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インゲンマメ

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 瀬 野 浦 武 志

学 位 論 文 題 名

インゲンマメ(Phaseolus vulgarisL .)starch synthase アイソザイムの網羅的機能解析

学位論文内容の要旨

  Starch synthase (SS; EC 2.4.1.21 and EC 2.4.1.242)はデンプンの構成成分であるアミロースお よ び アミ ロ ペ ク チン の 合 成を 担 う 酵素 で あ り,ADPグ ル コ ース の グ ル コー ス 残 基を 既 存 の a‑l,4グ ル カン鎖 の非還元 末端に 転移する 反応を 触媒する .植物 には複数 のSSアイ ソザイム が 存 在 し , 一 次 構 造 か らGBSS,SSI, SS[[,ssInお よ びSSIVの5ク ラ ス に 分 類 さ れ る . 特 定 のSSア イソ ザイムを 欠損し た変異体 植物で はデンプ ンの微細 構造が 変化する が,そ の影 響 は欠損 したアイ ソザイ ムによっ て異な ることが 知られており,各アイソザイムはデンプン生 合 成 に お いて 異なる生 理的機 能を担う と考えら れてい る.GBSSは 主にアミ ロース合 成を, そ の 他のア イソザイ ムはア ミロペク チン合 成を担う とされているが,各アイソザイムの酵素特性 に つ い て は理 解が進ん でおら ず,デン プン生合 成の分 子機構は 明らか にされて いなぃ .特に ssmお よ びSSIVに 関し て は 知見 が 少 なく , 酵 素機 能 に 関し て は 一 切報 告 が なぃ . 本 研究 で は インゲ ンマメ(Phaseolus vulgaris L.)を 対象に ,デンプ ン生合成 に果た す各SSアイソザイ ム の 固 有 の役 割を明ら かにす ることを 目的とし ,種々 のSSアイソ ザイム の構造, 発現特 性お よび酵素特性などを解析した.

1. SSア イ ソ ザイ ム の 一次 構 造 解析

  こ れ まで に ,イン ゲンマ メ由来のGBSS,SSIおよびSSII (PvGBSSa,PvSSIおよ びPvS SlIb) をコ ー ド するcDNAが 単 離さ れ , 一次 構 造 な らび に 大 腸菌 組 換 え酵 素 の特性が 解析さ れてき た . 本 研 究 で は ,PvGBSSb,PvSSIIa,Pvssmお よ びPvSSIVを コ ー ド す る4種 のcDNAを 新た に 単 離し た . SSは アイ ソ ザ イム 間 で 保 存性 が 高 く触 媒 に 関わ るC末側の 領域( 相同領 域) と , 相同 性 が 認め ら れ ず機 能 が 明ら か にされて いなぃN末側 の領域( 付加領 域)から な る . 相 同 領 域 の 一 次 構 造 の 比 較 か ら ,SSはGBSS,SSIお よ びssnか ら な るグ ル ー プAと , ssInお よ びSSIVか ら な る グ ル ー プBに 分 類 さ れ た . プ ラ ス チ ド の 起源 と さ れる ラ ン 藻類 に 存 在 す る2つ のSSホ モ ロ グは 各 グ ルー プ と それ ぞ れ 近 縁に あ っ た.SSは植 物 の 誕生 以 前 から2つ のグ ル ー プに 分 岐 して お り ,そ れ ぞれが 独立して 進化し 多様化し てきた と考えら れ た. し た がっ て, 両グル ープのSSア イソザ イムは異 なる酵素 特性を 示し,デ ンプン 生合成に おけ る 役 割も 異 な ると 予 想 され た ,

2. SSアイソザイムの発現特性

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  各ss遺 伝 子 の 発 現 特 性 を 比 較 し た と こ ろ , 同 一 ク ラ ス に 属 す る2種 のpvgbssお よ び pvss2遺伝子はそ れぞれ発現器官や時期が異なることが明らかとなった.p、 g6船6遺伝子の発 現は 種子 と葉 で観 察さ れた のに 対 し,pゆ 卿遺 伝子 の発 現は 種 子で のみ 認め られ た. また , pws勿 遺 伝 子 は 主 に 種 子 で ,pv船 乃 遺 伝 子 は 主 に 葉 で 発 現 し て い た .pwぷ3お よ びpw舛 遺 伝子 は主 に葉 で発 現し てい たが ,p臠3遺伝 子は 登熟 後期 の種 子でも発現が認 められた.pw蚶 遺伝子はpwぷ乃遺伝子と類似した発現パター ンを示した.

  SSは デ ン プ ン 粒 内 部 に も存 在 する こと が知 られ てい る.PvGBSSaは 登熟 種子 ,PvGBSSbは 葉の デン プン粒に蓄積 しており,それぞれ異なる器官のアミロース合成に関与 すると考えられ た ,PvSSIお よ ぴPvSSIIbは葉 お よび 登熟 初期 の種 子の デン プン 粒に 顕著 に蓄 積し てお り , 両酵 素は デンプン粒の 初期合成に関わることが示唆された.登熟種子のデンプ ン粒には付加領 域 の 大 き さ が 異 な る 少 な く と も3種 以 上 のPvSSHaア イ ソフ オー ムが 存在 した .ア イソ フ オ ーム の形 成機 構お よび 生理 的意 義 は不 明で ある が,PvSSHaの デンプン粒への 集積に付加領域 は必須でなぃことが明らかとなった,

3.大腸菌発現酵素 の解析

  精 製し た大 腸菌 発現 酵素(rPvGBSSa rPvGBSSb,rPvSSI,rPvSSIIb,rPvSSmおよびrPvSSIり の 酵 素 特 性 を 解 析 し た .dIVSSmお よ びrPvSSWは い ず れ も 高 い 分 子 活 性 を 示 し た . 特 に rPvSSmの 分 子 活 性 は 高 く ,10mg/mlア ミ ロ ペ ク チ ン お よ び1nMADPグ ル コ ー ス 存 在 下 に おいて他のアイソザイムの13〜270倍であった,

  反 応産 物の 解析 によ って 各ク ラス の アイ ソザ イム の反応特 性の明確な違いが明らかとなっ た .rPvSSIは 外 部 鎖 長 が6程 度 の 鎖 に 選 択 的 に作 用し , また ,rPvSSIIbは 重合 度lO以上 の 比 較 的 高 重 合 度 の 鎖 に 選 択 的 に 作 用 す る と 考 え ら れ た . 一 方 ,rPvSSmお よびrPvSSWは グ ル カ ン 鎖 の 選 択 性 が 低 く , 様 々 な 鎖 長 の 単 位 鎖 に 対 し て 濃 度 依 存 的 な 反 応性 を示 した .   ア ミ ロ ペ ク チ ン を基 質と した 場合 ,rPvGBSSaとrP価BSSbは 連続 的な 伸長 反応 によ って 重 合度50以 上の 超長 鎖を 合成 した .一 方 ,両 酵素 とも マルトヘ キサオースを基質とした場合は 不連続な反応性を示し,マルトヘプタオースが合成された.これらのことから,くmSSは伍‐1,6 分岐 を認 識し てい るこ とが 予想 され ,GBSSの特 徴で あるアミ ロース合成および高度なデンプ ン粒蓄積との関連が示唆された.

4.N末 付加 領域 の構 造と 機能

  GBSSに は 付 加 領 域 は ほ ぼ 存 在 せ ず ,SSIお よ びSSIIの 付 加領 域に は植 物問 で有 意な 相同 性 は 見 出 さ れ な か っ た. これ に対 し,ssniとSSIVの 付加 領 域内 部に はそ れぞ れ植 物問 で高 度 に 保 存 さ れ た 領 域 が 存 在 し , 何 ら か の 機 能 を 有 し て い る と 予 想 さ れ た ,   ssniの 付 加領 域に は3度の 反復 配列 が 存在 し, それ ぞれ バク テリ ア由 来のstarch‑binding domain (SBD)と 相 同 性 を 示 し た .Pvssmの 付 加 領域 を欠 失 させ た変 異酵 素rPvSSIII‑Cは全 長酵 素rPvSSIIIに比 べ, プラ イマ ーに 対す る親 和性 が劇 的に低下した.また,付加領域の み から なる 変 異タ ンパ ク質rPvS SIII‑Nは単独でも蝕1,4グルカン鎖と親和性を示した.これ ら の 結 果 ,PvSSmの 付 加 領 域 はSBDと し て 機 能 す る こ と が 明 ら か と な っ た . ま た ,SBDは 直 接触 媒には関与せず,触媒部位をプ ライマー近傍にとどめ,見かけ上の基質濃度を上げる役 割 を担 って い ると 考え られ た,

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  PvSSIVの付加領域はヘリックスが逆平行に折り畳まれた構造で,タンパク質結合ドメイン として機能すると予測された.  Blue‑native PAGEによる解析の結果,rPvSSWは付加領域を介 して二量体を形成することが明らかとなった.付加領域を欠失させた変異酵素rPvSSW‐Cは 単量体として存在し,全長酵素rPvSSWと異なる速度パラメーターを示したものの,グルカ ン鎖の選択性は変化しなかった.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

インゲンマメ(Phaseolus vulgarisL .)starch synthase アイソザイムの網羅的機能解析

  本 論 文 は 、 図29、 表4、 引用 文献136を含 み、5章か らな る総 ぺー ジ117の和 文論 文 である。別に参考論文5編が添えられている。

  Starch synthase (SS; EC 2.4.1.21 and EC 2.4.1.242)はADPグルコースのグルコース残基を 既存のa‑l,4グルカン鎖の非 還元末端に転移する反応を触媒する酵素である。デンプン構 成成分のアミロースとアミロ ペクチンのグルカン鎖伸長を担うことから、デンプンの微細 構 造を決定する極めて重要な酵素である。植物には複数のSSアイソザイムが存在し、一 次 構 造 か らGBSS,SSI,SSII,ssInおよ びSSIVの5ク ラ スに 分類 され てい る。 特定 の SSアイソザイムを欠損した変 異体植物ではデンプンの微細構造が変化するが、その影響は 欠損したアイソザイムによっ て異なることが知られており、各アイソザイムはデンプン生 合成において異なる生理的機 能を担うと考えられている。しかしながら、各アイソザイム の酵素特性についての理解は進んでいない。本研究では、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris L.)を対象に、SSアイソザイムの構造と機能の相関を理解 し、デンプン生合成に果たす各 SSア イ ソ ザ イ ム の 固 有 の 役 割 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て 行 わ れ た 。   こ れ ま で に 、 イ ン ゲ ン マ メ 由 来 のGBSS,SSIお よ ぴSSII (PvGBSSa,PvSSIおよ び PvSSlIb)をコードするcDNAが単離され、一次構造ならびに 大腸菌組換え酵素の特性が解 析 され てき た。 本研 究で は、PvGBSSb,PvSSIla,PvssInお よびPvSSIVを コー ドする4 種 のcDNAを 新た に単 離し た。 各ss遺伝 子の 発現 特性 を比 較 した 。pvgbssb遺 伝子 の発 現は種子と葉で観察されたのに対し、pvgbssa遺伝子の発現は種子でのみ認められた。また、

pvss2a遺伝子は主に種子で、pvss2b遺伝子は主に葉で発現していた。pvss3およびpvss4遺 伝子は主に葉で発現していた が、pvss3遺伝子は登熟後期 の種子でも発現が認められた。

pvssl遺伝子はpvss2b遺伝子と類似した発現パターンを示した。.

  一次 構造 から 、SSはア イソ ザイム間で保存性が高く触媒に関わるC末側の領域(相同 領域)と相同性が認められず 機能未知のN末側の領域(付 加領域)からなることが明らか     ‑ 1074―

夫 之

博 淳

井 村

藤 田

松 木

伊 和

授 授

授 授

   

   

教 教

教 教

助 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

とな った 。GBSSには 付加 領域はほとんど存在せず、SSIおよぴSSIIの付加領域には植物 間で有意な相同性は見出されなかっ た。一方、SSIIIとSSIVの付加領域内部にはそれぞれ 植物 間で 高度 に 保存 され た領 域が 存在 し、 何ら かの 機能を有していると予想された。

  精 製し た大 腸 菌発 現酵 素(rPvGBSSa,rPvGBSSb,rPvSSI,rPvSSIIb,rPvSSmおよび rPvSSIV)の酵素特性を解析した。rPvSSmおよびrPvSSIVはいずれも高い分子活性を示し た。 特にrPvSSmの分 子活 性は高く、他のアイソザイムの13〜270倍であることが明らか となった。また、反応産物の解析に よって各クラスのアイソザイムが異なる反応特性を示 すことを明らかにした。rPvSSIは外 部鎖長が6程度の鎖に選択的に作用し、また、rPvSSHb は重合度10以上の比較的高重合度の 鎖に選択的に作用すると考えられた。一方、rPvSSm およびrPvSSIVはグルカン鎖の選択性が低く、様々な鎖長の単位鎖に対して濃度依存的な 反応 性を 示し た 。ア ミロ ベク チン を基 質と した 場合 、rPvGBSSaとrPvGBSSbは連続的な 伸長反応によって重合度50以上の超 長鎖を合成した。しかし、両酵素ともマルトヘキサ オースを基質とした場合は不連続な 反応性を示し、マルトヘプタオースが合成された。こ れら のこ とか ら 、GBSSはa‐1,6分岐を認識して いることが予想され、GBSSの特徴であ る ア ミ ロ ー ス 合 成 お よ び 高 度 な デ ン プ ン 粒 蓄 積 と の 関 連 が 示 唆 さ れ た 。   SSmの 付加領域にはバクテリア由来のst釘ch‐bindingdomain(SBD)と相同性を示す3 回 の 反 復 配 列 が 存 在 し た 。PvSSIの 付 加 領 域 を 欠 失 さ せ た 変 異 酵 素rPvSSm‐Cは rPvSSmに比べ、プライマーに対する 親和性が劇的に低下した。また、付加領域のみから なる変異タンパク質rPvSSm・Nは単独でもQ‐1,4グルカン鎖と親和性を示した。これらの 結果 、PvSSIIIの付 加領 域はSBDと して 機能 する こと が明 らか とな った 。 また ,SBDは 直接触媒には関与せず、見かけ上の 基質濃度を上げる役割を担っていると考えられた。

PvSSIVの付加領域はヘリックスが逆 平行に折り畳まれた構造で、タンパク質結合ドメイン として機能すると予測された。Blue.nativePAGEによる解析の結果、rPvSSIVは付加領域 を 介 し て 二 量 体 を 形 成す るこ とが 明 らか とな った 。付 加領 域を 欠失 させ た変 異酵 素 rPvSSIV‐Cは単量体として存在し、 全長酵素rPvSSIVと異なる速度パラメーターを示した が、グルカン鎖の選択性は変化しな かった。

  本 研究 では 、SSIおよ びSSIVアイソザイムの酵 素特性をはじめて明らかにするととも に、 イン ゲン マ メ由 来6種のSSアイソザイムのグ ルカン鎖伸長特性が異なることを示し た。また、変異酵素の解析から、SSllIアイソザイムの付加領域がデンプン結合ドメインと して機能すること、SSIVアイソザイ ムの付加領域がタンパク質結合ドメインとしての機能 を有することを証明した。これらの 成果は、学術的に高い価値をもっだけでなく、ドメイ ン構造を利用した新機能酵素創出や デンプンの質的改変などへの応用にも寄与しうるもの と判断した。

  よって、審査員一同は、瀬野浦武 志が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有 するものと認めた。

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参照

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