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極小未熟児の心身発育発達(3) 後 藤 ヨシ子*

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極小未熟児の心身発育発達(3)

後  藤  ヨシ子*

(昭和62年10月31日受理)

The Growth and Development of Very Low

     Birth Weight Infants(3)

Yoshiko GOTO

(Received,October31,1987)

はじめに

 近年新生児医療の進歩は著しく,殊に極小未熟児の生存率は目をみはるものがある。在 胎期間においても近年までは在胎7か月児の生存は困難とされていたが,現在では在胎24 週にはいれば生存の可能性が高くなってきたといわれる。出生体重においても10002末満 の超末熟児が成育しうる時代となり,出生体重4009台の超末熟児の生存も報告されている 程である。極小未熟児の短期予後(死亡率)においては,10009〜12499群の死亡率は低 下し12509〜14999群との間に差がなくなり,今後の保育の重点的目標は10009未満の超 未熟児の保育成績の向上に目標が移ってきていることが報告されている1)。どこまで小さ い子供を後障害なく育てられるかという問題は新生児医療をたずさわるスタッフらの課題 でもあろうが,そこには日夜をわかたぬ努力の成果と医療の進歩の過程を如実に現わして いるものといえよう。

 今回は極小未熟児に対する医療の重要性が認識され,新しい治療法の導入,集中治療の 施行や出生前の胎児管理等に改善がみられつつあった昭和52年から56年の出生児を対象に 超未熟児を含む12609以下の極小未熟児の予後について,乳児期2)に続き幼児期における 親の心配事および精神発達の様相を中心に追跡検討を行った。

研究方法

 対象は昭和52年3月から56年8月までの出生児で長崎大学付属病院未熟児新生児室に入 院した極小未熟児のうち神経学的後障害を伴っていない在胎36週以下の早期に出生し出生 体重10009未満の超未熟児6名を含む12609以下のもの18名である。なお在胎24週で出生

し運動障害を呈していた脳性マヒ2名については今回の成績からは除いた。対照児は昭和 53年5月から55年2月までに市内産科医院にて出生した在胎40週で出生し出生体重30809

*長崎大学教育学部家庭科教室

(2)

46

表1

      長崎大学教育学部教科教育学研究報告

予後に関する調査

第11号

性別 在胎

出生体重 入院

apgar

core 調査時年齢 発達指数

 (注) 主な母親の心配事 備考

①F 25週 8209 139日 1分3点 2歳0カ月 , 85T 体が小さい,単語だけ AFD

②M 27週 9009 156日 1分6点

分8点 3歳1カ月 90T

体が小さい,小食,夜のおも し,指しゃぶり,つめかみ AFD

③M 27週 9149 91日 1分2点 1歳5カ月 69T 体重がふえない,小食,却しっ

を教えない AFD

④F 27週 1.0589 100日 1分5点

分7点 2歳5ヵ月 98T 小食,夜のおもらし AFD

⑤F 27週 1.0809 90日 1分4点 5歳10カ月 107M 甘えん坊,おくびょう AFD

⑥M 27週 1.2009 93日 1分3点

分8点 3歳10カ月 88M

病気にかかりやすい,甘えん

,動きが多い,慣れるのに 間がかかる

AFD

⑦M 27週 1.2009 78日 1分10点 4歳1カ月 118M 体重がふえない,小食 AFD

⑧M 27週 1.2609 81日 1分8点

分10点 5歳0カ月 129M 甘えん坊 AFD

⑨F 28週 1.1509 94日 1分8点 2歳9カ月 109T 体重がふえない,小食,甘え

坊,すききらい AFD

⑩F 28週 1.2439 85日 1分8点

分10点 2歳6カ月 110T 体が小さい,指しゃぶり,甘 ん坊,うんちを教えない AFD

⑪F 28週 9409 81日 1分4点 4歳9カ月 93M 体が小さい,小食,発音がお しい

AFD

⑫M 29週 1.2609 79日 1分9点

分10点 2歳9カ月 89T 病気にかかりやすい,甘えん AFD

⑬F 30週 9259 97日 1分1点

分3点分5点 2歳2カ月 89T

食欲がない,内べんけい,夜 おもらし,人前でいえない AFD

⑭F 30週 1.1209 84日 1分6点 3歳7力丹 91M

体が小さい,体重がふえない,こわがり,おしっこを教えな

AFD

⑮F 30週 8009 103日 1分2点 4歳7カ月 87S かぜにかかりやすい,夜のお

らし,小食

SFD

⑯M 35週 1.0509 68日 1分9点 3歳7カ月 61T 体が小さい,体重がふえない,

のおもらし,人前でいえな

SFD

工双胎

⑰M 35週 1.0659 68日 1分7点 3歳7カ月 60T 体が小さい,体重がふえない,

SFD

工双胎

⑱F 36週 1.2359 43日 1分3点 4歳11カ月 85M 体重がふえない,小食,甘え

SFD

対皐照均

40週 3.2849

Dニ133.02

1分

〜10点

5歳4カ月 Dニ0.585

 103。O D=9.102

小食(19.0%),体が小さい,

気にかかりやすい(9。49呑)

AFD・混

90.5%)

  工 9.5%)

(注) T:津守・稲毛式発達検査,M:マッカーシ認知能力診断検査,S:鈴木ビネー検査

(3)

極小未熟児の心身発育発達(3) 47

から35009の成熟児21名である(表1)。

 発達検査は暦年令3歳半以下の子供は原則として母親自身の記載による津守・稲毛式乳 幼児精神発達診断法および遠城寺式乳幼児分析的発達検査法を用い,3歳半以降の暦年令 児にはマッカーシ認知能力診断検査および鈴木ビネー検査を用いた。

 調査実施時期は昭和58年1月から59年10月である。

成  績

 1.予後に関する母親の心配事

 予後に関する調査では在胎25週から36週までの早期産出生児をとりあげ在胎週数の短か いものから順に記している。このような早期産による出生体重の小さいハイリスク新生児 は胎外での独立生活への適応にはおのずと多くの時問を必要とする。退院時までの入院日 数でみると最低43日から156日間におよぶ長時間を要している。そして出生後新生児の状態

を把握するapgar scoreでは心拍,呼吸,筋トーヌス,反射,皮膚の色の5項目から生後 1分時に得点8点以上を正常,5から7点を軽度仮死,4点以下を重度仮死と評価され,

さらに低得点の場合には生後5分で再検査される。この面からみると1分値4点以下の軽 度および重度仮死は18名中8名,しかも10009未満の超未熟児においては6名中5名にみ

られる。1分値1〜2点の重度仮死のものも3名いる。幸いに後障害を呈さずに救命しえ た事例である。

 母親の主訴について特に幼児期に至った子供の育児面についての心配事であるが,身体 面に関したものが圧倒的に多い。中でも体が小さい,体重がふえない,病気(かぜ)にか かりやすいという内容が18名中14名(77.6%)と高比率にみられた。これと関連し食事面 では小食が18名中8名(44%)と4人に1人の割合でみられた。生後の身体発育について,

乳児に関してはすでに前述2)しているが,乳児期の後半にかけて体重面も10〜50パーセン タイルの中に到達するものもみられてきていた。今回幼児期にいたった子供たちの体重発 育を概観すると50パーセンタイル

値に到達するものも若午みられて      g7 いるが,母親の心配事を裏づける

ようにまだまだ多くは細型であり,       go 体重発育の充実にはさらに時間が      75 必要と思われる(図1,2)。他に      50 母親の心配事には子供の発達的に       25       10みて言葉のおくれや排尿便のしつ       3

け,指しゃぶりやつめかみのくせ,

甘えん坊,内べんけい,おくびょ う等しつけ面や性格的特性もかな りみられた。

 今回調査時の年齢は1歳5か月 から5歳10か月におよんでいるた め,しつけや性格面では個別的発 達的にみて問題視するにはおよば

     6歳

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(4)

48 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第11号

ない内容もあるが,子供をよりよ い発達に向けて,また母親の育児 不安の軽減やより望ましい育児態 度を用意させるうえにも今後適切 な助言を定期的に折りこんでいく

ことが望まれてくる。

 2.幼児期における精神発達  幼児期にいたった極小未熟児 12609以下の精神発達について,

10例の幼少児には津守・稲毛式精 神発達と遠城寺式分析的発達検査 を併用した。発達指数は表1に示 している通りであるが,さらに発 達輪郭の特徴をとらえるため津 守・稲毛式について,事例毎に暦

17卜 16卜 15 14 13  12  11  10

19

体8 重7

97

90 75

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456789101123693369436953696

    歳   歳   歳   歳   歳   図2 幼児期の体重発育(女)

年令の発達段階の位置を0とし,それより上廻る場合をプラス,下廻る場合をマイナスの 位置に図示した(図3)。その結果,発達段階で2段階以上暦年令より下廻っている領域 は,おとなとの交渉,食事,生活習慣,理解により多い傾向が見られた。なお全体の発達 指数の平均は85.9,S Dは17.847であり,Rangeは60〜110である。特に低い発達指数60台

事例① ②  ③④

⑬  総

運動探索・操作おとなとの子供との食

      相互交渉相互交渉 事排泄生活習慣理解 言語

十〇一十〇一十〇十〇一十〇一十〇一十〇一十〇一十〇一十〇

図3 津守・稲毛式乳幼児発達検査

(5)

・極小未熟児の心身発育発達(魯) 49

3:4 3:0 2:9 2:6 2=3 2:0 1:9 1:6 1=4 1=2 1:0 0:11 0:10

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コ覇o障 言語理解発  語対人関係基本的習慣手の運動移動運動暦館 齢

4:8

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事伊

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2:9 2:6 2:3 2=0 1:9 1:6

〔年:月〕

0:0 事伊

〔年:月〕

暦移手基対発言

年動蟷人語

、運運習関 理 齢動動慣係語解 図4 遠城寺式分析的発達検査  図5 遠城寺式分析的発達検査  図6 遠城寺式分析的発達検査

が3名みられた。中でも事例3は出生時重度仮死があり年齢は1歳5か月である。ここに 示されている発達指数はすべて修正年齢は用いていないため,幼少な年齢のもの程胎児発 育の良否に作用されるところがまだ多く見られると思われる。さらに時問的継続的観察が 必要な事例といえる。事例16および17は3歳7か月であり双胎児であり,かつS FDであ

る。全領域において発達の問題がみられるが,中でも運動発達や言語発達に強く問題が呈 示されている。同じく継続的観察が必要な事例である。

 遠城寺式分析的発達検査については事例毎に図4〜7に示している。6つの発達領域に ついて,つまり移動運動1手の運動,基本的習慣,対人関係,発語,言語理解であるが,

通常3ないし4段階暦年令より下廻った発達段階を示すときは発達の遅滞が考えられてい る。個々の事例毎に津守稲毛式の発達輪郭とつきあわせて概観すると,発達的特徴の様相 がほぽ一致し,いっそう明確に個々の特性をみることが出来る。

 マッカーシ認知能力診断検査については7例について一般知能指数,さらに各尺度毎の 特性については図8にプロフィールで示した。言語,知覚一遂行,および数量の尺度から 構成されている一般知能指数の平均値は101.6,S Dは16.811でありRangeは85〜129で

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50

長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第11号

4:0 3:8 3:4 3:0 2:9 2:6 2:3 2:0 1:9 1:6 1:4

事例

16

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事例⑧ヨ

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図7 遠城寺式分析的発達検査

言語 知覚・遂行 数量 一般知能 記憶  運動

 図8 マッカーシ認知能力診断検査

あった。他方対照成熟児群の一般知能指数の平均 値は103.0,S Dは9.102でありRangeは84〜123 ぞあり,今回平均値において両群間には有意な差 異はみられなかった。また5つの尺度,即ち言語,

知覚一遂行,数量,記憶,運動の尺度指数の両群 間の平均値比較においてもすべて有意差はみられなかった。個別的に対照群のプロフィー ルと比較すると対象児に発達良好なものがみられた。中でも一般知能指数で最も高値を示 していた事例8は,在胎27週でapgar scoreは正常,そして対象児18例中唯一の母乳栄養 児であった。と宅も興味ある事例であり,良好な新生児管理や育児環境に対しての努力は 極小未熟児の予後について考察する上にも勇気づけられる内容である。

 今回対象児中S FDは4名含まれていた。特に双胎児を含んでおりRangeは60〜87であ り予後においてはA FDにくらべ発達指数はやや低い傾向にあるといえるが,社会生活を 営む上においては特別の困難さが今後生じるか否かさらに経過観察が必要と考えられる。

考  察

 極小未熟児の予後の改善は短期的にはめざましい死亡率の低下にみることが出来る が3)4),長期的予後においては未だ課題は多く,新生児期に在胎期間が短かくしかも出生体 重の小さいもの程強度の未熟性をもつため胎外生活において適応障害をおこしやすい。現 時点では在胎25週までは予後不良例が半数以上といわれ,また出生体重7009未満の予後は いまだ十分ではないといわれる。こうした超未熟児には未熟児綱膜症や頭蓋内出血をはじ めとした種々の合併症,後遺症がおこり「やすい。また生直後から長期にわたる母子分離を

(7)

極小未熟児の心身発育発達(3) 51

余儀なくされることから,新生児期からの望ましい母子および父子相互作用に困難さを生 じやすい。健康な児の出生を願い,健やかな児の成長を親は皆望むものである。それだけ に極小未熟児,超未熟児の出生を予防し,満期に成熟児を得ることの努力が求められてく る。それ故に母子保健の重要さが指摘される。

 今回は在胎36週以下の早期に出生し,出生体重12609以下の極小末熟児について,幼児 期に至った18例についての精神発達の様相について検討を行った。暦年令の幼少児には津 守・稲毛式発達検査および遠城寺式分析的発達検査を用い,暦年令の3歳半以降にはマッ カーシ認知能力検査を実施し対照成熟児群との比較を行った。その結果幼少児においては,

伊藤ら5)の成績とほぼ同様に発達指数において平均値85.9とやや低い傾向にあるが,年齢 が進み暦年令3歳7か月から5歳10か月においては一般知能指数の平均値は101.6と catchupしてきている様子がみられ,在胎40週成熟児群との比較においても統計的有意差

は認められなかった。しかし在胎35週で出生しapgar scoreは正常であったが双胎にてS FDである2例は発達指数は60台であり全体的な発達領域においてのおくれがみられた。

また1歳5か月児も同様に発達指数60台であり,27週にて出生し重度仮死がみられた事例 である。今回は発達指数の算出においては修正年齢は用いていないため幼少児ほど不利に 作用していることも考慮に入れる必要があるかもしれない。全体的には今回の事例18例中 15例は発達指数85〜129にあり,後障害を伴わない極小未熟児,超未熟児の予後についての 成績はかなり明るい結果にあると思われた。さらに年齢が進み児童期に至った場合mini−

mal brain damageの問題もある。長期的予後に関してのより正しい判断は,今後さらに follow upを続けることにあろう。

 母親の育児面における主訴には身体の発育に関した心配事が圧倒的に強く体が小さい,

体重がふえない,病気にかかりやすいがあげられていた。体重発育において若干50パーセ ンタイルに近づきつつある子供もみられるがまだまだ体重発育の充実にはかなり多くのも のがcatch upしていくには時間を必要としているといえる。

 極小未熟児,超未熟児の出生には多種多彩な要因が考えられる。しかし生涯を通じより 健やかに過ごすためには人生のより早期からの健康維持のための努力が払われねばならな い。それには医療する側の努力だけでは改善しえないものがあり個々人の努力が特に求め られるものである。予防医学的見地から胎児発達をとらえ極小未熟児・超未熟児の出生予 防を重視しよりよい子供の成長を願い共に考え見守っていくことは育児領域において切望 される事柄であろう。

 今回は在胎25週から36週の早期産にて出生し,出生体重10009未満の超未熟児を含む 12609以下の後障害を伴っていない極小未熟児18名,対照成熟児群21名について,幼児期 における親の心配事および精神発達について検討を試みた。

 1.予後に関する母親の育児面における心配事は,身体面について強い比重をしめてい た。つまり体が小さい,体重がふえない,病気にかかりやすいが18例中14例にみられ,ま た小食も4名に1名の割合にみられた。これを裏づける体重発育においては中央域に到達 するにはまだ多くのものが時間を必要としているのがみられた。

 2.幼児期の精神発達は18名中15名は発達指数85〜129の範囲にあった。幼少児の場合発

(8)

52

長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第11号

達指数は津守・稲毛式の発達検査では平均値85.9であったが3歳7か月以降の場合マッ カーシ認知能力発達検査では一般知能指数は101.6であり,年齢が進むにつれcatch upし てきている傾向にあり,対照成熟児群との間にも有意な差異はみられなかった。後障害を 伴っていない極小未熟児のAFDの予後はかなり明るいものが感じられた。ただし発達指 数60台のものが3名みられ今後さらに時間的継続的な観察が必要と思われた。

 稿を終わるにあたり,心よく追跡調査にご理解ご協力をいただきました幼児および母親ならび に多くのご理解,ご高配をいただきました未熟児新生児室担当医師井上先生および長崎大学付属 幼稚園副園長末田文子先生に感謝の意を表します。

参 考 文 献

1)内藤達男 国立小児病院における極小未熟児の15年問の死亡統計 周産期医学,14;9,17〜24,

1984。

2)後藤ヨシ子 極小未熟児の心身発育発達(1)長崎大学教科教育研,31,85〜90,1984.

3)藤井としら 極小未熟児の死亡と長期予後 周産期医学,14;9,31〜35,1984.

4)多田裕ら 極小未熟児の予後周産期医学,14;9,11〜16,1984.

5)伊藤道男ら 生下時体重10009以下の極小未熟児の保育成績と短期予後 周産期医学,9;11,

85〜93, 1979.

参照

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