84 熱帯医学 第15巻 第2号 84−91頁,1973年6月
長崎市内における犬糸状虫の浸淫状況と伝搬蚊に関する研究
4.長崎産シナハマダラカとキンイロヤプカの犬フィラリア幼虫 に対する感受性について*
末永斂
長崎大学熱帯医学研究所衛生動物学研究室
(Received for Publication May 21, 1973)
Studies on the Filarial Prevalence among Dogs and the Mosquito Vectors in Nagasaki City, Western Japan
4 . On the susceptibility of Anopheles sinensis and Aedes vexans nipponii to the larvae of Dirofilaria immitis in Nagasaki City
Osamu SUENAGA
Department of Medical Zoology, Institute for Tropical Medicine, Nagasaki University
Abstract
Laboratory experiments were made to determine the susceptibility of the females of two commonmosquitoes, Anopheles sinensis and Aedes vexans nipponii, to the larvae of Dirofilaria immitis in Nagasaki City. In infected Anopheles sinensis the rate of microfilariae discharged in their droppings is rather high, but the mortality of the mosquitoes due to the infection is very low and a great part of the larvae entering the Malpighian tubes complete the development, and accordingly, the experimental infection rate with the mature larvae is considerably high. On the other hand, in
Aedes vexans nipponii the rate of microfilariae discharged in droppings is low, but about a half of the larvae having entered the Malpighian tubes of the mosquitoes are
*昭和46年度科学研究費補助金(奨励研究A)による研究 長崎大学熱帯医学研究所業績 第671号
シナハマダラカとキンイロヤプカの犬フィラり7感受件 85
killed in the early stages of the development, therefore the experimental infection rate with the mature larvae is considerably low. Moreover, when Ae, vex. nipponii had been fed on high-density microfilaria carriers, there was observed, in the first few days after infective feed, a high mortality of the mosquitoes due to the destruc- tion of the malpighian tubes by the development of a great number of microfilariae.
は じ め に
犬糸状虫(DiTofilar由immitis〕の濃寧浸接地の‑つ (末永イ虫, 1971〕である長崎前1),布で,その)伝搬蚊を明 らかにするために,二の)地方で普通に採集さ加る蚊柾 についてのj感染実験と野外採駐蚊の)JI布然感染の)調度を 行なっているので,既報(末永, 1972 a, b)の6 種,即ちトウゴウヤプカ(Aedeslogo孟〕, 7カ]イ‑カ {Culex pipiens pattens〕,コガタアカイ‑カ(C.
tntaen払rhynch‑is s山tmmorosus),オオグ ロヤプカ (Armigeres s山ibalbat山LS〕,ヒトスジシてカ(Ae.
albopict山LS〕及びチカイ‑カ(C. p・ molestus二)にひ きつづき,本報ではシナハマダラカ(血opheles siT後丁後is〕及びキンイロヤカ‑ヵ(^Aedes vexai山s mpponii〕
の2種についての感染実験の結果を報告する・ニの中.
シナ‑てj(ラカ]はL田司では犬フィラリアの主要伝搬蚊
「Feng. 1930)と考えら*i‑cつTた>‑>;,長分)が何でiJトト 1937)は,二のJl)蚊が吸血によつたて摂取Lた7イラり7 イI'・山・悠*幼水分山∴ (は'つL分査守、させ子' *<は,かどうガ) ;.は帆:;I:V‑T * きなかったが,発育状態がよいので恐らく中間宿主の 資格を有するであろうと述べている○ キ1/イロヤプカ については,米国のミネソタでは主要伝搬蚊とみなさ れている〔Bemrick他, 19日削 が,わが国での実験 域置ままだ報告されていない・
稿を進める前に,御助言をいただいた長崎大学医学 部医動物学教室の大森南三郎名誉教授並びに和田義人 教授に厚くお礼申L上げる事
実験村料及び方法
実験に供した蚊種はシナハてダラカ及びキンイロ1 ̄r塾 ブカの2種である.これらほ何れも累代飼育が困難な ので,野外で採集した雌成虫を使用Lた.この中,シ ナ分、マダラカほ牛舎へ吸血に飛来した未吸血のもの,
及び既に吸血Lたものを250c室内で数日間飼育L産 卵させた後のものを使用し,キンイロヤプカほ休耕田 地帯で夕方ドライアイスを誘引源とLたトラップを設 置して採集したものを翌日供試した・キンイロヤプカ は吸血率が悪くて(10鬼以下〕一度に多数の吸血蚊を 得ることが出来なかったことと,後述のように多数の・層 フィラリア仔虫を保有する犬から吸血させた場合に蚊 が早期に死亡したこともあって,実験ほ保有仔虫数の 異なる犬から吸血させることによって数置こわたって 実施された・しかし 吸血時間は各実験群を通じて揃 えるよう注意Lた・吸血の方法ほ前2報(末永,1972 a高b〕と同様で,250C恒温室内に吊った 4・5壁用の 蚊帳内に感染犬を鎖を短くつなぎ,この蚊帳内に供 試蚊を放し,室内の照明を消して暗黒下で所定時間吸 血させた・吸血Lた蚊は吸虫管で取り出L水て飼育篭
(縦,横,高さが夫々30x30〉く3()cm、または12x 22x22二Cmの角型の〕もので,床は木製,側壁と天井 は合成繊維製の薄い布で張られている)に移し,室温 約250c,関係温度約70鬼11日の照明時間16時間 の飼育室で約3晃−の砂糖水を含ませた脱脂綿を篭の中 央に吊り下げて与え,所定期間飼育した後剖検してフ ィラリア幼虫の発育状況,各発育期フィラリア幼虫に よる蚊の感染率,及び個々の蚊が保有しているフィラ リア幼虫数を調べナ∴ また,一部の蚊は吸血直後に剖 検して摂取Lている仔虫数を調べ,更に別の若干の吸 血蚊ほ吸血直後からスライドグラス上に伏せたガラス 製の小キャップ内で約3兇■の砂糖水を水滴として与え
て飼育L,所定時間毎にキャップの位置を移動させて ガラス面に糞と共に排泄されるフィラリア仔虫または 幼虫の有無を調べた・剖検を必要とする蚊はその中の 一部を韓く麻酔Lた練スライドグラス上に置いた生理 的食塩水中で剖検Lて蚊体内にいるフィラリア幼虫の 生死を確かめた他ほ・すべて殺した直後に小菅瓶へ入 わてコ水レク枠をし,ニれを小ビニ山ル袋に入わて密封
86 末 永 斂
L,一200cのフリーザー中に保存して置き,後で少 しずつ取り出して剖検した・吸血の際は,その開始直 前に犬の耳乗から60mm3の血液をとってその中の フィラリア仔虫数を数え,吸血時の犬の末梢血液中の 仔虫密度とみなLた・また,供試蚊は吸血前後に夫々 30個体について炭酸ガスで麻酔L,10個体ずつまとめ
て自動天秤で体重を測定し 吸血前後の1雌平均体重 の差を算出Lてこれをその蚊群の1個体当りの吸血量 とみなした.実験に使用Lた犬は何れも自然感染をう けていた雑種である・実験はシナハマダラカについて ほ1972年7−8月に,キンイロヤプカについてほ1971 年7月に実施された・
実験成横並びに考察
Ⅰ・シナハマダラカ
1〕シナハマダラカが摂取するフィラリア仔虫数 午後7時から翌日の午前7時までの12時間に250C の恒温室内で感染犬から吸血Lたものの中,吸血時間 の終った午前7時に殺したもの及び同日の午後7時ま で,即ち吸血開始後24時間以内に死亡したものを剖 検し,蚊が摂取していた仔虫数を調べた結果ほ第1表
丁札blel− Mean number and distribution of filariae of DiTqfi血Tia 加・mitisin A7後−
Phetes 由脚壷 within 24hours after feeding on aninfected dog・
No・Of mosquitoes examined Expected No− Of microfilariae
taken up by a female*
No.of filariae observed Per mOSquito
i
Percentagedistributionof filariaLeinmosquitoes
Mean Range
†
Stomach
337・9⁝一2︒弧6
1
Malpighian
tubes 39・4
*Obtained from the microfilarialdensityin the blood of aLn ear−lobe of the dog and the amount of blood taken up by a female mosquito・
に示す通りである・この表からわかるように,剖検し た33個体についての平均摂取仔虫数ほ8・8隻で,蚊 の吸血量3・O mg と吸血時の犬の卑莱血60mm3中 の仔虫数133隻とから算出した雌1個体当りの予想摂 取仔虫数7・9隻より幾分多かったが,既報(末永,
1972a,b〕の6種の場合と同様,本種の場合にも各 個体の摂取仔虫数にはかなりの差があり,多いもので は20隻を摂取していたものから少ないものでほ僅か に1隻を摂取していたにすぎないものまであった・こ れらの仔虫の60・6鬼 ほまだ血液と共に胃にとどまっ
ていたが, 39・4先寸は既にマルピギ‑氏管に侵入してい た.
2〕シナハマダラカの糞と共に排准される7イラリ ア仔虫数
感染犬からの吸血によって血液と共に蚊が摂取Lた 仔虫の中,ここではマルピギ‑氏管に侵入できず,早 がて蚊の糞と共に排粧される仔虫について述べる.敬 血蚊42個体を個別飼育してそれらの蚊の糞と共に排推 される仔虫数を調べた結果は第2表に示す通りである・
Table 2‑ Number and percentage of D, imm由is microfilariae discharged in droppings of An・ s加e耶is during 8 days after feeding on an infected dog at 25 C・
No・ of mosquitoes examined 42
No. of filariae
Percentage of filariae
I
†
discharged in droppings 245 remaining in mosquitoes 337 discharged in droppings 42・1 remaining in mosquitoes 57・9
この表からわかるように,本種ほ摂取した仔虫のかな り多くを糞と共に排推する・緋鯉仔虫数が5隻以上の 蚊18個体について排壮の時期をみると,第3真に示 すように大部分の仔虫が感染血摂取後3日目に排推さ れていることがわかる・排推された仔虫ほすべて死亡
していてギムザ染色しても全く染まらないが,まだは っきりとした形を保っているものが多いことは既報の チカイ‑カの場合と同様である・これらの仔虫ほすべ て第2報(末永, 1972 a〕で述べたと同じように粘血 糞塊中から発見された・
シナハマダラカとキンイロヤブカの犬フィラリア感受性 87
Table 3。 Daily number of D・ £mmitis micro‑
filariae discharged in droppings of ATB・ S加飾ホduring 8 days after feed‑
ing on an infected dog at 25 C・
Dailynumbera
feeding。ffila王fae…
"o長qou・itoTot;
offdisc]受1No.
lariae
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3)シナハマダラカ体内にぉけるフィラリ7幼虫の 発育状況と蚊の感染率
シナハマダラカの)てルピギ‑氏管に侵入した7ィラ リ7仔虫は揃って発育を開始し, 25‑cにおいては約 4日間でIc期に,約10日間で 皿a期に達し 細 15日間で感染幼虫に達する・各発育期幼虫によるこの 蚊の)感染率ほ第4衰に示すように, Ⅰ期で67.3鬼.,
Ⅱ期で6/0・1%, 11b期で44・3鬼′と共にかなり高率で
ある.感染蚊の保有する幼虫数ほⅠ期で平均5・0隻, 班期で6.4豊, Ⅲ期で4・6隻と,最初の摂取数が平均 8・呂笠と少なかった割には多い傾向がみられる・
4)シナハマダラカの体内で発育を尭了Lたフィラ リア成熟幼虫の体長
感染血摂取擾15‑16日目の蚊体内から取り出Lた フィラリア成熟幼虫143個体についてその体長を測定 した結果は第5表に示す通りである.この裏からわか
Table 5. Body length of the filarlal larvae matured in An*s加ensis at 25 C.
No. of larvae examined
Body length in micron
i
143
Mean 1016.9 Maximum 1166 ・ 9 Minimum 916 ・9
るように,シナ分、マダラカcの体内で発育Lた成熟幼虫 の体長は最短916・9M,最長1166‑9水lで個体によっ てかなりの差があり,平均1016・9分布 で,既報のトウ ゴウヤプカ体内で発育したものの体長(平均1150.0
〃〕より幾分短い・
5)シナハマダラカのD. immitis 幼虫に対する感 受性
以上の成績からわかるように,シナハマダラカほ感 染犬からの吸血によって摂取Lたフィラリア仔虫のか なり多くを排推するが,過半数の仔虫をてルピギー氏 管に侵入させ,その発育を完了させるので,成熟幼虫 によるこの蚊の感染率44.3%ほ既報の6種の中で最 も感受性が高いトウゴウヤカ‑ヵの感染率75.7%に挽 く+高率である・従って,本種は長崎地方の普通蚊の中 でほ比較的感受性の)高い種類であることが明らかにな
った.
Table 4. Experimental infection rate with the living larvae of D. immitis in An. sinensis at 25°C.
Developmental ! No. of mosquitoes
stage of I
filarial larvae , examined infected Days after
feeding
3 - 8
10 - 12
I nfection rate in
I
II
15 - 16
110 74
N o. of larvae
Mean Range
67.3 5.0 1-17
61 70
37 31
60.7 44.3
6 .4 4.6
1-22
1-13
88 末 永 赦
Ⅱ・キンイ口ヤフカ
1)キンイロヤ7力が摂取するフィラリ7仔虫数 午後6時から翌日の午前6時までの12時間に250C の恒温室内で吸血させたものの中,吸血を終えた直後 の午前6時に殺Lたもの及び同日の午後6時まで,即 ち吸血開始後24時間以内に死亡Lたものを剖検し 蚊が摂取Lている仔虫数を調べた結果ほ第6真に示す 通りである・ この裏からわかるように,No・17から No・20までの各実験群を通じて,実験に使った犬の耳 菜血中の仔虫密度と蚊の吸血量とから算出Lた雌蚊1 個体当りの予想摂取仔虫数と,実際の摂取仔虫数の平 均とは概ね平行的で,予想摂取数が多い場合,即ち多 数のフィラリア仔虫を保有Lている犬から吸血させた 蚊群でほ実際の摂取数も多く,予想摂取数が少ない場 合にほ実際の摂取数も少ない傾向がみられる・LかL.
蚊の各個体についてみると,肉眼的にほ略同様に満腹 吸血Lているようにみえても,これを剖検Lてみると 摂取している仔虫数は蚊の個体によって著しく異なる ことがわかる.蚊体内におけるフィラリア仔虫の分布
をみると,実験群によって34・4−46・2%が既に7ル ピギー氏管に侵入していることがわかる・
2〕ガ.キンイロヤ7■力の糞と共に排泄されるフィラリ ア仔虫数
第7表ほ感染血を摂取Lた蚊が糞と共に排泄したフ ィラリア仔虫数を示したものである・この裏からわか るように,血液中のフィラリ7仔虫数が多い犬から吸 血させた蚊群(Lot No・17)と,仔虫数が少ない犬か ら吸血させた蚊群(Lot No.18)の夫々■20個体につ いて調べたところ,前者でほ20個体中12個体が仔虫 を排泄Lたが,後者では7日間の調査期間中を通じて 仔虫を排泄Lた蚊は全くみられなかった.前者の場合,
排泄された仔虫数ほこれを排泄した蚊12個体の合計 で176隻であったが,供試Lた20個体の蚊は全部感 染血摂取後24時間以内に死亡したので,これらの蚊 を剖検したところ,胃とマルピギー氏管に合計2,鵬0 個体の仔虫が残っていた・従って排泄された仔虫は全 体の6・2%に当る・この裏から蚊1個体当りの摂取仔 虫数を算出すると142・8隻となり,死亡の原困はこの
T able 6. Mean number and distribution of filariae of D. immitis in Aedes vexans nipponii within 24 hours after feeding on an infected dog.
L ot No.
17 18
No. of mosquitoes
examined
58 56 26 18
Expected No. of microfilariae taken
No. of filariae observed per mosquito
up by a female* Mean Range
331.7 3.3 104,1 109.5
329.4 3.5 138.5 118.4
35 -870
1- 10
27-458 41-421
Percentage distribution of jilariae in mosquitoes Stomach Malpighian tubes
5 5.
3 5 3.
8 66.
6 6 1.
9
44.7 46.2 34.4 38.1
* Obtained from the microfilarial density in the blood of sn ear-lobe of the dog and the amount of blood taken up by a female mosquito.
rable 7. Number and percentage of D. immitis microfilariae discharged in droppings of Ae, vex. nipponii during 24 hours (Lot No. 17) or 7 days (Lot No. 18)
after feeding on an infected dog.
Lot No.
N o. of mosquitoes examined
No. of mosquitoes which discharged filariae
N o. of filariae
discharged in droppings remaining in mosquitoes Percentage of filarire discharged in droppings
remaining in mosquitoes
* All of them died within 24 hours after feeding.
17 20*
12 176 26 80 6.2 93.8
18
20 0 0 61
0.0
100.0
シナハマダラカとキンイロヤプカの犬フィラリア感受性 89
ように多数の仔虫を摂取Lたことによると思われる.
後者の場合,即ち保有仔虫数の少ない犬から吸血させ た場合には,供試蚊20個体の合計で61笠,蚊1個体 平均では3・1隻の発育中の幼虫をてルピギー氏管内に 保有していた・これらの実験成績から,保有仔虫数の 多い犬から吸血させた場合には蚊そのものが早期に死 亡したので24時間以後の仔虫排泄状況を調べること ほできなかったが,少なくとも保有仔虫数の少ない犬 から吸血させた場合にほキンイロヤプカほ摂取Lた仔 虫をほとんど排泄せずてルピギー氏管に侵入させるこ
とがわかった・
3)多数のフィラリ7仔虫を保有する犬から吸血L た場合のキンイロヤ丁力の早期死亡
締節で述べたように,キンイロヤプカにフィラリア 仔虫数の多い犬から吸血させた場合には蚊そのものが 短期間に死亡することがわかったので,それらの死亡 個体を剖検して保有している仔虫数を更にくわしく調 べてみた・第8表ほ吸血後24時間以内に死亡Lたも のと,24時間から36時間までの問に死亡Lた蚊につ いて保有Lていた仔虫数を示Lたものである・この裏 からわかるように,24時間以内に死亡した蚊の保有仔 虫数ほ蚊群によって平均118豊から329豊・36時間ま でに死亡Lたものでほ79隻乃至114隻と何れもかな り多くの仔虫を保有しており,Lかも,より多くの仔 虫を保有する蚊がより早く死亡Lていることがわか る.更に蚊体内での仔虫の分布をみると,24時間以内 の死亡蚊でほ雌蚊1個体平均45−147隻が,また36 時間までの死亡蚊でほ28−72隻がてルピギー氏管に 侵入していて,これらの蚊のてルピギー氏管の大部分 ほ内壁が甚だLく破損されていた・従ってこれらの蚊 の死亡原置は恐らく多数の仔虫がマルピギ一環管に侵
人してこれを破損し 機能障害をひき起すことによる のでほないかと思われる・Lかし この衰からわかる ように,保有仔虫数が14隻,あるいほ16宴とそれほ ど多くほない個体も若干でほあるが短期間に死亡して いるL,この裏にほ示さなかったが,保有仔虫数の少 ない犬から吸血した蚊群でも他の蚊種に比べて幾分早 く死亡するものが多い傾向がみらわた・高密度にフィ ラリア仔虫を保有する犬から吸血させた場合の蚊の死 亡についてほWebber他(1955〕,Kershaw(1953),
Weiner他(1970〕等の報告がある− これら町報告と 既報(末永,19■72a,b〕の成績及び今回の実験結果 等を考え合せると,蚊が多数のフィラリア仔虫を摂取 L,てルピギ一環管に侵入させた場合にほ吸血後早期 に,また中程度の数の仔虫をマルピギー氏管に侵入さ せ,ニれらの仔虫を揃って発育させた場合にほそれら が感染幼虫に達する頃,即ち比較的晩期に蚊を死亡さ せるように思われる.Lかし 中程度の数の仔虫をマ ルピギー氏管に侵入させた場合でも,その中のかなの 多くのものを発育途中で死亡させた場合,及び比較的 少数の仔虫を位入させた場合にほフィラリア幼虫の発 育完了後まで蚊は普通に生存するように思われる.今 後,何隻以上のフィラリア仔虫がマルピギー氏管に侵 入Lた場合にこの蚊を早期に死亡させるのか更に追求 する必要がある.何れにしても,保有仔虫数の多い犬 から吸血させると蚊そのものが早期に死亡してフィラ
リア幼虫の発育状況を調べることができないので,フ ィラリア幼虫の発育状況と各期幼虫によるこの蚊の感 染率ほ保有仔虫数の少ない犬から吸血させた蚊群につ いて調べた・
Table 8. Mean number and distribution of filariae of D. immitis in Ae.vex^nipponii which died within 24 hours or 36 hours after feeding on
a heavily infected dog at 25°C.
H ours after feeding within
24
hours
No, of filariae observed Distribution of filariae
Lot No.I .No- of
' Mosquitoes examined !
17 19 20 From 24
to
36 hours
1 7 19 20
58 26 18 16 24 14
per mosquito | in a mosquito
Mean Range !Stomach Malpighian tubes
329.4 138.5 118.4 114.4
35-870 27-458 41-421 29-347
182.2 90.8 73.3
42.3
147.2 47.7 45.1
72.1 79.1
98.1
16-448 j
14-475 !
51.4 64.5
27.7
33.6
聞 末 永 斂
4〕キンイロヤプ力体内にj査ナるフィラリア幼虫の 発育状況と蚊の感染率
第9表ほフィラリア仔虫数が60mm3 の耳采血中 に54隻と少ない犬から吸血させた場合の各発育期幼虫 による蚊の感染率を示Lたものである・この場合にほ
定Lた結果を第10蓑に示した.ニの蓑からわかるよう に,キンイロヤプカ体内で発育を完了した感染幼虫の 体長は最短833.5水上,最長1083・6つ位 とかなりの個体 差があり,平均1000・2〃 で,トウゴウヤプカ体内で 発育Lたものの体長より幾分短かかった・
Ta・ble9. ExperimentaLlinfection rate with thelivinglarvae of D−imm読isin Ae.vex・
乃報ppo戒which fed on alightlyinfected dag(Lot No.18)at250c.
Days after feeding
Developmental Stage Of filariallarvae
︵ U 5 爪 じ 仁 U l l
︐
:
No.of mosquitoes examined infected
a
C a b
−
− I
﹇
‖
‖ 止 m
7 7 2 3 2 1 1 1
ー長
Infection ratein
%
室 芸 長
皇 61
!77
48・2 47・2 19.7 16・9
l− No・Of filariallarvae Per mosquito Mean Range
3・5 1−10 3・2 1− 8 1・8 1− 4 1・8 1− 4
吸血蚊ほほとんど死亡Lなかったのでフィラリア幼虫 の発育状況を調べることができた・この裏からわかる ように吸血直後における蚊の感染率ほ48・2%で,」
の感染率ほ数日後のIc期,即ち最短縮期には47・2
%とそれほど低下Lていないが,10日後の 皿a期に なるとかなり低下Lて19・7鬼−となっている・ これは I期の後半にかなり多くの幼虫が死亡するためで,10 日間以後に剖検Lた蚊のマルピギー氏管中にほそれら の死体がⅡ期あるいはⅢ期幼虫と共にしばしば発見さ れる・Ⅰ期と好期の間隼は著Lい蚊の感染率の低下は みられないので,Ⅱ期に達したものほ多少発育の後れ るものはあってもその大部分が感染幼虫に達するもの と思われ,Ⅱb期,即ち感染幼虫によるこの蚊の感染 率は蹄17%であった・蚊1個体が保有していたフィ ラリア幼虫数も吸血直後には平均3・5隻であったもの が,5日後のIc期にほ3・2隻とそれほど減少して いないが,1り日後のⅡa期,16日後のⅢb期には夫々 1・8隻と最初の保有数の約半数に減少している・
5)キンイロヤ7力体内で発育Lたフィラリア成熟 幼虫の体長
感染血摂取後15−17日目の蚊体内から取り出Lた フィラリア成熟幼虫24個体について,その体長を測
Table 10. Body length of the filarial larvae matured in Ae. vex.押ipponii at 25‑c・
No. of larvae examined
Body length in micron
i m
Mean lOOO・ 2 Maximum 833 ・ 5 Minimum lO83・ 6
6)キンイロヤ7力のD・ immitis幼虫に対する感 受性
キンイロヤプカほ多数のフィラリア仔虫を保有する 犬から吸血Lた場合にほ摂取した多数の仔虫をマルピ ギー氏管に侵入させることによりマルピギ‑氏管を破 損され,蚊そのものが早期に死亡する・また,少数の 仔虫を保有する犬から吸血した場合にほ摂取した仔虫 の約半数を感染幼虫にまで発育させるが,残りの半数 ほ発育途中,特にL期の後半に死亡させるので成熟幼 虫によるこの蚊の感染率はかなり低く,長崎地方の普 通蚊の中でほ比較的感受性の低い種類であることがわ
かった.
ま と め
長崎地方の牛舎で採集Lたシナハマダラカ及び休耕 田地帯でドライアイストラップによって採集Lたキン イロヤイブカの雌成虫に,25¢c室内で感染犬から吸
血せさ,両種蚊の犬フィラリア幼虫に対する感受性竃 調べた・
シナ水、マダラカほ吸血によって摂取したフィラリブ
シナハマダラカとキンイロヤプカの犬フィラリア感受性 91
仔虫の半数近くを糞と共に排泄するが,過半数の仔虫 をマルピギ一成管に侵入させ,その発育を完了させる ので,感染幼虫によるこの蚊の感染率は44・3%とかな
り高い・
キンイロヤプカは多数のフィラリア仔虫を保有する 犬から吸血すると,摂取した多数の仔虫にマルピギ一 環管を破損されることにより蚊そのものが短期間に死
亡する.ところが少数の仔虫を保有する犬から吸血L〝
た場合には,摂取Lた仔虫をほとんど排泄Lないが,
てルピギー氏管中での発育途中でその約半数を死亡さ せるので,成熟幼虫によるこの蚊の感染率は約17プ古 とかなり低い.両種の蚊体内で発育した成熟幼虫の体 長ほわが国では最も感受性が高いトウゴウヤプカの体 内で発育Lたものの体長より幾分短い・