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農業地域における環境保全機能の評価に関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 山 本 忠 男

学 位 論 文 題 名

農業地域における環境保全機能の評価に関する研究 学位論文内容の要旨

  本論文は 表9,図69を含 む5章,116頁から なる和 文論文 であり, 他に参 考論文3編が添えられている.

  本研究は,総体的視点と客観的視点から地域環境を評価するにあたり,それぞれの手法の有用性について 検討し,その結果から各手法の融合による地域環境評価の概念形成を行うことを目的としたものである.そ し て , そ の 成 果 を 援 用 し て 地 域 環境 保 全 機 能に 関 す る 現状 分 析 と 今後 の 対 策 につ い て 検 討し た . 1.地域環境と環境保全機能の景観的評価  ゛

  景観は,自然的立地条件をもとに社会状況や技術,意志などの影響により形成される総体であると概念化 されており,その概観は土地利用区分と近似している.景観構造を分析するには,土地利用状況やその配置 に着目することが有効と考えられる.ここでは,営農状況の異なる地域を対象として地域景観の変遷を概観 し,地域環境における景観の位置づけを評価した.さらに,農業地域の景観を形成するうえで重要な要素で ある圃場区画形状の変遷についても検討を加えた,

  農業地域における景観形成の過程では,気象や土壌などの自然条件,作業機械や施設などの技術的条件,

農政を基本とした施策的条件などが関与している.北海道ではそれらの各種要因のなかでもとくに,入植か ら今日までの全体を通して,各時期の社会状況を反映した施策的条件が深く関わっている.そのもとでの景 観形成は,初期の段階には自然条件を主とする地域特性に強く支配されたが,昭和30年代以降においては,

む し ろ 技 術 の 進 展 , と く に 土 地 改 良 技 術 に よ る 生 産 基 盤 の 改 善 な ど の 影 響 を 受 け て き た ,   現在,景観的視点での地域環境とその保全に関する評価は,まだ緒についたばかりであり,その手法や方 向も多様なものとなっている.本研究では,農業地域の景観を土地利用秩序とみなすことで,汎用性のある 景観的評価が可能となった,また,景観的評価は,評価対象が範囲やスケールの制限を受けにくいことから,

総 体 的 な 地 域 環 境 保 全 の た め の 方 向 性 を 示 す う え で 有 効 な 手 法 で あ る と い え る . 2.河川水質からみた地域環境と地域環境保全機能の評価

  水は,様 々な物 質を上 流域で ある高位部から下流域である低位部へと,河川を通じて運んでいる.この とき,河川の水質と流域の土地利用や河川形態との関係を明確に把握すれぱ,河川および河川を取り巻く地 域環境を考えるうえで有益な示唆が得られるものと期待される.すなわち,地域環境の保全を考えるには,

水 の流れ とそれ にとも なう物 質の流 れを基 本とした 水環境 の実態 把握が 極めて 有効な手段となり得る.

  本研究では地域環境を評価するうえで,水環境,なかでも物質循環に関係の深い水質からのアプローチを 試みた.このとき,地域としては農業流域を対象とし,河川水質はもとより,流域の土地利用や河川に接す     ー1082―

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る土地の状況,河川の 形態などを検討因子にとりあげ,農業地域の水環境に及ぽす影響を明らかにすること を目的とした.とくに ,農地率が大きく異なり,かつ比較的土地利用が単純である大規模酪農業地域と比較 的複雑な複合型農林業 地域の平水時を対象に,その地域特性の違いなどを考慮しながら,農業と地域環境保 全の関わりを検討した .さらに地域環境に大きな影響を与えるとされている降雨出水時を含めた負荷流出に ついても検討を加えた ,その結果,流域の草地率や飼養牛頭数密度,河川改修率などが河川水質に大きく影 響していること,およ び降雨出水時では林地率の小さい流域で河川への負荷の流達率が高くなる傾向にある ことを明らかにした,

  地域環境を保全する には,上記の結果を考慮して負荷の流出を抑制し,河川および下流域に対する影響を 小さくするシステムの 整備が必要である.この場合,農業生産活動は本質的に汚濁負荷の発生をともなうも の で あ る こ と を 認 識 し , そ の 負 荷 を 許 容 範 囲 に と ど め る こ と を 第 一 義 に 考 えな けれ ばな ら ない . 3.景観と河川水質から みた環境保全機能の評価

  農業地域の環境を景 観的視点から評価することを考えてみると,対象をエコトープなどの景観単位に区分 することが前提となる ,農業地域での景観単位の多くは土地利用区分と類似しており,各土地利用区分の関 係性や土地利用秩序を 評価することで景観的評価が可能となる.また,景観的視点での評価は対象が範囲や スケールの制限を受け にくいことから,汎用性のある手段である,一方でその評価は,人為(主体)と現象

(客体)の関係性自体 を対象とするため,主体と客体の分離ができない場合には客観性に欠ける結果を導き 出 す こ と に も な る . そ の 場 合 は 具 体 性 に 欠 け る こ と に な り , 実 際 の 対 応 は 不 的 確 と な り 得 る ,   っぎに地域環境保全 機能の評価を,河川水質からアプローチすることを考えてみると,調査・分析手法自 体はこれまでに確立さ れていることから汎用性がある.また,その手法から得られる結果はきわめて客観的 なものである,しかし ,対象の設定によっては地域(流域)特性の影響を大きく受ける可能性があり,その 結果は特殊なものとな る場合がある.このことに配慮するならば,対象区分の設定(その多くは細分化の方 向 に あ る ) に よ っ て は 有 意 な 因 果 関 係 を 導 く こ と も 可 能 で あ り , 有 効 な 手 段 で あ る ,   以上のことから地域 の環境保全機能を評価する場合には,対象を制限しない景観により総体的な地域環境 の評価をおこない,派 生的な諸問題(とくに物質循環に関わる問題)に対しては,河川水質により評価する ことが有効であると考 えられる.すなわち今後の地域環境保全機能の評価においては,景観評価が地域計画 レベルでの概念形成に 有効な手段として,水質評価が地域内の具体的対応を導き出す手段として位置づけら れよう,

  農業地域の環境保全 機能を効果的に発現させるには,物質循環を基本とする生態的保全システムを構築す ることが有効な手段で あり,地域内に存在する自然空間および自然的空間にピオトープとしての属性を積極 的に付与することが重 要であると考えられる.そして,より多くの効果・効用を得るためには,各種の土地 改 良 施 設 に 対 し て も ピ オ ト ー プ と し て の 機 能 を 付 加 さ せ る べ き こ と を 提 案 す る も の で あ る ,

1083

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学位論文審査の要旨 主査    教授    長澤徹明 副査    教授    堀口郁夫 副査    教授    松田    豊 副査   助教授   井上   京

学 位 論 文 題 名

農業地域における環境保全機能の評価に関する研究

本論 文 は表9, 図69を含 む5章,116頁か らなる和文論文 であり,他に参考論文3編が 添えられている   本研究は,総体的視点 と客観的視点から地域環境を評価するにあたり,それぞれの手法の有用性について 検討し,その結果から各 手法の融合による地域環境評価の概念形成を行うことを目的としたものである.そ して ,そ の成 果 を援 用し て地 域 環境 保全 機能 に関 す る現 状分 析と 今後 の 対策 につ いて検討して いる.

地域環境と環境保全機能 の景観的評価

  景観は,自然的立地条 件をもとに社会状況や技術,意志などの影響により形成される総体であると概念化 されており,その概観は 土地利用区分と近似している.景観構造を分析するには,土地利用状況やその配置 に着目することが有効と 考えられる.ここでは,営農状況の異なる地域を対象として地域景観の変遷を概観 し,地域環境における景 観の位置づけを評価した,さらに,農業地域の景観を形成するうえで重要な要素で ある圃場区画形状の変遷 についても同様に検討を加 えた.

  現在,景観的視点での 地域環境とその保全に関する評価は,まだ緒についたぱかりであり,その手法や方 向も多様なものとなって いる.本研究では,農業地域の景観を土地利用秩序とみなすことで,汎用性のある 景観的評価が可能となっ た.また,景観的評価は,評価の対象が範囲やスケールの制限を受けにくいことか ら , 総 体 的 な 地 域 環 境 保 全 の た め の 方 向 性 を 示 す う え で 有 効 な 手 法 で あ る こ と を 提 示 し た , 河川水質からみた地域環 境と地域環境保全機能の評 価

  本研究では地域環境を 評価するうえで,水環境,なかでも物質循環に関係の深い水質からアプローチして いる,このとき,地域と しては農業流域を対象とし,河川水質はもとより,流域の土地利用や河川に接する 土地の状況,河川の形態 などを検討因子にとりあげ,農業地域の水環境に及ぼす影響を明らかにすることを     ―1084―

(4)

目的とした.その結果,流域の草地率や飼養牛頭数密度,河川改修率などが河川水質に大きく影響してレ〕る こと,および降雨出水時では林地率の小さい流域で河川への負荷の流達率が高くなる傾向にあることを明ら かにした.

  地域環境を保全するには,負荷の流出を抑制し,河川および下流域に対する影響を小さくするシステムの 整備が必要である.この場合,農業生産活動は本質的に汚濁負荷の発生をともなうものであることを認識し,

その負荷を許容範囲にとどめることを第一義とすべきことを提示した.

景観と河川水質からみた環境保全機能の評価

  農業地域の環境を景観的視点から評価することを考えてみると,対象をエコトーブなどの景観単位に区分 することが前提となる.農業地域での景観単位の多くは土地利用区分と類似しており,各土地利用区分の関 係性や土地利用秩序を評価することで景観的評価が可能となる.また,景観的評価の対象は範囲やスケール の制限を受けにくいことから,汎用性のある手段である.っぎに地域環境保全機能の評価を,河川水質から アプローチすることを考えてみると,調査・分析手法自体はこれまでに確立されていることから汎用性があ る.また,その手法から得られる結果はきわめて客観的なものである.さらに,対象区分の設定(その多く は 細 分 化の 方 向 に ある ) に よ って は 有 意 な因 果 関 係 を導 く こ と も可 能 で あり, 有効な 手段で ある.

  地域の環境保全機能を評価する場合には,対象を制限しない景観により総体的な地域環境の評価をおこな い,派生的な諸問題(とくに物質循環に関わる問題)に対しては,河川水質により評価することが有効であ ると考えられる,すなわち今後の地域環境保全機能の評価においては,景観評価が地域計画レベルでの概念 形 成 に 有効 な 手 段 とし て ,水質 評価が 地域内 の具体 的対応 を導き 出す手 段として 位置づ けられ よう,

  以上のように,農業地域の環境保全機能を効果的に発現させるには,物質循環を基本とする生態的保全シ ステムを構築することが有効な手段であり,地域内に存在する自然空間および自然的空間にピオトープとし ての属性を積極的に付与することの重要性を指摘した.また,より多くの効果・効用を得るためには,各種 の土地改良施設に対してもピオトープとしての機能を付加させるぺきことを提案した.したがって本論文は,

学術的に高く評価される.よって審査員一同は,山本忠男が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格があ るものと認定した.

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参照

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