学 位 論 文 題 名
博 士 ( 工 学 ) 稲 葉 匡 司
Kinetic Theory on Souncl Waves V
(音波に関する気体分子運動論解析)
学位論文内容の要旨
流体 機 械を 扱う 問 題の 多く は 振動 をど を とも をう 非 定常 問題 で あり .そ の 振動 によ って誘起され る 気体 の 流れ もま た 非定 常で あ る. 非定 常 を気 体の 流 れの 重要 を パタ ーン の ーっ とし て,音波があ げ ら れ る . 粒 子 速 度 と 音 速 の 比 で 定 義 さ れ るMach数(Ma)が1に 比べ て 十分 小さ く ,か つ, 気 体の 粘 性 ・ 熱 伝導 の効 果 が支 配的 で をい 場合 , 音波 の振 る 舞い は線 形 化さ れたEuler方 程式 系に よ って 記 述さ れ る. さら に ,線 形化 さ れたEuler方程 式 系は 線形 波 動方 程式に帰着させる ことができる.線 形 波動 方 程式 の解 法 は広 く知 ら れて おり ,容 易に解くことができ る.それゆえ,特 定の非定常問題に 対 する 解 を得 るた め には .境 界 条件 が本 質 的に 重要 と をる .
気体 が 運動 して い る場 合, 連 続体 を前 提と して成り立つ流体力 学から,境界条件 を導くことはでき を い. 境 界ヘ 入射 す る気 体分 子 集団 と, 境界 で反射,あるいは, 液体から気液界面 を通して気体中へ 出 てい く 気体 分子 集 団は 統計 的 性質 が異 をる ため,一般に境界上 で気体は非平衡と をるからである,
し た が っ て . 境 界 条 件 は よ り 微 視 的 を 立 場 か ら 導 出 さ れ る べ き も の で あ る , 単原 子 分子 気体 の 微視 的を 振 る舞 いを 決 定す る方 程 式と して , 気体 分子 の 速度 分布 関数の時空間 変 化 を 支 配 す るBoltzmann方 程 式 が あげ ら れる .境 界 が気 液界 面 の場 合,Boltzmann方 程式 に 対す る 境界 条 件, すを わ ち, 気体 論 境界 条件 は分 子動力学計算からす でに導かれている .また,境界が剛 体 壁で , 境界 を通 し て正 味の 質 量輸 送が 生じ をい場合についても ,拡散反射条件と よばれる気体論境 界 条 件 が よく 知ら れ てい る. 定 常問 題に 限 定す れぱ . それ ら気 体 論境 界条 件 を用 いたBoltzmann方 程 式の 境 界値 問題 の 解析 例は 数 多く ,か つ, 単原子分子気体の運 動に関する様々教 物理現象を網羅し て いる , それ らの 解 析結 果の 中 で, 特に 工学 上有用を知見のーっ として,気体分子 の平均自由行程と 系 の 代 表 長 さ の 比 で 定 義 さ れ るKnuds開 数 (Kn)が1に比 べ て十 分小 さ い場 合の 解 析結 果が あ げら れ る . こ れに よる と ,Knが1に 比べ て 十分 小さ い 場合 ,気 体 の流 れは ほ とん どの 領 域で 流体 力 学の 方 程式 系 に従 う. さ らに ,境 界 近傍 の非 平 衡を 領域 (Knuds聞層 )の解析から,境 界が気液界面の場 合 ,流 体 力学 の方 程 式系 に対 す る速 度の すべ り・温度の跳びの境 界条件が導かれ, それらの境界条件 に 含ま れ るす べり の 係数 に分 子 間相 互作 用の 詳細を情報が集約さ れる.境界が剛体 壁の場合っ速度の す べり ・ 温度 の跳 び をし の境 界 条件 がよ い 近似 とを る こと がわ かってい る,このように,Boltzma間 方 程 式 の 境界 値問 題 を出 発点 と して ,Knが1に 比 べて 十分 小 さい 場合 の 解析 (漸 近 解析 )か ら 流体 力 学の 方 程式 系に 対 する 境界 条 件が 厳密 に 導か れて き た. しか し をが ら, 本 研究 は工 学上重要な水 を どの 多 原子 分子 系 ,か つ, 非 定常 を気 体の 流れを対象とするた め,上述の漸近解 析の結果を使用す る こと は でき をい .
多 原 子 分 子 気 体 の 微 視 的 誼 振 る 舞 い を 決 定 す る 方 程 式 は 多 原 子 分 子 型 のES‐BGKBoltZm棚 方 程 式と よ ばれ る, こ れは 分子 同 士の 衝突 の プロ セス を 簡略 化し た モデ ル方 程 式で ある が,依然とし て 複 雑 を 非 線 形 微 分 積 分 方 程 式 で あ る, また ,BoltZm… 方 程式 の境 界 値問 題は 本 質的 に空 間 マル チ スケ ー ル問 題で あ り, 扱う 系 全域 を記 述す る簡潔′よ解の表現 は期待できをい. 実際,解析的に解
―50―
を 構 成 す る た め の 一 般 的 を 方 法 論 は 提 出 さ れ て い を い . そ れ ゆ え , 本 研 究 が対 象 とす るES‑BGK Boltzmann方程 式 の非 定常 境 界値 問題 を 扱う ため に は、 解析 方 法自 体の 構 築か ら研 究 を開 始す る 必 要 がある,
本 論文 の 目的 は,1. Knが1に 比べ て 十分 小さ く ,か つ,MaがKnに比 べ て十 分小 さ い場 合の 多 原 子 分 子, 特に 工 学上 重要 を 水の 非定 常 蒸発 ・凝 縮 問題 を扱 う ため の一 般 的を 理論 的枠組を 導出する こ と ,2. その 枠組 の応用例の提示を 通して,様々を応用 問題への本枠組み の適用可能性と蒸 発・凝縮 の 境界条件の重要性 を実証すること.で ある.
線 形 化 さ れ た 多 原 子 分 子 型ES‑BGK Boltzmann方 程 式 の 一 般 的 を 非 定 常 境 界値 問 題に 対し ,Kn が1に 比 べ て 十 分 小 さ く , か つ ,MaがKnに 比 べ て 十 分 小さ い 場合 の漸 近 解析 を行 い ,数 学的 に 厳 密 を 手法 を用 い て流 れ場 の 空間 構造 を 抽出 し, 各 空間 スケ ー ルで 成り 立 つ流 体力 学的方程 式系およ び そ れら に対 す る境 界条 件 を導 出し た ,主 要顔 オ ーダ ーに お いて ,気 体 のほ とん どの領域 は線形化 さ れ たEuler方 程式 系 に支 配さ れ .境 界近 傍 に振 動境 界 層お よび温度境界 層が現れることを 示した.
さ ら に, 境 界の ごく 近 傍に は非 平 衡領 域で あ るKnudsen層が 現 れ, 適切 を 座標 変換 を 用い るこ と に よ り ,ES―BGK Boltzmann方 程 式 のKnudsen層内 の 解, およ び ,そ れが 導 かれ るの と 同時 に流 体 力 学 方 程式 系に 対 する 境界 条 件が 得ら れ ることを示した. その結果,主要な オーダーにおいて ,気液界 面 で は水 のす べ り係 数を 含 む境 界条 件 ,剛 体壁 で は速 度の す べり ・温 度 の跳 びを しの境界 条件が得 ら れ た. また , 高次 近似 に おい て, 境 界の曲率の影響の 表出,希薄化の効 果による流体力学 方程式系 か らの逸脱,エネル ギー等分配則の破綻 を示した.
応 用例 とし て ,音 源と 剛 体壁 面上 に 形成 され た 薄い 水液 膜 に挾 まれ た 空間 内を 伝播する 平面音波 の 問 題を 考え ,ES‑BGK Boltzmann方 程 式の 漸近 解 析結 果を 適 用し た, 系 は, 気体 の流れ場 のほとん ど の 領域 を 支配 する 音 波の 領域 , 音源 およ び 気液 界面 近 傍の 温度 境 界層 ,気 液 界面 近傍 のKnudsen 層 , 熱伝 導 方程 式に よ って 支配 さ れる 液体 の5つ の 領域 で構 成 され る. 気 体中 の各 空 間ス ケー ル の 方 程 式の 解を 適 切に 接続 し ,気 液界 面 にお ける 速 度の すべ り ・温 度の 跳 びの 境界 条件およ び質量・
運 動 量. エネ ル ギー 流束 の 保存 式を か いし て気 体 と液 体を 接 続す る高 度 を連 成問 題を慎重 に取り扱 い ,解を得るための 方法論を提示した. さらに,得られた 解から,界面での 蒸発・凝縮が音波の 振る舞 い に 強 く 影 響 を 及 ば す こ と を 明 ら か に し , 蒸 発 ・ 凝 縮 の 境 界 条 件 の 重 要 性 を 実 証 し た . 本 論文 が提 出 した 理論 体 系は ,気 液 界面 で蒸 発 ・凝 縮を と もな う多 原 子分 子気 体の非定 常流れに 関 す る研 究の 基 盤と をり う るも ので あ り, 当該 分 野の さら を る発 展に 貢 献で きも のと期待 される.
本 論文 の構 成 は以 下の 通 りで ある . 第1章 は序 論で あ る, 第2章 では 本 論文 で扱 う境界値 問題、支 配 方 程 式 で あ るES‑BGK Boltzmann方 程 式 お よ び 一 般 化 され た気 体 論境 界条 件 を提 示す る ,第3章 で は 線 形 化 さ れ た 多 原 子 分 子 型ES‑BGK Boltzmann方 程 式の 漸近 解 析を 行う . 第4章 では 気液 界 面 で 蒸発・凝縮をとも をう平面音波の解析 を行う.結諭は第5章に示さ れる.
‑ 51−
学位論文審査の要旨 主査 副査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 教授 名誉教授
渡部 大島 明楽 矢野 藤川
学 位 論 文 題 名 正 伸 浩
重
夫 行 史猛(大阪大学・大学院工学研究科)
雄
Kinetic Theory on Sound Waves V
(音波に関する気体分子運動論解析)
流体機械を扱う問題の多くは,振動をどをともをう非定常問題であり,その振動によって誘起され る気体の流れもまた非定常である.非定常を気体の流れの重要をパターンのーっとして,非定常圧縮 性流 れ,す わをち ,音波 があげ られる, 粒子速度と音速の比で定義されるMach 数(Ma) が1 に比べ て十分小さく,かつ,気体の粘性・熱伝導の効果が支配的でをい場合,音波の振る舞いは線形化され たEuler 方程式系によって記述される.さらに,線形化されたEuler 方程式系は線形波動方程式に帰 着させることができる,音響現象の本質は線形波動方程式の境界値問題であり,境界値問題の数学的 解法はすでに確立している,それゆえに,個々の実現象を解析する上で,領域の幾何形状と境界条件 の選択が重要とをる.しかしをがら,領域内に気液界面が存在し,非定常な気体の流れに誘起され界 面で蒸発・凝縮が生じる場合.どのようを流体力学方程式系と境界条件を用いて流れ場を解析すれ ぱよいのかについての厳密を知見は未だ得られていをい.そのため,工学上重要な蒸発・凝縮をとも な う 非 定 常 圧 縮 性 流 れ を 解 析 す る た め の 理 論 的 枠 組 み の 提 出 が 求 め ら れ て い る , 本研究ではまず.線形化された多原子分子型ES ―BGK Boltzmann 方程式の一般的を非定常境界値 問題 に対し ,気体 分子の 平均自 由行程と 代表長 さの比 で定義 されるKnudsen 数(Kn) が1 に比べて 十分小さく,かつ,Ma がKn に比べて十分小さい場合の漸近解析を行い,数学的に厳密を手法を用い て流れ場の空間構造を抽出し,各空間スケールで成り立つ流体力学的方程式系およびそれらに対す る境界条件を導出した.最も主要な近似において,気体のほとんどの領域は線形化されたEuler 方 程式系に支配され,境界近傍に速度境界層および温度境界層が現れることを示した.さらに,境界の ごく 近傍に は非平 衡領域 である Knudsen 層が現れ,適切を座標変換を用いることにより,ES‑BGK Boltzmann 方 程式のKnudsen 層内の解,および,その解が導かれるのと同時に流体力学方程式系に 対する境界条件が得られることを示した.その結果,最も主要を近似において,剛体壁では速度のす べりをし・温度の跳びなしの境界条件,気液界面ではすべり係数を含む境界条件,工学上重要教物質 である水のすべり係数の値を導出した.これら流体力学方程式系および境界条件の導出により,非定 常圧縮性流れを解析するための一般的を理論的枠組みの構築に成功した.さらに,Kn の高次の効果 が流体力学的方程式系にどのようを形で現れるかを明らかにした.
次に,応用例として,音源と剛体壁面上に形成された薄い水液膜に挟まれた空間内を伝播する平 面音 波の問 題を考え,ES‑BGK Boltzmann 方程式の漸近解析結果を適用した,系は,気体の流れ場
―52―
の ほ と ん ど の領 域 を 支 配 する 音 波 の 領 域 ,音 源 お よ び 気液 界 面 近 傍 の温度 境界層 、気液 界面 近傍の Knudsen層 , 熱 伝 導 方程 式 に よ っ て支 配 さ れ る 液体 の5つ の 領域 で 構 成 さ れ る. 気 体 中 の 各空 間 ス ケ ー ル の 方 程式 の 解 を 適 切に 接 続 し , 気 液界 面 に お け る速 度 の す べ り・温 度の跳 びの境 界条 件およ び 質 量 ・ 運 動量 ・ エ ネ ル ギー 流 束 の 保 存 式を 用 い て 気 体と 液 体 を 接 続する 連成問 題を慎 重に 取り扱 い ,解を 得る ための 方法論 を提示 した .さら に,得 られた 解を検 討す ること により,界面での蒸発・凝 縮 が 音 波 の 振る 舞 い に 強 く影 響 を 及 ば す こと を 明 ら か にし , 蒸 発 ・ 凝縮の 境界条 件の重 要性 を実証 し た,
こ れ を 要す る に , 著 者は 多 原 子 分 子気 体 の 非 定 常圧 縮 性 流 れ を 扱う ための 一般 的を理 論的枠 組を 提 出 し , 流 体力 学 方 程 式系 および 境界 条件を 用いて 任意の 領域 形状, 様々を 時間依 存性を 有す る非平 衡 蒸 発 ・ 凝 縮現 象 を 含 む問 題の解 析を 可能と した. さらに ,応 用例を 提示す ること により ,得 られた 理 論 的 枠 組 みの 適 用 可 能性 と蒸発 ・凝 縮の境 界条件 の重要 性を 実証し た,こ れらの 本研究 の成 果は、
非 定 常 圧 縮 性流 れ に 関 わ る流 体 工 学 に 対 して 貢 献 す る とこ ろ 大 を る ものが ある. よって 著者 は‐北 海 道大学 博士 (工学 )の学 位を授 与さ れる資 格ある ものと 認める ,
‑ 53―