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算数科における計量教材の研究

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(1)

げ       61

算数科における計量教材の研究

一一 タ態調査と教科書分析調査による一一

平   岡      忠

§1. 目   的

算数科の領域のうち,計量教材についての関心が近年漸く高まって来たことは喜ばしい ことである。従来の教育では多分に計量教材は軽視されていた嫌いがあったが,その結果 は昨年9月の文部省の全国学力調査の際にも他領域に比して低い正答率で表われている。

従つてこの領域の教材に対する研究及び指導について,今後とも一層努力の必要なことが 痛感される。これらのこととの関連のもとで,県内小学校におる計量教材指導上の困難点 や教具・設備の状況等についての実態調査及び算数科教科書の分析調査による結果をもと

にして,更に細部の点について考察することを目的とする。       、

§2.方   法

(1)実態調査

時  期:昭和32年11月初旬

調査校:県内の小学校から,学校規模に応じて比例抽出によって選んだ小学校に調

査紙を配布し回答を集計した。       、、

回答校数:40校

調査内容:昭和31年4月(・32年3月における計量教材の指導に関しての教具・設備の 状況,測定・実習の行否またそれを行った時期,学習指導上の難易順,児 童理解の困難順,その他。

但し紙面の都合上,測定・実習の行否及びその時期,測定の名称及び使用した教具名等 についてはここでは触れないものとする。

②教科書分析調査

対象とした教科書:昭和31年4月〜32年3月に,県内小学校で比較的多数使用された ものと特徴ありと思われる算数科教科書中から任意10種類をえらんだ。

分析方法:頁毎に内容を分析調査し項目毎に集計した。

(2)

62       茨城大学教育学部紀要第七号

§3.結果とその考察

教科書についての一般的な分析的研究については別報「算数科教科書の分析的研究」(以 下簡単にこれを別報と呼ぶ)に詳述してある。計量教材の項目について,教科書を学年別 に頁数をしらべてそオりらの平均を比率で表したものが次の第1表である。

第1表 学年別による計量項目の比率

項目

w年 一  般 量  感 測  定 単  位 量計算 測定値

嬰の齢計    一一一一一一一一

}一一

1年 35.3 0.0 9.3 0.0 6.2 0.0 49.2 100.0

2年 26.6 L8 21.2 12.5 23.5 0.0 14.3 100.0

3年 26.7 3.6 10.4 22.0 21.2 0.0 16.1 100.0

4年 23.3 2.5 10.6 15.9 38.9 0.0 8.7 100.0

5年 14.6 4.3 10.0 i6.9 36.4 5.1 12.6 100.0

6年 13.5 4.3 12.5 19.2 35.9 7.3 7.4 100.0

学年

ス均 23.3 2.8 12.3 正4.4 27.0 2.1 18.1 100.0

この第1表と別報の第9表を対照し乍ら進めると好都合である。

低学年では測定の一般的事項や用語の理解が圧倒的に多く,学年が進むと共に少くなっ ている。量感の養成は計量教材指導の基礎となり極めて重要であるが,このことは教科書 上からは見にくく,従って比率としては少い値で表われている。むしろ実際の指導に深く 関係するものといえる。計量指導では測定,計器についての理解,目盛の読み方等と単位 についての理解の指導が大切であるが,前述の学力調査結果の低率な原因の一つとしても この面の十分な研究が期待される。単位については明後34年1月1日から計量法が改正さ れメートル法一本となってすっきりするが,現在では尺貫法やヤード・ポンド法等が混用

され,これらの単位は日常生活に深く根を下しているので早急にこの面についての明るい 望みは期待出来ないが漸次指導はし易くなってゆくと思われる。更に単位については十分 考慮して成る可く能率的な扱い方を工夫すべきであり,換算表や換算図表を有効に用いて 表の有用性についても充分理解させるように指導することが,将来に対する意味からも必 要となると思う。量計算は単位と併せて数概念や計算と深い関係があり,特に分数や小数 の概念の指導には格好といえる。量計算のうち,長さや時間は全学年を通じて圧倒的に多 く,次に広さやかさ,更に重さが中学年から高学年にかけて相当多く扱われている。量計 算では式中の単位の扱いについても注意して指導する必要がある。測定値は平均の概念が 入って来てから四捨五入等の 丸め と結びついて扱われ,グラフを書く時の数値の計算 にも関係するので高学年で扱わている。用語その他の項には用語や新らしい単位名等も含

(3)

平 岡:算数科における計量教材の研究      63

めてある。

現在の教科書は以前の国定教科書に比して,計量領域は比較的重い比率で扱ってあるこ とが知られ,また現行教科書自身にっいても計量領域は他の領域に比して重視してあるこ とがわかる(別報第2表参照)。従って指導法によっては相当の学習指導の成果が期待出 来るものと思えるが,屡々別報等でも述ぺたように,計量教材の指導では,当然のことと

して測定・実習を行わなければ意味がないので,教具・設備が必要となりまた実習は多く の時間を要するのでこの面の解決が急がれねばならない。

そこで次に県下の小学校の計量関係の教具・設備状況の実態調査の結果について考察す る。ここで用いた五段階の学校規模の分類は去る昭和29年文部省が実施した「理科教育の 施設・設備の現状」の調査の際に用いたものに徹った。この理科教育に対する調査では品 名(教具名等)毎に便宜的に設けた数量一基数一を定めて,基数に対する不足数と現有数 を調べるのを大きな狙いとしたが,ここでの実態調査では品名に対する現有数と一校当り の平均の現有数を学校規模別に調査した。この結果の集計は第2表に示してある。

第2表 県下小学校の計量教具・設備状況

}学校規側 一

平  均

(学級数)  (1〜5) (6〜11) (12〜17) (18−23) (24〜 )

調査校数 3  校 17 校ig 校 5  校 6  校 教具現有数 個数i一校当 個数i一校当個数L校当        ;

個数一校当   3ツ数i一校当

@ 5 個数一校当

長   さ

ィ 指 lm

@〃  50cm

@〃  30cm

 iloi3.3_i_

P6i5.3

 il4gi&8 3iO。278i4.6  i146116.220i2.2 …146;16.2  ill4i2λ830i6.030i6.0

  i210i35.050i8.350i8.3   il25.8il7.2  :20.6i3.3  364.oi8.1

〃  1尺 一_ 一i一 一_ 一i一 1i・.2   :O.2iO.0  :

巻 尺100m

@〃   50m

黶Q_i _ _i _Riα2 _1 _U㌦7 _i _S1q8

1i・・23iO.5

0.2iO.0

@ …3,210.4

〃   30m 2iO.7 12iO.7 gi 1.o 2iO.4 2iO.3 5.4iO.6

 20ml〃   10m 一i−

Ri1.0

P1i・.6gio5

310.3 R;0.3

210.4 Q}0.4

4iO.7

P8i3.・

  1

R。6iO.4  :

V.4i1.6  〃   5m

@〃   2m

@〃   lm 撃nOm  縄 i拡 大 尺)

転式距離計 g長計,座高計

正i・.3_i _

黶Q−i−_i __i_3i 1.O L    I

一i__i _

一一Sio.8

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Pi軌2−i−

Ti 1.o }

一i−

@4iO.7、 i−i 一

o.8

│__i _

Q㌦3 し

  :

O.2iO.1  :

P.8iO.3  ;

O.2iO.0  ;

P.2iO.2  き0.2;0.0  :0.4iO.0

S.2泣6

(4)

64 茨城大学教育学部紀要 第七号

重   さ i i

台秤,体重計

ゥ動上皿秤

2i・・71iO.3  ■P8i1.1

P9i 1.1

13:1.4 Q2i2.4

5i 1.。

№奄P.8

14i2.3 P0i1.7

10.4  1.3 P2.2  1.5

ぜんまい秤 15iO.9 16i 1.8

48i9.6 3 4617.7 …

25.2,4.1 桿    秤

V    秤

艶燒セ器k比 重 計〕

一i −Qi_

Qi_Qi_ 1

5 0.3 TiO.3

鼈黷P;0、1

10 1.1

QiO.2 SiO.4

Q     .       _

3iO.6 24io・8

│i _

v_ ■

13i2.2 …

S10.7 …2iO.3

v _ 3

6.2  0.8

R.oiO.4

P.2iO.1 ,

O.2iO.0 広さ(面積)

ハ積模型1m2

@〃  1cm 2 i1aの広さ)

ハ積測定実習板

ハ積説明器

絈瘢部ツ

一     ●      一

黶Q鼈鼈

     ,      一_

。一一

@   .      一

i−i −−i−_i __i_−i−3i・・2 i_i −_i− i _一_i_−i−7i 1.4

か   さ(

e積・体積)搬

V  1 合

i …−i −_

堰Q_P__i__i_

i_

堰Q_

堰@_4

奄n.24 奄n.21 奄潤D1

i−i_嶺

黷Q奄曹Q2iO.2 :5iO.6

i_i_ :1iO.2 :3iO.61iO.2正io.2 … 

c2奄n.32 奄n.39

?D5 「4iO.7 :12i2.0

i :0.4iO.1 :0.6iO.1 :3.6iO.5 22,210.3 …3.8iO.6

 1 勺〃

@ 100cm31

^  1  4

i−_i _6

奄Q.0

@_ 143i2.5 _」

一_i _ …34i3.8

i−1奄潤D2 328i5.6

圏4奄n.7−

堰│ 568i11.3

,8}・.1α2iq°35.8i5.0

  5 44 iO、7 2i 1、3 8iO.9 33奄n.6 :2Wi4、7 2・611・6

  1 44(

ェ数桝)メ

X・シリン 

@ ダー

i・.7_i _一_

堰Q ,

4i2.0_

堰@_2Vi1.6

:2Xi3.2−

Ui1.8 …

:3

Ui7.2 :4

奄n.8 

p81 1.6 ;

:6WilL3−│ i2414.O i

3.8i4.9 

@…0.8:0.2 

@i15.oi1.8  …

積説明器〔

J 量 計〕

iO.3_

堰@_ :

io.12 堰E.1

匹1G0.1− i _一 …llO.2 :

iO.8;4iO.7 ・6iO.3L

SiO.2 1

刻・時間七曝・年暦時

v(柱時計他)時

v模型

i }61i3・63412.0 …

i i26i2.9 ;28i3・1

… 

奄R6i7.2 :16i3.2 :

i 

奄Q4.4.0 濫96i16.0  i3

O.4i3.93 T.2i5.0 間説明器時

助¥他七j表,暦年 ゚早見表

i 一一黷U奄Q.0_

沿

i 一1Wi1.1 :98i5.8−

沿

10.4_

堰Q5

Oi5.6_

沿

iO.4−

堰│ 192i18.4−i一

i l.0_

堰Q1

O0i16.78 堰@1.3

.4iO.43 C6;0.26 X.2.9.71 D6:0.3 表暦の歴史

il.7ミ

iO.1 i _ 

m

i _ 2

6i2.7 .4iO.9

(5)

平 岡: 算数科における計量教材の研究 65 方向・位置

磁石(磁針) 2iO.7 27i1.6 18i2.0 24:4.8 34  5.7 21.2i3.0 方 位 板 一 :   一 12iO.7 4iO.4 5: 1.0 20i3.3 &2 奄戟E1 平板測量器 一 :   一 星iO.1 一 :   一 一 :  一 _     ,      _ 0.2iO.0

〔風 向 計〕

一一 2:0.1 一     ・      一 一       一 4 0.7 1.2iO.2 2

速   さ 1

ストップ・

@ ウオッチ 1iO.3 12iO.7 9: 1.0 5, 1.0 12i2.0 7.8iO。8  :

〔風 速 計〕

一一 2:0.1 _     .      _ 一       一

_一 0.4:0.0

角   度

ェ 度 器

R ン パ ス O角定規(組)

iT 定規)

 …

R4i2.0 ViO.4 P4iO.8

Qiα1 1

28i5.6 RiO.6 P0i2.0 PiO.2

 i32i5.3 …68111.356i動3−i一

  i23.2i3.2  :19.6i3.0  319.2i2.9・.6i・.1

温 劇 1

温度計・寒暖計 18i6.0 220,12.9 176 19.6 142.28.4 210i35.0 153.2 20.4 体 温 計 一 :  一 6iO.4 10  1.1 10.2.0 20i3.3 9.2  1.6 湿 度 計 1i鉱3 14  0.8 1iO.1 _一 1612.7 6.4  0.8

温度計模型 一 :  一

@: 2iO.1

一一 4,0.8 一 :  一 1.2:0.2.

  貨幣模型その他  図表等

第2表によれば計量教具の保有状況は極めて貧弱であり,これは予算面と関連させて 今後充分研究する余地があるが,指導上必要とする最小限の線までは是非準備しておき

たい。表では長さや広さに関するものの不足も目につき,学校規模の小さい方で甚だしい 傾向がみられる。表に示されている教具中には,学校の備品としてまた理科をはじめ他教 科と共用しているものも大分あるが,この様にお互いに連絡をとり出来るだけ有効に活用 することが望ましい。折角準備されている教具や設備を飾っておく丈に終らせないように すぺきである。一方教具は教師の熱意と努力によって工夫すれば実用的で比較的安価に出 来上り,時により児童と共に作製すれば児童は教具の原理を理解する許りでなく,作業を 通して学ぶことにより大きな興味と関心を抱き指導上効果的であることも忘れてはならな い,のみならず算数科教具には比較的作製可能なものが多くあることも附け加えておく。

次に計量教材の困難度について考察しよう。去る昭和29年末に文部省が算数科の主要指 導内容の難易について調査した結果によれば,各学年とも計量教材は児童理解の困難度は 上位を占めていることが知られる。例えば,理解の困難なものとして次があげられる。

1年では四方位の東西南北の用語の様な抽象名詞がある。2年ではものさしの目盛と5 分区切りの時刻の読みが極めて困難である。3年では秤を用いる,ますを用いる等が目立 っている。4年では時計による時間計算がむずかしい。5年では面積・体積の計算と単位 関係が目立って困難で,貫・匁の単位縮図・地図の読みがこれに次ぎ,更に年号・満年令,

(6)

66      茨城大学教育学部紀要 第七号

速さの意味と計算,時間についての加減計算,石・斗・升・合の単位が同じ位の困難度で つづいている。6年では縮図・縮尺の使用が目立って居り,町・反・畝・歩や坪の単位,

間・尺・寸の単位等がこれに続いて困難なことが知られる。学年毎の細部の点については 上記の様なことが知られるが,総括的には計器の理解特に目盛の読みと時間や尺貫法の単 位の理解,更に縮図・地図・縮尺の読みや用い方等が理解困難の代表的なものとして挙げ られる。物指の目盛の読み方は他の目盛の見方の基礎としてよく指導しておくことが肝要 である。また秤や時計の目盛は直線でなく曲線(特に円)であることも理解が困難の原因 と見られる。その他学校や一般家庭において,もっと計器が準備されてあり,児童が気軽 に使えるようになって居れば斯る困難度はよほど低くなるものと思う。時間や面積・体積 の計算は単位関係が複雑であることが大きな原因とされ,特に尺貫法についーては多くの児 童とは直接生活に結びついていないので,斯ることも原因の一つとして挙げられるであろ う。縮図・地図・縮尺の読み方,用い方については,割合・比・比例や相似の概念等が関 係してくることが影響するもの見られる。

第3図計量教材の項目別による困難度   上述のように計量教材には学習指導上多くの

@ ■碑上梱職 1°騰が伴うカ£ことが知られたが・次に県下刎

9     にコ 理解の困難麦  9 学校における計量教材の困難度についての実態 8      8 調査の結果を第3図に示しておく。当然のこと 7       7 として教師の指導上の困難度と児童の理解困難 6      6 度の問には強い正の相関があることがわかる。

5−一 一 一 一 一 一一一…−5 量感とその他の項目を除き他は僅かに児童の困 4      4 難度が上廻っている。先きの文部省の難易調査 3      3 からは見られぬ様な量感についての指導及び理 2       2 解は,単位や量計算に次いで困難が伴うことが 1      1 わかり一層の指導上の研究が望まれる。他につ

      いては大体文部省の調査の結果に近いものが見゜鉱翼剰靴燐灘用語腕゜

られる。

次に現在の学習指導要領の計量教材の扱い方についての実態調査による結果を述べる。

第4図は昭和31年4月・)32年3月に使用した算数科教科書について,その中に表われてい る計量教材の分量が他領域の教材に較べ多いと思うかどうかとの調査についての回答結果 である。これは単に分量(絶対量)の多少のみでなく,割合としての分量の多少の意味も 兼ねて調ぺたものである。絶対量から云えば他でも述べたように(別報の第3表),計景 教材は全学年を通じて計算に次いで他の領域より多いのであるが,それでも未だ少いとの

(7)

平 岡: 算数科における計量教材の研究      67 第 4 図    意見が40%もあるのは如何なことであろう。児童の成績が良

難   くないので・もっと分量を多くして扱えば成果も上るのでは 急       ないかとの願いからかも知れぬし,また他の理由からであろ

少い 飢・位 うか。繰返して述べるまでもなく,計量指導は教科書で許り

4α4% 5螂 やっていてもよい結果は望まれず測定・実習等をしっかりや らなければいけない。

上述のこととも関連して算数科では今でさえ時間数の不足 が叫ばれているのであるから,全般的に数理内容を一層強化 してしっかり指導するためには,是非とも現在より時間数を若干増す必要があると思う。

このことは特に中学年から高学年にかけて必要であるといえる。

第5図は計量教材の量系統(1年から6年までの縦の系統一シークェンスー)は現 状のままでよいかとの調査の回答結果である。大部分は特に希望なしと答えているし,止 定的な答が否定的なものより多いことについては,現在の量系統に或程度満足していると 見てよいであろうか。然しそのうちでも時計の何時半の読みや七曜・暦の簡単なこと及び 歩測・指巾で測る等の内容,その他若干の内容については,指導学年(時期)を変更して 更に強化したいものが見られる。また他教科との関連も充分考慮して,どこで,どの様に 関連させるかについても一層の研究が必要であり,特に関連の深いものとして理科・図工 科・家庭科等があげられる。計量教材は日常生活とも極めて密接な関係があるので,生活 指導の上でも十分生かしてゆくようにすることが大切である。

第 5 図      第 6 図

5拷いない  r6.5堵 モの他   ,Sα5薦158堵

S} よい  い       28.傍

68.3%

特1・希望なし 特酵えな・、 指導tヱ・,る

70.2彦

第6図は計量教材の指導において,量感覚の養成を目指して指導しているかどうかとの 調査の回答結果である。約7割までが量感覚の養成を狙って指導しているにも拘らず,多 くの研究集会等における発表に於て,計量教材の結果が余り香しくないのは,計器や測定 実習の不足が大きな原因として挙げられるのではないかと思われるが,このことについて は前にも屡々繰返して述べた処である。

(8)

68      茨城大学教育学部紀要 第七号

教具。設備については去る9月の研究会に於いて県下の某小学校から,教具や施設・設 備の保有量・準備量は児童の算数的能力との相関が強く,保有量の多い学校ほど概して児 童の算数的能力が優れているという意味の発表が述べられたことがあった。計器を必要程 度保有していて充分活用すれば,確かに計量のみならず算数的能力全般の向上に寄与する 所大なるものがあると信ずる。計器を理解して正しく使用出来るためには多くの数学的能 力を必要とするので,綜合的な問題解決の学習と共通する処があるといえるからである。

以上で県内小学校の実態調査及び算数科教科書の分析調査をもとにした計量教材につい ての考察を終る。結びの語については上記の通りその都度考察して述ぺて来たので,ここ で改めて述べるのを省略することにする。

実態調査は上記の事柄と併せて,同期間内に於いて行われた測定・実習名とその回数及 び使用した教具等についても調査したのであるが,ここでは割愛することにし他の機会に 譲る。(註「茨城数学」(1958,No・11)に掲載予定) 尚お最後に教科書調査や実態調 査に御援助,御協力を賜った方々や小学校当局に対し厚く御礼を申上げたい。

一1957年12月一

参  考  文  献

(1)学習指導要領 一一般編(試案) 文部 省    (1951) 明治図書出版K.K.

② 学習指導要領小学校算数科編(試案) 文 部 省(1951) 大日本図書K.K.

㈲ 全国学力調査報告書 国語・数学 文 部 省   (1957) 大蔵省印刷局

(4)算数科の教育  教師養成研究会         (1955) 学芸図書K.K.

(5)算数教育講座(4・5巻) 高木佐加枝       (1957) 日本文化科学社

(6)算数教材研究講座(6巻)鍋島信太郎・戸田 清  (1957) 金子書房

(7)理科教育の施設・設備の現状(中等教育資料特別号)文 部 省(1957)明治図書出版K.K.

(8)算数科教科書の分析的研究  平岡 忠  茨城大学教育学部紀要(1957.No.7)

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