氏 名 ・(本籍) 木下 さやか(福岡県)
専 攻 分 野 の 名 称 博士(医学)
学 位 記 番 号 医博甲第 873 号 学 位 授 与 の 日 付 平成 27 年 3 月 22 日
学 位 授 与 の 要 件 学位規則第 4 条第 1 項該当 研 究 科 ・ 専 攻 医学系研究科医学専攻
学 位 論 文 題 名 A Retrospective, Hospital-Based Study to Determine the Incidence of
Rotavirus Hospitalizations among Children Less than 5 Years of Age over a 10-Year Period(2001-2011)in Akita Prefecture, Japan
(秋田県における過去 10 年間(2001-2011)の 5 歳未満児のロタウイルス感 染症入院率に 関する後方視調査)
論 文 審 査 委 員 (主査) 教授 石川 和夫
(副査) 教授 大西 洋英 教授 廣川 誠
Akita University
学 位 論 文 内 容 要 旨
A Retrospective, Hospital-Based Study to Determine the Incidence of Rotavirus Hospitalizations among Children Less than 5 Years of Age over a 10-Year Period(2001-2011)in Akita Prefecture, Japan
(秋田県における過去 10 年間(2001-2011)の 5 歳未満児のロタウイルス感染症入院率に 関する後方視調査)
申請者氏名 木下さやか
研 究 目 的
ロタウイルスは乳幼児の急性胃腸炎の原因として重要である。全世界では毎年 50 万人がロタウイ ルスにより死亡している。その多くは発展途上国であるが、本邦でも 6 歳未満児の全入院のうち 4.8%
がロタウイルスによる入院であったとの報告があり、その疾病負担は大きい。1980 年代から最近まで の日本の5歳未満児のロタウイルス感染による入院率は 2.8-14.9(人/1000 人年)と算出されているが、
なかでも秋田県での調査結果 (1987-2002)は 12.7-14.9(人/1000 人年)と高いことが特徴である。
本邦では 2011 年 11 月よりロタウイルスワクチン接種が開始された。今後はワクチンの有用性が評価 されることになるが、そのためには導入前の入院率を正確に把握しておくことが必要である。そこで、
ワクチン導入直前の秋田県由利本荘地区における 10 年間のロタウイルス感染入院率を算出してワク チン有用性評価の基礎データとすることを目的とし、本研究を施行した。
研 究 方 法
調査対象期間は 2001 年 9 月から 2011 年 8 月までの 10 年間で、急性胃腸炎と診断し、由利組合総合 病院で入院加療を要した 5 歳未満児 1910 例の入院記録を後方視的に調査した。同院は秋田県由利本荘 地区における唯一の入院施設であり、同院医療圏の小児ほぼ全例が同院で入院加療を行っていること
から、同院医療圏の 5 歳未満人口を母集団として入院率を算出した。診断の根拠として、1)24 時間以 内に 3 回以上の軟便、2)激しい嘔吐と軟便、3)激しい嘔吐の原因が他にない、4)下痢症に対し便ロタ・
アデノウイルスの検査を施行、のいずれかを満たすことを確認した。入院後発症例、区域外在住の症 例は除外した。各症例のロタウイルス感染の有無はイムノクロマト法による便中抗原検査により判別 した。全体のロタウイルス感染数を推計するにあたり、便中抗原検査未施行であった者においては、
同シーズンの検査施行者群と同じ割合で感染者がいると仮定し、検査施行者群における検査陽性率を 未検査者数に乗じて概算した。
研 究 成 績
急性胃腸炎として入院した 1910 例のうち、1596 例が上記の条件に該当した。1596 症例中便ロタウ イルス迅速検査が施行されたのは 834 例で、387 例で陽性であった。このうち 366 例が流行のシーズ ン(1-6 月)に集中し、オフシーズンの入院は 21 例に留まった。10 シーズンを通してのロタウイルス入 院率は平均 13.7(95%CI,13.0-15.2)と過去の調査同様、他地域に比して高く、かつ年度により 6.8
~20.7 人/1000 人年と大きな変動がみられた。年齢分布のピークは 6-17 カ月であり、ワクチン接種標 的月齢である 6-35 カ月が全体の 80%を占めた。
結 論
秋田県由利本荘地区における過去 10 年間のロタウイルス感染症入院率は平均 13.7 人/1000 人年で あった。これは過去に本地域で行われた疫学研究と一致するデータであり、かつ他地域に比較して依 然高いことが確認された。ただしこの入院率は年度により 6.8~20.7 人/1000 人年と大きな変動がみ られた。地域におけるワクチン接種率が低い場合、ワクチンによる入院率の減少効果は年次毎の変動 にマスクされてしまう可能性があり、ワクチン有効性評価に際しては十分考慮する必要がある。
Akita University
学位(博士―甲)論文審査結果の要旨
主 査:石川 和夫 申請者:木下 さやか