基礎看護学における状況判断能力育成を目的と した 授業展開の実際と課題
奈良県立医科大学医学部看護学科 永田明恵,棲井優祐,松田 明子
For t h e purpose o f s i t u a t i o n judgment c a p a c i t y b u i l d i n g i n fundamental nursing p r a c t i c e and c h a l l e n g e s o f c l a s s development
Akie Nagata, Yusuke S a k u r a i , Akiko Mastuda
Faculty o f N u r s i n g , S c h o o l o f M e d i c i n e , Nara Medical U n i v e r s i t y
I .はじめに
医療現場は 複雑適応系 と呼ばれ、同じ 状況は二度と起こら ないうえ、多種多様な業 種や職種が携わる としち特徴を示す(中島、
2019 ) 。 このような現状において看護師が「安 全」を遂行するためには、状況や環境に合わ せて機敏に対応できる能力が重要である。
基礎看護学実習 E において、学生が初めて 受け持ち患者を 担 当する際、患者の当日の状 況に応じた看護行為(田島、 2004 )を実践でき ない場合がある。当該実習で学生が担当する 患者の多くは、概ね回復過程にある。 しかしな がら健康状態の悪化をきたす 場合もあり 、 状 況 判断能力が乏しい学生は、 予測していた健康 状態と異なる時、適切な看護行為が判断でき ない現実に直面する。谷口 ら( 2014 )は、看護 基礎教育時代から臨床に即し た事例やノ \ イ リ スク症例のケアができるような状 況設定の教育 プログラム の重要性を指 摘している。健康状態 は常に変化するという理解とともに、看護基礎 教育において、状況に合わせた対応力や状況 を判断する 能力の育成が求められている。
これまでの授業展開の報告では、看護技術 やタスク・ トレーニングといっ た授業展開の報 告が多い(安酸、 2 0 1 5 .舟島、 2017 )。しかし な がら、状況判断能力育成を目的とした報告は 少ない。 今回、 2 年次のへノ レスアセスメント の 科 目において、 安全な看護基本技術の習得
‑ 50‑
を目指すと ともに、状況判断能力の育成を目 的とした授業展開を行ったため、その実際を 報告する とともに、 今後の課題を見出すため の資料 とする。
I I . 目 的
看 護基 礎教育低学年における状況判断能 力の育成を 目的と し た授業展開について、 そ の実際を報告し 今後の課題を明確にする。
本報告に おける用語の定義として、「へ / レ ス アセスメント」 「複雑適応系」「状況判断 j 「 看護 行為 J を以下のように定義した。 ヘル ス アセス メント とは、 人々の健康の維持 ・増進・回復の ために健康状態に関する査定・ 事前評 価を行 うこと(三上、 2017 ) 。 複雑適応系とは、他の さ まざまなシ ステムとつながった「開いたシステ ム j であり 、 変化する状況や環境的な制約に 合わせて適応的に振る舞う 動的で柔らかいシ ステム(中 島、 2 019 ) 。 状況判断と は、 状況を 把握する、またそれに基づいてどう対処したら よいカ ミ 判断する こと(大辞泉、 2 019 ) 。 看護行 為とは、 個々 の「看護技術 j の内容に、個別の 条件が加味されたもの(田 島、 2004 ) とし た 。
I I I . 方 法
1 . 科 目の位置づけ
2 年次 前期のヘルスアセスメント は 、 l 年次
後期のフ ィ ジカルアセスメン トの知識・ 技術を
応用し、構成される授業の l つで、ある。
2 . 科目の組み立て
へノレスアセスメントの科目目的は、対象を 健康状態・生活面から系統的かっ客観的に 査定し、適切に看護行為ができる方法を習得 すること、とした。 1 年次のフ ィジカルアセスメ ントで習得した機能別評価を活かし、 事例患 者に対する情報収集・判断・一連の看護実践 を学べるように組み立てた。
( 1 )概要
ヘルスアセスメント科目の展開の概要につ いて図 1 に示した。 対象は 2 年生 8 5 名。 6 ‑ 7 名 lグループ。とした。指導は基礎看護学教員 6 名、臨床指導者 6 名 。
初回に教員によるロールフ 。 レイで、事例患者 と看護師役の動画を示し、援助場面を示し た。このねらいは、臨床経験のない学生に、患 者一看護師のイメージ化を促し、患者の健康状 態に応じた観察の視点や看護の実際を示す ことである。 動画を用いながら学生に発聞を投 げかけ、臨床に即した状況判断の視点を学 べ るよう展開した。事例患者の看護計画は教員 側で立案し、その中の「セルフケア不足」に対 する具体的な援助を、課題①:輸液療法およ び酸素療法中の患者の足浴、課題②:跨脱留 置カテーテノレ挿入中の患者の車いす移乗・
MRI 出室のための移送、として提示した。動 画で示した患者の健康状態を踏まえ、次回演 習までに各自が行動計画を立案・練習して、
次回に臨むとしづ課題とした。 最終的に課題
①②を踏まえたうえで、新たな課題③を提示 し 、 学 生間技術習得度確認を行った。
( 2 )各演習の方法
初回に状況判断の視点を示し、 2 ‑ 5 回目の 演習までに課題①②を練習するよう提示し た。演習時間の都合上、全員が看護師役とし て実施 することは難しいため、 学生の役割を 決定せず、 学生全員が課題①②のどちらも練 習したうえで演習に臨むよう設定した。演習当 日、グルーフ 。 メンバー 6 名のうち、患者一看護 師一観察役を教員から提示し、課題①②で役
F同
υ
奈良看護紀要 V O L 1 6 . 2 0 2 0
割が重複しないよう設定した。実施後は、計画 通りに実施できた点、で、きなかった点、良かっ た点、課題をグ、/レーフ 。 で、意見交換するよう設 定した。 こ の時、患者役が感じた気持ちは、必 ず共有するよう促した。
6 回目授業では、事例を判 断 するために必 要な知識の習得を目的に、筆記試験を実施し た 。
7 ‑ 8 回目 は、学生間技術習得度確認を実 施した。課題③:輸液(末梢静脈 ) 療法中の患 者の寝衣交換について、一定の 技術を習得 できたかを評価するため、 チェックリスト をもと に学生聞で、の評価を行った。フィジカルアセス メ ントおよびバイタノレサインの測定は必修の習 得技術となるため、問診・パイタルサインの測 定・判断・看護実践・報告までを評価項目 とし た。また、評価は学生間で、評価表に沿って互 いに評価し、次に教員が安全 性 と所要時間内 に行えたかを評価した。状況判断能力の育成 を目指し、同一の患者設定の中で、全身状態
(安静度やパイタノレサイン) が異なる 6 ノ ぐタ ー ンの患者設定を準備した(図 1* 3 ) 。 6 名 l グ ノレーブ
ρとしたため 、 6 パターンの全身状態を準 備し、全員が異なる状況を判断しながら習得 度評価に臨めるよう組み立てた。 このことで習 得度評価という一定の緊張感のなか、 どのよう な健康状態の時に、どのような方法で寝衣交 換を実施するかを瞬時に判断し 、 看護行為の 方法を決定する能力の育成を目指した。
技術習得度評価を学生聞 にしたねらいは、
教員から評価を受けるとしづ一方向のシステム
ではなく、学生間での気づきを深め、互いにコ
ミュニケーションを図ることで、あり、 評価は自己
評 価 ・ 他者評価とした。ただし状況判断の結
果は教員・指導者の確認が必要であり、ノ〈イタ
ルサインの測定結果および 判 断の内容につ
いては教員 ・ 指導者が報告を受け、学生の考
えた状況判断の妥当性を評価した。
巳
Jlb ゐ 講義名
へんスアセスメント(1単位15時間)履修年度・学生数
2年前期・
85名
単位数・時間数11単 位
15時間
目的対象者を健康状態生活面カ、ら系統的かっ客観的に 査 定
L、適切に看護行為がで吉る 方 法を習得する。
目標授業の
①対象者を健康状態生活箇から 系統的 かっ客観的に査 定し 、 必 要な観 察事 項を述べる ことが でき る。 目的 ・ 目 標 ② 基 本的な フ ィジ カ ルイグザミネ
ーションの 方法 を想 起し 、具体的なアセス メ ントを 述べ る こ とができる。 ③ B 常生活動作と へ んス ア セスメントを関連 づ け、 看護の方 向性や 具 体的な 看護 行 為 を 導 き 出す ことができ る . ③ 習得 し た技 術を活用し、対象 者 に息切 な宥議行 為ができ る . 回
1呈業内容 t 畳業方法 ,担 当 事 前学 習 事後課題 ねら い 記 録用紙 講義 \
1. 既習の看 護 基本 技術(パ イ歩
Jレサイン測定 輸液 管理 酸 素管理等)を、患者 の健 へ
jレスアセ スメン ト概 論 事例叫(教員 デ モ) 康状 態や状況 に 応 じ て実施 できる 看護計 画を提示 ( 術 後 痛と治療 上の制限
1治療を受ける患者 の 日 常 生活援助について による動画視聴 提示し た課題包〉②刊の
2. 危険予測、共感的態度、パ イ 51
jレサイン測 定、 7 ィジカル アセスメン ト、 ルー ト管 り、 日常 生活動 作が制限 さ れていることに 事 例提示 ( 動画) 計画立案 理( 安 全な 治 療 の継続)、ケ アの 評 価(健康状 態とケアの妥当 性)の視点 でりせん状の し たセ ルフケア 不足)し 、 事後学習を提 思考で 看護を実践することを 伝え る 教 員 Z 名
3.5 臨床 に 即し
た場面 を設定し
、状況 判断の 視点が学べる
実施内容の掘り返り4.看護基本技術を統合 し て実施できる(タスヲ トレ
ーニング→シチュエーション・ ベ
ー 2治 療 を受ける患者の 日常 生 活 援助の実施 演 習
(lt函連リにできた 点 ー できな スド 司 トレ
ニング) 「 酸素投与 輸 液 管理中の足浴 [
実施内容]計画した看護 援劫の
かった点良かっ た点 ・静思 が
5. それぞれの立場( 看 護師 ・患者・観察者 )で感じた
ことを共 有し、立案した 計画の 「 酸 素 投 与輸液管理中 の 車
いす移乗トー ー ー ①パイタルサイン 測 定 ② 患者の健康状態の判断 教員。指導 者 練習 残る点の視点で 章見空換し揺り
授業内容3③報告@看護計画 の 確認 。 手順の判断⑤実 施 計
12名 返る旬患者投 体験による気 持 ち 妥当性が検証 で きる の実施 手 順立案 および の共 有)
6.特に患者役の気 持ちを共 有
L、看 護 師とし て 実 施する際の留
意点とする方法
4演習 修 正し た計画に基づ
7.看護計画を評価、修正す る視点 を習得 し、 事例患者によリ 安全 な 看護 を 提 供する視 実 施 手順の加筆修正
トー一一一 看護計画実施記録の修正 教 員 。 指導者 いた看護援助
0)練 習 知識 。技 術習得度の提示 点 を 学 ぶ
SOAP記録
0)記載
5計
12名 知識習得度テスト + 学生間技術習得度確認の技術 練習 筆 記 試 験 筆記 試験範 囲学習 知 識 の定着 に向けテス ト
8.看護基本 技 術の 定レ ベ ルの 習得 度 を確 認 する こ と
で安全を担保す る \\ \\\
6演習 の解説を も とに復習
9.患者田健康状 態 に 応じた 援助方法(看護行 為)を判断でき る 学生問技術習得度確認 パイタ
Jレサイ ンの正確な
7課題③輸 液 療 法 中(末梢静脈)の患者の寝衣交 換 演習
10. 健康状態に 合 った看護行 為を判 断 できる能 力(状 況判断能 力 )を 育成 す るため 、 自己評 価・他者 評価によるチ ェ ック 習得度確認に 向けた 測定ー制限 時間内の測 定 設定された
6パ タ ー ン の健康 状態・
3から
1つを選択し、 瞬 時に 判断で きる。 トーー ーー
A, 全身 状 態 が 安定 している
=坐位 で の 寝衣交換が 可 能 教員
ー指導者 技 術 練 習 実施
11.技 術 チ ェ ック表 に
基づき「 安全 な 手技である J 「時間内に 実 施 できる」の視点を
(1枚目チヱ ン デ リ ストに 自 己他者評 寝衣 交 換の安全な実施, 設けた)
8 B.全身状態が不安定= 臥位 のままでの寝衣交換実施 計
12名 制 限時間内での実 施 もとに、パイ 51
Jレサ イン測 定 寝衣交換を学生間(教 員 )で評 価で きる を判断して 実 施する
•1事倒 何回 ジ ュ ン さ ん(
70歳 )桓 名 女性 身長!
55cm体 重
45kg既 往 歴梅原病高血圧 消化器外科手桶桂
3目 白 Z 目前に腹部の 手 間を畳け た.
jjlj部痛咳噛および呼軌困難感が
続いている. 陵葉カ ニ ュ ーラ
3l/分 、 末梢静脈 点置が右前腕に挿入され ており、生理 宜塩液
40ml/Hで投与 中.
現在、情枕留置カデー テ ル経 品 胃官 カ デー テルが挿入され て い る.器官 の危険性があり、経口 に よ る食事担取の
指示は出ていな い . 官官カテーテ ルよ り、経官車葺剤( エンソ ユ アリキ ッド) 投 与 の指示が 出て い る.
•2標 題 (j)@ ① 輸置療法および酸素疲活中町 患者
の足浴輸液療法やの患者の君寵陵棄療法中の患者の宥霞足浴 は 技師学 I
(!年;j()・ I I (2 年
;j()にて官 棉
済み② 勝脱 留 置カ
デーテ ル 挿 入中町 患 者の車いす 移乗 ・
MRI出 室 の た めの移送 ... い す移 乗 は技術学 !日 年現)にて 、 勝目光留置カ デ
ーテ ル帰入中 検査を畳 け る患者の 看護 I±
、健康障害と看護技柑学II ( 2 ' 手, O J: J
にて習得清み •3岡田 ジ ュ ン さん(
70歳) 入院前の
V,S,体
j/1,36.4・
C脈 拍
66回 / 分呼吸散
15回/分血圧
148/70mmHgSp02 97%本日
9時
V,Si体温
37.4・
C脈 拍
90回/ 分呼眼数
21回/分血圧
I00/68mmHgSp02 94% パターン①寝衣宜換前のv.s~~定11時殴定患 者 白 発言 ・なんで か な あ 昨 日 より閣は痛む し、し んどいわ.ベッド起こ した ら、頭ふらふ ら するし. 体渇
37.6℃師抽
98回/分 呼 吸数
22回/ 卦
血圧
l02/62mmHgSp02 94%パ ターン② 。寝衣 吏 組 前の
Vふ刈定
11時設定 患者 田 発言 . ち ょ っと ずっ、リハ ビ
リのた め に歩 い た方 がいいよね ?
さっきも椅
子に座ってテレ ビ見 てたん です. 体 温
36.7・
C・師拍
70回 /分 , 呼吸 数
18回/分 目 血圧
126/70mmHg・
Sp0297%パタ
ーン③.寝衣交 換前の
V』S澗定 :
11時設定 患者町尭言 今 日は傷の 痛みもマシで.疲 も自分で出せ たんで す .
宣欲も出てきたし.体温
36.5℃ ・ 師鈎
73固/分 ・ 呼吸数
17回 /分 ・血圧
130/6BmmHg・ Sp02 98%パターン
④
・寝衣克換前の v , s
測定
11時訟定 患者即発 言 さっき 起きてトイレ 行 ったけど、そ の時 、 めま
いLて.今i立大丈夫やげ ど、 その時は血 圧 下が っ たみ たいやわ . 体温
37.4"C・ 脈拍
104回/分目 呼吸数
20回 / 分血 圧
96/SBmmHg・ Sp02 93%パ ターン⑤:
l基衣 豆 換 前町
V,S測 定
11時 殴定 患者 の 発 言汗 か い た し着 替 えた い け ど 、 ベッ ド
起こすと し
んど〈て, 朝ご飯 も息がしんどくて 、 貴 べれ な か ったし 、傷 も痛 い し ね.
体温37.2・C•脈拍90回/卦・呼唖数包囲/卦・血圧110/60mmHg田Sp0293% パターン⑥:~衣変換前のV,S;測定:11時設定 患者 自 発 言 :だ いぶ
元町血 圧 に 戻ってきま し たね 、 って朝の看護師 さん に 言 わ れたん で す. がんばってリハビリ し て 下さい、って先生にも言われ た し、今 日は歩こ うかな . 昨品
36.8℃ 脈 拍
79回 / 分呼吸散
16回 /分・血 圧
140/62mmHgSp02 97%図 1 ヘルスアセスメント科目の展 開 の概要
3 .学生間技術習得度確認の展開の実際 1 グループ
o6 ‑ 7 名とし、 2 か所の実習室に 5 グループ。( 30 名)と 9 グループ。(5 5 名)に分か れて、一斉に同一進行で展開した。本授業の ねらし\としては、図1 「ねらしリの 7 ・ 8 回に示す 通りである。
状況判断および看護実践を行うことを目的 としているが、患者設定や手技の自由度を上 げ過ぎると評価基準の設定に難渋し、統ー した評価ができない。そのため、状況判断とし ては「AJ は「全身状態が安定している」とし、
「坐位での寝衣交換が可能」、「B」は「全身状 態が不安定 j として「臥床のままでの寝衣交換 を実施する J という点を判断し、その患者に適 切と考える手技にて看護実践する、という方法 で、行った。
( 1 )導入: 5 分
演習の目的、目標、課題(輸液療法中の患 者の寝衣交換)の確認、習得度評価はグルー プで 2 名の学生が同時に行うこと、看護師役 学生は、患者設定を記したカード(状況 A ・ B ) を引き、患者役学生に渡す。 その後、実際に 患者役学生のバイタノレサインを測定し、その 場で状況判断を行し\ケアの方法を決定するこ と、などを再度周知した。状況 A (ベッド上臥 床)の患者役の学生は長衣もし くは和式寝衣 を着用し、同タイプの寝衣への交換とした。状 況 B(椅子坐位の患者役)の患者役の学生 は、パジャマタイフ。の寝衣を着用するよう設定 した。この意図は、看護師役学生が離床を促 す関わりを行うことも視野に入れた課題設定と したからである。
( 2 )習得度評価: 40 分× 3 回(図 2 参照)
①役割の確認・準備: 3 分
看護師一 患者一観察役それぞれの役割を確 認し、準備を行った。 輸液は右前腕末梢静脈 より生理食塩液を 40ml/H で投与している設定 とした。
②実施: 30 分
実施とは、 バイタルサインの測定、アセスメ ント、教員・指導者へ決定したケアの方法の報
円くUFhu
奈良看護紀要 V O L 1 6 . 2 0 2 0
告、寝衣交換の実施、患者の評価(脈拍測定)
とした。
具体的方法として、一定の制限時間を設け、
患者設定はヲ |し\たカードによって決まるように した。まずカードを引き、患者役学生の 「 A J ま たは 「 B J を 決定。パイ夕ルサインは測定専用 に 設置した机にて座位の姿勢 で
看護師役学生は意図的に問診を行い、患者 役学生はカードに示された内容を返答した。
バイタノレサインの値や患者の発言から状況判 断を行い、教員 ・ 指導者に報 告。その結果を 受けて、患者役学生がベッドもしくは椅子に準 備した 。 2 名の看護師役学生が同時に習得度 評価を受ける仕組みとした。寝衣交換の実施 は、実質 20 分間とし、実施中 、教員・指導者 は安全面と制限時間を見守るのみとし、実施 中での発問や、手技の指導などは行わなかっ た。チェック リ ストをもとに評価を行う学生も 同 様に、終了まで、は見守りのみとし た 。
③評価 ・ 片付け: 7 分
チェックリストに他者評価欄と 自己評価欄を 設けた。 学生間評価は、看護師役の学生が自
己のチェックリストを評価者の学生に手渡し 、 他者評価 の欄に評価( 0 ・ ×) を記載してもら った。評価終了後に、他者評価欄が見えない ようにし、看護師役学生にチェッ クリストを返却 する仕組みとした。看護師役学生は、ケア終 了後の自己の実施を 振 り返り 、自己評価欄に 評価( 0 ・ × ) を記載。その後 、他者評価欄を 閲覧し、他者 ・ 自己評価を確認し、互いに気 づきをフィ ードパックで、き るよう促した。その後、
教員・指導者から安全性と適切な所要時間 内 に行えたかの評価をフイ←ドパックし た 。
( 3 )習得度評価の結果
患者の全身状態をカードに示し、その場で
状況判断するよう設定したことで、学生は考え
ながら演習に臨んでいた。結果的に、 アセス
メン トで難渋 し、ど のように看護行為を決
定すれば良し 1 か判断でき なかった学 生 は
85 名中 2 名であった。 97 %の学生は適切に
判断でき る結果となった。患者の全身状態
を記したカ ードには、患者の発言も記載 し たため、パイタノレサイ ンのみならず、患者 の発言や様子からも 、適切に患 者の全身状 態をアセスメン トできていた。 判断に難 渋した 学生については、後日個別 対 応を行った 。
演習のまとめは、学生全体に対し、単元目 標の到達で、きた内容と出来なかった内容を示 し詳細に説明した。また教員 ・ 指導者評価と し て、状況判断に必要な視点を学生全員 に向 け指導し た 。
I V . 考察
1 . 状況判断 能力 の育成を目的 とした科目 と授業展開
次世代教育プロジェクト学習は、ピ、ジョン( あ りたいイメ ージ=目的) を描き、 課題を解決し ながら、その到達へ向かう アクティブな学習
(鈴木、 2017 ) である。 初回授業時に、 学生に 臨床をイメ ージさせる目的で、患者一看護師の
時間 ( 計40 分 ) 1 回目 2 回目 役割確認 13.10 〜1 3 : 1 3 13:50 〜1 3 : 53 ( 3 分 )
実施(V , S 測定〜実施 1 3 . 13 〜1 3 : 43 13:53 〜1 4 ・ 23
〜患者の評価)
( 3 0 分 )
評価&片付け 13:43 〜1 3 : 50 14:23 〜1 4 ・ 30 ( 7 分 )
険 割 の 確 認 ( 3 分 ) |
ロールフ 。 レイの動画を見せた 。 このことで、 複 雑な臨床現場のイメージ化を促し、学生が 目 指すべきゴールの明確化と能動的に体験学 習を進める意欲に繋がったと考える
o1 回目 の 授業導入において、目 指すべき目的をイメー ジさせ、 段階的に授業を展開し たことは 、 鈴木 の述べるフ 。 ロジェ クト学習に則していたと 考え る 。 シミュレ ーショ ン教育の構 造(阿部、 2 0 1 8 ) から考えた場合も、今回の授業展開は、専門 的な知識の理解と状況への想 像力を持つこと を目的 に、タスクトレーニング(血圧測定・移 乗 移送など)から始まり、アルゴ リ ズム ・ ベースド・
トレーニング、 そしてシチュ エーショ ン・ ベース ド・トレーニングへと段階を追って技術習得さ せることができた。これらのことから、目的の明 確化を図り段階的な授業展開ができたこと は、
適切で 、あ ったと考える。
松尾(20 1 3 )は、「能力 向上につながる学び とは、発達的挑戦と位置づけられる体験」 と し
3 回目 14:30 〜1 4 : 3 3
14:33 〜1 4 : 03 15:03 〜1 5 : 1 0
・各役割で開始前の準備を行う。 ( 血圧計、体温計、パノレスオキシメ ーターは、オーバー テーブルに準備済み)
|実施(30 分) V,S 測定〜アセスメント〜寝衣交換〜評価|
[①パイタルサイン測定と臥位/ 座 位 の 判 断 ( 1 0 分)]
・オーバーテーフツレ 1 つで交互に患者役が座り 2 人同時にパイタノレ測定を実施
−測定結果 (提示) から患者の状態を判断し、今から行う援助の方法と留意点を考え、指導者に伝える。
・ 患者役に、決定した援助の方法を伝える。→患者はベッ ド or 椅子へ移動。指定さ れた寝衣に着替え、準備する
0・ ワゴンに必要物品を準備する。
*今回は物品とスペースの都合上、ワゴン 1 台に患者 2 人分の準備物品を上 段に置く
[②寝衣交 換 (20 分 ) ]
− 臥位は長衣= キ長衣、 座位はパジャマ= キパジャマに更衣する ( チェックリストに基づき実施す る )
・ 終了後、患者の全身状態を評価する ( 体調確認の問診、患者の観察、脈拍の触知 )
| 学 生間 評価 と片付け( 7 分) |
−評価者は、チェック表に基づき学生間評価を行う(良い点= キ改善点= キその他気づいた点な ど、を順に伝える)。
・学生問評価終了後、ワゴンとと もに寝衣を所定の 場所に片付ける( 1 組の寝衣を患者役だった学生がたたむ)
図2 学生間技術習得度確認の展開の実際
‑5 4 ‑
ている。今回、動画視聴時に学生に発聞を投 げかけ、観察の視点を考えさせたが、現象を 述べるに留まることが多く、実際には危険予測 からケアの評価まで(図 1 ねらい 2 . 参照)幅 広い視点で、かつらせん状に思考していること を伝えた。このことは、今まで 、 1 つ 1 つの看護技 術を習得していた学生にとって、臨床での看 護師の視点の広さと深さ、迅速さを目の当たり
にする機会となり、状況判断能力の重要性と、
1 つの看護師像のイメージ化、そしてさらなる 学習意欲へとつながったと考える。初回授業 後、学生の質問内容や課題に取り組む姿勢 が積極的なものへと変化したと感じている。基 礎看護教育においても、より臨床での看護実 践に近づく授業展開を工夫することが、学生 の学習意欲につながり、状況判断能力の必要 性を認識させるきっかけになると考える。
中島(2019 )は、「対象者の健康状態によっ て、業務内容に変化をきたす j と述べ、以下の 2 点を指摘している。 1 つ目は、複雑な治療や ケアを要しない、すなわち健康状態が回復過 程の場合、診療フ。ロセスに沿った計画 ・ 実施 が可能であること。 2 つ固として、複雑な背景 を有する患者に対しては、計画通りではなく、
必要な情報をチームメンバー聞で、共有し、タ テ割りの医療にならない工夫が必要であるこ と。基礎看護学実習 E においても、回復過程 ばかりではなく 、 患者の健康状態は常に変化 するため、チームで看護実践するためのコミュ ニケーションカが不可欠で、あることを、学生に 教授する必要があると考える。今回学生間で の技術習得度評価を行うにあたり、学生が互 いにコミュニケーションを図るよう授業展開し た。このことは、中島 ( 2 019 ) の指摘 する、チー ムで看護実践するために不可欠な能力の育 成に繋がったと考える。
「学生のレデ、ィネスから考えると難しいが、
支援があれば取り組むことができる課題を与 えることが能力向上につながる」 (高橋ら、
2019 )とされている。 今回ヘルスアセスメントの 初回授業で提示した課題は、既習の技術で はあるが、複数の技術を組み 合わせることに
戸hU
F D
奈良看護紀要 V O L 1 6 . 2 0 2 0
加え、患者の状況判断も行い、 看護行為に発 展させる必要があり、難易度の高い授業展開 で、あったと考える。そのため科目の課題に対し て自己練習時間を設定し、学生同士や教員 が支援したことで、学生の学習意欲を高め、
能力向上に繋がる学びに寄与できたと考え る 。
2 . リフ レクシ ョンの概念からみた課 題 授業目 的・目標 ( 図 1 ) とし ては、適切に看 護行為ができる方法を習得すると設定してお り
、 2 年 生の 後期授業の展開として適切で、あっ たと 評価する。 しかし授業展開の 中で、 I I I . 3 .
( 2 )②に示す通り、教員 ・ 指導者は実施中で の発問や手技の指導などは行わなかった。 安 酸(2015 ) は、経験型実習教育を支える理論と してショーンの「反省的実践家 J の概念で、専 門家教育において、 省察と判断を繰り返す学 習プロセスが重要である、としている。中でも 省察(リフレクション)の重要性を述べており、
省察には行為のなかの省察( R e f l e c t i o n ‑ i n ‑ a c t i o n ) と 、 行為についての省察( R e f l e c t i o n ‑ o n ‑ a c t i o n ) があると述べている。 今回の授業 展開において、発問を取り入れなかった点に 関して、習得度評価という制限時間の中での 実施のため、実施中の発聞は難しかった。し かし、終了後に教員・指導者が意図的な発問 を 行うことで、学生の行為のなかの省察
( R e f l e c t i o n ‑ i n ‑ a c t i o n ) を深める必要があった と考える。
リフレクションにより学生に考えさせることは、
学びの広がり l こつながり、これは学び方を学ぶ ことへとつながっている。鈴木は ( 2017 、 ) 教 育 の最終目標は、成長することを喜びととらえ、
広い視野を持ち、学び続ける人を育てることと 述べている 。 また、看護師は 複雑適応系 で ある医療現場において 「 動的な 日常 J (中島、
2019 ) を遂行しつつ、 学び続けてくれる人材の 育成に寄与していくことが重要であると考える。
そのためにも、段階的に課題の難易度を上
げ 、 シチュエーション・ベースド ・トレーニングを
取り入れる中で、リフレクション、 特に行為のな
かの省察 ( Re f l e c t i o n ‑ i n ‑ a c t i o n )を意図的に組 み込んでいく必要があると考 える。
3 . シ ミュ レーション教育か らみた課題 今 回の 1 ‑ 8 回目の授業展開において学 生 に提示した課 題 は 3 つで、あり 、 これらはすべ て臨床で遭遇するであろう状況を切り取ったも のである。 阿部(2018 )は「シミュレー ション教 育において、単に手技を練習する、急変時対 応を学ぶことだけが重要ではない。臨床で 遭 遇するあらゆる状況を再現して学ぶことが重 要である J と述べている。このことから今回の課 題設定は、実際の場面で活用できる看護行為 と思考過程をトレ ー 二ングできるよ う組み立て たため、適切で、あったと評価する。
学 生 問技 術習得度確認においては、習得 度評価と状況判断能力を同時に習得させる目 的で演習を展開した。設定された状況に対し て、一定基準を満たしているかを確認するた め、患者 設 定 を 「坐位 J c ! : ' . r 臥位 」 と し \ う 2 つの パターンとしたことは、評価を行うとしづ点から は遂行可能な課題で、あったと考 える。ただし 欠 点と し ては、 学生が十分なアセスメントのもと 決 定し たとし 1 うより、 2 者 択ーのなかで援助方 法を決定したとも受け取れた点である。阿部
( 2 0 1 8 )は以下の指摘をしている。 1 つの演習 で達成すべき 目標を多く設定することは、シミ ュレーション教育を計 画す る う えで教 員 が陥り や すい点である、 と し 1 う ことである。 今 後、状況 判断能力を育成する目的であれば、技術習 得 度 の 評 価の単 元とは別に、アセスメント内容 を重点 的 に評価する単元を設けるなど、 演習
目的を焦 点化 する 必 要がある と 考える。
v . 結語
今 回、基礎看護学において状況判断能力 育成を目的とした授業展開 を 行った。授業 は 、 学 生が目指すべきゴール のイ メージ 化、
段 階的な技術習 得、患者 の 健康 状態を判 断 するための状況設定を組み込んだ展開とし た。課題としては、 意 図 的な発聞を行し、学生 の学びを深めること 、状況判断能力育成を目
的にするため、 アセスメント 内 容を重点的に評 価 する単元を設けるこ とであ る 。
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