エコミュージアムにおける口伝による文化継承に関する研究 ―長野県阿智村全村博物館を例として―
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(2) 3.全村博物館構想の現状と参加者意識. る単語が多く出てきたことがわかる。また「一緒」と. 3-1.調査概要. いう言葉が上位に入っていることも特徴的である。全. 行政と阿智村全村博物館構想参加者それぞれの視点. 村博活動を語る上で、 「人」と「一緒」に行うことが重. から全村博物館構想の現状とその活動に関わる自分史. 要という文脈で多く語られた単語である。. をヒアリングした。ヒアリング内容をまとめ、またテ. また、 「阿智」 「清内路」という固有名詞も上位に入. ※1. キストマイニング. による文脈分析を行う。. っている。さらに「歴史」も多く出てきていることか. (1)2018 年 6 月 12 日. ら、自身の活動について語る際に特に興味のある地域. 対象者:阿智村役場協働活動推進課職員 O 氏. や興味のある分野について語られたことがわかる。. (2)2018 年 7 月 22 日 対象者:全村博物館活動参 加者7名(敬称略) 3-2.調査結果まとめ ヒアリングの結果、行政と住民がともに後継者問題 や次の世代への継承に関して課題を感じていることが わかった。そしてそのための対応策として、小・中学 生への文化継承であったり、 より広く活動を周知し 『面 白い』と多くの人に思ってもらえる活動をすべきだと いう意見が見られた。それらの活動を起こしやすくす 図 1 頻度分析(全村博参加者). るためにはきちんと依頼を受けられる窓口やどのよう な形態で文化継承を行うかなど、体制作りを固める必. (2)ネットワーク分析. 要がある。. 図 2 のネットワーク分析では、丸の大きさは頻度の. 行政が担うことができるのは意見の吸い上げのみで. 量、矢印の太さは関連の強さを表す。. あり、全村博物館構想は住民自身の意思決定で動くべ きであるとの思いは行政と住民で共通しているため、 足並みをそろえ体制作りを固めるためには、阿智村の 各地域で行われている活動同士が連携し互いに情報交 換を行うことが必要であると感じた。住民の中からそ の取りまとめ役が出てくることが理想ではあるが、現 状では全員が遠慮しあって二の足を踏んでいる状態で あると思われる。 とはいえ O 氏が全村博物館構想の担当になってか 図 2 ネットワーク分析. ら定期的に行われるようになった連絡会の存在が、各. 地域の連携に今後繋がっていくのではないかと考えら. 「人」 の丸が大きく矢印がたくさん向いている他、 「話」. れる。さらに全村博だよりやマップ、パンフレットが. という言葉にも多く矢印が向かっていることがわかる。. 村に増えて行くことで若い人を取り込むことも、活動. 「神様」 「仏教」など、日本人の古くからある信仰に根. の勢いづけには重要である。. ざした言い伝え、 「いわれ」について住民の興味・関心. 3-3.テキストマイニングによる分析. があることがわかる。. (1)頻度分析(単語). (3)評判分析. 頻出単語のうち上位 20 語を図 1 に示した。なお、. ここでは、評判分析※2 を用い、全村博物館構想参加. 頻度とは全体の中での単語の登場回数を指す。 特に 「人」 者のヒアリングを行う中で 頻出する単語にどのよう が最も多く登場した言葉となった。また、 「村」 「地域」. な印象を持っているかに関して調査した。文脈の中で. 「人たち」 「自分たち」など、コミュニティーを示唆す. 好評・不評と解釈できる表現(以降それぞれ、 「好評語」.
(3) 「不評語」 )をその回数とともに抽出し分析した。図 3. っている。また、 「キミオさん」や「家内」など、特定. はそれをネットワーク図にしたものである。. の人物を示す単語が 2 単語見られ、さらに 20 位以外 のところでも人物名の固有名詞が多く見られた。 また、 「山の家」という単語は見られないものの「本 宅」という単語が上位となっている。これは、お話を 伺った場所自体が山の家であったために「ここ」 「この 家」などの表現で「山の家」が語られたからであると 考えられる。とはいえ、 「本宅」という単語は二拠点居 住という独自の文化を表す特徴的な表現であるといえ る。また頻度の高い単語の一つに「花」がある。対象 者は現在花の出荷で生計を立てているため、生業であ る花作りに絡めた話も多く見られた。. 図 3 評判分析ネットワーク図. 図 3 について、 「人」に対し多くの矢印が集まって いるが、中でも「好き」という言葉からの矢印が一番 印象が強い。阿智村の住民にとって全村博物館構想は 「好き」という気持ちがあるからこそ行う活動である という認識がわかる。 また、 「活動」に対して「面白い」 「楽しい」 「新しい」 「気軽」などの矢印が伸びている中、 「重要」という言 葉との繋がりが最も強いことがわかる。全村博活動を 行う中で、興味の有無だけではなく、特に歴史的、文 化的に重要度の高いものや消失可能性が高いものに関. 図 4 頻度分析(語り部). して積極的に活動を行なっていると考えられる。 また、. (2)ネットワーク分析. 「話」に対して「貴重」という表現が繋がっているこ. ネットワーク分析結果を図 5 に示す。. とも印象的である。. ⅰ)場所性・歴史. また、 「きれい」という表現から「星」 「村」に太い. 左上の話題は、主に出作り小屋の建物としての特性. 矢印があるところから、全村博物館構想に関わる人の. に関する話題である。建物としての特性を説明するた. 村やその資源への愛着がうかがえる。. めに、その歴史に遡って話題を広げている。 「タバコ」. 4.テキストマイニングによる口伝の分析. の「火乾燥」をしていたところ、 「養蚕」が「流行った」. 4-1. 調査概要. ため「慌てて」 「蚕室」に「改造」したという話題展開. 2016 年 9 月 17 日、阿智村下清内路の出作り小屋に. が行われている。. て、当時出作りに関する語り部活動をされていた S 氏. ⅱ)自身と家族. に語り部として、出づくりの歴史や生活についてお話. また、左下の「来る」という言葉は、出作り小屋に. を伺った。その文字起こしを行い、テキストマイニン. 里の家から「来る」という文脈で最も多く用いられて. グにてその頻出語や文脈を抽出・分析し、その特性を. いる。それに対し繋がりの深い言葉として「疲れる」. 探る。. が紐付いていることから、自身のライフスタイルや体. 4-2.テキストマイニングによる分析. 調の変化によって山の家に来ることが難しくなってき. (1)頻度分析(単語). ていることがわかる。また、お話の中に「家内」が病. 頻出単語のうち上位 20 語を図 4 に示した。 「人」 「み. 気をした、という言葉が数回見られた。それゆえに、. んな」という、 “人”に関わる単語が上位 2 単語とな. 山の家の環境では「家内」が「疲れ」てしまう、とい.
(4) う文脈で語られていた。口伝の中で、自身や家族のラ. 5.結論. イフスタイルや生活のバックグラウンドにも言及して. 現状では、録音など、映像や肉声による文化継承の. いることがわかる。. 手段を取っている団体が存在しない。さらに【ⅰい C. ⅲ)地域との繋がり. 型】の語り部は、特に出作りに関しては一名しかおら. 「サダオさん」-「骨折る」、「税金」-「集める」な. ず、体調の変化などからいずれは語り部活動を行うこ. どの、 地域との繋がりに言及する話題も多く見られた。. とは困難になると思われる。また、 【ⅱい C 型】の語. また、右上のまとまりでも、 「組合」という言葉も出作. り部が現在多くを占めるものの、その活動を今後に繋. りの使い方の話題と結びついている。. げることができるかが課題となっている。まだ取られ. ⅳ)外部との繋がり. ていない口伝の形としては【ⅰろ C 型】 【ⅱろ C 型】. 「NHK」と「出作り」という単語が紐付いている。こ. などが考えられ、特に実際に文化を経験した語り部が. のほか、新聞の取材が頻繁にやってくるなど、マスメ. 現状している今、 【ⅰろ C 型】の口伝を残すことが重. ディアとの繋がりに関する話題も多く見られた。. 要であると考える。 また、ヒアリング内容や語り部のお話のテキストマ イニング分析から、住民同士の繋がりが非常に強いこ とが明らかになった。全村博に現在関わっている方の 中では住民が主体性を持って結束を強め、次世代に文 化を残していきたいという共通認識があることがわか る。また、現在は阿智村の中で各地域に別々の活動を 行なっているが、互いに情報交換をしあいたいという 声も多く見られた。. 図 5 ネットワーク分析(語り部). (4)好評語・不評語ネットワーク 図 6 より、 「学校」や「組合」 「まとまり」 などの 地域コミュニティを示す言葉に対しての評価が 「多い」 「良い」など高いことがわかる。 また、 「良い」—「気候」の矢印の太さから、地域の 気候環境を高く評価していることがわかる。自身の住 んでいる地域に根ざした農業という生業を持っている ため、気候環境は重要な要素であることがわかる。. 図 6 評価分析ネットワーク図(語り部). [注釈] ※1 テキストマイニングとは、テキストデータを文字 や単語、フレーズ等の単位に分解し、これらの関係を 定量的に分析する手法である(金,2009) 。テキストデ ータの持つ曖昧さを処理することに限界がある一方で、 統計的な分析という視点からの新たな発見の可能性が あるとされている(藤井ら,2005)。従来、定性的な 手法でしか分析を成し得なかったテキストデータに対 し、言葉の出現頻度や言葉同士の関連を数量化し客観 的な分析結果を示すことができるという点が大きな特 徴と言える。 ※2 評判分析では予めテキストマイニングスタジオが 用意した評価を与える単語(何かを良いイメージまた は悪いイメージで語る時に使用する単語)の一覧を使 用しそれらの単語により評価を与えられている単語を 抽出する。 [参考文献] 1.権藤史子 大原一興 藤岡泰寛「エコミュージアムの 住民参加と次世代への継承についての研究—長野県下 伊那郡阿智村の全村博物館構想を例にして—」2012 年 修士論文 2.和田千緩 大原一興 藤岡泰寛「出作り文化における 生活形態の変遷に関する考察—長野県下伊那郡阿智村 清内路(旧清内路村)を例にして—」2015 年 3.金明哲(2009)『テキストデータの統計科学入門』岩 波書店 4.藤井美和,李政元,小杉孝司(2005)『福祉・心理・看護 のテキストマイニング入門』中央法規出版 [謝辞] 本研究におけるヒアリング調査にご協力いただいた阿 智村協働活動推進課の大石氏、住民の皆様にこの場を お借りしてお礼申し上げます。.
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