大気中の放射性塵埃の半減期についての一考察
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(2) 北海道教育大学紀要(自然科学編)第68巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Natural Sciences)Vol. 68. No.2. 平 成 30 年 2 月 February, 2018. 大気中の放射性塵埃の半減期についての一考察 柚 木 朋 也 北海道教育大学札幌校理科教育研究室. Consideration on the Half-Life of Radioactive Dust in the Atmosphere YUNOKI Tomoya Department of Education, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 この研究の目的は,大気中の放射性塵埃の半減期について考察することである。大気中のほ こりに含まれている主な放射線源は,ラドンとその娘核種であると云われている。大気中のほ こりを採取し,放射線源として使用する場合,見かけ上の半減期は約40分であることが知られ ている。しかし,222Rnの半減期は3.824日である。本研究では,222Rnの娘核種などを考慮した シミュレーションを行うことにより,大気中のほこりの見かけ上の半減期が約40分になる原因 について考察した。その結果,ほこりの放射線源は222Rnが主要因ではなく,218Poとその娘核 種である214Pb,214Bi,214Poが主要因であり,222Rnが予想される存在の約1%存在する(娘核種 の218Po,214Pb,214Bi,214Poの合計と同じ)と仮定した場合,ほぼ実験値と一致することが明ら かになった。 [キーワード]Bateman方程式,霧箱,半減期,放射線,ほこり,ラドン. Ⅰ はじめに. は約40分であることが知られている1)。しかし, 222. Rnの半減期は3.824日であり,娘核種の存在が. 放射線に関する学習では,霧箱を使用して放射. 影響していると考えられる。本研究では,222Rn. 線の飛跡を直接観察することが効果的であると考. の娘核種などを考慮したシミュレーションを行う. えられている。霧箱を使用して放射線の飛跡を観. ことにより,大気中のほこりの見かけ上の半減期. 察する場合,大気中のほこりを集めて線源として. が約40分になる原因について考察した。. 用いる方法がある。大気中のほこりに含まれてい る主な放射線源は,ラドンとその娘核種であると 云われている。実際に,大気中のほこりを採取し, 放射線源として使用する場合,見かけ上の半減期. Ⅱ 大気中のほこりの放射性崩壊系列 自然界には,自然放射線として様々な放射線が. 51.
(3) 柚 木 朋 也. 存在している。例えば,宇宙線によるものや地上. このとき,. の放射線,ラドン,カリウム,炭素によるものな. dX1 =−λ1 X1 dt. 2). どが挙げられる 。ラドンは,上位核種である放 射性元素が崩壊する途中で生じる希ガス元素であ 238. る。天然の放射性崩壊系列には, Uを親核種と するウラン(崩壊)系列,232Thを親核種とする. dX2 =−λ2 X2+λ1 X1 dt. トリウム系列, Uを親核種とするアクチニウム. dX3 =−λ3 X3+λ2 X2 dt. 系列などがある3)。それぞれの崩壊の途中で生じ. ⋮. 235. 222. るラドンについて, Rnを狭義にラドン(radon, 220. 記号 Rn) , Rnをトロン(thoron,記号 Tn),. dXi =−λi Xi+λi−1 Xi−1 dt. 219. ⋮. こともある。 建物などの建材から気体となったラドン(崩壊. dXn =λn−1 Xn−1 dt. 系列の中では唯一の気体)が大気中に出てくるた. となる。. め,野外に比べて室内の方が空気の放射線量が多. この微分方程式は,上から順に解いていけばよ. Rnをアクチノン(actinon,記号 An)と呼ぶ. 222. くなる。その中で, Rnの半減期は3.824日であ 220. 219. い。. り, Rn(55.6秒)や Rn(3.96秒)に比べて長. 初期条件 t =0のとき,X1=X0 ,X2~ Xn=0と. く,浮遊している時間も長いと考えられる。その. すると,一般解は次のようになる7)。. ため,ほこりなどにも付着しやすく,ほこりを集. λ1λ2・・・λi−1X0 e−λ1 t+ Xi= (λ2−λ1) (λ3−λ1)・・・(λi−λ1). めて放射線源にした場合には,最も多く付着して いると考えられる4)。放射線の影響も222Rnとその 娘核種が大きく,北海道教育大学札幌校のほこり について調べた結果,238Uに起因する放射性物質. λ1λ2・・・λi−1X0 e−λ2 t+・・・+ (λ1−λ2) (λ3−λ2)・・・(λi−λ2). が主であることが明らかになった 。. λ1λ2・・・λi−1X0 e−λi (λ2−λi) (λ3−λi)・・・(λi−1−λ1). しかし,掃除機でキッチンタオルに集めたほこ. なお,放射線の放出率8)Q1~ Qnは,各核種の存. りは,約40分で放射線量は1/2程度に減少する。. 在量に崩壊定数をかけたものとなるから,. このことをウラン系列のデータをもとに検討する。. Q1=λ1 X1. 5). Q2=λ2 X2 Q3=λ3 X3. Ⅲ 方 法. ⋮. 崩壊系列における各核種の存在量の計算は,以. Qn=λn Xn. 下の微分方程式(Bateman方程式)を解くことに. で求めることができる。. 6). よって計算できる 。. なお,崩壊定数λと半減期Tの関係は次式のと. 崩壊系列の時刻 t における各核種の存在量を. おりである。. X1 ,X2 ,X3 ,・・・,Xnとする。それぞれの核. T=ln(2) /λ. ⑴. 種が崩壊する場合,それぞれの崩壊定数をλ1 , λ2 ,λ3 ,・・・,λn-1とする。 λ 1. λ 2. λ 3. Ⅳ 222Rn ~206Pbに至る崩壊系列について λn-1. X1 → X2 → X3 → ・・・→ Xn. 52. 大気中のほこりに付着するためには,気体にな る必要がある。そのため,ウラン系列のデータを.
(4) 大気中の放射性塵埃の半減期についての一考察. も と に222Rn以 降 に つ い て 考 察 す る。 表 1 は, 222. Rnから安定核種である206Pbまでの主な崩壊系. 列を示したものである。 表1 ウラン系列の半減期(222Rn以降の主な崩壊 系列について) 核種. 崩壊形式. 半減期. α. 3.824日. α. 3.10分. β−. 26.8分. β−. 19.9分. α. 164.3μ秒. のように222Rnが210Pbになるまでの放射線量を考. β−. 22.20年. 慮しても半減期が短くなることは説明できない。. −. 5.012日. 222. Rn ↓ 218 Po ↓ 214 Pb ↓ 214 Bi ↓ 214 Po ↓ 210 Pb ↓ 210 Bi ↓ 210 Po ↓ 206 Pb. β. α (安定核種). 138.4日. 図1 222Rnが210Pbになるまでの放射線量の変化. 下の存在量は少なくなり,全体の崩壊の見かけの 半減期はほぼ222Rnの半減期に等しくなる。以上. そこで,採取したほこりに222Rn以外の放射性物 質(222Rnから崩壊して生じた娘核種)が既に付 いていると仮定する。 気 体 に な る の は222Rnの み で あ る。 し か し,. (理科年表2012から作成). 222. Rnがほこりに付いた後崩壊し,その娘核種が. 採取したほこりに存在していることが考えられ 210. まず, Pbの半減期が22.20年と表1の核種の. る。そこでは,222Rnから210Pbまでが放射平衡に. 中ではとりわけ長く,210Bi,210Poの半減期も比較. 達していると考えられる。この場合,ほこりに存. 210. 的長い。そのため, Pbの崩壊は他の核種に比. 在するそれぞれの放射性元素の割合は,概ね半減. べてゆっくりと進み,その後の崩壊も比較的ゆっ. 期の長さに比例した割合で存在すると考えられ. くり進む。大気中のほこりについて考える場合に. る。222Rnから210Pbに至る過程で,各核種の存在. は,210Pbを事実上の安定核種と考えてもよい。. 比を考慮した場合について,α線の放射線量とα. そのため,ここでは222Rnから210Pbまでの過程に. 線とβ線の両方(以後α線+β線で表す)の放射. ついて考察する。. 線量の変化を予測したものが図2である。 222. ほこりの採取状態で Rnのみが存在すると仮 定した場合,半減期は3.824日で218Poに変化する。 これだけでは,ほこりの見かけの半減期が222Rn の半減期と異なることが説明できない。そこで, 222. Rnだけではなく,222Rnから崩壊した娘核種の. 影響も受けると仮定する。 222Rnから崩壊した218Poは3.10分という短い半減 期で214Pbに変化し,以後比較的短い時間で210Pb まで崩壊が進む。222Rnが210Pbになるまでの放射 線量の変化を予測したものが図1である9)。 222. 218. 図1では, Rnの半減期が長いため, Po以. 図2 222Rnから210Pbに至る過程に放射される放射 線量の変化(各核種の存在比を考慮した場合). 53.
(5) 柚 木 朋 也. なお,点線で示したグラフは,放射線の放出率. 分となり,放射線量は急激に減少する。そのため,. Qと時間t との関係を指数関数的減衰として近似. 一見,半減期も短く,見当違いのように見える。. して表したものであり,近似の割合はExcelグラ. しかし,実際に霧箱で観察する場合などでは,. 2. フの決定係数(R )で表している。. 最初の数分間は観察することが難しい。そこで,. 222. 図2では, Rnの半減期は3.824日で他の核種 222. 10分後からの放射線量について考察した。. の半減期と比べると長いため, Rnの影響が強. 図3の10分後からの予測結果とそれに近似線を. く表れ,222Rnのみの場合に近くなる。ただ,若. 当てはめたのが図4である。. 干の影響があり, α 線で崩壊定数が0.238, α 線 + β 線で崩壊定数が0.212となる。⑴式により, それぞれ半減期は約2.9日,約3.3日となる。しかし, 採取したほこりの見かけの半減期とは大きな差異 がある。 そこで,何らかの原因で採取したほこりから 222. Rnがなくなっていると仮定した。. それでは,222Rn以外に何が存在しているのか。 まず考えられるのは,222Rnが崩壊した218Poであ る。222Rnが 空 気 中 で 崩 壊 し, そ の と き で き た 218. Poがほこりに付着した,あるいは,222Rnがほ. 図4 図3の10分後からの予測結果と近似線. こりについた後に崩壊し,218Poだけがほこりに残 り,222Rnは空気中に散逸したのではないかと考. 図4では, α 線で崩壊定数が0.018となり,半. えた。. 減期は約38.5分,α線+β線で崩壊定数が0.019と 222. 218. つまり,ほこりには Rnではなく, Poのみ 218. なり,半減期は約36.5分と実験値に近い値になる. が付着し,その後 Poは崩壊し,他の核種へと変. ことが明らかになった。. 化していくと仮定した。. しかし,最初の方も含め,実験値を説明する必 218. このように,ほこりの採取状態で Poのみが存. 要がある。そこで,222Rnの場合と同様に,218Po. 在する場合について,放射線量の変化を予測した. だけではなく,採取したほこりに218Po以外の放射. ものが図3である。. 性物質(218Poから崩壊して生じた娘核種)も既に. 図3では,218Po(半減期3.1分)の影響が大き. 付いていると仮定した。. 218. 210. く, Poから Pbに至る見かけの半減期も約3. 実際には,218Poと218Poの娘核種である214Pb, 214. Bi,214Po,210Pbなどが存在すると考えられる。. また,222Rnが崩壊し,218Poが絶えず供給される と考えると,放射平衡に達していると考えるのが 妥当である。ただし,210Pbはそれまでの核種に 比べ半減期が非常に長いため,210Bi以後は空気中 のほこりにほとんど存在していないと考えられ る。 し た が っ て, 放 射 線 放 出 に 関 係 す る の は 218. Po,214Pb,214Bi,214Poとなる。ここで,各核種. がそれぞれの半減期の割合で存在すると考えた場 合の放射線量の変化を予測したものが図5である。 図3 Poが Pbになるまでの放射線量の変化 218. 54. 210. 図5では, α 線で崩壊定数が0.021となり,半.
(6) 大気中の放射性塵埃の半減期についての一考察. Ⅳ ほこりの採取時間による半減期への影響 ほこりを実際に採取する場合,採取にある程度 の時間が必要で,その間にも崩壊が起こる。例え ば,ほこりの採取に1時間を要した場合,1時間 前に採取したほこりと採取直後のほこりとでは, その性質が異なっている。採取時間が短い場合は, 大きな差異はないと考えられるが,長くなると影 図5 218Poから210Pbに至る放射線量の変化(各核 種の存在比を考慮した場合). 響が大きくなる可能性がある。採取時間がみかけ の半減期に関係することが考えられるので,この ことについて検討する。. 減期は約33.0分,α線+β線で崩壊定数が0.022と 222. 例えば,崩壊定数がλである放射性物質を例と. なり,半減期は約31.5分となる。 Rnが存在しな. して取り上げる。この場合,放射線量Rは時間. いと仮定した結果,ほこりの見かけの半減期に近. を t とすると次式で表される。. い値となったが,少し小さい値になった。そこで, 他の放射性物資がほこりに付着している可能性を. R=ae−λt (a,λは定数). ⑵. 考えた。 実際には,少量の222Rnがほこりに付着してい 222. る可能性がある。ここで, Rnが予想される存 218. 214. 在 の 約1% だ け 存 在 す る( ほ ぼ Po, Pb, Bi,214Poの合計と同じ)と仮定した場合の放射. b 秒間採取したほこりから t 秒後に放出される 放射線量Rbは,次のようにして求めることがで きる。. 214. 線量の変化を予測したものが図6である。. t. ∫ R dt. Rb= . t-b. . t. ∫ ae. =. t-b. =a(− . . −λt. dt . 1 −λt 1 −λ(t−b) ) e + e λ λ. a = (e−λteλb−e−λt) λ a = (eλb−1)e−λt λ. . ⑶. ⑶式は,bが定まれば,a/λ(eλb−1)は定数 図6 222Rnから210Pbに至る放射線量の変化(218Po から214Poまでの各核種の存在比を考慮した場合). となり,⑵式と同型になる。半減期は崩壊定数λ により決まるため,採取時間にかかわらず,半減 期は変化しないことになる。. 図6では, α 線で崩壊定数が0.017となり,半 減期は約40.8分,α線+β線で崩壊定数が0.019と なり,半減期は約36.5分となる。. Ⅴ まとめ. 以上のように,218Poとその娘核種に222Rnが少. 大気中に含まれるウラン系列の放射性物質に関. 量付着(残存)していると考えれば,ほこりのみ. するほこりについては,次のようにまとめること. かけの半減期が約40分になることは説明できる。. ができる。. 55.
(7) 柚 木 朋 也. ① コンクリートなどに含まれている238Uが. 註. 222. Rnまで崩壊する。. ② 222Rnは単原子分子で気体であるため,空. 1)空気中のほこりを集めた場合の見かけの半減期は, 採取した場所など諸条件によって変化する。例えば,. 気中に出てくる。 (ある ③ 222Rnが空気中のほこりに付着する。 いは,崩壊した放射性物質がほこりなどに付 着する。 ). 白坂他(2002)では, 全α線放射線測定で平均で40.3分, 高橋(2007)では,β線の測定から半減期が40分程度, 文部科学省(1977)では,全β放射能測定の場合, 「ラ ドンの娘核種の見かけ上の半減期は37分,トロンのそ. 222. ④ 採取したほこりには, Rn以下の放射性 物質が含まれる。 様々なシミュレーションの結果を実験結果と照 218. れは12時間である」と記されている。柚木・伊藤・浜 田(2016)では,α線の観察測定から,約40.8分となっ ている。 なお,三門(1993)によれば,半減期が30分程度の. ら し 合 わ せ た と こ ろ, Po以 降 の シ ミ ュ レ ー. 手軽な線源を作る方法として,「実験室用のラジウム線. ション結果が良く適合した。また,222Rnが約1%. 源(本校には昔のかなり強いラジウム線源がある)を. だけ残存しているとさらに実験値に適合すること が明らかになった。そのため,ほこりの放射線源 222. 218. 缶またはビンの中に密封して2週間以上放置してお く。220Rnの半減期が3.8日であるから,そのくらいの日 数でラドンが飽和する。その後,先端を尖らせた電極. は Rnが主要因ではなく, Poとその娘核種で. に500V位の電圧を加えて数時間222Rnの娘核種を採集す. ある214Pb,214Bi,214Poが主要因であると考えられ. る。 」とある。. る。つまり,222Rnは大気中のほこりに放射性物. a)白坂邦三郎・今村博香・大津陸雄・西原充貴・榮 哲浩・出雲信明:放射線測定車による放射能測定結. 質が含まれる大きな要因になっているが,ほこり. 果及び変動要因の評価方法について,鹿児島県環境. 採取時あるいは採取直後にほこりから離れること. 保健センター所報第3号,p.131,2002. b)高橋尚紀:放射線に関する教材の工夫,北海道立. が考えられる。. 理科教育センター研究紀要第19号,pp.44-45,2007. c)文部科学省:全ベータ放射能測定法(昭和51年改 訂) ,p.14,1977.. Ⅵ おわりに. d)柚木朋也,伊藤雄一,浜田康司:S霧箱を使用した 放射線の観察に関する研究−中学校における取組−,. 大気中のほこりの放射線は,地域,季節,時間 帯,採取時の条件などによって大きく変わる。そ のため, 半減期についても,様々な検討が必要で, 容易に結論づけられるものではない。本論では, 主としてウラン系列におけるほこりについて検討 したが,詳細に論じるためには,トリウム系列な. 理科教育学研究,57⑵,p.158,2016. e)三門正吾:大気圧空気GM計数装置の製作と放射線 測定,物理教育,41⑶,pp.262-265,1993. 2)国連科学委員会(UNSCEAR)による被曝の分類で ある。 3)自然界には4種の崩壊系列(アクチノイド・アルファ 崩壊系列)が存在する。238Uから206Pbに至るウラン系列. どの影響も考慮する必要がある。また,大気中の. (質量数4n+2の核種から成る),232Thから208Pbに至る. ほこりの分析についても,詳細に検証する必要が. トリウム系列(質量数4nの核種から成る) ,235Uから. ある。しかし,本シミュレーションによって,ほ こりのみかけの半減期が約40分になることの説明 が可能になったと考える。. 207. Pbに至るアクチニウム系列(質量数4n+3の核種から. 成る),237Npから205Tlに至るネプツニウム系列(質量数 4n+1の核種から成る)がある。 このうち,ネプツニウ ム系列は,209Bi以前の核種の半減期が全て短いため, 最終系列核種の209Biと205Tlを除いて自然界にはほとん. 謝 辞 本研究の一部はJSPS科研費26381248の助成を 受けたものである。. ど現存していない。そのため,ほこりに関しては,3 種の崩壊系列が関係する(資料) 。 4)例えば,細田他(2006)によれば, 「大気中のトリウ ム系列核種はウラン系列核種よりも濃度は相当に低い*) ため,空気中からの寄与分は概ねウラン系列によると みてよい。 」とある。ただし,下他(2010)によれば,. 56.
(8) 大気中の放射性塵埃の半減期についての一考察. 「トロン壊変生成核種の寄与については,通常の屋外. 8)ここでの放射線の放出率は,崩壊定数(原子核が単. 環境ではこの核種がラドン壊変生成核種のおよそ数~. 位時間当たりに崩壊する確率)と核種の存在量(最初. 十数%程度*)存在しているので,これを無視しているこ. の核種を1としている)を乗じたものとしている。そ. とにより,大きい場合は真値から十数%の誤差が生じ. れは,放射性崩壊系列の分岐などにより,正確には崩. ることがあり得る。」とある。なお,下他(2013)によ. 壊で放出される放射線量を表すものではない。ただし,. れば, 「吸入摂取では,ラドン・トロンによる実効線量. 今回関係する系列に関しては,分岐に際して,主な崩. は0.64mSvであり,そのうちラドン子孫核種の寄与が. 壊系列に99%以上が進むため,放射線量をほぼ表して. 0.53mSv(82.8%)と大きく,トロン子孫核種の寄与は 0.11mSv(17.2%)である。これ以外の核種の寄与は微. いると考えてよい。 9)ここでの放出率は,α線の場合は,222Rnの放出率に. 量のため含まない。」とある。以上のことから,ここで. 218. Po,2214Poの放出率を加算している。また,( α 線+. は,ウラン系列核種を中心に議論することとする。. β 線)の場合は,214Pb,214Biの放出率を加算したもの. *)下道國・池辺幸正;自然環境におけるRn−222,. をα線の放出率に加算している。. Rn−220およびそれらの短半減期娘核種の濃度,保 健物理,14,pp.251-259,1979.. 引用・参考文献. a)細田正洋・下道國・杉野雅人・古川雅英・福士政 広:ラドン・トロン散逸率と空間ガンマ線線量率お よび天然放射性核種濃度との関係,保健物理,41⑴, p.24,2006, b)下道國・岡光昭・山田純也・細田正洋・小西敏 春・渡井勝範・阪本文男・山崎直・西本昭義:気中 ラドン濃度簡易測定器の開発,Jpn. J. Health Phys., 45⑶,pp. 244-252,2010. c)下道國,真田哲也,藤高和信,湊進:日本の自然放 射線による線量,Isotope News,No.706,p.24,2013. 5)柚木・伊藤・浜田(2016)によれば,「北海道教育大 学で採取したホコリは,ガンマスペクトロメーター (LB-2045)を用いてスペクトルを分析した結果,ホ コリのγ線スペクトルから300keV,600keV付近にピー 214. クが見られた。これらはウラン系列に属する Pb及び 214. Biから放出されるγ線のエネルギーに類似している. ことから,ホコリに付着している核種は,主にウラン 系列の222Rnやその娘核種であると思われる。」とある。 a)柚木朋也,伊藤雄一,浜田康司:S霧箱を使用した 放射線の観察に関する研究−中学校における取組−, 理科教育学研究,57⑵,p.159,2016. 6)この方程式は,1905年にRutherford, E.によって示さ れ,1910年にBateman, H.によって解析解が提供されて *). いる 。 *)Bateman, H., The solution of a system of differential equations occurring in the theory of radio-active transformations, Proc. Cambridge Philos. Soc., ⒂, 423-427, 1910. 7)本論の解の導出については,以下を参照のこと。 ・FNの高校物理_放射性崩壊系列の数学 http://fnorio.com/0079radioactive_decay_series1/ radioactive_decay_series1.htm(2016/06/18). ・齋藤和男:. . http://ksgeo.kj.yamagata-u.ac.jp/~kazsan/class/ geomath/ex16.html(2016/06/18).. Bateman, H., The solution of a system of differential equations occurring in the theory of radio-active transformations, Proc. Cambridge Philos. Soc., ⒂, pp.423-427, 1910. 下道國・池辺幸正;自然環境におけるRn−222,Rn−220 およびそれらの短半減期娘核種の濃度,保健物理,14, pp.251–259,1979. 下道國・岡光昭・山田純也・細田正洋・小西敏春・渡井 勝範・阪本文男・山崎直・西本昭義:気中ラドン濃度 簡 易 測 定 器 の 開 発,Jpn. J. Health Phys.,45⑶, pp.244-252,2010. 下道國,真田哲也,藤高和信,湊進:日本の自然放射線 による線量,Isotope News,No.706,p.24,2013. 白坂邦三郎・今村博香・大津陸雄・西原充貴・榮哲浩・ 出雲信明:放射線測定車による放射能測定結果及び変 動要因の評価方法について,鹿児島県環境保健センター 所報第3号,p.131,2002. 日本アイソトープ協会(編):アイソトープ手帳,丸善, 2002年,pp.10-13. 国立天文台: 『理科年表』 ,丸善,pp.479-481,2012. 高橋尚紀:放射線に関する教材の工夫,北海道立理科教 育センター研究紀要第19号,pp.44-45,2007. 細田正洋・下道國・杉野雅人・古川雅英・福士政広:ラ ドン・トロン散逸率と空間ガンマ線線量率および天然 放 射 性 核 種 濃 度 と の 関 係, 保 健 物 理,41⑴,pp.1826,2006. 三門正吾:大気圧空気GM 計数装置の製作と放射線測定, 物理教育,41⑶,pp.262-265,1993. 文部科学省:全ベータ放射能測定法(昭和51年改訂) , p.14,1977. 柚木朋也,伊藤雄一,浜田康司:S霧箱を使用した放射 線の観察に関する研究−中学校における取組−,理科 教育学研究,57⑵,pp.155-168,2016. FNの高校物理_放射性崩壊系列の数学. 57.
(9) 柚 木 朋 也. http://fnorio.com/0079radioactive_decay_series1/ radioactive_decay_series1.htm(2016/06/18). 齋藤和男: http://ksgeo.kj.yamagata-u.ac.jp/~kazsan/class/ geomath/ex16.html(2016/06/18).. (札幌校教授). 58.
(10) 大気中の放射性塵埃の半減期についての一考察. 資料 放射性壊変系列(放射線崩壊系列) (半減期と放射線のエネルギー(MeV)はNUBASE2003 (G. Audi, et al., Nuclear Physics, A 729, 3-128),ICPR Publication 107(2008)による). (日本アイソトープ協会(編):アイソトープ手 帳,丸善,2011年,pp.10-13.). 59.
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