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廃校施設利活用の実態と周辺地域に与える影響

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Academic year: 2021

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第 1 章 はじめに

1.1

背景と目的

少子化、過疎化、市町村合併などにより、全 国的に学校の統廃合が進んでいる。近年では毎 年約

500

校が廃校となり、その約4分の1の廃 校活用されていない。それにより、いくつかの 問題が生じる。

まず、廃校が未活用でも維持管理費は発生す るため、行財政を圧迫する要因となることであ る。次に、廃校が廃墟化することによる景観・

治安の悪化が懸念される。適正な管理が行われ ないと、校庭の土埃や雑草などが周辺に悪影響 を及ぼすこともある。

上記のような問題の解決策の検討を目的と し、本研究ではまず廃校による外部性を分析す るとともに、事例研究を行う。調査結果の考察 を通して、廃校の効果的・効率的な活用方法や 適正な管理方法、活用を促進するための施策に ついて論ずる。

第 2 章 廃校施設利活用の状況

2.1 廃校施設利活用の状況

2.1.1

全国における廃校施設利活用の状況

「平成

30

年度廃校施設等活用状況実態調査

(以下、実態調査)」によると、2002年度から

2017

年度に発生した廃校の数は

7,583

校 (小 学校:5,005校、中学校:1,484校、高等学校

1,094

校)である。また、廃校のうち、施設

が現存している廃校は

6,580

校で、

8

割以上の 廃校が取り壊されずに残存している。そして、

施設が現存している廃校のうち、約

25%が活

用されておらず、その多くは活用の用途が決ま っていない。

2.1.2 東京都及び栃木県における廃校施設利

活用に関するアンケート調査

本研究では、公立小中学校の廃校施設利活用 状況等を把握するため、調査対象を

2004

年か ら

2018

年の間に廃校となった公立小中学校と し、東京都及び栃木県の市区町村に対してアン ケート調査を行った。

2.1.3 東京都及び栃木県における廃校施設利

活用の状況

実施した自治体アンケート調査結果による と、対象期間である

2004

年から

2018

年の間 に東京都で発生した廃校は

216

校、栃木県で は

112

校だった。

また、アンケート調査の結果より、廃校の うち未活用施設の割合は、東京都では校舎が

10.8%、体育館が 14.0%だったのに対し、栃

木県では校舎が

29.9%、体育館では 20.9%で

あり、未活用の割合は栃木県の方が高い。

2.3

廃校施設に関わる課題

2.3.1 遊休資産の有効活用・適正管理の必要性

と問題

廃校という遊休資産を有効かつ効率的に管 理・活用する必要がある。また、経済学的な観 点からも、廃校があることで負の外部性が生じ る場合には、早期の活用を目指すとともに負の

廃校施設利活用の実態と周辺地域に与える影響

-東京都と栃木県を事例として-

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム

MJU19704

川端 さやか

■期間 令和元年

11

29

日~12

29

■対象 東京都全

62

自治体、栃木県全

25

自治体

■回収率 東京都

38

自治体(61.3%)

栃木県

22

自治体(88%)

■内容 廃校施設の利活用状況、活用時期や活用 用途のほか、廃校に関する苦情や課題等

(2)

2

外部性を抑制すべきだと考える。しかし、その ためには、維持管理費や転用のための改修費用 等の財政負担が伴うことが課題となる。

そのため、本研究では、廃校施設の外部性に ついて分析するとともに、維持管理や活用に係 る費用等の課題についても事例研究を通し分 析・考察することとする。

第 3 章 廃校施設が周辺地価に与える影響の 実証分析

3.1 検証する仮説

① 廃校が近くに存在すると、周辺の地価を下 落させる。

② 廃校周辺の用途地域によって地価への影響 が異なる。

③ 廃校の未活用期間が長いほど、外部性が大 きい。

④ 廃校の活用形態(公共か民間か)により地 価への影響が異なる。

3.2 実証分析

3.2.1 実証分析1(プーリング回帰モデル・

学校と廃校の外部性)

[推計式1]

Ln 地価 = +β1(学校ダミー)

+β2(廃校後ダミー)

+β3(Ln 東京駅までの距離)

+β4(最寄駅までの距離)

+β5-17(用途地域ダミー)

+β18-32(年次ダミー)

+β33-437(年次ダミー×市区町村ダミー)

+ 定数項 + ε(誤差項)

3.2.2 実証分析2(固定効果モデル・廃校の外

部性と未活用期間の関係)

[推計式2]

Ln 地価 = +β1(廃校後ダミー)

+β2(廃校後ダミー×未活用年数)

+β3-17(年次ダミー(2004-2018))

+β18-422(年次ダミー×市区町村ダミー)

+ 定数項 + ε(誤差項)

3.2.3 実証分析3(固定効果モデル・用途区分

による廃校の外部性の違い)

[推計式3]

Ln 地価 = +β1(廃校後ダミー×住居系地域ダミー)

+β2(廃校後ダミー×商業系地域ダミー)

+β3(廃校後ダミー×工業系地域ダミー)

+β4(廃校後ダミー×用途地域無ダミー)

+β5-19(年次ダミー(2004-2018))

+β20-424(年次ダミー×市区町村ダミー)

+ 定数項 + ε(誤差項)

3.2.4 実証分析4(固定効果モデル・活用用途

による廃校の外部性の違い)

[推計式4]

Ln 地価 = +β1(廃校後ダミー)

+β2(廃校後ダミー×公共活用ダミー)

+β3(廃校後ダミー×民間活用ダミー)

+β4-18(年次ダミー(2004-2018))

+β19-423(年次ダミー×市区町村ダミー)

+ 定数項 + ε(誤差項)

(3)

3 3.3 実証分析の結果

表1 実証分析1の結果

表2 実証分析2の結果

表3 実証分析3の結果

表4 実証分析4の結果

3.4 考察

実証分析1より、東京都、栃木県ともに、廃 校の負の外部性が明らかになった。東京都では、

現役の学校にも負の外部性があるが、廃校によ る負の影響の方がそれを上回っている。

ただし、実証分析1はプーリング回帰モデル による分析のため、内生性の問題が取り除きき れていない可能性がある。

実証分析2から4は、栃木県において有意な 結果が得られなかった。

実証分析2より、東京都で廃校の負の外部性 が明らかになったが、未活用年数による影響は 有意ではなかった。これは、平均未活用年数が 約

1.4

年と短く、多くの廃校が

2

年以内に活用 されているためだと考えられる。

実証分析3より、東京都の住居系地域におけ る廃校の負の外部性が明らかになった。住居系 地域は、他の用途区分と比較して居住者の割合、

密度が高いため、廃校による影響が大きいと考 えられる。

実証分析4より、未活用のままの廃校による 負の外部性、公共施設として活用された場合の 負の外部性、そして、民間施設として活用され た場合の正の外部性が明らかになった。公共施 設の具体的な用途は保育施設、地域コミュニテ ィ施設、仮校舎等であるのに対し、民間施設の 具体的な用途は、大学、文化施設(美術館等)

等であり、活用用途が外部性に影響していると 考えられる。

また、廃校跡地の活用方法は行政の意思決定 によるため、当該土地の市場性がセレクショ ン・バイアスを生んでいる可能性があるため、

実証分析4の結果をもって、民間活用を推し進 めるべきと安易に結論付けることはできない。

第 4 章 廃校施設利活用の事例研究

4.1 東京都 A

【現状】

A

区では、区で定める学校再編計画に基づき、

過去

15

年間で

21

校が廃校となった。

・2011 年度に廃校となった

B

小学校跡地の維 持管理に際して、除草・樹木剪定費、電気料金、

消防設備保守等の費用が年間約

500

万円(2018 年度実績)発生している。

係数 標準誤差 係数 標準誤差 学校ダミー -0.0441*** 0.00577 -0.0096 0.00754 廃校後ダミー -0.0553** 0.0224 -0.110*** 0.0372 Ln東京駅までの距離 -0.372*** 0.00806 - - 最寄駅までの距離 -0.000251*** 4.11E-06 -0.0000578*** 2.26E-06 用途地域ダミー

年次ダミー

年次ダミー×市区町村ダミー

定数項 16.02*** 0.107 10.88*** 0.0366

観測数

自由度修正済み決定係数

変数名 東京都 栃木県

26,397 0.876 省略 省略 省略

省略 省略 省略

6,642 0.747

係数 標準誤差 係数 標準誤差 廃校後ダミー -0.00884** -0.00357 -0.0165 0.0161 廃校後ダミー×未活用年数ダミー 0.0002 0.000801 0.0000432 0.00168 年次ダミー

年次ダミー×市町村ダミー

定数項 12.87*** 0.000993 10.62*** 0.00268

観測数 修正済み決定係数

省略 省略

省略 省略

変数名 東京都 栃木県

27,633 6,684

0.778 0.904

係数 標準誤差 係数 標準誤差 廃校ダミー×住居地域ダミー -0.0115** 0.00501 0.00966 0.0262 廃校後ダミー×商業地域ダミー -0.00451 0.00472 -0.0300 0.0189 廃校後ダミー×工業地域ダミー -0.0203 0.0126 - - 廃校後ダミー×用途地域なしダミー -0.00178 0.0217 - - 年次ダミー

年次ダミー×市町村ダミー

定数項 12.87*** 0.000993 10.62*** 0.00268

観測数 修正済み決定係数

省略 省略

栃木県

6,684 0.904

省略 省略

変数名 東京都

27,633 0.778

係数 標準誤差 係数 標準誤差 廃校後ダミー -0.00700* 0.00381 -0.0205 0.0167 廃校後ダミー×公共活用ダミー -0.0103* 0.00549 0.0196 0.0318 廃校後ダミー×民間活用ダミー 0.0306*** 0.00614 - - 年次ダミー

年次ダミー×市町村ダミー

定数項 12.87*** 0.000993 10.62*** 0.00268

観測数 修正済み決定係数

27,569 0.778

栃木県

6,684 0.904

省略 省略

省略 省略

変数名 東京都

(4)

4

【跡地活用に向けた対応】

・2019年

10

月に、B小学校跡地に医療施設を 誘致するため、プロポーザル方式の公募を実施。

数年後開設予定。

・公募の条件として、土地を約

1,700

万円/月 で貸付すること、解体・除却費に区から補助金 交付予定(補助率未定)であることを定めた。

4.2 栃木県 C

【現状】

・C市は、人口約

2

5

千人の自治体で、過去

15

年間に

9

校が廃校となった。

・D小学校の売却額は約

8,400

万円(土地・建 物)、E小学校は約

4,100

万円(土地)、F小学 校も売却に向けて交渉を進めている。

【跡地活用に向けた対応】

・廃校になる前から活用方法の検討を開始し、

買取り希望事業者への情報提供に対応した。

・開発行為の許可手続きのため民間事業者が 県へのヒアリングを行う際、自治体職員が随行、

また、売却予定施設周辺地域での事業者による 説明会を自治体が調整する等、民間事業者のフ ォローアップを実施した。

・同市では、市内の新規創業事業者等の固定資 産税や用地取得等に対する奨励金等の支援を 実施しており、当該制度が一部の民間事業者の 初期費用軽減の一助となった。

第 5 章 まとめ

5.1 研究結果の考察

本研究によって、東京都、栃木県ともに、廃 校施設には負の外部性があることが実証によ り明らかとなった。廃校施設の早期活用や適正 な管理により、負の外部性を抑制する必要があ る。また、東京都では、廃校を民間活用すると 正の外部性が生じ、公共活用すると負の外部性

が生じることが明らかになったが、前述のよう に、この結果をもって民間活用を推し進めるべ きとは言えない。

そして、事例研究を通し、廃校施設の民間活 用を目指す際には、行政と民間事業者の最適な 役割・費用負担を検討し、民間事業者支援する ことが重要であることがわかった。

5.2 政策提言

①外部性を考慮した活用意志決定

廃校の活用方法を検討する際には、廃校の維 持管理費用や解体・改修費、貸付・売却収入等 等の目に見える費用・便益について考慮するだ けでなく、廃校施設の外部性にも考慮し活用用 途を決定するべきである。

②官民の役割分担

廃校施設の活用を進めるためには、自治体に よる民間事業者の支援策が不可欠である。

廃校活用に関するマニュアル・事例集の作成 等による情報集約・情報発信の実施や、民間事 業者が廃校施設を活用する際に、自治体(市町 村)が地域や都道府県の橋渡し役となり、説明 会実施等への協力や必要な行政手続き等の支 援等を行うべきである。さらに、民間事業者に 対する支援として、自治体による補助金や固定 資産税減免等の支援スキームを整備すること も重要である。

③廃校の適正管理・活用による負の外部性の抑制 廃校施設の植裁管理や警備等の適正な管理 を実施し、負の外部性を抑制することが必要で ある。維持管理費を抑制するため、緑地事例等 を応用した住民参加型の施設整備・管理を提案 する。住民参加型の手法を応用し、廃校施設の 活用・維持管理を行うことで、費用を抑制でき るだけでなく、地域に根ざした事業に繋がると 考える。

参照

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