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一小学校高学年児童一 樫村いずみ㌔野田 洋平桝

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茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)123−141       123

体育の楽しさの因子構造 一小学校高学年児童一

樫村いずみ㌔野田 洋平桝

(1990年9月14日受理)

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Izumi KAsmMuRA*and Yohei NoDA**

(Received September 14,1990)

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子どもが毎日どのような生活を繰り返していくかということが,子どもの心身の発育・発達に影 響を及ぼすことは,よく知られている。現代の子どもは受験勉強や学習塾に通っていることで,身 体活動そのものが少なくなり,体力が低下してきたと言われている。このような偏った生活で子ど もの心身の働きをバランスよく保てるであろうか。子どもの可能性を充分に伸ばすためにも「知」

に偏らず,バランスのとれた生活を送ることが大切だと考える。これは「よく学び,よく遊べ」と いう言葉で裏付けできる。バランスのとれた生活とは健康的な生活であり,心身の健康を維持する ことも大切である。また子ども時代の運動経験は影響も大きく,運動体験をとおして心身ともに健 康であることは人間本来がもっている願いであると考えられる。そして,人間が行動を開始する時 は何らかの働き掛け,つまり動機づけが行われる。動機づけには内発的動機づけと外発的動機づけ の2種類があるが,子どもが体を動かし運動や遊びをするときは運動や遊びそのものが目的であっ て,本当に楽しいといった情緒の満足を伴う内発的動機づけが重要である。

学校体育においては,昭和52年に改定された文部省の指導要領1)の中で,昭和28年以来25年を経 過して復活した「運動を楽しむ」「運動に親しむ」といった心理的側面からの目標がクローズアッ

プされた。また,平成元年に交付された新指導要領2)では「生涯を通じて健康で安全な生活を送る ための基礎が培われるように…」といった前指導要領の心理的側面をうけ,それを生涯につなげる 第1歩として取り扱っている。つまり,学習者の発育発達の必要を満たすだけでなく,生涯を通し て自ら進んで運動を実践することができる能力と態度を育成するために,それぞれの運動がもって いる楽しさを追求させ,体得させることを強調している。そしてその成果はただその場限りのもの でなく,学校生活を終え,社会に出たあとにも継続する,永続性の強いものでなくてはならないは

*教育学部 保健体育講座,

**?ヒ市立見川小学校.

(2)

124       茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

ずである。

体育の楽しさをどうとらえているかに関する研究には,高田3)がまず子どもに聞くことが大切で あると述べ,子どもたちに聞くことからはじめている。そこから,楽しさの4原則(①精一杯運動 する楽しさ ②友人と仲良くする楽しさ ③技と力を伸ばす楽しさ ④何かを発見する楽しさ)を あげている。また矢野4)は従来の視点が,教師の立場からの運動の構造的特性と効果に重点がおか れ,教師の視点から体育の目標,内容や学習過程を考えてきたが,子どもたちの立場から運動を見 なおすことが求められ,運動の機能的特性を学習に位置づけることが重要な目標となってきた,と している。これは筆者が体育の楽しさについて教師側からだけでなく,児童がどうとらえているか という視点と共通するものである。また,体育の楽しさの内容は,指導する人の観点や経験によっ て差が生じてくる。徳永ら5)はそういった指導する側の主観性を排除するため,因子分析法(主因 子法・バリマックス法)を用いて体育授業における「運動の楽しさ」の因子を抽出した。大学生を 対象に「運動の基本的欲求充足」 「競争」 「挑戦」 「人間関係」 「レクリエーション」 「自主的活 動」 「スリル感」 「観戦・応援」 「進歩・向上」の9因子を,また,小学生については「挑戦」 「勝 利感」 「創造的活動」 「賞賛」 「健康」 「競争」 「集団活動」 「観戦・応援」 「スリル感」 「自己 実現」の10因子を解釈・命名した。しかしこの研究はあくまで体育授業における「運動の楽しさ」

という観点からであり,体育授業の楽しさを総括的にとらえているとは言いがたい。しかし,友人 や指導者,施設用具といった環境的要素を含んでおり,本研究との共通点がみられる。

また,賀川6)は楽しさを個々の欲求を充足したときに生じる満足感を指していうことから体育の 場に関する欲求としての「活動欲求」 「解放欲求」 「集団所属欲求」 「協力の欲求」 「競争欲求」

「自己実現・自己表現の欲求」 「社会的承認の欲求」 「達成欲求」などの充足を根底とした,調査 項目に環境的要素と指導方法に関するものなどを含め,体育の授業における楽しさについて因子分 析法(主因子法・バリマックス法)を用いてその因子構造の検討を行っている。その結果, 「でき ばえ・成果」 「挑戦・熱中」 「くつろぎ」 「伯仲感」の因子が抽出されたが,出現のしかたや寄与 率には性や学年による微妙な差があることを認めている。更に「できばえ・成果」因子においては

「チームワーク発揮」 「自己実現」 「卓越感」 「自己承認」 「一般的成果」という形で説明され,

「挑戦・熱中」因子においても, 「創造性」 「活発さ」 「競争性」 「挑戦」という下位因子に分か れることを明らかにした。

徳永や賀川は客観的な手法を用いて,しかも主体的な視点ばかりでなく環境的な視点からも体育 または運動の楽しさをとらえているが,どちらも環境的要素の項目内容の選択が明確でない。そこ で,本研究では,生態学的なモデル(内山7))を用いて主体と環境の両側面から,因子分析法によ

って児童側からアプローチした体育の楽しさの因子構造を明らかにすることを目的とする。

研究方法と内容

1.調査の対象・人数

(3)

樫村・野田:体育の楽しさの因子構造一小学校高学年児童      125

茨城県内の小学校 高学年児童       712名

男子  女子  不明  計 山方町立 Y小学校  50名  46名   0名  96名

、  神栖町立 H小学校   84名  96名   2名  182名 玉造町立 T小学校   29名  28名   0名   57名 協和町立 N小学校  129名  151名   1名  281名 八千代町立 N小学校   56名  40名   0名  96名

計      348名  361名   3名  712名

2.調査期間 平成元年10月

3.手順

(1)質問調査の作成

本研究では,体育の楽しさを追求していくにさいして,内山8)のモデル(遊び・運動行動の成 立要因・条件に関するモデル)から,主体としての条件や環境条件が阻害されたとき,行動が不 成立になるばかりでなく,行動の楽しさも阻害されるという立場をとり,研究の基本理念とした。

生態学的なモデルをカテゴリーとし,文献その他で見られる楽しさの要因を示す意見項目を付加 し,主体的要因50項目,環境的要因49項目の99項目からなる調査用紙を作成し,県内の小学校教 員を対象に調査を行った。調査後回収し各項目に5段階の尺度を用いて集計を行った。そこで調 査用紙を児童用に作り直すため項目の選択をおこなった。先の99項目の主体・環境のそれぞれで 因子分析を行い,因子負荷量の高い30項目ずつを下記のように選択した。

○主体……①意欲・欲求・意志    6項目

②スキル(体力・能力)  11項目 30項目

③健康         4項目

④評価・活動       9項目

○環境・…①教師の態度       10項目

②学校の取り組みなど   2項目

③施設         5項目 30項目

④家庭環境        1項目

⑤集団・チームの技術   4項目

⑥集団行動・態度     3項目

⑦存在・承認       5項目 計60項目

(4)

126       茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

②基本統計の算出

・各項目におけるカテゴリーごとの集計

・項目の平均値・標準偏差の算出

(3)因子分析

・主因子法

・バリマックス法

結果と考察

1.主体的要因

(1)基本統計による各項目の性差

主体30項目について,男子 348名,女子 361名に分け,各項目の平均にどのような差がある か比較検討した。なお,それぞれの項目における平均値・標準偏差を示しその有意差検定を行っ た。それについては表1に示す。

平均点3.5以上の高い項目でみると男子では8項目,女子では12項目あり,男女とも「記録が 伸びた」 「ゲーム・相手に勝てる」 「自分の目標が達成された」「練習の成果がでる」「作戦ど おりにいく」など項目に重なりが見られ,他の項目を見ても自分の働きかけに対し,その結果が プラスの方向に働いた時,楽しさを感じていることがわかる。また,平均点 3.0以下の低い項目 でみると男子では7項目,女子で7項目あり,男女ともに共通する「先生の話に集中する」「運 動のルールを知る」という項目は身体活動がまるでないという状態と考える。また,手本として みんなの前で運動したり友達と競争したりするのは友人との関係から考えるとあまり楽しい方で はないようである。運動不足やストレスの解消・気分転換などは,身体的にも精神的にも運動を 楽しむ状態ではないことが示唆される。

30項目のうち18項目に男女における差が認められ,先の研究でもその差があることが認められ たので,因子分析についても性別ごとに主体における体育の楽しさの因子を抽出していくことに

した。

(2)因子分析による楽しさの要因

①男子  (表2)

主体の30項目について主因子法とバリマックス法により因子分析を行い,その結果3つの因 子が抽出された。

第1因子は目標が達成されたり,苦しいこと,辛いことを最後までやりぬいたり,できなか った運動ができるようになったり,ひとつの運動を最後までやり遂げたりといった目標を達成 したり苦痛・困難を克服したりした時であり,それらを記録の伸びや練習の方法・ルールや技 がわかるなど運動に関する知識を得ることが支えていると考えられるのでこの因子を「克服・

知識・目標達成」の因子とした。この因子は抽出された因子の中で最も高い寄与率を示してい る。第H因子は運動で気分転換したり,ストレスや運動不足を解消したりと,心の中の何かを 発散し,また思いっきり体を動かしたり,友達と競争したりみんなの前で手本を示すなど,と

(5)

樫村・野田:体育の楽しさの因子構造一小学校高学年児童      127

表1 各項目の男女別平均・標準偏差

男 子 T 女 子

項       目 N=348 N=361

平均 SD 平均 SD

運動のルールについて知った 2.92 .796 2.85 .700 新しい技に挑戦する 3.16 .791 3.12 .698 自分の目標が達成された 3.65 .622 *** 3.78 .463 苦しいこと,辛いことの克服 3.42 .747 ** 3.58 .659 自分の健康に自信がある 3.06 .837 3.18 .769 味方や相手に合わせて運動できた 3.11 .802 ** 3.28 .670 練習方法・技がわかった 3.26 .767 3.29 .661 できなかった運動ができる 3.74 .523 *** 3.84 .384 技の上達 3.43 .669 ** 3.56 .597 一生懸命運動した 3.36 .675 3.44 .651 思ったとおりに体を動かす 3.49 .684 ** 3.64 .577 やりたい運動をする 3.60 .660 3.68 .546 やったことのない運動をする 3.03 .825 2.95 .776 運動不足の解消 2.81 .900 2.77 .807 試合をしている 3.67 .584 *** 3.50 .713 練習の成果がでた 3.58 .622 3.63 .578 ひとつの運動をやりとげた 3.19 .747 3.30 .665 記録がのびた 3.74 .520 *** 3.86 .356 手本としてみんなの前で運動する 2.68 .999 2.74 .990 先生の話に集中する 2.48 .884 2.64 .832 応援に応えられる 3.24 .764 ** 3.40 .706 作戦通りにいく 3.53 .666 3.63 .574 気分転換 2.97 .854 ** 3.15 .725 やりたくてもできない運動をする 3.36 .788 ** 3.52 .698 ゲーム,相手に勝てる 3.68 .567 *** 3.80 .441

ストレス解消 2.85 .906 2.97 .790

友達と競争 2.97 .886 2.82 .908

体力がつく 3.44 .702 3.32 .664 思いっきり体を動かす 3.21 .783 3.37 .740 給食がおいしい 3.47 .700 3.34 .741

(6)

128 茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

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樫村・野田:体育の楽しさの因子構造一小学校高学年児童 129

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130       茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

にかく体を動かすことであると考えられるところからこの因子を「身体活動性」の因子とした。

第皿因子は,思ったとおりに体を動かしたり,やりたい運動をしたり,試合で練習の成果がみ のるな拭自分の働き掛けに対してプラスの成果が現れることであると考えられるのでこの因 子を「身体活動の成果」の因子とした。

②女子  (表3)

男子と同様に主体の30項目について主因子法とバリマックス法により因子分析を行い,その 結果5つの因子が抽出された。

第1因子は友達と競争したりする時はその競争に熱中しているであろうし,先生の話に集中 できるということは人間関係がうまくいっているときであり,それが背景になっておもいっき

り体を動かせたり,熱中できると考えられる。このことからこの因子を「人間関係と熱中」の 因子とした。第H因子は因子負荷量がマイナスを示しており,他の因子と異なる方向の楽しさ を表している。項目としては技の上達,目標達成,苦痛や困難の克服といったできばえや成果 に関する項目が抽出されたことからこの因子を「技能の向上と克服」の因子とした。第皿因子 は,抽出された因子の中で2番目に高い寄与率を示しており,女子がとらえる体育の楽しさの 要因としてある程度のウエイトを占めている,と考えられる。ここでは運動でストレスを解消

したり,気分転換したり,運動中はゲームや相手に勝てたり,運動後には給食をおいしく食べ るなど身体的な部分ばかりでなく気分転換がうまくなされたとき楽しさを感じるといえる。こ の因子を「心身のリフレッシュ」の因子とした。第W因子は,0.45以上を示す項目が1つしか なく,命名が困難なことから解釈不可能とした。第V因子も第皿因子と同様に因子負荷量がマ イナスを示しており,他の因子と異なる方向の楽しさを表している。項目としては運動のルー ルや方法,技についての知識があり,味方や相手の動きにあわせて,体を動かすことができた り,といった活動性を表している。また,その要因を支えているものとして健康への自信があ ることも示された。このことからこの因子を「知識・活動性と健康」の因子とした。

③性差

各グループごとに因子命名した表を下記のように作成した。(表4)

表4 各グループの因子命名

1 H IV V

克肢知識・目標達成 身体活動性 身体活動の成果

(13.6786) (13.6270) (9.8913)

人間関係と熱中 技能の向上と克服 心身のリフレッシュ 解釈不可能 知識・活動性と健康

(6.3630) (9.2776) (7.3023) (7.1823)

男子は寄与率からもわかるように楽しさの要因が女子と比べると明確に抽出されている。そ

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樫村・野田:体育の楽しさの因子構造一小学校高学年児童         131

れに比べて,女子は寄与率から見て第n因子が最も高いが10%に達していない。つまり,男子 に比べると女子は体育の楽しさのとらえ方が様々であると考えられ,このことから,指導する 場合,男子よりも女子では多方面での細かい配慮が必要であることが示された。男子では困難

・苦痛の克服,運動に関する知識,目標を達成することがひとつの要因として抽出されている、が,女子の場合は技能の要素を含めた目標の達成や困難・苦痛の克服の要因と別に活動性を含

めた運動に関する知識の要因として抽出された。女子にとっては目標を達成することも,技能 を向上させることも,困難・苦痛を克服することも,ある事柄に対する克服的要素が大きいこ とが示唆された。また,男子ではとにかく体を動かすことが楽しさの要因であると考えている のに対して女子では友人や先生などといった人間関係がうまくいっていることが楽しさの背景 にあることが前提となり,おもいっきり体を動かせたり,熱中して活動ができると考えられる。

これとは別の観点として気分転換がうまくなされていることがなによりも楽しさの要因となる ことが示された。特に,女子は男子に比べて精神的な要素が大きなウエイトを占めており,指 導する時のポイントになると考えられる。

2 環境的要因

(1)基本統計の各項目における性差

環境30項目について,男子348名,女子361名に対し,各項目の平均にどのような差があるか比 較検討した。なお,それぞれの項目における平均値・標準偏差を示しその有意差検定を行った。

それについては表5に示す。

平均点3.5以上の高い項目でみると男子3項目,女子6項目で男女ともプレイで友達にほめられ た,仲のよい友達と運動するの項目があり,友人関係が楽しさと関わりがあることが示された。

他の項目を見ると,校長先生をはじめ先生方にほめられることが楽しさの要因であると思われる。

特に女子児童では教師の態度に関する項目の平均点が高い。平均点3.0以下の低い項目でみると男 子9項目女子7項目あり,男女の差はあまりなく女子の項目はすべて男子の項目の中に含まれて おり,特に先生が厳しい時や下手な人と運動する時などは楽しさを余り感じていないようである。

また,家庭での規則正しい生活習慣なども体育の楽しさと直接的つながりは薄いようである。

また,検定の結果から30項目のうち19項目に男女において差が認められた。因子分析について も性別ごとに環境における体育の楽しさの因子を抽出していくことにする。

(2)因子分析による楽しさの要因

①男子  (表6)

環境の30項目について主因子法とバリマックス法により因子分析を行い,その結果5つの因 子が抽出された。累積貢献度が48.5931%を示しているので,体育の楽しさの要因としてある程 度説明できると考える。

第1因子は充分な広さやよく準備された施設の中で運動することが楽しさの要因として現れ た。そのほか,最後までゲームができるなどの時間的な環境や天気の良い日に運動できるとい った天候の環境があげられた。このほか,友達からの賞賛,応援そして仲の良い友達と一緒に 運動したり,みんなで協力できたなど友人関係が円滑にいっている時に楽しさを感じている。

つまり,施設,時間,天候といった環境要因と友人関係とは一緒にグルーピングされた。この

(10)

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表4 各項目の男女別平均・標準偏差

男 子 T 女 子

項       目 N=348 N=361

平均 SD 平均 SD

みんなで協力できた 3.31 .710 ** 3.46 .642

仲のよい友達と運動する 3.54 .626 ** 3.68 .577

先生がえこひいきをしない 3.10 .891 *** 3.34 .856

上手な人と運動する 2.80 .977 2.90 .949

味方のすばらしいプレイ 2.91 .986 ** 3.15 .856

グループで練習 2.91 .845 2.94 .773

先生の熱心な指導 3.10 .807 3.20 .767

先生がおもしろい 3.46 .735 ** 3.59 .663

先生にほめられる 3.53 .672 3.59 .625

先生の説明がよくわかる 3.13 .748 3.24 .759

先生がきびしい 1.96 .868 1.88 .769

先生のやさしい指導 3.05 .803 3.19 .773

失敗しても,先生は叱らず助言 3.31 。811 3.34 .794

先生が意見を聞いてくれた 3.22 .759 3.34 .682

へたなひとと運動する 2.41 .999 2.37 .912

先生がプレイを見てくれた 3.06 .778 3.01 .820

家庭での規則正しい生活 2.73 .863 ** 2.94 .899

校長,他の先生もほめてくれた 3.42 .772 *** 3.61 .606

充分な広さの施設がある 3.41 .742 3.39 .709

天気のよい日に外で運動する 3.29 .834 3.23 .747

いろいろな運動の用具や器具が使える 2.86 .967 ** 3.10 .855

ゲームが最後までできた 3.49 。684 3.49 .643

先生方が盛り上げてくれた 3.28 .740 3.39 .742

きれいでよく準備された施設 3.43 .733 3.52 .627

強いチームでプレイ 3.21 .933 3.09 .936

上手な人のプレイをみる 2.85 .936 2.95 .877

意見がみんなから受け入れられる 3.15 .793 *** 3.42 .649

みんなから注目される 2.88 .926 2.70 .895

友達から応援してもらった 3.31 .766 *** 3.54 .641

プレイで友達にほめられた 3.58 .685 3.64 .545

(11)

樫村・野田:体育の楽しさの因子構造一小学校高学年児童      133

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(12)

134       茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

因子を「施設・時間・天候と友人関係」の因子とした。また,この因子は寄与率が最も高い値 を示しており,体育の楽しさの要因として大きなウエイトを占めていると思われる。第H因子 は因子負荷量が0.45以上の項目は1つしか抽出されず,命名が困難なので解釈不可能とした。

第皿因子は因子負荷量がマイナスを示しており,他の因子と異なる方向の楽しさを表している。

項目としては先生からの熱心な指導や説明がわかるときやきびしいとき,または家庭環境やグ ループ活動の項目が抽出されていることからこの因子を「教師の指導姿勢と人間関係」の因子 とした。第W因子も第皿因子と同じ様に因子負荷量がマイナスを示しており,他の因子と異な る方向の楽しさを表している。項目としてはみんなの注目をあびたり,自分だけでなく味方が 素晴らしいプレイをするなど脚光の要因が楽しさと関係があることを示唆している。また,自 分の意見がみんなから受け入れられるなどの項目があることからこの因子を「脚光・賞賛」の 因子とした。第V因子は教師からの励まし,賞賛やおもしろいとか優しいとかの指導態度の要 因であると考えられるのでこの因子を「教師の指導態度」の因子とした。

②女子  (表7)

環境の30項目について主因子法とバリマックス法により因子分析を行い,その結果5つの因 子が抽出された。

第1因子はすべて教師に関する項目に高い因子負荷量を示しており,特におもしろさ・やさ しさや励まし・賞賛や指導法といった指導態度の項目であると考えられるのでこの因子を「教 師の指導態度」の因子とした。また,この因子は寄与率が最も高い値を示しており,女子の体 育の楽しさの要因として大きなウエイトを占めていると思われる。第n因子は上手な人のプレ イを見たり一緒に運動したり,または味方が素晴らしいプレイをするなど技能が発揮され,脚 光をあびることからこの因子を「脚光」の因子とした。第皿因子は因子負荷量がマイナスを示 しており,他の因子と異なる方向の楽しさを表している。項目としては充分な広さやよく準備 された施設の中で運動することや最後までゲームができるなどの時間的な環境,天気の良い日 に運動できるといった天候の環境があげられた。このほか,教師が大会などを盛り上げてくれ た時など学校全体としての体育や運動への取り組みの項目にも高い因子負荷量が見られた。つ まり,施設,時間,天候といった環境要因と学校の運動への取り組みが一緒にグルーピングさ れた。この因子を「施設・時間・天候と学校の運動への取り組み」の因子とした。第IV因子も 第皿因子と同じ様に因子負荷量がマイナスを示しており,他の因子と異なる方向の楽しさを表 している。項目としてはプレイを友人にほめられたり,応援してもらったり校長先生などにほ められるなどに高い因子負荷量を示しており,この因子を「賞賛・応援」の因子とした。第V 因子は因子負荷量が0.45以上の項目が1つしか抽出されなく,命名が困難なので解釈不可能と

した。

③性差

各グループごとに因子命名した表を下記のように作成した。 (表8)

寄与率をみると男子は一つ一つの因子に高い値を示している。これは解釈した4つの因子に ついては独立した楽しさの要因として説明できると考えられる。女子は男子に比べると累積貢

(13)

樫村・野田:体育の楽しさの因子構造一小学校高学年児童 135

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(14)

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献度も低いことから,女子における体育の楽しさの要因は多岐にわたると考えられる。また,

男子は施設・時間・天候といった外的な環境と友人関係に最も高い寄与率を示しているのに対 し,女子では教師の指導態度に最も高い因子負荷量を示している。このことから男子が活動の 場所やその状況または友人との関係に楽しさの要因を見出しているのに対し,女子はおもしろ い,励ましてくれる,優しい,ほめられる,など教師の態度が楽しさを規定する要因として大 きなウエイトを占めている。このことは,教師の児童への接し方が女子指導のポイントになっ てくると考えられる。因子の内容を見てみると,男子は教師の指導姿勢と態度は別の因子とし て抽出されているが,女子は一緒にしかもそれが楽しさを規定する要因として大きなウエイト を占めている。このことから男子は教師を客観的にとらえているが女子の場合は,感情的な 部分に大きく反映されやすいと考えられる。また,男子は施設・時間・天候といった外的な環 境と友人関係が同じ要因として現れているが女子は外的な要因と人間関係の因子は別々に抽 出されたことから,男子は体育の授業で活動する時は自分の周りの環境を大きくとらえている のに対し,女子は環境要因のひとつひとつを細かく感じ取っていると考えられる。また,女子 は脚光の因子から周りの目を気にする傾向が見られる。それに対し,男子は脚光ばかりでなく,

それに対する賞賛が必要であると考えられる。

表8 各グループの因子命名

1 H IV V

男子 施設・時間・天 と友人関係

@(14.4226)

解釈不可能 教師の指導姿勢と人間関係

@(9.8426)

脚光・賞賛

i10.4860)

教師の指導態度

@(10.9436)

女子 教師の指導態度

@(12.9946)

 脚光

i8.3110)

施設・時間・天候と w校の運動への取組

@(9.8340)

賞賛・応援

i7.4203)

解釈不可能

3 主体・環境の両要因と項目との検証

まず,各項目における楽しさの程度を見るため,各項目で各カテゴリーに何人が答え,その%が どれくらいの割合を示しているかを検討してみた。また,男子と女子とで各項目に対する楽しさの 感じ方の違いについてκ2検定を行った。これらから主体では19項目に,環境では18項目に差がある

ことがみとめられた。

次に各因子における項目の内容を検討してみる。

(1)主体的要因一男子

第1因子8項目のうち目標達成,困難の克服,できなかった運動ができる,記録が伸びるの4 項目ではとても楽しさを感じていると答えた人が50%以上いて,楽しいと答えた人を加えると約 90%の人が楽しいと答えている。また,残りの4項目はとても楽しいと答えている人は30%前後 だが楽しいと答えている人が40%ぐらいで,全体としてやはり80%程度の人が楽しさを感じて

(15)

樫村・野田:体育の楽しさの因子構造一小学校高学年児童      137

いる。第H因子7項目は全体として楽しさの方向を向いているが,気分転換・ストレス解消・友 達と競争・おもいっきり体を動かす・運動不足の解消の5項目では30%程度,手本としてみんな の前で運動するの項目では約40%が,先生の話に集中するでは50%以上の人が全然または余り楽

しさを感じなかったりしていることを加味すると楽しさの要因とは言い切れない。第皿因子は3

 ㌧?レが抽出され,3項目とも約60%がとても楽しく,約30%の人が楽しいと答えている。楽しさ の要因として裏付けされた。

(2)主体的要因一女子

第1因子4項目のうち一生懸命運動した,おもいっきり体を動かすの2項目では約80%以上の 人が楽しさを感じている。しかし友達との競争の項目では約35%の人が,先生の話に集中するで は約40%の人が全然または余り楽しさを感じていないことを加味すると楽しさの要因とは言い切 れない。第皿因子は6項目では因子負荷量はマイナスを示しているが内容を見てみると,50%以 上の人がとても楽しさを感じるに答え,全体としては80〜90%程度の人が楽しさを感じているこ

とが示唆された。第皿因子は4項目で,ストレス解消の項目は約30%の人が余り楽しさを感じて いないが,ほかは約80%の人が楽しいと答えているので楽しさの要因として裏付けされた。第V 因子の因子負荷量はマイナスを示しているが,項目を見ると約70%以上の人が楽しいと答えてい る。しかし,どちらかというと,とても楽しいと答えた人より楽しいと答えている人が多いこと から楽しさの要因として重要であるとは言いがたい。

(3)環境的要因一男子

第1因子は8項目のすべての項目で約80%以上の人が楽しいと答えている。このことから体育 授業の楽しさの要因であると裏付けされた。第皿因子の因子負荷量はマイナスを示している。項

目を見てみると抽出された5項目のうち4項目は約64〜80%の人が楽しいと答えているが,先生 が厳しいという項目には楽しいと答えた人は約20%で残り80%は楽しくないと答えている。この ことから,この要因はとらえ方や扱い方をまちがえると,楽しさを感じない方向にいってしまう 危険性を含んでいると考えられる。第W因子は4項目のうち2項目までが全然楽しくないと答え た人が約10%程度いる。しかし楽しくない方に答えた人は30%程度である。この因子の負荷量も マイナスを示していることから,第皿因子と同様,とらえ方や扱い方をまちがえると,楽しさを 感じない方向にいってしまう危険性を含んでいると考えられる。第V因子は5項目のうち3項目 までがとても楽しいと感じているに50%以上の人が回答し,楽しいと答えた人を加えると,約80

%の人が楽しいと感じている。特に,先生にほめられたときという項目には,90%の人が楽しい 方に答えている。このことから,楽しさの要因として裏付けされたと考えられる。

(4)環境的要因一女子

第1因子は7項目抽出されていてとても楽しいと50%以上の人が答えた項目は先生がおもしろ い,先生にほめられた,失敗しても叱らず助言してくれたの3項目で全て教師の児童へのアプロ 一チの仕方の項目と考えられる。そのほかの項目も楽しい方向に80%の人が答えているので楽し さの要因として裏付けられたと考える。第H因子は3項目で,3項目とも67〜78%の人が楽しい 方に答えているので,楽しさの要因として裏付けられた。また,第3因子も第4因子も因子負荷 量がマイナスを示している。しかし両因子の項目とも80%以上の人が楽しい方に答えているので,

この因子も楽しさの要因として位置づけられた。

(16)

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(5)上で示したように各要因,性別ごとに因子分析により抽出された項目を検証してみた。その 結果,単純集計で楽しいと感じているパーセントが高い項目は楽しさの要因として因子分析で

も抽出できた。また,単純集計で楽しいと感じているパーセントが余り高くない項目でも因子 分析をおこなうことで項目間の関係から楽しさの要因として抽出できた。

4 主体・環境の両要因と楽しさの検証

本研究の結果を本節の概要のところで述べた先の研究と比較・検討する。

まず,体育授業における「運動の楽しさ」という観点で研究した徳永9}と比較をしてみる。徳永 は大学生と小学校6年生を対象としており,本研究でも高学年児童を対象に調査を行っているので,

ここでは小学生との比較に重点を置いた。

徳永は研究の結果「挑戦」 「勝利感」 「創造的活動」 「賞賛」 「健康」 「競争」 「集団活動」「観 戦・応援」 「スリル感」 「自己実現」の10個の因子を解釈した。本研究との共通点を探し検討して みると,徳永が苦しいことやつらいことを最後までやりぬいたり,苦しい練習に耐え,できないこ とを何度もできるようになるまで練習するなどの挑戦をするといった活動内容として命名した「挑 戦」因子は,本研究の主体的要因として男子の「克服・知識・目標達成」の因子の特に克服・目標 達成と,女子では「技術向上と克服」の因子に相対すると考えられる。このように因子名だけでは 分かりづらい部分もあるので,内容を加味しながら検討していった。次に「賞賛」の因子は本研究 でも環境要因として男子は「脚光」の要因と一緒に,女子では応援の要因と一緒に「賞賛」の因子 として解釈できた。健康な体になったり,体調がよくなったり,運動後気分がさっぱりするなと㍉

心身の健康になるような活動内容であることから命名された「健康」因子は,女子の主体的要因の

「知識と活動性と健康」の因子と相対すると考えられる。しかし男子では見当らない。「競争」の 因子は主体的要因のなかで男子は「身体活動性」の因子に含まれ,女子は「人間関係と熱中」の因 子の熱中に含まれている。「集団活動」の因子は男子は主体要因の「身体活動性」と「身体活動の 成果」の因子に,女子では環境要因の「脚光」因子に含まれている。 「観戦・応援」の因子は環境 的要因のなかで男子は「施設・時間・天候と友人関係」因子の特に友人関係の内容と女子は「賞賛・

応援」の因子の応援の部分と重なりがある。「自己実現」の因子は主体的要因のなかで男子は「克 服・知識・目標達成」と女子は「技術の向上と克服」因子に含まれると考えられた。

このように一対一の関係で見てみると,徳永は本研究よりも細かい因子として抽出されている。

また, 「勝利感」 「創造的活動」 「スリル感」といった因子については本研究では抽出されなかっ た。しかし本研究で環境的要因として抽出された施設や時間的な環境・天候の因子や教師の指導態 度の因子については徳永の研究では抽出されていない。これらの因子は本研究では男女共に高い寄 与率を示していることから,また徳永のものが体育授業における「運動の楽しさ」についての研究 であることを踏まえるとこれらの施設や時間的な環境・天候の因子や教師の指導態度の因子は体育 授業における楽しさの重要な要因であると考えることができよう。

それでは,体育授業における楽しさの要因分析を行っている賀川1°川》の研究と比べてみる。

賀川は因子分析法(主因子法・バリマックス法)の結果, 「できばえ・成果」 「挑戦・熱中」

「くつろぎ」 「伯仲感」の因子を抽出し,また,出現のしかたや寄与率には性や学年による微妙な 差があることを認めている。更に「できばえ・成果」因子においては「チームワーク発揮」「自己

参照

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