社は単独開発のみならず、米国、オーストラ リア、カナダなどの企業とも契約を結び、炭層ガスの開発を行っている(柳小正, 2011)。
中国における炭層ガスの生産量は増加する傾向があり、2010年には15.0億 m3、2015 年に は 44.3億m3に達した(図-2)。
billion cubic meters
0 10 20 30 40 50
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
出所:中国国土資源部公式ホームページに載せた記事のデータにより作成 図-2 中国における炭層ガス生産量の推移
一方、炭層ガス生産量の実績をみると、制定した国家レベル開発計画には及ばなかった。
2010 年の生産量は 15 億 m3となり、「炭層ガス十一五計画」で掲げられた 50億 m3の生産 目標を達成できなかった。また、2015 年の炭層ガス生産量は 44.3 億 m3となり、「炭層ガ ス十二五計画」で掲げられた 160 億 m3の生産目標値に及ばなかった。こうした生産目標 を達成できなかった理由としては、①関連政策の遅れ、②天然ガスパイプラインの建設、
③開発助成金の不足、④石炭開発権と炭層ガス開発権の重なり合いなどが挙げられる。以 下では、それぞれより具体的に検討する。
まず、税制優遇策などの関連政策について説明する。中国の炭層ガス開発が 1990 年代 半ばからであったのに対し、制定された関連政策は、前述のように2006 年以降のものが多 く見られる。このような政策上の遅れも、炭層ガス開発が遅れる要因のひとつであるとい える。
次に、天然ガスパイプラインの建設に関して述べる。炭層ガス輸送パイプラインの建設 は、炭層ガス開発の重要な要素とされている。中国の炭層ガス開発は1990 年代半ばから開 始されたが、炭層ガスの外部輸送パイプライン建設は 2008年からである。炭層ガス輸送パ イプラインの建設が遅れている理由として、パイプラインの独占問題、一般企業の資金調 達問題、政策上の制限などが指摘されている。そのため、中国政府は2014 年、非在来型天 然ガス開発を促進するひとつ対策として、天然ガスパイプラインに関する条例を制定した。
第三に、開発助成金のことについて考察する。そもそも開発助成金は、非在来型天然ガ ス開発を促進するための支援制度である。開発助成金の金額があまり低く設定されると、
予想した効果には至らないだろう。前にも述べたが、炭層ガス開発助成金の金額は、シェ ールガス開発助成金より低く設定されている。炭層ガス開発企業に対する助成金額は、2015 年までに中央財政が 1m3の炭層ガスの採掘ごとに 0.2 元を助成するとする。一方、シェー ルガス開発企業に対する助成金額は、同時期で 1m3のシェールガスの採掘ごとに 0.4 元と
105
する。こうした炭層ガス開発助成金の設定は、炭層ガス開発に影響を及ぼした。この問題 を解消するため、中国政府は 2016年から非在来型天然ガスの開発助成金を見直した。
最後に、石炭開発権と炭層ガス開発権の重なり合いについて解説する。石炭開発権と炭 層ガス開発権に関しては、石炭開発権と炭層ガス開発権に関する認可の手続きはそれぞれ 異なっている。炭層ガス採鉱権が中央政府により認められるのに対して、石炭採鉱権は中 央政府並びに地方政府の 2つの次元の認可が行われる。このため、石炭開発権と炭層ガス の採鉱権の重複問題が生ずることになる。このような石炭開発権と炭層ガス開発権をめぐ る葛藤が、炭層ガス開発に障害になっていると指摘されている(Zhao Qingbo et al., 2008)。
(2) シェールガスの開発状況 a) 資源概要
シェールガスは、頁岩(シェール)層内に滞留した天然ガス資源であり、世界のかなり 多くの場所に存在することが知られている。中国は、シェールガス資源に恵まれていると 評価されている。「2015年全国石油・天然ガス資源動態評価」によると、4,500m以浅のシ ェールガス原始資源量は 122.0 兆 m3、可採埋蔵量は 22.0 兆 m3、と評価されている。中で も、実現可能な有力開発地域の可採埋蔵量は、5.5兆m3とみられ、主に四川盆地および周 辺地 域 に賦 存し て いる 。中 国 のシ ェー ル ガス 資源 量 は、 在来 型 天然 ガス 資 源量 (90.3 兆 m3)に劣らない大きさを持っている。また、中国のシェールガス埋蔵量は、世界的に最も 多い国と評価されている(表-3)。
表-3 世界の主な国のシェールガス資源量の推測値(2013 年)
国・地域 技術可採埋蔵量(兆m3) 国・地域 技術可採埋蔵量(兆m3)
中国 32.0 メキシコ 15.4
アルゼンチン 23.0 オーストラリ
ア 12.4
アルジェリア 20.0 南アフリカ 11.0
米国 19.0 ロシア 8.1
カナダ 16.0 ブラジル 6.9
出所:Energy Information Administration
現在、中国のシェールガス資源の探査・開発は模索の段階にあり、資源量に対する全面 的な評価はいまだ行われていない。中国のシェールガス資源量について、中国の専門家は、
地質資料に基き、中国と米国のシェールガス鉱床生成条件を対比し、国内のシェールガス 資源状況に関する初歩的な推定を行っている。その背景としては、両国のシェールガス鉱 床の地質条件は類似しているところが多いと認識されているからである。
b) 開発状況と問題点
中国では、2000 年特に 2004 年以降、米国などの開発成功経験を受け、シェールガスを めぐる研究・開発などの活動が展開してきている。2004年、国土資源部に所属する油気資 源戦略研究センターと中国地質大学(北京)は、研究チームを設立し、シェールガス資源 の研究・開発作業を開始した。同チームは、湖南、四川など 8省・直轄市の鉱床生成条件
106
を米国のシェールガスの地質資料と対比した結果、重慶市の南部、東南部地区にカンブリ ア紀前期、シルル紀前期、二畳紀中期の三つの地層が広く分布し、こちらの地域で大規模 なシェールガス形成の可能性があると推測された。また、2006 年、石油開発企業である CNPC は、四川盆地西南部の地域でシェールガス資源の調査を行った。さらに石油会社の 中国石油化工集団公司(以下、Sinopec)は 2008 年以降、シェールガスを含む非在来型石 油・天然ガスの探査事業を全面的に展開している。これ以来、中国では、外国企業との協 力を含むシェールガスに関する研究・開発が進められている。
表-4 は、中国のシェールガス研究・開発に関する主な動きをまとめたものである。シ ェールガスに関する動きからみると、中国のシェールガスに関する研究・開発は、豊富な 資源を背景に、政府が提示した優遇政策などを受けて活発化している。中国におけるシェ ールガスの開発会社は、石油大手社会である CNPC、Sinopec、中国海洋石油総公司(CNOOC)
に加え、陝西延長石油集団有限責任公司、中聯煤などの企業もある。ただし、現在の中国 のシェールガス開発水準は、初歩の段階であり、多くの開発技術が確立されていない課題 をかかえている(国家発展委員会・国家能源局, 2016)。
表-4 中国のシェールガス研究・開発に関する主な動き
期日 概 要
2001年 ・ 石油会社は、シェールガス資源状況を分析した。
2004年 ・ 国土資源部は湖南省、四川省など8省・直轄市の鉱床生成条件を米国のシェール ガスの地質資料と対比し、シェールガスの評価を行い、大規模なシェールガス 形成の可能性があるとした。
2006年 ・ CNPCは四川盆地西南部の地域でシェールガス資源の調査を行った。1年間の現
地調査と解析を実施したが、良好な結果は得られなかった。
2008年 ・ 国土資源部は再びシェールガスの調査プロジェクトを立上げ、四川盆地、松遼 盆地および中・下陽子地域の古生界海相のシェール層を重点的に研究した。
・ CNPCは11月、四川省宜賓市において、シェールガスのサンプル調査を実施した。
2009年 ・ 国土資源部が8月、重慶市で、シェールガス資源の探査プロジェクトを実施した。
・ 11月、米国オバマ大統領の訪中国時、中米両国のシェールガスの共同研究を進
めることで合意した。また、同年11月、CNPCとShellは北京において、「富順-
永川鉱区シェールガス共同評価協議」に調印した。
・ CNPCは12月、四川省威遠ガス田において中国初のシェールガス調査坑井「威201 井」を掘削し、シェールガス層を発見した。
2010年 ・ 国土資源部は2月、国家級シェールガス先導試験開発区を確定し、川南、黔北、
渝東南、渝東北など7つを提示した。
・ CNPCは4月、四川盆地におけるシェールガスの発見のために基礎調査を行った。
四川省珙県でシェールガス鉱床を発見した。
・ Sinopecは4月から山西省、陝西省、貴州省などで資料の採取を行った。6月、貴
州大方県のシェールガス坑井である「方深1井」において、外国の技術協力によ りフラクチャリングを実施した。「方深1井」は中国で初めて大型フラクチャリ ングが実施されたシェールガス坑井である。
2011年 ・ 国土資源部は3月、シェールガス開発に関する政策の研究を行った。
・ CNPCは3月、中国における初のシェールガス水平坑井「威201-H1井」(深度:
2,832m、水平区間長:1,079m)を掘削し、また、同年7月、11段階のフラクチャ
リングが行われた。
・ 国土資源部は6月、シェールガス1次入札を実施した。
・ 国土資源部は12月、シェールガスを127番目の独立鉱種に設定した。
・ CNPCはシェールガス開発を加速し、2011年までに、四川盆地南部で約20坑井を
107 掘削した。
・ 2011年までに、15垂直坑井においてフラクチャリングが行われ、そのうち、9坑 井のフラクチャリングが成功し、シェールガスの開発見通しを確認した。
2012年 ・ 国家発展改革委員会・財務部・国土資源部・国家能源局は3月、シェールガス開 発を促進するため、「シェールガス発展計画(2011~2015年)」を発表し、資 源量の調査、開発技術の把握、2015年の生産量などを提示した。
・ 国土資源部は9月、シェールガス2次入札を実施した。
・ 国土資源部は初めて国内の資源量の評価を公表し、中国のシェールガスの資源 量が134兆 m3、可採埋蔵量が25兆m3と評価した。
・ 「シェールガス補助政策」が11月に公表され、開発企業に対する助成金額は2012
~2015年の間に、1m3のシェールガスの採掘ごとに0.4元の助成基準に基づいて算 定される。
2013年 ・ 国家能源局は10月、「シェールガス産業政策」を発表し、シェールガス開発を国 家戦略的新興産業として位置づけている。引き続き各種の税制優遇政策やシェ ールガス開発利用補助政策を実施することを強調した。
・ 全国のシェールガス坑井は、2013年までに探査坑井を含む285坑井であり、この うち水平坑井は、86坑井であった。2013年のシェールガス生産量は、2億m3であ った。
2014年 ・ Sinopecは自社の最深の水平坑井「南葉威1井」(深度5,820m、水平区間長:1,103m) を掘削した。
・ 2014年までに探査坑井を含む780坑井のシェールガス坑井は掘削され、このうち 水平坑井は、345坑井であった。また、218,184 kmの二次元地震探査、2,134km2 の三次元地震探査が実施された。
・ シェールガス生産量は、2014年の13億m3であった。重慶市の涪陵鉱区、四川省 の長寧鉱区おとび威遠鉱区では、シェールガス開発に重大な進展が実現された。
さらに、涪陵鉱区では商業開発段階に入った。
2015年 ・ シェールガスの開発能力は高まり、1水平坑井あたりのコストを1億元から5,000
~7,000万元に削減し、また、掘削日数が平均150日から70日に短縮した。
・ 2015年にはシェールガス開発に134.8億元が投入され、295坑井が掘削された。新
たに確認埋蔵量は、4,373.8億m3 に増加した。シェールガス生産量は増加し、2015 年には44.7億m3に達した。
・ 財務部・国家能源局は6月、引き続きシェールガス開発に補助金を実施し、2016
~2018年の間に1m3あたり0.3元、2019~2020年の間に1m3あたり0.2元を提示し た。
2016年 ・ 国家能源局は9月、「シェールガス発展計画(2016~2020年)」を発表し、今後
5年間のシェールガス開発に関する発展目標などを提示した。
注:CNPC:中国石油天然気集団公司。Sinopec:中国石油化工集団公司。
出所:柳 小正ほか: 中国における非在来型ガスを含む天然ガス開発に関する考察, 石油技術 協会誌, 86(7), pp.510, 2016.
中国におけるシェールガスの商業的開発は、2014 年より開始している。シェールガスの 生産量は 2015 年には 44.7 億 m3に達し、前年と比べ 258.5%増加した(中国国土資源部公 式ホームページ 2016 年 7 月 4日記事)。しかし、2015 年のシェールガス生産量は 44.7 億 m3であり、「シェールガス発展計画(2011~2015 年)」で掲げられた 65 億 m3目標を達成 できなかった。この理由については、計画目標値が高く設定され、開発技術の未熟および 開発経験の欠如(柳小正, 2012)、2014年後半から急落した原油価格で石油会社の資金難に よりシェールガス開発への投資資金が減少したほかに、天然ガス販売価格の統制もシェー ルガス開発に影響を及ぼした。
そもそも、中国では、天然ガス価格は中央政府の統制下に置くものとする。中国政府は、