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水力開発における自然環境保全対策 に関する実証的研究

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水力開発における自然環境保全対策 に関する実証的研究

平 成

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小 松 俊 夫

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- 目 次 -

1 序 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1.1 研 究 の 背 景 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1.2 本 研 究 の 目 的 と 本 論 文 の 構 成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4

2 水 力 開 発 に お け る 自 然 環 境 保 全 対 策 の 推 移 ・・・・・・ 10 2.1 19 世 紀 か ら 20 世 紀 前 半 ( 明 治 維 新 か ら 第 二 次 世 界 大 戦 ま で )

の 水 力 開 発 と 環 境 政 策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 12 2.2 1950 年 代 の 水 力 開 発 と 環 境 政 策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 14 2.3 1960 年 代 の 水 力 開 発 と 環 境 政 策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 18 2.4 1970 年 代 の 水 力 開 発 と 環 境 政 策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 20 2.5 1980 年 代 の 水 力 開 発 と 環 境 政 策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 22 2.6 1990 年 代 か ら 現 在 ま で の 水 力 開 発 と 環 境 政 策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 25 2.7 開 発 さ れ た 水 力 発 電 所 が 実 施 し た 環 境 保 全 対 策 事 例 ・ ・ ・ 32

3 開 発 と 自 然 と の 共 生 事 例 ・・・・・・・・・・・・・・・ 95 3.1 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 97 3.2 実 証 プ ラ ン ト 地 点 と 発 電 設 備 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 97 3.3 沖 縄 山 原 ( ヤ ン バ ル ) の 自 然 特 性 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 99 3.4 環 境 保 全 対 策 の 実 施 工 程 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 100 3.5 自 然 環 境 保 全 対 策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 102 3.6 他 地 点 の 環 境 保 全 対 策 へ の 展 開 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 128

4 希 少 猛 禽 類 と の 共 生 事 例 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 131 4.1 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 131 4.2 工 事 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 132 4.3 工 事 区 域 周 辺 の 自 然 環 境 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 134 4.4 貴 重 鳥 類 調 査 と イ ヌ ワ シ 2 つ が い の 生 息 状 況 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 135 4.5 環 境 方 針 の 制 定 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 138 4.6 イ ヌ ワ シ 保 護 を 中 心 と し た 環 境 保 全 対 策 の 実 施 ・ ・ ・ ・ ・ 138 4.7 巣 立 ち 時 の イ ヌ ワ シ 幼 鳥 に 対 す る 順 応 的 管 理 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 141 4.8 湿 地 保 全 対 策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 151 4.9 迷 入 魚 防 止 対 策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 152 4.10 建 設 副 産 物 対 策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 155 4.11 環 境 管 理 シ ス テ ム と 環 境 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ ・ ・ ・ ・ 156 4.12 他 地 点 の 環 境 保 全 対 策 へ の 展 開 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 157

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5 結 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 161 謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 170

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第 1 章 序 論

1.1 研 究 の 背 景

人 間 生 活 を 豊 か に す る た め , 社 会 資 本 整 備 を す る 土 木 事 業 の 中 で , 水 力 開 発 は 重 要 な 施 策 で あ る . 河 川 に ダ ム ・ 水 路 ・ 発 電 所 な ど の 構 造 物 を 築 造 し て , 水 の も つ 自 然 エ ネ ル ギ ー を コ ン ト ロ ー ル し , 産 業 や 生 活 に 必 要 な 電 気 を 産 み 出 す 技 術 は 1878 (明 治 11 )イ ギ リ ス で 開 発 さ れ た 1 )

電 気 が わ が 国 に 登 場 し た の は 19 世 紀 後 半( 明 治 維 新 期 )で あ り ,水 力 発 電 所 が 最 初 に 造 ら れ た の は 紡 績 業 に お け る 自 家 用 と し て 1888 (明 治 21 )に 建 設 さ れ た 三 居 沢 発 電 所 で あ る と い う 記 録 が 残 さ れ て い る .ま た ,1891 (明 治 24 ),京 都 で 琵 琶 湖 疏 水 の 落 差 を 利 用 し た 蹴 上 水 力 発 電 所 は , 世 界 最 初 の 一 般 営 業 用 水 力 発 電 で あ る 2 )

わ が 国 は モ ン ス ー ン 気 候 帯 に 属 し , 年 平 均 降 雨 量 約 1,800mm, 地 形 は 急 峻 で 河 川 の 落 差 が 得 や す い こ と か ら 水 力 開 発 地 点 に は 比 較 的 恵 ま れ て い る . 水 力 発 電 は 単 位 出 力 あ た り の 費 用 が 非 常 に 安 い た め , そ の 経 済 性 が 得 や す く 河 川 に 落 差 さ え あ れ ば 発 電 が 可 能 と い う 比 較 的 開 発 し や す い 発 電 方 式 で あ る .

19 世 紀 後 半 ( 明 治 時 代 ) は わ が 国 の 人 口 も 少 な く , ま だ 電 気 も 普 及 し 始 め た ば か り で , 土 木 技 術 も 発 電 技 術 も 未 成 熟 で , 水 力 発 電 は ま だ 小 規 模 で あ っ た .

20 世 紀 前 半 ( 大 正 ~ 昭 和 初 期 ) に は ,1936 (昭 和 11 )に 設 立 さ れ た 米 国 の TVA( テ ネ シ ー 川 流 域 開 発 公 社 ) を 参 考 に し た 河 水 統 制 事 業 に よ り 洪 水 調 節 ・ 農 業 用 水 ・ 水 力 発 電 な ど を 目 的 と し た 多 目 的 ダ ム が 計 画 ・ 建 設 さ れ 現 在 の 河 川 総 合 開 発 事 業 が 始 ま っ た . ま た , 送 電 技 術 の 発 達 に よ り 大 容 量 の 電 力 を 遠 距 離 ま で 送 電 す る こ と が 可 能 と な り , こ れ に 伴 い 水 力 発 電 規 模 も 徐 々 に 大 き く な っ て き た .

第 二 次 世 界 大 戦 後 , ダ ム の 建 設 技 術 が 向 上 し , 世 界 各 地 で 大 規 模 な 水 力 開 発 が 行 わ れ た .わ が 国 で も 戦 後 の 復 興 を に な う べ く ,1953 ( 28 )に 天 竜 川 中 流 部 に 高 さ 155m の 発 電 専 用 ダ ム が 築 造 さ れ , 使 用 水 量 3063/s, 最 大 350,000k W の 発 電 を 行 う 佐 久 間 発 電 所 の 建 設 が 着 工 さ れ た . こ の 水 力 発 電 所 は , わ が 国 の 戦 後 復 興 を 進 め , 高 度 成 長 を 図 る べ く 電 気 エ ネ ル ギ ー を 多 量 に 必 要 と し た 時 代 で あ っ た た め ,

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短 期 間 で 建 設 す る 必 要 が あ っ た . そ の た め , 米 国 か ら 大 型 施 工 機 械 を 導 入 し ,3.5 年 で 竣 工 し た .

こ の 佐 久 間 発 電 所 で 採 用 さ れ た 大 型 施 工 の 技 術 を 用 い た 大 ダ ム 中 心 の 水 力 開 発 は 全 国 各 地 で 展 開 さ れ た が , 短 期 間 で の 大 規 模 開 発 は , 従 来 の 開 発 に 比 べ 自 然 環 境 に あ た え る 負 荷 を 増 大 さ せ た . ま た , 多 量 の 電 気 エ ネ ル ギ ー の 供 給 に よ り , 重 化 学 工 業 や 社 会 資 本 整 備 が 急 速 に 進 め ら れ , そ の 結 果 , 自 然 環 境 に 対 し て の 負 の 影 響 と し て 公 害 が 発 生 し た .

こ の 公 害 対 策 と し て ,1967 (昭 和 42 )に 水 質 汚 濁・騒 音 な ど に 対 し 環 境 基 準 値 が 設 定 さ れ , さ ら に 深 刻 化 す る 公 害 , 環 境 汚 染 , 自 然 破 壊 を 一 元 的 に 取 り 扱 う た め ,1971 (昭 和 46 )に 環 境 庁 が 設 置 さ れ た . そ し て 1972 (昭 和 47 )に は 公 共 事 業 を 中 心 に「 環 境 影 響 評 価 」( 閣 議 了 解 )が 実 施 さ れ ,1977 (昭 和 52 )に は 水 力 開 発 な ど の 発 電 所 建 設 に 対 し て も 「 環 境 影 響 評 価 」( 通 産 省 省 議 決 定 ) が 実 施 さ れ る こ と に な っ た . そ し て , そ れ ら が 1984 (昭 和 59 )に 国 ・ 地 方 で 統 一 的 な 内 容 と し た 「 環 境 影 響 評 価 」( 閣 議 決 定 ) に 強 化 さ れ た .

以 上 の よ う な 環 境 政 策 が 質 的 に 向 上 し た の は , オ ゾ ン 層 の 破 壊 ・ 地 球 の 温 暖 化・酸 性 雨 な ど 新 た に 発 生 し た 地 球 環 境 問 題 に 対 処 す る た め , 1992 (平 成 4 ) リ オ・デ ジ ャ ネ イ ロ で 開 催 さ れ た「 環 境 と 開 発 に 関 す る 国 連 会 議 ( 地 球 サ ミ ッ ト )」 以 降 で あ る . こ の 会 議 で は 「 持 続 可 能 な 開 発 」 の 基 本 理 念 が 世 界 の 共 通 認 識 と な っ た .

こ の 地 球 環 境 問 題 に 対 処 す る た め , わ が 国 で は ,1993 (平 成 5 )

「 環 境 基 本 法 」が 制 定 さ れ ,環 境 ア セ ス メ ン ト の 実 施 が 位 置 づ け ら れ , 1997 (平 成 9 )に 環 境 影 響 評 価 法 が 法 律 第 81 号 と し て 成 立 し た . ま た , 生 態 系 の 重 要 な 構 成 要 素 で あ り , 自 然 環 境 の 重 要 な 一 部 と し て 人 類 の 豊 か な 生 活 に 欠 か す こ と の で き な い 絶 滅 の お そ れ の あ る 野 生 動 植 物 の 種 の 保 存 を 図 り , 良 好 な 自 然 環 境 を 保 全 し , 現 在 お よ び 将 来 の 国 民 の 健 康 で 文 化 的 な 生 活 の 確 保 に 寄 与 す る こ と を 目 的 と し て ,1992 年( 平 成 4 年 )に 法 律 第 75 号 と し て「 絶 滅 の お そ れ の あ る 野 生 動 植 物 の 種 の 保 存 に 関 す る 法 律 」 が 制 定 さ れ た .

さ ら に ,1997 (平 成 9 )に は 河 川 法 が 改 正 さ れ ,そ の 目 的 と し て , 環 境 の 保 全 と 整 備 が 掲 げ ら れ , 自 然 と の 共 生 の 姿 勢 が 打 ち 出 さ れ た . し た が っ て , 水 力 開 発 も 自 然 と の 共 生 が 必 然 的 に 求 め ら れ る こ と に な

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っ て き た .

以 上 の よ う に , 環 境 政 策 の 推 移 の 中 で , 水 力 開 発 に お け る 自 然 環 境 保 全 対 策 は 大 き く 変 化 し て き た . 現 在 , 求 め ら れ て い る 水 力 開 発 と 自 然 と の 共 生 は ,過 去 に 実 施 さ れ た 水 力 開 発 に 対 す る 環 境 対 策 を 踏 ま え , 創 意 工 夫 し て い く 必 要 が あ る .

例 え ば

・ 沖 縄 海 水 揚 水 発 電 所( 最 大 出 力 30,000kW1990 年( 平 成 2 年 )~

1999 年 ( 平 成 11 年 ) 沖 縄 県 )

・ 奥 只 見 ・ 大 鳥 発 電 所 増 設 ( 最 大 増 出 力 280,000kW1999 年 ( 平 成 11 年 ) ~2003 年 ( 平 成 15 年 ) 福 島 県 )

の 水 力 開 発 で は , 環 境 影 響 評 価 が 厳 格 に 行 わ れ , 環 境 影 響 評 価 法 に 先 駆 け て , 実 証 を 踏 ま え た 自 然 環 境 保 全 対 策 が 講 じ ら れ た .

沖 縄 海 水 揚 水 発 電 所 は , 沖 縄 本 島 北 部 の ヤ ン バ ル と よ ば れ る 自 然 豊 か な 地 域 で の 開 発 で あ り , こ こ で は ヤ ン バ ル ク イ ナ ・ ノ グ チ ゲ ラ な ど の 貴 重 動 物 保 護 や 赤 土 流 出 防 止 対 策 , あ る い は 工 事 跡 地 の 自 然 環 境 へ の 復 元 な ど が 実 施 さ れ た .

奥 只 見 ・ 大 鳥 増 設 発 電 所 は 越 後 三 山 只 見 国 定 公 園 内 に 位 置 し , 工 事 区 域 近 傍 に 国 の 天 然 記 念 物 で あ る イ ヌ ワ シ や ク マ タ カ な ど の 希 少 猛 禽 類 が 生 息 し て い た .こ こ で は ,希 少 猛 禽 類 と の 共 生 ,湿 地 環 境 の 復 元 , 迷 入 魚 防 止 対 策 , 廃 棄 物 の 再 利 用 , 環 境 マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム の 構 築 な ど 環 境 全 般 に わ た る 保 全 対 策 が 実 施 さ れ た .

ま た ,1996 年 ( 平 成 8 年 ) ~1999 年 ( 平 成 11 年 ) に 湯 之 谷 揚 水 発 電 計 画( 新 潟 県:最 大 出 力 1,800,000kW),高 倉 揚 水 発 電 計 画( 岐 阜 県 ・ 福 井 県 : 最 大 出 力 1,600,000kW) の 環 境 影 響 評 価 が 実 施 さ れ , 両 地 点 と も イ ヌ ワ シ を は じ め と し た 貴 重 鳥 類 が 生 息 す る 自 然 が 豊 か な 地 域 で あ り , 生 物 多 様 性 の 確 保 を め ざ し た 環 境 影 響 評 価 書 が 作 成 さ れ た . し か し な が ら 湯 之 谷 揚 水 発 電 計 画 は 国 や 地 方 自 治 体 の 環 境 部 門 の 審 査 を 通 過 し ,1997 (平 成 9 ) 135 回 電 源 開 発 調 整 審 議 会 に お い て , 国 の 電 源 開 発 基 本 計 画 に 組 み 込 ま れ た が , そ の 後 の 電 力 需 要 の 低 迷 で 実 際 の 開 発 は 見 送 ら れ た . ま た , 高 倉 揚 水 発 電 計 画 も 環 境 部 門 の 審 査 前 に 同 様 の 理 由 で 開 発 中 止 と な っ て い る .

以 上 の よ う に 「 持 続 可 能 な 開 発 」 が 求 め ら れ る よ う に な っ て か ら 以 降 の 水 力 開 発 に お い て ,「 開 発 と 自 然 環 境 と の 共 生 」 を め ざ し ,環 境 影

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響 評 価 書 に お け る 保 全 対 策 の 立 案 ・ 策 定 , 建 設 現 場 で の 実 践 が 行 わ れ る よ う に な っ て い る .

1.2 本 研 究 の 目 的 と 本 論 文 の 構 成

水 力 開 発 に お け る 自 然 環 境 保 全 対 策 は , 時 代 の 要 請 と し て の 環 境 政 策 お よ び 環 境 技 術 の 発 達 に よ っ て 変 化 し て き て い る . 世 界 全 体 の 発 電 設 備 容 量 は 4,370,000,000kW で あ り , こ の う ち 水 力 は 約 20% 870,000,000kW で あ る 1 ) . わ が 国 で は 全 発 電 設 備 容 量 は 282,000,000kW で あ り 2 ), 水 力 は 19 世 紀 後 半 以 降 , 約 17%に 相 当 す 48,000,000kW が 開 発 さ れ て い る 2 ). 特 に 大 規 模 水 力 開 発 は ,1952 (昭 和 27 )に 制 定 さ れ た 電 源 開 発 促 進 法 を 契 機 と し て 飛 躍 的 に 推 進 さ れ た .

そ こ で ,1950 年 代 ~1990 年 代 に 水 力 発 電 所 建 設 で 実 施 さ れ た 具 体 的 な 環 境 対 策 を 分 析 し ,さ ら に 1990 年 代 の「 持 続 可 能 な 開 発 」と し て 建 設 さ れ た 沖 縄 海 水 揚 水 実 証 プ ラ ン ト 建 設 工 事 お よ び 奥 只 見 ・ 大 鳥 発 電 所 増 設 工 事 で 実 施 さ れ た 「 自 然 環 境 と の 共 生 」 を め ざ し た 環 境 保 全 対 策 に つ い て 実 証 的 に 分 析 を 行 い , 工 学 的 ・ 技 術 的 に 有 効 な 手 法 を 確 立 し た . そ し て , 水 力 開 発 の 建 設 工 事 に お い て 自 然 と の 共 生 を め ざ す 環 境 保 全 対 策 立 案 に 必 要 な こ と は , 建 設 工 事 周 辺 の 自 然 条 件 ( 生 態 系 や 土 壌 な ど ) を 正 確 に 把 握 し , 当 該 事 業 関 係 者 , 関 連 者 に 周 知 さ せ , 建 設 事 業 過 程 の 客 観 性 を 高 め る こ と で , 把 握 し た 自 然 特 性 に 基 づ い て 立 案 す る 環 境 保 全 対 策 を 工 学 的 に 解 決 で き る 普 遍 的 な 方 法 を 示 し た .

本 研 究 の 目 的 は , 二 酸 化 炭 素 を 排 出 し な い ク リ ー ン な 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー で あ る 水 力 発 電 を 今 後 , 積 極 的 に 開 発 す る 必 要 が あ る こ と を 踏 ま え て , 建 設 技 術 の 実 例 と と も に , 水 力 開 発 に 伴 う 環 境 政 策 を 十 分 考 慮 し た 技 術 的 な 解 決 策 に 貢 献 す る に 有 効 な 手 段 を 提 言 す る こ と で あ る .

本 論 文 は 以 下 に 示 す 内 容 で 構 成 し て い る .

第 1 章 は 序 論 で , 本 研 究 の 背 景 , 水 力 開 発 に お い て 自 然 環 境 保 全 対 策 に 取 組 ん だ 開 発 事 例 な ら び に 本 研 究 の 目 的 と 構 成 に つ い て 述 べ た .

第 2 章 は 水 力 開 発 に お け る 自 然 環 境 保 全 対 策 の 推 移 に つ い て , 各 年 代 に お け る 水 力 開 発 状 況 と 環 境 政 策 の 関 わ り 3 ) , 4 )を 概 説 し ,次 に ,各 発

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電 所 建 設 工 事 で 実 施 さ れ た 環 境 対 策 事 例 を 分 析 し , 該 当 期 間 の 環 境 対 策 の 課 題 を 抽 出 し た .

1950 年 代 ~1960 年 代 は , 戦 後 の 復 興 を 図 る べ く 高 度 成 長 が 本 格 的 に 開 始 さ れ , 急 増 す る 電 力 需 要 に 対 応 す る た め , 大 規 模 貯 水 池 式 発 電 所 や 混 合 式 揚 水 発 電 所 の 開 発 が 全 国 各 地 で 促 進 さ れ た . そ し て , ダ ム 築 造 な ど で 発 生 す る 濁 水 ・ 渇 水 や 水 温 低 下 な ど , 河 川 水 を 生 活 の 一 部 と し て 利 用 し て い る 流 域 住 民 に 直 接 影 響 が 及 ん で い る 事 象 を 対 象 に , 機 能 代 替 補 償 , 金 銭 補 償 が 行 わ れ た . す な わ ち , 環 境 保 全 対 策 の 段 階 に は 至 っ て い な か っ た .

1970 年 代 の 自 然 環 境 保 全 対 策 は ,影 響 発 生 源 お よ び 自 然 生 態 を 考 慮 し た 内 容 に 変 化 し て き た . す な わ ち , 環 境 基 準 の 導 入 に よ り , 水 質 で は 濁 水 処 理 設 備 の 設 置 , 騒 音 で は 低 騒 音 型 機 器 の 導 入 , 振 動 で は 火 薬 量 の 制 限 な ど 発 生 源 に 対 す る 対 策 が と ら れ た . ま た 構 造 物 レ イ ア ウ ト や 改 変 地 修 景 緑 化 な ど ,自 然 景 観 と の 調 和 が 優 先 さ れ た .さ ら に ,1970 年 代 後 半 に は 環 境 影 響 調 査 制 度 ( 通 産 省 省 議 決 定 ) が 開 始 さ れ , 統 一 さ れ た 環 境 影 響 評 価 項 目 で 保 全 対 策 が と ら れ , 生 態 調 査 に 基 づ く 環 境 保 全 対 策 の 立 案 , ま た , 工 事 中 モ ニ タ リ ン グ が 実 施 さ れ た . し か し , 導 入 初 期 段 階 で あ り , 事 業 関 係 者 間 に お い て 共 通 認 識 が で き る 状 況 で は な か っ た .

1980 年 代 の 自 然 環 境 保 全 対 策 は ,本 格 的 な 環 境 影 響 調 査 が 実 施 さ れ , 改 変 面 積 の 最 小 化 , 現 存 植 生 を 考 慮 し た 緑 化 対 策 が 行 わ れ た . ま た , 水 質 ・ 騒 音 ・ 振 動 で は ,設 備 ・ 施 工 両 面 に お け る 対 策 が 行 わ れ 5 ) , 6 ),工 事 関 係 者 に は , 環 境 教 育 が 行 わ れ る よ う に な っ た . さ ら に , 流 水 の 正 常 な 機 能 を 維 持 す る た め に , 河 川 維 持 流 量 が 放 流 さ れ , 対 策 範 囲 も 面 的 に 拡 が り , 発 電 所 の 外 観 デ ザ イ ン ・ 色 彩 な ど も 配 慮 さ れ る よ う に な っ た . こ の よ う に 環 境 保 全 対 策 は , 生 活 環 境 を 意 識 し た 産 業 優 先 時 代 か ら 人 と 自 然 と の 調 和 へ , 生 活 環 境 の 保 全 か ら 安 ら ぎ や 潤 い の あ る 魅 力 的 な 快 適 環 境 の 創 造 へ と 変 化 し て き た . こ の よ う に , 技 術 者 の 意 識 の 向 上 に つ な が る よ う に な っ て き た が , 事 業 関 連 者 ま で の 共 通 認 識 が で き る 対 策 に つ な が ら な か っ た た め , 実 証 可 能 な 対 策 ま で に 至 っ て い な か っ た .

1990 年 代 は , 地 球 サ ミ ッ ト に よ り 「 持 続 可 能 な 開 発 」 が 求 め ら れ , 水 力 開 発 で は 「 自 然 環 境 と の 共 生 」 を め ざ し , 生 態 系 の 維 持 ・ 保 存 ,

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自 然 環 境 の 復 元 ・ 創 造 , 廃 棄 物 の リ サ イ ク ル , ま た , 地 域 と 共 生 し て い く 取 り 組 み が 試 行 さ れ る よ う に な っ て き た . そ し て , 事 業 関 係 者 ・ 関 連 者 の 共 通 認 識 が で き る 対 策 が と ら れ た 事 業 で は , 実 証 可 能 な 環 境 保 全 対 策 が 可 能 と な っ た .1997 年 ( 平 成 9 年 )6 月 に 環 境 影 響 評 価 法 が 制 定 ,1999 年 ( 平 成 11 年 )6 月 施 行 と な り , 発 電 所 事 業 も 同 法 に 基 づ い て 環 境 ア セ ス メ ン ト を 行 う こ と に な っ た .

3 章 は , 環 境 影 響 評 価 法 に 先 駆 け て 実 践 し た 開 発 と 自 然 と の 共 生 事 例 と し て , 著 者 が 携 わ っ た 沖 縄 海 水 揚 水 発 電 実 証 プ ラ ン ト 建 設 工 事 で 提 案 ・ 実 践 し た 共 生 の た め の 保 全 対 策 の 考 案 ・ 実 施 内 容 7 )9 )を 説 明 し , 工 学 的 ・ 技 術 的 に 有 効 な 普 遍 性 の あ る 実 証 可 能 な 環 境 保 全 対 策 に つ い て 記 述 し た .

1992 年( 平 成 4 年 )に 開 催 さ れ た 地 球 環 境 サ ミ ッ ト や ,1993 年( 平 5 年 ) に 締 結 さ れ た 「 生 物 多 様 性 条 約 」 を 契 機 と し て , 水 力 開 発 で は , 調 査 ・ 設 計 か ら 工 事 中 ・ 工 事 終 了 後 に 至 る ま で ,「 自 然 環 境 と の 共 生 」 を 目 指 し た 環 境 保 全 対 策 が 実 施 さ れ る よ う に な っ て き た .

沖 縄 本 島 北 部 (「 ヤ ン バ ル 」) に 位 置 す る 工 事 区 域 は , 二 次 林 ま た は 自 然 林 で あ り 自 然 度 は 高 く , 生 物 学 上 貴 重 な 多 く の 固 有 種 , 固 有 亜 種 の 動 物 が 生 息 し て い る .ま た ,土 壌 は「 赤 土 」と 呼 ば れ る 特 殊 土 壌 で , 降 雨 に よ り 海 域 に 流 出 し や す く , 沈 降 す る と サ ン ゴ の 生 息 に 影 響 を あ た え る . こ の よ う に 生 物 多 様 性 に 富 ん だ 自 然 豊 か な 沖 縄 ヤ ン バ ル で , 環 境 保 全 対 策 を 独 自 の 方 法 で 実 施 し た . す な わ ち , 工 事 着 手 前 の 保 全 対 策 と し て , ほ と ん ど 前 例 の な い 貴 重 動 物 の 移 動 試 験 を 行 い , 工 事 影 響 が な い 同 様 の 生 息 環 境 に 移 動 し 保 護 し た こ と , ま た , 万 一 , 貴 重 動 物 が 戻 っ て く る リ ス ク を 想 定 し , 侵 入 防 止 柵 , 小 動 物 の 自 力 脱 出 を 可 能 に し た 片 側 傾 斜 を 有 す る 側 溝 に よ り 生 態 を 考 慮 し た 予 防 的 保 全 対 策 を 実 施 し 効 果 を あ げ た . 海 域 へ の 赤 土 流 出 防 止 と し て , 濁 水 量 発 生 を 低 減 さ せ る 対 策 , 大 量 の 濁 水 を 貯 留 し 処 理 す る た め の 大 容 量 濁 水 貯 留 池 の 造 成 , 沢 か ら の 流 出 を 防 ぐ 土 砂 流 出 防 止 堰 の 設 置 な ど 沖 縄 県 内 で は 初 め て の 体 系 的 な 対 策 を 実 施 し , 赤 土 流 失 を 未 然 に 防 止 し た . 当 地 点 で の 対 策 は , そ の 後 の 沖 縄 県 内 の 大 規 模 工 事 に 拡 が っ て い っ た . 工 事 中 の 対 策 と し て ,騒 音 ・ 振 動 ,水 質 の 定 期 的 な 調 査 の 他 に ,両 生 類 ・ 爬 虫 類 , 土 壌 動 物 , 水 生 動 物 , サ ン ゴ , 鳥 類 の 生 態 を 考 慮 し た モ ニ タ

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リ ン グ , 晴 天 時 お よ び 降 雨 時 に 対 応 で き る 濁 水 対 策 , 赤 土 流 出 が 発 生 し に く い 緑 化 対 策 , 工 事 関 係 者 の 環 境 保 全 の 理 解 に 向 け た 教 育 活 動 を 考 案 ・ 実 施 し た . 工 事 終 了 後 の 対 策 と し て , 世 界 で 初 め て 取 り 入 れ ら れ た 海 水 揚 水 発 電 の 自 然 環 境 に 与 え る 影 響 を 調 査 す る た め の 環 境 モ ニ タ リ ン グ を 実 施 し た . さ ら に , 環 境 創 生 地 と し て 新 し い 環 境 の 創 出 を 考 案 ・ 実 施 し た . そ れ ら の 実 施 が 調 査 ・ 分 析 の 結 果 か ら 自 然 環 境 へ の 復 元 に つ な が る こ と を 検 証 し た .

4 章 は , 環 境 影 響 評 価 法 に 先 駆 け て 実 践 し た 開 発 と 希 少 猛 禽 類 と の 共 生 事 例 と し て , 筆 者 が 携 わ っ た 奥 只 見 ・ 大 鳥 発 電 所 増 設 工 事 で , イ ヌ ワ シ と の 共 生 を 実 践 し た 保 全 対 策 の 考 案 ・ 実 施 内 容 1 0 )を 説 明 し , 工 学 的 ・ 技 術 的 に 有 効 な 普 遍 性 の あ る 実 証 可 能 な 環 境 保 全 対 策 に つ い て 記 述 し た . す な わ ち , 阿 賀 野 川 水 系 只 見 川 上 流 部 の 奥 只 見 ・ 大 鳥 発 電 所 増 設 工 事 区 域 周 辺 に は , 絶 滅 危 惧 種 ⅠB に 指 定 さ れ て い る イ ヌ ワ シ 2 つ が い お よ び ク マ タ カ 1 つ が い の 生 息 が 確 認 さ れ た た め , こ れ ら 希 少 猛 禽 類 の 生 態 調 査 を 6 年 間 継 続 し , そ の 調 査 結 果 に 基 づ き 発 電 所 設 計 を 行 い , 環 境 保 全 対 策 を 立 案 ・ 実 施 し た . 特 に , 工 事 期 間 中 , 工 事 区 域 近 傍 の イ ヌ ワ シ つ が い が 2 度 に わ た り 繁 殖 に 成 功 し , 幼 鳥 が 巣 立 っ た .そ こ で ,飛 翔 能 力 が 低 い 幼 鳥 の 保 護 と 工 事 の 両 立 を 図 る た め , ほ と ん ど 例 が な い イ ヌ ワ シ 幼 鳥 へ の 順 応 的 管 理 を 実 施 し 成 功 さ せ た 1 0 ) 環 境 保 全 対 策 を 体 系 的 に か つ 確 実 に 行 う た め に , 希 少 猛 禽 類 に 対 す る 保 護 対 策 実 施 状 況 な ど を 発 信 す る た め の 環 境 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 図 り , そ の 評 価 を 客 観 的 に 得 る こ と が で き た .

具 体 的 に は ,工 事 期 間 の 制 限 を 設 け ,イ ヌ ワ シ の 営 巣 期 で あ る 11

6 月 は , 営 巣 中 心 域 ( 営 巣 地 か ら 半 径 1.2km) で は , 地 上 部 工 事 お よ び 工 事 用 道 路 の 通 行 は 行 わ な い こ と と し た . こ の た め 構 造 物 の 地 下 式 化 , 既 設 構 造 物 の 有 効 利 用 , 仮 設 備 の 営 巣 中 心 域 外 設 置 を 行 っ た . ま た , イ ヌ ワ シ が 生 息 す る 周 辺 の 自 然 生 態 を 保 全 す る た め , 発 破 ・ 工 事 車 両 な ど へ の 騒 音 ・ 振 動 対 策 , 照 明 ・ 色 彩 対 策 , 水 質 保 全 対 策 を 実 施 し た .さ ら に ,巣 内 育 雛 期 に は 定 期 パ ト ロ ー ル を 行 い ,写 真 撮 影 者 , ハ シ ブ ト ガ ラ ス な ど 外 部 の 侵 入 か ら イ ヌ ワ シ 幼 鳥 を 保 護 す る 対 策 を 実 施 し た .

こ の よ う に , 水 力 開 発 と イ ヌ ワ シ な ど 希 少 猛 禽 類 と の 共 生 お よ び 湿

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地 復 元 , 迷 入 魚 防 止 , 環 境 管 理 シ ス テ ム の 導 入 な ど 持 続 可 能 な 開 発 を 図 る べ く 実 施 し た 環 境 保 全 対 策 の 実 証 例 を 述 べ , そ の 工 学 的 な 成 果 ・ 評 価 に つ い て 記 述 し た .

5 章 は 結 論 で あ る .水 力 開 発 の 建 設 工 事 に お い て ,未 解 明 な 部 分 が 多 い 自 然 と 共 生 す る た め に は ,工 事 区 域 周 辺 の 自 然 条 件 を 正 確 に 把 握 し , 科 学 的 根 拠 に 基 づ い て 保 全 対 策 を 立 案 ・ 実 施 し , 事 業 関 係 者 ( 事 業 者 , 工 事 関 係 者 ) な ら び に 事 業 関 連 者 ( 関 係 行 政 機 関 , 専 門 家 , 市 民 ) と の 共 通 認 識 が で き る 対 策 を と る こ と に よ っ て ,水 力 開 発 に お け る 環 境 保 全 対 策 の 有 効 性 が 普 遍 的 で あ る こ と ,お よ び ハ ー ド・ソ フ ト 両 面 で の 対 策 , エ コ サ イ ト モ ニ タ リ ン グ( 専 門 家 と 協 働 し な が ら 現 場 サ イ ト で 生 態 系 を 中 心 に 行 う 一 連 の モ ニ タ リ ン グ お よ び そ の デ ー タ に よ る 評 価 す る こ と ) を 適 切 に 組 み 合 わ せ て 実 施 す る こ と に つ い て 記 述 し た .

す な わ ち ,沖 縄 海 水 揚 水 実 証 プ ラ ン ト 建 設 工 事 , 奥 只 見 ・ 大 鳥 発 電 所 増 設 工 事 で ,環 境 影 響 評 価 法 に 先 駆 け て 実 施 し た 環 境 保 全 対 策 か ら ,① 貴 重 動 物 の 生 態 特 性 を 考 慮 し た 予 防 的 保 全 対 策 ,② 未 知 な 自 然 現 象 を 解 明 す る た め の 試 験 の 実 施 ,③ イ ヌ ワ シ 幼 鳥 保 護 に 向 け た 順 応 的 管 理 ,④ 自 然 の 回 復 力 を 利 用 し た 生 態 系 復 元 ,⑤ 事 業 関 連 者 と の 環 境 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン , ⑥ 工 事 関 係 者 の 環 境 教 育 活 動 , ⑦ 日 常 的 な 環 境 パ ト ロ ー ル ,

⑧ エ コ サ イ ト モ ニ タ リ ン グ に よ る 的 確 な 状 況 把 握 お よ び 対 策 へ の 反 映 , 科 学 的 根 拠 の 構 築 な ど の 事 例 に つ い て 考 察 し ,こ れ ら か ら 得 ら れ た 結 果 か ら ,自 然 と 共 生 す る た め の 環 境 保 全 対 策 の 工 学 的 か つ 技 術 的 に 有 効 な 普 遍 性 の あ る 手 法 を 示 し た .

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- 参 考 文 献 -

1) ()海 外 電 力 調 査 会:海 外 諸 国 の 電 気 事 業 2 2010 年;2010 年 . 2) 電 気 事 業 連 合 会 統 計 委 員 会 編 : 平 成 23 年 度 電 気 事 業 便 覧 ,( 社 ) 日 本 電 気 協 会 ,2011 10 月 .

3)Toshio Komatsu, Hiroshi Gotoh, and Mitsuo Takezawa

Environmental cost of hydropower plants International Conference on Environmental Economics and Investment Assessment (Wessex Institute of Technology, The National Technical University of Athens), pp.157-1662006 9 13-15.

4) 小 松 俊 夫 , 竹 沢 三 雄 : 水 力 発 電 と 環 境 費 用;土 木 学 会 第 14 回 地 球 環 境 シ ン ポ ジ ウ ム ,pp.41-46,2006 8 .

5) Tokio Morimoto, Masayuki Hori, and Toshio KomatsuExcavation by tunnel boring machine at headrace tunnel of small cross section VI Australian Tunnelling Conference, Melbourune, pp.287-2961987 3 .

6) 森 本 時 夫 ,小 松 俊 夫:早 木 戸 発 電 所 導 水 路 ト ン ネ ル の TBM 施 工;電 力 土 木 ,No.194, pp.45-561985 1 .

7) Toshio Komatsu, Jun Sakata, and Mitsuo Takezawa Environmental conservation measures for construction of a power plantInternational Conference on Environmental Exposure and Health (Wessex Institute of Technology, Georgia Institute of Technology), pp.389-398, 2005 10 .

8) Toshio Komatsu, Jun Sakata, and Mitsuo Takezawa Environmental conservation measures in construction of a power plant PACON2004 (20t h Anniversary) CST-8A Coastal Environmental Problem 2004 6 月 .

9) 小 松 俊 夫 , 坂 田 淳 , 小 松 明 子 : 沖 縄 海 水 揚 水 発 電 技 術 実 証 試 験 パ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト 建 設 工 事 に お け る 自 然 環 境 保 全 対 策 に つ い て;電 力 土 木 , No.254, pp.41-501994 11 .

10) 小 松 俊 夫 , 鳥 羽 瀬 孝 臣 , 橋 本 長 幸 , 西 川 和 也 : 建 設 工 事 に お け る イ ヌ ワ シ 幼 鳥 保 護 に 向 け た 順 応 的 管 理 の 事 例 ; 土 木 学 会 論 文 集 N0.811/ -38pp.23-352006 2 .

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2 水 力 開 発 に お け る 自 然 環 境 保 全 対 策 の 推 移

わ が 国 の 水 力 開 発 は 1890年 代( 明 治 中 期)か ら 開 始 さ れ ,そ の 折 々 の 時 代 の 要 請 を 踏 ま え , 事 業 用 水 力 は表 -2.1 年 代 別 開 発 状 況に 示 す よ う に 約 120 年 間 に 亘 り ,約 1,900 地 点 49,000,000kW の 開 発 が 行 わ れ て き た .現 在 の 事 業 用 水 力 開 発 は 1952 (昭 和 27 )に 公 布 さ れ た 電 源 開 発 促 進 法 に よ っ て , 一 般 電 気 事 業 者 で あ る 9 電 力 会 社( 北 海 道 ,東 北 ,東 京 ,北 陸 ,中 部 ,関 西 , 中 国 ,四 国 お よ び 九 州 )と ,卸 電 気 事 業 者 で あ る 電 源 開 発 株 式 会 社 ,お よ び 都 道 府 県 公 営 企 業 局 の 体 制 で 実 施 さ れ て い る .

水 力 開 発 に お け る 環 境 保 全 対 策 は ,発 電 放 流 水 の 冷 水 温 対 策 や 水 質 汚 濁 防 止 な ど か ら 始 ま り ,生 物 多 様 性 の 保 全 に 至 る よ う に ,国 の 環 境 政 策 に よ る と こ ろ が 大 き い 1),2)

環 境 政 策 は ,経 済 成 長 に 伴 い 発 生 し て き た 公 害 や 各 種 の 環 境 問 題 な ど ,そ の 時 代 の 社 会 要 請 に 対 応 す べ く 推 移 し て き た . 特 に 1980 年 代 以 降 , 人 間 生 活 の 影 響 に よ る 地 球 規 模 の 環 境 問 題 が 人 類 共 通 の 課 題 と な り , 環 境 政 策 は 1992 年 ( 平 成 4 年 ) リ オ ・ デ ・ ジ ャ ネ イ ロ で 開 催 さ れ た 「 環 境 と 開 発 に 関 す る 国 連 会 議 ( 地 球 サ ミ ッ ト )」 を 契 機 に 大 き な 転 換 期 を 迎 え た .

本 章 で は ,2.1 節 か ら 2.6 節 に お い て , 水 力 が 開 発 さ れ た 19 世 紀 後 半 か ら 現 在 に 至 る ま で ,各 年 代 に お け る 水 力 開 発 と 環 境 政 策 の 推 移 に つ い て 考 察 し ,2.7 節 で は , 現 開 発 体 制 に な っ た 1950 年 代 以 降 に 実 施 さ れ た 環 境 対 策 事 例 を 分 析 す る .

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年数地点数出力 (103 kW)

年間平均 開発量 (103 kW)

地点当り 平均開発規 地点数出力 (103 kW) 地点当り 平均開発規 地点数出力 (103 kW)

地点当り 平均開発規 1891 (明24)1901 (明34)11151821.218 1902 (明351911 (明44)1073199202.7199 1912 (大11926 (大15)154842,1781454.52,178 1927 (昭21951 (昭26)254394,75819010.81224,760 1952 (昭271961 (昭36)103216,38463819.92623114444.06,490 1962 (昭37)1971 (昭46)101923,45634618122,570214.22716358.06,742 1972 (昭47)1981 (昭56)10802,30723128.842,893723.375,308758.310,508 1982 (昭57)1991 (平3)101281,37413710.775,910844.37,284 1992 (平4)2001 (平13)1092722727.8120020078,2121,173.19,134 2002 (平14)2011 (平23)10314324313.921,670835.02,102 1211,85521,82818011.8205,7272862621,860840.849,415 本表は、下記の文献よ作成し 1891年~1981年:資源エルギ庁「第5次包蔵水力調査報告書(資料編) 1988 1982年~2001年:資源エルギ庁電力・事業部編 昭和58年度~平成14年度「電源開発の概要-その計画と基礎資料-」 奥村印刷(株)  2002年~2011年:電力新設備要覧」日刊電気通信社

    計

表-2.1   運転開始年

一般水力式混合揚水式純揚水式発電方式

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2.1 19 世 紀 後 半 か ら 20 世 紀 前 半 ( 明 治 維 新 か ら 第 二 次 世 界 大 戦 ま で ) の 水 力 開 発 と 環 境 政 策

19世 紀 後 半( 明 治 中 期 )に お け る わ が 国 の 産 業 動 力 は 水 車 ・ 人 力 ・ 汽 力 で あ っ た が ,1880 年 代 後 半 に な る と ,主 要 都 市 で 電 灯 需 要 が 急 速 に 増 加 し て き た . 当 時 電 灯 は , す べ て 石 炭 を 燃 料 と し た 汽 力 発 電 で あ っ た が , 内 陸 部 で は , 交 通 が 不 便 で 石 炭 輸 送 に 費 用 が か か っ た た め , 水 力 電 源 地 帯 に 近 い 地 方 都 市 か ら 殖 産 興 業 用 と し て 水 力 開 発 が 始 ま っ た .

日 本 に お け る 水 力 発 電 は ,紡 績 業 自 家 発 電 用 と し て 1888年( 明 治 21年 ) 三 居 沢 発 電 所 ( 宮 城 県 :5 kW) が 始 ま り と さ れ て お り 3)1890 年 ( 明 治 23 年 )に は 鉱 山 業 と し て 足 尾 銅 山 間 藤 発 電 所( 栃 木 県 )が 開 発 さ れ ,そ の 後 , 殖 産 興 業 用 と し て 出 力 が 数 百 kW 程 度 の 小 規 模 な 水 力 発 電 所 が 日 本 各 地 で 開 発 さ れ た .

一 般 電 気 事 業 用 と し て は ,1891 年 ( 明 治 24 年 ) に 京 都 市 が 琵 琶 湖 疏 水 を 利 用 し た 蹴 上 発 電 所(160 kW)が 始 ま り と さ れ て い る 4).当 発 電 所 は 設 計 上 , 高 い 煙 突 状 の サ ー ジ タ ン ク を 必 要 と し た が , 市 内 の 煙 突 を な く す 方 針 だ っ た 市 当 局 に 拒 否 さ れ た た め , 水 車 調 速 機 作 動 時 間 や 速 度 調 整 率 で 工 夫 し た . こ の 取 り 組 み は 水 力 発 電 に お け る 環 境 対 策 の 先 駆 け と い わ れ て い 5)

日 清 戦 争(1894 年 ~1895)・ 日 露 戦 争(1904 年 ~1905 )を 経 て , 日 本 の 工 業 化 が 促 進 さ れ , 工 場 動 力 も 蒸 気 力 か ら 電 力 へ と 転 換 さ れ る 動 力 革 命 が 進 展 し た . ま た , 一 般 家 庭 へ 電 灯 が 普 及 し , 電 気 市 場 は 拡 大 し た .

1899 年 ( 明 治 32 年 ) 広 発 電 所 ( 広 島 県 :750kW), 沼 上 発 電 所 ( 福 島 300 kW) に お い て 高 電 圧 で 長 距 離 送 電 が 始 ま る と , 地 方 都 市 へ の 電 灯 供 給 を 目 的 と し て 多 数 の 電 気 事 業 者 が 誕 生 し た . さ ら に ,1907 年 ( 明 治 40 年 ) 駒 橋 発 電 所 ( 山 梨 県 :15,000 kW) の 完 成 を 契 機 と し て , 使 用 電 圧 が 高 め ら れ , 送 電 距 離 が 延 長 さ れ て , 遠 隔 地 大 型 水 力 開 発 が 本 格 化 し た . こ の 結 果 ,出 力 規 模 が 数 万 kW の 発 電 所 開 発 が 行 わ れ る よ う に な り ,1911 年 ( 明 治 44年 ) に は 火 主 水 従 か ら 水 主 火 従 に 電 力 事 業 が 転 換 し た .

第 1 次 世 界 大 戦 (1914 年 ~1918 年 ) 期 に 産 業 用 電 力 の 需 要 が 増 大 し , 長 距 離 送 電 に よ る 大 規 模 水 力 の 開 発 が 可 能 と な っ た こ と か ら , 日 本 各 地 で 水 力 開 発 が 活 発 に 行 わ れ た .1914 年( 大 正 3 年 )に 竣 工 し た 猪 苗 代 第 一 発 電 所( 福 島 県:37,500 kW)は ,日 本 初 の 送 電 圧 115kVで 東 京 ま で 225.3km の 送 電 に 成 功 し た .

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発 電 方 式 も 従 来 は 水 路 式 で あ っ た が , ダ ム 式 や ダ ム 水 路 式 が 採 用 さ れ る よ う に な り , ま た , 使 用 水 量 も 渇 水 量 ( 年 間 355 日 流 量 ) 程 度 か ら 平 水 量

( 年 間 180 日 流 量 )程 度 ま で 拡 大 さ れ る 傾 向 と な っ て き た .1918年( 大 正 7 年 ) 野 花 南 発 電 所 ( 北 海 道 :5,100 kW) は , 日 本 で 最 初 の ダ ム 式 の 水 力 発 電 所 で あ り ,1924 年 ( 大 正 13 年 ) に は 大 井 発 電 所 ( 木 曽 川 : ダ ム 水 路 42,900 kW)が ,わ が 国 初 の ダ ム 高 53m を 有 す る 本 格 的 ダ ム 式 水 力 発 電 所 と し て 建 設 さ れ た .

こ れ ら を 契 機 と し て 1920年 代 中 期( 大 正 末 期 )か ら 出 力 規 模 数 万 kW 大 容 量 水 力 開 発 が 全 国 で 行 わ れ た . こ の 結 果 , 大 正 期 間 で は ,484 地 点 に お い て ,2,178,000kW の 水 力 発 電 の 開 発 量 と な っ た .

昭 和 初 期 か ら 第 二 次 世 界 大 戦 前 ま で は 使 用 水 量 を 平 水 量 程 度 と す る 開 発 が 継 続 さ れ , 各 地 で 水 路 式 に 加 え , ダ ム 式 ・ ダ ム 水 路 式 に よ る 発 電 所 が 相 次 い で 建 設 さ れ た .1934 年( 昭 和 9 年 )に は 日 本 初 の 揚 水 式 発 電 と し て 池 尻 川 発 電 所 ( 関 川 :2,340 kW) が 運 転 開 始 し た . ま た , 水 力 技 術 の 進 展 に 伴 い ,1931年( 昭 和 6 年 )に 当 時 世 界 最 高 の 落 差 621.1m を 有 す る 小 口 川 第 三 発 電 所 ( 富 山 県 :14,000 kW) が 運 転 開 始 し た .

一 方 ,1920年 代 初 期 に ,大 都 市 へ の 人 口 集 中 や 産 業 活 動 の 進 展 に 伴 っ て , 上 水 道 水 や 工 業 用 水 な ど 新 し い 水 需 要 が 発 生 し , 利 水 用 の 高 ダ ム が 建 設 さ れ る よ う に な っ て き た . ま た 河 川 流 域 の 土 地 の 高 度 化 利 用 に よ り ダ ム に よ る 洪 水 防 御 の 考 え が 登 場 し , 利 水 と 治 水 の 整 合 性 を 図 る 河 水 統 制 の 思 想 が 提 唱 さ れ 始 め た . そ し て 高 ダ ム を 利 用 し て , 河 川 を 治 水 ・ 利 水 両 面 か ら 総 合 的 に 開 発 し よ う と す る 河 水 統 制 事 業 に 基 づ く 地 点 調 査 お よ び 計 画 検 討 が , 1940 年 代 前 後 か ら 第 二 次 世 界 大 戦 に 至 る ま で 進 め ら れ た .

第 二 次 世 界 大 戦 中 は , 日 本 政 府 が 電 力 を 管 理 す る こ と と な り , 日 本 の 各 地 で 数 万 kW 規 模 の 発 電 所 が 多 数 開 発 さ れ た . こ の 期 間 は 439 地 点 4,758,000kW の 水 力 発 電 の 開 発 が 行 わ れ た .

19 世 紀 後 半 か ら 20 世 紀 前 半 は , わ が 国 が 欧 米 の 技 術 を 導 入 し , 近 代 化 を め ざ し て 工 業 化 を 急 速 に お し 進 め た 一 方 で , 有 効 な 公 害 対 策 や 環 境 政 策 も 存 在 し て い な か っ た 時 期 で あ っ た 6)

19世 紀 後 半 ,政 府 は ,鉱 山 ,紡 績 ,セ メ ン ト ,製 鉄 な ど 近 代 産 業 の 保 護 ・ 育 成 に 力 を 注 い だ が ,そ れ ま で 進 め ら れ て き た 鉱 山 開 発 で 鉱 山 排 水( 鉱 毒 ) や 鉱 山 排 煙 ( 鉱 煙 ) が 発 生 し , 別 子 銅 山 , 足 尾 銅 山 , 日 立 鉱 山 な ど の 周 辺

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地 域 で は , 農 林 業 や 漁 業 に 深 刻 な 被 害 が 生 じ た . 特 に 足 尾 鉱 毒 事 件 は 「 公 害 の 歴 史 の 原 点 は 明 治 の 足 尾 銅 山 の 公 害 と 田 中 正 造 の 公 害 反 対 運 動 で あ る と い う の が 定 説 で あ る .」7)と い わ れ て い る よ う に , わ が 国 の 環 境 問 題 の 代 表 例 と な る も の で あ っ た .

日 露 戦 争(1904年 ~1905 年 )以 降 ,第 二 次 世 界 大 戦(1941 年 ~45年 ) に 至 る ま で , わ が 国 は 工 業 立 国 を め ざ し , そ の 動 力 源 と し て の 石 炭 の 使 用 は , ば い 煙 に よ る 汚 染 を し だ い に 著 し く し , 東 京 ・ 大 阪 ・ 名 古 屋 な ど 工 業 化 が 進 ん だ 地 域 で は , 工 場 に よ る 大 気 汚 染 が 問 題 と な っ た . ま た , 工 場 か ら の 汚 水 に よ る 水 質 悪 化 問 題 な ど が 拡 大 し た .

こ の 時 期 の 環 境 政 策 は , 足 尾 鉱 毒 問 題 , 別 子 煙 害 問 題 を 受 け て , 政 府 は 1905年 ( 明 治 38 年 )「 鉱 業 法 」,1916 年 ( 大 正 5 年 )「 工 場 法 」 を 公 布 ・ 施 行 し た . し か し , な か な か 有 効 な 公 害 対 策 に な り え ず , 特 に , 工 場 か ら の ば い 煙 対 策 は , 第 二 次 世 界 大 戦 の 激 化 と と も に 顧 み ら れ な く な っ た .

ま た ,自 然 保 護 の 分 野 で は ,江 戸 時 代 の 鳥 獣 保 護 政 策 や 森 林 保 全 政 策 は , 明 治 維 新 以 降 , 狩 猟 の 大 衆 化 や 開 墾 に よ る 森 林 乱 伐 な ど に よ り 瓦 解 し 8) 大 型 の 鳥 獣 の 生 息 数 が 激 減 し た . そ の た め , 政 府 は , 天 然 記 念 物 制 度 を 開 始 (1919 年 ) し , 国 立 公 園 法 を 成 立 (1931 年 ) さ せ , 貴 重 な 自 然 を 守 る た め の 制 度 が 開 始 さ れ た . し か し な が ら , 第 二 次 世 界 大 戦 の 戦 時 下 に お い て 森 林 の 過 剰 伐 採 な ど 自 然 へ の 圧 力 も 急 増 し た . 森 林 の 荒 廃 は , 自 然 災 害 を 急 増 さ せ た ほ か , 野 生 生 物 へ も 影 響 を あ た え た .

2.2 1950 年 代 の 水 力 開 発 と 環 境 政 策

1952(昭 和 27 )1961年 ( 昭 和 36年 ) の 10年 間 で は ,表 -2.1 示 す と お り 一 般 水 力 で は 321 地 点 6,380,000kWの 開 発 が 行 わ れ ,年 間 平 均 開 発 量 が 640,000kW と な り , 水 力 開 発 史 上 最 大 の 開 発 量 と な っ た .

戦 後 の 急 増 す る 電 力 需 要 に 対 処 す る に は , 電 源 開 発 の 量 的 確 保 が 必 要 で あ り ,日 本 の 国 家 的 見 地 に 基 づ く 大 規 模 電 源 開 発 の 早 期 着 工 が 要 望 さ れ た . そ し て ,1952 (昭 和 27 )に 「 す み や か に 電 源 開 発 及 び 送 電 変 電 施 設 の 整 備 を 行 う こ と に よ り , 電 気 の 供 給 を 増 加 し , も っ て わ が 国 産 業 の 振 興 及 び 発 展 に 寄 与 す る 」( 第 1 条 )9)こ と を 目 的 と し て , 電 源 開 発 促 進 法 が 公 布 さ れ た .そ し て 定 め ら れ た 地 点 の 電 源 開 発 を す み や か に 行 う た め ,1952 (昭 和 27)9 月 に 電 源 開 発 株 式 会 社 が 設 立 さ れ ,豊 富 で 貴 重 な 水 力 資 源 を 有 効 に 活 用 す る た め , 貯 水 池 式 あ る い は 調 整 池 式 発 電 所 の 開 発 が 進 め ら れ

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た .こ の 結 果 ,1952 (昭 和 27 年 )~1956 (昭 和 31 )の 5 年 間 で ,156 地 点 約 2,700,000kW の 開 発 量 と な っ た .

こ の 時 期 に 開 発 さ れ た 主 な 発 電 所 は表 -2.2.1 の と お り 10)で あ り , 電 源 開 発()に よ る 佐 久 間 発 電 所 は 大 規 模 水 力 開 発 の 先 駆 け と な っ た .写 真 - 2.2.1 に 大 型 土 木 機 械 施 工 の 嚆 矢 で あ る 佐 久 間 ダ ム を 示 す .

表 -2.2.1 1952 年 ~56 年 に 開 発 さ れ た 主 な 発 電 所 発 電 所 名 最 大 出 力

(103kW)

最 大 使 用 水 (m3/s)

有 効 落 差 (m)

運 転 開 始 年 事 業 者

丸 山 125 186 80.7 1954.4 関 西 電 力

上 椎 葉 90 73 144.0 1955.5 九 州 電 力

佐 久 間 350 306 133.49 1956.4 電 源 開 発

( 出 典 : 水 力 技 術 百 年 史 )

写 真 -2.2.1 佐 久 間 ダ ム

( 写 真 提 供 :J- POW ER [電 源 開 発 ㈱])

1950年 代 半 ば か ら 1960年 代 に か け て , 神 武 景 気 や 岩 戸 景 気 に よ り , わ が 国 資 本 主 義 の 高 度 成 長 が 本 格 的 に 開 始 さ れ , 電 力 需 要 も 急 増 し た . こ れ に 対 応 す る た め 建 設 期 間 が 水 力 よ り は 短 期 で , 規 模 に よ る コ ス ト メ リ ッ ト を 有 す る 高 能 率 大 容 量 火 力 発 電 所 の 開 発 が 促 進 さ れ る こ と に な っ た .

火 力 発 電 所 は 設 備 の 特 性 上 ,負 荷 の 変 動 に 対 す る 即 応 性 に 乏 し く ,ま た , 設 備 が 大 容 量 化 す る に し た が っ て 万 一 の 事 故 の 場 合 , 送 電 系 統 へ の 影 響 が 甚 大 に な る . 一 方 , 水 力 開 発 に お け る 貯 水 池 は , 電 気 エ ネ ル ギ ー を 水 の か た ち で 備 蓄 で き る 特 性 が あ る . そ こ で 水 力 は ピ ー ク 供 給 力 と し て の 新 し い 役 割 を に な う こ と に な り , 大 容 量 火 力 と 見 合 っ た 大 規 模 貯 水 池 式 発 電 所 の

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開 発 が 促 進 さ れ る こ と に な っ た .

水 力 開 発 規 模 の 決 定 に あ た っ て は ,当 初 は kWh 当 た り 最 低 コ ス ト と な る 豊 水 量 ( 年 間 95 日 流 量 ) 程 度 , あ る い は 常 時 出 力 の 3 倍 ( 8 時 間 ピ ー ク ) 程 度 が 標 準 で あ っ た . し か し , 大 容 量 火 力 と の 経 済 性 比 較 か ら , 費 用 便 益 法 (C/V 手 法 ) を 用 い て , 便 益 が 最 大 の 点 で 最 経 済 的 規 模 と す る 考 え 方 が と ら れ る よ う に な っ た .

こ の 時 期 は 設 計 , 施 工 技 術 の 発 達 に よ っ て , 高 さ 100m 以 上 の コ ン ク リ ー ト 式 ダ ム や ロ ッ ク フ ィ ル 式 ダ ム に よ る 大 規 模 貯 水 池 ・ 調 整 池 式 お よ び そ れ に 連 な る 大 型 の 流 込 み 式 発 電 の 開 発 が 全 国 各 地 で 展 開 さ れ た .こ の 結 果 , 1957 (昭 和 32 )1961 (昭 和 36 )の 5 年 間 で は 165 地 点 3,660,000kW が 開 発 さ れ た .

こ の 時 期 に 開 発 さ れ た 主 な 発 電 所 は表 -2.2.2 の と お り 10)で あ る .写 真

2.2.2に ,大 規 模 ロ ッ ク フ ィ ル ダ ム の 先 駆 け と な っ た 御 母 衣 ダ ム を 示 す .

表 -2.2.2 1957 年 ~61 年 に 開 発 さ れ た 主 な 発 電 所 発 電 所 名 最 大 出 力

(103kW)

最 大 使 用 水 (m3/s)

有 効 落 差 (m)

運 転 開 始 年 事 業 者

田 子 倉 380 420 105.0 1959.5 電 源 開 発

和 田 川 第 二 122 32.2 458.42 1959.6 北 陸 電 力 奥 只 見 360 249 170.0 1960.12 電 源 開 発

御 母 衣 215 130 192.1 1961.1

黒 部 川 第 四 154 72 545.5 1961.1 関 西 電 力

( 出 典 : 水 力 技 術 百 年 史 )

写 真 -2.2.2 御 母 衣 ダ ム

( 写 真 提 供 :J -PO WE R[電 源 開 発 ㈱])

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参照

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