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走査型プローブ顕微鏡による

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Academic year: 2021

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     博 士 (I , 学 ) 菅 原 健 太 郎 学 位 論 文 題 名

走査型プローブ顕微鏡による

Ge2Sb2Te5 カルコゲナイド薄膜の電気相変化

・学位論文内容の要旨

  現 在,DVD光 デ ィス ク が , これ ま で の ビデ オ テ ー プに 置 き 換 わる もの として ,広く 普及し 始 め よ う と し て い る . と こ ろ が , 肝 心のDVDの 規 格が 乱 立 し てい る た め ,市 場 に は 多く の 種 類 の 光デ ィ ス ク が混 在 し て いる . し か し, そ の 多 種に わ た る 光デ ィ ス ク の中 で , 書 き換 え 可 能 なタ イ プ の もの は す べ て, 相 変 化 (結 晶 台 ア モル フ ァ ス 状態 ) を 記 録の 原 理 と して いる,

  カ ルコ ゲ ナ イ ド系 ア モ ル ファ ス 材 料 にお け る 電 気や 光 パ ル スに よ る 相 変化 は ,1970年 頃 にOvshinskyら に よ っ て 発 見 さ れ た . テ ル ル(Te)を 含 有 し た あ る 種 の カ ル コ ゲ ナイ ド 膜 に 対 し て, レ ー ザ ー光 を 照 射 した り 電 気 パル ス を 印 加し た り す ると , 光 加 熱や ジ ュ ー ル加 熱 に よ って 相 変 化 が誘 起 さ れ ,膜 の 光 反 射率 や 電 気 抵抗 が 変 化 する . 光 相 変化 は , 半 導体 レーザーの高性能化(高出力・小型化)と画期的な高速相変化材料(GeーSb―Te系,Ag―エnーSb―Te 系 ) の 発見 な ど に より , 書 き 換え 可 能 な 光デ ィ ス ク(DVD―RAM,‑RWな ど )へ と 応 用 され , 現 在 , 大き な 産 業 へと 成 長 し てい る . 電 気相 変 化 は ,次 世 代 の 不揮 発 性 電 気メ モ リ ー とし て , 大 手の 半 導 体 メモ リ ー 関 連企 業 が 研 究開 発 に 本 腰を 入 れ 始 めて お り , その 動 向 が 注目 さ れ て いる . そ の よう な 状 況 のな か , 相 変化 メ モ リ ーの10年 ,20年 先 を占 う 高 密 度化 技 術 に 関 す る 基 礎 研 究 と し て , 走 査 型 ト ン ネ ル 顕 微 鏡(STM)と 原 子 間 力 顕 微 鏡(AFM)に よ る ナノサイズ電気相変化の研究をおこなった.

  本研究の結果,以下の成果が得られた.

@STMとAFMに よ る , 相 変 化 膜Ge2Sb2Te5へ の 初め て の ナ ノサ イ ズ 電 気結 晶 化 に 成功 し た . ア モ ル ファ スGe2Sb2Te5膜へ , 金 属 探針 か ら パ ルス 電 圧 を 印加 す る ことで ,STMでは 直径100 nm¢ ,AFMで は 極 限 サ イ ズ で あ る 直 径10 nm4の マ ー ク 記 録 が で き た . ま た ,STMとAFMマ ークのラマン散乱やX線回折測定により,電気結晶化を実証した.

◎STMとAFMに よ る , 相 変 化 膜Ge2Sb2Te5へ の 初め て の ナ ノサ イ ズ 電 気ア モ ル フ ァス 化 に 成 功 し た .結 晶Ge2Sb2Te5膜へ , 金 属 探針 か ら パ ルス 電 流 を 印加 す る ことで ,STMでは 直径100 nm¢ ,AFMで は さ ら に 小 さ い 直 径10 nmの マ ー ク 記 録 が で き た . ま た ,STMとAFMマ ー ク の ラ マ ン 散 乱 測 定 に よ り , 電 気 ア モ ル フ ァ ス 化 を 実 証 す る こ と が で き た .

◎STMとAFMに よ る 電 気 相 変 化 の 特 性 比 較 か ら , 熱 的 な 電 気 記 録 はAFMの 方 が 優 れ て い る ことがわかった.詳細は,以下のとおりである,

996 ‑

(2)

a) マ ーク記録.STMとAFM,どちら も探針と試料表面の電気接 触のもと,通電加熱によって 相変 化 マー クが記録される.STMでは, トンネルギャップにパルス 電圧が印加されると,探針と 試料 表 面と の間 に静 電 引力 (ク ーロン カ)が働いて引き寄せあい ,一時的な接触が起きる,こ の接 触 は不 安定 なよ う でIそ の ためジ ュール加熱によって生じるSTMマークは再現性がわるい. ー方 のAFMでは,柔軟なカンチレバーに より,探針先端は(光てこ 方式により制御された)応カ が加 えられた状 態で,膜表面に安定に接触し ている,そのため,接触点 へ制御された電気パルスを印 加すること が可能であり,マーク記録の 再現性がよい,

b) マ ーク読み取り.記録マークは ,相変化に伴う電気的性質 の変化を示す.特に,電気抵 抗率

(p) は結 晶(p‑ニ‑ 10.lQ.cm)とア モル ファ ス状 態(p= 103Q. cm)で数桁も異なるた め,

この大きな 変化を有効に検出したい, AFMでは,膜の表面を探針が接触した状態で走査するため,

記 録マ ークの導電性変化を,直接 に大きな電流信号として検出 することができた,しかし ,STM で は, 膜表面のイメージングの際 に,バイアス電圧はトンネル 空間(トンネル抵抗〜30 GQ)に 印加される ため,相変化に伴う数桁の抵 抗率変化は像に反映されな ぃ,その代り,トンネル電流 に よる 電流 ・電 圧 特性(STS測定) により,結晶とアモルファ ス状態のバンドギャップ変化 (〜

50% ) を 読 み 取 る こ と は 可 能 で あ っ た が , 測 定 は 煩 雑 に な っ て し ま う . c) 高 密度記録,実現できた最小の 記録サイズは,STMでは直径 〜100 nm¢であり,AFMでは さら に 小さ い直 径〜10 nm¢ で ある.STMは,接触による通電加熱 を誘発するのに,〜3Vのパル ス電 圧 印加 が必要であったが,これに 対してAFMは,最初から探針 は膜表面に接触しているため ,相 変 化膜 のジ ュー ル 加熱 は〜0.5Vのパルス電圧印加で可能であ った,そのため,AFMの方が 小さ な 加熱 でマ ーク を 記録 する ことが できるのだろう(STMでは, 過熱のためにマークが大きく なっ てしまう) ,マークの高さ方向の形状変 化もAFMの方が小さく,膜に与える熱ダメージが少ない.

なお,AFMで は‑¥‑10回の記録の繰り返し に成功している,

  また,本 研究の過程で以下の成果が得 られた.

@ 高 湿 度 雰 囲 気中 で直 流電 圧 が印 加さ れたSTM探針 を走 査 する こと によ り,Ge―Sb―Te膜の 表 面 微 細 加 工 が 可 能 で あ る こ と を 見 出し た. 探針 に負 電 圧を 印加 する と, 陽 極酸 化現 象に よ り 膜 表 面 に 凸 状 変 形 が 誘 起 さ れ , 逆に 探針 に正 電圧 を 印加 する と, 膜表 面 がェ ッチ ング されて凹状 変形が現れる.相変化膜の新 奇な現象の発見であった.

◎ 直 流 ス パ ッ ター 装置 によ る ,Ge2Sb2Te5膜の 成膜 方法 を 確立 した .ス パッ タ ー装 置内 での ヒ ー タ ー 加 熱(RTか ら300℃ の 間 ) に よ り , ア モ ル フ ァ ス 膜 と 結 晶 膜 を むsituで 成 膜 で き る よ う に し た . 独 自 の ノ ウ ハ ウ に 基 づ ぃ た 改 良 の 積 み 重 ね の 産 物 で あ る ,

◎ 電 気 相 変 化 の た め の 大 電 流 ・ 短 パ ル ス 対 応 し たSTMへ の 改 良 を お こ な っ た .100Kの ジ ユ ー ル 加 熱 を ナ ノ 秒 で 実 現 す る た め に は , 既 製 品 のSTM装 置 を改 造す る必 要 があ り, これ までにはな ぃと思われる工夫を施した.

  本 論 文 は 全8章 か ら な り , 第1章 で は , 本 研 究 の 背 景 と 目 的 を 述 べ た .STMとAFMに よる ナ ノ サ イ ズ 電 気相 変化 の実 証 と, その 特性 理解 を 目指 して 研究 を おこ なっ た. 第2章で は,

相 変化 研究 の途 中 で発 見し たSTMに よるGeーSbーTe相変化膜 の表面変形現象について述べ た,

第3章 で は , 相 変 化 材 料Ge2Sb2Te5め 成 膜 と 物 性 に つ い て 述 べ た . 第4章 で は ,STMとAFM の 電 気 相 変 化 回 路 を 中 心 に , 実 験 装 置 の 説 明 を し た . 第5章 と 第6章 で は , そ れ ぞ れSTM

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(3)

とAFMに よ る 電 気 相 変 化に つい て実 験結 果 を示 した .第 .7章で は,STMとAFMに よる 電気 相     1

変 化 の 特 性 比 較 を お こ な っ た . 第 8章 で は , 本 論 文 を 総 括 し た .

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(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

走査型プローブ顕微鏡による

Ge2Sb2Te5 カルコゲナイド薄膜の電気相変化

  近年 ,記録装 置とし てDVD(digital video/veエsatile disk)が 商品化さ れ,家庭 用などとして普及しつっあるが,一方では,さらなる高性能化が研究開発されている.こ のような記録装置の性能でもっとも重要なのは,記録容量と動作(書き込み,消去,読み 取り)速度のニっであろう,本研究は,書換え可能型ディスクとして普及しつっある相変 化型DVDの記録容量に着目し,極限的な記録容量の解明とその物理的解釈を目指したもの である.

  現在 用いられ ているDVDの原 理は,1970年頃に米 国のOvshins kyグループによって発 見されたものである.そこでは,いわゆる「光相変化」を利用する,たとえぱ,Ge2Sb2Te5 結晶膜にレーザー光パルスを照射して瞬間的に加熱冷却することにより,微小なアモルフ ァス相のマークを作る,このマークを弱い光を反射させることにより読み取ることで,1 ビッ卜の電気信号が得られる.このような原理から明らかなように,記録容量はマークを 小さくすることで,大きく出来る.ちなみに現在商品化されている機種での最小マーク直 径は,150 nm程度である.しかし,この大きさはレーザー光のスポット径(回折限界)で 支配されており,Ge2Sb2Teヨ膜自体はもっと小さなマークを記録することが出来そうに思 える,ただし,それを実証するには,相変化記録の方法自体から再検討する必要があり,

本研究以前には未開の領域だった.

  本研究では,光ではなく,電気相変化を用いて極限サイズのマークを作ることを試行し ている.ジュール熱を利用する電気相変化を使えば,マーク径は電極を小さくすることで,

小さく出来ると考えたからである,しかし実際には,ナノスケール電極を作る.ことは,容 易ではない.この問題の解決のために,本研究では,走査型プローブ顕微鏡(走査型トン ネル顕微鏡と原子間力顕微鏡)の探針をナノスケール電極として使うことを着想している.

  本研究の成果は,三っに大別出来よう,

  第ーは,走査型プローブ顕微鏡の改造,探針試作,Ge2Sb2Teヨ膜の製造,Ge2Sb2Teヨ膜     ―999一

彦 志

和 孝

中 谷

山 福

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

の物性測定などの基礎的部分である,たとえば,走査ぞプ尸ーブ顕微鏡は通常は低周波信 号 を処理 するもの である が,5ns幅のパ ルスを印 加できる ように改造している.また,

Ge2Sb2Te5膜は直流スパッター法で作っているが,そのスパッター装置の改造や最適製膜 条件の割り.出しには多大の努カを払っているようである,実際,最適条件下で,表面粗さ が0.5nm程度のアモルファスGe2Sb2Te5膜を作るのに成功している,

  第二は,極限マークの作製に関する本研究の核心部分である,その中でも特筆すべき結 果 は,「走査型トンネル顕微鏡では最小で10 0nm,原子間力顕微鏡では10 nmの相変化マ ークを作り得ることJを実証したことである.      10 nmというサイズは,室温での熱力学的限 界 サイズに匹敵するものであり,このサイズをDVD容量に単純に外挿すると,テラパイ卜 級の記録が可能となることが示唆されている,走査型卜ンネル顕微鏡では10 0nmとなって 原子間力顕微鏡の結果に及ぱないが,この原因は卜ンネルギャップの存在にあるとしてい る,っまり,パルス電圧を印加した瞬間には,電圧の大半は卜ンネルギャップにかかり,

そ のためクーロンカで探針が伸びてGe2Sb2Te5膜に接触し,過大電カが膜に加えられるた めである,としている,原子間力顕微鏡の場合には,初めから探針が膜に接触しているか ら,このようなことは起こらなぃ,常識的には,走査型トンネル顕微鏡の方が原子間力顕 微鏡より高い空間分解能を有すると考えられているが,パルス動作ではむしろ逆の結果に なっており,非常に興味深い知見と言える,なお相変化は,電気抵抗のようなマクロな物 性だけでなく,X線回折やラマン散乱でも確認している,

  第三は,実験過程で偶然に発見した新現象である.走査型トンネル顕微鏡の探針に10V 程 度の直流電圧を印加してGe2Sb2Te5膜を走査すると,電気化学反応が生じて,膜面上に 微細パターンを書くことが出来る,というものである,類似の薄膜のナノスケール加工に も応用出来るかもしれなぃ.

  これを要するに,著者は,相変化記録に関してプローブ顕微鏡を用いて極限サイズのマ ークを記録しその動作機構を解析したものであり,固体物理学およびナノ工学に貢献する ところ大なるものがある,よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資 格あるものと認める.

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