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中国経済の市場化 と流通 システム*

Reform toMarketEconomyandDistributionSystem ofChina

Abstract

Theeconomicreform inChinafrom '79,hasevolution‑

allychangedtheoldinstitutionsandstructuretoamar keteconomicsystem.Thepaperdiscussesthestructural changeindistributionsystem orChinaandprovidesa comprehensive approch to the reform. The common featuresanddifficultiesofthereform processtoamar keteconomicsystem arehighlighted.

はじめに

79年か らの経済改革 は,中国の経済 と社会 に構造変化 を もた らした。 この歴 史的な変化 を, 「経済の市場化」 として と らえ,市場 システムの構築 と市場 メ カニズムによる調節の両側面か ら分析す る必要があ る。本稿 は,経済改革 のプ ロセスにおいて,中国の流通 システムにどのよ うな構造的な変化が生 じたかを 明 らかに し,流通 システム と経済 の市場化 はどのよ うな関係 をな しているかを

*本稿は,中国の流通問題一中国経済の市場化」 (5回神戸流通マーケティング コンファレンス,日本商業学会主催,91年1129日)と 「経済の市場化と流通システ 」 (6回目口北海道極東シンポジウム,日ソ (ロ)北海道極東研究会議主催,19 9295日)をもとに修正 ・加筆 したものである。

387

(2)

検討 しよ うと試 みた ものであ る。全体的な結論 と して,中国経済の市場化 と流 通 システムとの関係 を分析す るためには,複眼的なアプ ローチが必要であるこ

と1), また,歴史 ・社会 的 な条件 によ って,経済市場 化 の プ ロセ スや現状 に 大 きな差異が存在す るに もかかわ らず,中央集権的な計画経済を市場経済 シス テムに転換す る 「経済 の市場化」には,共通の方 向性 と困難性を兄 いだせ るこ

とを示 したい2)0

経済改革の成否を問 うことは全 くの時期尚早であ る。経済 システムの構造転 換 は長期 的な過程で あ り,一つ の政策転換 の結果 は,五年 あるいは十年 を経 て 評価 しなければな らない。改革の初期条件 と現状 に関す る撤密 な分析 と理解 に もとづ いて,最善 の改革 の アプ ローチ と方 向性 を論 じるべ きで あ る。CIS 東欧諸国 に比べて, 中国経済 の好調ぶ りは著 しい (表 1).‑人当た りGNP

か らわか るよ うに, 中国 は低所得水準の発展途上国であ る。明 らかに,経済発 展段階 とい う要 因だ けで は, このよ うな違 いを説 明す ることがで きない。そ こ で, どのよ うな要因が対照的な経済改革の成果を もた らしたか につ いて,中国 流通 システムの構造的な変化の分析 を通 して解明す ることは,本稿の中心課題 である。

社会主義国であ ると同時に,圧倒的な農業国であ り,発展途上国であ るとい う二つの顔を もつ中国経済の現実 は,われわれに,市場 システムの発達, と く 1)中国の流通分析は,発展途上国という側面から流通近代化 (経済発展論),流通政 策 (産業組織論),地域経済発展 (流通空間分析)と流通の国際化の視点が必要であ る。また,社会主義体制という側面か ら市場主体 (企業)の形成 (企業理論),政府 の機能 (マクロ経済学や比較制度分析)の視点も重要である。中国の 「物資」と 「 品」の概念,流通機構や流通形態など制度,政策の変遷については,日中経済専門家 共同編集 (1982),中国物資経済学会編 (1983),南部玲 (1986)と日中経済協会 (1 990)が詳 しい。中国流通企業の業種別と所有形態別の規模,生産性と空間特性につ いての分析は,黄 (1990A)がある。

2)旧ソ連 ・東欧諸国と中国の経済改革の比較分析は非常に困難な課題であるが,経済 改革の 「意図」 ・ 「目標」ないし方向性としての 「規制された市場経済」モデルに比 較分析の出発点を置 くことができる (佐藤,1989)。本稿は,比較分析を主眼としな いが,市場化プロセスの共通な問題を明らかにしたいという問題意識か ら中国の流通 システムの変化を分析する。中国,CISと東欧諸国の経済市場化において,共通に みられる問題点については,黄 (1992C)を参照 して ください。

(3)

中国経済の市場化と流通システム

表 1 中国 とC IS ・東欧諸国の経済指標の動 き

389

国内総生産GDP1986‑88 89 90 911 ‑人当たりGNP(ドル) 前年比 % 平均 892 903

旧ソ連(CⅠS) 2.8 2.4 ‑4.0 ‑15 9140 旧東 ドイ ツ部 4.1 2.1 ‑13.4 ‑20 9670('89) ポ ー ラ ン ド 3.4 0.2 ‑ll.6 ‑9 1790 4400 チェコスロバ二ア 30 1.3 ‑0.4 ‑14 3450 8100 ハ ン ガ リ ー 3.3 0.9 ‑4.3 ‑10 2590 6100 ル ー マ ニ ア 0.7 5.8 ‑7.9 ‑14 3200 ブ ル ガ リ ア 4.2 1.4 ‑ll.0 ‑20 2320 5600 旧 ユスラビア 0.2 0.2 ‑7.6 ‑18 2920 1200

1:中国の国民総生産の成長率は 「中国統計年鑑1990」および1990年, 1991年経済統計公報」による。

CiS・東欧諸国のGDP成長率は 「日本経済新聞1992.6.19」による。

91年は暫定値。

2:TheWorldBankrWorldDevelopmentReport1991」p.204. 3:CIA(1991)「IIandbookofEconomicStatisticsl991」.

に制度構築プロセスの理論化 という問題を提起 し,恰好の研究対象を提供 して いる。本稿では,競争的な市場メカニズムの形成 との関連を中心に,中国の流 通 システムの構造変化を分析する。以下で指摘する諸問題が,中国独 自の もの ではな く,市場 システムの発達 プロセスで共通の政策課題であるとい う命題 は,本稿の分析か ら導 き出される。

中国の経済改革が もた らした構造的な変化を,次のように分析する。まず, 経済市場化の概念についてごく簡単に論 じることにする。第2に,経済改革に よって,中国の流通課業環境が大 きく変わっている。その中で も重要なのは, 社会的分業の進展である。 この変化を労働力の産業別比率 によって分析す る。

3に,国民経済における流通部門の位置づけの問題である。産業連関表か ら みて流通活動の重要性が増大 しているが,依然 として中国経済の立ち遅れた産

(4)

業部門である。第4に,中国経済の市場化がどこまで進展 したかについてみる ことにする。狭い意味での経済の市場化 とは,市場取引が及ぼす範囲の拡大, 価格体系の改革,取引の主体 と形態の多様化などである。第5に,市場 システ ムの発達にとって,市場の 「物的イ ンフラ」 と 「制度的イ ンフラ」の整備 はき わめて重要であるので,中国の市場イ ンフラ整備について論 じる。第6に,也 域間封鎖 と地域間格差の拡大は,中国経済の大 きな難問の一つである。市場 メ カニズムが機能す るためには,全国統一市場の形成への努力が必要である。「 侯経済化」 といわれるが,地域間関係の問題 に関する研究は始まったばか りで ある3)。地域間流通データが整備 されていないので,各省 ・市の域外仕入 と 域外販売の現状を分析す る。最後に,以上の分析か ら得た流通 システムと経済 市場化の関係 に関す る重要な視点を示 したい。

1.経済 の市場化 とは

経済の市場化 とは,従来の中央集権的な指令性計画経済を,市場 メカニズム による経済活動の調節範囲を拡大 させ ることによって,競争的な市場を主 とし た経済 システムに転換す るプロセスを指す。経済改革によって形成 される経済 システムに 「社会主義」 との名を付けるためには,所有制の特徴,政府の機能 と役割を注意深 く分析す る必要がある。また,経済の市場化には二つの側面が ある。市場 メカニズムが機能す るための制度的条件を形成する市場 システムの 制度構築プロセスと, 見えざる手」である市場 メカニズムが現実に機能す る ようにす る市場 システムの維持プロセスとの両面か らとらえる必要がある。

3)地方分権化は中国経済改革の大きな柱である。地方行政主体と中央政府の関係は中 国の流通を分析する上できわめて重要な課題である。地方行政主体の行動と物資管理

・商品流通に関する研究として,萎 (1990)があげられる。中国の国土の広さ,地 域間格差と多様性や伝統的な 「緩い集権制」などの初期条件から,マクロ管理能力の 増大に結び付 く地方分権化は,中国経済の市場化の発展をもたらす基本的な条件であ るとする見方については,千 (1990),黄 (1990A)と上原 (1992)を参照してくだ さい。

(5)

中国経済の市場化と流通システム 391 歴史的にみて,中国の経済改革 は,従来の中央集権的な計画経済体制を,市 場経済 システムに転換す る経済の市場化‑の模索である。中国の経済改革は, 国家所有の基本的な枠組の中で,企業 自主権の拡大 と市場 メカニズムの導入 と いう漸進的な方途をとったために,新旧体制間の摩擦がさまざまな形で現れ,

放」(推進) と 「収」(後退)の間に揺 らいでいる。政治体制改革の前途が き わめて不明確であるに もかかわ らず,経済市場化の方向転換は もはやあ りえな い。 ここでは,市場 システムの構築プロセスの問題をとりあげる。

中国の経済改革 は,1978年12月に農村改革を中心 とし,地方 と企業の 自主 権を拡大す るという基本方策が表明されたことか ら始まった。84年秋以降,経 済体制改革の舞台が都市部に移 り,新たな段階に入 った。 しか しなが ら,その 後の価格改革が「経済過熱」,急激なイ ンフレと経済秩序の混乱を引き起 こし,8 8年に経済引き締め政策が余儀な くされた。91年以後,改革が再び加速 してい

4‑。改革の進展 に大 きな揺れが見 られ るのは,改革 目標が さまざまな変遷 を見せていることにも関連す る (喬 ・陳,1991 )。92年10月に 「社会主義市場 経済」 という改革 目標が打ち出されたが,その内容が必ず しも明確ではない。

中国の経済改革が直面 しているのは,市場経済の普遍性 と社会主義体制 との 両立性の問題,従来の計画経済体制をいかに市場経済 システムに転換するか と いう具体的な方策の問題である。社会主義国において も,発展途上国において ら,経済発展の中心課題 は政府 (計画)と市場 との間での相互作用である。 こ れ らの国にとって,経済活動への政府の広範な介入 も,完全な自由市場経済 も 成功の途ではない (TheWorldBank,1991)0

中国経済改革の成果 は,経済の高成長 (79‑89年平均9.6%)を もた らした ことにとどまらず,経済の市場化を漸進させたことにある。流通領域を限 って みると,新 しい流通形態 と多様な流通経路が生まれている。従来の集権的な指 令性計画経済を 「規制 された市場経済」に転換 させる必要条件 として,次の三 4)中国の経済改革は経済のあらゆる側面にわたり,新しい経済主体と新しい発展メカ

ニズムを形成 しつつある。この変化について,中国経済体制改革研究所 (1986), WorldBank(1990)と渡辺 (1991)が参考になる。

(6)

つの ことが重要である。市場主体 としての本格的な企業の創出,競争的な市場 機構の形成 と間接的なマクロ経済制御 システムの構築である。中国の流通 は, この三つの側面か らみて さまざまな変化が生 じている (日中経済協会,1990. ,1990A,1990B)。そこで,競争的な市場機構の形成 という側面を中心 に,中 国の流通 システムの構造的な変化をみることに しよう。

2.社会 的分業 の発達

流通 システムは,その課業環境の変化,すなわち生産 と消費の構造的な変化 によって大 きく変わる。経済改革の進展 にともなって,社会的分業が発達 し, 経済主体間の関係が複雑になるような変化は,流通の重要性を高めているもっ

とも重要な要因である。

中国が圧倒的な農業国である (2)01980年 までの30年間,中国の農村人 口比率が80%を超え,きわめて高い水準に維持 されていた1984年 に「鎮 (農村 部の小都市)」の設置基準が改正 され,農村か ら都市への人 口移動の制限政策 が部分的に変更 された。 「鎮」 という小都市が増えただけでな く, 「市」など 中小都市の数が83年 の268個か ら89年の447個 に増えた。行政区分の変化 と人 口の自然増加を入れて,都市部人口が4億人増え,農村部人口が2.5億人減 っ たのである。89年の農村総労働人 口と農業部門の労働力の差 は,7655万人で ある。87年の人 口調査では,826月か ら877月までの5年の問に,農村か ら,市 または鏡 に移住 した人 口が1350万である。つまり,厳 しい政策的な制 5)によって農村に戸籍を もつ農民の中に,およそ6000万人が工業,建築業, 商業,飲食業およびその他のサービス業に従事す るようになった。郷鎮企業の

5)農村から都市への人口移動を統制する政策手段として,戸籍制度,食料配給制度と 就業制度がある。そのなかでも,もっとも重要な戸籍制度について,84年に出された

農民が集鎮に入り,戸籍を移す問題に関する国務院規定」に,農民の鏡への移住を 許可するという政策変更がなされた。89年以後,労働力の都市部‑の移動を制限する ために,労働許可証の制度が打ち出された。今後,戸籍制度の抜本的な改革が迫まら れている。

(7)

中国経済の市場化と流通システム 393 中で,商業 ・飲食業に従事す る労働者数が89年の1400万人 とな り,経済発展 にともなって,農村の社会的分業は著 しく発達 した。

農林畜水産 ・水利部門の労働人 口は3.33億人であ り,総労働人 口に占め る 比率が60%に低下 した。農業の相対比率低下 と郷鎮企業の急速な発展 は工業, 商業 とサー ビス業の労働人口の相対比率の拡大を意味 している (2)。流通 業が余剰労働力を吸収す る部門 として,その就業者数 は,工業,農業や他のサー ビス業以上に急速に拡大 している。表3は小売業の所有形態別の労働力比率の

2 中国の人 口と労働力の推移

人口 増加 農村人 都市人口 農村人口 農村総 郷鎮商業 万人 率% 口比率 増加率 増加率 労働力 飲食企業 1978 96259 82.1% 30638万人 0̲47%

1979 97542 1.33 81.0 7.25% 0.04% 31025 0.47 1985 105044 1.12 63.4 16.02 ‑5.86 37065 4.55 1989 111191 1.44 48.3 5.75 ‑2.80 40939 3.42

1 14932 40249 ‑25317 10301 1256 産業別 農業 工業 その他(運輸通信 商業 金融保険 小計) 1978 40152 70.7 15.2 9.3(1.83 2.88 0.19 4.90) 1979 41024 69.9 15.4 9.6(1.86 3.04 0.21 5.12) 1984 48197 64.2 16.5 12.6 (2.24 4.22 0.26 6.73) 1989 55329 60.2 17.3 14.4 (2.59 5.17 0.37 8.13)

1 15177 4911 3477 4258 ( 697 1705 129 2531) 年増加率 %

1979 2.17% 1.12 3.40 5.72( 4.08 8.05 13.16 6.77) 1984 3.79 ‑0̲90 7.2120.86(19.18 15.55 8.55 16.44) 1989 1.83 3.02‑0.96 0.90(‑0.14 1.10 6.22 0.92)

資料 :「中国統計年鑑1990」業種分類は、86年以後の新分類であり、工 業には建築業を含み,商業は卸売 ・小売 ・飲食と倉庫業の合計で ある。

1:1978年から89年までの絶対数の変化である。

(8)

3 中国の小売業の所有形態別の労働力比率 小 売 業 国営所有 集団所有 合営所有 個人所有 1978 447.4万人 21.8 75.1 0.0 3.0 % 1979 562.7 32.1 65.2 0.0 2.7 1984 1533.0 17.4 39.2 0.1 43.3 1989 2033.0 17.3 33.7 0.2 48.9

資料:中国統計年鑑1990

1:1978年から89年までの絶対数の変化である。

推移を示 した ものである。78年では,全体の3%しかない個人経営小売業の規 模は,89年では993.3万人 とな り,全体の約50%になった。また,個人経営の 小売販売額が全体に占める比率は91年には20%を超え,小売業は農村 と都市部 の余剰労働力を吸収する機能を果た している。

3. 流通活動の増大

経済改革は,重化学工業の発展を目標 とした従来の産業発展政策に変化を も た らした。改革以前 に形成 された中国の産業構造の基本的な特徴は,現在で も 大 きく変わ っていない。 しか しなが ら,流通活動の国民経済に占める位置づけ は高 くなった。

流通活動が経済全体に占めている地位を,産業連関表を通 してみることがで

(商品ベース)」を使 って,輸送通信業 と商業 は国民経済に占めてい る地位を 考察す ることに しよう。

1981年国内総支出額 に占める農林水産業,軽工業,重工業,建設業,輸送 通信業 と商業の比率 は,それぞれ23.4%,31.3%,29.0%,8.1%,2.6%5.6

%である。市場の物的 ・制度的イ ンフラとして重要なのは,金融,輸送通信 と 商業および電力ガス水道などである。およそ国内総支出の3%を占める電力 ・

(9)

中国経済の市場化と流通システム 395 ガスが重工業に分類 されているので,第3次産業は,81年時点では,中国の国 内総支出の11.2%を占めていた。サー ビス業に関す る統計が未整備であるた めに,その他のサービス部門の比率について正確に推定できないが,結論 とし て,市場イ ンフラ部門の活動 は全体の10%以下であるといえる81年時点で は, 輸送通信 と商業が総投入額に占める比率 は1.6%1.8%であ り,総産 出額 に 占める比率 は0,7%2.1%と,国民経済における流通部門の比率 はきわめて 低い。 このような物的生産部門 とイ ンフラ部門の著 しいアンバランスは,生産 部門の内部の循環 と効率を阻害 し,中国の経済発展のボ トルネ ックになってい

る (植草,1991)0

経済発展 は流通活動の増大を もた らす85年の産業連関表が公表 されるまで, 流通部門の比率の増大に関す る正確な分析 はできないが,輸送通信 と商業の時 系列的な変化か らこの点について論 じることができる。

貨物輸送量 は,81年では1.21兆 トンキ ロであ ったが,89年で は,2.59兆 ト ンキロとな り,2倍以上増加 した。郵便通信業務の総営業額 は,81年の19.52 億元か ら89年の64.81億元にな り,3.3倍 にな った。そ して,小売総額 は,81 年の2350億元か ら898101,4億元にな り,およそ3.5倍になったのである。農 莱,工業,建築業,輸送通信 と商業の純生産額の合計で定義される国民収入の 構成比率 とその実質成長率をみて も,中国経済における流通活動, とくに商業 の相対比率が上昇 した とい う結論は得 られ る (4)。運輸通信 と商業の比率 ,78年の13.7%か ら83年の10%に低下 し,89年では14.5%に拡大 した。

各年度の産業別実質成長率を比較 してみると,産業別発展速度の時系列の起 伏が大 きく,産業発展 にも大 きなア ンバランスがある。経済改革の十年間 (79

‑88年)に,工業 と建設業の成長速度 に比べて低いが,中国の流通業は約10% で成長 した。依然 として遅れている中国の流通産業 は,経済発展 につれて今後 もいっそ うの発展が望まれる。

(10)

4 国民収入の構成比率 と平均実質成長率 産業別の構成比率

国民収入総額 農業 工業 建設業 輸送通信 商業 1978 3010億元 32.8 49.4 4.2 3̲9 9.8%

1979 3350 36.6 48.6 3.9 3.6 7.3 1984 5652 39.8 44.5 5.4 3.6 6.7

1川79899 13125 32.1 47.6 5.9 3.9 10.6 国民収入の実質年成長率

7.0% 6.4 8.l l.8 2.5 6.9%

1984 13.6 12.9 14.9 10.7 12.9 11.2 1989 3.3 3.2 6.0 ‑8.5 4.9 7.5 7988平均 9.3 5.7 11.1 13.0 10.1 10.3%

資料 :「中国統計年鑑1990」p.34

4.市場化の進展

経済改革 と経済発展の焦点は,政府 と市場の関係である 「自由市場 (イチ

バ )」や小売市場のはかに,経済改革の過程で,生産財市場,株式市場 と証券 市場,不動産売買,労働力市場 と技術情報市場が形成され,政策的にその発展 が推進 されている。

84年以後,市場取引の範囲が急速に拡大 した。国家の 「指令性計画」による 工業生産額の割合が84年の80%か ら88年 には16.2%に減少 し, 「指導性計画」

の占める割合が42.9%, 「市場調節」部分 は40.9%にな った。90年で は,国 による価格設定の割合が25%程度 とな り,市場価格 と市場調節価格が75% な った (国家計画委員会,1990.,1991)。また,現在では,公定価格の割 合が商品小売29,7%,農産物の買付 け25.2%,工業生産材の44.4%にな って いる (,1992)。マ クロ的な集計数字 は,中国経済における市場取引の範囲 と現状を示す上で役に立つが,産業別の特徴 は必ず しも明確ではない。そ こで,

物資」, 「商品」と工業製品の販売形態 (5)についてみ ると,企業の直

(11)

中国経済の市場化と流通システム

5 年間販売量に占める製造企業 による直接販売の比率

比率 変化 比率 変化

1989 1988 19878987 品目 1989 19888988

板ガラス 726 61.6 58.1 14.5テールコー 821 85.3 ‑3.1

機械機器 69.8 75.6 70.7 ‑1.0皮靴 77̲9 82.3 ‑4,4

セメント 63.1 62.3 52.4 10.7テレビ 76.4 73.0 3.4

ダイヤ内 54.2 43.7 47.2 7.0電球 73.4 66.2. 7.2

ダイヤ外 46.3 35.2 42.1 4,1ラジオ 73.4 739 ‑0.5

トラック 48.6 58.2 57.9 ‑9.3冷蔵庫 73.4 68.3 5.1

自動車 48.2 51.8 53.3 ‑5.1扇風機 73.2 74.5 ‑1.3

ラクター 38.5 47.0 37.l l.4洗剤 7.3.0 68.2 4.7

金属製品 38.5 37.6 31.2 73毛糸 71.3 65.8 5.5

原木 34.6 36.1 37.8、‑3.3カメラ 70.0 76.2 ‑6,1

木材 33.9 36.7 38.4 ‑4.5洗濯機 62.8 75.8‑13.0.

銑鉄 48.5 45.1 12.8 35.6.自転車 62.0 64.0 ‑2.0

鋼材 32.̲0 29.1 22.5 9.5時計 55.5 ㌔67.5‑12.0

石炭 .21.8 20.5 20.0 1.8化繊 48.3 57.Or‑8.7

ガソリン 17.7 17.1 12.6 5.1 ミシン 40.5 55.0‑14.5

397

資料 :「中国統計年鑑1988,1989,1990」。

販比率が商品によって大 きく変化 していることがわかる。原材料などの生産財 流通は依然 として国の計画下におかれているのに対 して,耐久消費財の70% 上は生産企業が市場を通 して販売 している。

物資部の指令性計画物資 「統配物資」の数が572種か ら88年の72種に減 り, 年間総生産量 に占める 「統配物資」の比率 は,た とえば鋼材が89年の42.6%

に,石炭が45.2%になったよ うに,84年以後大幅低下 した。商業部の計画内 商品 「一類商品」が78130種か ら,88年の23種 (指令性計画商品は10種,指 導性計画商品は13種)に減 り,小売販売額の約60%を市場価格の商品が占めて いる。地方 によって計画管理の品種の数 と比率がまちまちである。

経済の市場化を推進するために,価格改革 は最 も大 きな難題である。現在で は,国家指定価格 (赤札),国家指導価格 (青札) と市場調節価格 (緑札)の

3種類の価格体系がある。91年には,石油製品,鋼材,銑鉄など基幹産業の製 品価格,鉄道貨物運賃および都市住民の配給食料 ・食用油の価格引き上げが実

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施 された。88年 の小売物価上昇率が18.5%, 「自由市場」で は31.9%に達 し 。89年 のそれが17.8%,90年 は2.1%,91年 は2.9%に抑制 されたが, その結果,物資 と商品の在庫が増え,国営企業の生産性がマイナスにな り,商 業企業の赤字額が45.5%も拡大 した。915月 に,国営卸売企業の在庫一掃 のために,20%のバーゲ ンセールが実施 された。素材やエネルギーの供給が不 足 しているため,その価格が市場価格 より低 く,二重価格が形成 されている。

88年 には,計画分配の石炭価格を最大20.2%引 き上 げ,計画外石炭 の最高指 導価格 を903月 に100‑250%引 き上 げた。915月か ら政府 は12種 もあ る 鉄鋼価格を,国家価格 と地方価格に整理す るとい うことに乗 り出 した。 この3 年間に,運賃,通信郵便料金,主食,食用油50%か ら250%の価格引 き上げが 実施 され,91年 に砂糖,化繊や綿製品などの生活物資の小売価格 も大幅に値上 げ した。89年末,国家が価格を管理す る品 目 ・品種数 は次の通 りである。(1) 農畜水産物 :国家指定の仕入価格が17種,販売価格が14種 ;国家指導の仕入価 格が11種,販売価格が14種,工場出荷価格が6種である。 (2)軽工業製品 :出 荷価格が53種,販売価格が19種 ;(3)重化学工業製品 :出荷価格が733種,販 売価格が9種 にのぼる。政府部門が管理す る品 目以外 に,地方政府 も価格管理 の責任を持っ。小売物価の上昇を抑制す るために,88年以後,政府部門 と地方 行政の価格管理が非常 に強化 されたのである。 このように,価格体系に対す る 政府部門 と地方行政の介入 は依然 として広範 にわたり,市場 メカニズムによる 調節 は現在の価格体系の複雑 さによって阻害 されている。

81年 までは,中国の卸売流通 システムは,業種 と地域の行政区分別 に3段階 に縦割 りし,全国卸売,広域卸売 と地方卸売 に分 け られた国営企業(採購姑」) の仕入額が全国商品仕入額の90%を占めていた。また,工業製品の仕入販売形 態 は国家の統一買付 ・一手販売を主 としていた。82年か ら,卸売企業 は市など の地方管理 に一本化 し,卸売企業の専門化を行 った。同一の都市 ・業種では, 各行政 レベル直属の卸売公司の重複的な設立が禁止 された。国営卸売企業の制 度改革 ととも,集団企業 と個人の卸売業‑の参入が認可 され,卸売市場の整備 が市場化 ととも進展 した。仕入の形態 も,計画買付,発注買付,選択買付,代

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中国経済の市場化と流通システム 399 理買付 ・代理販売,連合買付 ・連合販売など多様化 した。農産品について も, 国家統一買付 と割当買付が,契約買付,市場買付などに改め られた。さ らに, 市場取引の場 として,89年 に,鋼材 ・金属卸売市場294個を主な260の都市 に 開設 される。88年に,商業部系統の工業製品卸売市場 (貿易中心)が867個, 農産物 (青果物)卸売市場が720個になり,90年以後,食糧卸売市場の整備が 各地に進めている。904月に,一時厳 しく制限 した集団企業 と個人の卸売業 への参入を認める政策転換が見 られた (日中経済協会,1990)

卸売小売段階では,商業部系統の公司を中心に,各業種の国営企業が依然 と して支配的な地位を占めている (6)。生産企業の直接販売 と集団企業 ・個 人経営商業の発展 に伴 って,国営商業の相対地位が低下 した。商業部の企業の 他に,タバ コ総公司や石油化学工業販売公司などを加えた国営商業企業の仕入 額 は,89年 「社会商品」総仕入額の69.1%である。 しか しなが ら,国営商業 企業は,依然 として中央 と地方政府の行政的な規制 と管理を受け,市場環境の 変化に対応できず,経済効率の低下が激 しい。91年の国営商業 ・購販協同組合 の利益率は85%も減少 し,赤字額は45.5%も増えた。

5.市場 のイ ンフラス トラクチ ャー

鉄道,道路,空港,港湾や電話などの 「物的インフラ」の形成は,経済発展 にとって極めて重要である。中国経済のイ ンフラ部門が著 しく立ち遅れている ことは しば しば指摘 されている。市場 メカニズムが機能するために, 「物的イ

6 社会商品」仕入 ・販売 ・在庫総額 に占める国営商業企業の比率 単位 :% 1978 1986 1987 1988 1989 国内仕入 81.7 63.3 56.4 55.5 53.3 国内販売 90.4 79.3 66.6 66;2 62.1 資料 :「中国統計年鑑1988,1989,1990,中国国内市場統計年鑑1990

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ンフラ」, 「人的イ ンフラ」 と 「制度的イ ンフラ」の形成が重要が条件 であ 6)政府や地方行政の重要な役割の一つは,市場のインフラの形成 と効率的 な運営である。

5. 1 市場の物的インフラの整備

物的インフラ」の立ち遅れに関する認識は,政府の政策にも反映 されてい る。エネルギー産業 と運輸通信‑の建設 ・整備 ・改善 に,89年の全国の資本形 成の28.8%と10.7%は投下 されている。909月初の高速道路が開通 し, 自 動車輸送の拡大が期待 される。89年では,運輸 ・通信部門 と商業の労働力比率 は2.59%と5.17%である。 しか しなが ら,金融 ・商業を含む流通産業が国民 経済の重要な部門 として明確に位置づけ られたのは,84年以後である。従来で は,流通活動 を非生産的な活動 として否定的な認識 しか もっていなか ったた め,市場 メカニズムが機能す るための制度的な条件 としての積極的な側面 と物 的生産活動の効率性を高めるための重要性をいっそう明確 にする必要がある。

89年の基本建設投資 と更新改造の業種別比率の推移をみ ると,工業 は61.8

%,運輸通信9.9%,都市建設6.3%,文化教育5.8%の次に,商業,飲食業 と 倉庫業 は2.9%であ り,比率が年 々小 さ くなっている。集団企業による固定資 本投資の比率は約20%である。商業部の基本建設投資 (88年データ)は,店舗 (37%),倉庫 (24.7%),職員宿舎 (ll.1%),流通加工施設 (10.6%)を中 心である。概 して,交通 ・通信,倉庫や店舗など市場の 「物的インフラ」の建 設 ・整備 ・改善の努力がみ られるが,それで も,経済成長の速度には追いづか ず,流通業の発展 は,物的イ ンフラの未整備によって制約 されている。また, インフラ投資がエネルギーと道路通信の 「物的イ ンフラ」に偏 り,金融,商業 や物流など市場の物的イ ンフラの整備はこれか らの課題 として残 されている。

6)インフラス トラクチャーの形成と経済発展の関係,とくに市場の発達とインフラの 関係について,従来の研究は不十分であるといえる。 「人的インフラ」の問題および 中国の社会開発の現状と問題点について,蛋(1992A)が詳しく論じている。

表 3 中国の小売業の所有形態別の労働力比率 小 売 業 国営所有 集団所有 合営所有 個人所有 1 9 7 8 4 4 7 . 4 万人 2 1 . 8 7 5 . 1 0
表 4 国民収入の構成比率 と平均実質成長率 産業別の構成比率 国民収入総額 農業 工業 建設業 輸送通信 商業 1 9 7 8 3 0 1 0 億元 3 2 . 8 4 9

参照

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