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構造的パースペクテ ィブに基づ く 管理会計チ ェンジ研究の課題

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(1)

構造的パースペクテ ィブに基づ く 管理会計チ ェンジ研究の課題

近 藤 隆 史

Abs t ract

Thepur po s eo ft hi ss t udyi st oe xa mi nea ndc r i t i q uee mpl r l C a ls t u‑

di e st ha tus eq ua nt a t i ver e s e a r c hme t ho da ndc a s es t udya ppl i c a t i o n f o c us l ngO nma na ge me nta c c o unt i ngc ha nge.Fo rt hi spur po s e,wer e v‑

i e wbo t hq ua l i t a t i ver e s e a r c hs t udi e sa ndc a s es t udi e so nma na ge me nt ac c o unt i ngc ha nge,a ndc o ns i de rt hes t a t eo fo urkno wl e dgei nt hi sa r e a.

So mec o ns i de r a bl edi r e c t i o nsf o rf ur t he rr e s e a r c ha r epr o vi de d.

Keywords:Manage me ntac count i ng;Manage mentac count i ng c ha nge;Qua nt i t a t i vea ndQua l i t a t i ver e s e a r c hme t ho d

1 .は じめに

企業は,なぜまたは何をきっかけに管理会計システム ・実務をチ ェンジし ようとするのか。また, どの ようにして行 うのか。従来,組織 に浸透 してい る既存の管理会計システム ・実務のチ ェンジに企業は消極的である と考 え ら れて きた。 しか し, Li bby and Wat er hous e( 1 996) , W i l l i amsand Seaman

( 2 0 0 1 )の調査結果か ら,管理会計システム ・実務のチ ェンジに取 り組む企業

が決 して少な くない ことが明 らかにされるな ど,管理会計システム ・実務の

チ ェンジ現象その ものに多 くの研究者の関心が寄せ られるようになった。特

に,欧米では,管理会計チ ェンジ研究 として,さまざまな分析フレームワ‑

(2)

クが開発 され,チ ェンジ現象の解明がすすめ られている。管理会計チ ェンジ 研究 とは,管理会計システム ・実務が,なぜ,どの ように普及,導入,変更, 拒否 されるかを明か らにする研究である( 吉 田 , 2 0 03 ) 0

管理会計チ ェンジ研究の分析フレームワークについて,吉 田 ( 2 0 0 3 ) は,( 1 ) 構造的パースペ クテ ィブ ,( 2 ) アクター ・ネ ッ トワーク理論のパースペ クテ

ィブ, ( 3) 制度論的パースペ クティブ, ( 4) 普及論的パースペ クティブ,の 4 つに分類 した。本稿では, とくに,構造的パースペ クティブに基づ く管理会 計チ ェンジ研究 に着 目することにし,まず,既存の管理会計チ ェンジ研究の 詳細なサーベ イを通 じて知見を整理 する。そ して,今後,管理会計チ ェンジ 研究を展開させ るうえでの課題をい くつか示 したい。なお,制度論的パース ペ クテ ィブおよび普及論的パースペ クティブに基づ くチ ェンジ研究について は,吉 田 ( 2 0 0 4 ) に詳 しい。

本稿q) 構成は以下の とお りである。まず,次節では,構造的パースペ グテ ィに基づいた管理会計チ ェンジの定量的研究を,第 3 節では,定性的研究を それぞれサーベ イし,知見を整理す る。最後 に,以上の議論をま とめ,構造 的パースペ クテ ィブに基づ く管理会計チ ェンジ研究の課題を示す。

2 .定量的研究のサーベイ

本節 で は ノ , 近年 の定量 的 な管理会 計 チ ェン ジ研 究 として, Li bbyand Wat e r hous e( 1 996 ) , Wi l l i amsa ndSea ma n( 2 00 1 ), Wi l l i amsandSe a ma n ( 2 00 2 ) , Ba i ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 2 0 0 3 ) を とりあげる。以下では, ( 1 )そ れぞれの研究における作業仮説 と解析結果 , ( 2) 分析モデルの構成概念, ( 3 ) 主な知見,について整理する。

2. 1 定量的研究 における作業仮説 と解析結果 1 .Li bbya ndWa t e r hous e[1 9 9 6 ] の研究

Li bby andW at er hous e( 1 996) は,カナ ダの製造業 を対象 に, MACS

(3)

( Ma n a ge me nta c c o u nt i nga n dc o n t r o l s y s t e ms ) のチ ェンジに影響 をあたえる 要因の解明を試みた。

本研究で とりあげ られた MACS のデー タセ ッ トは, ( 1 )計画 システム, ( 2) コン トロール ・システム, ( 3) 原価計算システム, ( 4) 報酬システム, ( 5) 意思決定システムの 5 分野 にわた り,それぞれの分野が細分化 され合計 2 3 種 類の MACS か ら構成 されている。

作業仮説は, ( 1 ) 競争の環境が厳 しいほ ど ,( 2 ) 分権化 された組織構造であ るほど, ( 3) 組織の規模が大 きいほ ど , ( 4) 組織の学習能力 ( 管理会計領域 に 関す る知識の学習能力)が高いほ ど, MACS のチ ェンジの数 に正の影響 を 与える,であ る。

質問票調査 は ,1 9 9 4 年 に,製造業 における従業員数 1 0 0 名以上 の企業 2 4 社 を対象 に実施 された。質問票の回答者は,会計 ・経理担当者であ った。解析 の結果,作業仮説 ( 4 ) のみ支持 された。

2 .Wi l l i a msa n dSe a ma n( 2 0 0 1 )の研究

Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 1 )は,シンガポールの企業 を対象 に, Li bby a ndWa t e r ho us e( 1 9 9 6 ) の追試 を試 みた。ただ し,本研究では,分析モデル の説明変数のひ とつである組織の分権化のかわ りに,集権化が採用 されてい

る。

作業仮説は, ( 1 )競争の環境が厳 しいほ ど , ( 2 ) 集権化 された組織構造であ るほ ど, ( 3) 組織 の規模 が大 きいほ ど, ( 4) 組織 の学 習能 力が高 いほ ど,

MACS のチ ェンジの数 に正の影響を与 える,であ る。

質問票調査 は ,1 9 9 7 年 に,製造業 ,工業,サー ビス業 におけ る従業員数

1 0 0 名以上の企業 9 3 社 を対象に実施 された。質問票の回答者は財務最高責任 者 ( CFO) であ る。解析 の結果,作業仮説 ( 1 )は,サービス業で支持 された。

作業仮説 ( 2 ) は,産業全体,製造業,工業で支持 された。作業仮説 ( 3) は支持

されなかった。作業仮説 ( 4 ) は,製造業で支持 された。

(4)

3.Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 2 ) の研究

Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 2 ) は,シンガポールの企業を対象に, MACS の チ ェンジ と組織成果の関係の解 明を試みた。本研究では, MACS のチ ェン ジが組織成果 に直接的に影響するとい うよ りも,部門の 目標 を達成するため にマネジ ャーが利用可能な情報量であ る MRI( Ma na ge r i a lr e l e va nti nf o r ma ‑ t i o n) を媒介 して,組織成果に間接的に影響する と想定 されている。

MACS のデータセ ッ トは ,Li bbya ndWa t e r ho us e( 1 9 9 6 ) を踏襲 している。

作業仮説 は, ( 1 ) MACS のチ ェンジ と組織成果 の関係は,まず, MACS の チ ェンジの増加が MRI に正の影響を及ぼ し,次いで, MRI が組織成果に正 の影響 を及ぼす とい う間接的な関係 であ る , ( 2) お よび ( 5) タスクの多様性 ( および困難性)が増すほど, MACS のチ ェンジは増加する ,( 3 ) お よび ( 6 ) タスクの多様性 ( および困難性)が増すほ ど, MACS のチ ェンジ と MRI の 関係は強 くなる ,( 4) お よび ( 7) タスクの多様性 ( お よび困難性)が増すほど, MRI と組織成果の関係は強 くなる,である。

質問票調査 は ,1 997 年 に,製造業 ,工業 ,サー ビス業 における従業員数 1 0 0 名以上の企業 2 3 2 社 を対象に実施 された。質問票の回答者は財務担当責任 者 ( CFO) であ る。解析の結果,作業仮説 ( 1 )は支持 された。作業仮説 ( 2 ) お よび ( 5) ともに支持 された。作業仮説 ( 3) お よび ( 6) ともに支持 された。作業 仮説 ( 4) および ( 7) については,双方支持 されなかった。

4.Ba i ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 2 0 0 3 ) の研究

Ba i ne sa ndLa ng f i e l d‑ Smi t h( 2 0 0 3 ) は, ( 1 ) 管理会計システム ・実務のチ ェ ンジを促進す る要 因, ( 2 ) 管理会計システム ・実務のチ ェンジを含め,非財 務的管理会計情報 の利用 を促進 する要因, ( 3) 非財務的管理会計情報 と組織 成果の関係,について構造方程式モデルにより解 明を試みた。

作業仮説 は, (1 ) 競争環境が厳 し くなるほ ど,戦略は差別化戦略へ と移行

す る,( 2) 競争環境が厳 し くなるほ ど,チーム単位 の組織構造の採用が増 え

(5)

る , ( 3) 競争環境が厳 し くなるほ ど,高度な生産技術の採用が増 える , ( 4) 差 別化戦略への移行が進 むほ ど,チーム単位の組織構造の採用が増 える , ( 5) 差別化戦略への移行が進むほ ど,高度な生産技術 の採用が増 える,( 6 ) 差別 化戦略への移行 が進むほ ど,高度な管理会計実務の採用が増 える , ( 7) 高度 な生産技術の採用が増 えるほど,チーム単位の組織構造の採用が増 える ,( 8) 高度な生産技術の採用が増 えるほ ど,高度な管理会計実務の採用が増 える,

( 9) 高度 な管理会計実務の採用が増 えるほ ど,非財務的管理会計情報の利用 が促進 される, ( 1 0) 差別化戦略への移行が進むほ ど,非財務的管理会計情報 の利用が促進 される, ( l l ) チーム単位の組織構造の採用が増 えるほ ど,非財 務的管理会計情報の利用が促進 される, ( 1 2 ) 高度 な生産技術の採用が増 える ほ ど,非財務的管理会計情報の利用が促進 される, ( 1 3 ) 非財務的管理会計情 報の利用が促進 され るほ ど,組織成果が改善 され る,である。

オース トラ リアの製造業 1 41 社のゼネラル ・マネジ ャーを対象 に質問票調 査が実施 された。支持 された作業仮説は, ( 1 ) ,( 4 ) ,( 5 ) ,( 6 ) , ( 9 ) ,( l l ) ,

( 1 2 ) , ( 1 3 ) である。

2. 2 分析モデルの構成概念

1.管理会計システム ・実務のチ ェンジ

管理会計チ ェンジ研究における, 管理会計システム ・実務のチ ェンジには, 先 にも述べた ように普及,導入,変更,拒否な ど,さまざまなチ ェンジ現象 が含まれる。 また,管理会計チ ェンジ研究は, ABC/ ABM や BSC な どの先 端な管理会計システム ・実務のみを研究対象 とす る導入研究 とは異な り,新 旧あ らゆる管理会計システム ・実務 を研究の対象 にす る。 したがって,管理 会計システム ・実務のチ ェンジ といって も, どの ような管理会計システム ・ 実務が, どの ようにチ ェンジするかによって分析の対象は異なる。以下,定 量的研究 において,管理会計システム ・実務のチ ェンジ ( 以下,管理会計チ

ェンジ と略記)が どの ように操作化 されているのか整理する。

(6)

Li bby andW at e r hous e( 1 996) は,管理会計チ ェンジを過去 3 年間に採用 した MACS の数 で操作化 した。 MACS のデー タセ ッ トは, ( 1 )計画システ ム ( 予算編成,生産計画,資本予算 ,戦略計画,その他の計画システム), ( 2) コン トロール ・システム ( 個人またはチームの業績測定,組織成果測定, 品質測定,顧客満足測定),( 3) 原価計算 ( 製造間接費の直接配賦 ,販売費の 直接配賦 ,その他の間接費の直接配賦 ,事業部間または部門間での製品振替, その他の原価計算システム) , ( 4) 報酬 システム ( ボーナス,出来高給,その 他の報酬システム) , ( 5 ) 意思決定システム ( 従来 よ りも増 した報告の頻度, 従来 よりも増 した非財務指標の利用,従来 よりも拡大 した報告の範囲,その 他の報告 システムへのチ ェンジ,その他 の意思決定 システムのチ ェンジ), である。

一万, Bai nesa ndLangf i el d‑ Smi t h( 2003) は,管理会計チ ェンジを過去 3 年間で採用 した高度な管理会計実務の利用の程度で操作化 した。管理会計実 務のデー タセ ッ トは, ( 1 ) ABC,( 2) ABM,( 3) 原価企画 ,( 4) 価値連鎖分析,

( 5) ベンチマーキング, ( 6) 製品ライフサ イクル分析 , ( 7)製品収益性分析, ( 8) 顧客収益性分析 , ( 9) 品質改善プログラム,であ る。

2 . 管理会計チ ェンジの説 明変数 競争環境

Li bbyandWat e r hous e( 1 996) , W i l l i amsandSeaman( 200 1 )は,競争 と管 理会計 チ ェンジ との関係 に経験 的な証拠 を示 した Yakou and Dor wei l er

( 1 995) の研究か ら,競争が管理会計チ ェンジに影響する直接的な要因 として いる。

Li bbyandWat e r hous e( 1 996) , Wi l l i amsandSeaman( 2 00 1 )が とりあげる

競争の次元は,組織が直面する競争の圧力 ( Khandwal l a, 1 977) である。競争

の圧力は,まず, ( 1 )原材料 ,技術者 ,販売 ・物流 ,製品 ・サー ビスの品質

と品種,価格それぞれの分野 におけ る競争の厳 しさの程度が測定 され ( 2 )

(7)

それぞれの分野 における収益性 と成長性を重視す る程度で競争の タイプが測 定 され,最終的 に,( 3 ) 双方の測定結果か らひ とつの尺度 に縮約 される。

Bai ne sa ndLangf i el d‑ Smi t h( 2003) で も,競争 の次元 に, Khandwal l a ( 1 9 7 7 ) に修正 を加 え採用 している。 しか し,競争の圧力は,管理会計チ ェン ジを促進する直接的な要因ではな く,差別化戦略,高度な生産技術 を媒介 し た間接的な要因 としている。

タスク環境

Ga l br ai t h ( 1 977) に よれば,組織は,タスク不確実性 を解決 す るために, タスクを組織構造的に分化するな どして個 々の情報処理量を低減 させ るか, あるいは情報システムの強化 により企業の情報処理能力を向上 させ る。また, Pe r r o w( 1 9 7 0 ) によれば, タスク不確実性 はタスク多様性 とタスク困難性 に 二分 され る。 ここか ら, Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 00 2 ) は,タスク多様性およ びタスク困難性 が管理会計チ ェンジを促進 させ る直接的な要因 としている。

タスク不確実性の測定尺度は, Va ndeVa na ndDe l be c q ( 1 97 4) , Va nde Va na ndFe r r y( 1 9 8 0 ) を採用 している。 タスク多様性は, ( 1 )オペ レーシ ョナ ル ・マネジャーの仕事 が 日々同 じであ る程度 , ( 2) オペ レーシ ョナル ・マネ ジャーが同じ仕事 を同 じ方法でする程度,( 3 ) 仕事 がルーテ ィンである程度, ( 4) オペ レーシ ョナル ・マネジ ャーが仕事 を遂行す る上で繰 り返 しの行動 を

とってい る程度 ,で測定 され る。一方,タスク困難性は, ( 1 )仕事 を遂行す る方法が明確 になっている程度 ,( 2) 仕事 を遂行が手順化 されている程度, ( 3) オペ レーテ ィング ・マネジ ャーが仕事 を遂行す る上でのノウハ ウが明確 に定義 されてい る程度 ,( 4) オペ レーシ ョナル ・マネジ ャーが仕事 を遂行す る上で確立 された手続 きに頼 る程度,で測定 される。

戦略

Cha l l a ha na ndGa br i e l ( 1 9 9 8 ),Che nha l la ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 1 9 9 8 ) では,

(8)

差別化戦略を重視する企業ほど,高度な管理会計実務の利用の程度が高い と い う経験的証拠 が示 された。 この結果 か ら, Bai ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h

( 2 0 0 3 ) は,差別化戦略への移行が管理会計チ ェンジを促進するとの仮説を用 意 した。

差別化戦略は,過去 3年間で,事業単位が重視する差別化戦略の項 目を変 化 させた程度で測定 している。差別化戦略の項 目には ,Che nha l la ndLa ng‑

f i e l d‑ Smi t h( 1 9 9 8 ) を援用 し,具体的には,( 1 ) 納期の厳守 ,( 2 ) 状況に応 じた 納期の確約 , ( 3) 製品の高品質性, ( 4) アフタサービス , ( 5) 頻繁なモデルチ ェンジ と新製品投入, ( 6) 顧客ニーズに合わせた製品 ・サービスのカスタマ イズ , ( 7) 広域配送 , ( 8) 迅速な大量生産 , ( 9) プロダク トミックス,である。

生産技術

CI M や J I T といった高度な生産技術の導入によ り,直接工や在庫が減少 するとともに,製造間接費が増加することで製品のコス ト構造が変化する。

このような生産環境の もとでの標準原価計算や伝統的な間接費の配賦方法の 有用性に,多 くの管理会計研究者は限界を示唆 している 。Ba i ne sa ndLa ng‑

f i e l d‑ Smi t h( 2 0 03 ) は,高度な生産技術の採用が管理会計チ ェンジを促進する 直接的な要田 としている。

生産技術は,過去 3年間で,事業単位が利用す る生産技術の項 目を変化 させた程度で測定 している。生産技術の項 目は, ( 1 ) CAD , ( 2) J I T 生産, ( 3 ) TQM , ( 4) J I T 購買 ,( 5 ) 生産資源計画 ,( 6 ) CI M,( 7 ) MRP , ( 8 ) CAM , ( 9) フレキシブル生産システム,である。

組織構造

Li bbya ndWa t e r ho us e( 1 9 9 6 ) は,組織の分権化が管理会計チ ェンジに直

接的に影響する要因 としている。一方, wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 1 )は,組

織の集権化が管理会計チ ェンジに直接的に影響する要因 としている。

(9)

Ho f s t e de( 1 9 8 0 ) は, Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 1 )の調査 国であるシンガ ポールは ,Li bbya ndWa t e r ho us e( 1 9 9 6 ) の調査 国であるカナダに比べ,権 力や権限が組織の垂直関係において隔た りが大 きい文化圏である とい う経験 的な証拠を示 した。 Ho f s t e de( 1 9 8 0 ) の結果 をもとに, Wi l l i a msa ndSe a ma n

( 2 0 01 ) は,シンガポール企業は ( カナダよりも)経営意思決定の権限 も経営 上層部 に集中 している と推察 し,シンガポールの ように組織の集権化の程度 が高い国での調査では,組織の分権化 と管理会計チ ェンジ との相関を想定す るりは適切でない との理 由か ら ,Li bbya ndWa t e r ho us e( 1 9 9 6 ) とは反対の 仮説を用意 した。

組織 の分権化および集権化 を測定するにあたっては ,I nks o ne ta l . ( 1 9 7 0 ) を採用 し,主 だった経営意思決定事項の決定を,部門のアシスタン トレベル から本社,親会社な どの組織外部 レベルの どこで決定 されるかで測定 してい る。

組織の規模

Li bbya ndWa t e r ho us e( 1 9 9 6 ) , Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 1 )は,組織の規 模 を従業員数 で操作化 し,管理会計チ ェンジに影響する直接的な要因 として

いる

Ki mbe r l yandEva ni s ko( 1 9 8 1 )の研究では,組織の規模は,技術の変化 と 正の相関を示 した一方 で, 管理技法の変化 とは有意な結果が得 られなかった。

Ki mber l ya ndEva ni s ko ( 1 9 8 1 )の結果 を もとに ,Li bbya ndWat e r hous e ( 1 9 9 6 ) , Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 1 )は,組織の規模の拡大 とともに。多 く の経営資源を保有するようになる反面,組織の官僚化 ( Pughe ta l . ( 1 9 6 8 ) ) により,管理会計チ ェンジを妨げる と推察 した。

組織の学習能力

Li bbya ndWa t e r ho us e( 1 9 9 6 ) , Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 1 )は,ある領域

(10)

に関する事前の知識がその領域に関する新 しい知識の吸収や活用を促進する という Co hna ndLe vi nt ha l ( 1 9 9 0 ) の組織学習の理論 をもとに,管理会計領域 に関す る豊富な知識 と管理会計チ ェンジ との関係についての仮説 を用意 し た。管理会計領域 に関す る豊富な知識 を組織の学習能力 と定義 し,既存の MACS の数で操作化 した。

3. 組織成果

Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 2 ) , Ba i ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 2 0 0 3 ) は,管理 会計チ ェンジ と組織成果の関係について,媒介変数を組み入れて仮説を用意

した。

Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 2 ) の組織成果の分析 レベルは,部門レベルでの 成果である。 Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 2 ) は, Va ndeVa na ndFe r r y ( 1 9 8 0 )

の測定尺度に修正を加えて成果を測定 した。組織成果は,過去 3年間で,主 要な業務 において平均的な成果を得 られたか否かの程度で測定 している。組 織成果の項 目は, ( 1 ) 仕事の数量 , ( 2) 仕事の質 , ( 3) イノベーシ ョンあるい はアイデアの数,( 4 ) 仕事にたいする名声,( 5 ) 製造あるいはサービスの 目標 の達成度 , ( 6) 仕事の効率性 , ( 7 ) 仕事上のモラル, といった主観的な尺度で ある。

Ba i ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 2 0 0 3 ) の組織成果の分析 レベルは,事業部 レ ベルの成果である。組織成果の測定は, Go vi nda r a j a n( 1 9 8 8 ) , Go vi nda r a j a n a ndFi s he r( 1 9 9 0 ) の測定方法を採用 した。組織成果は,過去 3 年間における,

RO I ,利益,営業キャッシ ュフロー,コス ト ・コン トロール,新製品の開発, 売上高,市場シ ェア,市場開拓,人材育成,政治 ・公共問題の項 目について 他社 との相対的な達成度で評価 されている。

4. 管理会計チ ェンジ と組織成果の媒介変数

管理会計システム ・実務の利用 と組織成果 とを直接的に関係づけるには,

(11)

経験的な証拠 に乏 しいのが現状である。その一方で, Mi aa ndCl a r ke( 1 9 9 9 ) は,厳 しい競争環境 において,管理会計情報の利用 と組織成果の間接的な関 係を発見 した。定量的な管理会計チ ェンジ研究で も,管理会計チ ェンジ と組 織成果 を間接的にむすびつける媒介変数が着 目されている。

MRI

Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 2 ) は,管理会計チ ェンジ と組織成果 との間接的 な関係 を想定 し,媒 介変数 として MRI を とりあげた。 Wi l l i amsa ndSe a

ma n( 20 02 ) は, MRI を,部 門の 目標 を達成す るためにマネジ ャーが利用で

きる情報量 と操作化 している。

MACS と MRI の関係については, Kr e na ndLi a o( 1 9 8 8 ) , Kr e n( 1 9 9 2 ) に おいて, MACS が MRI の主な情報源であ ることが示 されてい る。 MRI の 測定は, Kr e n( 1 9 9 2 )を採用 してい る。 MRI は, ( 1 )オペ レーシ ョナル ・マ ネジャーは,仕事を よ く遂行するためにどの ような情報が必要 か常 に熟知 し ている程度, ( 2) オペ レーシ ョナル ・マネジ ャーは,代替案 を評価す るため の戦略的な情報 を獲得す ることがで きる程度 ,( 3) オペ レーシ ョナル ・マネ ジャーは,部門の業績 目標 を達成するために最適な評価 をした り,決定事項 を配分す るための適切な情報 を もっている程度,で測定 される。

非財務的管理会計情報

Che nha l la ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 1 9 9 8 ) は,差別化戦略を とる企業は,高度

な管理会計実務の利用 と非財務的な情報 を重視す ることで好業績をあげてい

る とい う経験的な証拠 を示 した。 さ らに, Abe r ne t hya ndLi l l i s( 1 99 5) ,

Ba nke re ta l . ( 2 0 0 0 ),Pe r e r ae ta l . ( 1 9 9 7 ),Si n a ndKi l l o ugh( 1 9 9 8 ) では,

フレキシブルな生産環境 において,管理会計技法の重視 と非財務的な評価尺

度の利用 との間に正の関係が経験的な証拠 として示 されている。 ここか ら,

Ba i ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 2 0 0 3 ) は,管理会計チ ェンジ と非財務的管理会

(12)

計情報 に関する仮説を用意 した。

非財務的情報の利用. と組織成果の改善 との関係 について も, Abe r ne t hy a ndLi l l i s( 1 9 9 5 ) , Da vi l a( 2 0 0 0 ) , Cho nga ndCho ng( 1 9 9 7 ) ,Pe r e r ae ta l .

( 1 9 9 7 ) ,Si n a ndKi l l o ugh( 1 9 9 8 ) な どで経験的な証拠が示 されている。 ここ か ら ,Bai ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 2 0 03 ) は,非財務的管理会計情報 と組織 成果に関する仮説を用意 した。

非財務的管理会計情報は,過去 3 年 で,意思決定のために重視する情報が 変化 した程度で測定 している。非財務的管理会計情報の項 目は, Abe r ne t hy a ndLi l l i s( 1 9 9 5 ) が採用 され ( 1 ) 納期の厳守 ,( 2 ) 顧客満足 ,( 3 ) 資材ロス,

( 4) 欠陥 , ( 5 ) サプライヤ評価 , ( 6 ) 市場シ ェア , ( 7 ) 従業員の教育 ・トレーニ ング, ( 8) チーム業績, ( 9 ) 段取時間, ( 1 0) 従業員満足,( ll ) 人事異動,であ

る。

2. 3 定量的研究の知見

定量的研究では,管理会計チ ェンジを促進 させる要因 と管理会計チ ェンジ が組織成果へ与える影響の解明が試み られている。

定量的研究の知見は大 きく 2 つに整理できる。第 1 は,管理会計チ ェンジ を促進する要因にかん してである 。Li bbya ndWa t e r ho us e( 1 9 9 6 ) とその追 試である Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 1 )で一致 した解析結果 としては,製造業 では,組織の学習能力が管理会計チ ェンジ と正の相関であったことである。

また,組織の規模 と負の相関であった ことも双方の研究において一致 してい る。 この ことか ら ,Li bbya ndWa t e r ho us e( 1 9 9 6 ) の分析モデルは,部分的 にではあるがクロスナシ ョナルに移転可能であることが確認 された。しかし, Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 1 )では,組織の集権化の仮説は,産業全体で支持

されたものの,た とえば,組織の学習能力の仮説が支持 されたのは製造業だ けであったなど, 全ての仮説がクロスセクシ ョナルに移転可能ではなかった。

Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 2 ) では,タスク困難性 とタスク多様性 ともに,

(13)

管理会計チ ェンジ と正の相関関係 にあったが,タスク多様性の方が よ り強い 相関関係にあ った 。Ba i ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 2 0 0 3 ) では,管理会計チ ェ ンジを促進 させる要因 として差別化戦略 と高度な生産技術 をあげ,それぞれ に仮説 を用意 していたが,支持 されたのは差別化戦略のみであった。

第 2は,管理会計 チ ェンジが組織成果 に与 える影響 にかん してであ る。

Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 2 ) では,管理会計チ ェンジが,組織成果 に直接的 に影響 するのではな く, MRI を媒介 して組織成果 を改善す る とい う結果 を 得た。管理会計チ ェンジ と MRI の関係は,タス ク多様性 よ りもタスク困難 性 にモ デ レー トされ る一方で, MRI と組織成果 の関係はタスク困難性 とタ スク多様性の程度 とは無関連であった。

Ba i ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 2 0 03 ) で も,管理会計チ ェンジが直接的に組 織成果 に影響するのではな く,管理会計チ ェンジによって非財務的管理会計 情報 を重視す る程度が高ま り,その ことが組織成果の改善 につながる とい う 結果を得た。ただ し,非財務的管理会計情報の利用の促進は,高度な管理会 計実務 によってのみ影響 されるのではな く,チーム単位の組織構造 と高度な 生産技術 か らも影響を受けていた 。Ba i ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 2 0 0 3 ) の構 造方程式モデルか ら明 らかにされたのは, ( 1 )競争 の厳 しい環境 では,企業 は差別化戦略 にチ ェンジす ること, ( 2) その結果 として,チーム単位の組織 編成,高度な生産技術,高度な管理会計実務へのチ ェンジを促進す ること, ( 3 ) それ ら 3 つのチ ェンジが組織成果 を改善 に導 いた非財務的管理会計情報 と強い関係にあること,である。

3 . 定性的研究のサーベイ

本節 では,管理会計 チ ェンジにかんす る定性的研究 として ,I nnesand Mi c he l l ( 1 9 9 0 ),Co bbe ta l . ( 1 9 9 5 ) の発見事項 を中心に概観する とともに,

それ らの研究成果の知見を整理する。

(14)

3. 1I n n e sa n dMi t c h e l l ( 1 9 9 0 ) の研究

I n n e sa n dMi c he l l ( 1 9 9 0 ) は,スコッ トラン ドの電子機器 メーカー 7 社を対 象に,管理会計チ ェンジのプロセスに影響を及ぼす要因を明 らかにすること を試みた。

調査データは,各社の上級経理担当者 ( 上級管理会計担当者 も含む)を対 象にしたインタビューによって収集 された。

調査の結果 , 「モテ ィベー タ」 , 「カタ リス ト」 , 「フ ァシ リテ一 夕」の 3つ の要 因が管理会計チ ェンジのプロセスに影響 してい るこ とが明 らかになっ た。モテ ィベータ とは,競争環境や生産技術の変化な ど管理会計チ ェンジを 間接的に促進す る要因である。 カタ リス トとは,マーケ ットシ ェアや収益性 の低下な ど管理会計チ ェンジを直接促進する要田である。フ ァシ リテ一夕 と は,適切な会計スタッフや情報システムな ど,それだけでは十分ではないが 管理会計チ ェンジをサポー トする上で必要な要因である。モテ ィベータとカ タリス トが管理会計チ ェンジを促進す るが,それはフ ァシ リテ一夕が存在す る場合のみ効果的な管理会計チ ェンジにつながることが明 らかにされた。

3. 2Co b b, He l l i a ra n dl n n e s( 1 9 9 5 ) の研究

Co b be ta l . ( 1 9 9 5 ) は,ある多国籍銀行の英国事業部 における管理会計チ ェ ンジのプロセスについて長期 にわた る参与観察か ら明 らかにす ることを試衣

た 。

調査データは,主に英国事業部 における経理担当者 とマネジャーへの継続 的なイン タビュー と必要 に応 じた関係者 との非公式の対話か ら収集 された。

調査の結果 ,I n n e sa n dMi c h e l l ( 1 9 9 0 )で示 されたモテ ィベータ,カタリス ト,フ ァシ リテ一 夕に加 え, ( 1 )「バ リア」 , 「リー ダシ ップ」 , 「モ メソ ト」

の 3 つの要因が管理会計チ ェンジのプロセスに影響 してい ること, ( 2 ) 管理

会計チ ェンジは,モテ ィベータ,カタリス ト,ファシ リテ一夕だけでは不十

分であ り,バ リアを克服するリーダシ ップ とチ ェンジを継続するモ メソ トが

(15)

必要であること,が明 らかになった。

具体的には,金融市場のグローバル化 と金融商品の開発頻度の高ま りが英 国事業部 におけるモティベータであった。カタリス トは,本社 か らの厳 しい 収益性改善要請 と新 たに着任 した取締役, CFO な どの組織 メンバで,フ ァ シ リテ一夕は,会計担当者 と情報 システム技術の拡充であった。

バ リアは,管理会計チ ェンジを遅 らせた り,阻害する要因で,本ケースで は,管理者の抵抗,会計担当者の異動,意識の低下が観察 された。 リーダー シ ップは,バ リアを克服するための要因で,本ケースでは,カタ リス トとし ての組織 メンバが管理会計チ ェンジを奨励する一方で,バ リアを克服するた めに リーダシ ップを発揮 し一人二役 を担 っていた。モ メソ トとは,管理会計 チ ェンジを持続 させ る要因であ り,本ケースでは, 5 年 にわた りさまざまな 管理会計システムの導入が試み られ 運用,改善 ,廃止が繰 り返 し行われて

きた こ とが管理会計チ ェンジのメモン トして機能 していた。

3. 3 定性的研究の知見

定性的研究の知見の第 1は,管理会計チ ェンジの分析対象にかん してであ る。定量的研究では,管理会計チ ェンジを管理会計 システム ・実務 の採用 ( あるいは利用)に限定 して分析 している。一方,定性的研究では,採用の 他 に廃止や中止な ど管理会計チ ェンジのネガティブな側面 も扱われている。

第 2は,管理会計チ ェンジのプロセスにかん してである。定性的研究で明

らかに された要因が,定量的研究 の分析モデル を構成 す る変数 と部分的 に

オーバ ー ラ ップす る。た とえば ,I nnesand Mi che l l ( 1 990) , Cobb eta l .

( 1 995) で共通 して確認 されたモティベータ,フ ァシ リテ一 夕は,定量的研究

では競争環境 ,組織 の学習能力 にそれぞれ相 当す る 。I nnesand Mi chel l

( 1 990) では,ファシ リテ一夕がない場合は,新 しい管理会計システム ・実務

の運用 に至 らないことが示 された。 しかし ,Cobbe ta l . ( 1 995) では,管理会

計チ ェンジにフ ァシ リテ一夕があって も,組織 メンバの抵抗によって管理会

(16)

計システム ・実務の導入が遅れた り,中断するケースが確認 された。

I nne sa ndMi c he l l ( 1 9 9 0 ) では,調査 した 7 社全てにおいて,管理会計チ ェ ンジに ともない,管理会計担当者が財務的情報を補 うために,非財務的情報

を開発 し,組織内で幅広 く利用 されるようになった ことが明 らかにされた。

この結果は,Ba i ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 2 0 0 3 ) で示 された管理会計チ ェン ジ と非財務的管理会計情報 との関係を示唆するケースであろう。

この ように,定性的研究では,定量的研究で提示 された変数間の関係が検 証 されなが らも,定量的研究の分析モデルには描捉 されていない要因にも着

目され,管理会計チ ェンジのプロセスの解明が試み られている。

第 3は,管理会計チ ェンジによる組織成果にかん してである。残念なが ら, 定性的研究では,組織成果 との関係について具体的 に示 されていない。ただ

し,管理会計チ ェンジが もた らす効果 については,I nne sa ndMi c he l l ( 1 9 9 0 ) でいつ くか示 されてい る。具体的には,管理会計チ ェンジによって, ( 1 ) 原 価低減,原価管理,品質,業績評価な どの管理会計領域 において,管理者が タイム リーにかつ適切 な情報 を入手で きるようにな った, ( 2) 管理会計担当 者の役割が社内で制度化 されることで,管理者の行動 がコス トを意識 したも のへ変化 した,( 3) 競合他社の コス ト分析や設計 コス トな ど広範囲な原価情 報 を扱 うようになった ことで,管理会計担当者は,エンジニアや工場の現場 監督者な ど他部門 と緊密な関係を とるようになった,である。 これ ら3 つの 結果の うち とくに,管理会計チ ェンジによって,管理者がタイム リーにかつ 適切な管理会計情報 を入手で きるようになった ことは,Wi l l i a msa ndSe a ‑ ma n( 2 0 02 ) で示 された管理会計チ ェンジ とMRI の関係にほぼ一致する。

4. おわ りに

本稿では,既存の定量的および定性的研究をサーベ イし,管理会計チ ェン

ジに影響 ( 促進)する要田,管理会計チ ェンジのプロセス,そ して,管理会

(17)

計チ ェンジ と組織成果 との関係にかんする研究成果の知見を整理 した。本稿 のおわ りとして,管理会計チ ェンジ研究 を展開 してい く上での課題 を列挙す る。

1 .クロスナシ ョナル,クロスセクシ ョナルに移転可能な分析モデルの構築 2. 管理会計システム ・実務の相互関係の解明

3. 管理会計チ ェンジ と組織成果の関係の解 明

4.Ba i ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 2 0 0 3 ) の構造方程式モデルの追試 5. 管理会計チ ェンジ ・プロセスの より深層的な解明

1.について, Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 0 1 )では ,Li bbya ndWa t e r ho us e ( 1 9 9 6 ) の分析モデルにおけるクロスナシ ョナル,クロスセクシ ョナルな移転 可能性が検証 されたが,結果 としては限 られた仮説の移転 に とどま り,分析 モデルの修正の余地が残 されていた。 クロスナシ ョナルに移転可能性を南め るためには,た とえば, Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 01 ) で指摘 された文化的要 因を考慮 した上で,カナダ,シンガポール以外の国で追試 し,クロスナシ ョ ナルに移転可能な要因の探索が必要である。一方,クロスセクシ ョナルに移 転可能性を高めるためには,新たな変数の追加の余地が残 されている。その 際,定性的研究 による発見事項の援用が有効であ るか もしれない。

2 .について,定量的研究では,管理会計システム ・実務が複数採用 され た場合,それ らシステム ・実務間の相互関係,または,既存の管理会計シス テム ・実務 との相互関係は考慮 されていない。 しかし,実際には,採用 され た管理会計システム ・実務が単独 とい うよ りは,他のシステム ・実務 と作用 して,なん らかの効果 ( 成果)が得 られる と考 え られ る。 この視点は, より 現実にそ くした管理会計チ ェンジの分析のために必要である。

3. について, Li bbya ndWa t e r ho us e( 1 9 9 6 ) の分析モデルでは,管理会

計チ ェンジを従属変数 とするのみで, 組織成果 との関係は検討 されていない。

(18)

また,Wi l l i amsa ndSe a ma n( 2 0 02 ) では,管理会計チ ェンジの説明変数が少 ない。今後は,コンテ ィンジ ェンシー理論 にもとづいた管理会計チ ェンジの 包括的な分析モデルが必要である。 また,組織成果の レベル については, Wi l l i a msa ndSe a ma n( 2 0 02 ) は部門であるのにたい して,Ba i ne sa ndLang‑

f i e l d‑ Smi t h( 2 003 ) は事業部である。 この ように, これ らの分析結果を直接比 較で きないことか ら,今後は,組織成果の分析 レベルに応 じたそれぞれの研 究蓄積 も必要である。

4 .について,Bai ne sa ndLa ngf i e l d‑ Smi t h( 2 003 ) による と,高度な管理 会計実務へのチ ェンジを促進 したのは差別化戦略へのチ ェンジのみで,高度 な生産技術ではなかった。高度な生産技術がコス ト構造 を大 きく変化 させ, その ことが高度な管理会計実務への移行がすすむ とい うのは,管理会計研究 者の一般的な見解であるが, この ことが必ず しも経験的な証拠で示 されてい るわけではない。 この ことを検証す るために,た とえば,高度な生産技術の 導入がすすむ米国企業や 日本企業な どを対象にした追試が有効であろう。

5.について,経時的ケース研究が必要になる。経時的ケース研究のため の調査手法お よび分析枠組 として,吉 田( 2 0 0 4 ) は,制度論的アプローチの可 能性を示唆 している。近藤 ( 2 0 0 4 ) ,近藤 ・吉 田( 2 0 05 ) では,制度論的アプロー チにもとづいた原価企画の管理会計チ ェンジ ・プロセスの解明が試み られて いる。

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参照

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