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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 岡 田 有 意

     学位論文題名

    Structural and functional analysis of TetR family transcriptional regulators from Strept07n) ′ ces coelicolor

(放線菌S . coelicolor 由来のTetR family 転写調節因子の構造・機能解析)

学位論文内容の要旨

  バク テ リア にお いて 温度や湿度の変化 ,栄養素の枯渇,他種の侵略 などに応じて,生体内の 化学反 応の経路を切り替えることは 重要であるが,それは転写 調節因子が機能夕ンパク質の発現 量 を調 節 する こと によ って行われている .転写調節因子の1種であるTetR familyはバクテリア に広く 保存されており,薬剤排出夕 ンパク質などの転写調節を 担い,近年院内感染などで問題と なって いる病原薗の薬剤耐性機構に 関与している.放線菌Streptomyces coelicolorは,抗生物質 な どの 多 く種 類の2次 代謝 産物 を作 る こと で知 られ てい る が, ゲノ ム解 析の結果,150個もの TetR family転写調節因子をもって いることが明らかになった. しかしそれらの遺伝子は, 実際 に生体 内でどのような遺伝子の転写 調節をしているか,シグナ ル分子は何なのかについて明らか になっ ておらず,これらの機能を明 らかにすることは,薬剤耐 性機構の解明,さらには新たな抗 生物質 の発見の可能性も秘めている.そこで本研究では,S. coelicolor由来の推定転写調節因子 SC00332およびSC07815について機能 解明を試みた,

  機能 解明のための手法としてX線 結晶構造解析法とSELEX法(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)を用い た,SELEX法は標的夕ンパク 質分子と特異的に結合する 核酸 配 列を 同 定す る方 法で ,結 合 配列 を選 別, それ をPCR法によって増幅 するというサイクルを複 数回繰 り返し,至適配列を決定する .

  結晶 構 造解 析法 によ って ,SC00332の立 体構 造を2.2sAの 分解 能 で決 定した.構造解析によ りSC00332が多くの転写調節因子に 共通してみられるhelix‑turn‑helix (HTH) DNA結合モチ ーフ を もち ,2量体 構造 を とっていることが明 らかとなった.また,他のTetR familyの転写調節因 子と有 意な立体構造相同性が確認さ れた,構造相同性が高い,Staphylococcus aureus由来の多剤 耐 性転 写 調節 因子QacRのル ガ ンド 認識 部位 に相 当する位置に,SC00332にもポケットが確認さ れ ,そ の 内部 に環 状構 造を も つ低 分子 化合 物の 電 子密 度が 確認 さ れた ,また2量体間のHTHモ チ ー フ のDNA認 識helixの 距 離 が45.9AとDNAと 結 合 す る に は 大 き す ぎ る た め , 本研 究 で明 ら か と な っ た 構 造 はDNA非 結 合 型 で あ り , リ ガ ン ド 結 合時 にSC00332がDNA非結 合犁 と なっ て転写 調節を行っている可能性が高 いことが明らかとなった.

    ‑ 1510ー

W w l

(2)

  SELEX解析およびEMSA (electrophoretic mobility shift assay)によりSC00332のゲノム上の結 合 位置 , オペ レー ター 部位 を 決定 した .その 配列はsc00332の2つ上流の 遺伝子sc00330のプ口 モ ータ ー 部位 と重 なっ て存 在 して おり ,SC00332がsc00330の転 写調節を 行うりプレッサーで ある可 能性が高いことが明らかと なった,

  結 晶 構 造 解 析 に よ りSC07815の 立 体 構 造 を2.22A分解 能で 決 定し た.SC00332と同 じく , HTHモ チー フを も ち,2量体 を 形成 して いた. 他のTetR family転写調節因 子に共通している1J ガ ンド 結 合部 位に ,SC07815は 複数 の 芳香族 アミノ酸に囲まれたポケット が確認された.この よ うな 認 識ポ ケッ トは ,QacRにも 存在 する, 構造の違うさまざまな種類 の薬剤を1つのタンパ ク 質が 認 識す る多 剤認 識機 構 に特 徴的 なポケ ットである,このことからSC07815も多剤認識夕 ンバク 質である可能性が疑われた ,

    SC07815に つ いて も同 様にSELEX法 とEMSAによ ルオ ペレ ータ ー 部位 を決 定し た.SC07815 のオペ レーター部位は自身の遺伝 子sc0 7815のプ口モーター部 位と重なっており,自らの転写調 節をし ていることが明らかとなっ た.また,sc0 7815のすぐ下 流には多剤排出膜夕ンバク質と弱 い相同 性をもった機能未知遺伝子sc0 7816が存在しており,構 造学的な特徴と合わせて考えると sc0 7815とsc0 7816はオベ口ンを 構成し,SC07815はこれらの 遺伝子の発現を制御し,薬剤耐性 に 関す る 転写 調節 因子 であ る 可能 性が 示唆 さ れた ,さ らに ,SC07815と オベレーターDNAの複 合 体を 形 成後 ,臭 化エ チジ ウ ム, マラ カイト グルーンを加えると,夕ン バク質からDNAが外れ る こ と がEMSAに よ っ て 確 認 さ れ た . こ れ ら の 薬 剤 はSC07815と 高い 構造 相 同性 をも つQacR が 認識 す る薬 剤で あり ,SC07815も こ れらの 薬剤に応答してオペレーター 部位への結合を切り 替え, 自身と下流に存在している 推定薬剤排出ポンプの遺伝子sc0 7816の発現量をしている可能 性が高 いと考えられる.

  以 上 の よ う に , 結 晶 構 造 解 析 とSELEX法 に よ って ,SC00332およ びSC07815の 機能 を明 ら かにし た,これらの手法の組み合 わせは,機能未知転写因子の 機能同定において,非常に有効で あるこ とが示された.

1511

(3)

学位論文審査の要旨

主査   教授   田中   勲 副査   教授   河野敬一

副査   教授   渡邉信久(名古屋大学)

副査   准教授   姚   閔

     学 位論文題名

    Structural and funCtionalanalySiSOfTetRf ・ amily tranSCriptionalregulatorSfrom 、 S カそりめ勿り′ C ピ SC 〇¢ ZZC 〇あゲ

(放線菌Sl coelz'color 由来のTetR family 転写調節因子の構造・機能解析)

   バクテリアにおいて温度や湿度の変化,栄養素の枯渇,他種の侵略などに応 じて,生体内の化学反応の経路を切り替えることは重要であるが,それは転写 調節因子が機能夕ンパク質の発現量を調節することによって行われている.転 写調節因子TetR family はバクテリアに広く保存されており,薬剤排出夕ンパク 質などの転写調節を担い,近年院内感染などで問題となっている病原菌の薬剤 耐性機構に関与している.放線菌Streptomyces coelicolor は,抗生物質などの多 く種類の2 次代謝産物を作るが,ゲノム解析の結果,150 個ものTetR family 転 写調節因子をもっていることが明らかになった.しかしそれらの遺伝子は,生 体内でどのような遺伝子の転写調節をしているか,シグナル分子は何なのかに ついて明らかになっておらず,これらの機能を明らかにすることは,薬剤耐性 機構の解明,さらには新たな抗生物質の発見の可能性も秘めている.そこで本 研究では,S .  coelicolor 由来の推定転写調節因子SC00332 およびSC07815 につ いて機能解明を試みた.

   機 能 解明 の ため の 手 法と し て X 線 結晶 構造 解析法と SELEX 法を用い た.

SELEX 法は標的夕ンバク質と特異的に結合する核酸配列を同定する方法で,結

合配列を選別,それをPCR 法によって増幅するというサイクルを複数回繰り返 し,至適配列を決定する.

   結晶構造解析法によって,SC00332 の立体構造を2.2sA の分解能で決定した.

構 造 解 析 に よ り SC00332 が 多 く の 転 写 調 節 因 子 に 共 通 し て み ら れ る

helix‑turn‑helix (HTH) DNA 結合モチーフをもち,2 量体構造をとっていることが

明らかとなった.また,他のTetR family の転写調節因子と有意な立体構造相同

性が確認された.構造相同性が高い黄色ブドウ球菌由来の転写調節因子QacR の

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リガンド認識部位に相当する位置に,SC00332 にもポケットが確認され,その 内部に環状構造をもつ低分子化合物の電子密度が確認された.また2 量体間の HTH モ チー フ の DNA 認識 helix の距 離 が 45.9A と DNA と結 合 するに は大きす ぎるため,本研究で明らかとなった構造はDNA 非結合型であり,リガンド結合 時に SC00332 がDNA 非結 合型となっ て転写調節を行っている可能性が高いこ とが明らかとなった.

  SELEX 法お よびゲルシ フト法によ り SC00332 のオベレーター部位を決定し た.その配列はsc00332 の2 つ上流の遺伝子 sc00330 のプ口モーター部位と重な って存在しており,SC00332 がsc00330 の転写調節を行うりプレッサーである 可能性が高いことが明らかとなった.

   結 晶 構 造 解 析 に よ り SC07815 の 立 体構 造 を 2.22A 分 解能 で 決定 し た.

SC00332 と同じく,HTH モチーフをもち,2 量体を形成していた.他のTetR family 転写調節因子に共通しているりガンド結合部位に,SC07815 は複数の芳香族ア ミノ酸に囲まれたポケットが確認された.このような認識ポケットは,構造の 違うさまざまな種類の薬剤を1 つのタンパク質が認識する多剤認識機構に特徴 的なポケットである.このことからSC07815 も多剤認識夕ンバク質である可能 性が疑われた.

  SC07815 につ いても同様 に SELEX 法とゲルシフト法によルオベレーター部 位を決定した,SC07815 のオベレーター部位は自身の遺伝子sc0 7815 のプ口モ 一夕ー部位と重なっており,自らの転写調節をしていることが明らかとなった.

また,sc07815 の下流には多剤排出膜夕ンパク質と弱い相同性をもった機能未知 遺伝子sc07816 が存在しており,構造学的な特徴と合わせて考えるとsc0 7815 と sc0 7816 はオベロンを構成し,SC07815 はこれらの遺伝子の発現を制御し,薬剤 耐性に関する転写調節因子である可能性が示唆された.さらに,SC07815 とオ ペレーターDNA の複合体を形成後,臭化工チジウム,マラカイトグリーンを加 えると, 夕ンノヾク 質から DNA が外れる ことを確認 した.これ らの薬剤は SC07815 と高 い構造相同 性をもつ QacR が認識する薬剤であり, SC07815 もこ れらの薬剤に応答してオベレーター部位への結合を切り替え,自身と下流に存 在している推定薬剤排出ポンプの遺伝子sc07816 の発現量をしている可能性が 高いと考えられる.

   以上 , 本研 究 では ,結晶 構造解析と SELEX 法によ って, SC00332 および

SC07815 の機能を明らかにした.これらの手法の組み合わせは,機能未知転写

因子の機能同定において,非常に有効であることを示した.本研究が生物科学

に及ぼす貢献には多大なものがあると考えられ,よって審査員一同は申請者が

博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 得 る 十 分 の 資 格 が あ る も の と 認 め た .

参照

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