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肥大型および 拡張型心筋症ハムスターの

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 山 下 武 廣

学 位 論 文 題 名

肥大型および 拡張型心筋症ハムスターのal 受容体および AngiotensmH 受容 体刺 激 に対 する

心筋電気生理学的・力学的反応特性

― 心筋 症ハ ム スタ 一心 室筋 の 電気 薬理 学的 解析 一

    学 位論 文 内容 の要 旨

I.研究目的

  遺伝的心筋症ハムスターBI014.6およびBI053. 58は,各々ヒトの肥大型心筋症および拡張型 心筋症のモデル動物として広く用いられている。

  一般に心 筋症の病態の成立,進展にcatecholamineやangiotensin II (AngH)などの神 経液性因子が重要な役割を演じていると推測されている。中でも,アドレナリン作動性al受容 体およびAng矼受容体刺激は心筋細胞の肥大や細胞内カルシウム過負荷による心筋細胞障害を 惹起している可能性がある。一方,両受容体刺激とも心室筋に対して陽性変力作用を有している ことから,心筋症における心機能障害の成立・進展要因としてばかりでなく,心機能低下に対す る代償機転としての役割も注目されている。従って,心筋症モデル動物においてこれらの神経液 性因子に対する反応性を検討することは,それらの病態生理を理解する上で重要と考えられる。

  そこで,本研究は2っの異なった心筋症モデルハムスター(B1014.6とBI053. 58)において,

心室筋のal受容体およびAng矼受容体刺激時に生じる活動電位変化が,正常ハムスターのそ れとどのように異なるかを明らかにし,遺伝的心筋症における病態の特性,進展様式との関連性

を 検 討 す る こ と を 目 的 に お こ な っ た 。

II.実験方法 1.実験動物

  14〜 20週齢のBI014.6,BI053. 58および正常対照群として,同一の週齢のFl口ハムスター を用いた。

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2.摘出乳頭筋標本を用いた実験

  常法によルハムスター左心室から乳頭筋を摘出し灌流槽に置いた。一端を張カトランスデュー サーに連結して,乳頭筋標本の発生張力(DT)を測定しナょがら,微小電極を刺入し細胞内電位 を記録した。標本はO. 5Hzの電気刺激により駆動した。灌流液にはmodified Tyrode液(組成 (mM):NaCl 125;KC14.0) ;CaCl22.7;MgCl2 0.5;NaHZP04 1.8;NaHC03 25; glucose5.6,pH7.4)を95%02十5%COユの混合ガスで酸素化して用 いた。温度を30.O土 1.0℃に維持し,1 0mE/minの流速で表面灌流した。

3.単一心室筋細胞を用いた実験

  コ ラ ゲ ナ ーゼ(0. 01%wt/Vol.,和 光 純薬 )を 含ん だ 無Caz゛HEPES緩衝Tyrode液で Langendorffの方法に準じて摘出心を灌流した後,心臓を細切して単一心室筋細胞を分離した。

分離した細胞は高カリウム,低クロール,無カルシウム液中に懸濁させて4℃で保存し,実験に 供 した 。膜 電位 固 定は ,KOH 110;KC120;MgCl21.0,KzーATP5;Kzーcreatine pho‑

sphate5;aspartic acid 90〜100;EGTA 10 mM (pCa8,pH7.4)を含んだパッチ電極を 用 いて おこ なっ た 。用 いたHEPES緩 衝Tyrode液は,NaCl 143;KC15.4;CaCl21.8;Mg Cl20.5;NaH2P040.3;HEPES−NaOH buffer (pH7.4) 5.5;glucose5.6mMを含 んで いる。

1II.実験結果

  14〜20週齢のBI0 14.6,BI0 53. 58の体重は同週齢のFl口より有意に低値であった。心重 量/体重比はBI0 14.6で有意に高値であり,肉眼的にも心室壁の肥厚を認めた。薬物投与前の おけ る活動電位では,BI0 14.6の90%再分極時間(APDgo),50%再分極時間(APDso)が共 に,Flロに比して有意に短縮していた。薬物投与前に発生張カおよびその乳頭筋断面積による 標 準 化 値 は ,BI0 14.6とBI0 53. 58のい ずれ に おい てもFl口 より も 低値 であ った 。   ロ遮 断 薬(propranolol,1〃M)存 在 下でphenylephrine(PHE)は ,濃 度依存性に活動 電位 持続時間APDを延長し,陽性 変力反応をもたらした。APDよ。の延長率は3群間に差が認 めら れなかったが,APDeoの延長 率は,PHE 30″MにおいてBI0 14.6で56.8土13.2%(M土 SEM,n= 6)と ,Flロ の10.5土4.O%(nー6)に 比 べて 有意 に亢 進し て いた 。さ らに , BI0 14.6では 陽性 変力 反応も,PHE3ロM,30ロMで,Flロに比して有 意に亢進していた。

これ に対してBI0 53. 58ではAPDeo延長反応,陽性変力反応と もFlpとほぼ同等であった。

  a遮 断 薬(prazosin,1uM) お よ び 口 遮 断薬(propranolol 1〃M)存 在下 でAngnは ,

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濃 度 依 存 性 に 活 動 電 位 持 続時 間APDを延 長 し , 陽 性変 力 反 応 を もた ら し た 。APD20の 延長 率 は3群 間 に 差 が 認 めら れ な か っ た。 し か し ,APDeoの延 長 率 は ,BI0 14.6,BI0 53. 58と もF 1ロ に 比 べ て 低 い 傾 向 に あ り , 陽 性 変 力 反 応 はAngHO.1〃M,1uMに お い て ,BI0 14.6で は18.4土6.9% ,24.7土11.O%(n:ニニ6)と,Flロの各々48.2土7.7%,53.8土8.5%(n二二6) に 比 べ て ,al刺 激 の 場 合と は 逆 に , 有意 に 低 下 し てい た 。BI0 53. 58の 陽 性 変力 反 応 も , Ang II O.luMで24.8土3.4% ,luMで33.5土5.5% (n‑6) と ,Flロ に比 べ て 有 意 に低 下 して いた。

  BI0 14.6お よ びFl口 よ り 得 た 単 一心 室 筋 細 胞 にお け る 膜 電 位固 定 法 に よ る 実験 で ,pro‑

pranolol存 在 下 でPHEは 一 過 性外 向 き 電 流 (I, 。 ) と 内向 き 整 流 カリ ウム電 流(I″1)を 抑 制 し たが ,I, 。 の抑 制 度 は 両 ハム ス タ 一 間 に差 が な か っ た。(PHE 30ロM;BI0 14. 6vs.Fl ロ ,16.5土4.1% (n=9)vs. 17.5土4.3% (n−7) ) 。 し かし ,PHEによ るIKI抑 制 作 用 は BI0 14.6で 有 意 に 増 強(PHE 30肛M;BI0 14.6vs.F1ロ ,44.4土13.3% (nー5)vs. 1.3 土1.9% (n亠4) し て お り ,BI0 14.6のalの 受容 体 刺 激 に よるAPD延 長反 応 の 亢 進 には , このIK,抑 制作用 の増強 が関与 する ことが 示唆さ れた。

1V. 考  察

  本 研 究 に お いて , 肥 大型 心筋症 モデル であ るBI014.6と拡 張型心 筋症モ デルで あるBI053. 58 を 用い , 心 筋 症 の 発症 な ら び に 進展 に 関 連 が あるal受 容 体お よ びAng II受容体 を刺激 した際 の心 筋の電 気生理 学的・ 力学的 反応 特性を 明らか にした 。

  nl受 容 体 刺 激 は , 電 気 生 理 学 的 に 活 動 電 位 持 続時 間(APD)を 延 長 させ て , 陽 性 変力 作 用 発 現に 寄 与 す る と され て い る 。 本研 究 に お い て,BI014.6に お けるal受 容 体刺 激 に 対 す る陽 性変 力反応 の亢 進はAPD延長 反応の 増強を 伴っ て生じ ている ことが 明ら かとな った。 すなわ ち,

APDの よ り 大 きな 延 長 に よ って プ ラ ト 一 相に 流 入す るカル シウム イオ ン量が 対照群 に比べ て多 くな り,そ のため より強 い陽性 変力 反応が 生じた ものと も考 えられ る。こ のような細胞内カルシ ウム 過負荷 は,代 償機能 として 収縮 カを増 強する 反面, 心筋 症ハム スタ一 心筋に生じる細胞障害 の 原因 と な っ て い る可 能 性もあ る。こ れに対 して ,拡張 型心筋 症モデ ルのBI0 53. 58にお いて はnl受 容 体 を 介す るAPD延長 反 応 , 陽 性変 力 反 応が対 照群と 変わ らなか ったこ とは興 味深 い。

  BI0 14.6に 認 め ら れ たal受 容 体 刺 激 時 のAPD延 長 反 応 亢 進の 膜 電 流 レ ベル に お け る 機序 とし ては, 一過性 外向き 電流(I,。)もしくは内向き整流カリウム電流(IK・)の抑制度の差に由 来 する 可 能 性 が あ る。 し か し , 本研 究 に お い て, 前 者 の 抑 制度 はBI0 14.6とFlロ で差が ない

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のに対し,後者はFlロに比べてBI014.6でより 強く抑制されたことから,IK,抑制度の差が BI0 14.6におけるAPD延長反応亢進の膜電流レベルにおける機序として関与しているものと 考えられた。

  一方,Ang IIによる心筋細胞活動電位の変化にっいては今まで十分検討されていないが,本 研究はAngH受容体 刺激によってもAPDが延長す ることを明らかにした。Ang II受容体刺激 によるAPD延長や陽 性変力反応が,Flロに比べてBI0 14.6,BI0 53. 58において低下してい ることも明らかとなり,両モデルにおける心収縮低下および心不全への進展に少なくとも一部寄 与 す る も の と 考 え ら れ た 。 そ の イ オ ン 電 流 機 序 は 今 後 の 研 究 課 題 で あ る 。   BI0 14.6ではFlロに比べて,al受容体刺激に 対する反応性は亢進していたが,Ang lI受 容体刺激に対する反応性は低下していた。両受容体がどちらもイノシトールリン脂質代謝回転を 細胞内情報伝達系の最終共通経路としていることを考慮すると,受容体数が高値となっているゼ 1受容体とは反対に ,Ang II受容体数が今回検討したBI0 14.6において低下しているか,あ るい は 受容 体とG蛋 白,phospholipaseCとの共 役が障害されているとも考 えられた。BIO 14.6にみられたal受容体刺激に対する反応性の亢進がBI0 53. 58で認められなかったことは,

BI0 53. 58では心肥大が生じないというBI0 14.6との病態経路の違いを説明できるものかもし れない。

  今後,肥大型および拡張型心筋症モデルハムス夕一での実験成績がヒトの心筋症にもあてはま るか否か,臨床的な検討も必要であると思われた。

   学位論文審査の要旨 主査   教授   北畠   顕゛

副査    教授    古舘正從 副査    教授    小山富康

  遺伝的心筋症ハムスターBI0 14.6およびBI0 53. 58は,各々ヒトの肥大型心筋症および拡張 型心筋症のモデル動物として広く用いられている。←般に心筋症の病態の成立,進展にcate‑

cholamineやangiotensinH(Ang II)などの神経液性因子が重 要な役割を演じていると推測 され ている。中でも,アドレナリン作動性a1受容体およびAng II受容体刺激は心筋細胞の肥

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大や細胞内カルシウム過負荷による心筋細胞障害を惹起している可能性がある一方で,両受容体 刺激とも心室筋に対して陽性変力作用を有していることから,心筋症における心機能障害の成立

・進展要因としてばかりでなく,心機能低下に対する代償機転としての役割も注目されている。

そこで,本研究は2っの異なった心筋症モ‐デルハムスター(BI0 14.6とBI0 53. 58)において,

心室筋のば1受容体お よびAng皿受容体刺激時に生じる活動電位変化が,正常ハムスターのそ れとどのように異なるかを明らかにし,遺伝的心筋症における病態の特性,進展様式との関連性 を検討することを目的におこなった。

  実験材料として,14〜  20週齢のBI0 14.6,BI0 53. 58および正常対照群として,同一週齢の Fl口ハムスターを用 いて次の実験をおこなった。@摘出した左室乳頭筋に対し,微小電極法 および圧トランスデューサーを用いて,各々活動電位および等尺性張カを同時記録し,pheny・ lephrini(PHE)もし くはAng矼を投与した際の変 化を観察した。◎コラゲナ―ゼにより単 離した単一心室筋細胞に対し,パッチクランプ法を用いて膜電流を記録し,薬剤投与前後での変 化を観察した。

  PHEは 濃度依存性に活動電位持続 時間APDを延長し,陽性変力 反応をもたらしたが,BIO 14.6に おける90%再分極時間APD90の延長反応および陽性変力反 応はFlロに比べて有意に 亢進していた。一方 ,BI0 53. 58のAPD90延長反応,陽性変力反応はFl口とほぼ同等であつ た。PHEは一過性外向き電流(I,。)と内向き整流カリウム電流(IKl)を抑制したが,I,。の 抑制度はBI0 14.6とFlロの間で差がなかったのに対し,IK1抑制作用はBI0 14.6で有意に増 強し てお り ,BI0 14.6のa1受容体 刺激によるAPD延長反応の亢 進には,このIK1抑制作用 の増強が関与することが示唆された。

  AngHも ま た濃 度依 存性 にAPDを延 長し,陽性変力反応をもた らしたが,BI0 14.6,BIO 53. 58におけるAPD。。延長反応, 陽性変力反応はFlロに比べて 低下していた。AngHはカ ルシウム電流(I。。)を増加させI,。を抑制したが,Iccの増加反応はBI0 14.6において減弱し ており,APD延長反応低下の膜電流機序であると考えられた。・

  以上の結果より,BI0 14.6ではロ1受容体刺激に対する反応は亢進しているが,Ang II受容 体刺激に対する反応は低下していること,一方,BI0 53. 58ではai受容体刺激に対する反応は 対照群と同等であるが,AngH受容体刺激に対する反応は低下していることが明らかになった。

また,これら反応性の相違が,両モデルにおける病態の特性・進展様式と関連性を有することが 示された。

  試 問に あ たり 古舘 教授 より@ハ ムスターHCMとヒトHCM病型と の対応,◎心室各所での

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反応の 均一性,◎ヒトHCMで認めら れる脂肪酸代謝の低下が電流系の変化により説明し得る か否か ,に関して,また小山教授よ り@ハムスター心筋症の遺伝的欠失およびそのヒトHCM 遺伝子との関連性,◎Ang矼受容体密度の変動にっいての質問がなされた。これに対し申請者 は概ね妥当な回答を行った。その後行われた古舘・小山両副査教授との試問においても,概ね適 切な回答がなされた。

  本研 究は,2系の心筋症ハムスタ ー心室筋のai受容体およびAng II受容体刺激に対する反 応性を電気薬理学的に解析した最初の報告であり,学位論文として価値を認めるものである。

参照

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