2020
年
1月
30日
2019年度聖路加国際大学大学院修士論文
18MN019
山本 くるみ
急性期病棟で働くスタッフ看護師の 夜勤帯リーダーへの役割移行
Role Transition of Staff Nurses Working in Acute Hospital Wards to Nightshift Leaders.
論文要旨
【目的】スタッフ看護師の立場で毎回構成員が変わるチームを率い、夜間の病棟の責任を 担う夜勤帯リーダー(以下夜勤L)役割の獲得は、看護職としての成長の節目と考えられ るが、その役割移行の様相は明らかになっていない。本研究の目的は、看護職としての成 長・発達を支援する看護管理への示唆を得る為に、急性期病棟に勤務する看護師の夜勤L 役割移行を記述することである。文献検討をもとに、役割移行は①夜勤L役割認識、②夜 勤L役割遂行能力に対する自己評価、③自己概念、④夜勤L役割移行への影響要因、の相 互作用により進むととらえ、概念枠組みとした。
【方法】半構造化面接を用いた質的記述的研究である。首都圏の病院で交代制勤務を行 い、夜勤L経験が通算5年以上で、夜勤L役割を遂行できると本人と所属部署の看護管理 者が評価するスタッフ看護師に面接調査を実施した。夜勤Lに初めて任命された時から、
十分に役割遂行可能になった時までの、①~③の変化および④について質問した。個別分 析で、逐語録から移行理論に基づき入口・通路・出口の段階を特定し、段階毎に質的帰納 的に分析し役割移行の様相を記述した。全事例の統合分析で、役割移行を構成する要素を 見出し、夜勤L役割移行の様相を記述した。
【結果】研究参加者は女性6名、夜勤L経験年数は平均12.6年、役割移行の所要年数は平 均2.3年であった。
夜勤L役割移行を構成する要素は、以下のようであった。①のうち、夜勤L役割そのも のに対する認識には、7カテゴリが生成され、役割遂行に必要な力に関する認識、L役割に 関する認識、仕事の軸に関する認識の主要因子を構成した。役割を引き受けることに関する 認識には、【役割への接近】と【役割からの回避】が生成された。②は、5カテゴリが生成 され、役割遂行に必要な力に関する自己評価と、L役割に対する自己評価の主要因子を構成 した。③のうち、アイデンティティと自己イメージの枠組みには、【肯定的な自己知覚】と
【否定的な自己知覚】のカテゴリが生成された。夜勤 L が行う役割遂行に対する対処とし て、【遂行能力の評価基準の探索】を含む4カテゴリが生成された。
入口は期待や不安と、大まかな役割認識を抱き、役割遂行に意気込む段階であった。通路 初期は急速に発達する役割認識と、未熟な役割遂行能力との差を感じる段階であった。通路 中期~後期は、役割遂行能力が向上し、特に協働する力が発達する段階であった。出口はL としてほとんどの状況に対応できるようになる段階であった。
【結論】夜勤 L の役割移行は、人命に関わる意思決定や、他者を巻き込む業務遂行に困難 さと重責を感じ、自分の未熟さを痛感する経験を乗り越えて、役割に伴う責任を引き受け、
役割遂行能力を獲得していくプロセスであることが明らかになった。本研究はスタッフ看 護師と看護管理者が夜勤L役割移行の経験を理解するための基礎資料となると考える。