母親の養育態度に関する研究−育てられ方との関連− [ PDF
4
0
0
全文
(2) 本人の母親の「 親和的態度」 とは相関係数 0.14 で極弱い相. 本人の母親の職業の有無. 本人の母親の養育態度. 関関係がみられた( P<0.05) 。 本人の母親の「 権威的態度」 とは相関係数 0.16 で極弱い相. 本人の母への思い. 本人の出生順位. 関関係がみられた( P<0.01) 。 本人の養育態度. このことから、本人の「 子ども中心的態度」 は本人の母親の 「 子ども中心的態度」 が弱く影響し、「 親和的態度」 と「 権威的態. 本人の職業の有無. 本人の子どもとの関係. 度」 が極弱く影響していると言える。 戸田は5)祖母の暖かい関わりと父親本人の子ども中心のスタ. 本人のジェンダー意識. 本人の子どもへの期待. イルに中程度の相関があることを見出している。本人の母親の. 3) 分析作業の手順. 「 子ども中心的態度」 は戸田の祖母の暖かい関わりに似ている。. ① 本人の養育態度を因子分析し、本人の養育態度を構成し. 今回の結果から、父親本人にだけでなく、母親本人へも「 子ど も中心的態度」 は本人の母親の「 子ども中心的態度」 が影響し. ている因子を決定する。. ているのかもしれないと言える。. ② 本人の母親の養育態度を因子分析し、本人の母親の養育. ⅱ) 本人の「 権威的態度」 について. 態度を構成している因子を決定する。. 本人の母親の「 子ども中心的態度」 とは相関係数 0.12 で極. ③ 本人の養育態度を従属変数とし、本人の母親の養育態度. 弱い相関関係がみられた( P<0.05) 。. や先行研究などを参考にした8要因を独立変数として重回. 本人の母親の「 親和的態度」 とは有意差がなく、相関はなか. 帰分析を行い関連の強弱を明らかにする。. った。. 3.調査の対象と方法. 本人の母親の「 権威的態度」 とは相関係数 0.17 で極弱い相. 1)調査時期. 関関係がみられた( P<0.01) 。. 2004 年 12 月上旬∼中旬. このことから、本人の「 権威的態度」 は本人の母親の「 親和的. 2)調査対象者. 態度」 とは相関がなく、本人の母親の「 子ども中心的態度」 「 権. 3歳以上の子どもを持ち、かつ幼少時代から中学生時代ま で実母に育てられた子育て中の母親511名. 威的態度」 が極弱く影響していると言える。. 3)手続き. ⅲ) 本人の「 親意識」 について 本人の母親の「 子ども中心的態度」 とは相関係数0.26で弱い. 福岡県下にある3つの幼稚園に調査依頼をした。. 相関関係がみられた( P<0.01) 。. 各幼稚園に調査紙を持参し、クラス担任から子どもを通して. 本人の母親の「 親和的態度」 とは相関係数 0.10 で極弱い相. 母親本人に配布した。1週間後、母親本人からクラス担任に手. 関関係がみられた( P<0.05) 。. 渡してもらった調査紙を回収した。. 本人の母親の「 権威的態度」 とは相関係数 0.16 で極弱い相. 4)倫理的配慮. 関関係がみられた( P<0.01) 。. 調査紙の表紙には研究目的以外に使用しないこと、個人情. このことから、本人の「 親意識」 は本人の母親の「 子ども中心. 報として取り扱わないことを明記し、調査紙は個人が特定でき ないように無記名にした。返信用封筒は必ず封をしてもらい、. 的態度」 が弱く影響し、「 親和的態度」 と「 権威的態度」 が極弱く. クラス担任にも内容がわからないよう配慮した。なお、研究結果. 影響していると言える。. を希望する調査対象者にのみ、住所、氏名の記載をお願いし. 2) 質問項目別にみた本人の養育態度と本人の母親の養育態. た。. 度との関連. 5)回答率・ 回答数. ①社会的規範 ・ 友達とはなかよくするようにしつけしているという態度. 有効回答率は 80%、有効回答数は 410 名であった。. ②親役割への責任. 4.結果および考察. ・ 子どものためならどんな苦労もするという覚悟. 1) 因子分析で得られた本人の養育態度と本人の母親の養育. ・ 時間を割いてでも子どもと接する時間を作っているという. 態度との関連. 態度. ⅰ) 本人の「 子ども中心的態度」 について. ③金銭的価値観. 本人の母親の「 子ども中心的態度」 とは相関係数0.24で弱い. ・ 子どもの教育にお金をかけたいという価値観. 相関関係がみられた( P<0.01) 。. 2.
(3) 係数 0.16 で極弱い相関がみられた( P<0.01) 。このことから、本. ④親としての自覚. 人の「 権威的態度」 は本人の母親の「 権威的態度」 から受け継. ・ 親は子どもの手本になるものだという思い. がれていく可能性が極弱いけれどもあると言える。. ⑤しかり方ほめ方. 本人の「権威的態度」と本人の「子どもへの期待」 は相関数. ・ 口で言ってもわからない時は叩くというしかり方. 0.10 で極弱い相関がみられた( P<0.05) 。このことから、「 子ども. ・ しかるとき子どもの言い分には充分に耳を傾けていると. への期待」 が強ければ、「 権威的態度」 をとる可能性が極弱い. いう態度. けれどもあると言える。. ・ しかるよりほめるようにしているというほめ方. ⅲ) 本人の親意識. ⑥文化的価値観. 本人の「 親意識」 と本人の「 子どもとの関係」 は相関係数 0.35. ・ 幼い頃から生の芸術に触れさせたいという思い. で弱い相関がみられた( P<0.01) 。子どもと親の関係は相互的. ⑦親の厳しさや権威的態度 ・ 幼い頃のしつけは厳しくしたほうがいいという考え方. である。子どもとの関係よければ、親としての自覚が高まってい. ・ 親の言いつけは必ず守らせるようにしているという態度. くのだと考えられる。 本人の「 親意識」 と本人の母親の「 子ども中心的態度」 は相関. ⑧子どもとの関わり方 ・ 子どもの個性を伸ばすようにしているという関わり方. 係数 0.24 で弱い相関がみられた( P<0.05) 。このことから、本人. ・ 習い事に関しての子どもの思い、親の思いのどちらを優. の「 親意識」 は本人の母親の「 子ども中心的態度」 が影響してい る可能性が極弱いけれどもあると言える。また、日本における. 先にするかという考え方 以上の項目が本人の母親の養育態度を通して受け継がれ. 母のイメージは子どものために自己犠牲を厭わない姿とされる. る可能性があることが明らかとなった。. a). 。本人の母親の「 子ども中心的態度」 はその母のイメージその. 3) 本人の養育態度と本人の母親の養育態度を含めた本人に. ものであり、そうありたいと思う気持ちが本人の親意識を高めて. 関する要因との関連. いることが考えられる。. ⅰ) 本人の子ども中心的養育態度. 本人の「 親意識」 と本人の母親の「 権威的態度」 は相関係数. 本人の「 子ども中心的態度」 と本人の「 子どもとの関係」 は相. 0.20 で弱い相関がみられた( P<0.01) 。このことから、本人の母. 関係数 0.25 で弱い相関がみられた( P<0.01) 。. 親が「 権威的態度」 で育てたことによって本人の「 親意識」 が高. 本人の「 子どもとの関係」 が良好であることは子育てを困難に. まっていく可能性が弱いけれどもあると言える。. している原因の一つが除かれるので、子育てが楽とまではい. 本人の「 親意識」 と本人の「 子どもへの期待」 は相関係数 0.13. かないにせよ、子育てを順調にさせる。そういった環境が母親. で極弱い相関がみられた( P<0.01) 。このことから、「 子どもへの. を安定させ、子どものほうにまなざしが向けられるのであろう。. 期待」 が強ければ、「 親意識」 が高まっていく可能性が極弱い. 本人の「 子ども中心的態度」 と本人の母親の「 子ども中心的. けれどもあると言える。. 養育態度」 は相関係数 0.23 の弱い相関がみられた( P<0.01) 。. 5.要約. このことから、本人の「 子ども中心的態度」 は本人の母親の「 子. ① 本人の養育態度は「 子ども中心的態度」 「 権威的態度」 「 親. ども中心的態度」 から受け継がれていく可能性が弱いけれども. 意識」 の3つに分類できた。. あると言える。. ② 本人の母親の養育態度は「 子ども中心的態度」 「 親和的態. 本人の「 子ども中心的態度」 と本人の母親の「 権威的態度」 は. 度」 「 権威的態度」 」 の3つに分類できた。. 相関係数0.16で極弱い相関がみられた( P<0.01) 。このことから、. ③本人の「 子ども中心的態度」 と本人の「 親意識」 に中程度の相. 本人が本人の母親から権威的に育てられたことで本人は逆の. 関があることが明らかとなった。. 概念である「 子ども中心的態度」 をとっている可能性が極弱い. ④ 友達とはなかよくするようにしつけしているという社会的規. けれどもあると言える。. 範、子どものためならどんな苦労もするという覚悟や時間を割. 本人の「子ども中心的態度」と本人の「母への思い」 は相関. いてでも子どもと接する時間を作っているという親役割への責. 係数 0.14 で極弱い相関がみられた( P<0.05) 。このことから、母. 任、子どもの教育にお金をかけたいという金銭的価値観、親は. 親への感謝や尊敬といった思いが強ければ、「 子ども中心的. 子どもの手本になるものだという親としての自覚、口で言っても. 態度」 をとる可能性が極弱いけれどもあると言える。. わからない時は叩くというしかり方、しかるとき子どもの言い分. ⅱ) 本人の権威的養育態度. には充分に耳を傾けているという態度、しかるよりほめるように. 本人の「 権威的態度」 と本人の母親の「 権威的態度」 は相関. しているというほめ方、幼い頃から生の芸術に触れさせたいと. 3.
(4) いう文化的価値観、幼い頃のしつけは厳しくしたほうがいいと. しいことである。よりよく育児をするためには子育て支援だけ. いう考え方や親の言いつけは必ず守らせるようにしているとい. でなく、子育て中の母親の行動や態度を理解することも必要. う親の厳しさや権威的態度、子どもの個性を伸ばすようにして. なことと考える。そういった意味で本研究が役に立つことを. いるという関わり方や習い事に関しての子どもの思い、親の思. う。 7.本研究の限界. いのどちらを優先にするかという考え方が本人の母親の養育. 本研究は母親を対象とした研究であったが子育ては母親. 態度を通して受け継がれる可能性が示唆された。 ⑤ 本人の「 子ども中心的態度」 は本人の母親が「 こども中心的. のみが担うもの、また母親のみに責任があるという見地に立. 態度」 や「 権威的態度」 で本人を育てたことによって、本人が親. ったものではなく、今回は対象を母親に絞ったに過ぎない。. になったときに、「 子ども中心的態度」 をとることが明らかになっ. 本研究は調査を幼稚園に依頼した関係上、対象となる母. た。また、本人の「 子どもとの関係」 が良好であったり、本人の. 親は専業主婦が多く、現代の母親像を表していると言いがた. 「 母への思い」 が強ければ、「 子ども中心的態度」 をとらせること. いというところに本研究の限界がある。 本研究は本人に本人の母親のことを思い出して書いても. が明らかになった。 ⑥ 本人の「 権威的態度」 は本人の母親が「 権威的態度」 で本. らうという想起法にて本人の母親のことを調査する方法を取. 人を育てたことによって、本人が親になったときに、「 権威的態. った。本人の母親の養育態度として調査したものは本人の幼. 度」 をとる明らかになった。また、本人の「 子どもへの期待」 が強. 少時代から中学校時代ごろの本人の記憶である。記憶は時. ければ、「 権威的態度」 をとることが明らかになった。. 間とともに変化するので本人の母親の養育態度に関しては. ⑦ 本人の「 親意識」 は本人の母親が「 子ども中心的態度」 や. 厳密さにかけるところに本研究の限界がある。 8.今後の課題. 「 権威的態度」 で本人を育てたことによって、本人が親になった. 現代の母親の特徴として、子どもを私物化しているとか、親. ときに、「 親意識」 が高まることが明らかになった。また、本人の 「 子どもとの関係」 が良好であったり、本人の「 子どもへの期待」. 子が友達感覚であるなどと言われている。今回の研究ではそ. が強ければ、「 親意識」 が高まることが明らかになった。. のような養育態度を想定して設問を作ったが、全く表面上には. 6.結論. 現れなかった。このことは、設問が一つだったことによる可能性 がある。今後はこのことを明らかにしていくつもりである。. 子育てをしている母親とその育児の手本であろうとされる. 本研究では親がとる態度のうちで、子どもに対しての厳しさ. 実母の間には、養育態度に関してどのような関連があるのか. が根底にあり、それを親という立場で表現されるものを権威的. を調査分析をすることが本研究の目的であった。 本研究で明らかになったことは、強い相関関係はなかった. 態度の定義とした。しかし、船橋c)は親が子に対して権力を持. が、子育てをしている母親の養育態度は実母の養育態度を. つことは両義的であると述べている。本研究の定義自体に含ま. 通して、受け継がれるものがあることが示唆された。また、子. れる厳しさの程度が曖昧であった可能性もある。今後は必要以. 育てをしている母親の養育態度と実母の職業の有無、本人. 上の厳しさと親として必要な厳しさを明確に分けて考えていく. の職業の有無、本人の出生順位、本人のジェンダー意識と. 必要がある。. の関連は本研究ではみられなかった。. 本研究では本人の「 子ども中心的態度」 と本人の「 親意識」 に. この結論は女性が母親となったときの養育態度の責任が. 相関係数 0.41 の中程度の相関がみられた( P<0.01) ものの、そ. 本人の母親にあるということを意味するものではない。ただ、. の2つの関係についての因果関係が明確ではなかった。今後. 母親役割のモデルになる可能性が実母にはあり、実母の養. はこの点についても明らかにしていく必要がある. 育態度は母親の養育態度に影響を及ぼす要因の一つに過. 9.引用・ 主要参考文献. ぎないのである。. a)刀根洋子 他 2000 『 ジェンダーパーソナリティと養育体験 c ). 現代の子育ての問題は幅広い。渡辺 が抱えるような心理. 世代間伝達』 母性衛生 vol.41 PP.429∼437. 的問題も含んだ事例になればなるほど親子関係は複雑にな b). っていくであろう。渡辺 は親の未解決の葛藤が知らぬ間に. b)渡辺久子. 2000 『 母子臨床と世代間伝達』. P.26. c)船橋恵子. 1999 『 <子育ち>の社会的支援と家族』 家族社会学研究 No.11 PP.30. 子どもに伝わることを世代間伝達と定義しているが、このよう. ・ 神原文子 他 2000 『 教育期の子育てと親子関係』. な心理的問題を含む事例は個別の解決策が必要であろう。. ミネルヴァ書房. しかし、社会の問題として子育てを見ていく立場をとれば、子 ・ 大日向雅美. 育て中の母親がよりよく育児をすることが社会にとっても望ま. 4. 1988 『 母性の研究』. 川島書店.
(5)
関連したドキュメント
ファミリーホームとは家庭に問題がある子ど
□一時保護の利用が年間延べ 50 日以上の施設 (53.6%). □一時保護の利用が年間延べ 400 日以上の施設
英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき
原田マハの小説「生きるぼくら」
また自分で育てようとした母親達にとっても、女性が働く職場が限られていた当時の
親子で美容院にい くことが念願の夢 だった母。スタッフ とのふれあいや、心 遣いが嬉しくて、涙 が溢れて止まらな
里親委託…里親とは、さまざまな事情で家庭で育てられない子どもを、自分の家庭に
遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば